第186号 廃木材から水素を精製するプラント完成
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.FC関連要素技術の開発
4.PAFC事業展開と開発研究
5.SOFC技術開発と事業展開
6.エネファームおよびエコ住宅事業
7.次世代エコカー最前線
8.環境機器へのFC利用
9.水素生成精製事業および技術
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)経産省
 経済産業省は9月29日、2012年度概算要求を発表した。一般会計とエネルギー対策特別会計(エネ特会)を合わせた要求額は1兆762億円。エネ特会は11年度当初予算比11.1%増しの8174億円を要求した。資源エネルギー関連では東日本大震災からの早期復興に向けて、福島第一事故の収束や既存の原子力発電所の安全強化に510億円を計上、震災の教訓を踏まえ、再生可能エネルギーや省エネルギーの普及・技術開発、資源開発関連の事業に予算を重点配分した。革新技術開発の一環として、石炭ガス化技術とFC、CO分離回収を組み合わせた高効率発電技術を実証する費用として14億円を新規計上した。又都市ガス関連ではガスコージェネレーションシステムの導入支援が積み増された他、エネファームの導入支援も盛り込まれた。エネファームの補助金は9億円増の96億円を要求する。(電気新聞11年9月30日)
 経済産業省はエネファームの導入に対する補助金を10月3日から再開する。2011年度の当初予算で用意した86億円の財源は7月7日に枯渇した。経産省は他の予算の流用で39億円を捻出し、需要増しに対応する。再開する補助金は販売価格の低下に伴い上限を85万円に下げるが、予算が枯渇した当日に申請した家庭には105万円を補助する。経産省は11年度補正予算にも同程度の予算を要求している。(日本経済新聞11年10月1日、日経産業新聞10月4日)
 経済産業省は10月21日、政府が今国会に提出する2011年度第3次補正予算案の中、同省に関わる要求内容を発表した。他省庁計上分を含めた要求額は1兆6526億円。この内エネルギー対策は、1)電力需給対策、2)電力安定供給のための天然ガス確保、3)災害に強い燃料供給体制整備の3本柱。需給対策では2000億円の節電エコ補助金を創設する。その内訳は、住宅用太陽光発電1190億円、エネルギー管理システム300億円、蓄電池210億円、FC50億円、ガス空調50億円、節電改修150億円である。(電気、建設通信新聞11年10月24日)

(2)NEDO
 NEDOは、2015年を目標とするFCVの一般ユーザーへの普及開始を視野に、水素供給インフラの導入可能性を調査する実施機関として、山口県、山口大学、中国地方総合研究センター(広島市)、ユニバーサルエネルギー研究所(東京都)の4者を選定した。先行整備が想定される首都圏、中京、関西、福岡の4大都市圏とそれを繋ぐ位置にある地域を対象に、FCV普及台数や水素需要量、水素ステーションの必要個所数を試算する。供給形態や推定価格も検討し、課題を整理した上で対応策を示す。予算規模は1件当たり500万円程度まで。(建設通信新聞11年10月14日)

(3)エネルギー・環境会議
 政府のエネルギー・環境会議は10月18日、コスト等検証委員会第2回会合を開き、コスト試算を本格化した。会合では試算のもととなる諸元を提示したが、資本費に当たる建設費は何れも1kW当たり石炭火力が23万円、LNG火力12万円、石油火力19万円、一般水力85万円とした。コージェネレーションでは同様に1kW当たりガスが12万円、石油13万円、FCが工事費込みで210万円(給湯補機を除くと同300万円)となっている。(建設通信新聞11年10月19日)

2.地方自治体による施策
(1)大阪市
 大阪市都市整備局は、エネルギーの自給率向上や効果的な利用が図られたスマートハウスの普及促進を図るため、同市鶴見区横堤4の市有地をプロポーザル方式で売却し、先導的な都市型エコ住宅のモデルとなる戸建て住宅の提案・建設を募集する。建ぺい率80%、容積率200%など、敷地面積や隣棟間隔が比較的狭い条件で、太陽光発電やFC、蓄電池などの導入により最大限の省エネ・創エネ効果を追求し、先導的な都市型エコ住宅のモデルとなりうる住宅・住宅地計画の提案を求めるとしている。(毎日、日刊建設産業新聞11年9月27日)

(2)岐阜県
 岐阜県は、9月補正予算案に次世代エネルギーインフラの導入支援費として3000万円を計上した。太陽光発電、FC、蓄電池などを組み合わせたエネルギー供給モデルを一戸建て住宅や小規模事業所などに普及させるもので、必要経費を補助する。10月から事業者の公募を開始、11月に決定する。5件程度の補助を予定。(日刊建設工業新聞11年9月30日)

(3)山口県
 山口国体のシャトルバスとして10月1日から3月まで山口市内を走行するトヨタ自動車と日野自動車製FCバスが山口県庁で披露された。定員62名、全長10.5m、幅2.49m、高さ3.36m、燃料に水素燃料を使い、水素を岩谷産業が供給する。(山口新聞11年9月30日)

(4)堺市
 堺市の泉北ニュータウンの小学校廃校跡地で計画されている"晴美台エコモデルタウン創出事業"で、市は大和ハウス工業が代表法人の事業グループを優先交渉権者として決定したと発表した。グループの提案内容は、全住宅に蓄電池と太陽電池、FCを導入する他、雨水タンクを設置、街全体でEVカーシェアリングを導入するなどしている。(産経、日刊建設工業新聞11年10月7日、日刊建設産業新聞10月12日)

3.FC関連要素技術の開発
(1)横浜市立大
 横浜市立大学の橘勝教授らは、炭素材料のカーボンナノウォール(CNW)に、FCの触媒となる白金を付着させる技術を確立した。電極に一般的に使われているカーボンナノブラック(CB)と同程度の触媒活性が実現、CBの1000倍以上の導電性が期待できる。CNWを白金溶液に混ぜて白金粒子を付着させる"溶液還元法"を使った。白金を均一に付着させるためにCNWを1枚ずつばらばらになるように調製し、平均粒経3.6nmの白金を重量比で18%付着させた。触媒の活性を示す白金1g当たりの活性有効面積は約70m2でCBと同等だった。グラファイトの構造を維持したまま白金が付着しており、触媒活性と導電性や化学的安定性といったグラファイト特有の性質を両方有すると見られる。(日刊工業新聞11年9月29日)

(2)兵庫県立大と茨城大
 兵庫県立大学大学院の樋口教授や茨城大学などの研究グループが、水素を分解する酵素"ヒドロゲナーゼ"の働きが酸素に妨害されない仕組みを解明した。ヒドロゲナーゼは細菌の体内にあり、水素を分解してエネルギー源として使うことを補助する。しかし酸素に触れると中枢部分に酸素原子が結合して水素の分解を妨げてしまう欠点があったが、海水中のバクテリアから抽出したヒドロゲナーゼは酸素のある環境下でも水素を分解できることが知られていた。研究チームは酸素に妨害を受けないヒドロゲナーゼに着目し、結晶状にしてX線解析を行った結果、通常と分子構造の一部が異なる上、酸素に触れた際に放出された電子で酸素分子自体が分解されることを突き止めた。FCの触媒は白金が一般的であるが、ヒドロゲナーゼは1〜10万倍の効率で水素を分解できると云う。樋口教授は「この酵素の仕組みをまねた人工触媒を作ることができれば、FCを改良する一歩になる」と話している。(毎日、日本経済、産経、神戸、茨城新聞11年10月17日)

4.PAFC事業展開と開発研究
 東京ガスは富士電機と共同で、PAFCを使ってFCから発生するCOを回収・再利用するシステムを開発した。回収方法は先ずFC本体に、ガス改質によって発生する水素やCOなど混合ガスだけを取り出す専用の通路を作り、混合ガス分離装置を使って圧力制御によりCOだけを取り出す方式である。現在のPAFCではCOを1日1230kg排出するが、実験ではこの内860kgを回収できることが分かった。既存のFCでは空気が混ざるためCO濃度が低下して回収が難しかった。又回収したCOは極低温まで冷やしてドライアイスなどにして有効利用する。(日経産業新聞11年10月14日)

5.SOFC技術開発と事業展開
(1)JXエネルギー
 JX日鉱日石エネルギーは10月3日、日産自動車と共同で家庭用SOFCとEVを組み合わせた実証試験を行うと発表した。EVは家庭への給電機能を備えた日産の"リーフ"を使う。駐車時のEVを蓄電池として使い、FCから充電を行うことでSOFCの稼働率向上を図る。実証実験は2012年からJXエネの実証社宅"ENEOS創エネハウス"で開始する。実証では住宅に充放電対応の双方向インバーターを設置、消費電力が少ない夜間には家庭用SOFCからEVへ充電し、昼はEVから住宅に電力を供給する。日産は住宅向けのV2H対応EVを開発しており実証にそれを提供する。(電気新聞11年10月4日、日刊自動車新聞10月6日、化学工業日報9月11日、日刊工業新聞10月13日)

(2)大崎クールジェン計画
 中国電力と電源開発の合弁会社が進めている大崎クールジェン計画は、資源エネルギー庁の援助を受け、12年度から第1段階として中国電力大崎発電所(広島県)で17万kWの石炭ガス化複合発電(IGCC)実証設備の建設に着手する。第2段階ではIGCCにCO回収・貯留(CCS)を組み合わせる。CCSはIGCCから発生するCOに水蒸気を加え、触媒によるシフト反応でCOと水素に転換してCOを回収する。第3段階ではSOFCをシステムに組み込み、IGCCやCCSから発生する水素を燃料として発電することによりトリプルコンバインドサイクル(IGFC)を実現、最終的にゼロエミッション化を目指す。総事業費は1000億円以上の大型プロジェクトであり、資源エネルギー庁は12年度概算要求で13.7億円を盛り込み、事業費の1/3を補助する。18年度からの実証実験を予定している。(化学工業日報11年10月14日)

6.エネファームおよびエコ住宅事業
(1)広島ガスとパナホーム
 広島ガスとパナホームは、家庭のエネルギー使用状況を見える化する"ECOマネシステム"を導入したモデル住宅を公開した。電気やガスの使用量に加え、エネファームや太陽光発電システムの発電量などをリアルタイムで表示できる。省エネルギーに関心のある家庭を中心に売り込む。(電気新聞11年9月28日)

(2)JXエネルギー
 JX日鉱日石エネルギーは家庭用FCで海外市場の開拓に乗り出す。2013年を目途に韓国市場に参入する計画で、機器の安全認証取得に向けて同国ガス公社と実証実験を始めた。現地で最終製品の組み立ても検討する。同社は約270万円の家庭用FCを15年度に50万円に引き下げる方針。(日本経済新聞11年10月3日、化学工業日報10月14日)
 JX日鉱日石エネルギーは10月18日、SOFC型エネファームを発売し、積水ハウスが山口県光市に建設した環境配慮型住宅"グリーンファースト"に設置したと発表した。発売設置は17日。PEFCに比べて容積は約40%小型化し、発電効率は7〜10%向上して45%(LHV)で、電力需要が高めの一般家庭では有利とされる。JXエネ自身も2012年夏を目途に蓄電池、太陽光発電を組み合わせたシステムの提供を計画している。(電気、日刊工業新聞、化学工業日報11年10月19日)

(3)DOL、キシムラインダストリー、日産自動車
 建材開発のデザインオフィスライン(DOL、東京都)、キシムラインダストリー(横浜市)、日産自動車はEV"リーフ"のバッテリーを活用した省エネ型住宅を共同開発した。屋根に搭載した出力2〜5kWの太陽光発電パネルを駐車場に止めたリーフに接続し、容量24kWhのバッテリーを充電する。出力700WのJX日鉱日石エネルギーのエネファームも設置、駐車中のリーフのバッテリーと併用することで、外部電源を使わずに一般的な住宅に必要な3〜10kWの電気を賄える。(日経産業新聞11年10月4日)

(4)パナホーム
 パナホームは10月5日、CO排出量が正味で0になる住宅"CASART TERRA"を10月6日から発売すると発表した。地熱の有効活用により魔法瓶のように家を断熱する"家まるごと断熱"のほか、エコナビ搭載換気システム、太陽光発電システムとエコキュート・エネファームの組み合わせによりCO排出量0を実現、光熱費も大幅に削減する。販売価格は約69〜71万円/m2で、11年度に2000棟の販売を計画。(日本経済、電気、日経産業、日刊工業、電波新聞11年10月6日、住宅新報10月11日、電通報10月17日、産経新聞10月22日)

(5)積和不動産と東京建物
 積水ハウスグループの積和不動産と東京建物は共同で、太陽光発電システムとエネファームを標準装備した分譲戸建て住宅を神奈川県内で売り出す。11月下旬に第1期分の販売を始める。(日経産業新聞11年10月17日、住宅新報10月18日)

(6)パナソニック
 パナソニックはエネファームの2011年度販売台数見通しを当初計画の5000台強から6000台強に上方修正した。電力危機などで販売が急拡大、7月には補助金が打ち切りになったが、10月から再開しており、上乗せが見込めるようになった。12年度は補助金政策の行方にもよるが、販売台数は1万台も視野に入る。(日刊工業新聞11年10月18日)

7.次世代エコカー最前線
(1)トヨタ
 トヨタ自動車は2012年に予定しているPHVの発売時期を1月にする。これにあわせトヨタ系販売店に充電器を設置する。9月28日、名古屋市で開いた販売店の代表者会議で販売各社に通知した。全国約5500の販売店網を活用し、長距離走行の際にもPHVの利便性を高める。(日本経済新聞11年9月29日)

(2)中国国有送電大手
 中国の送電事業をほぼ独占する国有企業の国家電網は、9月28日電池交換式のEV普及を促進する方針を明らかにした。2015年までに全国に2900カ所に新設するEV用スタンドでは電池交換設備を中心に設置する。充電式に比べスタンドでの所要時間が短いほか、電力不足の回避にも役立つと判断した。実現すれば日本勢など海外自動車大手の戦略にも影響しそうだ。(日本経済新聞11年9月29日)

(3)大阪産大
 大阪産業大学は9月30日、学生が製作した水素ガスFCVで、公道走行の認可を取得したと発表した。大手自動車メーカー以外の認可は初めてである。工学部の山田教授や学生延べ50人近くが2002年から開発を始め、今回認可を受けたのは 開発車として4台目の2人乗りオープンカー、車体は全長3.8mのなだらかな流線形で、最高時速は80km/h、数分の水素ガス補給で約200km走行が可能と云う。(読売、毎日、日本経済、産経新聞11年10月1日、日刊工業新聞10月3日、日刊自動車新聞10月5日、日経産業新聞10月17日)

(4)テスラモーターズ
 アメリカEVメーカーのテスラモーターズは、2013年を目途に生産能力を年4万台に引き上げる。同社はトヨタ自動車とGMの合弁会社だったNUMMIの工場を一部買収し、新型車の生産準備中。早期に量産体制を整え、EVの普及を加速させる。(日本経済新聞11年10月3日)

(5)GM
 アメリカのGMは2013年にEVを米国で発売し同市場に参入する。クリス・ペリー副社長が記者会見で明らかにした。先ずは米国で販売するが、GM幹部は「インドや中国などの都市部住民にとってEVは効率的で持続可能な移動手段となる」と語り、振興国に広げる考えを示した。又日本のPHVに近い"シボレー・ボルト"は年内に海外展開に着手、先ずは中国と欧州に投入し12年に6万台の販売を目指す。(日本経済新聞11年10月13日)

(6)日産自動車
 日産自動車は10月13日、EV向けに非接触充電システムを開発したと発表した。EVを駐車場の路面に設置した充電装置の上に駐車するだけで自動充電できる。数年内の実用化を目指す。FCV向けの新しいFCも開発した。05年に開発した従来型に比べ、同じ出力で大きさを半分にしたほか、白金使用量や部品の種類を1/4に削減、量産段階でコストも1/6に抑えた。新モデルは出力85kW、容積34L、重さ40kgである。(毎日、日本経済、日経産業、日刊工業、日刊自動車、静岡新聞11年10月14日)

(7)トリトンEVテクノロジー
 トリトンEVテクノロジー(今治市)は、EVで早期の体制確立を目指す。3月に倒産したゼロスポーツのEV事業を引き継いだ渦潮電機(今治市)を6月に完全子会社として設立、コンバージョンEVを中心とした開発・設計を手掛ける。ゼロスポーツのEVに関するノウハウを継承するとともに、渦潮電機が持つ電気・電装分野の技術力に加え、EV事業でのシナジー効果を狙う。渦潮電機は船舶用の配電盤や制御盤、通信機器で国内トップシェアを持つ電気・電装メーカーで、これまで船舶用FCやLiBなどの開発にも取り組んできた。3月に倒産したゼロスポーツのEV事業譲渡を決め、ゼロスポーツのEV開発・製造スタッフ十数人を引き継ぎ採用して7月にはEV研究所を岐阜市に開設、業務を開始した。(日刊自動車新聞11年10月14日)

(8)仏エア・リキード
 産業ガス最大手のフランスのエア・リキードは、日本でFCV向け水素ガスの研究開発を始める。従来は欧州での研究が中心だったが、日本の自動車メーカーからの期待が大きいため日本でも水素ガス研究が必要と判断した。今後、研究グループを構築する。(日刊工業新聞11年10月14日)

(9)トヨタ、東工大、高エネ加速器研究機構
 トヨタと東京工業大学、高エネルギー加速器研究機構は、新化合物を使った次世代蓄電池を試作した。EVに搭載するLiB並みに加速に必要な大電流を出せる。燃えやすい液体を使わない"全固体電池"で発火防止材などが不要な分、構造を簡略化しコストを低減できる。シート状に加工し易く、容積当たりの電気容量は数倍で、連続走行距離を現行の小型EVの約200kmから1000km程度に延ばせる可能性がある。更に改良し2015〜20年の実用化を見込む。(日本経済新聞11年10月17日)

(10)マツダと広島大
 マツダと広島大学は容量を約1.8倍に増やせるLiB用電極材料を開発した。直径数百nmの球状炭素を使う。容量当たりの重さはほぼ半減し、EVの連続走行距離は2倍以上になると見込む。(日本経済新聞11年10月17日)

(11)テスラモーターズとGM
 アメリカ自動車業界がEVへの取り組みを強化している。テスラモーターズは2012年から量産予定の高級EV"モデルS"向けLiBをパナソニックから調達する。パナソニックが納入するのはニッケル系正極を用いた円筒18650型LiBで、今後4年間にテスラが生産するEV8万台分を供給する。他方GMは今月2人乗り小型EV"シボレーEN-V"を公開した。家庭用コンセントから充電でき、40km以上の走行が可能。(化学工業日報11年10月18日)

8.環境機器へのFC利用
 三菱樹脂が独自開発したゼオライト系水蒸気吸着材を搭載した"AQSOAデシカント空調機"が、東京工大が建設中の環境エネルギーイノベーション棟に採用された。FCの排熱(約50℃)を空調設備に利用、吸着した水蒸気を低温で放出できるAQSOAの特徴が、省エネを実現する手段として高く評価された。同社の東京・大阪・名古屋の拠点を活用し、各地で営業やメンテナンス対応を行う。(日刊工業、日刊建設工業新聞、化学工業日報11年9月27日)

9.水素生成精製事業および技術
 新出光の100%子会社"イデックスエコエナジー"(福岡市)は、大牟田エコタウンに日立造船に発注して建設していたバイオマス水素製造プラントが完成、17日に竣工式を行った。建設廃材などの木材チップから水素を作る商用プラントで、11月に試運転を始め、12年4月の本格稼働を目指す。プラントはタワー型設備で高さは36m、敷地面積は約9000m2。熊本、佐賀、福岡の3県から集めた建設廃材や間伐材などの木材チップを熱分解してガス化、併設する水素製造プラントで1日当たり15トンの木材から最大7200m3の高純度水素を製造する。(西日本新聞11年10月18日、電気新聞、化学工業日報10月21日、日刊建設産業、日刊建設工業新聞10月24日)

 ――This edition is made up as of October 24, 2011――

・A POSTER COLUMN

ポストリチウムイオン電池の開発競争が加速
 企業や大学が最新の研究成果を報告する電池討論会(10月17〜20日)では、リチウムイオン電池(LiB)の性能を大幅に上回る新型電池に関する技術発表が相次いだ。いずれも基礎研究段階で実用化は5〜10年先ではあるが、今後ポストリチウムイオンの開発競争が加速しそうである。
 ソニーは大阪ガス子会社KRIと共同で、"アルミニウム空気電池"において、長時間使用しても腐食しにくい電解液を開発した。アルミニウム空気電池は、理論上は容量をLiBの10倍以上にできるが、充電を可能にするためには、腐食性の高い電解液を使わなければならなかった。70℃まで温めないと性能を引き出せないため、今後は改良を重ねて室温で使えるようにする。
 旭化成と豊橋技術科学大学は"カルシウムイオン電池"の正極材料を開発、充放電が起こることを確認した。カルシウムを使えば容量は理論上2倍になるとともに、安全性も高まると見ており、今後電池の試作を目指す。
 産業技術総合研究所は、マグネシウムイオン電池を試作した。正極に有機材料を使い、充放電を繰り返すと放電容量は減ったが電池としては作動した。これも容量はLiBの2倍になると期待されている。
(日本経済新聞11年10月24日)