第159号 燃料処理装置向け高性能触媒の開発
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方公共団体による施策
3.海外および国際機関による施策
4.PAFC発電関連事業
5.SOFC開発動向
6.PEFC要素技術の開発
7.家庭用エネファーム事業および関連技術開発
8.FCVおよび水素RE車最前線
9.水素ステーション事業
10.水素生成・精製技術の開発
11.水素輸送・貯蔵技術の開発
12.マイクロFCの開発と事業展開
13.FCおよび水素関連計測器の開発と事業展開
14.企業によるFC・水素関連のビジネス展開
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)経産省
 経済産業省は高効率石炭火力発電の実用化を目指す技術開発"クール・ジェン計画"に着手する。電力メーカーとの官民プロジェクトで、IGCC(石炭ガス化複合発電)を手始めに"IGFC(石炭ガス化FC発電)、CCSを組み合わせる"ゼロエミッション石炭火力"の実証研究を行う。現在電力メーカーなどで進めている事業化調査(FS)中の拠点を対象に補助制度などを設ける考えで、10年間で約1,000億円の予算規模を見込み、来年度の予算概算要求に盛り込む。17日の総合資源エネルギー調査会のクリーンコール部会報告書で方向性が打ち出された。国内の石炭火力発電は超々臨界圧(USC)でのタービン運転を実用化しており、発電効率は40%を超える。これを2020年までにIGCCの実用化により発電効率43%超に、40年代にはIGFCの実用化で同65%超を目指すとしている。(化学工業日報09年6月19日)
 経済産業省は、EVの充電インフラ整備に向けた実証事業を始める。07年8月閣議決定の"低炭素社会づくり行動計画"では20年までに新車販売台数の2台に1台をEVなど次世代自動車にする目標を決定。EV元年を迎えるにあたり、ガソリンスタンドやマンションの充電インフラのあり方を検証する。"総合エネルギー販売業"として次世代ガソリンスタンドの姿を示し、ガソリンスタンドが環境変化に前もって対応することを後押しする狙いもある。実証事業では太陽光発電やFCなど再生可能エネルギーを同サービスに適用するための施設も開発、実際に用いて安全性や信頼性を確認する。09年度補正予算で、ガソリンスタンドでの実証事業向けに20億円、マンションでの実証事業向けには5億円を確保した。(電気新聞09年6月22日)
 経済産業省は、太陽光発電の新たな余剰電力買い取り制度について、近く詳細制度設計に着手、余剰電力の定義や具体的な価格・期間、転嫁方法などを詰める。詳細制度設計の検討項目において、FCなどの太陽光発電以外の自家発電と併用する"ダブル発電"の扱いが焦点になる。総合エネルギー調査会電気事業分科会、新エネルギー部会が合同で議論する。同省では準備が整えば年内にも同制度を実施したい考えである。(電気新聞09年6月29日、電気新聞7月2日)
 経済産業省・資源エネルギー庁は、太陽光発電の余剰電力買い取り制度について詳細を固めた。当初の買い取り価格は一般家庭向けで、現行の2倍程度48円/kWhが基本、非住宅用は異なる水準とする。住宅と位置付ける基準上限は出力10kWで、原則として集合住宅も"住宅"とする。買取期間は10年。ダブル発電については、自家発電設備による発電量の増加によって太陽光発電の余剰が増加する押し上げ効果の測定が実態状困難であり、家庭用FCの導入ケースを中心に具体的に詰める。7月9日に開かれた総合エネルギー資源調査会・買取制度小委員会(委員長:山地東大教授)初会合で提示された。(電気新聞09年7月10日)

(2)近畿経産局
 近畿経済産業局は6月17日、"KANSAIモノ作り元気企業100社"を選定した。技術、経営革新、産地、伝統、デザインなどの強みを生かして活動する近畿地域のモノ作り中小企業をピックアップするもので、その中に世界最小レベルのFC用チューブポンプの試作に成功した"アクアテック"が含まれた。(日本証券新聞09年6月19日)

(3)総務省
 総務省は6月26日、低公害車普及に関する政策の評価結果をまとめた。「2010年度までにFCVを5万台普及」とした政府目標に対し、07年度の国内保有台数は42台にとどまり、同省は経産省など4省に対し目標設定や普及促進策見直しを勧告した。政府は01年度に定めた"低公害車開発普及アクションプラン"で5万台普及を目標に掲げ04年度から4年間、約197億円の予算を投入した。(毎日、日本経済、北海道、日刊自動車新聞09年6月26日、読売、産経、東京新聞6月27日、化学工業日報6月29日)

(4)NEDO
 NEDOは、水素貯蔵材料の開発で"水素貯蔵材料先端基盤研究事業"を進めているが、水素貯蔵材料の実験・解析技術を持つ研究機関と、これを活用する企業などで共同研究を実施することとし、企業などの募集を始めた。今回の共同研究では、同事業の委託先である産業技術総合研究所などが企業などを共同研究者とし、水素貯蔵材料の実験・解析技術を実用化に合わせてより高度化するとともに、水素貯蔵材料の開発を加速することが狙いである。(日刊自動車新聞09年6月22日)

2.地方公共団体による施策
 大阪府は12月を目途に"大阪エコカー普及推進ビジョン"を策定する。環境先進都市としてエコカーを普及させるため、官公庁や公共交通機関、事業者への導入目標の他、自治体による自動車税の減免措置、駐車場料金割引などの優遇方策、充電施設の整備方針などを盛り込む。2010年度以降の予算に反映、ビジョンの実現に拘束力を持たせるため、時限措置として条例や達成計画の策定も検討している。エコカーの範囲は、EV、FCV、水素エンジン車、クリーンデイーゼル車、CNG車、HV、PHV、低燃費車の計8種。(日刊工業新聞09年7月6日)

3.海外および国際機関による施策
 韓国電力公社など韓国のエネルギー関連公営企業9社は、09年から11年までに風力や太陽光など再生可能エネルギーの発電設備拡充や研究開発に3兆ウオン(約2,200億円)を投じる。9社は太陽光を中心に再生可能エネルギー発電設備を6倍強の133万kWに増強、発電量全体に占める割合を現在の0.8%から1.7%に高める。韓国政府も今後3年間で約2,550億ウオンを投じて産官共同の研究開発を進め、サムソングループなどが太陽電池やFCを事業化する計画である。(日本経済新聞09年7月13日)

4.PAFC発電関連事業
 九電工は「下水汚泥消化ガスを利用するPAFCによる400kW(100kW×4台)発電事業(バイオガス発電施設)」において、熊本北部浄化センターバイオマス発電グリーン電力証書発行事業が建設設備業で全国初の設備認定を受けたことから、グリーン電力量を測定している。8月に第1四半期分の認証を受けて最初の証書を発行する。同社は、熊本県が自治体として初めて公募した電力証書発行事業者に選定され、2月にグリーン電力認証契約を締結した。その後、グリーンエネルギー認証センター(東京都中央区)に申請、グリーン電力発電設備認定認証委員会で設備認定を受けた。証書は県内で優先活用する方針で、当面は約8割を県内の自社営業拠点で使用する。(建設通信新聞09年6月30日)

5.SOFC開発動向
 ファインセラミックスセンター(JFCC)は、シリカ前躯体粒子とシリケートガラス前躯体粒子を複合化し、昇降温のヒートサイクル耐久性に優れたSOFC用ガスシール材を開発した。室温から220℃/秒以上の急速昇温に対しても十分なガスシール性を有しているのが特徴である。同材は2種類の球状粒子を高分散させ柔軟性の高いシート状とし、約800℃で融着したもので、600℃と400℃で500回以上のヒートサイクルに対してもガスリークが発生しなかった。JFCCはガラスとシリカ粒子の割合と融着条件を最適化することにより、急速昇温に対して十分なガスシール性を付与することに成功した。小型高集積SOFCの急速昇温起動にも適用可能なシール材として実用化を目指す。(化学工業日報09年7月1日、電気新聞7月2日)

6.PEFC要素技術の開発
(1)物質・材料研究機構
 物質・材料研究機構と科学技術振興機構は、触媒として使われる直径20nmサイズの白金微粒子の表面積を、約2倍に高める技術を開発した。開発したのは数nmサイズの突起を粒子の表面に作って表面積を増やす技術である。白金、界面活性剤などが溶けている溶液に、白金を粒子化するためにアスコルビン酸を入れると、白金の粒子が液中にでき始めるが、粒子表面の一部に界面活性剤がくっつく。界面活性剤がくっついている部分には白金は付かないが、溶液に直接接している部分には白金が付いて粒子が徐々に大きくなる。10分後には直径20nmの粒子表面に、長さ2〜3nmの突起約20本を付けた白金粒子ができ、白金1g当たりの表面積は55m2で従来の約2倍になった。FCや排ガス浄化向けに2年以内の実用化を目指す。(朝日新聞09年6月24日、日経産業新聞6月25日)

(2)東工大
 東京工業大学の山口教授らの研究チームは低湿度でも水素イオンを通す耐久性の高い膜を開発した。ナノ寸法の孔の開いたポリイミド基材に電解物質を挿入した膜で、酸素や水は通さないで水素イオンのみが膜を通過する。具体的には、直径2nmのジルコニア粒子に電解質高分子を巻きつけ、20〜100nm間隔でポリイミド膜の孔に挿入した。従来の膜は90%付近にまで湿度を制御する必要があったが、この膜は50〜90%の湿度でも水素イオンが通過し、又高分子が孔にぎっしり詰まっているため、水の浸入を防ぐ。(日刊工業新聞09年7月6日)

(3)住友金属
 住友金属は金属セパレータを、特殊なステンレス箔を用いることにより、普及価格帯で量産する技術を確立、1枚(約100cm2)当たりのプレス成形コストを100〜150円まで下げる目途を付けた。素材となるステンレス箔の材料コストとガスケット(封止材)を加えたトータルの価格でも、数百円にまで抑制できるとしている。試作品のサイズは幅7cm、長さ14cmで、順送り方式の金型プレス成形により、60枚/分の生産速度を実現し、更に金型の寿命も「手入れなしで15万回打てるようになった」ため、金型の初期コストと補修コストおよび作業費のトータルで、100円/枚前半を達成した。既にFCメーカー各社にサンプル出荷済みである。(日刊工業新聞09年7月7日)

(4)産総研
 産業技術総合研究所は、高いCO被毒耐性を持つ新規電極触媒を開発に取り組んでいるが、貴金属含有分子ふるい炭素微粒子触媒の調製に成功、触媒の構造を解析した他、水素吸着活性も評価した。孔径0.2〜0.35nmの微細孔を持つナノカーボン材料の分子ふるい炭素を利用し、COが活性金属の白金に吸着せず、CO被毒耐性に優れる革新的な触媒技術の確立を目指している。08年度は、分子ふるい炭素の微粒子中に約12nmの貴金属微粒子が分散した触媒を調製、同触媒の構造解析と水素吸着特性評価を行い、400ppmのCO共存下でも水素吸着量が減少しないことを実証した。今後、CO被毒耐性の経時変化や耐久性の評価などに取り組み、500ppmのCO共存下でも既存触媒と同レベルの活性を発現する触媒技術を確立していく。(化学工業日報09年7月16日)

7.家庭用エネファーム事業および関連技術開発
(1)山梨大  山梨大学のFCナノ材料研究センターは6月26日、エネファームの燃料処理装置向け高性能触媒を開発したと発表した。残量COをほぼ完全に除去できる他、燃料処理装置の製造コストを20%低減でき、装置の容積も2/3に小型化できる。新開発のCO選択メタン化触媒は、独自の方法で高比表面積の非晶質ニッケルアルミネートを作製し、その表面上にCO除去活性が高くて副反応が起こりにくいニッケルナノ粒子を析出させて低温側の性能を向上したもので、これによって0.6〜1.0%の高いCO濃度でも99.9%以上のCO除去率を達成した。微量添加したルテニウムの効果で高温側の性能を高めた結果、触媒の使用温度が200〜300℃と大きく広がり、燃料処理装置を安定制御できる。水素を利用してCOをメタンに変換して除去できるため、選択酸化に必要な空気の取り込みが不要になり、燃料処理装置の構造を大幅に簡素化できる。触媒素材に熱伝導性の高い"メタルハニカム"を採用したことで、使用する触媒使用量を1/5に抑えた。(フジサンケイビジネスアイ09年6月27日、日経産業、日刊工業新聞、化学工業日報6月29日、電気新聞6月30日)

(2)ENEOSセルテック
 新日石と三洋が共同出資した"ENEOSセルテック"は7月1日"エネファーム"を初出荷した。6月末で1500台の契約・内定があり、出だしは順調という。(朝日、電気、日経産業、日刊工業、上毛新聞、化学工業日報09年7月2日)

(3)アキュラフォーム
 アキュラフォームはエネファームを搭載した住宅の受注を東ガスの供給地域7月4日に始める。延べ床面積125.76m2で、本体価格は1,460万円。(日刊工業新聞09年7月2日、住宅新報7月7日、日経産業新聞7月9日)

(4)アストモスエネルギー
 アストモスエネルギーは7月1日、東芝FCシステム製エネファームの販売を始めた。(日刊工業新聞09年7月2日)

(5)日ノ丸産業
 日ノ丸産業(鳥取市)は、環境に配慮したクリーンエネルギーを住宅で活用する"創エネ事業"に取り組み、エネファームと太陽光発電システムの年内販売を目指す。(日本海新聞09年7月11日)

8.FCVおよび水素RE車最前線
(1)トヨタ
 トヨタ自動車は6月23日、現在よりも性能や耐久力を大幅に向上させた新型のFCVを、15年を目途に市販する方針を明らかにした。又システムの小型化などで製造コストを大幅に引き下げ、HEVやEVに続く環境対応車に育てる考え。(朝日新聞09年6月24日)

(2)水素ハイウエー構想
 福岡、北九州の両市間でFCVや水素自動車のテスト運転を繰り返す福岡県の"水素ハイウエイ構想"が、NEDOの委託事業に選ばれた。NEDOは"水素・FC実証プロジェクト"を首都圏、関西圏、中部圏で展開、水素ステーションを12か所に設け、計60台のFCV等を走らせる計画を立てているが、九州で同プロジェクトの委託先が決まるのは今回が初めてである。委託費は年間2,000万円。水素ハイウエイ構想は"福岡水素戦略"の一環で、9月に本格稼働の予定。(西日本新聞09年7月4日、日刊工業新聞7月10日)

(3)上海汽車
 上海汽車集団は上海市と組んで新エネ車の開発に乗り出す。総投資額は120億元(約1680億円)。2010年に"栄威"ブランドのHVを、12年にはEV、FCVの販売を目指す。(日本経済新聞09年7月7日)

(4)マツダ
 マツダは水素ロータリーエンジン(RE)車にバイオマス燃料技術を組み合わせる方針を明らかにした。始動性や排ガス浄化性能などの課題解決に取り組みCO2排出削減を最大化する。(日刊自動車新聞09年7月8日)
 マツダや広島大学、中国経済産業局などは7月15日、大阪−北九州間約540kmで、瀬戸内地域にある化学工場から出る水素を有効利用して、自動車走行試験を行うと発表した。沿道の工場において石けんや洗剤の原材料などを作る過程で排出される水素を活用する。実験にはマツダの"プレマシーハイドロジェンREハイブリッド"2台と、トヨタ自動車の"FCHV-adv"1台が参加する。7月27日に堺市を出発、周南市の工場などで水素を補給、30日に北九州市に到着する。(西日本新聞09年7月15日、フジサンケイビジネスアイ7月16日)

9.水素ステーション事業
(1)エン振協  水素供給インフラ整備を目的に、エンジニアリング振興協会が行う地方実証事業の実施個所として日光市が採択された。7月にも市内に新たな水素ステーションが設置される。現在の簡易式より走行距離も倍増する。(下野新聞09年6月30日)

(2)8社共同開発
 新日本石油、昭和シェル石油、出光興産、コスモ石油、ジャパンエナジーの石油元売大手5社と、東京、大阪、東邦ガスの都市ガス大手3社の合計8社は、FCV用水素スタンドの必要設備を共同開発する。FCVの開発に取り組む自動車メーカーにも参加を呼びかける予定で、関連企業が結集して2015年までに水素供給の事業化を目指す。各社はスタンドや輸送における規格やシステムを共通化することで低コスト化を図る。(読売新聞09年7月3日)

10.企業による事業展開
(1)北陸グリーンエネ研究会
 北陸グリーンエネルギー研究会は、廃棄物から回収した高純度アルミで水素を発生させ、FC発電する技術を、産学官と市民団体が共同で研究を進める。8月には動力の1部にFCを利用した乗用車の走行実演も予定している。「循環型社会の実現を目指し、2011年度までに成果を出したい」としている。(北国、富山新聞09年7月3日)

(2)広島大
 広島大学の中島准教授らは、バイオデイーゼル(BDF)の生産時に出る廃液から水素とエタノールを作る技術を開発した。下水汚泥などからメタンガスを生成する"メタン発酵微生物群"から水素などを作る菌を分離した。この菌を培養して突然変異させ、BDFグリセロールを分解して水素とエタノールを生成する菌を作ることに成功し、これを"エンテロバクターアエロゲネスHU101"と名付けた。グリセロールを含む廃液を水で薄めてこの菌を加え、アミノ酸などを加えて反応を促したところ、水素とエタノールができた。植物油1,000LからBDFは930L生産され、グリセロールを含む200Lの廃液が出るが、それに今回の技術を使えば水素145m3(0℃、1気圧)とエタノール48Lができる。BDF製造時に出る廃液はこれまで捨てたり燃やしたりするのが一般的であったが、これにより有効利用が可能になる。(日経産業新聞09年7月3日)

11.水素輸送・貯蔵技術の開発
(1)栗本鉄工所と龍谷大
栗本鉄工所と龍谷大学は共同で、マグネシウム系の水素吸蔵合金からの水素放出温度を、従来比80℃低い220℃に低減する技術を開発した。栗本独自の遊星ボールミルで、水素化マグネシウムとアルミナに重力加速度150Gの衝撃を与えて微細構造を持つ水素吸蔵合金を作製した。通常、遊星ボールミルを用いた微細合金化には3〜12時間かかるが、新処理法では大きな機械的エネルギーを与えたこと、および粉砕を促進する助剤としてアルミナを使用したことにより処理時間を10分短縮した。合金の構造はアルミナの粒径が数百nm、水素化マグネシウムが同10nmで、ナノレベルに微細化したことで水素の放出温度が下がった。詳細メカニズムは不明で今後解析を進めるが、合金粒子をナノサイズにしたことにより粒子表面の活性化エネルギーが向上したためと思われる。マグネシウム合金の水素吸蔵可能量は合金重量の約7%、ランタンニッケル系の同1.3%よりも高い。今後触媒の付加などで同温度を150℃程度に下げ、2012年度での実用化を目指す。(日刊工業新聞09年7月1日、鉄鋼新聞7月16日)

(2)ヒューズ・テクノネットと長岡技科大
 フューズ・テクノネット(東京都)と長岡技術科学大学は2010年3月までに、もみ殻炭を使って、水素を効率よく出し入れできる新型貯蔵材料を共同開発する。稲のもみ殻炭から超微細の穴がある活性炭を大量に合成、もみ殻を燃やしてできる炭の表面にあるシリカ層をアルカリ液で溶かし、炭の内部にある超微細な穴を表面に露出させ、穴の直径は1.1nmとして水素の出し入れに最も適した構造にする。穴の内部を含めた炭1g当たりの表面積は2,000m2以上で、大量の水素を貯蔵、放出できるという。FCVは7万Lの水素を貯蔵する必要があるとされるが、この新型貯蔵材料を使えば30kg程度で可能となる。(日本経済新聞09年7月9日)

12.マイクロFCの開発と事業展開
 山陽特殊鋼が北海道大学と共同で開発した技術の実用化を急いでいる。携帯機器などに内蔵される小型DMFC用セパレータの構造を変えることにより、出力を3倍に引き上げる技術で、メーカーへサンプル供給を進める。07年9月に北大の研究グループが開発した技術がベースで、それはセパレータ内の流路に小さな穴が無数に開いたスポンジ状の金属素材を使うことにより、酸素などが均一に通るようになり、最大出力が従来比3〜4割向上した。新たに開発したセパレータには、流路にステンレス系素材でできた球状の金属粉末の焼結体を採用したもので、その結果発電を阻害する水やCOなどの副生成物が溜まりにくくなって効率が高まった。実験では出力密度がセパレータの1cm2当たり134mWを記録、従来方式に比べて3倍に向上し、NEDOの目標値を上回った。(日経産業新聞09年6月23日)

13.FCおよび水素関連計測器の開発と事業展開
 倉元製作所(栗原市)は岡山大の久保教授らと共同で、炭化水素のピセンを使った有機トランジスタを開発した。世界最速レベルの電子移動性(5cm2/V/秒)が特徴で、同社はこれを使って研究開発型企業イデアルセンター(仙台市)と共同でガス濃度センサーを開発する。ピセンは常温で動作することも確認し、酸素、湿度、水素を同時に高感度で測定できることも分かった。試作チップは2.5mm四方と小さく、電子基板への組み込みが容易で、小型・軽量、低電圧、省電力で優位性を持つ。FCV向けやガス警報装置用などを狙っている。(河北新報09年7月1日)

14.企業によるFC・水素関連のビジネス展開
(1)理化工業
 理化工業(八尾市)は、9月を目途に本社隣接地で表面処理の新工場を稼働、FC関連など高付加価値の表面処理事業の拠点にする。都市ガスから水素を作る改質装置に組み込む触媒を扱う。金網状部品にセラミックスコーテイングをするもので、手動と自動のラインを設ける計画である。コーテイング後の焼き付けは1000℃以上の高温処理が必要なため、他社の協力を仰ぐ。(日刊工業新聞09年6月26日)

(2)岩谷産業
 岩谷産業は7月7日、千葉県市原市の関連会社工場で液化水素製造プラントを稼働させたと発表した。堺市に次ぐグループ2か所目の製造拠点で、今回稼働の新プラントは堺の最大6,000Lに比べて半量の生産規模ではあるが、東日本の拠点と位置付けている。(毎日新聞09年7月8日、千葉日報7月9日)

 ――This edition is made up as of July 16, 2009――

・A POSTER COLUMN

EV世界市場15年に12兆円規模
 富士経済は6月18日、EV、HEV、FCV、電動バイクなどを合わせた電動自動車の世界市場が、15年に08年度比6倍の12兆1,465億円に成長するという調査報告書を発表した。HEVの普及が市場をけん引、今年以降はプラグインハイブリッド(PHEV)やEV市場の立ち上げりを考慮し、15年に1,112万台の普及が見込まれるとしている。
 EVについては、15年までに各国主要都市で急速充電器などの社会インフラが整備され、法人から個人へ普及が広がると予想しており、普及台数は22万台に達し、市場規模は8千億円近くになるとした。しかし、電動自動車普及の主力はHEV車で、市場規模は約10兆円と大半を占める。
(電気、北海道新聞、フジサンケイビジネスアイ09年6月19日、日経産業、日刊工業新聞6月22日)

総合科学技術会議が低炭素社会実現を最重要課題に
 政府の総合科学技術会議が6月19日に総理官邸で開催され、10年度の科学技術関連予算の資源配分方針案を示した。日本の国際的なリーダーシップによる低炭素社会の実現を掲げ、革新技術の研究開発目標を前倒しして取り組みを加速化する。太陽電池、蓄電池、FCの産学官連携研究拠点の整備、高効率空調・給湯器、CCS、原子力発電などの革新技術の開発・普及を推進するとしている。
 又06〜10年度の"第3期科学技術基本計画"における中間フォローアップを行い、エネルギー分野では次世代軽水炉技術、高速増殖炉サイクル技術に関する技術開発が順調に進んだことを主な成果として示した。首相を座長とする"最先端研究開発支援会議"を設置することも決定、研究者最優先の多年度研究開発プログラムとして、6月下旬を目途に研究テーマの公募を開始する。
(電気新聞09年6月22日)

廃棄物からのバイオ燃料が拡大
 建材や食品の廃棄物をバイオ燃料として活用する試みが相次いでいる。
 積水ハウスは木造住宅用工場から出るおが屑から、水素やメタンを含むバイオガスを作り、浅井工場(滋賀県)で発電に利用している。初期投資は2億5,000万円、電気代、廃棄物処理費など年間2,200万円が節約できるので、11年半で回収可能という。
 プラント製造のタクマと焼酎製造の浜田酒造(鹿児島県)は、微生物を使って焼酎のかすから水素やメタンを作る手法を実用化した。焼酎工場の殺菌に使う蒸気を作るのに利用、1日40トンのかすを処理できて、処理費用や燃料費を節約できる。
 明治乳業などは牛乳やヨーグルトの食品廃棄物を発酵させてメタンを生産する技術を開発、神奈川工場に導入した。乳製品は季節や生産状況によって成分の量が変わるが、安定して発酵できるように工夫した。
 バイオ燃料は政府が活用を進めており、2010年度までに308万kL(原油換算)の利用を目標として掲げている。バイオ燃料に転換できる未活用資源も年間2,919万kLあると推定される。
(日本経済新聞09年7月7日)

アメリカにおける藻からのバイオ燃料製造技術開発
 エクソンモービルは、ヒトゲノムの解読で知られるクレイグ・ベンター博士らが設立したベンチャー企業"シンセテイック・ジェノミクス社と共同で、藻を使ったバイオ燃料の量産化技術を開発する。6億ドルを投じて、カリフォルニア州に実験用の温室を作り、光合成で繁殖する藻から燃料を量産する。トウモロコシから作る現在のエタノールより効率良く生産するのが目標で、5〜10年以内での実用化を目指す。
 ダウ・ケミカルも藻とCOからエタノールを生産する実験を開始、テキサス州に保有する石化コンビナート内に施設を建設、アルノジェール・バイオフュエルズやジョージア工科大学と協力して、COを藻に供給してエタノールを生産する技術を開発する。
 グローバル企業の間でコーンなど食料を使わない代替燃料開発が活発になってきた。
(日本経済新聞09年7月16日)