第165号 経産省PEFC技術開発に51億円
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.PAFCの開発と事業活動
3.SOFCの開発と性能向上
4.PEFC要素技術開発と事業展開
5.エネファーム情報
6.FCV最前線と水素RE車
7.水素生成・精製技術の開発
8.高出力DMFCの開発
9.FCおよび水素関連計機器の開発
10.FC関連の企業活動
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)経産省
 経済産業省は、自動車搭載用や住宅設置用FCの研究開発を支援する。PEFCについて、中核ユニットの触媒改良、計測・解析技術の確立に対して費用を国が負担する。住宅用で商用化されているものの原理的な解明は十分ではなく、寒冷地や様々な条件で使うFCV用として量産するには課題を抱えている。FCVは2015年の商用化をめざしており、量産に向けて研究開発を急ぐ。MEAについては、従来なかった電解質膜の開発や高温・低加湿でのイオン伝導性向上を目指す。触媒についてはレアメタルの1つである白金の使用量を現状の1/10まで削減を図る。これらのコスト低減策の他、化学反応や劣化の仕組みを分析するための計測・解析技術を確立し、国際標準化も目指す。NEDOを通じて運営費を交付し、開発テーマを公募して企業や大学に委託、経産省として10年度に51億円を盛り込んだ。過酷な自動車搭載用が支援対象になる見込み。FCCJがFCVと水素供給ステーションの両方で15年度の一般普及を宣言しているが、現在のFCVは1台数1千万円から1億円程度とされ、商用化には程遠く、それが量産されていない理由の1つである。経産省ではこれまでの研究開発の蓄積に基づいて経験的に進めている部分があると認識しており、原理解明まで含めた研究開発を支援する。(日刊工業新聞09年12月30日)
 経済産業省の2010年度予算案は、一般会計と3つの特別会計で1兆4,244億円と前年度比2.2%減となったが、地球温暖化対策予算は2.2%増の5,150億円を確保、特に住宅用太陽光発電への補助事業に前年度約2倍の401億円を計上した。技術開発関係では、太陽光発電システム次世代高性能技術開発(新規)に40億8,000万円、PEFC実用化推進技術開発(同)に51億円、CCS実証試験研究に59億円、洋上風力発電技術開発に23億円を計上した。スマートグリッド関連でも11億円を充て、新事業を立ち上げる。(建設通信新聞10年1月7日、化学工業日報1月15日)

(2)経産省・資源エネルギー庁
 資源エネルギー庁は1月26日、太陽光発電余剰電力の固定価格買い取り制度について、2010年度の買い取り価格を現状維持とする方針を決めた。住宅用設備は48円/kWh、出力10kW以上の住宅設備と非住宅設備は24円/kWhとする。設備導入時の補助金制度は新年度から条件を一部改定し、今まで70万円/kWの発電システムを補助対象としてきたが、これを65万円/kW以下に変更する。FCなどを併設する場合の買い取り価格も現状維持とする。(日刊工業新聞10年1月27日)
(3)文科省
 文部科学省は低炭素社会の実現に向けて、FCや太陽光発電、リチウムイオン電池など、エネルギー分野の基礎技術開発を加速する。日本原子力研究開発機構などが運営する大強度陽子加速器(J-PARC、東海村)や高輝度光科学研究センターの放射光施設(Spring-8、兵庫県佐用町)などの最先端研究拠点を、新素材の開発や製品の劣化メカニズム解析に活用する。研究設備を強化するため、09年度第2次補正予算で約40億円を確保した。環境エネルギー関連では、材料研究の他、低炭素社会構築に向けた研究基礎ネットワーク整備(140億円)、地球環境観測の推進(51億円)が盛り込まれた。(電気新聞10年1月7日)

2.PAFCの開発と事業活動
 富士電機HDは1月5日、09年発売した富士電機システムズの100kWPAFC"FP-100i"が、"日経優秀製品・サービス賞"を受賞したと発表した。付帯設備を一体化し、従来に比べて設置スペースを約半分、工事費用を1/10以下に抑制した。災害時に都市ガスからLNGに切り替えられる機能や、工場の未利用エネルギーを活用できることも特徴である。販売目標は当面年間20台で千葉工場に生産体制を整備、3年後には年間50台、将来は100台までにする計画である。価格は約120万円/kW(工事込み)程度である。(電気新聞10年1月6日)

3.SOFCの開発と性能向上
(1)日立
 日立製作所はSOFCの負極(燃料極)の外側に、電気の通り道専用の補助電極を新たに設けることにより、抵抗を従来と比べて約18%低減、更にセルの構造を見直して電気の通り道を短くすることにより、単位面積当たりの発電能力を約1.3倍の0.39Wに向上させた。補助電源の設置やセルの構造変更により、セルの品質に影響を与えないことを実験で確認した。家庭用SOFCとして実用化を進める。(日本経済新聞10年1月4日)

(2)日本触媒
 日本触媒はSOFCに使う電解質を量産する。増産するのはジルコニアなどを薄く延ばして焼き固めたシート状の電解質で、シートを1500℃程度で焼成する九州の設備を09年12月に増強、生産能力を3.3倍の年間200万枚に高めた。主要供給先のアメリカFCベンチャーが10年4月頃から向上や病院向けの業務用SOFCを量産するのに対応し、生産体制を拡充した。出力100kW業務用FCに換算して約330台分に相当する。(日本経済新聞10年1月5日)

(3)東工大と東ガス
 東京工業大学の山崎教授と荒木特任教授および東京ガスの研究グループは、SOFCの高温排熱で都市ガスから水素を製造した後、それをPEFCに供給して発電する複合発電方式において高い発電効率を実現する技術を開発した。高温動作のSOFCは水素のみならずCOでも発電するので、都市ガスから水素を製造する際に排出するCOやCOを含む排ガスをSOFCの燃料として再利用する仕組みを導入し、複合発電で50%を超える発電効率を実現した。しかし、排ガスをそのままSOFCの燃料投入口に戻すと、FC内部で温度分布が変化し故障につながり易い。研究グループは燃料ガスや空気の投入量を調節し、温度分布が偏らないよう工夫した。SOFCは高効率ではあるが起動に時間を要し、他方PEFCは燃料に水素しか使えないが起動時間は短い。集合住宅で一定量の電気をSOFCで供給し、同時に水素を製造して貯蔵する。エアコンの稼働などで一時的に電力需要が急増した時には、蓄えておいた水素を使ってPEFCで対応する構想が練られている。5年以内に本格的な実証実験を目指す。(日経産業新聞10年1月6日)

(4)日立とTOTO
 日立製作所とTOTOは共同で、セルを筒状に並べた新型の円筒縦縞型SOFCを開発した。動作温度は900℃まで上昇させ、筒の内側から空気を流し、外側に燃料を流して発電する。密閉性が高くて水素が外部に漏れにくいため安全性が高く、製品としての寿命も長い。これまで円筒型にすると、燃料ガスに含まれる炭素が負極側に析出し、燃料の通りが悪くなるという問題があったが、日立などは表面にアルミナ被膜を形成することで炭素の析出を防止、又温度の上げ方など運転方法も見直すことによりこの問題を克服した。又電圧のばらつきも従来の5%から2%以内になった。円筒型セルを360個並べて実用レベルに達する10kWの装置を試作した。3,000時間以上運転し、発電効率は約40%、排熱も回収し60℃の温水を作ることで総合効率は80%を超えた。老人ホームなど施設向けに実用化を狙う。(日経産業新聞10年1月13日)

(5)新日石
 新日本石油は1月18日、業務用SOFCを2011年度にも販売する方針を明らかにした。コンビニや小型外食チェーンを対象に、今夏にも実証試験に乗り出す。(産経新聞、フジサンケイビジネスアイ10年1月19日)

4.PEFC要素技術開発と事業展開
(1)日進精機
 日進精機(東京都)はセパレーターをプレスで安価に生産する技術開発に着手した。物質・材料研究機構が開発を進めている新素材を活用し、3月末までに技術を確立、FCV向けに売り込む。同機構の新素材は、ステンレス鋼に窒素を加えるなどにより導電性を高めたものであるが、硬さがステンレス鋼の2.4倍あって成形方法が課題になっていた。同機構は日進精機のプレス加工技術に着目し、同社に新素材の成形を依頼した。(信濃毎日新聞10年1月19日)

(2)岡崎製作所
 岡崎製作所(神戸市)はPEFC用マイクロヒーターの量産に乗り出す。神戸岩崎工場に量産設備を導入、4月までに月産2万台体制を構築する。既に家庭用FCメーカー数社への供給が決まっており、今後の需要増に対応して増産を決めた。同社のマイクロヒーターは家庭用PEFCの改質器内部に入れて温度を上昇させるなど、温度制御に使われる。主力製品の熱電対や導線を封入して無機絶縁材を充填したMIケーブルを主材料にしており、FCメーカーからは耐久性など品質面が評価された。量産設備の導入で、MIケーブルから細経、長尺などユーザーが求める形状のマイクロヒーターに加工する一貫体制を整える。当面計画する月産2万本は、FC用マイクロヒーターでは、日本最大の供給量となる。(日刊工業新聞10年1月26日)

(3)旭硝子
 旭硝子は2015年を目標に掲げるFCV普及に向けて、MEAの開発を加速する。耐久性を強化する高温・低加湿時のMEA特性を向上し、FCシステムの簡素化に役立てる。当社は93年から電解質膜の研究に着手、99年にはプロジェクトチームを結成して本格的な開発に乗り出した。特にフッ素系電解質で高温・低加湿時の劣化・分解現象に取り組み、04年には120℃で低加湿時に安定性を確立、そして使用条件の厳しいFCV用PEFCの実用化に弾みをつけている。(日刊自動車新聞10年1月28日)

5.エネファーム情報
(1)積水ハウス
 積水ハウスの太陽光発電とエネファームを搭載した戸建て住宅"グリーンファースト"での受注比率は順調で、09年11月末には目標の1,000台を超え、12月20日現在で1,100台を超えた。又太陽光発電システム搭載住宅は09年2月から12月20日までに6,000棟を受注した。エネファームは09年度から本格的な販売が始まったが、FC普及促進協会によると、購入補助金の申請件数は2,800件を超えているという。(住宅新報10年1月12日、山陽新聞1月13日、電気新聞1月22日)

(2)西部ガス
 西部ガスは1月20日、福岡市の同社総合研究所内に、国産材木造2階建て"創エネハウス"を開設した。太陽光発電システムやエネファームを備えた体験型モデルハウスとデーター取得への実証実験を兼ねたもので、総額5千万円を投じて建設を進めていた。(電気、西日本新聞10年1月21日)

(3)旭化成ホームズ
 旭化成ホームズは、システムラーメン構造の都市型3階建て住宅事業を強化する。具体的な商品としては"へーベルハウス・フレックス・G3"の名称で1月9日に販売を開始した。エネルギーに関する特性では、長期優良住宅に適合する次世代省エネ性能を実現しており、3階の屋根部分に太陽光発電設備を設置することができる。更にエコキュート、エネファームを始め将来的には蓄電池システムとEVの活用に対応する。(電気、東京、中日新聞10年1月22日)

(4)東ガスと大ガス
 東京ガスと大阪ガスはダブル発電での余剰電力買い取り価格の差額補てんに乗り出した。太陽光発電の48円/kWhに対するダブル発電は39円/kWhの差額に対して、東京ガスが10円/同、大阪ガスが9円/同を補てんする。(日刊工業新聞10年1月27日)

6.FCV最前線と水素RE車
(1)トヨタ自動車とダイムラー
 トヨタ自動車とダイムラーがFCV基礎部品の規格共通化を検討している。ダイムラーとの連携で部品規格を国際標準化し、次世代エコカーの開発でも主導権を握る構えである。トヨタは02年に日米でリース販売を始めたが、法人などの特定顧客が対象で、販売実績は32台にとどまっている。リース料は月額84万円。車両価格を抑えた量産車を15年に市場投入する計画で、12年7月からは元町工場(豊田市)で試作車の生産を開始する。ダイムラーは10年初頭に欧米で、メルセデス・ベンツのFCV約200台のリース販売を開始、技術改良を加えて15年に市販する計画である。部品の規格化は水素注入コネクターや水素タンク容量などが対象。水素の注入圧力や速度など、技術面での統一規格も共同テーマにする。(東京、中日新聞09年12月31日)
 ダイムラーは2010年10月から小型乗用車"Aクラス"をベースにしたEV"E-セル"をラシュタット工場で生産する。当初500台の少量生産でスタートし、一部顧客にリース販売する。E-セルは高性能リチウム電池を搭載、1回の充電で200km走行する。(日経産業新聞10年1月13日)

(2)岩谷産業
 岩谷産業は1月13日、マツダの水素とガソリンで走行するRE車"プレマシーハイドロジェンREハイブリッド"をリース購入したと発表した。岩谷産業の北九州営業部で営業車両として利用する他、車両走行データ収集や水素エネルギー啓発活動にも活用する。又福岡県の"水素ハイウエイ構想"の支援にも取り組む。リース価格は42万円/月。(日刊工業新聞、化学工業日報10年1月14日)
7.水素生成・精製技術の開発
 東北大学の高村准教授らは、空気中から水素製造に必要な酸素を抽出するのに使うセラミックス膜を開発した。セラミックスの組成や混合する触媒を工夫し、実用品で必要になる650時間以上の連続使用を可能にした。開発したのは窒素や酸素などが混ざった空気から、酸素のみを透過させるセラミックス膜で、この膜で得られた酸素をメタンやプロパンと反応させれば、水素を効率良く製造できる。しかし800〜1000℃の高温で使うため性能が劣化し易く、従来の実験では1〜2時間程度の連続使用にとどまっていたが、セリウムや鉄の酸化物を主原料とするセラミックスにジルコニアを加えて強度を向上させ、更に膜に混ぜ込む触媒や使用時の温度条件を工夫することによって、膜中で金属イオンが拡散して性能が低下するのを防止した。650時間の安定動作を確認し、実用化の目途をつけた。これにより、家庭用PEFCを20分以内で起動させることができるとともに、FCの大きさも1/10程度に小型化できると見込んでいる。又化石燃料の高効率燃焼やCCSへの応用も期待できる。5年後の実用化を目指す。(日経産業新聞10年1月5日)

8.高出力DMFCの開発
 パナソニックは、出力100WのDMFCの開発を始める。アウトドアやレジャーなど幅広い用途を想定しており、2011年に実証試験を開始、その後1〜2年後を目途に商品化する計画。CO排出が少なく、騒音のないクリーンな発電機として売り込む。同社は既にノートパソコンに使える20Wの小型DMFCを開発済みでるが、出力を100Wに引き上げるため、本体の容積をそれの約5.6倍に大きくする。11年度に発売を予定する円筒形リチウムイオン電池を140個搭載した電池モジュールとこの100WDMFCを組み合わせれば、キャビンカー内の冷蔵庫やエアコン、照明などに必要な電力の約30時間分を賄うことができる。なお同社は09年12月から容量3.1Ahの電池量産に乗り出したが、部材の改良などで容量を引き上げ、電池1本の容量が4Ahの円筒型リチウムイオン電池も12年度に量産を始めることにした。(日経産業新聞10年1月1日)

9.FCおよび水素関連計機器の開発
(1)チノ―
 チノ―は台湾の計測器メーカー"泰新能源股分公司に資本参加した。耐久試験に特化した低価格のFC評価試験装置を手掛ける。チノ―は自社技術を生かして共同開発に取り組み、需要拡大が見込める台湾で販売拡大を目指す。(日経産業、電波新聞10年1月5日)

(2)京大
 京都大学の古屋仲准教授と上田助教らは、従来の1/100以下の低コストで簡便・安全に水素ガスを計測できるセンサーを開発した。ナノサイズで水素イオンを通し易い高純度R型二酸化マンガン粒子を固めて作ったもので、厚さ0.7mmの10円玉大に成型したペレットをメッシュ状の白金電極で挟み込んだ。水素ガスの濃度が変わると電圧も規則的に変化するため、電圧の変化を検出すれば水素濃度を精度よく計測することができる。二酸化マンガンの価格は樹脂の1/100以下で、入手も容易である。今後は精度向上に取り組み、3年後を目途に実用化を目指す。(日本経済新聞10年1月11日)
10.FC関連の企業活動
 日本合成化学工業(大阪市)は、水島工場(倉敷市)で、従来のビニルアルコール系樹脂に比べて気体遮断性などに優れた新たな合成樹脂の生産を開始した。FCやリチウムイオン電池用部材などでの需要を見込んでいる。製品名は"ニチゴーGポリマー"で、結晶構造のような規則性を持たないアモルファスのビニルアルコール系樹脂である。酢酸ビニル樹脂(PVOH)やエチレンビニルアルコール樹脂(EVOH)のような他の同系樹脂と同様に酢酸とエチレン、酸素を原料とするが、分子構造などを工夫して製造する。気体遮断性に優れており、酸素に対してはEVOHの200倍、PVOHの2倍の性能を持つとともに、透明性が高く、成形加工も容易、かつ生分解性で環境負荷も低い。生産能力は約千トン、熊本工場でも量産を始めており、会社としての生産能力は年2,300トンになる。(山陽新聞10年1月27日)

 ――This edition is made up as of January 28, 2010――

・A POSTER COLUMN

地球温暖化防止関連市場
 富士経済が実施した市場調査によると、再生可能エネルギーおよびCGS(コージェネレーションシステム)、代替燃料によるCO排出量削減効果は20年度で90年度比9千万トンを超える。
 太陽光発電、太陽熱利用、風力発電など再生可能エネルギーによる08年度のCO削減量(90年度比)は457万トン、バイオエタノールやバイオデイーゼルなどの代替燃料は372万トン、業務・産業用と家庭用を合わせたCGSが4,689万トンだった。  20年度には夫々1,731万トン(08年度比278.8%増)、577万トン(同55.1%増)、7,082万トン(同51.0%増)の削減効果が出ると予測した。
 一方、20年度の再生可能エネルギーの再生可能エネルギーおよびCGSの設備市場は、太陽光発電が5,915億円(08年度比344.1%増)、太陽熱利用435億円(同150.0%増)、風力発電385億円(同44.7%増)、バイオエタノール製造設備260億円(同477.8%増)、家庭用CGSが3,840億円(同16倍)。家庭用部門では太陽光発電の導入とエネファームによるCGSの普及が拡大するとみられる。
(電波新聞09年12月30日、日経産業新聞10年1月6日)

経産省がスマートグリッドを都市で実験
 経済産業省は、ITによって電力の需要と供給を効率的に調整し、電力を安定供給するスマートグリッドを都市の一定区画内で実験する。太陽光発電パネルやFCを持つ住宅やビル、EV、大規模な太陽光発電や風力発電を結び、データーセンターで電力の需給状況を監視しながら需給両面に亘り地域内で電力を制御・融通する。利用者が不快感を感じることのないようなシステムの在り方や家庭での電力の使い方パターンについての知見を蓄積し、海外展開と国際標準化に備える。
 総合電機やIT、電力、ゼネコンなどの企業からなるコンソシアムを募り事業を委託、システム開発費など事業費の2/3を補助する。2010年度予算に11億円を盛り込んだ。コンソシアムの数は2,3を選定、それぞれを競わせ、優れたシステムを設計・構築した企業には、同様の事業を11年度予算で優先的に扱うなどの措置を講じる方針である。
 スマートグリッドにより一定の区画内で電力を融通するシステムや街づくりができれば、自然エネルギーの導入と併せ、発展途上国でも使い勝手の良いものとしてシステムごと輸出できるようになる。
(日刊工業新聞10年1月11日)

太陽熱発電に大手企業が相次ぎ参入
 三菱重工業や旭硝子など大手企業が太陽エネルギーを鏡で集めて発電する太陽熱発電向けの設備に相次ぎ参入する。タービンや集熱装置など関連設備の世界市場は2015年には最大で1兆円近くに拡大する見通しで、メーカー各社は新市場を開拓する。
 三菱重工は太陽熱発電向けの高効率タービンを開発した。排熱を再利用する仕組みを設け、発電効率を向上させた。出力5万kW程度のタービンで、販売価格は十数億円の見込みである。太陽熱発電の建設計画が多いスペインやアメリカで販売活動を始めた。スペインは太陽熱発電による電気を割高に買い取る制度を導入、2か所で稼働しており、20か所を超える計画が進んでいる。アメリカでも10か所を超える新設計画がある。
 旭硝子は太陽熱を集める高性能反射鏡の販売を始めた。鏡の厚さを1mmまで薄くし、反射率を95.1%まで高めた。ベルギーの工場で生産体制を整備、アメリカやタイでも生産可能で、2〜3年後に約100億円の売り上げを目指す。コニカミノルタも鏡の表面に数百層の反射膜を付け、反射率を95%以上に高める技術を実用化する。
 三井造船は反射鏡の向きを太陽の動きに合わせて追尾する装置を開発、1つの追尾装置に複数の鏡を搭載して太陽の向きに合わせて夫々動かせる仕組みを実用化する。15年に関連機器で300億円程度の売り上げを狙う。
 日揮は装置メーカーと連携し、中東などで太陽熱発電プラント建設の請負を目指す。
 太陽熱発電は太陽熱を鏡で集め、380〜600℃程度の高熱で水を沸騰させ、その水蒸気でタービンを回して発電する仕組みである。コストは日照条件が良ければ10〜20円/kWhで、太陽光発電に比べて半分以下であり、変換効率も約20%で太陽光発電を上回るとされている。
(日本経済新聞10年12月29日)