第11号 MCFCによるコージェネ実証運転始まる
Arranged by T. HOMMA
1.SCDP (Santa Clara Demonstration Project)の実証運転を完了
2.世界最初のMCFCによる.ジェネレーションプラントの運転開始
3.その他のニュース
1.SCDP (Santa Clara Demonstration Project)の実証運転を完了
 SCDPの Steering Committee、DOE、およびERC(Energy Research Corporation)は、サンタ クララのMCFC実証プラントの運転研究を1997年3月3日を以て完了することに同意したと発表した。この発表は、97年2月7日に ERC当局によって行われた。1996年3月に運 転を開始してから約1年間、当初の運転予定時間よりも短いが、理由はプラントの支障によるの ではなく、予算の消化完了によるものと思われる。この運転終了によって、MW級MCFCプラ ントの設計、製作、建設およびfirst-of-a-kind実証試験研究を完全に修了したことになる。しかし、 今日までに系統連系運転時間は3600時間に達し、当初に設定した多くの主要な目標(significant milestones)は達成されたと評価している。
 Fuel Cell Engineering Corp、のD.R.Glen社長は、プラントの建設は予算以内に完了したが、予備テストに計画よりも長時間を要し、その結果運転の初期段階で多くの出費があったと述べた。またSteering Committeeの P.H・Eichenberger委員長は、今回の実証運転は、20倍のスケールアップを実現するという挑戦的な実験計画であったが、それによって貴重な経験が得られ、電力事業分野に於ける実証研究として成功であったと結んでいる。
 残る実証研究期間では、FCモジュールはERCに返却され、同社によってスタックやコンポーネントのテスト分析や解析的検証が行われることになろう。
 ERCは内部改質型MCFCの開発と商業化事業の他に、政府、電力会社、他企業と共同でニツケルー亜鉛電池の開発中である。(http://www.ercc.com/prs/scdp3.html)
2.世界最初のMCFCによる.ジェネレーションプラントの運転開始
 電気出力250 kWMCFCによる.ジェネレーションプラントが、1997年2月20日、 カリフォルニア州 San Diego郊外にあるMiramar Naval Air Stationに於いて運転を開始することになった。アメリカDOEとM C-Power社によって主催された祝賀式には、DOD、San Diego Gas and E1ectric社を始め、協力した民間セクターが参加した。プラントの占める面積は、テニスコート2面分よりも大きくはない。このMCFCプラントは外部改質型で、エネルギー変換系(内部マニフォールド型FCスタック)、燃料処理系、出力制御系が主要コンポーネントである。スタックはMC-Power社独特の設計によるもので、小容量スタックでの運転試験結果は良好であった。現時点ではパイプラインによって供給される天然ガスを燃料として用い、プラントは電力と共に蒸気を基地内に供給するが、将来このタイプのMC FCプラントは石炭ガスを燃料として利用することになる。プラントの予想される性能は、かなり楽観的と思われるが、総合発電効率(overall electrical system efficiency)で50%ないし60%、熱出力を更にボトミングサイクルに利用すれば、70%以上の効率が期待されると述べている。この数字は従来型火力発電のそれに比べて2倍の大きさである。
 開発費用の負担は以下のようになっている。技術開発に対してDODが$200万、DOEが技術開発支援とサイトに於けるスタックの建設に対する$1,720万を含めて、連邦政府と民間企業のコスト負担に占めるDOEの分担費は$3,100万となった。民間セクターは残りの$1,410万を負担するが、その大部分は San Diego Gas and Electric社が受け持っている。その他の出資企業は、Bechtel Corporation, the Institute of Gas Technology, Stewart& Stevenson, the Gas Research Institute,the Electric Power Research Instituteである。 (DOE Announcement of Santa Clara ERC Fuel Cell, http://www.fe.doe.gov/techline/tl_mcfc.html)
3.その他のニュース
 Solid Ionomer Alkaline膜を使った高効率単一ユニット再生型FCが、ClevelandにあるNASAの Lewis Research Centerにおいて試作され、その性能が試験された。F Cおよび水電解の両方向に使用可能であり、電流密度40 mA/cm2において54%のサイクル効率(round trip efficiency)が確認された。 (Electric Vehicle Network,fax service Dec.19,1996)
・Northwestern Universityの研究者は、600ないし650℃の比較的低温で、比較的高い出力密 度を持つSOFCを開発したと発表した。それによると温度600℃における出力密度は 0.3W/cm2で、温度を650℃にすると出力密度は0.48W/cm2にまで上昇した。(Electric Vehicle Network, Dec、20, 1996)
・クリーン自動車の代表としてしばしば電気自動車が挙げられるが、ドイツの教育科学・研究技 術省がフォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、アダム・オペル、BMWの各社と行った調査 実験は、「電気自動車のエネルギー消費量はガソリン車やディーゼル車に比べて大きく、環境に与える害も大きい」との結論を示している。すなわち、電気自動車が1km走行するのに要するエネルギーは、走行距離の大きい車でガソリン車やディーゼル車のより50%多く、走行距離の小さい車でも40増となる。この理由として、ドイツにおいては充電に消費される電力の3分の2が石炭や石油火力発電によるものであり、又重いバッテリを搭載するために車の走行距離当たりエネルギー消費量が増え、かつバッテリが時間と共に放電することが挙げられている。その結果CO2等環境有害物質の排出量も増えることになる。ベルリンの連邦環境庁は「電気自動車は繁華街等ではメリットがあるが、総合的には費用面でもガソリン車やディーゼル車の排ガスを抑制する方が賢明」と述べている。(日経産業新聞97年2月25日)

 ―― This edition is made up as of Feb.26,1997――