第158号 家庭用FCで荏原バラードを解散の方針
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.SOFCの開発
4.家庭用PEFC"エネファーム"の事業展開
5.FCV、水素REV・輸送機関開発最前線
6.水素ステーション関連事業
7.水素生成・精製技術の開発
8.水素輸送・貯蔵技術の開発
9.水素・FC関連の検知・計測装置の開発と事業展開
10.企業による事業展開
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)経産省
 経済産業省の"低炭素社会におけるガス事業の在り方に関する研究会"の第5回会合が6月10日に開かれ、中間報告を取りまとめた。分散型エネルギーシステム、水素社会の構築、産業部門における取組の3つを柱に、天然ガスの高度利用を進めることを明記、具体策としてIT技術を使い、電気と熱の効率利用を図ることができるスマートエネルギーネットワーク構築に向けた実証実験の実施や高効率機器開発の必要性を示した。分散型エネルギーでは、FCを含むコージェネレーション設備の普及開発やスマートエネルギーネットワーク構築の必要性を指摘。水素エネルギー社会に関しては、核となるFC機器の技術開発を進め、耐久性向上と低コスト化を図る。水素ステーションからパイプラインで供給する水素インフラの整備・実用化に向けた実証試験、安全性に関する調査などについて産官学の連携を強調している。(電気新聞09年6月11日)
 経済産業省はCO排出を限りなく0に近づける"ゼロエミッション石炭火力発電"の実用化を支援する。FC、ガス・蒸気タービンの3種類の発電方式を併用した高効率の"石炭ガス化FC複合発電システム(IGFC)"などと、COを地層に貯留するCCS技術を組み合わせることを想定、補助金などを通じて民間の開発を後押しする。IGFCとCCSはそれぞれ研究が進められ、技術蓄積も進んでいる。経産省は官民で技術開発を進めて早期に実用化し、海外普及も促したい考えである。(産経新聞09年6月18日)

(2)NEDO
 NEDOは6月11日、次世代の住宅内インフラを担う直流システムを技術開発し、その省エネルギー効果を実証する事業について、パナソニック電工とシャープに事業費の一部を助成することを決めた。低電圧の直流配線と既存の交流配線を併用する技術の開発で、約1割以上の省エネ効果があることを実証する。太陽光発電やFCなお直流で発電する電源の電力を交流に変換することなく活用するための共通基盤になり得る。(建設通信新聞、化学工業日報09年6月12日、電気新聞6月16日)

2.地方自治体による施策
 岐阜県は太陽光やFCでの発電出力を地域社会で幅広く利用する次世代エネルギーインフラの構築を目指し、7月にも公共施設で実証実験に向けた準備を進める。蓄電池を使って電気を効率よく利用できる仕組みを採用、エネルギー使用量やCO削減効果を検証し、その結果を踏まえて一般家庭や小規模商業施設などでの実用化を目指す。実証実験は県営"花フェスタ記念公園"と民間商業施設"クックラひるがの"の2か所で実施、クックラの場合は、太陽光発電システムは2.7kW、FCは1kW2台で、発電電力は施設内のLEDや冷蔵庫、EVに供給する。電気自動車は三菱自動車から購入、又FCから排出される熱は足湯や融雪に利用し、余剰電力は蓄電池に蓄えて必要に応じて使えるようにする。事業費として2億円弱を6月補正に盛り込む予定である。(日経産業新聞09年6月16日)

3.SOFCの開発
 日本ガイシは6月11日、開発中の出力700W級で動作温度800℃のSOFCにおいて、発電効率63%(LHV)、燃料利用率90%を達成したと発表した。加藤副社長は「ほぼ実用化できるレベルに到達した」と述べている。セルの支持体となる燃料極の全面に厚さ5μmのジルコニア製薄膜状電解質を形成して抵抗を下げるとともに、セルの両面に空気極を配して広い発電面積を確保することにより高出力を実現した。セルの内部には燃料ガスを供給するスペースが設けられ、燃料ガスがセル全体に均一に分布するよう設計されている。セル全体の寸法は縦10cm、横5.5cm、厚さ1.5mmのカード状であり、このセルを数十枚組み合わせてスタックを構成した。国内の大手石油会社に新しい発電素子を提供して性能評価を続け、12〜13年での実用化を目指す。コンビニやショッピングセンターなど事業者向け需要を見込んでいる。(朝日、日本経済、産経、電気、電波、日経産業、日刊工業、日刊自動車、東京、中日新聞、化学工業日報09年6月12日、中国新聞6月13日)

4.家庭用PEFC"エネファーム"の事業展開
(1)岩谷産業
 岩谷産業は5月18日、7月からLPガス形質型エネファームの本格販売を開始すると発表した。積水ハウスと連携、09年度に200台以上の販売を見込む。又国の補助金とは別に同社が独自に1台当たり数十万円の補助金を実施して導入を促進する。具体的には、積水ハウスの住宅購入者および予定者に対し、岩谷産業のLPガス販売子会社が同行し、エネファームを提案、機器の販売・現地施工からアフターメンテナンスまでを行う。同社は05年からに実証試験で83台のテスト機を設置、グループでの研修や教育を実施して施工・保守体制の構築を進めてきた。11年度には年1,000台以上の販売を目指す。(日経産業、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報09年5月19日)

(2)静岡ガス
 静岡ガスは5月26日、エネファームを7月1日から発売すると発表した。パナソニック製で、09年は50台の販売を目指す。(電気新聞09年5月28日、日刊工業新聞6月3日)

(3)東ガス
 東京ガスが5月1日に販売を始めたエネファームの予約が、新築住宅への導入を中心に、300件程度に達している。予約が数十件にとどまっている既設住宅向けの市場をどう開拓していくかが今後の課題となる。(日経産業新聞09年5月28日)
 東京ガスは太陽光発電の潜在能力を最大限に引き出すシステムの開発に乗り出した。太陽光発電は供給量が需要を上回って大量の余剰電力が電力系統に流れ込むと配電線の電圧が上昇し、余剰電力の買い取りを停止せざるを得ない状況に陥る。東ガスが開発しようとするシステムは、家庭用のFC用インバーターを使い、発電を維持した状態で電圧を制御することができる。同社は「太陽光発電が大量導入される地域では、太陽光発電とFCの相乗効果が大きく期待できる」として、関係業界とともにシステム開発に取り組み、5〜10年以内の実用化を目指す。(フジサンケイビジネスアイ09年6月17日)

(4)大ガス
 大阪ガスは5月29日、都市ガスを利用するコージェネレーションシステムと太陽光発電を組み合わせたダブル発電設備の一般住宅向けの販売を強化する方針を明らかにした。更にFCを使った熱電併給システム"エネファーム"を6月1日に発売する。(読売新聞09年5月30日、毎日新聞5月31日)

(5)北ガス
 北海道ガスは試験販売を計画していたエネファームの発売を延期。製造元の荏原バラードがFC事業から撤退するためで、販売開始は来年以降にずれ込む見通し。(北海道新聞09年5月30日)

(6)新日石
 新日本石油は今秋から家庭用FCの販路を拡大する。従来の自社グループや大手都市ガス会社に加え、岡山ガスや福山ガスなど地方のガス会社約10社に供給する。住宅メーカー向けなどにも販売網を広げ、09年度販売目標を従来計画比25%多い2,500台に引き上げる。(日本経済新聞09年5月30日、フジサンケイビジネスアイ6月6日)
 新日石は市販灯油仕様の家庭用FCを2011年度にも販売する。06年から硫黄分0の専用灯油を使うFCの実証試験をしてきたが、汎用性の高い市販灯油(硫黄分10ppm)の方が普及に有利と判断し、全面的に切り替える。市販灯油に含まれる硫黄分のほとんどを吸着除去できる触媒を開発、ガス仕様のFCとほぼ同じ程度の大きさまで装置を小型化することに成功した。(日経産業新聞09年6月1日)
 新日本石油は、ENEOSセルテックの組織を再編し、研究開発など生産以外の機能を横浜市の拠点に集約すると発表した。横浜製造所内にENEOSセルテック横浜開発センターを開設、試作機開発や実証試験、メンテナンスなどを実施。又要素研究は中央技術研究所に1本化、生産は群馬県の工場で行う。(電気新聞、化学工業日報09年6月8日)

(7)西部ガス
 西部ガスは6月1日からエネファームの販売も開始、同時に家庭向け太陽光発電システムの販売を開始した。同社では"エコウイル"との組み合わせによるダブル発電なども提案し、環境性、経済性を訴求していく。(電気新聞09年6月2日)

(8)荏原製作所
 荏原製作所は5月25日、家庭用PEFC事業から撤退すると発表した。経営基盤の再構築を進める中、エネファームの本格的市場投入を前に、大量生産・コストダウンのための更なる投資は厳しいと判断した。今後事業パートナーであるバラード・パワー・システムズ社と詰めた上で、子会社"荏原バラード"を解散する。荏原バラードは1998年に設立、05年以降ガス会社向けに累計400台のPEFCを供給したが、業績の急激な悪化で事業の継続を断念した。これを受けて東京ガスおよび東邦ガスは25日、今月から販売を始めた"エネファーム"で荏原バラード製の販売を中止すると発表した。(日本経済、産経、電気、電波、日経産業、日刊工業、中日新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報、河北新報09年5月26日、日経産業新聞6月2日)  荏原は6月16日、5月に撤退を表明したFC事業についてアフターサービスの専門部署を発足させたと発表した。既に都市ガス会社に大規模実証実験用などとして納入したFCのメンテナンスや部品の交換などを担当する。(日経産業新聞09年6月17日)

5.FCV、水素REV・輸送機関開発最前線
(1)マツダ
 マツダは5月26日、水素ロータリーエンジン(RE)にハイブリッドシステムを搭載した"プレマシーハイドロジェンREハイブリッド"を岩谷産業に納入した。3月に自治体向けへのリース販売を決定した同車は今回が初めての納車になる。同車は水素でもガソリンでも使用可能な水素REで発電し、モーターを作動させるシリーズ式ハイブリッドシステムを採用、水素航続距離は200kmを達成した。(日刊工業新聞09年5月27日)

(2)JHFC
 JHFCプロジェクトは、FCVの2015年度から一般ユーザーへの本格普及を目指した取り組みを推進する。今年度からNEDOの助成事業となり、日本自動車研究所やエン振協、石油活性化センター、日本ガス協会が事業を実施していく。09年度から2年間で、実用化に向けたインフラなどのビジネスモデルの提案や車両とインフラの整合性、安全性の検証や規制の見直しなどを検討、15年度での初期普及を見据え、これまでの技術実証から実用化に直結する社会実証へとつなげる意向である。(電気、日刊自動車新聞09年5月28日)

(3)スズキ
 スズキの鈴木会長は、HVやFCVなどの開発で今まで通リGMとの提携を維持する方針を表明した。(読売新聞09年6月2日、中日新聞6月3日)

(4)太陽電化工業
 太陽電化工業(名古屋市)は、補助陽極を使用しないで、深絞りプレス加工をした金属部品の底部にまで薄厚2〜4μmの均一メッキ加工ができる技術の開発に成功した。バイオエタノール燃料FCV部品向けなどでの実用化を狙う。バイオエタノールを使うと金属の腐食が進み易いため、エンジン部品にこの技術が採用されれば防錆の向上が期待される。(鉄鋼新聞09年6月3日)

(5)船技協
 日本船舶技術研究協会(船技協)は09年度から、水素FCVなどの海上輸送に関する調査プロジェクトを立ち上げた。現在は安全性の観点から、水素を抜いた上でコンテナ輸送する必要があるが、PCC(自動車専用船)による輸送の早期実現に向け、日本が主導する形で安全基準の策定につなげたい考え。5月に船主、船級、造船、自動車メーカー、学識経験者などで構成するステアリンググループを設置、検討に着手した。(日本海事新聞09年6月4日)

6.水素ステーション関連事業
(1)JHFC
 JHFCは既存のガソリンスタンドへの水素ステーション併設検討などを柱とする09年度事業計画を策定した。首都圏4か所の水素ステーションで、70MPa水素タンク搭載のFCV向け供給の実証を行う。(日刊工業新聞09年5月29日)

(2)岩谷産業
 岩谷産業は、ガソリンスタンドや商業施設への併設を想定した簡易型の水素供給スタンドを実用化し、初期投資費用を抑えて施設の設置数を増やす方針を明らかにした。水素の貯蔵量や充填圧力を抑えて低価格化し、ガソリン車なみの充填時間を目指した従来型設備と、低価格の供給設備を組み合わせて水素インフラを整備することにより、FCVの普及に繋げる考えである。具体的には、土地代を除く設備費が数千万円程度で、1日に数台程度の利用を想定、水素の貯蔵量を減らし、水素充填圧力も35〜70MPaよりも低くして、装置を簡素化する。(日刊自動車新聞09年6月1日)

(3)東邦ガス
 東邦ガスは70MPa高圧水素ガス対応の水素ステーションを、同社総合技術研究所(東海市)に建設、年明けの運用開始を目指す。トヨタ自動車が愛知県と名古屋市、東邦ガスなどにリース販売・堤供しているFCV4台が利用する。東邦ガスでは「水素ステーションの運営事業も視野に、ノウハウを蓄積したい」と述べている。(中日新聞09年6月4日)

7.水素生成・精製技術の開発
(1)東京理科大
 東京理科大学の大川教授の研究チームは、光触媒としての機能を持つ窒化物半導体に光を当てて、高い効率で水素を生産する技術を開発した。青色発光ダイオード(LED)などに利用されている窒化ガリウムの表面に、化学反応を利用して直径数十μmの円柱状酸化ニッケル電極を多数付けた構造で、この手法で作った1cm角のサンプルを金属線で白金電極とつなぎ、水の中に入れてキセノンランプの光を当てたところ、3時間で約1.5mLの水素が生産できた。サンプル表面に当たった光エネルギーの1.3%に相当する熱量を持つ水素ができた計算で、従来の高率に比べて2倍高い。他方太陽電池で発電した電気で水を電気分解する手法で水素を生産する場合の効率は6〜8%とされている。(日経産業新聞09年5月26日)

(2)広島大
 広島大学大学院の西尾特任教授らは、新規に単離した微生物"エンテロバクスター・アエロゲネス"を用いて、メチルエステル法によるバイオデイーゼル(BDF)生産時の副生廃グリセリンを連続して水素とエタノールに高い効率で転換することに成功した。水素はそのままFCに使用可能な純度を保ち、エタノールは理論的には廃グリセリンと同量の回収が可能である。BDFはバイオ燃料として使用されているが、復生される廃グリセリンの大量処理法がなくそれが普及の妨げになっていた。又この微生物が廃グリセリンやプロセス廃液に耐性があり、合成培地だけで安定した培養が可能で、コスト面でも有利なことを確認した。菜種油やヒマワリ油など原料油1,000Lに対してBDFが930L得られ、200Lの廃グリセリンが副生されるという想定をベースにすると、このプロセスでは水素145Nm3、エタノール48Lが得られる。しかし、処理できる廃グリセリンの濃度は100g/L、得られるエタノールの濃度は3%程度とやや低い。(化学工業日報09年5月28日)

(3)プレイハート
 プレイハート(八尾市)は、京大大学院工学研究科平尾教授と共同で、天然鉱物のゼオライトを主原料とする水素発生剤を開発した。ガラス容器に入れた発生剤100gに対し水90kgを注ぐと22.4Lの水素が発生する。発生剤はゼオライトと特殊な処理を施した1%未満の活性炭が原料である。「活性炭に形成されたカーボンナノチューブ(CNT)内に入った水が高速回転し、それによってテラヘルツレベルの電磁波が発生、電磁波で振動したゼオライト成分がガラス容器内の水分解を促進するため、水素が発生するのではないか」と平尾教授は話している。発生した水素から水分を完全に除去すると、水素純度は99.8%で、将来そのままFC用燃料として開発することを検討している。(日刊工業新聞09年6月10日)

8.水素輸送・貯蔵技術の開発
 エネルギー総合工学研究所が主催する月例報告会で、エネ総研の渡部主任研究員は、海外での大規模な風力発電所で得た電力により水電解で水素を製造、液体水素に転換して日本に輸入、発電やFCVに供給するシステムの概念を構築し、その経済性を検討した結果を報告した。風力発電の立地としてアルゼンチンのパタゴニア地方を想定、経済性試算の前提としては、水電解水素製造装置と液化設備に要する電力の原単位が現状レベルのケースと、現状より向上した将来ケースの2パターンを設定した。水素価格は現在ケースで36.6円、将来ケースでは31.2円、風力発電の平均送電端電力価格は現在ケースが23.7円/kWh、将来ケースでは20.8円/kWhとなった。(電気新聞09年6月4日)

9.水素・FC関連の検知・計測装置の開発と事業展開
(1)村上技研産業
 村上技研産業(大阪市)は、FC業界を対象とした水素ガス検知装置を6月1日に発売する。耐圧防爆仕様で水素ガスを検知する"BGS-3WW"と、炎・水素ガスを検知する"FLGA-10K"の2種類。BGS-3WWは検知エリアの水素ガス濃度が設定値から25%以上変動したときに異常を検知する装置で価格は367,500円。FLGA-10Kは炎と水素ガスの両方を検知し、検知エリアの水素濃度が8,000ppmを超えた時点で異常を検知する。価格は241,500円。FCの製造工程や水素ステーションなどでの使用を想定する。(日刊工業新聞09年5月29日)

(2)ニコレ
 ニコレはフィルムなどに塗工した透明材料の膜厚を最小1nmの精度で計測する手法を考案、電極に塗工したカーボンの厚みを測る技術についても目途をつけ、リチウムイオン電池やFC関連メーカーの需要開拓に乗り出す。同社が考案した手法は光の反射率測定により色を評価する色彩値測定技術を応用したもので、膜の形成で光の干渉現象が起きることによる反射率の変化を測定する。提案する計測装置は"カムズシリーズ"で、これまでの営業してきた製品に膜厚演算ソフトを搭載した。(日刊工業新聞09年6月10日)

10.企業による事業展開
(1)アタゴ製作所
 アタゴ製作所(群馬県)は熱交換機で培った技術を生かし、ステンレス製部材を真空炉内でろう付けする手法を確立、PEFC用熱交換器向けの加工を受託する。既に一部のメーカー向けに供給を始めた。受託加工するのは凝縮熱交換器で、改質装置や発電セルスタックで生じる高温多湿の気体から、純水や廃熱などを回収する。(日刊工業新聞09年5月20日)

(2)オルガノ
 水処理大手のオルガノは今夏から家庭用PEFC向けに、業界最小サイズ水処理装置のサンプル出荷を始める。水のろ過などに使用するイオン交換樹脂の量を減らすなどして小型化した。1万時間を超える連続運転試験の実施で実用化に目途を付けた。直径7cm、高さ8cmの円筒形で、価格は2万円前後。(日本経済新聞09年5月25日)

(3)穴織カーボン
 穴織カーボン(大阪府)は、環境エネルギー分野向けに、カーボンやグラファイトを拡販する。同社はカーボン製品をPEFCセパレーター、電極などの材料、風力発電ブレード用カーボンファイバー材料などとして売り込む。高槻工場の新設で生産能力が2倍になり、高率生産ができるようになった。(日刊工業新聞09年6月3日)

(4)アタカ大機
 アタカ大機は6月8日、気象庁から気象観測用気球向けの固体高分子型水電解水素発生装置を受注したと発表した。受注額は2億7,090万円。(日刊工業新聞09年6月9日)

 ――This edition is made up as of June 18, 2009――

・A POSTER COLUMN

最先端研究助成を政治主導で配分
 世界の最先端レベルにある科学技術の研究を対象に、政府は助成先と助成額を首相直属の会議で決める方針を固めた。1件で数百億円の巨額助成も認める考えで、年度をまたいでの自由に使えるようにする。思いきった支援で日本の産業競争力を中核で担う技術を育て、経済の活性化につなげたい思惑もある。
 政府は4月に決めた"経済危機対策"で、3年以内の景気回復と同時に、太陽光発電や医療品開発など"低炭素""健康長寿"分野の研究開発を強化する目標を掲げている。
(朝日新聞09年5月27日)

下水汚泥をバイオマス燃料に転換
 Jパワーは、地球温暖化防止策の一環として、下水汚泥をバイオマス燃料に転換し、発電所で混焼するリサイクル事業に取り組む。同社では既に一般廃棄物や廃木材のバイオマス燃料化と石炭火力発電所での混焼に取り組んでいるが、09年3月に月島機械などと共同で広島市と下水汚泥燃料化に関する事業契約を締結、燃料化施設を建設して2012年度から20年間にわたって施設の管理維持・運営などを行う。
 下水汚泥を低温で炭化させ、発熱量の高い炭化燃料を製造する技術を利用し、広島市の汚泥発生量の約半分にあたる年間約27,800トンを燃料化する。汚泥の処理方法を焼却から燃料製造に転換することで、温室効果ガスをCO換算で年間9,700トン削減、更に製造された炭化燃料を竹原火力発電所で使うことにより石炭の使用量も減らせるため、合計16,100トンCOの削減ができると期待している。
(フジサンケイビジネスアイ09年6月1日)

トヨタ09年末にプラグインハイブリッド車のリース販売を開始
 トヨタ自動車は6月3日、家庭用電源などから充電が可能なプラグインハイブリッド車(PHV)を、6都府県の官公庁などを対象に、09年末からリース販売を開始すると発表した。対象エリアは経産省が次世代エコカーの普及を目指して本年度に始めたモデル事業の実施地域に選ばれている8都道府県のうち、愛知、福井、東京、青森、京都、新潟の6都府県で、計約200台を官公庁や企業などに順次リースし、新型PHVを国内にデビューさせる。神奈川県と長崎県も今後の導入を検討している。経産省のモデル事業は、国と自治体、企業などが連携し、充電インフラなどを集中整備する。愛知県は13年度までに、県内で千ないし二千台を導入するとともに、充電スタンド100基の設置を目指している。
 開発中のPHVは5月に発売した新型"プリウス"がベースで、トヨタのハイブリッド車としては初めてリチウムイオン電池を搭載する。短距離は電気モーターだけで走行するため、HV車よりも燃費が向上し、CO排出削減効果が期待される。同社は「現段階ではPHVが本格的な普及に最も適したエコカー」としている。
 海外でもアメリカ150台、フランス100台などを計画、何れも法人などの特定利用者が対象で、日米欧全体では約500台の販売予定である。
(中日新聞09年6月4日)

次世代自動車導入目標:2050年に3,440万台:環境省
 環境省は次世代自動車について、長期的な普及目標を策定した。ここで次世代自動車とは、ガソリン以外の燃料や新型エンジンを導入し、環境に配慮した自動車の総称で、EV,HEV、FCV、クリーンデイーゼル車などが含まれる。
 「2050年に温室効果ガスの排出量を現状の半分に減らす」という政府の長期目標を踏まえ、自動車の排出量半減のために必要な次世代自動車の普及台数を計算した。将来の人口減で自動車台数が約15%減ること、技術の進歩で燃費が向上することも見込んだ。それによると2020年の普及台数目標は1,350万台で、30年は2,630万台、50年は3,440万台となり、これは全自動車台数の54%に相当する。
 目標達成には、20年までにEVを少なくとも17車種、HEVは38車種を開発する必要があり、メーカーによる市場開拓の努力も不可欠としている。開発を国が支援するだけでなく、行政機関や各企業による積極的な次世代自動車購入の必要性を指摘した。
(読売新聞09年6月6日)

NEDOが太陽電池ロードマップの見直し2040年に変換効率40%を狙う
 NEDOは2004年に策定した太陽電池のロードマップ(PV2030)を見直し、新しく"太陽光発電ロードマップ(PV2030+)として発表した。変換効率の目標値を高めた他、従来は2030年までであったロードマップを2050年まで延長し、更に新たな開発完了時期の項目を加えた。
 結晶Si型太陽電池の実用モジュール変換効率の目標値は、2020年に20%(従来は19%)、2030年に25%(従来は22%)に高めるとともに、2050年の目標値として、方式は定めずにモジュール変換効率40%を新たに加えた。目標値を高めた理由は、NEDOが進めている太陽電池の研究開発が順調に推移していることに加えて「覚悟のほどを見せるため」(福田秀樹:NEDO新エネルギー技術開発部長)としている。
(日経BP:ECO JAPANメール6/11、09年6月9日)

FC等各種新エネルギーの市場予想
 富士経済は6月9日、環境に配慮した新エネルギーの国内市場予測をまとめた。
 先ずFC市場については、各社が販売強化策を打ち出している家庭用がけん引する形で、2017年度には08年度の53億円に対して39倍の2,078億円にまで成長すると見込んでいる。現行のエネファーム(PEFC)に加え、11年度以降はSOFCの普及が期待される。
 太陽電池市場は、国や自治体による住宅・学校向け補助金が相次いでおり、又材料費の低下や量産効果が働いて、17年度に同3.6倍の6,448億円に拡大する。2次電池・電力貯蔵システムは17年度に計4,296億円(同1.2倍)に伸び、中でもリチウムイオン電池はEVの普及により15年以降急速に拡大する見通しである。風力発電・バイオマスは計2,064億円(同1.9倍)に成長するとみている。
 富士経済は新たにHEV、EV関連市場分析調査をまとめ、2020年にはHEVは375万台、EVは13万5千台に達することを前提に、リチウムイオンバッテリー市場が3,132億円規模に急成長するとの見通しを示した。
(読売、日本経済、電気、日経産業、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報09年6月10日、鉄鋼新聞6月12日、日刊自動車新聞6月13日)

オール電化住宅、東電管内で60万戸突破、全国は310万戸超える
 東京電力は5月21日、同社のサービスエリア(関東1都6県と山梨県、静岡県の一部)で、4月末時点のオール電化住宅累計戸数が61万841戸となり、60万戸を突破したと発表した。
 新規住宅着工数の減少で、08年度の新築住宅の導入戸数は07年度に比べて2%減の8.6万個であったが、既存住宅はリフォーム需要の取り込みを図った結果、5.6万戸と07年度比26%増加した。
 全国でのオール電化住宅の累計戸数は、08年12月時点で317万戸に達し、普及拡大が続いている。新築電化市場は当面落ち込みが見込まれるが「1980〜90年代後半にかけて多数建設された既存住宅のリフォーム需要が増加する」と期待している。
(フジサンケイビジネスアイ09年5月22日)