第174号 間伐材等木質バイオマスからの水素生成
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.FC認証および標準関連情報
3.地方自治体による施策
4.海外政府機関の施策
5.FC関連要素技術の開発
6.SOFC開発動向
7.エネファーム事業展開
8.FCV&EV最前線
9.水素生成・精製技術の開発
10.FC関連の事業展開
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
 大畠経済産業相は10月15日、来日したドイツ連邦のライナー・プリューデレ経済技術相と会談し、両国の経済関係強化に向けた声明を発表した。両相は会談を通じて、次世代自動車、スマートコミュニテイ、宇宙分野など、新たな技術革新の可能性がある分野について、日独が重要なパートナーになり得るとの認識を共有、声明では再生可能エネルギー、電気自動車(EV),燃料電池(FC)を活用したスマートコミュニテイ分野の共同実証について、ドイツの経済技術省とNEDOによる情報交換に着手すると明記した。11月に経産省、NEDOと日本の民間企業による使節団がドイツを訪問する。この他、両大臣はレアアースの安定供給確保のための協調行動や、EVの標準化に関しても意見交換を行った。(電気新聞10年10月19日、日刊自動車新聞10月20日)

2.FC認証および標準関連情報
 日本電機工業会(JEMA)はこの程、FC認証基準"家庭用FCの技術上の基準および検査の方法(小形FCシステムの共通認証基準)"第6版を発行し、公式ホームページにもアップした。変更箇所は"系統連系保護装置等の試験方法"で、電気安全環境研究所からの試験方法の提供で差し替えを行った。又技術的な内容の見直しを行い、用語についてはJIS規格で使用したものに統一した。この基準は、定格出力が10kW未満の定置用PEFCユニット、定置用SOFCユニットに適用される。(電波新聞10年10月18日)

3.地方自治体による施策
(1)千葉県印西市
 都市開発機構は、千葉市ニュータウンのうち、千葉県印西市にある北総鉄道北総線印西牧ノ原駅北エリアを、先端の環境技術を取り入れた低炭素モデル都市として整備する。"ワンダー・グリーン・プロジェクト"として、民間企業11社と印西市で組織する"まちづくりかいぎしつ"を発足、スマートグリッドの導入などにより温室効果ガスの3割削減を目指し、具体的な方策を検討する。具体的には、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーをふんだんに取り入れる他、FCやEVの導入、オール電化住宅の積極的な整備を進め、又太陽光などで発電した電力の域内流通を実現するため、スマートグリッドの導入を視野に入れている。(建設通信新聞10年10月6日)

(2)福岡市
 福岡市は九州大学など大学の先端研究を企業の新製品開発に結び付ける共同研究施設"産学連携交流センター"を増設する。早ければ2013年度にも九州大伊都キャンパス近くに立地する初代センター近くに開所する計画である。(日経産業新聞10年10月15日)

4.海外政府機関の施策
 韓国知識経済部は10月13日、再生可能エネルギー産業に官民共同で今後5年間に40兆ウオン(約2兆9千億円)を投資する方針を発表した。太陽光、風力分野で中国企業が急成長するなど、国際競争力が激化していることに対応するもので、次世代太陽電池、洋上風力発電設備などの開発を促す。内訳は太陽光20兆ウオン、風力10兆(同)、FC9千億(同)、バイオ関連9千億(同)、などとなっている。太陽光を第2の半導体、風力を第2の造船産業に育成、それぞれで世界市場シェア15%を目指す。(電気新聞10年10月15日)

5.FC関連要素技術の開発
 物質・材料研究機構は10月5日、白金やロジウムなどレアメタルの使用量を大幅に削減することを可能にする触媒技術を開発したと発表した。新触媒はナノテクノロジ―を用いて開発したもので、微小な中空金属球体(メタリック・セル)の利用によって、従来の材料系に比べて熱凝集耐性を大幅に高めた。金属触媒は熱によって触媒同士が接着・融合して触媒活性点が減少する結果、触媒作用が失われる熱凝集という課題を抱えている。通常、金属触媒の活性点にはレアメタルが使われているが、活性の低下を補うためには過剰の活性点を導入する以外に方法はない。そのため、レアメタルの消費が避けられなかった。物材機構が開発した新触媒の基本材料となる中空のメタリック・セルは、外界と物質・エネルギーのやりとりを行う直径が1μm程度の細孔(チャンネル)を備えた薄い壁(セルウオール)で囲まれた直径1/100mm程度の微小級で、セル内部の触媒活性点はセルウールによって保護された特殊なトポロジーを持つため、通常の触媒材料が熱凝集によって活性点を失う高温条件下でも優れた触媒特性を長期にわたって維持する。メタリック・セルはアルコール溶媒中において、ポリスチレン(PS)微粉末の表面に白金被膜を化学還元によって析出させた後、大気中で500℃まで加熱しPSを気化させることによって合成される。合成法は簡単で、白金やロジウム系触媒を始めとして多くの触媒活性金属に対して適用が可能である。(日刊工業新聞、化学工業日報10年10月6日)

6.SOFC開発動向
 日本触媒は、SOFC電解質に使うジルコニアシートの増産に乗り出す。九州地区の既存設備でラインの改良や検査機器の追加などを行って生産性を向上し、2011年春を目途に生産能力を現在の1.5倍になる年産300万枚に引き上げる。アメリカのブルームエナジー社向けの販売が急拡大しているために増産対応を急ぐ。同社は00年にブルームエナジー社への販売を始め、同社が使用するジルコニアシートの約7割を供給している。具体的には、レアメタルのジルコニウムをシート状に加工する工程とシートに焼き上げる工程の両方を見直し、歩留まり改善するとともに生産スピードを引き上げる。同時に品質管理のための検査機器を増やす計画で、投資額は4億円強になる見通しである。日本触媒は09年12月にシートを焼く設備を増強し、生産能力をそれまでの3.3倍となる年産200万枚に引き上げたばかりで、新設備は今春から本格稼働し、4〜9月期の販売数量は80万枚程度であったと見られる。10月には既存設備がフル稼働になる見込みのため、追加投資に踏み切った。同社は新エネルギー分野を成長事業と位置付けており、ジルコニアシートの10年度販売数量は前年度比2倍の200万枚を見込んでおり、営業利益も黒字に転換する見通しである。(日経産業新聞10年10月5日)

7.エネファーム事業展開
(1)北ガス
 北海道ガスは、開発中の寒冷地仕様の機種について商品化の目途がついたため、エネファームの販売を2011年度から始める。初年度は30台以上を販売、将来は数千台規模を目標に、オール電化攻勢に対抗してガスの利用拡大を目指す。北ガスはパナソニックと共同で、凍結防止ヒーターなどを備えー15℃でも稼働する寒冷地仕様の開発を進めてきた。当初は11年度に試験販売し、12年度に30台以上の販売を目指していたが、商品化の目途がついて計画を前倒しした。(北海道新聞10年9月30日)

(2)東京ガス山梨
 東京ガス山梨(甲府市)は10月1日、試作中の家庭用FCシステムを県内の一般家庭2軒にモニター設置すると発表した。これまで商品化されているシステムは窒素を含まない都市ガスにしか利用できなかったが、試作機は東京ガス山梨が供給する窒素入り都市ガスにも対応している。(山梨日日新聞10年10月2日)

(3)JX日鉱日石エネと田淵電機
 JX日鉱日石エネルギーは太陽光発電、FC、蓄電池などの分散電源から住宅内の家電製品に効率良く安定的に給電できる"スマートルーター"を田淵電機と共同開発した。太陽光発電などからの出力をDC段階で統合することにより、分散型電源に必要なパワーコンデイショナーの構成を簡素化できる。スマートグリッド時代の電力変換機器と位置付け、2011年度からJXの社宅などで居住実験を行う。他の企業とも協力してスマートルーターのコンセプトを普及し、15年度にも市場投入を目指す。(日刊工業新聞10年10月4日)

(4)大阪ガスと田淵電機
 大阪ガスは田淵電機と共同で、エネファームと太陽光発電システムの組み合わせに対応するダブル発電パワーコンデイショナー(パワコン)を開発する。現状ではFCと太陽光発電システムのそれぞれに、発電したDCをACに変換するパワコンが必要であるが、これを統合することにより、コスト削減、低価格化、小型化につなげる。開発するW発電パワコンは、複数・異種のコンバーターを連動制御し、インバーターは1つに共通化する。FCと太陽光発電のそれぞれの発電量は識別・管理し、太陽光発電の電気を売電できる電力制御機能を搭載、又W発電パワコンにはFCで発電した電気の系統への逆潮流を防止する電力制御機能を搭載する。FCと太陽光発電のパワコンを別置きした場合に比べ、体積比で40%の削減になる。商品化は2〜3年後を見込んでいる。(日刊工業新聞10年10月8日)

(5)三井不動産
 三井不動産レジデンシャルは10月6日、東京都杉並区でエネファームを装備した戸建て住宅を11月中旬に売り出すと発表した。"ファインコート浜田山"は木造2階建てで総戸数は8戸、建物面積は92〜99m2。各戸にエネファームを搭載、又日々の消費エネルギー量を計測し、表示するシステムも採用した。販売価格は9千万円前後で、2011年2月下旬以降の入居を予定している。(日経産業、日刊工業新聞10年10月7日、建設通信新聞、住宅新報10月12日)

(6)NTTグループ
 NTTグループが、ICT機器にDC電力を供給する"DC給電"の普及に乗り出している。ここ数年、サーバーなどの機器が集中する自社のデーターセンターを中心にDC給電の導入を図ってきたが、09年11月には電機メーカーや大学などと共同で、一般家庭にも応用する技術開発に踏み出した。住宅用太陽光発電やFCの電力も効率良く利用できる。AC給電に比べて電力供給効率は1割アップし、CO排出量も同程度削減できるという。(フジサンケイビジネスアイ10年10月18日)

(7)都市ガス大手4社
 都市ガス大手4社(東京、大阪、東邦、西部ガス)におけるエネファームの2010年度上期(4〜9月)の販売実績(受注ベース)は、3767台となった。各社とも年度目標の7割台後半に到達、安定的に販売台数を伸ばしている。販売台数の最多は東京ガスで、その特徴は一戸建て住宅向けの台数が多いことで、構成比が4割を超えている。好調の要因について、東京ガスは「営業体制の整備ができたこと」を挙げている。大阪ガスも先を見据えた体制整備に着手した。10年6月にリビング事業部計画部内に"FC推進チーム"を新設、又技術開発部門の機能をリビング事業部に移管した。(日刊工業新聞10年10月19日)

8.FCV&EV最前線
(1)CEATECジャパン2010
 10月5日に開幕した電機やIT国際見本市"CEATECジャパン2010"に、日産自動車はEVを出展した。12月に発売する5人乗りEV"リーフ"が家庭でも手軽に充電できる様子を実演し、未来の車社会の一端を示した。山下副社長は会場内での講演で「幅広い業界の協力なしにEVが走り回る省資源型の町づくりはできない」と語り、電機・IT業界との連携を呼びかけた。又三菱自動車の益子社長も「自動車が電化製品の仲間になるだけでなく、エネルギーやITネットワークにどんどん組み込まれていくことになる」と強調、次世代車を巡る競争は激しさを増しており、日本が先頭を走り続けるには、ITや電機業界との連携が欠かせない」と語った。(日本経済新聞10年10月6日)

(2)スズキ
 スズキの鈴木会長兼社長はPHV"スイフト・レンジ・エクステンダー"の商品化に向け、車両走行実験を世界各地に拡大することを明らかにした。2011年初頭にもインドやハンガリーなどで公道走行試験を開始、データを蓄積する。スイフト・レンジ・エクステンダーは07年頃に独自で開発に着手し、今春実用化にこぎつけた。「現在は四輪の中で一番有望なのはPHV、当面、PHVの商品化を目指して技術開発に集中していく」と語っている。(日刊自動車新聞10年10月8日)

(3)高岳製作所
 高岳製作所は、従来より価格を2割抑えたEV用急速充電器を開発した。価格は280万円で従来品より同社70万円引き下げた。定格出力は50kW、15〜30分で電池容量の80%を充電できる。(日本経済新聞10年10月9日)

(4)ダイムラークライスラー
 メルセデス・ベンツ日本は10月12日、小型EV"スマート"の走行実験を国内で始めたと発表した。まず3台を導入して首都圏を中心に実験に着手、11年以降は10台以上まで増やすとともに対象地域を広げ、12年にもEVを市場投入する計画である。テスラ・モーターズ製リチウムイオン電池を搭載し、8時間の充電(200V)で135kmの走行が可能という。(日本経済新聞10年10月13日)
 ダイムラークライスラーグループリサーチ、メルセデスベンツ開発部門のデイレクターであるヨッヘン・ヘルマン氏は10月18日、EVの市販車について「東京、パリ、ロンドンのような大都市圏からEVの割合を高めていく」とし、EVのレンジは「既にAクラスのEVを欧州で発売している。このモデルは日本に輸出されないだろうが、Aクラスタイプを中心にラインアップを拡張していくことになる」と語った。EV関連の開発では「純電動、FCV、レンジエクテンダーの3つでやっていく。そして短距離は純電動、中距離はFCVというように用途に合わせられるようにする」ことを強調、又燃料効率からデイーゼルはダイムラーにとって重要」としてデイーゼルエンジンの開発に今後も力を入れる他、今後HVのモデルレンジを拡充する」とも述べた。(日刊自動車新聞10年10月19日)

(5)三菱自動車
 三菱自動車は10月14日、軽商用車タイプの新型EVを2011年中に発売する方針を明らかにし、三菱自動車とヤマト運輸は10月15日から、東京都内で集配業務用の試作EVで共同実証を始める。従来は12年に量販を始める計画だったが、宅配や運送会社向けを中心に潜在需要が高まっていると判断、投入を前倒しする。i-MiEVと基幹部品の共有化を進め、200万円以下という低価格での早期実用化を目指す。(日本経済新聞10年10月15日)

(6)トヨタ
 トヨタ自動車は10月14日、HV"プリウス"の姉妹車を2011年1月にデトロイトで開かれる北米国際自動車ショーで公開すると発表した。トヨタは12年までに、これらを含むHV6車種を世界で販売する方針である。記者会見した米国トヨタ自動車販売のエズモンド副社長は、各国の燃費規制に対応するため、HVやEVの拡充に加え、15年にはFCVも販売する方針を明らかにした。(読売新聞10年10月16日)

(7)ホンダ
 ホンダは10月15日、FCV"FCXクラリテイー"を福岡県庁に納入したと発表した。同モデルは08年11月から国内でリース販売しており、今回で12台目の納入となる。期間は1年毎の更新で、月額84万円のリース料金で契約を結んだ。地方自治体への販売は初めて。15日に福岡県庁で納車式を開いた。同モデルはアメリカにもリース販売しており日米での納入実績は28台になった。(日刊自動車、西日本新聞10年10月16日、日経産業、日刊工業新聞10月18日)

(8)山梨大と日産・ホンダ
 FCの研究開発を行っている山梨大FCナノ材料研究センター(渡辺センター長)は、FCVの実用化に向け、日産自動車(横浜市)と本田技術研究所(埼玉県)との共同研究に乗り出す。FCの性能アップや製造コストの削減、耐久性の確保など、同センターの基礎研究を応用した研究を実施する。同センターが自動車メーカーと共同研究を行うのは初めてで「2020年のFCV本格普及に向けた追い風になる」としている。具体的には、日産自動車とは触媒について研究、現在の触媒は利用率が1割程度にとどまっているため、利用率を引き上げる素材などについて研究する。本田技術研究所とは、同大が開発した材料を用いて製作したFCについて、製品化するための性能や耐久性を備えているかどうかを実験する。同研究所は、県が同センター実験棟に併設した共同研究スペースに入って研究を進める。(山梨日日新聞10年10月20日)

9.水素生成・精製技術の開発
 日立造船は、インデックスエコエナジー(福岡市)から"福岡バイオ水素プロジェクト大牟田プラント建設工事"を受注した。地元で得られる間伐材などの木質バイオマスを原料に水素を製造する商用プラントで、15トンの木材から約7200m3の高純度水素を製造、半導体工場などに販売する。プラントの建設地は大牟田市健老町大牟田エコタウン15区画で、11年2月に着工し9月末完成を予定している。水素製造プロセスは、高さ約35mのタワーで木質バイオマスの熱分解とガス化を行った後、気体の改質・精製を行う。LNGから水素を作る方法と比較し、製造時のCO排出量を75%削減できる。(日刊建設工業新聞、化学工業日報10年10月8日、建設通信、日本海事新聞10月12日、日経産業新聞10月15日)

10.FC関連の事業展開
(1)トクヤマ
 トクヤマは新規事業に向けた取り組みを強化する。FC膜では11年1月完工を目途に徳山製造所に導入中の試作ライン(年産1万m2)が完成予定で、カチオン系だけでなく、アニオン系も両方ラインアップする強みを生かし、レアメタルである白金以外の触媒検討を進めていく。(化学工業日報10年10月4日)

(2)小倉クラッチ
 小倉クラッチはデイーゼル車両の排ガス浄化装置(DPF)用の部品事業に参入、第1弾として欧州のメーカーにDPF用の空気循環ポンプの供給を開始した。国内外の複数のメーカーにも部品供給の準備を進めている。DPF向けに供給するのは、装置内に空気を送り込むポンプの役割を果たす"ブロワー"という部品である。又小倉クラッチは10年初めからFC向けの水素循環ポンプの生産を始めるなど、主力であるガソリンエンジン車の部品に加え、次世代技術や環境問題に対応した製品に力を入れている。同社はDPFやFC用の部品について、将来的には事業の柱になると考えている。(日経産業新聞10年10月19日)

(3)リニアテクノロジー
 リニアテクノロジーは、最大電力点制御(MPPC)機能を搭載し、250mVの低入力電圧で起動する同期整流式昇圧コンバータ"LTC3105"の販売を開始した。同製品は、0.2V〜5Vの広い入力電圧範囲で動作する。そのため、光起電力電池や熱電発電機、FCなど高インピーダンスの代替電力源からエネルギーを捕集するのに最適である。1千個時の単価は270円から。(電波新聞10年10月20日)

 ――This edition is made up as of October 20, 2010――

・A POSTER COLUMN

トヨタが車と住宅の電力を一括管理するシステムを12年に実用化
 トヨタ自動車は10月5日、自動車や住宅で使う電力消費を一括管理する情報システムを開発し、2012年に実用化すると発表した。太陽光発電量や電化製品の電力使用量、車のバッテリー残量などを常時把握し、家庭の電気代が最小限になるよう調整する。利用者は例えば家庭で充電するPHVなどに最も割安な方法で蓄電したり、携帯電話で充電を指示したりできるようになる。
 PHVの市販を始める12年初めに、新システムを活用したサービスも開始する。家庭内での電力消費を効率管理する"ホームマネジメントシステム"を住宅に設け、PHVやEVと組み合わせて使う。小平専務は5日の記者会見で「スマートグリッドの実用に向け、技術を確立し、事業モデルを構築する」と語った。
 新システムは住宅、自動車それぞれの電力利用状況を常に監視、時間帯別料金や天気予報、生活リズムを踏まえて電力消費を抑制する。例えば車を充電する際は夜間電力を優先するか、家庭用蓄電池を使うか、割安な方法をシステムが総合的に判断する。又携帯電話にシステムの情報を連動させるので、携帯で車両のバッテリー残量を確認できるほか、充電、カーエアコンの作動を遠隔から指示できる。充電スタンド、EV走行可能距離に関する情報も流す。住宅にある蓄電池や電気給湯器"エコキュート"など省エネ機器の操作に加え、全体の消費電力、太陽光パネルによる発電量などを利用者が携帯電話で把握することも想定している。
 一般的な住宅でガソリンエンジン車を使う場合に比べて、年間CO排出量を約75%(3トン)減らせるとトヨタは試算している。既に青森県六ケ所村のスマートグリッドの実証活動で導入しており、こうした実験を重ねながら実用化を目指す。既存のカーナビゲーション向け"G-BOOK"の情報システムを活用して新システムを構築することで、追加的な投資を軽減したという。実用までにコンテンツ提供などに伴う料金について有料化も含めて検討し、当初はトヨタ車での利用にとどめるが、将来は他社のエコカーの参加も見込んでいる。
(日本経済新聞10年10月6日)

先端省エネ住宅でスマートグリッド実証実験
 国内大手住宅メーカーが、横浜・みなとみらい21(MM21)地区の住宅展示場を"街"に見立てて、11月から最先端の省エネ住宅技術を披露し、スマートグリッドを想定した実証実験を行う。既存の住宅展示場を一体的に使った新しい試みになるとともに、APECに合わせて公開し、高い技術力をPRする狙いもある。
 住宅展示場"横浜ホームコレクション"(約20棟)を使い、隣接する異なるモデルハウスで太陽光発電の電力を互いに供給しあったり、EVに充電したりする。実際に先端技術を取り入れるのは3〜4棟であるが、街区全体でエネルギー消費を管理する仕組みなども導入する。
 住友林業は西側の一画に一戸建て住宅を新築中で11月上旬の完成予定。太陽光発電やFCの他蓄電池を導入する。窓を開ければ風が抜けやすい建物構造や、外壁と窓ガラスに断熱効果の高い最先端建材を採用する。大和ハウス工業や積水ハウスも太陽光発電などを使った先端技術を導入した省エネ住宅を紹介する。
 街全体でエネルギー消費を効率化するスマートグリッド構想を実証するため、次世代エネルギー社会システムの早期普及を目指す横浜市が各企業に呼び掛けた。
(神奈川新聞10年10月14日)

宮古島でメガソーラーとスマートグリッドが稼働
 蓄電池を使って大量の再生可能エネルギーを制御するスマートグリッドの施設が沖縄県宮古島市で稼働した。沖縄電力が10月18日、設備を公開した。
 沖縄電力は出力4,000kWの太陽光発電所を建設した他、蓄電池としてNaS電池4,000kWを設置、スマートグリッド制御システムなど主要な設備を東芝が構築した。島内には稼働中の風力発電所が4,200kWあるが、そこで発電した電力も蓄電池で制御する。宮古島の電力網はこれまで、火力発電所で使う燃料を増減させ、再生可能エネルギーによる変動を抑えていたが、この働きの一部を蓄電池に担わせることで、火力発電の量を増やさずに自然エネルギーの導入を増やすことが可能になる。
(日本経済新聞10年10月19日)