第187号 停電時でも運転を継続するエネファーム
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.FC要素技術開発
4.SOFC開発研究の成果
5.エネファーム事業展開
6.次世代エコカー最前線
7.新型FCの研究開発
8.携帯用FCの開発と事業展開
9.災害に強い給油所の展開
10.水素生成・精製の研究開発
11.FC・水素関連計測機器の開発と事業展開
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
 日米を含む環太平洋の21カ国・地域でつくるAPECは10〜11日、アメリカ・ハワイで外相と貿易担当相による閣僚会議を開く。事前の実務者会合で日本やアメリカは太陽光発電やFCなど環境関連機器の関税を2015年までに5%以下に下げることを提案、関税下げに慎重な中国や新興国との調整が続いている。APEC域内でも中国はFCの輸入に14%、インドネシアは10%の関税かけており、風力発電やスマートメーターに関税を課す国もある。(日本経済新聞11年11月10日、読売新聞11月11日)

2.地方自治体による施策
(1)埼玉県さいたま市
 さいたま市はEVやFCVの普及に向けトヨタ自動車と提携する。市が自動車メーカーなどと進める"E-KIZUNAプロジェクト"にトヨタが参加する。10月27日に協定書を締結する。市はEV用充電器の設置や、EV購入補助の導入、公用車のEVへの転換などを進めてきた。FCVなどの分野でも水素ステーションの設置など普及に向けて協力する。(日経産業新聞11年10月26日、日本経済、日刊工業、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ10月28日)
 さいたま市は11月15日、"第2回E-KIZUNAサミット"をさいたま市のホテルで開催した。トヨタ自動車、日産自動車など12の企業と青森市、仙台市など22の自治体が参加した。(日刊工業新聞11年11月16日)

(2)東京都千代田区
 千代田区は10月26日、温暖化対策のために推進中の区内全域の既存施設を省エネ化するグリーンストック作戦の説明会を開催、区民約40人が参加した。同作戦は、省エネ診断の受診やその結果を受け設備・運用改善を図ってもらうことが目標で、太陽光発電やFCシステム、LED照明などの機器の導入が必要と認定された場合は設備改修に夫々一定の額を補助する。(日刊建設新聞11年10月28日)

(3)愛知県豊田市
 豊田市は、環境・交通・産業の取り組みを加速するため、国に「地域活性化総合特区」を申請した。次世代自動車やスマートグリッドなどを活用した省エネ技術の開発促進や行政による普及拡大、FCバスの導入・高齢者の運転支援など安全・快適な交通やエネルギー技術を組み合わせた環境未来都市を目指す。(日刊自動車新聞11年11月9日)

3.FC要素技術開発
(1)山梨大学
 山梨大の原本教授らは、温度が―30℃の氷点下でもPEFCを動作させる電解質材料を開発した。電解質は長さが約2.5nmの棒状をした有機分子が数多く集合したもので、電圧をかけると水素イオンが分子の間を移動する。従来の電解質は水に溶けた有機分子が水素イオンを運ぶので、水が凍ると有機分子も動かず、水素イオンも移動しなかった。(日本経済新聞11年10月31日)

(2)物質・材料研究機構
 物質・材料研究機構は、FCの耐久性向上を目指し、還元型酸化チタンの合成技術確立に注力する。二酸化チタンの形状・サイズを維持したまま、結晶構造のみを還元型チタン酸化物に変化させることに成功した。二酸化チタンが持つナノ構造を保つために、水素化カルシウムを用いた。この還元型チタン酸化物は、炭素材料に比べ高い電子伝導性を有することから、FC用電極材料向けとして研究を加速する。FCの高性能化には、高い耐食性とナノ構造の大きな表面積を持つ電極材料が不可欠である。この電極は一般に炭素材料が使われているが、還元型チタン酸化物は炭素材料よりも化学的な耐久性が高く、高い伝導性や可視光の吸収特性を持つことで知られている。しかし、既存の合成では1000℃程度で二酸化チタンの還元処理を行うことから、粒子が肥大化し、ナノ構造を得ることが難しいといった課題があった。そこで同機構では、二酸化チタンのナノ構造体を崩すことなく、低い温度で酸素を抜く手法に着目、低温でも強い還元力を有する水素化カルシウムを用いることで、ルチル型の結晶構造を持つ二酸化チタン材料の還元反応の検討を行った。その結果、結晶構造のみを還元型チタン酸化物に変化させることに成功した。又化学的な耐久性に於いて重要となる表面状態は、二酸化チタンの自然酸化膜で覆われていることを確認し、内部の還元型酸化物も安定的に維持されているという。物材機構では今後、同手法で得られた還元型チタン酸化物を用いた電極材料の実証実験を行う方針で、FCの高性能化、高耐久性を目指すとしている。(化学工業日報11年11月4日)

(3)サイベックコーポレーションなど
 サイベックコーポレーション(塩尻市)、サン工業(伊那市)、IHIシバウラ(松本市)などでつくるコンソーシアムは11月18日、産業用FCの実証実験をサン工業のめっき処理工場で開始したと発表した。重量は従来のFCの4割で、生産コストも8割程に削減したという。年末までに実施して発電効率や排熱効率などのデータを蓄積し、2015年を目途に実用化を目指す。コンソーシアムが開発したFCは主要部品のセパレータがチタン製なのが特徴。従来のカーボン製に比べ、セパレータの生産コストは1/10で、FC全体では2割のコスト削減が可能になるという。今後、実証実験の結果を基に早期実用化を目指す。蓄電池などを組み合わせ、自動車やトラクターなどで使用することも視野に研究を続ける。IHIシバウラは「今後発電量を10kWに高めたい」としている。(信濃毎日新聞11年11月19日)

4.SOFC開発研究の成果
 物質・材料研究機構のナノ材料科学環境拠点の森リーダーらの研究グループは、SOFCの耐久性に影響を与える電解質中の欠陥構造がダンベル状になっているとする新たなモデルを発表した。このモデルを使えば性能劣化のメカニズムをうまく説明でき、SOFCの長期安定性を実現する新規材料の開発につながる可能性があるという。SOFCは電解質中を酸化物イオンが通ることによって発電するが、長期間稼働すると、酸化物イオンを通し易い結晶構造から、通しにくい結晶構造に変化するため、性能が劣化するとされる。今回、高性能な試料と性能が大きく低下した試料について、結晶中の欠陥構造の電子顕微鏡観察とシミュレーション解析を行い、三角形の欠陥構造がダンベル状に重なっているとする新たなモデルを構築した。ダンベルが連なるように成長すると、酸化物イオンを通しにくい結晶構造の特徴に合致するようになるという。従来は欠陥構造が真っ直ぐな鎖状になっていると考えられていたが、このモデルだと結晶構造が変化する現象が説明できなかった。研究グループによると、欠陥構造を結晶の中に導入するために用いられる添加剤が、原子レベルでわずかに不均一に分布することでダンベル状の欠陥構造が形成される。このため、製品性能にばらつきが生じ、信頼性の確保が難しくなっているという。(日刊工業新聞11年11月18日)

5.エネファーム事業展開
(1)日本ガス協会
 日本ガス協会の鳥原会長(東京ガス会長)が10月27日、2030年に向けた天然ガス関連機器の普及目標を公表した。コジェネを現在の460万kWから3000万kWに、ガス空調を1300万冷凍トンから2600万(同)に、家庭用FCを2万台から500万台まで拡大、これにより国内の年間電力総需要の15%程度を賄い、ピーク電力を1300万kWカットできると試算した。(日刊工業新聞11年10月28日)

(2)JX日鉱日石エネルギー、へいせい、西部ガスエネルギー
 JX日鉱日石エネルギー、へいせい(糸島市)、西部ガスエネルギーは10月28日、福岡県糸島市の福岡水素タウン内にスマートハウスを開設すると発表した。SOFC型エネファーム、太陽電池、蓄電システム、エネルギー表示モニターを設置、通常時はエネファーム、太陽光、系統電力の順に電力を使用するが、停電時は系統電力から自立、使用する電力量に応じてエネファーム、蓄電池の順に家庭内で電力を供給する。実証実験の成果を活用し、来年夏の提供開始を目指す。(化学工業日報11年10月31日、日経産業新聞11月4日、西日本新聞11月8日)

(3)東京ガス
 東京ガスは11月2日、正興電機製作所と共同で停電時でも運転が継続するエネファームを使った発電システムを開発したと発表した。エネファームは発電のために一定の電力が必要で、東日本大震災発生時には計画停電などにより発電が停止した。東ガスなどは外付けの蓄電池を組み合わせエネファームによる発電を続けることを可能にした。2012年2月から販売を開始する。新システムの補助金などを含んだ実質的な購入負担は約300万円。既存のエネファームのそばに後付けで設置することもできる。停電など非常時にでも、照明やテレビ、冷蔵庫など家庭で必要な最低限の電気を24時間供給できる。(読売、朝日、日本経済、電気、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ11年11月3日、日経産業新聞11月4日)
 東京ガスは11月15日、2020年度を目標とした長期計画を発表した。電力不足に対応するため、国内の火力発電事業を最大500万kWと現在の2.5倍に拡大する。又天然ガスを燃料とするエネファームの累積設置台数を30万台と33倍に増やす目標を掲げた。(読売、電気、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ11年11月16日、建設通信新聞11月17日)

(4)大和ハウス工業
 大和ハウス工業が設計・施工を手掛けた山谷産業(金沢市)の新社屋"Ambitious Hill"が石川県野々市町に完成した。エネファーム、太陽光発電、風力発電を備えた低環境負荷・オフィスビルで、建築環境総合性能評価システムでSランクの評価を受けた。(日刊建設工業、北国新聞11年11月10日、化学工業日報11月11日)

6.次世代エコカー最前線
(1)日産自動車
 日産自動車は10月24日、家庭用電源で充電できるPHVを15年に発売すると発表した。日本と中国、欧米市場で販売する車種の平均燃費を16年度までに05年比で35%改善することを柱とした"中期環境行動計画"を盛り込んだ。先行するEVではリーフに加え、親会社のルノーとともに7車種を追加投入し、16年度までに累計150万台を販売する。又提携しているダイムラーとはFCVの共同開発を進める。(読売、朝日、毎日、日本経済、日刊工業、日刊自動車、東京、神奈川、静岡、中日、西日本新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報、河北新報11年10月25日)
 日産自動車は所定の場所で乗り捨てると自動で駐車・充電するEV"PIVO-3"を、12月に開催される東京モーターショウで披露する。運転終了後、自動運転に切り替わって専用駐車場に向かい、駐車・充電する。用事が終わって所定の位置からスマートフォンで呼び出すと自動で出てくる。インホイールモータを採用し、都市型EVとして小回りが利く設計にした。タイヤが通常より5割近く広い75度まで回転できるので、幅が4mの狭い道路でも簡単にUターンできる。前1人、後ろ2人の3人乗りのコンパクトなデザイン。(日本経済新聞11年11月9日)

(2)ホンダ
 ホンダは11月8日、中国広東省広州市でEVの実証実験を始めた。フィットをベースとした車両を使い、中国の都市環境に合った性能や充電インフラのあり方を探る。成果を2012年にも広州汽車集団と合弁生産を開始するEVなどに反映する。実験車両は1回の充電で150km走行、充電時間は220Vの電源で6時間以下という。(日本経済新聞11年11月9日)

(3)スズキ
 スズキは第42回東京モーターショウで次世代小型車"レジーナ"を含め23台を出展する。全長2.5mの2人乗りEV"キュー・コンセプト"は半径10km程度の生活圏での移動用として提案。主力車"スイフト"をベースに、電気モーターと電気を供給する発電用エンジンを搭載するスイフトEVハイブリッドやFCスクーター"バーグマン フューエルセル スクーター"なども展示する。(日本経済、静岡新聞11年11月9日)

(4)三菱自動車
 三菱自動車は11月9日、東京モーターショウの出展概要を発表した。世界戦略に位置付ける新コンパクトカーとしての"ミラージュ"の他、独自に開発したEV派生型PHV"ミツビシ・コンセプトPX-MiEVU"を初公開する。PX-MiEVUはミドルクラス以上の乗用車を想定した環境対応型スポーツユーティリティビークルで、バッテリー走行モードや走行中に電力を蓄えることができるバッテリー充電モードなどの設定が可能、かつ家庭への電力供給にも対応する。電力走行とハイブリッド走行時の燃料消費率を複合した複合燃料消費率で60km/Lを目指す。(日刊自動車新聞11年11月10日)
 三菱自動車はEVをスズキにOEM供給する方針を固めた。供給するのは三菱自のEV第2弾となる軽商用車"MINICAB-MiEV"。近く両社で最終合意する見通しである。三菱自は宅配会社などの物流車両としてのニーズを見込んでおり、11年度の生産は4千台程度の計画。スズキは自社ブランド車として自社販売網に供給、動向を見ながら販売台数を拡大していく模様である。(日本経済新聞11年11月22日)

(5)ダイハツ
 ダイハツ工業は11月9日、東京モーターショウに出展する"D-X(デイークロス)"などコンセプトカー3車種を発表した。他に出展するのは、2人乗りEV"PICO"とFCV"FC商CASE"。PICOは街中での短距離移動や宅配ビジネス向けの新しい乗り物として提案する。FCVのFCは液体燃料の水加ヒドラジンで発電し、床下にFCシステムを積むので車体設計の自由度が高まり商用に向くと云う。(朝日、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ11年11月10日、日経産業新聞11月11日)

(6)小型電動車の実証実験
 2人乗りの小型電動車の実証実験が横浜市内で行われている。地域限定で住民らが車を共同利用し、CO削減効果の他、高齢者や主婦などの利用実態を調査する。観光地を巡る手段としての有効性を調べ、同市の政策に反映させる考え。同様の実験を青森県と福岡県でも実施の予定。前幅119cmとコンパクトな同車両は日産自動車が開発。「簡単に運転ができ小回りがきく。周辺は坂が多いので助かる」と試乗体験者は述べている。(日本経済新聞11年11月16日)

(7)トヨタ自動車
 トヨタ自動車は11月15日、東京モーターショウの出展概要を発表した。FCV"FCV-R"や都市型EV"FT-EVV"を初めて公開する他、2012年初めに市販予定の"プリウスPHV"を日本初公開、又コンパクトクラスのHVモデル"AQUA"も世界初公開する。"FCV-R"は15年頃からの市場導入に向け、実用性の高いFCV専用車として提案する。(産経、日本経済、日経産業、日刊自動車、東京、中日新聞、フジサンケイビジネスアイ11年11月16日)

(8)第42回東京モーターショウにおける海外企業の出展
 アウデイージャパンは開発中のEV"A1e-tron"を出展する。同社は11月17日、アジア地域で初めて神奈川県内で公開し、走行性能の高いEVであることをPRした。海外メーカーで国内最大シェアを誇るVWも、EVマイクロバスや主力車ゴルフを基にしたEVを持ちこむ。メルセデスベンツは、2025年以降の量産化を目指すというFCV"F125!"や、12年に販売予定の小型車"スマート"のEVを展示の目玉に位置付ける。(北海道新聞11年11月18日)

(9)積水ハウス
 積水ハウスは11月18日、東京モーターショウの出展概要を発表した。同社の太陽光発電、FC、蓄電池の3電池システム"グリーンファーストハイブリッド"を搭載した住宅に、EVを組み合わせた次世代型スマートハウスを公開する。又家と車のエネルギーコストの抑制に役立つHEMSも展示する。(日刊自動車新聞11年11月19日)

(10)NTN
 NTNは次世代自動車EVやFCVの駆動システムについて、日本や中国系の自動車メーカーと供給に向けた交渉に入った。既に複数社と評価試験を始めている。タイヤを取り付けるインホイールモーターを内蔵し4輪夫々を独立駆動させる"インホイールモーターシステム"など複数の製品について2〜3年内の量産化を見込む。(日刊工業新聞11年11月21日)

7.新型FCの研究開発
(1)微生物FC
 広島大学大学院の日比野准教授の研究室が、川や海のヘドロを微生物が分解する仕組みを利用した微生物FCの研究を進めている。このシステムを使い、京橋川右岸で12月にLEDのイルミネーションを点灯する計画である。炭素繊維などを素材にした電極付き樹脂製の円筒(直径12cm、高さ25cm)14本で構成、円筒の下半分をヘドロで埋める。ヘドロの含まれる有機物を微生物が分解すると、水素イオンが発生、この水素イオンを電極で取り出し、電気エネルギーに変換する。今後は発電効率や設備の耐久性を高める研究を進める。(中国新聞11年10月28日)

(2)エタノール電池
 環境ベンチャーのコーティング・アイ(岐阜市)は、エタノールFCシステムを開発した。2012年中に一般家庭用を発売する計画で商品化を進めている。同社は草や紙などセルロースを含む植物性廃棄物を自社開発の酵素で糖化、発酵、蒸留してバイオエタノール燃料を生産するノウハウを企業に提供している。エタノールの利用先を広げるため、FCに着目した。FCはカナダのバラード・パワー・システムズの製品がベースで、コーティング・アイのノウハウを盛り込みエタノールで発電できるよう改造する。滋賀県で開発が進む300戸規模の住宅団地での採用が内定し、モデルハウスへの設置が進んでいる。(岐阜新聞11年11月9日)

8.携帯用FCの開発と事業展開
 FCベンチャーのアクアフェアリー(京都市)と京都大学は消石灰(水酸化カルシウム)を燃料に使う携帯用FCを共同開発する。携帯電話の充電器や災害時に屋外で使う照明用電源としての用途を想定している。消石灰は安価で入手できるため、FCのコスト抑制につながり、製品価格を抑えられる可能性があるとみている。2012年内の製品化を目指す。アルミと水を反応させて発生する水素ガスを使うFCにおいて、アルミは自然状態では酸化しやすく、酸化膜は発電の妨げになる。酸化膜を取り除くにはカセイソーダ(水酸化ナトリウム)など強アルカリ性化合物を使う手法が一般的であるが、一気に化学反応が進むため、持続的、安定的に発電が求められる電池には不向きであった。京大工学研究科の平尾教授らの研究グループは、消石灰を使うと酸化膜を徐々に取り除けることを実験で初めて確認した。水酸化カルシウムの水酸基が酸化膜の酸素と反応して酸化膜がはがれる。この知見をもとに消石灰やアルミを含むFC用燃料を開発する。専用の給水容器と燃料カートリッジを用意し、発電時に注水する仕組みの電池を開発する。(日経産業新聞11年11月2日)

9.災害に強い給油所の展開
 JX日鉱日石エネルギーは津波などの災害に強いガソリンスタンド(給油所)を全国に設置する。給油所を防災拠点として活用することを想定し、自家発電機やFCを備え、冠水しても給油できる新型給油所を、津波被害の懸念がある全国12カ所に展開する。JA全農や出光興産も災害時に機能する給油所網の維持・整備を急ぐ。給油所1カ所の投資額は通常(約1億円)の1.5倍を見込んでいる。(日本経済新聞11年11月11日)

10.水素生成・精製の研究開発
(1)愛媛大
 愛媛大学大学院理工学研究科の野村教授の研究チームは、廃油から取り出した水素を使って自動車を走らせる実験に成功した。課題であった抽出水素から不純物除去ができ、実用化へ前進した。同教授は2006年、液中プラズマで廃油を分解して水素を取り出すことに成功、水素抽出と同時に、廃油中の炭素分が固形化される利点もあり、廃油によるクリーンエネルギー創出を目指して研究している。不純物除去は、5段階の工程を経ることで成功した。水素ガス以外を液化する液体窒素や水素を吸収する合金の使用などで純度を99%にまで高めた。実験は9月、マツダ本社工場で、水素ロータリーエンジン搭載車を使って行った。廃油150mLから取り出した水素150〜200Lを使用し、時速10kmで約360m走行できた。教授は「家庭など身近な廃油から取り出した水素を貯蔵し、エネルギーを地産地消で賄える社会を実現したい」と話している。(愛媛新聞11年10月29日)

(2)岡山大
 岡山大大学院環境学研究科の高口准教授のグループは、太陽の可視光で水から水素を効率的に造り出す新しいカーボンナノチューブ光触媒を開発した発表した。可視光(波長450nm)による水素発生効率は31%で、工業利用の目安とされる30%を突破したという。新しい光触媒は4層の同軸ケーブル構造、微小の炭素繊維カーボンナノチューブに独自開発した薬品を加えた後に超音波振動を与え、その表面をフラーレンC60を含む分子複合体でコーティングし、更に表面に浮き出ている高分子にガラスコーティングを行って作製した。グループは、カーボンナノチューブ0.5mgを含んだ光触媒を水150mLに分散させて可視光を照射しところ、化学反応が起こって水を分解、吸収した光エネルギーの31%に当たる0.15cm3/hの水素が発生した。紫外線でも水素の発生を確認した。(山陽新聞11年11月18日)

11.FC・水素関連計測機器の開発と事業展開
 新コスモス電機(大阪市)は、漏洩した1000ppm以下の超低濃度の水素でも高精度で測定できる水素ステーション用吸引式ガス検知部"PD−14"を開発した。吸引式としては、日本で初めて水素の防爆基準をクリアした。販売価格は17万5000円。12年1月から販売を始める。高圧ガスの保安に関わる法令が昨年末に改正され、水素ステーションでFCVにホースを接続して水素を補給する作業で、ホース部分の水素漏洩の確認が義務付けられた。このため微量な水素を検知できる装置の需要が増えており、業界大手は昨年から商品化を目指して開発を進めてきた。(化学工業日報11年11月4日)

 ――This edition is made up as of November 23, 2011――

・A POSTER COLUMN

JOGMECが南アフリカ北部でプラチナなどの存在を確認
 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は11月10日、南アフリカ北部でカナダの探鉱会社と共同で進めていた掘削調査でプラチナなどの存在を確認した。深さ643〜646m地点ではプラチナとパラジウム、金がサンプル1トン当たり合計で、平均3.47g含まれていた。これが幅広く分布していれば、商業生産に繋がる可能性もあるとしている。
 プラチナなどの白金族は自動車の排気部品に加え、FC電極で利用されている。
(朝日、日経産業、鉄鋼新聞11年11月11日)

EV向け無線給電の実験
 アメリカ半導体大手クアルコムは11月22日、都内でEV向け無線給電に関する技術説明会を開いた。高出力の電気を無線で伝える技術開発に目途をつけ、2012年からロンドンでEV走行の実証実験を始める。シトロエン製などのEVを使う。
 無線給電では電気コードやプラグを使わず、送電と受電用2つのコイルによって磁気を発生させて離れた場所へ電力を供給する。3kWと7kW、18kW以上の電力で給電が可能で、駐車場や車道に送電機器を埋め込み、車に受電機器を装着して電気を受け取る。発生電力のうちEVの充電池に届く割合を示す伝送効率は90%以上を達成できる。施設や車をキャメロン英首相も視察した。
(日本経済新聞11年11月23日)