A POSTER COLUMN
アメリカDOEの評価会議におけるトピックス
アメリカDOEは、02年5月6日から10日まで、コロラド州Goldenにおいて、2002年DOE開発プロジェクト評価会議(Energy Department's 2002 Program Review Meeting) を開催した。今回は初めて水素プロジェクト(Hydrogen Program)および自動車用FCプロジェクト(FC for Transportation Program)両者の合同で行われた。会議ではレビューを含めて129件の論文(水素関連73件、FC関連52件)が発表され、400人が参加した。
この評価会議でDOEの政策や多くの研究成果が発表されたが、その中で興味のある幾つかの話題を紹介する。
過去長期間に亘ってDOEのFCV開発を指導してきたSteve Chalk氏は、2003年の合同評価会議では、水素貯蔵が第1の重要課題として、水素生成が第2の課題として、そしてFCのコスト低減が第3の課題として議論されるであろうと述べている。更に彼のスピーチによれば、ガソリン改質を含む多様燃料改質プロセス技術の研究開発については、2004年にそれを続行するか停止するかの判断(2004 Go/No Decision for Flexible Fuel Processing)が下される予定である。もしDOEの研究者が60秒以内での起動が可能であることを実証できなければ、定常的な研究は恐らく続行するとしても、特別研究は中止されることになるかもしれない。しかし「仮に研究開発の停止が決定されたとしても、それがGMのガソリン改質技術開発にインパクトを与えるとは思わない。それはGMがDOEからの資金を使っていないからである。GMは優れた開発成果を挙げており、彼等は更に開発努力を推し進めるであろう」と彼は付け加えている。
現在実施されている第1期の技術実証研究(Phase 1 technical demonstration)は、2004年で終えることになっている。Chalk氏は現在の実験室での成果をスライドで紹介したが、それによると「FCの耐久性は1,000時間、コストについては500,000ユニットの生産を仮定して$325/kW、水素燃料の税抜き価格は、ガソリン換算で$3/gallon gasoline equivalent」なっているが、ある民間の専門家はこのようなコスト見積りは不確実な表現であると述べている。彼は「我々が未だ実現していない、あるいは未知の大量生産技術を仮定してのコスト予測は一種の"まやかし"に過ぎない。FCメーカがこのようなコスト試算を発表したとして、実際にFCを購入しようとしたら、"oops, sorry, can't right now"と彼等は答えるであろう」と主張している。あるFCデベロッパーは5kWシステムの40基を合計400万ドルで販売したが、この数字は$20,000/kWに相当する価格である。
Chalk氏は「1000時間の耐久性と信頼性、その他幾つかの目標が達成されれば、我々は次ぎのフリート実証運転の段階に進むことができる。この第2期(Phase 2)では、500台のFCVによる色々な環境条件での公道試験に入るが、これについてのgo/no判断は2004年に下される」と語っている。
最も興味ある研究成果の1つが、Oak Ridge National LaboratoryのTim Armstrong氏によって発表された。これはLos Alamos National Laboratoryとの共同研究で得られた成果であり、その内容はFCの世界で既に葬られていたAFCの復活を示唆する内容の技術であった。その中核技術はカーボン繊維の合成材料(carbon fiber composite material)を基本とする再生可能CO2洗浄器であり、再生に要する時間は約5分で、サイクル当たり4Whの電力量で足りる。これによって従来AFCの実用可能性を困難にしていたCO2耐性の問題が解決されることになり、当面のゴールは白金のような基金属触媒を要しない高温運転(150℃以上)のAFCを実現することに置かれている。
他の興味ある成果は、Oak Ridge National Laboratoryとthe University of Tennesseeの3人の研究者によって発表されたバクテリアの繊維素(bacterial cellulose)によって創られたPEFC用電解質膜で、その特徴は120℃以上の高温においても安定な点にある。O'Neil氏によれば、この繊維はNafion膜に比べて遥かに温度安定性があり、来年はMEAに組み込んでテストしたいと語っている。
(Hydrogen & Fuel Cell Letter, June 2002, Vol.XVII/No.6, pp1-4)
―― This edition is made up as of June 25, 2002. ――