第164号 各社がSOFCの実証運転研究を本格化
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.SOFC技術開発と実証・事業展開
3.PEFC要素技術の研究開発
4.エネファーム関連技術開発と事業展開
5.FCV最前線
6.水素ステーションの事業展開
7.水素生成・精製技術開発
8.マイクロFCの技術開発
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)行政刷新会議
 行政刷新会議の"事業仕分け"により、エネファーム補助額の1/3程度の縮小と、経年埋設内管対策補助金の廃止が決められた。「普及に水を差すことになるのでは」と関係者は懸念する。エネファームの価格は300万円超/台で、国からの上限140万円の補助金と事業負担で、設置者負担は100万円程度に抑えられている。(電気新聞09年12月3日)

(2)文科省
 文部科学省の2009年度第2次補正予算案は、352億円となった。成長戦略への布石となる環境・エネルギー技術関係には233億円を計上、FCや太陽光発電などの環境技術開発を加速するX線自由電子レーザー研究設備などの整備を進める。その他は医療体制の整備に118億円、雇用対策では新規学校卒業者の就職支援体制に1億円を計上した。(建設通信新聞09年12月22日)

2.SOFC技術開発と実証・事業展開
(1)新日石
 新日本石油は、11年度にもSOFCの販売を始める予定で、連続運転での使用が中心となるコンビニエンスストアや小規模事業所向けなど業務用での展開を想定している。SOFCは高効率であることに加えて、現行PEFCに比べてCOの処理や除去などの工程不要で、部品点数もPEFCの1,000〜2,000に比べて400〜600まで削減できる。同社は09年度から耐久性の評価などを行う実証事業を本格化させている。コスト削減については、セルスタックの量産化による価格の引き下げについて交渉を進めており、又熱交換器やポンプなど周辺部材については現行のPEFCとの共通化を模索する。(化学工業日報09年12月14日)

(2)京セラなど
 京セラ、東京ガス、リンナイ、ガスターの4社は12月15日、発電出力700WのSOFC(横縞形)を搭載した家庭用コージェネレーションシステムを共同開発し、一戸建て住宅での実証運転を始めたと発表した。耐久性や省エネルギー性を検証し、2010年代前半の実用化を目指す。発電効率は42%、寸法は高さ104cm、幅65cm、奥行き35cmと小型である点が特徴で、熱よりも電力需要の多い家庭に適している。耐久性に関しては従来1年程度で劣化していたセルスタックの寿命を、材料や設計の見直しで約5年に延ばした。4社は寿命を10年に引き延ばすことを目指している。(電気、日経産業、日刊工業、京都新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報09年12月16日、電波新聞12月17日)

(3)トヨタ自動車など
 トヨタ自動車とアイシン精機は12月17日、大ガス、京セラと共同開発中の家庭用SOFCコージェンレーションシステムの試作機を、都市ガス5社を通じて一般家庭に合計30台設置すると発表した。NEDOによる09年度実証事業の一環で、北海道ガスに1台、東ガスに4台、東邦ガスに1台、大ガスに23台、西部ガスに1台が提供される。発電出力は700W、発電効率は45%(LHV)、SOFCセルを京セラが担当し、それにトヨタとアイシンの発電ユニットと大ガスの排熱利用給湯暖房ユニットを組み合わせた。京都府では京田辺市の大阪ガス社員宅など一戸建て住宅で1年間データを集約し、2010年代前半での実用化を目指す。(日本経済、産経、電気、電波、日経産業、日刊工業、日刊自動車、京都新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報09年12月18日)

3.PEFC要素技術の研究開発
 東北大学の林助教は白金や金、銀などのナノサイズ金属粒子を、従来の1/3以下の製造コストで造る技術を開発した。超音波を使うのが特徴で、実用化に向けて日立製作所、日立電線と共同研究を始めた。貴金属酸化物の粉末を、濃度が5〜25%のエタノール溶液に入れて外部から超音波を当てると、粉末表面に直径がマイクロサイズ以下の微小な泡ができる。この泡によって、エタノールと酸化物が反応して貴金属の微粒子ができる。反応時間は金属の種類によって異なるが、5分から1時間程度で、金や銀、白金などほとんどの貴金属に適用できることを確かめた。この技術を使えば、従来の手法におけるように真空容器など高価な機器の使用が不要で、例えば銀の微粒子の場合、1g当たり300円以下(従来は1,000円以上)でできるという。又毒性の高い化学物質を使わないので環境負荷も低減できる。(日経産業新聞09年12月22日)

4.エネファーム関連技術開発と事業展開
(1)テック精密
 テック精密(福岡県)は日本ケミカル・プラント・コンサルタント(東京都)と共同開発した家庭用FCシステムの改質部用燃焼器を2010年度中に発売する。同燃焼器は600〜800℃に改質部分を加熱、全長約120mm、直径約20mmで、改質時にメタン、空気、水素を混合させ、メタンを完全燃焼できるのが特徴で、CO発生濃度を8ppm以下に抑えた。(日刊工業新聞09年11月27日)

(2)大阪ガス
 大阪ガスは11月27日、6月に販売を開始したエネファームの販売台数が、1,000台を突破したと発表した.又太陽光発電とのダブル発電が普及し、現段階では約4割がこの方式を採用している。同社によると、この1千台の使用でCO排出量を年間約1,300トン削減する効果がある。(電気、電波、日刊工業新聞、化学工業日報09年11月30日、産経新聞12月3日)
 大阪ガスはダブル発電の10年度販売数量について、販売網の拡大やプロモーション活動の強化など営業体制を強化して、2,000件前後まで販売量を伸ばす計画である。(化学工業日報12月28日)

(3)パナソニック
 パナソニックはエネファームの09年度生産台数が、最大で当初見込みの約2倍となる2,500台に達する見通しとなった。荏原の撤退や需要拡大で生産台数が伸びた。草津地区(滋賀県)の組み立て工場は、既に8月から生産能力を増強した。現在東京ガス、東邦ガス、西部ガス、静岡ガスに供給、同社では現時点で10年度には3,000〜5,000台、15年度には6万〜10万台まで販売が伸びると見ている。(日刊工業新聞09年12月11日)

(4)パナホーム
 パナホームは、一戸建て住宅のラインアップを一新し、新"エルソラーナ"シリーズとして、2010年1月から発売する。新エルソラーナシリーズは、光熱費0の暮らしを実現できるソーラー発電システム(3kW)を標準装備したオール電化仕様で、エネファームをオプションとして用意している。(電波新聞09年12月23日)

(5)積水ハウス
 積水ハウスは、太陽光発電や家庭用FCを搭載した"グリーンファースト"の販売を通じ、エネファームの受注が1,100台になった。09年2月〜10年1月の当初販売計画を100台上回る。又太陽光発電を搭載した一戸建て住宅も、09年2月〜10年1月の販売計画である6,000棟を1カ月前倒しで達成した。(日刊工業新聞09年12月28日)

5.FCV最前線
(1)夢創造の会
 近畿経済産業局の自主研究グループ"夢創造の会"は、FCと太陽電池の両方を搭載したハイブリッドEVを、12月4日にインテックス大阪で開幕する"大阪モーターショウ"で披露する。出力容量2kW鉛蓄電池を搭載、出力150Wの太陽電池と家庭でのプラグインでの充電により100km走行できる。容量低下時にはPEFCで補充電しながら走行する。燃料の水素はカートリッジ型水素吸蔵合金タンク(容量300L)に貯蔵されており、FCのみでは約15km走行できる。太陽電池、FCともに取り外せる構造で、非常時電源として防災機材、無線、照明機器などに使える。防災対応多目的ハイブリッドEVとしてナンバープレートも取得している。(日刊工業新聞09年12月4日、産経新聞12月5日)

(2)北米日産自動車
 北米日産自動車は、北米では初めて高圧水素式FCV"X-TRAIL FCV"の商業リースを開始した。納車第1号はカリフォルニア州に本拠を置くサクラメント・コカ・コーラボトリング社。モーター最高出力90kW、最大トルク280Nm、最高時速150km/h、水素1回の走行距離は約500km、リース期間は1年などである。(電通報09年12月7日)

(3)トヨタと日野自動車
 "福岡モーターショウ2009"の開幕に合わせて12月11日、トヨタ自動車と日野自動車が共同開発したFCハイブリッドバスが県庁で披露された。水素ガスは天井部分に設置された高圧タンクに蓄えられ、水素1度の補充で250km走行できる。1台の費用は約2億円。(西日本新聞09年12月12日)

6.水素ステーションの事業展開
 ヨーロッパでFCVの普及をにらんで、水素ステーションの整備が進み始めた。既存の給油所との併設型、そして太陽光発電で水素を製造する施設などもある。COP15を控えた11月中旬、コペンハーゲンに初の水素ステーションが登場したが、ここでは風力・太陽光など再生可能エネルギーによる水の電気分解で水素を造る。水素ステーションは欧州全体では27か所が稼働しており、内16か所が一般向けに営業している。(日本農業新聞09年12月27日、電波新聞12月29日)

7.水素生成・精製技術開発
(1)田中貴金属
 田中貴金属工業は、従来品に比べて厚さを1/3程度に薄くしたパラジウム水素透過膜を開発した。水素の透過率が高まり、又使用する地金の量が減るため、コスト削減につながる。同社は長年の経験で培った圧延、薄膜技術により薄膜の製造に成功した。FC用や産業用高純度水素製造用に販売する。(化学工業日報09年11月30日)

(2)東北大
 東北大学多元物質科学研究所の斉藤教授と張助教らの研究グループは、樹木成分の7割を占めるセルロースが、炭素、水素、酸素からなることに着目、木材を粉砕処理し酸化カルシウムなどを混ぜて一定温度で加熱することにより、木材1kgから約480Lの水素ガスを取り出すことに成功した。水素の純度は95%前後と高く、COの発生割合を0.1%以下に抑えられる適温も発見した。現在、樹皮や木くず、落ち葉、紙類から水素などの成分がどれ位取り出せるかを実験中で、10年度内に結果をまとめる。(河北新報09年12月2日)

(3)北陸グリーンエネルギー研究会
 北陸グリーンエネルギー研究会は12月22日、アルミ廃棄物から発生させた水素によってFCで発電し、その電力でLEDのイルミネーション点灯を行う実験を北陸3県で同時に行う。トナミ運輸が06年から開発に取り組み、09年度の環境省地球温暖化対策技術開発事業に採択された。水素はアルミと水酸化ナトリウムの反応で発生させ、各県で回収したパック式飲料の包装に使われているアルミを利用している。県内からはトナミ運輸の他、不二越、富山大、県、富山市などが参加。(北日本新聞09年12月12日)

8.マイクロFCの技術開発
(1)パナソニック
 パナソニックは12月25日、新たに開発した大容量リチウムイオン電池を使ったEV用電池と、DMFC試作機を公開した。ともに研究段階で2012〜14年頃の市販が目標。DMFCについては、1つは手のひらにのるサイズ約360ccの容積で、出力20Wの小型タイプと、他は体積2Lの箱形で出力が100Wの大型タイプである。前者はパソコンなどの電源、後者はレジャー用発電機として2014年頃実用化する計画である。価格は10万〜20万円の見通しという。(朝日新聞、フジサンケイビジネスアイ09年12月26日、電気、日刊工業、電波新聞、化学工業日報12月28日)

(2)リッチェル
 樹脂製品メーカーのリッチェル(富山市)が開発した樹脂チップが、家電大手の最新型携帯電話向け充電器に採用された。樹脂チップの製造方法については、富山工業技術センターや富山大学と共同開発した。独自のシリコン金型を考案し、深さや直径が1μ単位の凹凸を再現、射出成形機で量産できる。チップ上の溝に注入した液体は、一定速度で自然に流れるのが特徴。携帯電話向け充電器はメタノールを注入するFCタイプで、発電部分にメタノールを素早く拡散させることがポイントになっている。家電大手は3千台をサンプル出荷した。(北日本新聞09年12月26日)

 ――This edition is made up as of December 29, 2009――

・A POSTER COLUMN

EV向け超電導モーターの開発が加速
 超電導材料を使ったEV向けモーターを開発する動きが相次いでいる。アイシン精機は京大と共同で、従来のEVに比べて消費電力を約3割減らせるモーターの開発を始め、住友電気工業も大型車向けの実用化を狙い、開発競争が激しくなってきた。
 京大の中村准教授らは車輪を動かすシャフトの周りに超電導材料の電線を取り付けたモーターを開発した。これは国内メーカーでは主流になっている永久磁石タイプではなく、金属配線を使うタイプの誘導モーターで、超電導に大電流を流すと、強いトルクが生まれる。超電導にはビスマス系を使うため−196℃に冷やす必要があるが、欧米自動車メーカーのEVが使うタイプの誘導モーターに比べて約10倍のトルクがあった。今後改良すれば80倍以上に高められる可能性があるという。
 トルクが大きいため、坂道や悪路でも変速機なしで発進できる。変速機によるエネルギーの損失や車体重量の増加が防げ、エネルギー効率が高まる。仮に従来のモーターで500km走行できるEVなら、超電導モーターを使えば650km走行できる。今後、アイシン電機がEV用の超電導材料を冷却する小型冷凍機を開発、2012年までに自動車に搭載可能な小型モーターを製作する考えである。
 住友電工も超電導モーターを搭載したEVを開発中。超電導の配線で強い磁界を発生させて回転力を高める方法で、走行試験に成功している。バスやトラック向けに実用化を目指す。
(日本経済新聞09年11月30日)

スマートエネルギーネットワークによる街づくり
 東京ガスは、太陽光発電やバイオマスなど分散型エネルギーと天然ガスのコージェネレーションシステムを組み合わせ、省エネとCO排出量を大幅に減らす"スマートエネルギーネットワーク"を実用化する。第1弾として2016年の竣工を目指すJR田町駅東口開発(芝浦再開発)に導入し、ガス、電力、熱の最適なエネルギーを供給する。
 天候に左右され、供給が不安定な太陽光発電をFCやコージェネなどの分散型電源を組み合わせることで、大規模なエネルギー供給システムとして一元管理し省エネやCO削減につなげる。熱供給能力は24,000〜28,000kWで、コージェネシステム(4,000〜5,000kW)、FC(100〜300kW)などを導入し、太陽光や太陽熱などの再生可能エネルギーも利用する。
(フジサンケイビジネスアイ09年12月3日、日刊工業新聞12月9日)

スマートハウス共同実証実験
 大阪ガスは12月14日、情報技術を使ってエネルギー利用の最適化を図る住宅"スマートハウス"の実証実験を、積水ハウスと共同で10年1月下旬から開始すると発表した。試験は1カ月、大阪ガス酉島実験場、積水ハウス総合住宅研究所内"アネックスラボ"(京都府)で行う。経産省の09年度事業"スマートハウス実証プロジェクト"を受託した三菱総研から委託を受けた。
 家庭用FCエネファームと太陽電池を組み合わせたダブル発電に蓄電池を組み合わせることにより省エネ性を高め、ホームサーバーでエネルギー消費機器を一元管理しながら、住宅全体で効率的に各機器を運用してCO排出量を最小化することを目指すとともに、住宅内のエネルギー使用状況を常時監視、"エネルギーの見える化"を図り、使用量が多いとアラームで警告するサービスも検証する。
(読売、毎日、産経、電気、日経産業、日刊工業、電波、京都新聞、化学工業日報09年12月15日、朝日新聞12月18日)

トヨタが2011年を目途にPHV量販
 トヨタ自動車は、本格的な量販を狙ったPHVを、2年後を目途に市場投入する。搭載するリチウムイオン電池の低コスト化を図ると同時に、電気のみで走る距離をユーザーが選べるようにし、一般ユーザーが購入できる価格設定を目指す。同社は将来の環境対応車はFCVやEVと位置づけているが、当面はHVやPHVが現実的と判断、利便性が高いPHVとするために、充電方式を非接触とすることも検討している。
 同社は09年12月中旬からプリウスベースのPHVを日本で200台リース販売する。海外ではアメリカで150台、フランスで100台、イギリス・ポルトガルを含めて150台導入する。
 トヨタは現行HVにニッケル水素電池を使用しているが、PHVでは高性能なリチウムイオン電池を搭載する。100Vでは約3時間で充電し、フル充電時に電気だけを使った場合の走行距離は23.4kmで、日常的な走行距離の過半に対応、電気がなくなるとモーターとエンジンを併用するHVシステムで走行する。PHVの燃費は国土交通省の基準(JC08モード)で57km/L(gasoline)に達する。リチウムイオン電池は、ニッケル水素電池に比べてコスト高なことがデメリットなため、同社は生産技術を駆使してコストダウンを図り、PHV販売価格は200万円台の水準を目指す。
(日刊自動車新聞09年12月11日、日本経済、中日新聞12月15日)

負極にシリコン系合金の高容量リチウムイオン電池
 パナソニックは負極にシリコン系合金を採用し、エネルギー密度を高めた高容量リチウムイオン電池を開発した。ノートパソコン向けで一般的な18650(直径18mm×高さ65mm)サイズで容量は40Ah、原稿製品と比べて30%向上した。2012年度での量産を目指している。次世代リチウムイオン電池では、負極材料としてシリコン系やスズ系の実用化がカギとなる。
 同社が11年度の実用化を目指す電池モジュールにもこの方式を適用し、家庭用蓄電池やEVでの搭載を予定している。
(日刊工業新聞09年12月28日)

太陽電池の09年度上半期国内集荷量、前年同期の2倍に拡大
 09年公的助成もあり太陽光発電の普及が進んだ。1月には補助金の交付を3年ぶりに再開、11月には余剰分を従来比2倍の価格で電力会社に買い取らせる制度も始まった。地方自治体も相次いで独自の補助金制度を打ち出し、導入コスト面のハードルは大きく下がった。
 東京電力や昭和シェル石油が相次ぎメガソーラー発電所の建設計画を発表、法人向け太陽電池市場も拡大した。シャープや京セラなど主要太陽電池メーカーは、国内向け出荷を増やし、09年度上半期(4〜9月)の太陽電池国内出荷量は、前年同期比2倍超の約22万kWに伸びた。09年度通期では伸び率が一層拡大するのは確実である。
(日経産業新聞09年12月28日)

日本の大手企業が太陽熱発電に相次ぎ参入する
 三菱重工や旭硝子など大手企業が、太陽光を鏡で集めて発電する太陽熱発電向け設備に相次ぎ参入する。太陽熱発電は欧米で開発計画が広がっており、タービンや集熱装置など関連設備の世界市場は2015年に最大で1兆円近くに拡大する見通しである。日本のメーカー各社は、太陽光発電や風力発電向けと併せて新市場を開拓する。
 太陽熱発電は太陽光を鏡で集め、380〜600℃程度の高熱で水を沸騰させる。その水蒸気でタービンを回して発電する仕組みで、コストは10〜20円/kWhと太陽光発電の半分以下である。又発電効率も太陽熱発電は約20%で太陽光発電の15%程度を上回り、優れた太陽エネルギー利用方式と云える。しかし、太陽熱発電は1年を通じて強い日差しと広大な土地が多い地域で有効な発電として注目されており、日本では石油危機を機に導入機運が高まったが、適する立地が少なく企業の取り組みも遅れていた。
 三菱重工は太陽熱発電向けの高効率タービンを開発した。排熱を再利用する仕組みを設け、発電効率を高めた。大型工場の電力需要を賄える出力5万kW程度のタービンで販売価格は十数万円の見込み。太陽熱発電所の建設計画が多いスペインやアメリカで販売活動を始めた。スペインでは太陽熱発電による電気を割高に買い取る制度を導入、2か所で稼働し、20か所を超える計画が進む。アメリカでも10か所超の新設計画がある。
 旭硝子は太陽熱を集める高性能の反射鏡の販売を始めた。鏡の厚さを1mmまで薄くし、反射率を95.1%に高めた。ベルギーの工場で生産体制を整備、アメリカやタイでも生産可能で2〜3年後に約百億円の売り上げを目指す。コニカミノルタも鏡の表面に数百層の反射膜を付けて反射率を95%以上に高める技術を実用化する。
 三井造船は反射鏡の向きを太陽の動きに合わせて追尾する装置を開発、1つの追尾装置に複数の鏡を搭載し、太陽の向きに合わせてそれぞれ動かせる仕組みを実用化する。15年に関連機器で300億円程度の売り上げを狙う。
 日揮は装置メーカーと連携し、中東などで太陽熱発電プラント建設の請け負いを目指す。
(日本経済新聞09年12月29日)