第06号 (Oct.7,1996) −ガス事業者によるフィールドテスト実績−(文字認識データ)

Arranged by T. HOMMA
1.PAFCフィールドテスト記録
2.ガス協会の重点施策
3.石油業界に開発計画
4.MCFC開発計画と動向
5.PEFCとFC自動車の開発計画と動向
6.燃料合成と改質システム
7.新エネルギーの開発動向
8.電気自動車と水素自動車
* A POSTER COLUMN

1. PAFCフィールドテスト記録
(1)最長連続運転時間
・東京ガスが東京都環境科学研究所に設置し、1995年5月に運転を開始したONSI製出力200kWPC25Aは、96年8月24日、連続運転時間においてアメリカSouthern California Gas社の持つ世界最長記録8,996時間を更新した。96年8月31日現在では9,180時間に達し、なお記録を更新中であるが、同プラントは9月14日の定期点検まで運転を継続する予定である。  その他日本のガス業界によるPAFC実証運転に於いて、96年8月末現在6,000時間以上の最長連続運転時間記録を持つプラントを下表に示す。
事業者 設置場所容量
(kW)
メーカ運転開始
(年月)
累積運転時間
(hrs)
最長連続運転時間
(hrs)
備考
東ガス東京都環境科学研200 ONSI1995. 059,797 9.180 更新中
大ガス NEXT 21100 富士電機1993.921,0606,976
大ガスRITE50富士電機1993.1021,9776,433
東ガスTG袖ヶ浦工場200ONSI1993.0621,7366,325

(化学工業日報96年8月30日、日刊電気通信96年9月10日)

(2)累積運転時間
・大阪ガスと竹中工務店が、大阪梅田センタービルで運転中のONSI製200kWPAFCが、国内では始めて累積運転で3万時間を超え、96年8月末現在で30,248時間を記録した。同プラントは1994年10月に運転を始めたが、阪神大震災による停止期間等を除くと、稼働率95%で出力は安定しており、上記東京ガスによる実績も勘案して、関係者はPAFCについては4万時間の耐久性に見を透しが得られたと評価している。  その他96年8月末現在で23,000時間以上の累積運転時間を記録しているのは、東京イースト21に設置されたONSI製200kW(東京ガス)の24,363時間、TG千住営業技術センターに設置されたONSI製200kW(東ガス)の23,886時間、大津タイヤ泉大津工場にある同じくONSI製200kW(大阪ガス)の23,539時間等、全部で9基に達する。詳細は次表の通りである。
事業者設置場所容量
(kW)
メーカ運転開始
(年月)
累積運転
時間(hrs)
最長連続運転
時間(hrs)
備考
大ガス梅田センタービル200 ONSI1994.1030,2485,476
東ガス東京イースト21200ONSI1992.1124,363 4,282連続記録更新中
東ガスTG千住営業技術センター200ONSI1992.1223,8864,849
大ガス大津タイヤ泉大津工場200ONSI1993.0623,5393,161
東ガス東京ガス田町200ONSI1992.1123,2624,213
大ガスNTT関西NWセンター200ONSI1993.0223,203 2,761
大ガス酉島FCセンター200ONSI1992.0723,042 3,008
大ガス阪急電鉄本社2号50富士電機1993.0323,020 2,114新型セル
大ガスコープ姫路白浜100富士電機1993.0523,013 3,427新型セル

(日本工業新聞96年9月3日、日刊電気通信9月10日)

(3)価格
 東芝はONSI社を通して定格200kWPAFCユニットの量産に乗り出した。1kW当たり価格は約40万円であるが、今後年間100万台程度の販売が確保できれば、価格は20万円/kWまで下がり得ると予測している。 又東京ガスはONSI社製PC25Cを2台購入したが、その1台当たり価格は6千万円(30万円/kW)で、石炭火力発電所の建設単価と同等である。(日本経済新聞96年9月30日)  ・東芝はFCを自社工場内に積極的に導入する方針を決め、96年10月同社府中工場で運転を開始したが、更に来年2ないし3月を目途に原子力事業部の磯子エンジニアリングセンター(横浜市)、同京浜事業所(同)等、国内の重電関連工場に順次導入する予定である。導入する機種は、ONSI社のPC25Cで、同機は96年度36台、2000年度には200台の生産を予定している。価格はkW当たり20万円台を目標としている。 (日経産業新聞96年10月4日)

2. ガス協会の重点施策
・規制緩和の流れの中にあって、エネルギー産業界の激しい競争を生き抜くために、日本ガス協会は96年度を「経営効率化による事業体質強化の年」と位置ずけ、ガス事業者が取り組むべき重点施策を策定した。この重点施策には、経営効率化や都市ガスの高カロリー化計画等に加えて“技術開発基本計画”が含まれている。技術開発の重点項目としては、天然ガスの用途拡大を図るためのコジェネレーション、燃料電池、ガス冷房、天然ガス自動車の実用化等、燃料電池関係者にとっても関心の深い課題が多く挙げられている。(日刊工業新聞96年9月11日) 

・ドイツのハンブルグにある電力会社HEW及びガス会社HGWは共同で、FCテストプラントの建設を進めている。同プラントは出力200kW(本NEWS No.5で既報のPC25Cと思われる)で、はハンブルグの中心部に熱と電力を供給するコジェネレーションシステムとして、99年から実証運転に入る予定である。(日刊工業新聞96年9月16日)

3. 石油業界に開発計画
・日本石油ガス社は、1991年から親会社の日本石油と共同で燃料電池の開発を進めてきたが、今後は東芝および国際環境技術移転センターと共同で、液化石油ガス(LPG)を燃料とするFCの開発に乗り出すことになった。今年度から3年間新潟県でONSI社製PC25Cを使った実証実験を行った後、99年には出力200kWで4万時間の耐久性を持つ実用機を製作する計画で、研究開発費は3年間で3億2000万円(半額国庫補助)を予定している。メタンに比べて炭素の含有量が多いLPGの改質が技術上の問題点であり、化学反応を促進させる触媒の開発が課題となる。LPG用FCが実用化されれば、都市ガスのない地域に於ける設置が可能になり、FCの普及に大きく貢献することになろう。(日経産業新聞96年9月23日、化学工業日報同年9月26日)

4. MCFC開発計画と動向
・工業技術院は平成12年度(2000年度)以降におけるMCFCの開発計画について、MCFCとガスタービンを組み合わせたハイブリッドプラントの実証試験を行う方向で検討を始めた模様。(電力時事通信96年9月11日)

・石炭利用総合センター(CCUJ)と電源開発は、昨年行った石炭ガス化MCFC複合発電の設計検討結果を発表した。各種発電コンポーネントの出力分布および効率は下表に示す通りで、システムの最適化検討の結果、生成ガスあるいはアノード排ガスの一部をガスタービン入口温度上昇のための補助燃料として用いる方式が採用された。
            
発電端出力   616,600kW発電端効率 59.6%
MCFC       261,800kW
ガスタービン  152,200kW
蒸気タービン  199,500kW
膨張タービン    3,100kW
送電端出力   551,300kW送電端効率 53.3%
補機動力     65,300kW
(電力時事通信96年9月30日)  

・電力中央研究所は、MCFCスタック内部を電気回路でモデル化することにより、スタック内部温度、電流、および電圧分布を把拍するためのシミュレーションモデルを開発しし、実験結果の解析によってその有効性を確認した。一例としてこのモデルを100kW級発電実験の解析に適用した結果、検出された異常電圧分布が、部分的に発生した内部抵抗の上昇によって説明されることが判明した。(日刊電気通信96年9月30日)

5. PEFCとFC自動車の開発計画と動向
・通産省(機械情報産業局自動車課)は平成9年度から7カ年計画で超クリーンエネルギー自動車の開発に着手することになった。この超クリーンエネルギー自動車の開発プロジェクトは、電気、天然ガス、メタノール等を燃料とし、PEFC、リチュウムイオン電池、デイーゼルエンジン、ガスタービン等の中から複数の動力源を組合せ、エネルギー効率が高く環境保全に適した自動車の開発を目的とするものである。最終年度に当たる平成15年には、モデル車の走行試験とそれによる評価を予定している。(電力時事通信96年8月30日)

・トヨタ自動車は、わが国で始めてPEFCを用いたFC自動車Fuel Cell EV(FCEV)を開発し、その成果を10月4日に記者会見で発表した。96年10月13日から大阪で開催される第13回電気自動車シンポジューム(EVS−13)では、2件の論文を発表すると共に試作車の走行デモと展示を行う。このFCEVの最大の特徴は、同社が工技院物質工研の技術指導を受けて開発した高性能のチタン系水素吸蔵合金を、水素の車内貯蔵装置として用いたことで、1回の水素充填での走行可能な距離は約250kmに達する。水素は水素ガスボンベ等からワンタッチコネクターで充填できるが、その時間は20分程度で、この点に於いても電気自動車に対して有利になっている。なお常温・常圧下での水素貯蔵力は265リットルである。同社ではFC自動車を21世紀初めまでには実用化したいと言っている。(読売、毎日、日本経済、産経、東京、日刊工業、日刊自動車新聞96年10月6日、日経産業新聞同7日) なお、トヨタ社からの資料によると、仕様および性能は以下の通り。
 ベース車両:RAV4L5、全長×全幅×全高: 3,975×1,695×1,635 mm  最高速度:100km/h以上、水素一充填走行距離:250km  FCの種類:PEFC、定格出力:20kW、重量:120kg、  FCの全長×全幅×全高 : 1,050×500×230 mm  駆動用モータ;永久磁石式・同期型、最高出力:45kW、最大トルク:165Nm  水素貯蔵装置の種類:水素吸蔵合金型、装置容積:700×450×170mm、  水素吸蔵合金の重量:100kg、水素貯蔵容量:約2kg
   (以上トヨタ社の発表資料から)

6. 燃料合成と改質システム
・電力中央研究所は、天然ガス、石炭等の化石燃料資源から、燃料電池用燃料としても有効なメタノールを、低コストで大量に合成するための技術を開発した(同NEWS No.5で既報)。同研究所は銅クロマイト(CuCr2O4)とアルコキシド(CH3OK等)を触媒とする低温メタノール合成(373K程度)において、銅クロマイトの替わりに酸化銅(CuO)と酸化クロム(Cr2O3)の物理混合物を用いても効率的なメタノール合成が可能であることを明らかにした。物理混合法は従来の銅クロマイト製造法よりも簡易に触媒の調整が可能であり、実用性が高いと評価されている。なお基本となる反応式は CH3OH+CO→HCOOCH3(触媒:アルコキシド) HCOOCH3+2H2→2CH3OH(触媒:銅クロマイト) HCOOCH3;ギ酸メチル であり、総括反応は  2H2+CO→CH3OH である。(電力中研:研究年報1996年版p94) 

7. 電気自動車と水素自動車
・ソニー社製の寿命1200サイクル、重量エネルギー密度100Wh/kg、出力密度300W/kgの性能を持つリチウム2次電池が、日産の最新車種“プレーリージョイEV”に搭載され、今年秋にはアメリカ・カリフォルニア州で、来年春には日本に於いて商品化される予定である。(電力時事通信96年9月4日)

・環境庁国立環境研究所はダイハツ工業や日本電池等民間12社と協力して小型で高性能な電気自動車“ルシオール”(フランス語で蛍を意味する)を開発し、96年9月25日につくば市で試乗会を行った。この電気自動車は前後に2人乗りで、全長が3.3m、車幅は1.2m、車高は1.3m、重さ910kgで、最高時速130km、鉛蓄電池を使用し、1回の充電当たり走行距離は140kmである。タイヤの駆動部分を小さくしたり、蓄電池を車体の底部に入れるなど、軽量化と省スペース化を進めた点に特徴がある。火力発電所で発電したとして燃費を計算すると、原油1リットル当たり走行距離は50kmに相当する。上記研究所では「部品の点数がガソリン車に比べてかなり少ないため、大量生産すればコストは軽自動車と同程度になる」と述べている。開発費は3年間で2億5000万円、エコビークルプロジェクトの推進責任者は清水浩国立環境研究所総合研究官である。(日経産業新聞96年9月26日)

・アメリカのLawrence Livermore国立研究所が、経済的要素も加味した水素燃料自動車の将来性についてその分析結果を発表した。それによると、水素が一般的な燃料として社会に登場するためには、なお技術的・社会的に克服しなければならない問題が多く残されているとした上で、オフピークの電力を利用する小型水素製造ユニット、車内で蓄電池を充電するための小型内燃エンジン、それに蓄電池を備えた水素燃料ハイブリッド電気自動車(HEV)が、最も有望な自動車用動力システムになり得ると評価している。(NEDO:新エネルギー海外情報、1996−8)

8. 新エネルギーの開発動向
・中央電力協議会のまとめによると、現状での太陽光発電の建設単価は110万円/kW程度、発電単価は100円/kWh程度で、量産化が進んだとして2000年初頭での発電単価は40円台になる見通しである。又年間利用率は12%程度と低いので、全国の戸建て住宅の半数に出力3kWの太陽電池を設置したとしても、2030年に於ける年間電力需要量(推定1兆4千億kWh)の3%を賄うに過ぎないと述べている。現在余剰電力の電力会社による買い取り制度が実施されているが、96年3月末時点での電力10社による余剰電力購入量は1,437件、6,113kW(設備)になっている。(電気新聞96年9月17日)

・太陽光発電、廃棄物発電、燃料電池等、地熱と原子力を除く新エネルギーの導入は、着実に進んではいるものの、新エネルギー導入大綱における目標値と照らし合わせると必ずしも満足出来る現状には無い。94年度の導入実績は1次エネルギー総供給量の約1%強(約680万kl)であり、早急に普及が進んでいる太陽光発電でも、2000年の目標値40万kWを達成するためには相当な努力を要すると思われる。主な新エネルギーの導入実績および見通しを下表に示す。 新エネルギー種目  1992年度  導入実績  1994年度  導入実績 年間伸び率  (%)   2000年度   導入目標 太陽光発電(万kW)     1.5 2.7 34.2 40 廃棄物発電(万kW) 47 64 16.7 200 ごみ処理廃熱利用 (万kl) 3.8 3.8 0.0 7 コジェネレーション(万kW) 277 347 11.9 542 燃料電池(万kW)* 1 2.1 44.9 20 クリーン自動車   (万台) 0.2 0.32 26.5 48.8 * 燃料電池の内、コジェネ用はコジェネレーションの内数として計上してある (化学工業日報96年9月20日) ・コジェネ研の調査によれば、96年9月末現在で国内コジェネレーション普及台数は2193件、発電容量は3,680,886kWとなった。熱機関別ではデイーゼルエンジンの件数が一番多く1,195件、1,604,875kWであり、出力ではガスタービンが最大で、1,768,897kWである。ここ半年間で110件、237,944kW増加した。(電力時事通信96年10月7日)
                           ― This Version is made up as of Oct.7, 1996 ―
* A POSTER COLUMN
第1回 トヨタ先端科学技術研究助成プログラム

・トヨタ自動車(株)は、先端科学技術研究を行う大学・研究所の研究者から、「環境、エネルギー、安全」を中心とする研究課題を広く公募し、その研究活動に対して研究費を助成する制度を発足させた。エネルギーのテーマの中には、燃料電池がトップに挙げられている。助成金額は総額3,000万円程度、最高限度額は300万円で、第1回(平成8年)は10件程度を選定する。   応募〆切:平成8年11月20日   照会先:トヨタ先端科学技術助成プログラム事務局       TEL.(0565)23-6302, FAX.(0565)23-5744 E-mail:suganuma@mother.ee.toyota.co.jp 

FCDIC学術会員制度の発足
・FCDICでは、法人会員や海外会員に加えて大学(高専を含む)および国公立研究者を対象とした個人資格の学術会員制度を設けることになり(平成8年度総会)、幹事会において会費や入会条件等についての具体的検討を始めている。現在の特別会員制度に一部置き換わる性格のもので、広く募集する予定である。なおこれに伴ってFCDICの会則も改正する必要があり、常任幹事会で準備を進めている。

第3回新エネルギー変換とシステムに関する国際会議の案内

(The 3rd International Conference on New Energy Systems and Conversions) Russia共和国Tatarstan国、Kazan市の主要科学機関とIAHE, NESSの共催によりMoscowからKazanまでのボルガ河のボート上を会議場として、1997年9月8日から13日まで開催されます。希望者にはFirst Announcementをお送りします。(FCDIC)  アブストラクト〆切;1996年10月30日  1次選考結果の通知;1996年11月30日  論文提出〆切;1997年2月15日  最終選考結果の通知;1997年3月15日  参加費;一般US$500;1997年4月30日以前、US$550;5月1日以降      学生US$300:1997年4月30日以前、US$350;5月1日以降  日本代表;太田時男前横浜国大学長 

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* A QUESTIONNAIRE AND COMMENT COLUMN
         Your comment would be appreciated. E-mail:fcdic@po.iijnet.or.jp Fax(03)3296-0936:FCDIC, T.HOMMA
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