第157号 3kWSOFCモジュールで発電効率59%
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.海外政府および国際機関による施策
4.SOFC開発
5.PEFC要素技術の開発
6.家庭用PEFC事業展開および"エネファーム"情報
7.FCV最前線
8水素輸送・貯蔵技術の開発
9.マイクロFC関連技術開発と事業展開
10.FC関連補機類および部材の開発と事業展開
11.FCおよび水素関連計測技術
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)経産省
 経済産業省は国民生活で排出されるCO排出0社会の実現を目標に、09年度から4,5の実験地域を選定し、大規模実験に乗り出す。高速道路にFCV用水素ステーションを作ってFCバスを試験走行させるほか、製鉄所からの副生水素を家庭などで利用できるよう、集合住宅向けパイプラインなどのシステムも構築する。1地域当たり数億〜10億程度補助、地域は今後公募するが、福岡県、青森県、宮城県、岐阜県、沖縄県などが候補として挙がっている。必要な資金を09年度補正予算に盛り込み、将来的には全国的な試みに広げたい意向である。(日本経済新聞09年4月27日)
 経済産業省の"低炭素社会におけるガス事業のあり方に関する研究会"が4月27日に開催され、ガス会社や研究機関の代表者が天然ガスの高度利用やFC,水素利用、CCSなどの技術や展望開発動向についてプレゼンテーションを行った。天然ガスの活用が低炭素社会実現につながることや、都市ガスと再生可能エネルギーを組み合わせることで導入量の拡大が見込めることなどが紹介された。(電気新聞09年4月28日)
 二階経産相は5月1日から5日間の日程で訪米し、アメリカ政府当局とエネルギー・環境分野の関係強化に向けた協議を行う。太陽光発電、FC、スマートグリッドなど新エネ・省エネ技術の開発提携で合意する見通しであり、産総研とロスアラモス研究所、サンデイア国立研究所、国立再生可能エネルギー研究所などの間で研究協力の覚書を締結する。(日本経済新聞09年5月1日、毎日新聞5月2日、日刊工業新聞5月4日、電気新聞5月8日)
 経済産業省は太陽光発電、FC、バイオテクノロジーなど先端分野で、産学官が連携して活動する拠点を整備する。産学官のチームがイノベーションを起こせるか、地域に根付く基盤技術となるかなどを審査し、建物の建設と装置購入費用の2/3を補助する。各地域で産学官連携の場が不足していることに応えつつ、審査要件を高めに設定することで利用の少ない"ハコモノ"になる危険を防ぐ。09年度補正予算に151億円を盛り込んだ。全国に15か所程度の建設を想定する。28日までに提案の応募を受け付け、6月中に審査・決定する予定。同施策は08年度に25億円かけて実施、実績は"慶応義塾大学医学部と病院"による「慶応義塾大学がん低侵襲療法研究開発センター」、"九州大と産総研"による「福岡県水素エネルギー製品研究試験センター」、「京都大学環境・低炭素技術開発拠点」の3か所で、地域の評判が良かったため拡充する。(日刊工業新聞09年5月15日)

(2)環境省
 環境省は、09年1月から実施しているEVなどを使った大規模実証試験事業について、8月にも分析結果をまとめる。カタログデーターなどとは異なる実際の運行に基づいて収集したデーターを解析し、1充電当たりの走行距離や車両の使い易さ、信頼性などをユーザーなどに分かり易くまとめて示す。6月に横浜市で開催される"エコカーワールド2009(低公害車フェア)"では既に実施している実証事業について中間報告を行う予定である。同実証試験は地方公共団体の公用車などとして使用する形で順次実施しており、7月下旬を目途に終了する予定。試験では三菱自動車の"i-MiEV"5台と富士重工業の"プラグイン・ステラ"15台を神奈川県や愛知県、大阪府、兵庫県、北九州市の各自治体で、ホンダのFCV"FCXクラリテイー"1台を横浜市で公用車などに使用し、車両データーを収集、又5月からはバッテリー交換方式充電スタンドの実証試験を横浜市で始めている。(日刊自動車新聞09年5月18日)

2.地方自治体による施策
 山梨県、山梨大学と山梨県機械電子工業会は、FCや太陽電池、バイオマスなどの研究から規制緩和、実証実験、評価・標準化までを含めた地域新エネルギーシステムの拠点構想を固めた。山梨大がリードするFC技術や、県の地理特性を生かした新エネルギーの社会実装を、特区的扱いの産学官連携で進める。FCでは将来必要となる評価・標準化センターの誘致も想定し、機械電子産業の地元中小企業が実証評価のデータ測定に係る。当初は現在NEDO委託による7年間70億円プロジェクトで約60人の研究者が参加している山梨大学のFCナノ材料研究センターが中心であるが、将来の目玉としては評価・標準化を挙げている。地元中小企業が県の規制緩和で行う実証試験に対し、最終製品でのデータ測定を手掛け、山梨大などが分析・解析を支援する。(日刊工業新聞09年5月12日)

3.海外政府および国際機関による施策
(1)アメリカ
 アメリカの通信事業者スプリント・ネクステルはDOEから水素FCの開発費として730万ドルの支援を受けることになった。オバマ大統領は景気刺激策"09年経済回復・再投資法(ARRA)"の一環としてFC分野の技術開発に4,190万ドルを投入する方針を既に決めている。05年以降スプリントが設置しているFCは、電力供給が災害などで中断された時のバックアップ用として使用されており、全米250か所で稼働している。(電波新聞09年4月22日)

(2)韓国
 韓国の知識経済部はこのほど"2009年度新・再生可能エネルギー技術開発および利用・普及実行計画"を発表した。計画の軸となるのは、国産製品の普及拡大、技術開発、輸出産業化政策、普及制度見直しの4点で、政府は"グリーンエネルギー分野"を新たな市場や雇用を生み出す有望な成長エンジンと位置づけ、太陽光、風力、水素FC、クリーン燃料、エネルギー貯蔵技術など9つのカテゴリーを中心に5年間で3兆円を投じる。(化学工業日報09年5月18日)

4.SOFC開発
(1)東邦ガス、NTT、住友精密
 東邦ガスとNTT、住友精密工業(尼崎市)は4月20日、都市ガス仕様で出力が3kW、短時間発電効率が59%(LHV)に達する業務用SOFCモジュールを開発したと発表した。3社は06年から共同開発に着手、開発したのは平板型のセルを集積したスタックで、高効率で安定した発電を実現したほか、発電時の熱の回収利用、スタック温度の均一保持など熱フロー設計を適用し、放熱を抑える設計上の工夫を凝らしている。補機などを含めた実使用条件での発電効率は45%以上を見込む。東邦ガスによるとこれは世界最高レベルで、飲食店やどの小規模店舗・事務所向けに2,3年後の実用化を目指すとしている。(日本経済、電気、日経産業、日刊工業、中日新聞、フジサンケイビジネスアイ09年4月21日、電波新聞4月22日、電経新聞4月27日)

(2)大ガス
 大阪ガスは京セラと共同で開発した集合住宅向け家庭用SOFCを、2月に同社の実験集合住宅"NEXT 21"の3戸に設置して実証実験を始めたが、3月からはトヨタ自動車とアイシン精機が参加、実用化に向けた研究を加速した。2月、3月の稼働状況を調べたところ、平均発電出力は440W、各戸で使う電力のカバー率67%、発電効率38%、排熱回収効率40%、CO2削減量93kg/月、光熱費の削減は1カ月当たり約3,700円となった。又SOFCはCO除去の必要がないため、都市ガス中のメタンを半分程度に改質すればよく、改質装置は筆箱程度の大きさになった。(日刊工業新聞09年4月27日)

(3)新日石
 新日本石油は5月8日、家庭用SOFCシステムを2015年度までに商品化する方針を固めた。東ガス、大ガスもこの時期にはSOFCの販売を始める計画で、販売が本格化しそうである。既に新日石はSOFCの実用化に向けた実証運転を行っており、15年度までの早い時期に商品化し、"ENEOSセルテック"で製造を行う計画である。SOFCのコンパクト性による省スペース化によって集合住宅への設置が可能になる他、給湯よりも発電量を重視する小規模世帯向けの本命になるとの見方が強い。(フジサンケイビジネスアイ09年5月9日)

5.PEFC要素技術の開発
(1)フルヤ金属
 フルヤ金属は、PEFC向けに白金を使わない電極触媒を開発した。ルテニウムのナノ粒子が非晶質カーボン中に分散した構造で、プラズマCVD法を用いて基板上に製膜する。単セル試験により、白金触媒と同等の出力特性を示すこと、およびCO被毒の影響が小さいことは確認済みである。基板上のルテニウムを含んだ有機化合物がプラズマによって分解し、ルテニウム粒子が非晶質カーボン中に分散したナノコンポジット膜となる。ルテニウム粒子の径は2〜3nmで、ナノレベルに微細化したことより表面積が増えて触媒活性が向上、又ガスを透過し易くするために製膜温度を調整して膜を多孔質化した。来春のサンプル出荷を目指して、性能向上や量産技術の検討を進める。(化学工業日報09年4月27日)

(2)nintac
 ナノ材料の開発を手掛けるnintac(東京都)は、銀ナノ粒子を用いた導電性ペーストを開発した。基材に刷毛などで添布した後、加熱・固化するだけで銀被膜を形成できる。低温処理が可能のみならず、絶縁材料のプラスチックをはじめ、幅広い基材と高い密着性を示す。開発された銀ナノコート"S180-5"は非水系の高級アルコールで被覆した粒径5nmの銀粒子、骨材の役割を果たす同5μm程度の銀粉末を濡れ性に優れるテレピン油に分散させている。個々の銀粒子は被覆されているため凝集が起きず、比較的低温で被膜が形成可能であり、ナノ粒子は微細な凹凸に浸透するため、基材との密着性に優れる。分散剤にテレピン油を用いているので、ステンレスなどの非導電性金属、プラスチック、ガラスなど多様な材料に適用できる。同社は成形性と導電性を高水準で両立することがもとめられているPEFC用セパレータ向けに有望とみており、サンプル提供による用途開発を進める。同ペーストを使えば、加工後の部材表面に導電性被膜を簡単に形成することができる。(化学工業日報09年5月1日)

(3)JASRIとNEC
 高輝度光科学研究センター(JASRI)とNECは大型放射光施設SPring-8の強力なX線の利用と複数の構造解析手法を組み合わせることによって水溶液中のナノ粒子表面構造変化をリアルタイムで観測する手法を開発し、白金触媒の劣化メカニズムを原子レベルで解明することに成功した。そして白金ナノ粒子最表面の酸化層において、体積膨張をともなう非可逆な結晶構造変化が発生し、溶出劣化を引き起こしていることを突き止めた。実際の電極触媒を用いて観測したところ、白金表面の酸化過程が2段階で進行することが分かった。酸素原子が白金に吸着、内部に拡散すると白金酸化物層が形成されるが、エピタキシャルに成長した構造であるα相のうちは可逆的に白金に還元されるため溶解が起こらない。しかしその後、酸化が進み体積膨張を含むβ相への構造転移が起こると、白金にもどることができなくなり、したがって白金触媒の溶解劣化はβ相の形成に起因すると考えられる。(化学工業日報09年5月7日、日経産業新聞5月13日)

(4)九大、JSTなど
 九州大学、科学技術振興機構(JST)、理化学研究所、高輝度光科学研究センターなどは、室温で非常に高いイオン伝導性を有するヨウ化銀ナノ粒子を用いた固体電解質の開発に成功した。同研究グループは、硝酸銀水溶液、ヨウ化ナトリウム水溶液および銀イオン伝導性の有機ポリマーであるポリビニルピロリドン(PPV)の水溶液を常温常圧下で混合し、濾過後に乾燥させる簡便な方法で10〜50nmのヨウ化銀粒子を合成した。粒子径は10〜40nmサイズの作り分けが可能である。この粒子を高輝度X線解析したところ、10nm程度の粒子では転移開始温度が40℃と従来のヨウ化銀よりも100℃以上低く、超イオン伝導状態が室温付近まで保たれていることを発見した。更に10nmのナノ粒子を加熱、冷却しながらイオン伝導度を測定した結果、通常状態に変化した後、4℃の低温でも従来のヨウ化銀より10万倍以上高いイオン伝導性を示すことを見出した。新型電池やPEFC電解質への応用が期待される。(化学工業日報09年5月18日)

6.家庭用PEFC事業展開および"エネファーム"情報
(1)ENEOSセルテック
 エネファーム製造のENEOSセルテック(資本金1億円)は4月24日、三洋電機東京製作所内に建設していた新工場が完成し、量産を開始したと発表した。新工場は床面積約6,000m2、08、09年度に計約20億円を投じた。本年度は年間3,000台を生産、10年に同1万台、15年度までに延べ約4万台へ生産規模を拡大する。(上毛新聞、フジサンケイビジネスアイ09年4月25日、電気、日経産業新聞、化学工業日報4月27日、電波新聞4月30日)

(2)東ガス
 東京ガスは5月1日から販売予約の受付を始めた家庭用FCで、月内にも毎月2万円程度、期間10年の支払い方式によるリース販売を導入、製品の普及を図る。(日本経済新聞09年5月4日)
 東京ガスは家庭用PEFCの拡販に向け、営業地域内の各ガス器具販売店に計300人程度の専門営業担当者を配置した。FCの仕組みなどの専門知識を研修した社員で、各店で消費者への説明力を強化することにより、初年度1,500台、2年目は3,000台以上の販売目標に向けた販売力を強化する。東京や神奈川など都市ガス供給エリア内各地に現在計50か所あるガス器具販売拠点"ライフバル(旧エネスタ)"が担当し、10月にはそれを65に増やす予定である。当面販売先は一戸建てであるが、都市部の供給区域が多い東ガスでは戸建の比率が小さいので、12年頃を目途に集合住宅向けにも発売する計画であり、メーカーのパナソニックや荏原バラードと連携して2〜3割の小型化も目指す。(日経産業新聞09年5月11日)

(3)FCA
 FC普及促進協議会(FCA)は5月7日、民生用FCコージェネレーションシステムの購入費用と設置工事費の一部を補助する事業を始めると公表した。22日から2010年2月10日まで補助金交付を希望するFCシステムの設置予定者を募集する。又12日から22日まで全国9地区において補助金制度の説明会を開く。補助金の対象は、住宅などにFCシステムを設置・使用する予定の者と、リースによりシステムを提供する者で、定格運転時に0.5〜1kWの発電出力があることなど、FCAが指定した一定条件を満たすシステムに対してである。補助額は購入する機器の価格から従来型給湯器の基準価格を引いた額の1/2、および設置工事費の1/2の合計額で上限は140万円。CO削減効果を確実に上げるため、継続して6年間以上機器を使用することが条件となっている。(建設通信新聞09年5月8日、東京、中日、四国、北海道新聞、フジサンケイビジネスアイ、河北新報、沖縄タイムス5月9日、電気新聞5月11日、電波、中国新聞、住宅新報5月12日、日刊建設工業新聞5月15日)

7.FCV最前線
(1)JHFC
 JHFCは、東京オリンピックの招致に関して来日中のIOC評価委員会が視察を行う際の移動手段としてFCVを提供したと発表した。移動に活用されたのはトヨタ自動車の"FCHV-adv"1台、日産自動車の"X-TRAIL・FCV"1台、ホンダの"FCXクラリテイー"2台で、JHFCプロジェクトが東京オリンピック・パラリンピック招致委員会、同招致本部に協力して実施した。(日刊工業自動車新聞09年4月20日)

(2)福岡県
 福岡県は4月21日、FCV1台を公用車として導入した。機種はトヨタの"FCHV-adv"である。(西日本新聞09年4月21日)

8.水素輸送・貯蔵技術の開発
(1)栗田工業
 栗田工業は、同社が既に開発している液体メタノールを携帯化する包接化合技術を用いて水素を低圧貯蔵する技術の開発を急ぐ。包接化合技術は、ゲスト化合物をホスト化合物中に取り込み固体化を図る技術であり、携帯電子機器のバッテリー燃料源として実用化されている。水素を低圧で貯蔵することにより安全性を高かめ、FCVなどに適用する考えである。現在10MPaで水素の重量貯蔵密度1%を達成しており、実用化レベルで必要とされる5%への早期達成を目指す。高圧水素の場合、35MPaで重量貯蔵密度は2%となる。(化学工業日報09年4月21日)

(2)ムツミコーセイ
 ムツミコーセイ(大阪市)は、FCVに搭載するバルブの開発に乗り出した。1,000MPaの高圧や、温度変化に耐える安全で軽量なバルブを開発する。手始めにエコステーション向けのバルブを7月を目途に開発し、自動車メーカーと仕様を決めた上で1年後に車載用試作品を完成する。車載用バルブは高圧水素ガスが爆発しないよう主要部分は開閉と調整バルブの2重構造とし、内側が漏れても外側で止められる方式にする。水素ガスの急激な温度変化に耐えられるよう、パッキンのシール材にはポリアミドイミド樹脂を使用、更にバルブの圧力調整部分は球体構造とし、ウオータージェット加工で精巧な仕上げを施す。価格は6万円程度を予定する。先行開発するエコステーション向けバルブは動力にモーターではなく空気圧を使い、防爆に配慮する。車載用バルブは「車メーカーが価格と安全性の両面で、水素ガス搭載量と圧力をどこに決めるかがポイントになる」としており、使用決定を待って開発に着手する。(日刊工業新聞09年5月18日)

9.マイクロFC関連技術開発と事業展開
 日本電産サンキョー(諏訪町)は4月24日、携帯電話やノートパソコンの電源に使われる小型DMFCの部品製造に参入することを明らかにした。1mm程度の大きさの微細モーターでバルブを動かし、メタノールの放出量を制御する。2年前から開発してきたが、具体的な製品化時期は明らかにしていない。安川社長は「引き合いが多く予想以上に動きが早い。今後の事業において柱にしたい」と語っている。(信濃毎日新聞09年4月25日)

10.FC関連補機類および部材の開発と事業展開
(1)尾池工業  尾池工業(京都市)はナノサイズの鱗片蒸着微粉"リーフパウダー"を開発、販売を始めた。導電・電子材料としてFCや2次電池向けに売り込む他、塗装材料としての採用も狙う。(日刊工業新聞09年4月23日)

(2)田中精密工業
 田中精密工業は、ホンダからHVやFCVなど次世代車に搭載するモーター部品を受注し、本格生産を始めた。生産を開始するのはステーターで、FCXクラリテイーに採用されている。(北日本新聞09年4月28日)

11.FCおよび水素関連計測技術
 東陽テクニカはこのほどFC用性能試験装置を開発し、月内に販売する。開発したのはスタックの評価ができる試験装置で、価格は1,500万〜3,000万円。FCに接続した2次電池で、充・放電を繰り返す耐久試験の他、電池に急激な負荷がかかった際に正常に作動するかどうかを調べる負荷装置、電池内の特定個所の劣化を測定するインピーダンス試験の3つの試験ができる。初年度5台、2年間で20台の販売を目指す。(日経産業新聞09年4月23日)

 ――This edition is made up as of May 18, 2009――

・A POSTER COLUMN

経産省は09年度補正2兆9千億円を低炭素化へ重点配分
 経済産業省は4月27日、09年度補正予算案の同省関連施策を発表した。同省の補正予算合計額は2兆9千億円で、低炭素革命には8,650億円(他省庁分を含む)を計上、新規事業として次世代電力網やEVインフラ整備など低炭素社会実現の実証に205億円、原子力素材・部材メーカーへの研究開発補助に42億円、林地残材バイオマス混焼発電実証に30億円を充てた。従来施策の予算も増額、住宅用太陽光発電補助金は270億円、高効率給湯機補助金は36億円をそれぞれ積み増した。
 同補正予算のうち、一般会計は2兆7,750億円を計上、エネルギー特別会計からは1,180億円、財政投融資からは420億円を振り分けた。
 低炭素革命では新エネルギー導入補助金に200億円、太陽光発電や蓄電池など研究開発拠点整備に310億円、FC補助金に42億円をそれぞれ上乗せした。
(電気新聞09年4月28日)

廃材利用バイオ電池に道
 大阪大学の民谷教授らのグループは、木材の繊維質を燃料として発電する新しいタイプの"バイオ電池"を開発した。繊維質を微細に破砕してアルカリ溶液に浸すことによって発電するので、繊維質をいったん糖に分解する必要はない。
 セルロースを100nm程の大きさに粉砕し、アルカリ性の溶液に入れると、そのままではセルロースは溶けないが、凍らせてから常温に戻すと、セルロースが溶けた液体ができる。この液体に金と白金による2つの電極を入れると、金の触媒作用でセルロースから電子が取り出され、電極に電流が流れる。実験では約μW/cm2の発電密度が得られた。民谷教授は「この値は小さいが、セルロースをもっと微細に粉砕したり、電極の表面積を増やすなどの工夫をすれば、取り出せる電力は1,000倍以上にできる」と述べている。
 今後はセンサーやペースメーカーなど微量な電力で動く小型電子機器の電源を目標に研究進める方針で、FCの電極や触媒などを手掛ける企業に協力を呼びかける。
(日経産業新聞09年4月17日)

太陽光発電の買い取りでダブル発電に議論
 森電気事業連合会会長は4月17日の会見で、一般家庭からの余剰太陽光発電電力買い取り制度に絡み、FCなどの小規模発電設備を併用する場合の問題点を指摘、「余剰の定義として、その範囲を厳格にして欲しいと主張していく」と述べ、太陽光発電に限定した余剰買い取りを強調した。
 他方、日本ガス協会の野村会長は20日、「住宅メーカーはFCと太陽光発電の組み合わせを(環境対策住宅の)目玉にしたいと考えている」と強調。FCとの併用に普及させるべきだと訴えた。FCをオール電化攻勢に対抗する切り札と位置付ける都市ガス会社にとって、併設家庭が買い取り対象に含まれるかどうかは死活問題。野村会長は「エネルギー有効利用のためにFCは重要。大所高所から理解して欲しい」と要望を繰り返した。
(電気新聞09年4月20日、日本経済、産経、電気、日経産業、大阪日日新聞、フジサンケイビジネスアイ4月21日、電気新聞4月27日)
 家庭用FCなどのコージェネレーションシステムと太陽光発電を一般住宅に併設する"ダブル発電"について、新たな太陽光買い取り制度の対象とする方向で関係者が調整に入った。政府筋によると、ガス会社などが割高な買い取り価格の一部を負担する形でほぼ折り合った模様である。対象となる"余剰電力"の解釈については今後調整を進める。4月の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会では、ダブル発電を対象とするかどうかについては結論が示されなかった。
 太陽光買い取り制度は、電気事業者が10年間程度にわたり、約50円/kWhで余剰電力を買い取る。
(電気新聞09年5月14日)

産総研関西センターがエネルギー・環境分野で京大と包括連携協定
 産業技術総合研究所関西センター(池田市)は09年6月にも、京都大学と"医工連携分野"や"エネルギー・環境分野"を中心に包括連携協定を結ぶ。再生医療や次世代電池、再生可能エネルギーなどについて、共同研究や人材育成を推進する。具体的な連携課題は検討中であるが、国のプロジェクトへの共同提案も視野に入れたいとしている。産総研関西センターにとって、大学と学術分野で包括的に提携するのは今回が初めてである。
 医工連携分野では、再生医療が重点テーマとなる見込みで、関西センターは組織・細胞機能の再生・代替技術を蓄積しており、DNA解析でも実績を持っている。新型万能細胞(iPS細胞)などの研究で先行する京大との連携を通じて、再生医療の産業化へ弾みをつける意向である。
 エネルギー・環境分野では、FCや太陽電池など次世代型電池の研究に拍車をかけ、特に「いつでも、どこでも、だれでも使える」がキーワードとなるユビキタス社会に欠かせない小型、移動型エネルギーに重点を置き、材料・デバイスまでを含めて研究に取り組む。
(日刊工業新聞09年5月11日)

下水汚泥から都市ガスを精製する技術の開発
 神戸製鋼所グループの神鋼環境ソリューションは、下水汚泥から出る可燃ガスを、一般家庭などで使う都市ガスとほぼ同成分にする技術を開発した。下水処理施設にガス生産プラントを設置すれば、そのまま都市ガス会社のガス管に繋げるようになる。09年度中にも都市ガス会社とプラントの実証実験に着手、新たなバイオガスの利用手段として、数年内の実用化を目指す。
 具体的には、下水汚泥から発生する可燃性ガスを精製してメタン濃度を98%まで高め、これにプロパンガスなどを添加して余分な酸素などを除去する。実用化されれば、家庭などから出る排水が下水処理され、それが都市ガスとして再び家庭で使われる環境が整う。
 国内の下水処理施設で発生し、活用されていないガスは推定で年間約9,000万m3と推定されており、今回の技術で余剰ガスの全てを活用した場合には約20万世帯分のガスが供給されるという。
 神鋼環境は下水処理場を持つ自治体向けにプラント販売を目指す。
(日本経済新聞09年5月20日)

スマートグリッド技術開発が日本で本格化
 ITを使って電力供給を最適に制御する次世代送電網"スマートグリッド"は、アメリカ・オバマ政権が"グリーン・ニューデイール政策"に位置付けており、IBMやGE、グーグルなどが事業化を急いでいるが、日本でも技術開発が本格化する。スマートグリッドはCO排出削減に有効とされる技術で、蓄電池や太陽光発電など日本が得意とする要素技術を生かし、脱炭素社会に向けたインフラ構築で先行する狙いがある。
 シャープや関西電力、堺市などは2010年度にもスマートグリッドの実証実験を実施する計画で、堺市が5月25日に環境都市推進協議会を設置する。蓄電池開発会社のエリーパワー(東京都)等が参加する見通しで、スマートグリッドの具体的な実験内容の検討を始める。基本的には、太陽光発電システムを設置した堺市内の住宅をインターネットで結んで電力を一元管理、家庭で余った太陽光発電の電力を同市内の次世代型路面電車(LRT)などに供給する計画である。スマートグリッドの実用化でシャープは太陽光発電装置の販売増を目指し、関西電力はきめ細かな電力調整で発電コストやCO排出を抑制する。
 他方東京電力、日立製作所、伊藤忠商事なども東京工業大学と組んで、10年度から東工大キャンパスと電力中央研究所で実証実験を始める。ユーザー側に計測器を取り付け、電力需要をきめ細かく管理、送配電網には蓄電池を組み込み、自然エネルギーで発電した電力を蓄える。実験では需要が急に落ちた場合は太陽光や風力発電の出力を落としたり、需要が急増すれば蓄電池からの放電によりシステム全体を制御し、CO排出削減と電力品質の向上を目指す。
(日経産業新聞09年4月17日、日本経済新聞5月25日)