第162号 発電用SOFC/MGTで3,000時間の実証運転
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.PAFCの開発と事業展開
4.SOFCおよびその利用技術の開発
5.PEFC要素技術開発
6.中温形FCの研究開発
7.家庭用FC"エネファーム"に関する事業展開
8.FCV最前線
9.バイオFCの開発
10.マイクロFCの開発と事業化
11.水素の輸送・貯蔵技術の開発
12.FC・水素関連補機および部材の開発
13.FC・水素関連計測、観測、モニターシステムの開発と事業展開
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)国交省  国土交通省は、地球温暖化対策と大都市の大気汚染対策の一環として、次世代低公害車の燃料供給設備に関する優遇税制の拡充を目指す。来年度税制改正議論の中で重要性を訴え、連立与党の理解を得たいとしている。来年度の税制改正では、低公害車普及の重要なインフラとなる燃料、電気などの供給施設整備を促進するため、設備にかかる固定資産税特別措置の拡充と適用期限の延長を求める。具体的にはEV用充電設備については取得価格要件を大幅に引き下げ(2千万円以上から300万円以上に)、CNG充填設備やFCV用水素充填設備については、固定資産税の軽減などを求める。(日刊自動車新聞09年9月28日)

(2)科学技術会議
 政府の総合科学技術会議(議長:鳩山首相)は10月8日、来年度の科学技術予算の配分方式に関して、地球温暖化問題の解決策に重点配分することを決めた。鳩山首相が2020年までに温暖化ガスを1990年比25%削減するという"グリーンイノベーションの推進"を打ち出した。具体的な内容は1)エネルギー効率が高い技術の世界的普及促進、2)太陽電池、蓄電池、FC、超電導、バイオマス、CCSなどの革新的技術の加速、3)新たな科学的・技術的知見の発掘と統合によるブレークスルー技術の実現、などである。従来の予算配分方針では、低炭素社会の実現と並んで、健康長寿社会の実現、革新的技術の推進、など6項目を最重要政策課題としていたが、新方針では低炭素社会以外の5項目を重点課題に格下げした。菅科学技術政策担当相は「これまで色々な開発費に3兆5000億円の予算が投じられてきたが、グリーンイノベーションは場合によってはそれを上回る予算措置が必要になる」と述べた。(読売、日経産業新聞09年10月9日、電気新聞10月13日)

(3)経産省
 経済産業省が10月15日に再提出した10年度予算概算要求は、09年度当初予算に比べて0.1%減の1兆4,571億円、エネルギー特別会計は7,032億円となった。主な新年ネルギー関連予算は以下のようになっている。住宅用太陽光発電導入向け補助事業:412億円、太陽光やEVなどを組み合わせた最適な蓄電技術開発の研究・実証事業:64億円、低炭素社会実現プロジェクト:16億円、スマートグリッドで国際標準化を加速する事業:14億円、太陽光発電システムの次世代高性能技術開発:44億円、PEFC実用化推進技術開発:51億円、CSS実証研究支援:59億円。(電気新聞、化学工業日報09年10月16日)

2.地方自治体による施策
(1)佐賀県
 環境に優しい手法で水素を生成、FCVなどを走らせる仕組みを身近なところで構築する実証実験が佐賀県内で行われる。企業や自治体、研究機関など9団体が参加、間伐材などの木質バイオマスや太陽光発電を活用して水素エネルギーを低コストで生み出すことを試みる。経産省の"水素利用社会システム構築実証事業"に選ばれた。(佐賀大学09年10月8日)

(2)福岡水素エネルギー戦略会議
 福岡県を中心に産学官で組織する"福岡水素エネルギー戦略会議"(Hy-Lifeプロジェクト)は水素エネルギーの社会実証活動の一環として展開する"北九州水素タウン"において、3kmの水素パイプラインを新設し、住宅や公共施設、店舗でFCを設置・稼働する実証事業を2010〜13年度に実施する。経済産業省の水素利用社会システム構築実証事業を受託し、企業13社で構成される水素供給・利用技術研究組合との連携で実施するものである。(化学工業日報09年10月15日)

3.PAFCの開発と事業展開
 富士電機システムズは、PAFCシステムの販売を本格化する。複数台連結可能な100kW"FP−100i"を10月1日に発売する。FCパッケージや水処理装置、窒素供給設備、排熱処理設備など全てを一体化し、従来に比べて設置スペースを75m2から40m2に縮小、配管や配線を繋ぐ工事も大幅に簡素化して工事費用を1/10以下に抑制した。発電端効率は最大48%、CO削減効果は年間最大805トンを見込み、―20℃までの低温に対応しているため寒冷地において屋外にも設置できる。又災害時に燃料を都市ガスからLPGに切り替えられる機能を備え、工場から排出される未利用の水素やメタンガスを活用できる。販売目標は過去10年間の累計販売実績に相当する年間20台で、既に09年4月千葉工場に年間20台の生産体制を整備した。3年後には年間50台、将来的には同100台まで増強する計画である。(電気新聞09年9月28日)

4.SOFCおよびその利用技術の開発
(1)東工大と東ガス
 東京工業大学と東京ガスは9月29日、SOFCの排熱を使い、都市ガスから高純度の水素を製造することに成功したと発表した。運転時に発生する熱を、都市ガスから水素を取り出すための熱源として活用し、熱の有効利用を高め、電気、熱、水素を同時に造れるシステムを実現した。出力4.5kWのSOFC2機と排熱を使った改質器から成るシステムを試作、水素を6.6L/分製造できることを実証した。発電効率を維持しながら、排熱を有効活用できるよう最適に制御した。既に商用化されているPEFCは、80℃の低温動作のため、燃料の1部を常に燃やすために発電効率が低下するが、今回のシステムと組み合わせれば、純水素を燃料とすることが可能になり、発電効率を既存の35%から約50%に高められる。将来は集合住宅に1台のSOFCを設置し、各戸に水素を供給するシステムが可能になる。又水素と電気を同時に造るため、FCVとEVを対象とした燃料システムも実現できる。今後はスマートエネルギーネットワークの要素技術としても研究を進める。(電気、日経産業、日刊工業新聞09年9月30日)

(2)新日石と京セラ
 新日本石油と京セラは、1kW級家庭用SOFCを共同開発する。京セラのセラミックス素材を使い、700℃以上の高温で運転、発電効率45%と現状FCの半分程度までの小型化を実現し、戸建住宅に加えてマンションなどへの設置を可能にする。12年度にはPEFCの現状価格320万円よりも安い120万円を目指すが、発売までに製品寿命を10年程度に伸ばすこととコスト減を進める予定で、両社は今後家庭用に加えコンビニや飲食店むけに数kWの製品も開発する予定である。(産経、日本経済新聞09年9月30日)

(3)三菱重工
 三菱重工業は10月1日、都市ガスを燃料とするSOFCとマイクロガスタービン(MGT)を組み合わせた200kW級複合型発電システムで、3,000時間の運転を達成したと発表した。これまで最大出力229kW、送電端発電効率(LHV)で52.1%を達成しており、今回の運転実績で耐久性と信頼性を実証できたとしている。同社は今後システムのさらなる信頼性向上とコンパクト化に取り組む考えである。(電気、日経産業、日刊工業、長崎新聞09年10月2日、化学工業日報10月6日)

5.PEFC要素技術開発
 サイベックコーポレーション(長野県)とサン工業(同)は、セパレーターを低コストで製造する技術を開発した。素材にチタンを使うことによりコストを大幅に抑え、強度も優れている。厚さ0.1mmのチタンをサイベックがプレス加工し、サン工業が耐久性や導電性を高めるロジュームメッキをした。連続して加工することにより数百円/枚の低価格を実現した。10年にも発売し、2〜3年以内に年間12億円の売り上げを目指す。(日経産業新聞09年10月2日)

6.中温形FCの研究開発
(1)京大
 京都大学の北川教授らのグループは、100〜300℃で効率的に動作するFC用電解質材料の開発に成功した。同グループは、ペットボトルの原料となる物質と硝酸アルミニウムから合成した粉末を作製、その粉末には約1nmの微細な孔が多数あいており、孔の中にイミダゾール分子を配置した。この分子が温度を上げていくと動き回り始め、100〜300℃で効率良く水素イオンを次々と受け渡すことが確認された。高温でも安定なため、液漏れや爆発などの心配はない。(朝日新聞09年9月29日)

(2)カルガリー大
 カナダのカルガリー大学の研究チームは、150℃で動作するFCの新材料を発見した。現在のPEFCは触媒に高価な白金を使用しているが、高温にすれば安価な触媒に切り替えられる可能性がある。研究チームは実際に新材料でFCを作り、動作条件や性能などの評価試験を急ぐ方針である。(日経産業新聞09年10月21日)

(3)電中研
 電力中央研究所の麦倉上席研究員らは、動作温度が500〜700℃で、広範な用途が見込まれる中温形FCの基礎技術を開発した。電解質にアルカリ土類金属のバリウムなどで構成する金属酸化物を使った。負極にはパラジウムを使用、金属酸化物を負極の表面に塗り、乾燥させて薄膜にするが、事前に負極の表面を熱処理するなどの工夫によって1μmの薄膜を実現した。200℃以下で動作する低温型FCに比べて理論的には1割程度高い出力が得られ、発電効率は42%前後が期待できるとしている。又高温型に比べてコストを下げられる利点がある。10〜20年後の実用化を念頭に研究開発を進める。(日経産業新聞09年10月21日)

7.家庭用FC"エネファーム"に関する事業展開
(1)東ガス
 東京ガスはエネファーム利用者のデータを遠隔管理するサービスを10月から始める。PHS通信を用いて顧客の運転データをまとめた報告書を提出、光熱費やCOの削減など導入効果を提示することにより、利用者の満足度向上につなげることを狙う。今回のサービスはトライアルで、09年度と10年度の期間で実施の予定。利用者の反応を踏まえ、サービスの継続を決める。(日刊工業新聞09年9月25日)

(2)出光興産
 出光興産は、家庭用FC分野での本格事業化を目指す。得意の触媒技術などを活用して改質器の研究開発を推進しており、次世代型への代替が始まると云われる12〜13年頃を目途にFCメーカーとの採用を実現させる計画である。同社が07年までに開発に成功した改質器は、灯油、LPG、都市ガス、バイオエタノール、バイオガスなどに使用できるマルチ燃料対応型である。家庭用FCの本格的普及を実現するためには、現状約300万円のユニットを50万円まで引き下げる必要があるとされているが、そのためには改質器の価格を10万円前後に抑えなければならない。同社は10万台に至らない市場規模でも、10万円前後の価格を実現させる技術開発に取り組む。又同社は海外での市場展開も視野に入れている。熱需要が高いヨーロッパの他、エネルギー需要が拡大しているアジアなどが照準で、現地で生産されたバイオマス燃料を活用した新たなビジネスモデルの構築を検討する。(化学工業日報09年10月20日)

8.FCV最前線
(1)スズキ
 スズキは第41回東京モーターショウ2009に、FCV"SX4−FCV"、FC搭載の電動車椅子"ミオ"、2輪車ではFCスクーター"バーグマンフュエルセルスクーター"を出展すると発表した。同FCスクーターは30km/hで350km走れる。(日刊工業新聞09年10月1日、産経新聞10月10日、日経産業新聞10月12日、朝日新聞10月14日、西日本、静岡、北海道新聞、河北新報、千葉日報10月20日、中国新聞10月21日)

(2)岩谷産業
 岩谷産業は10月8日、FC駆動の電動アシスト自転車を開発したと発表した。13日から関西国際空港で実証実験を行い、実用化に向けてデーターを収集する。駆動用バッテリーが少なくなると自動的に水素がFCに送られて発電、バッテリーに充電する仕組みで、1回の水素充填で約45km走行可能という。(毎日、日刊工業新聞、化学工業日報09年10月9日、産経新聞10月10日、読売新聞10月12日、朝日新聞10月15日)

9.バイオFCの開発
 首都大学東京の太田教授と吉田助教らは、微生物と電極の間に仲介物を使わないタイプの生物FCを開発した。紅色光合成細菌と呼ばれる細菌の中で水素を多く発生する種である"ロードシュードモナス・パルストリス"を使った。光合成生物は光を受けると糖などの有機物を作る。光合成過程で作られるNADH分子はNAD分子に変わる際に電子と水素を放出、電子は電極から電気エネルギーとして取り出す。水中の水素イオンは膜を通り抜け、陽極で空気中の酸素と反応し水を発生する。遺伝子操作で細菌内の水素が発生する部分をつぶすことにより、多くの電子を取り出せるようにした。陽極は空気に接した炭素電極、陰極には導電性ポリマーと塗布した炭素電極を使い、その間をナフィオン膜で仕切った。光合成細菌を含む培地に陰極を浸し、光を当てると電流が流れた。遺伝子操作により水素発生を抑えた細菌では、野生株と比べて1.3倍ほどの電力が得られた。(日刊工業新聞09年10月1日)

10.マイクロFCの開発と事業化
 KDDI(au)と東芝はDMFC内蔵携帯電話で、大きさが縦115mm、幅50mm、厚さが22mmで、厚さが従来機に比べて半分になる試作機を開発した。内蔵の燃料タンクには最大で3.5mLのメタノールを注入でき、満タン状態で連続待ち受け時間は最大320時間である。両社は2005年にFC内蔵携帯電話の試作機を発表しているが、厚さが40mmあり、FC部分を取り外すことができなかったが、今回は薄型化するとともに、FC部分を脱着可能にした。通常のリチウムイオン電池に交換でき、利用シーンに応じて電池を使い分けられる。両社は今後も薄型化の研究を進め、将来は本体の厚さを通常の携帯電話と同じ20mm以下に抑える方針である。(日本経済新聞09年10月6日)

11.水素の輸送・貯蔵技術の開発
 愛知学院大学歯学部の梶原客員教授らは、石綿を化学処理して改質した材料が、内部に水素や窒素を貯蔵したり放出したりする機能を持つことを突き止めた。石綿は水酸化マグネシウムがシリカに挟まれた構造を持ち、硫酸をかけて加熱すると水酸化マグネシウムが硫酸マグネシウムとなって溶け出し空間ができる。この材料を水素や窒素で満たした容器に入れて加圧すると、その空間に水素や窒素分子が貯蔵される。貯蔵後圧力をかけるとそれらを放出する。水素の貯蔵量は石綿を改質した材料100g当たり1.2gと少なく、増やそうとしても石綿では限界がるため、雲母やタルクなど石綿と似た構造を持つ他の天然鉱物を原料として、同様の機能を持たせられるかどうかの研究を進めることにしている。(日刊工業新聞09年9月26日)

12.FC・水素関連補機および部材の開発
(1)日本精線
 日本精線(大阪市)は、対水素脆性ばね用ステンレス鋼線"ハイブレム(HYBREM)"を開発した。高圧水素環境下で使用可能、SUS304並みの強度があり、水素環境下で靭性・ばね疲労特性に優れる。ハイブレムはオーステナイト系ステンレス鋼に属すが、微量添加元素をコントロールすることにより、冷間加工後における結晶組織の変化を防ぎ、同時に水素環境下での絞り値を安定させた。炭素と酸素のバランス最適化により、コットレル雰囲気による移転の固着を制御した。主な用途は高圧水素ガス圧力調整弁、高圧水素充填ノズル、FCV用ばね材などで、既に一部ユーザーへサンプルを提供し、実機試験を進めている。年間50〜60トンの販売を見込んでいる。(日刊工業、鉄鋼新聞09年10月7日、日経産業新聞10月9日)

(2)田淵電機
 田淵電機はFCによる発電電圧を効率良く調整する装置"パワーコンデイショナー"を開発した。変動する直流電流を家電製品にも使えるように安定した交流電流に変換する他、電圧を変える。変換効率は92%以上、制御回路を高電圧用と低電圧用の2つに分けたことで、電圧が変動しやすいFC特有の問題にも対応できるようにした。2010年度中の製品化を目指す。(日経産業新聞09年10月7日)

13.FC・水素関連計測、観測、モニターシステムの開発と事業展開
(1)ミサワホーム
 ミサワホームは10月から、大崎電気工業などと共同開発したエネルギーモニターシステムを発売する。太陽光発電システムや家庭用FCなどの発電量と電気・ガス・水道の使用状況が一目で分かるように表示する。住宅全体の消費量を表示するものではなく、機器別・部屋別消費量の表示を可能にしたことが特徴である。価格は22万5,000円、初年度1,000台の販売を計画している。(住宅新報09年9月29日)

(2)村上技研産業
 村上技研産業(大阪府)は水素ガス専用の流出検知装置"工業用水素ガス検知装置"を開発した。濃度4,000ppm以上の水素ガスに反応する。マグネシウム合金が水素ガスに触れると銀色から無色透明になる特性を利用しており、水素ガスを検知すると警報音や信号でガスの流出を知らせる。熱源がなくガスが装置の熱と反応して発火する危険性を抑えた。大量の水素ガスを使うFC工場などでの需要を見込む。新装置は縦と横が6.5cm、幅4.3cmの標準型で17万4,300円。(日本経済新聞09年9月30日)

(3)エー・アンド・デイ
 エー・アンド・デイはFCなどの製造工程向けに、電解液などを0.5秒で計量できる高速計量器を開発した。0.1mgまでの精密な計量ができる電磁方式と、素早く計量できるロードセル方式を組み合わせたハイブリッド方式で、価格は1台24万円を予定している。(日経産業新聞09年10月9日)

 ――This edition is made up as of October 21, 2009――

・A POSTER COLUMN

日本型スマートグリッドの研究会を設立
 エネルギー総合工学研究所は、2030年ころを視野に、日本型スマートグリッド(次世代送配電網)の在り方を検討する産官学の研究会"次世代電力ネットワーク研究会"を設立した。研究会では、電力、ガス、石油、IT,メーカーなど幅広い業種・企業が参加、技術だけではなく、社会制度も含め、日本型スマートグリッドの実現に必要な全般的な対策を検討する。研究会の会長には横山東大大学院教授が就任する。
 政府が掲げる30年に約5,300万kWの太陽光発電を導入するという目標達成に必要となる系統対策に加え、監視制御、需要家宅内の機器制御などを含めた対策を検討、技術課題を抽出する。蓄電池の設置だけではなく、FCなどの活用も含めて検討し、15年までに技術開発の方向性を決め、20年までに技術開発を終わらせる予定である。
 現在、日本型スマートグリッドについて、資源エネルギー庁が8月に"次世代送配電ネットワーク研究会"を設置しているが、非公開で検討分野も系統対策が中心になっている。今回の研究会では、経産省も連携を視野に入れており、「複数機関で進められる研究の横串を通したい」としている。
(電気新聞09年9月25日)

シンガポールがマイクログリッド実用化へ向けた実証研究
 シンガポール政府機関の科学・技術・研究局(Aスター)は、分散型電源を活用する"マイクログリッド"の実用化に向けて、実際に発電・送電を試験する実験施設を、同国西部ジュロン島に新設する方針を決め、技術提案・装置・設備設置などを担当する企業の募集を9月24日に開始した。実験施設の面積は4,800m2
 分散電源の燃料としては軽油、天然ガス、水素やバイオ燃料、太陽光などを想定、同電源では従来型の発電機に加え、バイオ燃料発電、FC、蓄電池、太陽光発電装置、小型発電機、EV(ハイブリッドを含む)などを見込んでいる。
 実験施設に設けるマイクログリッドの規格は電圧が3相433V、総発電量は1,000kWと設定している。
(電気新聞09年9月29日)

電力系統と太陽電池など交直双方を組み合わせるハイブリッド分電盤
 パナソニック電工は、電力系統の交流と、太陽電池やFCからの直流双方の電流を組み合わせて家庭内に配電する"ハイブリッド分電盤"を開発した。現在は全ての電流を一旦交流に変換しているが、変換ロスをなくすことで、家庭全体で10%程度の省エネ効果がみこめるという。
 LED式照明器具やパソコンなどは現在機器ごとに交流を直流に変換しているが、太陽電池からの直流をそのまま使うことで電力消費を30%程度減らせる。又余った電力は交流に変換して他の家庭に送るほか、蓄電池にためておくことにより夜間も効率的に使うことができる。
(朝日新聞09年10月1日)

プラチナ権益南アフリカで獲得へ
 独立行政法人の"石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、カナダの探鉱会社との間で南アフリカのプラチナ鉱山を共同開発する契約を結んだ。権益の37%を獲得し、鉱床が発見された場合には、優先的に日本企業に引き継がれる。ボスワナでも権益獲得に動いており、FCなどの材料として需要拡大が見込まれるプラチナの安定調達を目指す。
 共同開発に乗り出すのは、南ア北東部のウオーターバーグ地域の鉱区で、南アは世界のプラチナ埋蔵量の約9割を占め、同地域周辺に有望な鉱区が集中するとされる。
 同機構はカナダの探鉱会社プラチナ・グループ・メタルス社と共同探鉱の契約を締結した。4年間で320万ドルの探鉱費用を負担することで、37%の権益を獲得する。日本のプラチナ需要は07年に54トンに達したが、98%を輸入に頼る。
(西日本、中国、中日新聞、河北新報09年10月8日、日本経済新聞10月9日、産経新聞、フジサンケイビジネスアイ10月10日、読売、日刊工業新聞10月12日)

バイオ系廃棄物から電気とメタノール生産
 清水建設は、紙ごみや廃木材、食品残渣などのバイオ廃棄物を短時間、高効率で電気とメタノールに転換できる次世代エネルギー技術を実用化する。都内に実証プラントを設置、NEDOとの共同研究事業として2011年3月まで実証運転を行って技術を確立する。合理的な合成プロセス採用などでプラントの体積を従来に比べて数分の1以下に小型化でき、都市再開発ビルの地下スペースなどにプラントを設置することが可能になる。既に大手不動産会社などからも引き合いがあり、実証後に本格的な事業展開に乗り出す。
 実証試験に入った次世代エネルギー技術"ビル・バイオマスター"は、2段階の燃料合成プロセスを経て2種類の燃料を合成、更に廃熱も利用するハイブリッド型エネルギーシステムである。農水省が木質系バイオマス用に開発してきた技術をベースに清水建設が応用開発した。
 合成プロセスの第1段階では、原料をガス化する「浮遊外熱式高カロリーガス化装置」、製造したガスをメタノール化する「多段式メタノール合成装置」で構成される。浮遊外熱式高カロリーガス化装置では、3mm以下のチップ状に細かくしたバイオ系廃棄物原料を高温反応炉に投入し、約900℃の熱で瞬時にガス化する。ガスは水素、CO、およびメタンを含む高カロリーガスで、発電用燃料として使用できる。
 第2段階の多段メタノール合成装置は、燃料に利用しなかったガスを触媒反応管に通し、触媒作用で高純度メタノールを合成、貯蔵して必要な時に利用する。多段化した反応槽の内部は20気圧以下、210℃程度で、一般的な工業用メタノール化に比べて大幅に低い圧力と温度で合成が可能である。このため装置の計量化、小型化を実現した。メタノールはバイオデイーゼル燃料の原料や、FCにも使用可能である。
(化学工業日報09年10月9日)