第180号 人工光合成への道を拓く生体分子の構造解明
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.PAFCの開発と実証事業
4.SOFCの開発動向
5.PEFC要素技術の開発
6.AFCの研究開発
7.再生型FCの開発
8.エネファーム普及事業と問題点
9.FCV&EV最前線
10.水素ステーション事業
11.水素生成精製技術の開発
12.水素輸送・貯蔵技術の開発
13.DMFCの開発と商品化
14.FC・水素関連計測・観測機器の開発と事業化
15.企業によるFC事業展開
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)資源エネ庁
 資源エネルギー庁は3月29日、今後の省エネルギー国家の実現に対して、大きく寄与する重要分野を特定した"省エネルギー技術戦略2011"を策定した。これは"エネルギー基本計画"に掲げる2030年に向けた目標の達成を実現する省エネ技術開発および、これらの技術の国内普及と国際展開を推進し、世界最高水準の省エネ技術を武器に経済成長を目指すための指針である。有識者会合を通じて、組み合わせや新たな切り口でより大きな省エネ効果を発揮する技術などを選び、技術開発の進め方や導入に向けたシナリオなどを部門別にまとめた。家庭・業務部門の主な重点技術はZEBとZEHで、住宅・建築物の躯体・設備の省エネ性能の向上と負荷制御、統合制御などを総合し、施設のエネルギー消費量を抑える。この他、増大する消費電力をIT機器を利用して削減する"省エネ型情報機器・システム"、発電効率を向上させた定置式FCなども挙げた。部門横断で取り組む技術としては次世代ヒートポンプシステムを盛り込んだ。未利用熱や高効率熱回収・蓄熱技術、低負荷域効率化技術などのシステム化技術と、新規冷媒とこれに対応する高性能熱交換器などの革新的要素技術を開発し、効率化・低廉化と温室効果ガス排出量の削減を実現するとしている。(日刊建設工業新聞11年3月30日、電波新聞4月1日)

(2)NEDO
 NEDOは4月4日、FCVの普及に向けた水素供給インフラ技術などの実証事業を新日本製鉄などに委託すると発表した。FCVや水素供給インフラに関する技術実証を北九州市などで実施、経済合理性利便性などを検証する。事業期間は5年間。(鉄鋼新聞11年4月5日)
 NEDOは「地域水素供給インフラ技術・社会実証」の共同研究予定先として、HySUTなど5件を決定した。この事業は、2015年にFCVの一般ユーザーへの普及開始に向け、実使用に近い条件でFCVと水素インフラの実証を行うとともに、ユーザーの利便性、事業性、社会受容性などを検証し、普及開始の課題を解決することが目的とするもので、NEDOが事業費の2/3を負担する。技術・社会実証研究としてはHySUTが、地域実証研究は山梨県、佐賀県鳥栖市、福岡県の九大水素ステーション、北九州水素ステーションの4件が採択された。鳥栖市の実証は、鳥栖環境開発総合センターと佐賀県が提案、木質バイオマス資源を利用した可搬式水素ステーションによる水素供給を実証する。(化学工業日報11年4月6日)

2.地方自治体による施策
(1)大阪府
 大阪府はこのほど、大規模太陽光発電(メガソーラー)や河川水の熱利用施設など府内にある次世代エネルギー施設について、幅広い層に普及啓発活動に取り組む事業者を選定した。受託事業者になったのは、パソナ、JTB西日本で構成する"OSAKA ENEPA共同体"で、各種の広報活動を行う他、エネルギー施設を巡る観光コースを策定するなど、幅広く周知、理解活動を展開する。大阪府は、府内17カ所の次世代エネルギー施設群を"大阪ベイエリア・堺次世代エネルギーパーク"と定め、新エネルギー都市としてのイメージ確立を目指してきた。堺市内のメガソーラーやバイオマス発電設備、泉佐野市のFCV向け水素ステーションの他、EVタクシーの走行なども関連事項として記載されている。11年2月には資源エネルギー庁から次世代エネルギーパークに認定され、大阪府は本格的に普及を推し進めるとともに、若者の雇用機会創設につなげるため普及啓発事業者を募集していた。(電気新聞11年4月12日)

(2)岐阜県
 岐阜県は"岐阜県次世代エネルギービジョン"をまとめた。県内で省エネや太陽光など新エネルギーの導入促進、最新技術を採用した高効率なエネルギー消費モデルの構築・実証実験に取り組み、エネルギー消費量を2020年時点で14.5%、30年時点で30.5%削減することを目指す。EV、HEVの普及を後押しし、太陽光発電や木質バイオマスを使うストーブ・ボイラの導入、FCや蓄電池を組み合わせた家庭向けのエネルギー利用モデル作りを進める。(日経産業新聞11年4月19日、日刊建設工業新聞4月21日)

3.PAFCの開発と実証事業
 富士電機は4月11日、山形県浄化センターで下水消化ガスを利用したPAFCの屋外での実証実験で約2000時間の連続運転に成功したと発表した。外気温が−20℃に近い寒冷地の屋外でも稼働できることを実証したことで、北海道や東北など北日本地域などで売り込みの強化に乗り出す。PAFCは出力100kWで、発電効率は約40%、都市ガスや製鉄所から出る重水素などを燃料として使う。寒冷地での屋外設置を可能にするため、必要な周辺機器をワンパッケージに納め、パッケージ内の熱流などを考慮して機器の配置を工夫した。3月11日の東日本大震災の影響で、同センターでは電力供給が停止したが、PAFCは稼働を続けたという。富士電機は「夏に向けて電力不足が予想されるが、こうした新エネルギーの開発に力を入れることで、日本の電力供給を支えたい」としている。(フジサンケイビジネスアイ11年4月12日、電気新聞4月13日)

4.SOFCの開発動向
 日立金属はSOFC向けセパレーター"ZMG232J3"と"ZMG232G10"を開発した。5月から出荷を始める。従来品である"ZMG232L"のマンガンとクロムの含有比を変え、耐酸化性を約2倍向上した。今回開発したセパレーターはフェライト系合金がベースで、0.3%のマンガンと24%のクロムを含む。G10は更に1%の銅を加え、電極がクロムに侵されて発電効率が低下するクロム被毒の原因となるクロムの蒸発を抑制する。強度は従来品に比べて約2割向上した。2015年頃からSOFC市場が本格的に立ち上がるとみており、新製品で事業の基礎固めを進める。(日刊工業新聞11年4月8日)

5.PEFC要素技術の開発
(1)山梨大研究センター
 山梨大FCナノ材料研究センターは、自動車などの精密部品を開発・生産する"タカハタプレシジョン"(笛吹市)と共同研究に乗り出す。山梨大や同社によると、PEFCの低コスト化や小型化を進めるため、同社の精密機械の開発技術や、液体が外部に漏れないようにするシール技術を活用する予定で、同社は「地元企業として技術提供し、FCの実用化に貢献したい」としている。(山梨日日新聞11年4月9日)

(2)サイベックコーポレーションとサン工業
 長野県にあるプレス加工のサイベックコーポレーションと表面処理のサン工業が、厚みが0.1mm、サイズは240×320mmのチタン合金製セパレーターの試作に成功した。流路となる溝部を1.0mmの狭ピッチ・高精度で成形するとともに、ロジウムを直接メッキしている。現在、20セルのスタックで発電実験によって良好な結果を得ており、両社は車載用を睨み大サイズ化を進めるとともに、さらなる低コスト化に取り組む。(化学工業日報11年4月25日)

6.AFCの研究開発
 東京都市大学の研究グループは、アルカリ膜形FC(AMFC)の電解質膜を開発した。PEFCで使われる高分子膜は強酸性のため、電極には耐酸性のある触媒として貴金属の白金が使われるが、AMFCでは空気極で水と酸素が反応して水酸化物イオンが生じ、これが燃料極で燃料の酸化反応に用いられる(AFCの動作)。したがって電解質膜はアルカリ性で腐食性が弱く、電極に安価な金属材料や非金属触媒を使うことができる。同大学の研究グループは、シリコーン系材料でAMFCの電解質膜を開発した。実用化には出力アップが必要で、トリエチルアミン膜に着目、イオン交換容量を増大できる合成条件を探索する。(化学工業日報11年4月14日)

7.再生型FCの開発
 高砂熱学工学は、水を電気分解して水素と酸素を製造する水電解装置と、水素と酸素から発電するFCを一体化したセルと蓄電装置を開発した。同社が業務用建物に電気・熱・水素を供給するシステムとして、アタカ大機、産総研と共同で取り組んでいる水素利用システムを構成する要素技術であり、2008年度から宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で開発を進めてきた。現在の開発レベルは発電出力で3kW級であるが、今期得た成果を活用することで、2017年には水素利用システムとしての実用化を目指す。今回開発した水電解・FC一体型セルは、ユニタイド再生型FC(URFC)とも呼ばれ、水を電気分解(充電)する際に発生する水素と酸素を容器に貯蔵しておくと発電が可能で、発電の際に発生する水を貯蔵しておけば電気分解ができる。したがって、URFCシステムは反応時の発生物を貯蔵することにより充電装置と同様に繰り返して充電と発電を繰り返すことができる。水素、酸素の貯蔵圧力が高いほどエネルギー密度は高くなるので、将来的には既存の蓄電池に比べて高いエネルギー密度が期待できるという。(建設通信、日刊建設工業新聞11年4月18日)

8.エネファーム普及事業と問題点
(1)停電とエネファームの運転
 深刻な電力不足を受けて、家庭用FCと太陽光発電について「停電時に使えるのか?」との問い合わせがメーカーに相次いでいる。FCは一版電源を使ったモーターが必要なため停電時は使用できず、太陽光発電は発電量が小さい。又FCの運転中に停電すると機器が故障する可能性があり、東京ガスはホームページなどで「計画停電が始まる前にFCの電源を切って欲しい」と告示している。FCも太陽電池も電力不足に貢献する意味は大きいが、停電時には過度の期待は禁物のようである。エネファームは電気・ガス料金が年間5〜6万円程度安くなるメリットがあり、09〜10年度に全国で1万台以上が売れた。(読売新聞11年3月30日)

(2)北ガス
 北海道ガスは4月4日、2011年度事業計画を発表した。都市ガスを使う寒冷地対応"エネファーム"や家庭用ガスコージェネレーションシステム"コレモ"の販売を開始する他、家庭向けの営業を強化し、福島第1原発事故に伴う電力不足などで、オール電化住宅の普及が足踏みするとみられる中、都市ガスの利用拡大を目指す。8月に発売するエネファーム(パナソニック製)ついては、2年間で150台の販売を計画している。(電気、北海道新聞11年4月5日、電波新聞4月6日)

(3)東邦ガス
 東邦ガスは11年度の事業計画をまとめた。ガス販売量を前年度比1.1%増しとした。なおこの計画には東日本大震災の影響が盛り込まれておらず、今後見直す可能性がある。家庭用の販売計画では、エネファームの新型機を販売するとともに、エコジョーズやガス温水床暖房などの販売に力を注ぐ。エネファームの11年度販売目標台数は600台。(電気新聞11年4月6日)

(4)広島ガス
 広島ガスは4月7日、11年度事業計画と中期経営計画(11〜13年度)を発表した。その中で、家庭用ガス機器の販売目標として、給湯暖房システムを2720台、暖房機を4140台、エネファームを110台と設定した。又設備投資額は前年度25億円増の60億円としている。(電気新聞11年4月8日、日刊建設新聞4月14日)

(5)FCA
 FC普及促進協議会(FCA)は、11年度民生用FC導入支援事業におけるエネファーム補助金申請の募集を開始した。申し込みを受け、FCAが補助金対象審査(機器、工事内容など)を行う。FCAが申し込みを受理した後に着工となる。申し込み期間は12年1月31日までで、設置工事完了期限および補助金交付申請書の提出締め切り日は12年3月12日。(電波新聞11年4月13日)

9.FCV&EV最前線
(1)トヨタ車体
 トヨタ車体は3月30日、2011年から15年度を対象とした"第5次トヨタ車体環境取り組みプラン"を策定したと発表した。今後取り組む環境活動としては、低炭素社会の構築や循環型社会の構築、環境保全と自然共生社会の構築をテーマとして掲げたほか、小型EVやFC関係部品の開発と製品化を推進するとしている。又軽量化技術の開発と製品化を盛り込んでおり、ボデイーの軽量化や軽量設計の推進にも取り組む。(日刊自動車新聞11年3月31日)

(2)ソウルモーターショウ
 ソウルモーターショウが4月1日、国内外から139社が参加してソウル近郊で開幕した。韓国最大手現代自動車は、主力中型セダン"ソナタ"ベースのHVを4月中に北米市場、5月に韓国で発売すると発表、水素FCVのコンセプトカーも披露した。現代自傘下の起亜自動車もソナタと同じ車台を使ったHVを披露、又EV"ネモ"のコンセプトカーを初公開した。(日経産業新聞11年4月1日、日経産業、日刊自動車新聞4月7日)

(3)ホンダ
 ホンダは2012年にも中国にEVを投入する。現地2拠点で量産する方針。日本の自動車大手でEVを中国生産するのは初となる見込みである。VWやGMなど欧米勢も中国でEV投入の意向を示している。4月19日に開幕する上海国際自動車ショー(上海モーターショウ)ではEVを巡り、世界の自動車王手が火花を散らすことになる。(日本経済新聞11年4月19日)

(4)ポリプラスチックス
 ポリプラスチックスは新規事業育成に力を注ぎ、特にEV、FCVなどエコカー向け材料や天然繊維複合化材料など環境対応エンプラの開発を加速する。既に試作品の開発に成功している材料もあり、今年からスタートした3カ年の新中期経営計画で事業化を目指す。特にエコカー関連では、EV開発ベンチャーSIM-Drive(神奈川県)の先行開発車事業第2号プロジェクトに参加している他、FCV関連メーカーなどとの共同開発に乗り出しており、自動車部品の軽量化や部品一体化によるコスト低減を目指していく。(化学工業日報11年4月8日)

(5)タイコエレ
 タイコエレクトロニクスジャパン(川崎市)は、HEV、EV、FCVなどのメーン回路に最適な高電圧・高電流対応の汎用防水コネクタ"HV800コネクタ"の販売を開始した。2極タイプと3極タイプを用意し、どちらも嵌合状態を検知できるセンサーを搭載する。今後、対応電圧・電流、極数など、ラインアップ拡充を予定していく。(電波新聞11年4月14日)

10.水素ステーション事業
(1)大ガス
 大阪ガスは導管技術センター(大阪市)内に大阪水素ステーションを開設した。都市ガスを改質して水素を作る"ハイサーブ"を用いており、水素製造能力は30m3/h、水素貯蔵能力約200m3で、乗用車2台を連続充填できる。技術検証などを進め、2012年度末までに水素ステーションインフラ整備の投資判断に役立てる。水素製造能力250m3/hの大型機の開発も進める。(日刊工業新聞11年4月4日)

(2)ホンダ
 ホンダは4月20日、太陽光発電により水から水素を取り出す"ソーラー水素ステーション"を2011年度末までに埼玉県庁に設置すると発表した。同社のFCV"FCXクラリティ"を1台供給し、取り出した水素をFCVのチャージに活用するとともに、FCVは埼玉県と共同で取り組む次世代パーソナルモビリティー実証実験で使う予定である。このFCXクラリティは外部出力(AC)が可能な電源機能が追加されているので、移動可能な発電設備として活用でき、非常用電源やスマートグリッドの1部としての役割が期待できる。又ソーラー水素ステーションでは、太陽電池と高圧水電解システム、高圧水素タンク、充填ノズルを組み合わせ、水素の製造と圧縮を一体化したことによって小型・低騒音化を実現した。(日経産業、日刊工業、日刊自動車、埼玉新聞11年4月21日)

11.水素生成精製技術の開発
(1)岡山大と大阪市大
 岡山大学の沈建仁教授や大阪市立大学の神谷教授は、「太陽光によって水が分解され、電子や水素イオンが作られる植物の光合成反応」において欠かせない生体分子の立体構造を解明した。研究チームは藻類が光合成に使う細胞膜にある"膜タンパク質複合体"に注目、複合体の高品質結晶を作り"SPring-8"で立体構造を解明したところ、複合体は19個のタンパク質や水分子などから成り、マンガンやカルシウム、酸素の原子からなる部分が重要な働きをしていること、そしてこの構造が水を分解する反応に欠かせないことを見出した。この成果は水から水素を生成する技術の開発に繋がり、神谷教授は「化学合成の専門家らがこの分子を作ることができれば、エネルギー問題の解決に役立つ触媒ができるかもしれない」と話している。なお、この成果は英科学誌ネイチャー(電子版)に掲載された。(日本経済、大阪日日、山陽、中国新聞11年4月18日、日経産業新聞4月25日)

(2)大阪市大
 大阪市立大は4月21日、"人工光合成"技術によるFCの研究開発プロジェクトを始めると発表した。人工光合成は光をエネルギー源としてCOを有機物に変換する次世代エネルギー技術であり、同大学は民間企業とも連携して2015年にモデル装置を完成させ、20年には製造技術を確立したいとしている。プロジェクトは神谷教授らのグループが光合成の仕組みを解明した成果をもとに進められる。同じ化学構造の触媒を開発できれば、太陽光と水からFC用の水素を取り出すことが可能になり、又別の触媒でCOと反応させ、メタノールを合成するのを目標としている。プロジェクトチームは30人規模で、今後国の補助も得て同大学杉本キャンパス内(大阪市)に人工光合成研究施設を整備する予定である。ただ、光合成に必要な構造を分子レベルで模倣する触媒の開発は容易ではなく、大量生産が可能な技術の確立までには課題が多く、商業化は30年頃になるという。(読売新聞11年4月22日、日刊建設工業新聞4月25日)

12.水素輸送・貯蔵技術の開発
 バイオコーク技研(東京都)は、水素化マグネシウム(MgH2)の本格事業化に乗り出した。単位質量当たりの吸蔵量の多さや、取り扱いの容易さからFC向け水素キャリアとして実用化を目指す一方、水素水や粉末加工商品など工業や生活関連分野での商品開発を推進する。現在、水素放出後に生成される水酸化マグネシウムの直接還元装置の開発に取り組んでおり、同社はリサイクルを含めた水素利用の新ビジネスモデルを確立することを目指す。(化学工業日報11年4月13日)

13.DMFCの開発と商品化
 東洋紡は、DMFC発電装置に純水製造装置、感染症検査装置などを組み合わせた災害時対応システムを開発した。災害時対応システムは自然災害や事故など電源確保が困難になった緊急非常時において、照明・造水・通信などの生活インフラを提供するシステムで、電源にDMFC発電装置"Proton Cube"を採用、高い静粛性と長時間運転を可能とした。浄水および純水製造装置は、限外ろ過(UF)や逆浸透(RO)膜を利用したもので、河川・湖沼水を使用して飲料水を確保できる。更に同社の感染症検査装置"POCube"や遺伝子解析装置"GEECUBE"を組み合わせることで、緊急を要する検査に対応できるようにしている。(化学工業日報11年4月7日)

14.FC・水素関連計測・観測機器の開発と事業化
 プライミクス(大阪市)は攪拌機"フィルミックス"シリーズで、FC材料の少量実験に適している"フィルミックス30-30"を5月1日に発売する。高価な白金触媒の使用サンプルが少量で済む。価格は150万円。メーカーの開発部門や研究機関向けに、年間50台の販売を見込む。円形の穴の開いたホイールを高速回転させて高速流体と壁面の速度差を利用し、粒子を均一に分散させるのが特徴で、特にフィルミックス30-30は容量7〜13mLと少量サンプルの分散に特化した。金属コンタミ(混合物)を防ぐため、液体と接する部分を全てセラミックス製にした。ホールの回転速度を変化させることにより、粒子のサイズをコントロールできる。変動要因が少なく再現性が優れているため、実験時間の短縮を図れる。(日刊工業新聞11年3月31日)

15.企業によるFC事業展開
(1)日立造船
 日立造船は約20億円を投じ、築港工場(大阪市)に精密機械事業の営業・開発拠点"精密機械センター"を新設する。太陽電池や液晶の製造装置のデモ機を置くほか、開発人員らを集約して有機エレクトロルミネッセンス(EL)照明・ディスプレーやFCなど新規分野の研究開発を強化する。同事業は現在約300億円規模だが、2013年度に500億円規模に引き上げる。(日刊工業新聞11年4月5日)

(2)クレハエラストマ―
 クレハエラストマー(東洋紡グループ)は、同社の超極薄ゴムシート"ぺらぺら君"のPEFC用ガスケットについて、本格的な提案活動を推進する。このペラペラ君は、各種エンプラフィルムとゴムを一体成形したハイブリッド超薄膜ゴムシートであり、このうちPEFC用ガスケットはPET、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルイミド(PEI)などを基材とし、両面にシリコーンゴムやEPDMゴムを一体成形した3層構造になっている。厚みは0.15〜0.30mmに対応可能、基材フィルムを使用することでコシがあって取り扱い安く、又シール性に優れる。(化学工業日報11年4月13日)

 ――This edition is made up as of April 25, 2011――

・A POSTER COLUMN

ビルやマンション向けエネルギー・マネジメント・システム(BEMS)
 東京ガスは各種エネルギー機器を活用し、マンションやビルの電力消費量を最大4割削減できるシステムを事業化する。FCや太陽熱温水器など個別に販売してきた自社製品などを組み合わせて建物をまるごと省エネ化し、入居企業や住人の電力料金削減につなげる。
 東ガスは横浜市内に建設予定の社宅に先行導入する。FCおよび集熱パネルの面積が数十m2の太陽熱温水器に、外部調達する出力10kW程度の太陽光発電装置を組み込む計画であり、気象条件などにより出力が変動し易い自然エネルギーと、電力会社から調達する電気の利用割合を調整するエネルギー管理システムを独自に開発する。省エネ性能を実証して、商用に改良する予定である。同規模の建物に比べて、最大40%程度の省エネ効果を見込んでいる。
 システム価格は未定であるが、20戸程度のマンションの場合、数千万円からになるとみられる。発売から2〜3年後を目途に、年20〜30カ所程度の販売を目指す。
(日経産業新聞11年4月11日)

首都圏での電力不足に対応して家庭用蓄電池を投入
 東芝、パナソニック等は家庭用の蓄電池を発売する。今夏に東京電力管内が深刻な電力不足に陥る恐れがあるため、政府は家庭にも15〜20%の節電を求めた。各家庭が夜間に蓄えた電力を昼間に利用すれば、昼間の瞬間最大消費電力が抑えることができる。東芝は2012年に予定していた発売時期を今年の6月に前倒しする。年度内に発売予定のパナソニックも前倒しを検討する。経済産業省は蓄電池の家庭への普及を後押しするため、購入者への補助金やポイント制の導入などの検討に入る。
 東芝は蓄電能力が1kWh、3kWh、5kWhの3種類を投入する。持ち運び可能でコンセントをつないで充電し、白物家電やデジタル家電に電気を供給する。5kWhの場合、15畳対応のエアコン1台を約6時間運転できる。価格は1kWhの製品で40万〜50万円であるが、政府の補助金などが導入されれば、実質は20万円を切る可能性もある。年間2万台の供給力があり、増産も検討する。
 パナソニックグループも家庭用蓄電池の発売時期を前倒しすることを検討しており、子会社の三洋電機も業務用蓄電池の容量を小さくした家庭用システムの開発を急いでいる。又シャープなどが出資するエリーパワー(東京)も今秋に家庭用蓄電池を発売する。
 電気料金が昼間の約1/3になる夜間(23:00-7:00)に充電すれば、ピーク時の消費電力を抑制できるのみならず、電気料金の節約や停電時の備えにもなる。経済産業省は購入者への補助金やポイント制導入などで、蓄電池の家庭への普及を後押しできるかどうか具体的な検討に入る。
(日本経済新聞11年4月14日)

東ガスが風力発電事業に本格参入
 東京ガスは風力発電事業に本格参入する。日立製作所グループが山形県で展開する風力発電事業者に約3割出資し、経営に関与する。出資したのは庄内風力発電(日立市)で、東ガスが庄内風力の第3社割り当て増資に応じ、日立子会社の日立エンジニアリング・アンド・サービスに次ぐ第2位株主になった。原発の事故で再生可能エネルギーの普及に弾みがつくとみられており、風力発電のノウハウを蓄積する。
 庄内風力は2005年から事業を開始し、現在は山形県遊左町、庄内町で風力発電設備計10基を運営、総出力は約16,000kWで、全量を東北電力に売電している。このうち昨年末に稼働した遊左町の7基は日立グループの新神戸電機が開発した大容量鉛蓄電池を搭載しており、天候次第で出力が変動する自然エネルギーの弱点を補って安定した電力供給ができる最新型の風力発電所である。
 東ガスは現在、千葉県袖ケ浦市の自社工場で出力2,000kWの小規模風力発電所を展開、グループ会社を通じ環境負荷が低い電力として発売してきた。庄内電力への出資を通じ、蓄電池を融合したエネルギーシステム構築・運営のノウハウを蓄積する。
(日本経済新聞11年4月21日)

太陽光発電を家電量販店が拡販
 家電量販店大手が太陽光発電装置の販売を拡大する。コジマは従来より2〜3倍広い専用の売り場をほぼ全店に設置、ヤマダ電機は発電効率が1割程度高い台湾メーカーの太陽光発電装置を独占販売する。東日本大震災の影響による電力不足を受けて、太陽光発電への関心は高まっている。普及に向けた政府補助金の後押しもあり、ポスト家電エコポイントのけん引役としての注目も高まりそうである。
 太陽光発電装置は一般家庭で標準的な出力3kWの場合180万円程度(工事費込み)で設置できる。太陽光発電協会によると、都内で3kWの装置を導入すれば、1世帯の年間消費電力量の約半分を賄えると云う。新規購入する家庭向けに政府は、補助金や余剰電力の買い取り制度を活用すれば、12年程度で費用を回収できる仕組みを設計している。2011年度の補助金は、出力1kW当たり4万8,000円。電力会社によると余剰電力の買い取り額は一般的な家庭で約8,000円/月になる。
(日本経済新聞11年4月27日)

トヨタ自動車が非接触の充電技術で米社と提携
 トヨタ自動車は4月27日、アメリカの充電技術ベンチャー"ワイトリシティ・コーポレーション(マサチューセッツ州)"と提携したと発表した。ワイトリシティが持つ非接触充電技術を使い、電気コードを使わずにEVを充電する手法を確立する。ワイトリシティの増資も引き受けた。両社で開発する技術の利用を他の自動車会社にも促し、世界標準化を狙う。
 車庫の地面などに充電器、車両下部に充電器を置き、EVやPHVの電池に充電する技術を開発する。「両社の連携策は今後詰める」(トヨタ)としており、実用化の時期は明らかにしていない。
(日本経済新聞11年4月28日)