第176号 東京都心と羽田空港間でFCバスを運行
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.エネファーム事業展開
4.EV&FCV最前線
5.水素ステーション事業
6.水素貯蔵技術の開発
7.MFCの開発研究
8.新エネルギー総合システム
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)環境省
 環境省は地球温暖化対策の中長期ロードマップについて検討するために設置している中央環境審議会地球環境部会・中長期ロードマップ小委員会は11月25日、これまでの議論を踏まえた取りまとめ案を提示した。2020年に日本の温室効果ガスを1990年比25%、50年に同じく80%削減するための中長期的に必要な対策・施策の検討と、社会経済の変革に必要な取り組みなどを示した。自動車分野では50年に新型乗用車の90%以上が次世代自動車となるなどの他、20年には乗用車の燃費を05年比最大65%改善するなどをイメージしている。又日々の暮らしに係わる家庭や業務、運輸部門では年率1.5%〜2.5%程度、産業部門では年率1%程度の排出削減幅が必要としている。(日刊自動車新聞10年11月26日)

(2)経産省
 経済産業省は、エネルギー基本計画の「2030年までに90年比30%のエネルギー起源CO削減」という目標達成には、中長期的に年5千億〜6千億円程度の予算支出が必要との試算をまとめた。10年度は石油石炭税収4800億円(予算ベース)のうち、エネ起源CO対策に約2700億円を充てているが、目標達成には単純計算で更に2300億〜3300億円規模の支出が必要との結論である。民生部門の主な使途は、次世代照明の開発・導入支援、家庭用FC・住宅用太陽光の導入支援、スマートコミュニテイ実証など。産業・エネルギー部門は事業者向け省エネ設備や再生可能エネルギー熱設備の導入支援、天然ガスの利用促進対策などに充てる。革新的技術開発部門はCCSや高効率火力発電を始め、長期的に大幅な温室効果ガス削減が期待できる技術開発が柱。(電気新聞10年11月26日)

(3)総合科学技術会議
 2011年度から5ヵ年の第4期科学技術基本計画について、政府の総合科学技術会議の基本政策専門調査会は、環境・エネルギー分野と医療・介護分野の2大イノベーションを目標に、25兆円を研究開発に投資する案を纏めた。11年3月に閣議決定する。25兆円はGDPの1%に相当し、現行の3期計画と同額。2期計画の実績は目標24兆円に対して21兆1000億円、3期の実績も21兆6000億円に留まる見通しだが、厳しい財政状況の中、予算配分に効果があったとして引き続き数値目標を掲げた。海江田科学技術政策担当相は「科学技術は経済発展の基盤であり大事、全力で後押しをしたい」と述べた。環境・エネルギー分野では太陽光発電やバイオマス利用技術の飛躍的向上の他、次世代自動車の蓄電池や燃料電池(FC)、水素供給システムなどの開発を目指す。2期、3期計画では生命科学、情報通信、環境、ナノテクノロジー、材料を重点推進4分野としたが、温室効果ガスの排出削減や少子高齢化対策という社会的要請に応える姿勢が明確でなかったとして、2大技術革新に絞った。(建設通信新聞10年12月17日)

2.地方自治体による施策
(1)豊田市
 愛知県豊田市は、10月に開通した新規バス路線に、トヨタ自動車と日野自動車が共同開発して05年の"愛・地球博"で使われたFCバスを導入、運行を開始した。同時にPHVを市民が体験利用する試みも始めた。PHVは市がトヨタからリースで20台を導入している。13台は市の業務用に使っており、残る7台を市民や事務所に貸し出した。市民は3時間、事務所は2週間程度まで利用できる。市によるとPHVの市販予定である11年12月まで試乗可能である。又市は09年度、市内11カ所に充電ステーションを整備済み。太陽光発電と蓄電池を併用しており、天候や時間帯に左右されず再生可能エネルギーで充電・走行できる。10年度には5カ所に充電ステーションを追加する。(電気新聞10年11月30日)

(2)福岡県
 福岡県はLPガス仕様家庭用FCによる省エネ実験を進める同県糸島市の"水素タウン"について、今年度上期の1世帯当たりCO排出量が火力発電と比べて月平均28.4kg減ったと発表した。実験に参加する150世帯全体では年間51トンが削減される計算になる。(日経産業新聞10年12月1日)

(3)岐阜県
 岐阜県産業技術振興センターは、グリーンビジネス創出基金を活用して、民間事業者などが県内で行う新エネルギーなどの施設や設備を整備する事業を補助する「岐阜県新エネルギー等導入モデル支援事業補助金」を創設、補助の対象となるモデル事業を募集する。募集事業は、事業者が県内で行う新設工事、既設の施設・設備の改修工事で、太陽発電やバイオマス熱利用など新エネルギー関連、LED、省エネ型冷暖房施設、FCやコージェネレーションシステムなど。(日刊建設工業、建設通信新聞10年12月7日)

(4)青森県と青森市
 青森県と青森市は12月14日、市中心部の広場に新エネルギーを取り入れた住宅や商業施設を整備し、実証実験を行う「低炭素型モデルタウン」の事業者を公募するため、募集要項を公表した。公募型プロポーザルで事業者を決める。同事業は、県と市が土地を所有する広場"青い森セントラルパーク(12.8ha)"を新エネルギーの実証実験場として、太陽光発電や燃料電池(FC)、バイオマス発電などの新エネルギーを取り入れた住宅や商業施設、研究施設、公園(1団で5ha以上)などを整備するもの。(日刊建設工業新聞10年12月15日)

(5)島根県阪南町
 島根県阪南町が、太陽光と木質バイオマスの活用策を探る"緑の分権研究センター"を12月16日、同町花栗の町農業活性化センター内に設置した。本年度は寒冷地仕様の太陽光発電の実験や、同発電によるマイタケの栽培などを進め、来年度以降、町全体に自然エネルギーを活用した取り組みを広げていく計画である。本年度は、飯石森林組合が同町佐見で運営するマイタケの菌床栽培施設に、通常の横置きの太陽光パネルと、積雪の影響を受け難い縦置きのパネルを1基(出力各1kW)ずつ設置、FCなども併用し、必要な電力の供給実験を行う。木質バイオマスの活用策については、木質需要を高め、町の90%を占める森林の再生を促すため、薪ストーブを普及させる事業の課題などを探る。総事業費は約3700万円で、本年度末に報告書を国に提出する。来年度以降は、EVによる森林セラピーツアーなども計画、町全域に取り組みを広げ、寒冷の中山間地らしい手法でCOの排出量を減らし、1次産業や観光産業の競争力を高めて雇用創出を目指す。(山陰中央新報10年12月17日)

3.エネファーム事業展開
(1)田中貴金属
 田中貴金属は11月30日、04年度からの10年上半期におけるFC用触媒の用途別出荷量を発表した。04年を基準とするとFCVの開発が活発であった06年度は過去最高の169%になった。その後集荷量は減少に転じたが、09年度は家庭用FCの導入増しを背景に162%まで回復、現在も増加傾向にあり、10年度上期を経過した時点で過去最高の出荷量になっている。(日刊工業、日刊自動車新聞、化学工業日報10年12月1日、電波新聞12月2日、鉄鋼新聞12月3日)

(2)大ガス
 大阪ガスは12月10日、エネファームが09年6月の発売から10年12月9日で累計販売台数が3000台を突破したと発表した。当初は今年度末の目標として掲げていたが、約3カ月前倒しで達成した。国の補助金効果もあり、新築戸建てで導入が進んだ。(毎日、産経新聞10年12月11日、電気、日刊工業新聞12月14日、電波新聞12月15日、化学工業日報12月16日)

(3)工藤建設
 工藤建設は、日産自動車が発売するEV"リーフ"を標準装備した建売住宅を横浜市に2011年1月22日に発売する。EVを装備した建売住宅の販売は全国初で、価格は6000万円前後を予定。建売住宅"EVハウス港北ニュータウン都筑の丘"は横浜市都筑区早渕に建設され、1月に5棟、5月に10棟が販売される。敷地面積172−247m2、2階建て延べ床面積113.4m2、リーフの他に、4.48kWの太陽光発電システムやエネファーム、LED照明、EV用普通充電設備を標準装備して、COの排出量を従来に比べて7〜8割削減し、「生活スタイルにもよるが、売電によって光熱費が不要になり、又太陽光発電でEV全ての充電をほぼ賄える」という。工藤建設は松沢神奈川県知事から環境配慮型住宅とEVを一体化した取り組みを提案され、これを日産自動車、東京ガス、横浜銀行などと協力して実現した。(神奈川新聞10年12月18日、日刊工業、日刊建設工業、建設通信新聞12月20日)

(4)FC普及促進協会
 FC普及促進協会が発表した10年度11月末日時点の民生用FC導入支援補助金申し込み受理台数(10年度累計)は、4099台(都市ガス仕様3527台、LPガス仕様572台)となった。建物区分は新築が69%、既築が31%、設置設備別では戸建て住宅が96.4%を占めている。集合住宅は0.7%、店舗は1.1%。申し込み受理台数100台以上は、埼玉県(222台)、千葉県(183台)、東京都(911台)、神奈川県(499台)、静岡県(105台)、愛知県(336台)、京都府(104台)、大阪府(311台)、兵庫県(439台)福岡県(157台)。同補助金制度は、09年に引き続き実施している制度で、エネファームの導入予定者やリースなどの提供者を対象に、導入費用の一部を支援する。データは4月23日の受付開始から11月末日時点での申し込み受理台数であり、実際の設置台数とは異なる。(電波新聞10年12月17日)

4.EV&FCV最前線
(1)トヨタ自動車
 トヨタ自動車は次世代自動車については、EVを近距離用、HVおよびPHVを乗用車全般、FCVを中長距離用とすみ分けて展開していく考えである。18日に発表した2012年までの取り組み計画では、乗用車系で11モデルのHVを投入、コンパクトクラスHVにはハイブリッド専用モデルを投入し、燃費目標として10・15モードで40km/Lを掲げる。EVは11年に走行実験を開始し、12年に日米欧市場に投入する。PHVは12年初頭にはグローバル規模で年間5万台以上の販売を、又価格は政府の補助金を除いて300万円程度とすることを目指す。FCVはコストや小型・計量化などの課題が残っていることからグループ全体で技術・商品開発に取り組み、国内については15年頃から4大都市圏でセダンタイプの販売を開始する計画。(日刊自動車新聞10年11月25日)

(2)東芝
 東芝は二次電池SCiB(Super Charge ion Battery)について、佐久工場に続いて量産工場を新潟県柏崎市に建設、11年に日産50万セルで稼働する計画である。SCiBは独自の負極材(チタン酸リチウム:LTO)を採用したことで、長寿命、安全性、急速充電性能、低温動作性など自動車にとって重要視される基本性能を兼ね備え、有望視されている。東芝は自動車関連では、モーター、インバーター、バッテリーという電動パワートレインの基幹部品を全てシステムとして供給できる数少ないメーカーであり、今後は15年度の自動車関連全体の売上高で7千億円を目指す。(日刊自動車新聞10年11月25日)

(3)三菱自動車
 アメリカで開催中の"2010年ロサンジェルスオートショウ"で北米向けEV"i-MiEV"が披露された。北米向けは、先月フランスで開催された"パリモーターショウ"で初披露された欧州向けや日本向けに比べて、ボデイーサイズを一回り大きくするなど居住性に配慮した仕様になっている。(日刊自動車新聞10年11月25日)
 法人向けに09年発売した"i-MiEV"を今春から個人にも売り出し、生産台数は累計で5000台に達した。(東京新聞10年12月6日)

(4)欧州
 欧州でFCVが2030年以降、自律的な成長軌道に乗るとの研究報告が示された。欧州市場に展開する自動車、石油精製、産業ガスなどの企業とNGO、政府機関が共同でまとめたもの。50年の欧州市場でのシェアを25%と想定。同年の目標とする運輸部門の温暖化ガス95%削減目標に向けて、FCVが重要な役割を果たし得ることを確認した。課題とされる水素供給インフラ整備も、1台当たりのコストに占める負担は5%ほどに留まり、普及促進の障害にはならないとした。(化学工業日報10年11月26日)

(5)中国
 中国の北京市が2012年までに新エネルギー自動車3万台を一般に普及させる計画を進めている。中国当局は発展が見込まれる新エネ自動車を新興産業の主柱に据えており、北京市はそのモデルケースとして、補助金制度の導入などで新エネ自動車の市場浸透を図る。万鋼科技相は11月上旬「この10年の努力で中国のEV産業は開発段階から産業化段階に入った。後10年前後でコア技術を習得し、競争力のあるEVの生産体制を形成する」と語った。中国当局が推進する新エネルギー車には、HV、EV、FCV、水素エンジン車、ガス自動車などがある。(フジサンケイビジネスアイ10年12月3日)

(6)日産自動車
 日産自動車は12月3日、EV"リーフ"を国内で20日に発売すると発表した。予約注文を受けている法人や顧客向けに20日から出荷を始める。2010年度は6千台を販売する。米国でも12月中に、欧州では11年1月から順次発売する。NECグループと共同で生産するリチウムイオン電池を搭載、日本の燃費測定方式(JC08モード)で換算した場合、1回の充電で200km走行できるとしている。2つのモデルを用意、価格は376万4250円からで、国から最大78万円の補助を受けることができるので、購入者の実質的な負担は298万4250円からとなる。(日本経済新聞10年12月3日、朝日、毎日、日刊自動車新聞12月4日)
 日産自動車のEV"リーフ"が、欧州カー・オブ・ザ・イヤ―を受賞した。EVがこの賞を受けるのは初めて。(東京、中日新聞10年12月6日)

(7)BASF
 ドイツ化学メーカーBASFは12月2日、EV向け素材を中心に事業を拡大し、アジア太平洋地域での売上高を20年度までに2倍に伸ばす方針を明らかにした。リチウムイオン電池と車体軽量化の2点で開発を加速する。(電気、日刊自動車新聞10年12月3日)

(8)水素供給・利用技術組合
 水素供給・利用技術研究組合(HySUT)は12月7日、水素ハイウエイプロジェクトを本格化すると発表した。経産省が推進する「水素利用社会システム構築実証事業」の1つとして行うもの。12月16日から新宿駅西口―羽田空港、東京シテイエアターミナル―羽田空港の区間で、首都高速道路を経由して夫々1日1往復のFCバスの定期営業運航を開始する。運行モデルには、トヨタ自動車と日野自動車が共同開発した"FCHV-BUS"を選択した。又1月には東京都心と羽田空港、成田空港を結ぶハイヤーの運航も開始する。トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車のFCVを活用してサービスを行う。先ずは12月15日に羽田空港と東京杉並区の水素ステーションを開所、年明けに成田空港でも開所する。今回のプロジェクトは11年3月まで実施、FCVの社会受容性を確認し、今後の普及に結び付けるという。(朝日、日本経済、電気、日経産業、日刊工業、日刊自動車新聞、化学工業日報10年12月8日、読売、毎日、建設通信新聞12月14日)

(9)アメリカ
 米エネルギー省は12月16日、次世代自動車の研究開発に1億8400万ドル(約150億円)の資金支援をすると発表した。PHVやEVなどで必要な技術開発を重視。軽量材料やFCの設計など8分野に焦点を当てている。(日本経済新聞10年12月18日)

5.水素ステーション事業
 東京ガスとHySUTは12月15日、東京・京浜島で"羽田水素ステーション"の開所式を行った。ステーション内で水素を製造するオンサイト型で、地中配管から得た都市ガス19m3を原料に、約1時間で水素50m3が製造できる。その際発生するCOの10kgは液体で回収し、工業用原料として有効利用する。水素ガスの純度を高める過程で発生するガスは、水素反応に必要な燃料として利用する。都市ガスの19m3は一般家庭の半月分の使用量で、水素50m3はFCV(乗用車タイプ)の約1.5台分に相当する。一般的な乗用車の場合、水素30m3で満タンになり、航続距離は約370km。又1台当たり500m2程度の広さがあれば、水素ステーションが設置できる。羽田水素ステーションの場合、天然ガススタンド(4台分)のある大田清掃工場内の敷地を450m2借り増しして合計950m2の敷地に設置したため、国内初の"天然ガススタンド併設型水素ガスステーション"となった。開所式でHySUTの吉田理事長は「ユーザ利用を前提とした施設であり、水素ビジネスは新たなステージを迎えている」と述べた。(読売、朝日、毎日、産経、電気、日経産業、日刊工業、日刊建設工業新聞、化学工業日報10年12月16日)

6.水素貯蔵技術の開発
 京都大学の北川教授や九州大学などの研究チームは、水素を吸蔵し貯蔵できるナノサイズの合金を開発した。ロジウムと銀を原子レベルまで細かくして混ぜることにより、水素吸蔵合金として利用されているパラジウムに比べて量的に凡そ半分の水素を吸蔵する合金を作ることができた。パラジウム原子に比べると、ロジウム原子は電子と陽子が1個ずつ少なく、対象的に銀原子はそれらが1個ずつ多い構造を持つ。北川教授らはロジウムと銀を1対1で混ぜ合わせれば、パラジウムに似た性質を持つ物質が作れるのではないかと予測した。そこで、フラスコにロジウムと銀、ポリビニルピロリドンという高分子を入れ混ぜ合わせると、ロジウムと銀が原子レベルで結合した構造を持つ大きさ10nm程度のナノ粒子を作ることができた。ロジウムと銀を1対1の割合で混ぜると、最も効率良く水素を吸収することを確認した。これまでロジウムと銀は「水と油」のように混ざり合わない関係にあることが知られていた。ロジウムはパラジウムよりも高価なため、代替材料として使ってもコスト削減には結び付きにくい。同研究チームはナノ合金に使う安価な金属候補を探しており、低コストの水素吸蔵合金材料の開発を目指している。(日刊工業新聞10年11月23日)

7.MFCの開発研究
 東京大学の橋本教授と科学技術振興機構の加藤研究員らは、糖や酢酸など有機物を分解して電子を放出する菌(電流発生菌)をより多く増やす方法を見つけた。複数の細菌が共存する水田の土を採取し、酸化鉄と一緒に液体培地で培養、電流が多く流れることを発見した。電流発生菌は、取り込んだ酸化鉄を利用し、他の微生物よりも有利な環境を作り出すという。微生物を使ったFC(MFC)の実用化が期待される。電流発生菌は有機物を分解し、電子を捨てることによって自身の増殖に必要なエネルギーを得ている。発生する電子を電極で回収し、電流として取り出す微生物FCの研究が世界中で行われている。電極を底に敷いた直径3cm、高さ2cmの円筒状容器に酢酸入りの液体培地を満たし、水田の土を入れて培養したところ、通常培地で計測した電流値は数μAであるが、酸化鉄を添加すると最大で220μAの電流を取り出すことができた。酸化鉄を多く入れた環境で培養し、電極表面に積み重なった厚さ数十μm程度の微生物層を解析したところ、電流発生菌である"ジオバクター"が電極面を多く占め、菌全体に占める割合は20〜40%に達し、酸化鉄なしで培養した場合の5%程度に比べて大きくなった。(日刊工業新聞10年12月1日、2日)

8.新エネルギー総合システム
 筑波大学等は藻類を培養してバイオ燃料を作る設備に、太陽光発電、風力発電、FCを複合した実験設備を建設、最適な組み合わせなどを探る研究に乗り出す。実験設備は同大学内に建設中で、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構、国立環境研究所などと共同で研究に取り組む。藻類オイルを生産する他、藻類の搾りかすなどから水素を製造してFCを稼働、太陽光などで発電した電気で夜間にLED照明で光を藻類に当てる。DCをACに変換せずに使うシステムも研究する。(日本経済新聞10年11月29日)

 ――This edition is made up as of December 20, 2010――

・A POSTER COLUMN

温暖化ガスの世界平均濃度が過去最大
 世界気象機関(WMO)は11月25日までに、COなど地球温暖化の原因となる温暖化ガスの世界平均濃度が、2009年に過去最大を記録したと発表した。特に温室効果の大きいとされるメタンは3年連続で高い伸びとなったが、WMOは「原因は十分に分かっていないため、今後の見通しははっきりしない」としている。
 WMOは世界各国の地上観測点や船舶、航空機などを利用し、温暖化ガスの大気中濃度を測定、年平均値を求めた。年報によると、09年のCO濃度は386.8ppmで前年より1.6ppm増加、メタンは1803ppbで前年より5ppb、NOは322.5ppbで同0.6ppbそれぞれ増えた。産業革命前に比べると、現在の大気中濃度はCOが38%、メタンが158%、NOは19%高くなっている。
 メタンの増加原因は詳しく分かっていないが、07年の北極地域の異常高温で永久凍土が溶けだし、地中から大量に放出されたことや、07〜08年の熱帯地域の多雨で湿地が拡大したことが影響したと考えられるという。
(日本経済新聞10年11月25日)
 WMOは12月2日、2010年の世界気温は過去最高になる可能性があると発表した。1961〜90年の平均値を0.44〜0.66℃上回り、1850年の記録開始以来、上位3位の中に入るのはほぼ確実という。2001〜10年の10年間平均でみれば、過去最高の更新は確実とし、温暖化への危機を訴えた。
 第16回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)の会場で発表した。10年のデータは1〜10月のもので、最終報告は11年3月に公表する。
(日本経済新聞10年12月3日)

15年には水素ステーションを100ヶ所建設
 2015年のFCV商用販売に向け、水素ステーションの建設需要が今後高まる。
 経産省資源エネルギー庁は12月13日、水素社会の実現を目指し、水素を使った実証社会システム構築実証事業のうち、東京都心と羽田、成田空港を結ぶ高速道路を使い、FCバス(FCB)の定期運行を12月16日から始めると公表した。この中で国内の水素ステーション数を現在14ヶ所から「一桁は増やさないといけない」とし、15年に向け国内で最低100ヶ所程度は水素ステーションの建設が必要との考えを明らかにした。
 FCBの定期運行に備え、実証事業を担当する水素供給・利用技術研究組合(HySUT)は東京杉並区、羽田、成田の3カ所に水素ステーションを建設する。うち杉並と羽田が水素供給拠点として15日に運用を始め、成田は11年2月に運用開始を予定している。
 水素ステーションは、土地代を除き一般的に5億〜6億円(1か所当たり)の費用が必要とされる。エネ庁によると、今後ステーションの整備数を増やすためには規制緩和とコスト削減が求められるという。
 このため、「厳しい安全規制を緩和するため、行政刷新会議で17項目の規制緩和を検討している」(エネ庁)。これが実現すると、コストは2〜3億円になる可能性があるが、「海外は1〜2億円で整備できるので、技術開発も必要」としている。エネ庁では実証実験を通じて水素社会のビジネスモデルを提示するとともに、水素ステーションの整備促進と整備コスト削減などの取り組みを始める。
 HySUTが整備した杉並はJX日鉱日石エネルギー、羽田は東京ガス、成田は出光興産が担当した。HySUTは09年7月に設立、JX日鉱日石エネルギー、出光興産、岩谷産業、大阪ガス、川崎重工業、コスモ石油、西武ガス、昭和シェル石油、太陽日産、東京ガス、東邦ガス、日本エア・リキード、三菱化工機の13社が参加している。又北九州市では水素パイプラインを整備、一般家庭に水素を供給する社会実証も行っている。
(建設通信新聞10年12月14日)