第183号 節電対策でエネファームの設置需要が急増す
Arranged by T. HOMMA
1.国家施策
2.地方自治体による施策
3.PAFCの事業展開
4.SOFCの開発と事業展開
5.PEFC要素技術の開発
6.エネファーム事業展開
7.FCV&EV最前線
8.自動車以外のFC移動体
9.水素ステーション事業
10.水素生成・精製に関する開発と事業展開
11.FC補機技術の開発と事業展開
12.FCおよび水素関連計測観測機器の開発と事業展開
・A POSTER COLUMN
1.国家施策
(1)経産省
 経済産業省の次世代エネルギー・社会システム推進協議会は6月23日、スマートグリッドを含むスマートコミュニテイーの現状と今後の方向性を中間的にまとめ、本格的に始まる国内4地域の実証事業内容を明らかにした。東日本大震災後の分散型エネルギーシステムの必要性が強く指摘されたことを受け、事業を前倒しで実施、被災地の復興でスマートコミュニテイーの構築が可能との方向性を示した。具体的には、過去のマイクログリッド実証などの技術を更に進化させ、需要家への経済的インセンテイブを通じた需要抑制・創出を取り入れながらヒートポンプ、FC、蓄電池などの個別機器を賢く制御、HEMS、BEMS、FEMS、および交通システムを構築する。(建設通信新聞、化学工業日報11年6月24日)

(2)自民党
 自民党の国家戦略本部第1分科会がまとめた成長再生戦略案が6月30日に明らかになった。成長再生のため転換として、原子力を含めたエネルギー政策の徹底的な再検討の必要性を明記、新たなエネルギーの柱と位置付けた再生可能エネルギーで十分な発電量を確保できるまでは、安全強化策の実施を前提に既存の原子力発電所活動維持やLNG増強などを打ち出した。蓄電池・FCなどに人材と財源を集中的に投入すべきだと指摘、農業も有力な成長産業と位置付け、生産調整の廃止など「攻めの姿勢」を前面に打ち出すべきだと提言した。(日本経済新聞11年7月1日)

(3)環境省
 環境省は7月4日、環境と経済の両立につながるエネルギー起源のCO排出抑制技術などの実証研究を委託又は補助で実施する2011年度の"地球温暖化対策技術開発など事業"を採択した。事業規模は総額約22億円で期間は最長3年。FC関連ではホンダが埼玉県や岩谷産業、本田技術研究所と取り組むFCVと小型ソーラー水素ステーションを組み合わせたシステム実証が含まれている。(日刊自動車新聞、化学工業日報11年7月5日)

2.地方自治体による施策
(1)山梨県
 山梨県はFC関連産業の育成に向け、FCの構造などに精通した技術者を招聘し、アドバイザーに任命することを決めた。県内の部品製造業者らを対象とした技術相談会を開き、アドバイザーから自社製品をFCに活用する場合に必要な助言などをしてもらう。アドバイザーには、FCを使用した製品の開発製造に携わった経験のある技術者から6人前後を選ぶ予定。(山梨日日新聞11年6月24日)

(2)東京都江東区
 東京都江東区が検討している豊洲グリーン・エコアイランド構想が固まった。豊洲埠頭約110haを対象に、最新の自然環境・エネルギー技術などを導入し、環境先端拠点を形成する。エネルギー関連では地域冷暖房や地点熱供給システム、建物間のエネルギー融通、コージェネレーションシステムなど面的な利用を始め、蓄電池・蓄熱システムやFC・水素技術、ヒートポンプなどの省エネ技術を導入、又太陽光や太陽熱、風力、海洋温度差、ガス圧力差など再生可能・未利用エネルギーを活用する。(建設通信新聞11年6月27日)

(3)兵庫県
 兵庫県企業庁は6月27日、芦屋市臨海部にある埋め立て地"潮芦屋"の一部22,814m2を、パナホームに一括売却した。同社は太陽光パネルの他ヒートポンプ給湯器や家庭用FCなどエコ設備を備えた環境に優しい最先端の住宅を建設する。(神戸新聞11年6月28日、日刊建設工業新聞6月29日)

(4)大阪府
 トヨタ、日産、ホンダ、大阪ガスなど13社が「2015年に4大都市圏(首都圏、中京、関西、福岡)を中心にFCVを市販する」との共同声明を受けて、大阪府は水素インフラ技術開発に取り組む府内企業を対象に助成金制度を設けることにした。名称は"水素インフラ等開発支援プロジェクト助成金"で助成額の上限は800万円、7月11日に申請受付を始めており、26日まで募集する。(日刊自動車新聞11年7月13日、日刊工業新聞7月14日)

(5)長野県
 長野県は、EVなど次世代エコカーの普及を目指す協議会を設立した。旅館・ホテル、バス・タクシー会社、自動車メーカーなどが参加する。EV普及には社会的なインフラの整備が不可欠。県民にEVの利点などをアピールするとともに、普及に向けて充電設備の整備を進める。普及台数や充電設備の設置個所について数値目標の設定も検討する。EVの他、家庭用コンセントで充電できるPHVやFCVの普及も推進する。(日経産業新聞11年7月20日)

3.PAFCの事業展開
 富士電機は7月19日、東日本大震災の被災地支援の一環として、宮城県災害対策本部を通じPAFC"FP−100i"を東北福祉大学(仙台市)に寄付すると発表した。7月末に運転を開始し、同大学併設の介護福祉施設に電気と熱を供給する予定である。PAFCの燃料には、中圧の都市ガスを使用する。震災発生時にも供給が止まらなかったなど信頼性が高く、安定した電力供給が必要な医療介護施設に適しているという。出力は交流100kWで、発電時に発生する熱は施設の給湯設備で利用する。なお同社製のPAFCについては、11年1〜3月に同型機を山形市浄化センターに設置し、下水消化ガスを利用した冬季の屋外運転実証に成功している。3月の震災発生の際にも、商用電力が復旧するまでの2日間、消化ガスでの発電を継続していた。(電気、日刊工業新聞11年7月20日、日経産業新聞7月21日)

4.SOFCの開発と事業展開
(1)住友精密
 住友精密工業は今年度中に、次世代の自家発電設備として成長が見込める産業用SOFCの事業化に乗り出し、年間売上高100億円の主力事業に育てる。住友精密は2001年からSOFCの研究を続けてきたが、NTTなどと共同開発して得た実証データ―に加え、既存の産業用熱交換器の技術などを活用して開発に目途をつけた。今年度内に発電出力5kW級のSOFCシステムを情報通信業者など電力使用量の大きい企業に売り込む。勿論この製品には抵コスト化という最大の課題がある。現在は約300万円/kW(発電出力)で、一般的なガスエンジン発電機の約7倍となり、量産技術の革新を急いでいるが、15年度に40万円/kWを達成には歩留まり向上なども必要である。(日経産業新聞11年6月27日)

(2)京大
 京都大学の島川教授、松本大学院生らは、人工超格子という層状の化合物を使い、300℃以下で酸素イオンを制御することに成功した、この超格子を固体電解質として使うことにより、SOFCの用途拡大に役立つと期待される。パルスレーザー蒸着法という薄膜成長技術を使い、カルシウム鉄酸化物とチタン酸ストロンチウムを約1nmの厚さで交互に積層させて人工超格子を作った。この人工超格子とアルカリ水酸化物を一緒に200〜300℃で加熱すると、カルシウム鉄酸化物の層だけから酸素イオンが抜け出していくことを確かめた。(日刊工業、京都新聞11年7月1日)

(3)JFCC
 ファインセラミックスセンター(JFCC)は、第1原理計算技術をSOFCの理論解析へ応用することにより、所定の温度や雰囲気条件の下での固体電解質中の点欠陥濃度を定量評価する技術を確立した。点欠陥はSOFCを始めセラミックス材料の特性を支配する重要なポイントの1つであり、この存在量を定量的に把握できるようにしたことで、SOFCの発電能力アップへの貢献が期待できるという。プロトン伝導型の固体電解質であるジルコン酸バリウム(BaZrO3)に着目して技術開発を行った結果、合成時の条件によってはイオン伝導に寄与する点欠陥の量が大きく変動し、場合によっては最適条件の1/10以下にまで点欠陥の量が低下することが明らかになった。電解質セラミックスの合成では、作成条件を正確に制御することが不可欠であることを示している。(化学工業日報11年7月7日)

(4)日立金属
 日立金属は7月11日、SOFC用インターコネクター材として、耐酸化性や高温強度、導電性を高めた高性能材料を開発したと発表した。ジルコニア系セラミックスに近い熱膨張係数を持ち、700〜850℃での諸特性に優れるフェライト系ステンレスの従来開発材(ZMG232L)に対して諸特性を更に向上させた。新開発のZMG232J3、同232G10は作動温度での耐酸性に優れるためSOFCの寿命向上に寄与し、又高温強度が高いのでFC構造の長時間維持にも寄与する。又作動温度での接触抵抗が低いためインターコネクターでの電圧低下を軽減し、発電特性の向上に寄与する。更にG10は特殊元素の添加によりクロム蒸発量を抑制しており、セルの劣化要因となるクロム蒸着を低減する効果がある。7月からサンプル供給を開始、15年度5億円、20年度50億円への拡販を目指す。(日経産業、鉄鋼新聞、化学工業日報11年7月12日)

5.PEFC要素技術の開発
(1)ナガサ
 ナガサ(東京都)はPEFC向け金属セパレーターの低コスト製造法を開発した。各種の弁やポンプの部品に使う金属製薄板(ダイヤフラム)の加工法を応用して工程数を短縮した。ステンレス材の加工コストを他社従来比で数10分の1となる20円程度(経約120mmの加工)に抑えた。加工時間も従来に比べて大幅に短縮できる。今後は平坦度を更に向上させるとともに、大きいサイズでも加工できるよう技術開発を進めていく。(日刊工業新聞11年6月27日)

(2)ナカヤマ精密
 ナカヤマ精密(大阪市)は、加工精度が10nmレベルの金属加工に乗り出す。熊本県菊陽町に約10億円を投じて専用工場を新設する。FC用セパレーターに使われるステンレスや、カメラ用非球面レンズ製造用金型の受注を見込む。(日刊工業新聞11年7月15日)

(3)田中貴金属
 田中貴金属は2010年度におけるFC用触媒の出荷量が過去最高を記録したと発表した。04年度の実績を100とした場合、10年度実績は198、自動車用だけをみると162となり、過去2番目の実績となった。エネファームと普及とFCVの研究開発が出荷量を押し上げた。(鉄鋼新聞、化学工業日報11年6月29日、電波、日刊自動車新聞6月30日)

6.エネファーム事業展開
(1)FCA
 エネファームの売れ行きが好調である。4〜6月は約6千台が売れ、昨年度の実績を既に超えた。震災による電力不足で"家庭での発電"に関心が集まったのが理由と云う。JX日鉱日石エネルギーでは、前年比3.5倍のペースで売れており、東京ガスも4月以降2千台が、大阪ガスでは4,5月は昨年同期の1.5倍の勢いで売れている。業界団体によると希望価格は300万円前後で、国が105万円を上限に補助金を出す。今年度の予算は8千台分しかなく、9月にも予算切れになる可能性がある。(朝日新聞11年7月7日、化学工業日報7月12日)
 FC普及促進協会(FCA)は、11年度"民生用FC導入支援補助金に関して「補助金の募集は、締切日(12年1月31日)前であっても、補助金申込額の合計が、予算の範囲を超えた日の17時で申し込みの受付を停止する」と述べ、注意を呼び掛けている。(電波新聞11年7月12日)

(2)レモンガス
 LPG大手のレモンガス(神奈川県)は7月19日、LPGコージェネレーションを設置した電熱供給型集合住宅を建設すると発表した。日産自動車のEVで使用済み蓄電池やエネファーム、それに太陽光発電を搭載、エネルギー利用の最適化を図ると同時に、都市ガスと比べ災害時の復旧が早いことによるセキュリテイーの高さを訴求して、同様のコンセプト住宅を拡大する考えである。第1弾として相模原市にショウ―ルームや15戸のマンション(地上6階、地下1階)を建設、2012年3月の完成を目指す。具体的な仕様は、ガスコ―ジェネ5kWを2台(予備1台)、太陽光発電システム8.3kW、エネファームを設置する他、日産自動車のEVで使えなくなったリチウムイオン電池24kWhを無償で提供を受ける。又3台のEV"リーフ"による住民向けカ―シェアも実施する。施工は積水ハウスで総工費約5億円。(電気、日刊工業、建設通信新聞11年7月20日、日刊建設産業、日刊建設工業、日刊自動車新聞、化学工業日報7月21日、日経産業新聞、住宅新報7月26日)

(3)静岡ガス
 静岡ガスは、太陽光発電とエネファームを併設した低炭素住宅を静岡市に建設する。同社の低炭素型分譲地は22棟を建設した三島市に次いで2カ所目で、新エネルギー時代に向けてこのような"三島型"エコタウンを拡充させる意向。(静岡新聞11年7月22日)

(4)日本海ガス
 日本海ガス(富山市)は、オール電化攻勢が強い家庭向けに、エネファームと太陽光発電を組み合わせた"ダブル発電"のユーザに対して、1kWhの買い取り価格を同社が9円上乗せして34円にするキャンペーンを展開する。(北日本新聞11年7月22日)

7.FCV&EV最前線
(1)日産自動車
 日産自動車は6月27日、16年度までにルノーと合わせてEVを累計150万台販売する方針を明らかにした。EV"リーフ"の販売台数は現在8200台であるが、より広いニーズに対応するため車種も拡充、リーフに続き7車種を新たに投入する。EVからの給電機能についてゴーン社長は「EV1台で2日間、家庭の電気を賄えることができる」として実用化試験を進めていることを明らかにした。又、FCVについてもドイツのダイムラーと協業し、15〜16年の市場投入を目指すとした。(産経、電気、産経、日経産業、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ11年6月28日)

(2)三菱自動車
 三菱自動車は7月6日、25日に発売予定のEV"i-MiEV"の低価格タイプの実質購入費が188万円になると発表した。今夏に同車種を大幅に改造して2タイプを用意する計画で、8月に投入する1つのタイプは現行車に比べて1回の充電当たり走行可能距離を、160kmから約180kmに延ばす。他方、低価格タイプの車両本体価格は260万円とし、政府購入補助金の上限72万円を利用すると、実質購入費は188万円になる。現行車をベースにしたタイプは380万円。同社は又EVから炊飯器など電力消費が多い家庭に給電できる電源供給装置の試作品も7月6日に公開した。(日本経済新聞11年7月6日、7月7日)

(3)トヨタカローラ京都
 トヨタカローラ京都(京都市)は7月2〜3日、パルスプラザで創立50周年記念企画"モーターフェステイバル2011"を開催、来場者が約11000人、新車受注台数は201台に上った。自動車の展示では、国内では珍しいEV"テスラ・ロードスター"が注目を集めていた。(日刊自動車新聞11年7月7日)

(4)名大
 7月8日、EVやFCVなど次世代車を総合的に研究する"グリーンモビリテイー連携研究センター"の創立記念式典が名古屋大学であった。今後次世代自動車の技術開発や人材育成に取り組む。経済産業省の補助を受け、約15億円をかけて大学構内に地上4階地下1階、延べ2800m2の建物を2月に完成させた。(中日新聞11年7月9日)

(5)スズキ
 スズキは軽商用車"エブリイ"をベースにしたEVを試作し、公道での走行実験を始めた。浜松市を始め、全国のスズキ代理店に13台を貸し出しているほか、今秋には同市で行われている"はままつ次世代環境車社会実験協議会"の実証実験にも10台を投入する。EVエブリイは乗車定員2人、250kgまで荷物を積むことができる。容量が13kWhのリチウムイオン電池を搭載し、満充電時の走行距離100kmを確保した。(静岡新聞11年7月13日)

8.自動車以外のFC移動体
 エアバスとドイツ航空宇宙センターは、FCを使って航空機を地上走行させる実験に成功した。試験ではエアバスの小型機A320にFCと電気モータを搭載、航空機の前輪を駆動して地上走行した。ターミナルと滑走路の間などを航空機が移動する際に利用する。エアバスは次世代の航空機にこの技術を応用する。欧州の航空当局は航空機からのCO排出を20年には現在の半分に減らす目標を掲げている。(日経産業新聞11年7月12日)

9.水素ステーション事業
 高圧ガス保安協会は欧米諸国における水素ステーションの規制状況やカーエアコン冷媒の法規制などについて調査を始める。水素ステーションの調査は、FCVの普及に向け必要な規制の総点検にあたって欧米の事例を参考にするためで、具体的には圧縮天然ガススタンドと併設する際の設備間距離や、公道とデイスペンサーの距離などの情報を収集。又セルフ充填式水素スタンドの充填行為や公道上でのガス欠対応の充填場所などあり方を探る。経済産業省の2011年度委託事業として受託、予算は総額約2200万円である。(日刊工業新聞11年7月22日)

10.水素生成・精製に関する開発と事業展開
(1)北陸グリーンエネルギー研究会
 北陸グリーンエネルギー研究会(高岡市)は、8月1日から1カ月間、東京都文京区で貸し出す電動アシスト自転車の出張充電を行う。住民や自治体の協力で回収したアルミ付紙パックから作られる高純度化したアルミを水酸化ナトリウムと反応させることによって水素を発生させる。得られた水素をFCで電力に変換、それを充電に使う方式である。高純度アルミ60gで出力100WのFCを1時間稼働させることができる。(北国、富山新聞11年6月28日、福井新聞7月26日)

(2)オックスフォード大
 英国オックスフォード大学化学部の研究チームが、溶剤や添加物を使わずにギ酸を室温で分解して水素を取り出す触媒を開発した。銀のナノ粒子にパラジウム原子の単層原子薄膜を配置、銀の電子効果によりパラジウムの触媒作用が高められ、ギ酸を水素とCOに分解する。この触媒でギ酸から作りだした水素を携帯電話やノートパソコン用のミニFC燃料として使える。将来はポケットに入れられる大きさの水素FCの実現が期待できる。(日刊工業新聞11年7月5日)

11.FC補機技術の開発と事業展開
 工業用ねじメーカー王手の日東精工は防錆能力とねじ込み性能を両立したステンレスねじを開発した。錆び対策として用いられるオーステナイト系ステンレス鋼と新規開発の複合表面処理技術を組み合わせることで実現可能にした。屋外に設置されることが多く、今後設置数の拡大が見込まれるエアコン室外機、家庭用FC、EV充電設備関連企業に提案していく。"エルライファ"の名称で市場投入する。(日刊自動車、京都新聞11年6月24日、電波新聞6月29日、日刊工業新聞6月30日)

12.FCおよび水素関連計測観測機器の開発と事業展開
 愛知時計電機(名古屋市)は、毎分1〜12mLの微小液体流量を計測する電磁式微小流量センサー"VNR"を7月1日に発売する。従来の熱線式などに比べて流路に障害物がないため耐久性に優れている。MEMS技術により流路部は高さ0.3mm、幅3mmに小型化した。価格は8万円、医療分野やFC関連向けに初年度500台の販売を見込む。(日刊工業新聞11年6月30日)

 ――This edition is made up as of July 27, 2011――

・A POSTER COLUMN

大手10社が"HEMSアライアンス"を立ち上げる
 KDDI、シャープ、ダイキン工業、東京電力、東芝、NEC、パナソニック、日立製作所、三菱自動車、三菱電機の大手10社は7月12日、HEMS(Home Energy Management System)に関する共同検討体制"HEMSアライアンス"を立ち上げたと発表した。異なるメーカーのスマート家電を相互に接続して制御するHEMSアプリケーションの仕組みなど、HEMSおよびスマート家電普及の環境整備に関する検討を進める。3年間で一定の成果を出すことを予定するが、来年夏にも家庭での省エネを実現する複数の機能を創出することを目指す。
 家庭におけるエネルギーの最適利用を促進するには、各社のスマート家電群をホームコントローラ―やHEMSアプリケ―ションで相互に接続し、各機器の電力使用状況を可視化し、自動制御を通じて家庭全体で電力需要を最適化するスマートハウスの実現が不可欠である。技術標準規格はもとより、スマート家電の互換性、アプリケーション開発・流通、スマート家電の保守などに必要な仕組み作りが実現の課題となる。
 検討に際しては適宜、スマートコミュニテイー・アライアンス(JSCA)などの各団体や、住宅メーカーとも連携する。安心安全をキーワードにしたHEMS市場の確立に向けた課題解決にも取り組む。又ガス機器やFCなど家電以外にも対象を広げることも視野におく。
(化学工業日報11年7月13日)

ビルやハウスにおけるエネルギーマネジメントの実証実験例
(1)東工大
 太陽電池やFCによる自給自足を目指す研究用建物が、東京工業大学大岡山キャンパスで完成する。地上7階、地下1階、延べ約9500m2で、12年3月に利用開始の予定。電源は太陽電池(パネルは4500枚、650kW)、FC(100kw)の2本立てで、建物の北西以外は全ての面に太陽電池パネルを張り巡らせる。又夏の暑い外気を建物地下の空間で冷やしてから建物内に送る"クール・ヒートピット"など自然の力を最大限活用している。(東京新聞11年6月26日)

(2)アキュラホーム
 アキュラホームは埼玉県内で価格を抑えた蓄電池付自立型住宅の開発に向けて実証実験を始めた。太陽光発電システムやエネファームなど創エネルギー設備と比較的容量の小さい低価格蓄電池を搭載した。早稲田環境研究所と共同で行う。又発電量や使用量を「見える化」するHEMSとの組み合わせも併せて開発する。(住宅新報11年6月28日)

(3)トヨタ
 トヨタ自動車は6月30日、愛知県豊田市で建設を進めていたエネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入した住宅が完成し、システムの試験運用を開始したと発表した。住宅にはHEMSを導入、太陽光発電、FC、家庭用蓄電池、EV、PHV、スマート家電などをつなぎ、電力供給や機器制御の最適化を目指す。車両の蓄電池に蓄えた電力を住宅に供給するシステムの実証も行う。(日刊自動車新聞11年7月1日)

(4)KDDI
 KDDIは1つのコントローラーで規格の異なる家電を集中制御するための応用ソフトウエアを開発する。省エネルギー住宅"スマートハウス"の普及を見据えて研究開発連合体(コンソシアム)が愛知県豊田市で進めている実証実験"豊田市低炭素社会システム実証プロジェクト"での取り組みである。ソフトをセットトップボックス(放送信号の変換装置)に組み込むことで、家電制御のための複数の専用ハードウエアを不要にし、コスト削減と省スペース化を図る。(日刊工業新聞11年7月25日)

(5)三井不動産
 不動産各社が、省エネに配慮した環境型都市"スマートシティー"の開発に続々と名乗りをあげている。三井不動産が開発するのは"柏の葉キャンパスシティ―"、約2万4000m2の中核区画にマンションやオフィスビルを建設する。投資額は約170億円で、2014年春の完成を予定している。
 同都市では、太陽光や風力、バイオ発電で作った電力をIT制御で一括管理する。住民やオフィスで働く人は常にエネルギー需給をモニターで確認できる仕組みを採用、節電を促しエネルギー使用量を最大で半減するのが目標で、将来は電力供給を効率的に調整できるスマートグリッドを導入して、地域内でエネルギーを相互融通する仕組みも採用する。(フジサンケイビジネスアイ11年7月27日)