第156号 大手4社家庭用SOFCを共同開発
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.国際標準および規格制定の動向
3.SOFC技術開発
4.PEFC要素技術の開発
5.家庭用PEFCシステムの展開
6.FCV最前線とFC移動体開発
7.水素ステーション事業
8.水素生成・精製技術の開発
9.企業による事業展開
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)低公害車購入に対する減税
 低公害車を購入した場合に、関連する税金を減免する措置が、日本では09年から3年間の時限措置として導入される。対象となるのは購入時の自動車取得税と車検時の自動車重量税で、ハイブリッド車、EV、FCVなどは全額免除になる。(日経産業新聞09年3月19日)

(2)経産省
 経済産業省・資源エネルギー庁は3月31日、"低炭素社会におけるガス事業の在り方に関する研究会(座長:柏木東工大教授)"を設置し、6日に初会合を開くと発表した。ガス事業がエネルギー供給構造の高度化や地球温暖化問題に対応するための課題を洗い出し、それを克服するために必要となる具体的な政策を検討する。バイオガスの導入や民生・産業など部門別ガス利用の在り方、FCの普及など、幅広い分野で議論が行われる見通しである。検討課題として、熱と電気の組み合わせによるエネルギーの有効利用、FCを活用した水素社会の構築など低炭素社会に向けてガス事業の進むべき将来像などが挙げられている。(電気新聞09年4月1日、電気、日刊工業、建設通信新聞4月7日)
 近畿経済産業局は4月10日、中小製造業のビジネスマッチング会"FCの普及に向けて、利用可能な部品ニーズ発表会"を大阪合同庁舎で開き、当初予想を大幅に上回る約370人が参加した。(日刊工業新聞09年4月11日)

(3)NEDO
 NEDOは3月2日、FCV向けシステムの実証研究(JHFC)の助成先を、PEC(新規)、JARI、エン振協、日本ガス協会(新規)の4団体に決定した。(日経産業新聞09年3月26日、日刊工業新聞、化学工業日報3月27日、日刊建設工業新聞4月6日)
 NEDOは09年度SOFC実証研究の助成先を決定した。北海道、東京、東邦、大阪、西部の都市ガス5社に新日本石油、TOTO、東京電力、東北電力の合計9件で、09年度から2年間、総額14億4千万円を助成する。(電気新聞9年3月27日)

2.国際標準および規格制定の動向
 日本が提案したマイクロFCに関する互換性や性能評価の規格が、IECで業界標準として採用される見通しになった。IEC専門部会は4月中にも、国内電機メーカーと経産省が提案した性能評価の前提となる基準や、DMFC接続口などに関連する規格をベースにした最終原案を採択する。最終原案はその後微調整され6月に正式成立する予定である。(産経新聞、フジサンケイビジネスアイ09年3月12日)

3.SOFC技術開発
(1)大ガス、京セラ、トヨタ、アイシン
 大阪ガス、京セラ、トヨタ自動車、アイシン精機は3月25日、高効率な家庭用SOFCシステムを共同開発すると発表した。小型・軽量で長期耐久性を備えた次世代システムを数年後に完成、2010年代前半での商品化を目指す。大阪ガスと京セラは04年からSOFCを、トヨタとアイシンは01年からPEFCを開発してきた。大阪ガスがコージェネ技術、京セラがファインセラミックス技術、トヨタとアイシンがシステム化技術をそれぞれ提供する。現状のSOFCシステム価格は1,000万円弱、寿命は2万時間余りに留まっている。商用化に当たっては、販売価格を50~60万円に抑えるとともに、10年程度の耐久性を持たせたいとしている。(読売、朝日、毎日、産経、日本経済、電気、電波、日経産業、日刊工業、建設通信、大阪日日、中日、京都、中国、北海道新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報09年3月26日、日刊自動車新聞3月27日)

(2)東邦ガス
 東邦ガスは3月30日、09年度の事業計画および09〜13年の中期経営計画を発表したが、同社は業務用として開発中のSOFCを家庭用としても開発に着手する意向を示した。開発時期や方法など具体的な内容は今後検討するとしている。(中日新聞09年3月31日)

4.PEFC要素技術の開発
(1)ロチェスター大
 アメリカ・ロチェスター大学の研究チームは、太さ10nm、長さ数cmの極細なひも状白金を作ることに成功した。開発した白金製のひもはクモの巣のような網目状で、支持構造物なしに電極触媒として使え、凝縮などの課題を解決できるので、PEFCの効率を大幅に向上できる可能性がある。(日経産業新聞09年3月19日)

(2)日清紡
 日清紡は白金触媒に替わる炭素材料を実用化し、2010年春から量産する。コストは1/6となり、FCVの場合50万円程度のコスト削減につながる見込みである。同社は中央研究所(千葉市)で生産を開始し、自動車や家庭用FCメーカーに出荷、生産量は15年に年産数トン、20年には数十トンに引き上げ、500〜1,000億円の売り上げを見込む。(日本経済新聞09年3月31日)
 日清紡ホールデイングスは、カーボンアロイ触媒が白金代替触媒として最高レベルの発電性能を持つことを確認したと発表した。触媒コストは1/10程度に引き下げられ、又他部材の腐食が発生しないため寿命も長くなる。発電性能は、開放電圧:0.98V、0.2A/cm2時の電圧:0.67V、出力密度:525mW/cm2である。今後は性能向上に向けた研究開発を進め、FCV量産開始時期に対応する方針。(日刊自動車新聞09年4月2日)

(3)東京理科大
 東京理科大学の桑野准教授らは、150〜300℃の中温域で水素イオン電導性を持つ電解質を開発した。今回の電解質は、核となる電気絶縁性を持つ酸化物微粒子を酸化リン系非結晶物質で包みこんだ"シェル・コア"構造を持つ。リン酸と絶縁性コア原料をボールミルなどで混合し、200〜500℃で熱処理してつくる。合成中に自然発生する絶縁性酸化物コア粒子と酸化リン系非晶質シェルがシェル・コア構造を構成する。コア微粒子の回りのシェル部分が構造体中で触れ合ってイオン伝導経路になり、それが伝導性を高めることが分かった。又リン酸と任意の微粒子をアルコールと混ぜ、遊星ミルで混合後、焼成する方法も確立した。粒子の粒径、性質、組成を選ぶことによりシェル・コア構造を任意に設計できる利点がある。この電解質を使うことにより中温域でPEFCの性能が高まり、又白金よりも安価な物質を電極触媒に利用することが可能になると期待される。(日刊工業新聞09年4月3日)

5.家庭用PEFCシステムの展開
(1)新日石
 新日本石油は、福岡県、西部ガスエネルギーと共同で、福岡県前原市の"南風台団地"、"美咲が丘団地"にエネファーム150台の集中設置を完了した。これにより福岡県、福岡水素エネルギー戦略会議が推進する"福岡水素タウン"が完成、今後4年間でエネファームを日常生活で使用した場合に得られるデータを収集するほか、住民からの意見などをもとにエネファームのさらなる改良に役立てる。(電気新聞、化学工業日報09年3月18日)

(2)東芝
 東芝FCシステムは2013年にもマンション向けシステムを商品化する。各戸のベランダや玄関脇の配管スペースなどに設置できるよう小型・軽量化、重量が150kg、高さが1.5m程度になることを目指す。又材料の圧縮などで製造コストを2〜3割削減する計画で、各家庭の購入時の実質負担が100万円程度に下がる可能性がある。(日本経済新聞09年3月14日、電気新聞4月1日)

(3)パナソニック
 パナソニックは3月18日、CO排出を実質0にする次世代住宅のショウルーム"エコアイデイアハウス"を4月に都内の"パナソニックセンター東京"に開設すると発表した。FC、太陽光発電、蓄電池の組み合わせで住宅内のエネルギーを全て賄う仕組み。日本古来の住宅様式を採用してエネルギー使用量を減らす。(日本経済、日経産業新聞09年3月19日、電波新聞3月23日、電気新聞3月26日、読売新聞3月30日)  同センターは4月15日に開設され、開所式が開かれた。18日から一般公開される。(読売、毎日、日本経済、産経、電気、日経産業、電波、東京新聞、フジサンケイビジネスアイ4月16日)

(4)タイガースポリマー
 タイガースポリマーは家庭用FCスタック用気密シールパッキンを増産する。同社は金属製セパレーターに樹脂製のシールパッキンを一体成形し、供給している。スタック1台に約100枚のシールパッキンを使用する。生産は神戸市西区の開発研究所が担当している。(日刊工業新聞09年3月24日)

(5)スウエ―デンハウス
 スウエーデンハウス(東京都)は、オール電化仕様の省エネルギー住宅"HUS ECO"に、ガス仕様の新製品"HUS ECOII"を4月1日に追加発売する。新製品にはエネファームと2.92kWの住宅用太陽光発電システムの両方を搭載した。生ゴミのデイスポーザーや屋外水まき用の雨水利用システムも整備される。価格の目安は76万円(税込)/3.3m2から。(毎日、産経新聞09年3月26日)

(6)東ガスと大ガス
 東京ガスは3月26日、マンションなど集合住宅に設置できる小型PEFCを2010年代前半に発売する方針を明らかにした。新日本石油などと共同で貯湯タンクの容量を減らすなどによりエネファームを小型化し、13年度末に4万2,000台の家庭用FC本格普及を狙う。(読売新聞09年3月27日)
 大阪ガスは3月26日、家庭用ガスコジェネシステムや09年6月に発売する家庭用FCコージェネシステムにおいて、太陽光発電を組み合わせた"ダブル発電"事業を強化すると発表した。ダブル発電で家庭用電力がほぼ賄える。4月1日から106社あるサービスショップで太陽光発電システムの取り扱いを開始、既築戸建住宅での販売促進を図る。 (産経、電気新聞09年3月27日、日本経済新聞3月30日、毎日新聞4月17日)

(7)積水ハウス
 積水ハウスは、太陽光発電システムを加えた"FC付き住宅"を首都圏で限定販売する。(毎日新聞09年3月27日)
 積水ハウスは太陽光発電システムとエネファームを搭載し、省エネ給湯器、保温浴槽、LED照明などを備えた住宅を"グリーンファースト"と総称、発売中である。同社が提供する戸建て住宅、賃貸住宅の製品ラインアップで、環境対策レベルが最も高い住宅モデルと位置づけ、広くPRしていく。(日本経済、産経新聞09年4月11日、電気新聞4月17日)

(8)西部ガスエネルギー
 西部ガスエネルギー(福岡県)は4月、出力750WのLPG仕様ENEOSセルテック製PEFCを発売する。"福岡水素タウン"事業に参画したノウハウを活用、初年度販売目標は100台。(日刊工業新聞09年4月1日)

(9)北酸
 北酸(富山市)は5月から、家庭用LPG仕様出力750WPEFCシステム(新日本石油製)の販売を始める。09年度は既に受注している1台を含め、10台の販売を目指す。(北日本新聞09年4月2日)

(10)北海道ガス
 北海道ガスは4月8日、家庭用FC10台を09年度中に市場投入し、10年度の本格販売に備える計画を打ち出した。又エコウイルと太陽光発電を組み合わせた"ダブル発電"を積極的に提案する。(電気、北海道新聞09年4月9日)

(11)鳥取ガス
 鳥取ガスは4月10日、エネファームを5月1日から販売すると発表した。都市ガスとLPガス用があり、価格は325万5,000円、09年度15台の販売を目標とする。(日本海新聞09年4月11日)

(12)広島ガス
 家庭用PEFCの販売について6月をめどに始め、新築住宅で50台の販売を目指す。(中国新聞09年4月11日、電気新聞4月13日)

6.FCV最前線とFC移動体開発
(1)JHFC
 JHFCが08年末時点でのFCVおよび水素インフラの実証試験結果を公表した。64台のFCV、FCバス、水素エンジン車(ICV)が公道を走行、累計登録台数は174台となった。02年度以降の累計走行距離、水素充填量は、乗用車が95万6,321km、1万6,996kg、バスが27万7,848km、2万5,662kgに達した。新規FCVの燃費性能向上も確認した。JHFCには自動車8社、エネルギー・インフラ関連17社が参加、水素ステーションは首都圏9か所、関西圏2か所、中部圏1か所の計12か所が運営され、この内08年度には4か所のステーションで水素充填圧力70MPaの設備を増設し、08年末までに五十数回の充填を実施した。新規車両のシャーシダイナモ燃費計測結果ではトッププランナー値で04年対比28%、07年対比10%の燃費向上を確認、WtWでのエネルギー投入量、CO排出量も大幅に減少した。運営形態ではバスの業務使用頻度が高く、乗用車は業務用車両になっていないことから使用比率が減少傾向にあることが示された。(電気新聞09年3月11日)

(2)スイス
 スイスで道路清掃車を活用したFCVのデモンスレーションが今春から開始される。現地の連邦材料研究所(EMPA)・水素エネルギー研究室が展開するもので、デイーゼル車をFCVに改造した1台を製作、都市部を中心に3か所で数か月毎に走行させる。(日刊自動車新聞09年3月19日)

(3)神奈川工科大
 神奈川工科大学の高橋教授は、43Wの太陽電池、100WのFC、水素吸蔵合金、鉛蓄電池を搭載した電動車椅子を試作した。(日刊工業新聞09年4月2日)

(4)東ガス、JFEコンテイナー、関東農機
 FCを採用した構内運搬車を共同開発した。市場や工場で荷物を運搬するターレット車で、8kWPEFCと65AHの鉛蓄電池を搭載した試験車を試作、09年度内に冷却方式の異なる2号機を製作し、東京ガスの施設内で走行試験を行う。FCはカナダのハイドロジェニックス製の水冷式で、水素タンクは組み込み型と着脱型の2種類を搭載している。2011年度には卸市場を対象とした複数台によるモニター試験を計画、12年での製品化を目指す。(日刊工業新聞09年4月8日、鉄鋼新聞4月14日、化学工業日報4月15日)

(5)ホンダ
 09年度ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーが4月9日ニューヨーク国際自動車ショー会場で発表され、最も環境性能が優れた車にホンダのFCV"FCXクラリテイー"が、又最も走行性能の優れた車に日産自動車のスポーツカー"NISSAN GT-R"が選ばれた。(日本経済、中日、西日本、中国、北海道新聞09年4月10日)

(6)日本郵船
 日本郵船は4月16日、2030年での実用化を目指すコンテナ船"NYKスーパーエコシップ2030"を発表した。主な動力源はLNGを燃料とするFCで、これによってCOを32%減らす。折り曲げ可能な太陽電池パネルを甲板に敷き詰め、収納できる帆をつけて太陽光と風力も活用する。又船体重量を軽く、塗装の工夫で摩擦抵抗を小さくして必要な動力を減らしている。トータルでCO排出量を69%削減するとしている。(毎日、日本海事新聞09年4月17日)

(7)岩谷産業
 岩谷産業は4月16日、出力10kW水素燃料FCを搭載した移動式電源車を開発したと発表した。水素ガス35MPa100m3以上の充填容器を搭載した専用トレーラーをけん引、FCは定格運転で16時間以上の運転が可能であり、イベントや災害時の非常用電源として11年度の商品化を目指す。AC100、200V、DC360Vで出力する。(電気新聞、化学工業日報09年4月17日)

7.水素ステーション事業
 昭和シェル石油は4月2日、岩谷産業と共同で03年5月から運営している有明水素ステーションで、3月23日にFCVへの水素充填台数が累計で3,000台に到達したと発表した。水素充てん量は5,987kg。(電気新聞09年4月3日)

8.水素生成・精製技術の開発
(1)東ガス
 東京ガスは3月12日、都市ガス改質プロセスからCCSにより約50%のCOを回収することに成功したと発表した。千住水素ステーションで実証試験を行っている。東京ガスと三菱重工が共同開発した水素分離型リフォーマーを使用、水素を改質器内の水素透過膜を通じて取り出すと、残留ガスには70〜90%のCOが含まれる。これを圧縮機で70気圧まで圧縮し、−20℃に冷却、COのみを液化して回収する方式である。千住ステーションの試験では30.6m3/hの水素を製造する設備に適用し、従来は25.1kg/h排出していたCOを12.6kg/hにまでほぼ半減できた。条件次第では100%のCO回収も可能としている。(日本経済、電気、日経産業、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報09年3月13日、電波新聞3月16日)

(2)岡山県総合畜産センター
 岡山県総合畜産センターは、豚の糞尿からメタンガスととともに水素を生成する実験を始めた。センターには県が発酵槽やコージェネ装置などのメタン生成装置を整備、約300頭の豚からでる糞尿に生ゴミを混ぜ、発酵槽で発生させたガスを燃料にして同装置を稼働、電力は施設の運転に、熱は発酵槽の保温に使っているが、センターが着目したのが、高めの発酵温度で生成される水素である。バイオマス発酵過程で先に水素を回収すれば、メタン発酵が進み易くなる可能性があるとされ、今月から温度を変えて2種類のガスを生成する"2段階発酵"の実証実験を始めた。メタン発酵槽から菌を含む糞尿を採取して生ゴミを混合、水素発酵菌が活発化する60℃に温めた後、メタン発酵菌に適した35℃に下げて2種類のガスの発生量を調べると共に、水素発酵が進み易い正確な温度やpHなどを探る。2010年までの3年間でノウハウを確立する。(山陽新聞09年3月15日)

(3)サッポロビール
 サッポロビールは3月24日、サトウキビの搾りかすや葉あるいは製糖工程で出る茎や繊維質などの農業廃棄物から、水素を生産する実証実験を9月から同国内で、ブラジルの国営石油会社"ペトロブラス"などと共同で開始すると発表した。ビールで培った発酵技術とバイオエネルギー大国ブラジルの資源力を生かし、10年以内に実用水準とされる40円/m3まで製造コストを下げ、大規模な実用生産を目指すとしている。事業費は約250万ドル。同社はパン屑などからの水素ガス生産装置を既に開発しており、7月には装置をブラジルに輸出、設備やノウハウをペトロブラスに有償で提供する。(日本経済、北海道新聞、フジサンケイビジネスアイ09年3月25日、食品産業新聞3月30日、読売新聞4月6日、フジサンケイビジネスアイ4月15日)

(4)トナミ運輸
 トナミ運輸(高岡市)は3月31日、環境省の地球温暖化対策技術開発事業に採択された。アルミ廃棄物を利用したFC用水素エネルギーシステム開発事業で、他の企業・研究機関とともに開発に取り組む。一般廃棄物からアルミを自動分別する技術やカートリッジ式水素発生装置の開発などを進め、北陸に適した水素利用について研究する。(北日本、富山新聞09年4月1日)

(5)東京都市大学
 東京都市大学(旧武蔵工大)は、室蘭工業大学と連携して、製鉄所などから出る純度55%程度の副生水素を使って、水素エンジンバスを走らせる実験を行う。日野自動車と共同開発し、この程ナンバープレートを取得した水素エンジンバスは、車体上に圧縮水素を詰めたボンベを6本搭載、20分ほどの充填で約200km走行する。異常燃焼を防ぐ点火系部品を独自開発した他は、既存のエンジンに少し改良を加えた程度で、完成度が高いことが特徴である。(日刊自動車新聞09年4月7日)

(6)三菱化学、東大、北大
 三菱化学、東京大学、北海道大学のチームは、光触媒と太陽電池を組み合わせ、水を効率よく電気分解して水素を生成する技術を開発した。新技術は光触媒で板状の電極を作り、その後方に太陽電池パネルを置いて、起こした電気を光触媒電極に流す。太陽光が光触媒に当たると水の分解が始まり、そこで使われなかった光が太陽電池に当たって発電、この電気が光触媒の電極に送られて水の分解を促進する仕組みである。実験では太陽光エネルギーの5%程度を水の分解に利用できた。効率を10%まで高めれば実用化できると研究チームは見ている。(日本経済位新聞09年4月7日)

(7)ウエイスト・トウー・トリシテイ
 イギリスのVB"ウエイスト・トウー・トリシテイ"は、家庭や商業廃棄物から分別したプラステイック、紙、段ボール、生ゴミなどを、プラズマ式ガス化溶鉱炉の技術などを組み合わせて水素を豊富に含むガスに転換し、次世代AFCを使って発電する商業プラントの建造を計画中である。(日経産業新聞09年4月16日)

9.企業による事業展開
 富士電機グループは、FCの本格的な事業化に見通しが得られたとして、4月1日付で富士電機システムズ(FES)千葉工場に"FC部"を新設、これまでFCの開発を担っていたアドバンストテクノロジーの事業所を衣替えする形で発足させた。(電気新聞09年4月3日)

 ――This edition is made up as of April 17, 2009――

・A POSTER COLUMN

追加経済対策で資源・燃料関連補正予算額
 政府が策定した15兆円規模の追加経済対策で、資源・燃料関連の補正予算の規模は以下の通りである。内訳は、資源確保のための新たな海洋資源探査船の建造:300億円、CCS技術開発:75億円、EV用急速充電器の設置を想定した次世代給油所(SS)の開発:25億円となっている。
 CCS技術開発は、国内で貯留の実証を行う地点の選定を前倒しで行い、費用は地形・地質の探査費用や基本設計に充てる。次世代SSの開発では、給油所を太陽光、FCを活用した省エネ型にするとともに、EV用急速充電器の設置やバイオ燃料の供給を行い、災害時の拠点としても利用する"グリーンステーション"の実現に向けた各種の実証を予定している。
(電気新聞09年4月14日)

官民共同開発でEVの走行距離を15年度までに1.6倍へ
 政府は企業や大学と共同で環境に配慮した次世代自動車向けの蓄電池を開発、政府とNEDOは次世代自動車用蓄電池に関する技術開発工程表(ロードマップ)を5月に公表する。既に企業や大学の募集を始めており、近く選定し、官民共同でリチウムイオン型蓄電池の大容量化や軽量化、安全性テストの手法などを重点的に研究・開発する。15年度までに投じる研究開発費として210億円を予定。
 EV向け蓄電池では15年度までにエネルギー密度と走行可能距離を1.5倍、コストを1/6に下げる。30年頃までにはEVが1回の充電でガソリン車並みの400〜600km程度走行できるように、硫黄電池や金属空気電池などの実用化を目指す考えである。
(日本経済新聞09年4月16日)

リチウムイオン電池の出力密度が1.7倍に向上
 日立製作所は出力密度が現行製品の1.7倍になる4,500W/kgのリチウムイオン電池を開発した。発進時に高出力が求められるハイブリッド車向けで、小型・軽量化が可能になる。10年に量産予定の最新型電池と比べても1.5倍の出力となる。
 正極に安価で資源制約の少ないマンガン系素材を使用、材料の配合などに工夫を凝らして出力向上の目途をつけると共に、寿命も現在の1.2倍に伸ばした結果、車自体とほぼ同じ10年程度は使用可能という。
 日立はこれまでに車載用大型LiBで60万個の生産実績を持つが、4月1日にはグループの同電池事業を統括する"電池事業統括推進本部"を新設、製品競争力や用途開発を加速、主力に据える自動車向けは15年度に1千億円/年の売上確保を目指す。
(日本経済新聞09年4月26日)

太陽光発電で官民協議体の立ち上げ
 経済産業省・資源エネルギー庁は、太陽光発電の導入拡大に向け、電力会社やメーカー、自治体で構成する官民のコンソーシアムを4月にも立ち上げる方針を固めた。オール電化住宅やEVと太陽光発電との組み合わせ、系統安定化技術などを一体的に推進し、防災、医療、教育など新たな需要も掘り起こしていく。太陽光発電による余剰電力の新たな買い取り制度や住宅向け設置補助金などの支援策と併せ、太陽光発電を未来型エネルギー社会システムの中核として育成したい考えである。
 コンソーシアムはエネ庁が旗振り役となり、協議会形式で設立する方向で、パネルメーカー、電力会社、住宅メーカー、IT事業者、自治体など幅広い関係者が参加する。太陽光発電を様々な用途・形態で導入するモデルケースを提唱、社会インフラやライフスタイルに組み込み、国民全体で普及・拡大に取り組める体制を整える。又省エネ効果の高い家電などと直流でつなぎ、FCなどと合わせた次世代住宅のモデルも検討する。
(電気新聞09年4月6日)

砂漠で太陽光発電と超電導送電の実証試験計画
 東京大学は砂漠に太陽光発電を設置し、発電電力を超電導線で送る研究プロジェクトに着手した。使用環境の厳しい砂漠に適した太陽電池の探索や超電導線の開発など基盤技術の確立に3年をかけ、2014年を目途に南米のチリで実証試験を行う計画で、太陽電池や超電導材料メーカーに参加を呼びかける。
 具体的には、チリのアタカマ砂漠に約6,700世帯分に相当する出力2万kWの太陽光発電パネルを設置、超電導材料でできた送電線で約1km離れた人口3,000人の市に電力を供給する。又市に蓄電池を設置し、安定した電力の供給体制を整え、利用する大半の電力を太陽光発電で賄う計画である。電力の1部は砂漠から50km離れた東大の天文台にも送電する。
(日本経済新聞09年4月16日)

ブラジル大手の進出でバイオ燃料の本格普及か
 ブラジル国営石油会社のペトロプラスは今夏にも首都圏でガソリンにバイオエタノールを3%混ぜたバイオ燃料の販売を始める。年内に6か所の独立系スタンドで売り出し、将来は商社などと組み全国展開を目指す。又6月には新日本石油も全国1,000か所のスタンドでバイオ燃料を発売する。
 ペトロプラスが50%出資する日伯エタノールが千葉県袖ヶ浦に2億円程度を投じ、バイオ燃料の生産設備を整えた。1千kL/年程度を製造し、E3として販売する。3年間は環境省の補助を受けられるため、税込の販売価格はレギュラーガソリンと同程度の見込みで、バイオエタノールジャパン関西(堺市)が建設廃木材を原料として生産したバイオエタノールも混ぜる。
(日本経済新聞09年4月17日)