第18号 新しいPEFCの市場展開とその関連技術動向
Arranged by T. HOMMA
1. 国家的施策と予算
2. PAFCの開発と市場動向
3. MCFCの開発
4. PEFC開発の新しい展開
5. PEFC用改質関連技術の開発動向
6. PEFCの市場分析
7. FC自動車情報
8. EPRIによるFCの市場性調査結果
9. ヨーロッパからのニュース
10. コジェネレーション導入実績
1. 国家的施策と予算
 ニューサンシャイン計画に於ける平成10年度概算要求額は590億1,300万円(9年度563億2,000万円)で対前年度で約27億円(約4.8%)増加したが、その中で燃料電池発電技術については9年度の58億7,281万円から10年度には49億7,928万円となった(いずれも一般および特別会計の和)。NEDOに対する開発費補助金は約8億7,000万円減少するが、これはMCFC研究開発費がピークを超え、大幅な減少となったことが効いている。SOFC研究開発費も9,000万円減少するが、PEFCの研究開発費は4億3,000万円(9年度3億8,000万円)となり、5,000万円増加した。(日刊電気通信97年8月28日、10月16日)
 資源エネルギー庁は、新エネルギー利用等の促進に関する基本方針について、国民、事業者、政府等の各主体が果たすべき役割を明確化し、新エネルギーの導入を総合的に進める方策を打ち出しており、その内容の一部を以下に紹介する。
 本基本方針は、平成9年6月23日に施行された「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネ法)」第3条の規定に基ずいて制定されるものである。
 エネルギー使用者、エネルギー供給事業者および製造・輸入事業者は、新エネ法第4条の規定に基ずき、本基本方針に留意しつつ、新エネルギーの導入促進に努力する責務を有することになる。
 対象となる新エネルギー利用等の種類として、太陽光発電、風力発電、クリーンエネルギー自動車、廃棄物燃料製造、廃棄物発電、廃棄物熱利用、温度差エネルギー、天然ガスコジェネレーション、燃料電池、太陽熱利用の10項目が挙げられている。(日刊電気通信97年9月24日)
 アメリカDOEペーニヤ長官は、97年10月21日に記者会見し、アメリカ政府と民間会社が新型FC電気自動車の開発に成功したと発表した。このFCエンジンはガソリン、エタノール、メタノール、天然ガスのいずれかからでも車上で水素を改質する方式で、現行の乗用車に比べ排ガス量は50−70%削減される。最終的には排ガス量を95%削減し、燃費効率を2倍に向上させることを目標としている。ただ業界筋の見通しによれば、現状技術では量産しても1台当たりコストは現行車の10倍になるようである。2005年の実用化を目指している。この発表を受け、アメリカCNN放送は10月22日のニュースでFCの原理とシステム構成を解説した。(電気新聞97年10月23日、CNN放送10月22日、節5.に関連情報)
2. PAFCの開発と市場動向
 東芝は国内外でPAFCの市場開拓を加速することにした。同社の燃料電池事業はオンサイト用出力200kWPAFCユニットの市場開拓に絞っており、97年度は10台、98年度は30台を販売台数の目標としている。
 先ず海外向けには、インドの総合電機メーカBHEL社に97年度1台を輸出することが既に決まっており、98年度は2台、99年度は5台の納入が内定した。インドは電力の系統・流通設備が整備されていない地域があり、インド政府は電力の安定供給を実現するため、分散型電源としてのFCの導入には設備費の50%の補助金融資を決めている。東芝はこうした優遇措置によって、インドのFC市場は将来堅実に成長するものと判断し、BHEL社と技術と販売の提携交渉を開始した。
 国内向けには、燃料の多様性を生かし、消化ガス(下水汚泥から発生するメタンガス)や食品廃液のメタンガスを利用、環境保全のみならず災害に強い分散型の新エネルギー電源として売り込むことを考えている。例えばNTT調布研修所に納入された機種は、災害で都市ガスの供給が断たれたときに、瞬時にしてLPG等の予備燃料に切り替わって運転を継続できるし、電池の反応過程で得られる1日当たり1,400リットルの純水は飲料水として使えるので、正に防災型のFCと言うことができる。更に同社はビールの廃液にメタン菌を入れてメタンガス燃料を造り、ビール工場のコジェネレーション設備として運用できる装置の実用化も進めている。(日刊工業新聞97年9月26日)
 電力業界はPAFC研究組合によって尼崎テクノランドで進められてきた5MW級PAFCプラントの開発研究の総合評価として、「大容量プラント技術の確立については見通しが得られたものの、目下のところ市場性および経済性の観点から導入の見通しが無く、大容量プラントの次期開発は行わない」との方針を固めたようである。本実証プラントは熱併給用都市型分散電源としての実用化を目標に、1995年2月から97年3月まで運転研究が行われ、最長連続運転529時間、累積運転6,410時間、総発電電力13,816kWh、送電端効率38.5%の実績を挙げている。(電力時事通信97年9月24日)
3. MCFCの開発
 ヨーロッパのthe German-Danish Direct Fuel Cell Consortium(ARGE DFC)によって開発された天然ガス利用MCFC実証プラントが、ドイツ最大のガス会社Ruhrgas AG(Dorsten)に設置、1997年8月16日電力系統への連系作業を完了した。いよいよ“Hot Module”と称される革新的なFCモジュールの機能を実証するための運転研究が始められる。この発表は同組織のリーダであるMTU Friedrichshaftenによって行われたが、このMTUはダイムラーベンツグループの子会社である。MTUおよびRuhrgasの他に、ドイツ最大の電力会社RWEやデンマークの電力会社Elkraft、それにデンマークのエンジニアリング会社で触媒反応を専門とするHaldor Topsoe等が同組織に参画している。このプラントの出力規模は公称280kWとなっているが、実際の出力は条件によって異なるかも知れない。当面1,500時間、あるいは3ヶ月程度の運転試験を経た後、次期ステップの計画が設定される予定である。(Hydrogen & Fuel Cell Letter, September 1997, Vol.XII/No.9, p5)
4. PEFC開発の新しい展開
 三洋電機は98年4月から民生用1kW(AC100V、50/60Hz)可搬型PEFC電源(商品名FCP−1000KH)の販売を開始すると発表した。燃料の水素は容積10リットルのボンベ(重量16kg)2本に蓄えられ、定格出力で約3時間の発電が可能である。同社が今までに開発した同種のPAFC電源に比べて容積が小さく、作動温度が80℃と低いので、起動時間は40秒で1分を切っている。FCは52枚のセルから構成され、その大きさは幅55cm、奥行き50cm,高さ100cm、又重量は約90kg(ボンベを除く)となっている。可動部分は空気を取り込むファン、および電解質に水を循環させるポンプのみのため、運転時には極めて静かである。災害時の緊急・非常用、コンピュータのバックアップ、アウトドアでのレジャー用等の電源として、初年度は1,000台、2000年度には3,000台の販売を想定しており、当面価格は100万円台前半の予定。(化学工業日報、日経産業新聞、産経新聞、日本経済新聞他97年9月25日)
5. PEFC用改質関連技術の開発動向
 三菱電機は97年9月11日、メタノール改質器の小型化に成功したと発表した。新しく開発された改質器の構造は、燃料改質部、改質反応熱供給部、メタノール・水の気化部、CO低減部の4つの構成要素を平板反応器に組み込んで積層した“平板積層構造”であり、各要素の動作温度を最適化して、最も効率の良い順序に積層されている。容積は幅290mm、奥行き290mm、高さ260mmで、従来の改質器に比べて10分の1の大きさにまで低減した。改質反応ではCO濃度を低減させるため、温度を2段階に分けてCOを選択酸化する方式を採用した結果、CO濃度を数ppmまで低減することに成功、30分以上の連続運転が可能となった。このメタノール改質器と出力1kW級PEFCと組み合わせて連系運転を行った結果、自立運転で1.15kWの電気出力が得られた。同社ではこれを「PEFCによる可搬・移動用電源の実用化に道を開く成果」と評価しており、2000年頃を目指して出力10kW級PEFC発電システムを開発する予定と伝えられる。(電気新聞97年9月12日)
 Argonne国立研究所は97年7月に開かれたDOEの会議およびIntersociety Energy Conversion Engineering Conference(Honolulu, 97年7月27日−8月1日)に於いて、初めてガソリンの部分酸化改質に関する実験データを発表した。この部分酸化改質はHydrogen Burner TechnologiesやArthur D. Littleによって研究されている高温での反応方式とは異なり、新しい触媒が使われている。実験ではガソリン(regular gasoline)によって50%以上の水素を含むガスを生成することに成功し、高オクタン価ガソリン(premium gasoline)による実験では、760℃において10%のCO2、18%のCO、3%のメタンを含む副生ガスを産出した。燃料として天然ガスを用いた場合には、680℃で72%の水素が、エタノールの場合は550℃で60%の水素が、そしてメタノールでは500℃において65%の水素を生成することができたと発表されている。現在触媒の種類や成分構成について明かすことはできないが、数日間の運転実験では、コークスの形成や燃料に含まれる硫黄分による触媒の劣化は全く観測されなかった。
 実験結果に基ずいて、Argonne研究所はベンチスケールの改質器を試作し運転実験を行ったが、これに続いて定格出力規模10kWの改質器のプロトタイプを製作と運転実験を行うことになっている。既に製作されたプロトタイプ改質器の大きさは、外径約3.4〜5インチ(8.6〜8.9cm)、長さ約20インチ(51cm)、重さは20ポンド(9kg)以下で、2.5リットルの触媒が装填される予定である。
 同研究所のgroup leader for transportation applications of fuel cellsであるRomesh Kumarは、「改質器の開発はメタノールを対象に2年前から始められたが、一部自動車産業の意向を受けて、昨年から対象をガソリンに移行した。我々のプロジェクトの目標は、シフト反応を含めた全改質システムを、10kWレベルで1年以内に実現することである」と述べている。自動車メーカのGMがこの研究に注目しており、General Motors R&D center(Warren, MI)は、Argonne方式で実用規模のテストを計画しているようである。(Hydrogen & fuel Cell Letter, September 1997 Vol.XII/No.9, p2)
 アメリカDOEとArthur D. Littleは、1997年10月21日に、Plug Power社およびLos Alamos National Laboratoryと共同で、ガソリン改質技術の開発に成功したと発表した。ガソリンから水素を生成する改質器をモジュール化して車上に搭載することにより、ガソリンを燃料とする初めてのFC電気自動車が誕生する。又この技術はnear-zero exhaust emissionで80mpg(33km/lit.)の高い燃費を持つ環境性に優れたガソリン自動車の実現を可能にする。更にこの自動車は2000億ドルの投資によって完成したガソリン供給パイプラインやインフラをそのまま利用できる点に於いて優れた長所があると見なされる。
 Arthur D. Little社はDOEの開発費援助による5カ年計画の成果として、この様な技術が開発されたと述べている。同社CEOのCharles R. LaMantiaは、「純水素を車搭する方式は、現実には必ずしも簡単ではないし、費用有効性の高い(cost effective)自動車システムを構成するとは思えない。又この改質方式はガソリン以外にエタノールの改質も可能であり、エタノールが穀物から生成されることを考えると、将来のFC自動車に広い展望を与える点に於いても意義を持つ。このような革新的技術のもたらす市場へのインパクトは膨大であり、新たな産業を創出する機会を与えることになろう。そして我々はこの技術の市場への浸透を加速させるために、ベンチャー資本と産業を積極的に求めていく」と語っている。(http://www.arthurdlittle.com/pressroom/press_release.htm)  
6. PEFCの市場分析
 PEFCは、自動車用電源のみならず、オンサイト電源、ピーク電源、家庭用電源としても重要視されており、北米では現在年間約6,000万ドルの研究開発費が投入されている。研究開発費の半分は自動車駆動用電源の開発に当てられ、残りの半分(全体の1/4)はバスの動力源、そして最後の1/4が定置用と軍事用電源の開発に配分されている。北米では少なくとも9社がPEFCの開発に携わっているが、その中で最も先行しているのはBallard Power Systems社である。同社はDaimler Benz社からの依頼で自動車動力用PEFCの開発を行っているが、それ以外にもGM、ホンダ、日産、Volkswargen、Volvoの各社にFCスタックを提供すると伝えられる。Ballard社は自動車用のみならず、天然ガスを燃料とする定置式PEFCの開発も目指しており、1997年には出力250kWプラントを製作する予定である。定置式は自動車の動力源用に比べてマーケットの規模は百分の1程度に過ぎないかも知れないが、実用化の時期は定置式の方が早いと思われる。PEFCは性能については既に完成の域に達しつつあると云えるが、商業化のためには尚一層のコストダウンが要求されている。定置式プラントの場合には、コスト目標として$1,500/kWの数字が挙げられているが、自動車用に対しては極めて厳しく、定置式のそれの1/15ないし1/30が目標値となっている。
7. FC自動車情報
 クライスラー社はADLの改質器とBallardのPEFCを組み合わせた出力30kWの自動車用FCエンジンを製作する契約を結んだと伝えられている。又Mechanical Technology Co.もFord社と共同で、出力50kWのFCエンジンを開発しようとしている。(NEF News, Vol.5, No.2, 19/9/1997, p14)
 ドイツのベンツや日本の自動車メーカは、純粋の電気自動車は特定用途の車に限られ、普及の本命はFC自動車と見ている。ベンツは液体のメタノールを改質する方式を指向しており、トヨタは水素吸蔵合金による水素ガスを燃料の中心とし、メタノール改質も睨んでいるようである。(日経産業新聞97年9月26日掲載:日経産業消費研究所によるテクノトレンド「21世紀の自動車」から抜粋)
 ダイムラーベンツのユルゲン・フンベルト乗用車担当代表取締役は97年10月23日、“究極のエコカー”と言われるFCEVを2005年までに日本市場を含む全世界の市場に投入する考えを明らかにした。ベンツはヨーロッパで発売を開始した小型車“Aクラス”の販売に努力を傾注しており、99年から2000年にかけて年間100万台の販売を見込んでいるが、2005年にはこの量販主力車種にFCを導入する予定である。(日本経済新聞97年10月23日) 
8. EPRIによるFCの市場性調査結果
 アメリカのEPRIは、電力事業者の観点から見たFCの市場分析と調査を実施し、その結果をEPRI Journal, May/June 1997に発表した。以下その要点について述べる。
 一般的には規制緩和によって競争が一段と厳しくなっているアメリカの電力会社にとって、極めて高効率なFCシステムでもない限り、コストにおける競争力の点からみて、FCを集中型大容量電源として採用する可能性は先ずないものと考えられる。PAFCよりも高温で動作し効率も高いMCFCは、発電規模も1ないし20MWと大きく、したがって分散型ベース電源としての適性を持っており、特に系統のない離島等のコジェネレーション用に期待される機種である。MCFCは大量生産になれば、コストは$1,500/kWまで低下すると思われるので、その場合には電力系統の支援用電源としても有効になろう。
 SOFCは2kW程度の家庭用電源から10ないし25MWの分散型電源までその用途は広く、又SOFCと小型ガスタービン(GT)を組み合わせれば一層高い効率が期待されるので、将来は系統支援用や産業用においては既存電源と競合可能になるものと思われる。例えばWH社は、SOFC−GTの効率は60〜70%に達し、年間数MWの規模で大量生産すれば1〜5MW級システムのコストは$1,000〜1,200/kWにまで下がるものと予測している。又Ztek社はEPRIとTVA(Tennessee Valley Authority)からの支援を受けて平板型SOFCの研究開発を行ってきたが、1998年には出力250kWのSOFC−GTユニットを製作し、2000年にはそれを商業化したいと考えている。EPRIは、今までSOFCは未だ試験段階にあり、そのコスト予測も難しいと考えていたが、最近の開発状況から見てここ数年内に実用化されそうだとの認識を持ち始めるようになった。アメリカに於けるSOFC−GTシステムの市場は、控えめに見ても今後10年間で500ないし600MWとの試算結果も出されており、最初の普及段階では工業団地に、次には公害規制の厳しい市街地での系統支援用に導入が進むものと予想している。したがってSOFC−GTのユーザは、地方の電力会社、あるいは送配電線の拡張が限られているものの電力需要の伸びの大きい地域での配電会社になるものと思われる。(NEF News, Vol.5, No.2, 19/9/1997, pp12-15)  
9. ヨーロッパからのニュース
 European Fuel Cell NEWSは、最近のFCに於ける開発成果を集約するために注目すべき重要な国際会議として、カナダのモントリオールで97年7月に開催された”NEW Materials for Fuel Cells and Mordern Battery Systems”、同じく7月にドイツで開かれた”SOFC−V”、イギリスのロンドンに於ける9月の”5th Grove Fuel Cell Symposium”、およびベルギーのブラッセルに於けるEuropean Energy Foundation主催の夕食討論会の4つを挙げている。この夕食討論会には、ヨーロッパ議会(European Parliament)、ヨーロッパ委員会(European Commission)、および産業界からの代表約50名が参加した。
 モントリオールの会議では、その話題の半分がPEFCの技術進歩に関する報告であり、特に最近達成された高い出力密度や新しい安価な電解質膜材料の報告が参加者の注目を集めたようである。オランダECNのDrs. Frank de Bruijnの紹介記事によると、会議の出席者は22ヶ国から187人であり、PEFCに関する話題は電解質膜、アノードおよびカソード触媒、DMFC、触媒特性、CO披毒、バイポーラプレート、および膜内水分制御の多岐に亘っていた。会議に於けるハイライトの第1は、Daimler-BenzとBallard Power Systemsの共同研究成果で、彼等はバイポーラプレート厚を半分にし、単セル出力性能を0.7A/cm2、0.7V(2.6気圧・水素/空気)に高めることによって出力密度1kW/lit. の新型スタックの実現に成功した。 Ballard社はBAM−3G膜について報告しているが、この新しい膜は400−500g/mol等量のSulfonated trifluorostyrenesから構成されており、Nafion膜に比べて優れた性能を示すとともに、連続運転によって14,000時間以上の耐久性が証明されたと発表している。
 European FC NEWSはその論説に於いて、PEFCの経済性について疑いを持つ人は、Johnson Matthey Technology CentreのT.R.Ralph氏の総説を読むべきであると述べている。 彼の論文は低コスト電解質膜の開発、新しいバイポーラプレートの設計、大量生産技術の導入等、スタックコストの低減に結びつく個々の技術について最近の進歩を詳細に紹介したものである。彼は最近の著しい技術の進歩にも係わらず、更にコスト低下を実現するための努力が必要であると強調しているが、この論文に述べられている最近のコストデータ、例えば膜についてはUS$12.3/kW、白金のUS$7.6/kW等を前提にすれば、スタック価格US$30/kWの実現さえ可能であるように思われる。
 先に述べた夕食討論会については、協賛団体であるWorld Fuel Cell CouncilのM.Nurdin氏によって紹介されているが、ここではヨーロッパのFC開発戦略について議論されたようである。“ヨーロッパは基礎研究に甘んじることなく、商業化のための実証研究により大きな努力を傾注しなければ、将来数十億ECUにも達する市場において競争力を失い、ひいては雇用機会を逸することになる”との危機感が表明された。又アメリカDOE長官の下院での証言「21世紀の初頭にもFCの売り上げは10億ドルを超え、10万人の新規雇用を創出する」および「2030年までに自動車の24%をFC車に置き換えることにより、年間8億4,900万バレルの石油が節減され、2010年から30年の20年間に23億トンのCO2と有害ガスの排出が削減される」とのDOE見解も引用されている。(European Fuel Cell NEWS, Vol.4, No.3, October 1997, p1, p16, p5)  
10. コジェネレーション導入実績
 日本コジェネレーションセンターの発表によると、97年3月末現在、わが国に導入されたコジェネレーション設備は民生用は1,314件、発電設備容量65万kW、産業用は967件、発電設備容量320万kWであり、合計2,281件、発電設備容量385万kWとなった。これはわが国に於ける全電源設備容量の約1.7%に相当する。又電事法改正によって初めて認められた1996年度IPPは、15社20件、発電設備容量で304万7千kWに達した。(日刊電気通信97年9月7日)

 ―― This edition is made up as of October 27, 1997――