第154号 高効率マイクロSOFCモジュール
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.海外政府関係機関による施策
3.地方自治体の施策
4.SOFCの開発
5.PEFC要素技術開発
6.家庭用PEFCに事業展開
7.FCV最前線
8.FCおよび水素関連計測技術
9.ポータブルおよび携帯機器用マイクロFCの開発
10.バイオFCの開発成果
11.企業による事業展開
12.FCの市場導入動向
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)経産省
 政府は次世代自動車やFCなど環境対策に関連する物品の貿易自由化に向け、関税の大幅引き下げや撤廃の必要性を主張し、WTO多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)に独自案を提出する方針を固めた。1月31日にダボスで開くWTO非公式会合で、二階経産相が近日中に提出する意向を表明する。経産省を中心に検討している品目は、次世代自動車や家庭用FC、太陽電池(太陽光発電システムを含む)、LED照明など十数品目。(日本経済新聞09年1月31日、2月1日)  政府は成功報酬型の研究開発制度を09年度に導入する。医療や環境対策など政策として欠かせない分野で、実用化の緊急性が高い応用技術を対象に具体的な研究開発課題を設定し、目標を達成した研究者に対して総額で2億5,000万円の賞金を用意する。賞金の授与などの実務はNEDOが手掛ける。(日本経済新聞09年2月2日)  経産省は第4期科学技術基本計画策定に向けて産業構造審議会の研究開発小委員会で進めている"中長期的な研究開発政策のあり方"の検討において、これまで同計画の戦略8分野の一つとして推進分野の中にあった"エネルギー"を重点推進分野に格上げし、投資拡大を図る方向を論議する。(化学工業日報09年2月9日)

2.海外政府関係機関による施策
 中国政府が自動車業界や環境対応車への支援策を打ち出した。北京や上海など13都市の公的機関や交通機関、タクシー会社などが、ハイブリッド(HV)、電気自動車(EV)、FCVを導入する場合、環境対応車とガソリン車やデイーゼル車との価格差に相当する金額を補助する。購入補助金は、HVで最高5万元(約67万円)、EVで同6万元、FCVで同25万元、バス42〜60万元。08年の中国自動車販売台数は前年比6.7%増の938万台となった。(産経新聞09年1月30日、化学工業日報2月19日)

3.地方自治体の施策
(1)愛知県
 愛知県は2月7日、中部国際空港対岸部の中部臨空都市(常滑市)に整備を進めてきた"あいち臨空新エネルギー実証研究エリア"の運用を開始する。エリアは企業の実証研究施設と新エネ体験館で構成される。開所後に行われる企業の実証研究は以下の通りである。大同特殊鋼:集光式太陽光発電プラント、東邦ガス:家庭用FCの耐塩害性耐久性評価、大同メタル工業:デモ用小型FC駆動ビークルを利用したPEFCの耐久性及びハイブリッドシステムの開発等、中部電力:バイオマス利用スターリングエンジン発電(準備中、09年度から開始)(中日新聞09年1月24日、建設通信新聞1月26日、中日新聞2月8日、電気新聞2月10日)

(2)福岡県
 福岡水素エネルギー戦略会議は、中小企業やベンチャー企業などが家庭用FCの補機分野に新規参入するのを後押しするため、1月28日に"補機研究会"を発足する。本格的な家庭用FC市場を拡大するためには、空気ブロアやポンプなど補機類のコストダウンが欠かせない。補機研究会では新規参入を目指す企業を育成するため、セミナーによる情報提供や産学官コーデイネーターによる技術指導などを実施する。(日刊工業新聞09年1月27日)
 福岡県は09年度、水素ステーションをマンションやコンビニ、レスストランなど数十か所に供給する"北九州水素タウン"事業を北九州市八幡地区東田地区で実施する。拠点として"北九州総合エネルギーステーション"を設け、水素で走る車やバイクも配備して一帯を"水素エネルギー社会"のモデル地区にしたい考えである。同水素タウンは新日鉄八幡製鉄所のコークス炉から発生する年間約5億m3の副生水素の一部を活用し、製鉄所からパイプラインで東田地区まで敷設、更に供給網を整えて事業所のFCに水素を供給する計画である。事業費は約2億円、県が5,000万円を新年度予算に盛り込む他、国からの補助金1億円と民間企業からの出資を見込んでいる。(西日本新聞09年2月7日、建設通信新聞2月10日、日経産業新聞2月12日)
 福岡県は2月12日に開かれた県議会の新社会推進商工委員会で、中小やベンチャー企業が開発した水素関連製品の研究試験を行う機関"水素エネルギー製品研究試験センター"を、県が前原市で整備する"前原IC南地区リサーチパーク"内に設置することを正式発表した。2010年3月に完成予定。中小やベンチャーから持ち込まれるFCV用の弁やバルブ、センサーなど試作品の耐久試験や圧力試験などを行う。総事業費は約15億円。(西日本新聞09年2月13日)

4.SOFCの開発成果
 産業技術総合研究所先進製造プロセス製造部門は2月12日、日本特殊陶業との共同研究成果として、450〜550℃の低温領域でも動作するマイクロSOFCモジュールを開発したと発表した。急速起動・停止運転が必要な家庭用分散電源や自動車補助電源としての利用に道が開ける。縦横1cmのSOFCマイクロモジュールを試作し、550℃の水素によって発電実験を行ったところ、2W/cm3の発電密度が得られた。自然拡散による多孔質体中への空気供給が可能で、空気を送る動力がほぼ不要となり、システムの飛躍的な効率向上と小型化を実現できる。小型移動体電子機器用電源としても応用が見込める。今後は性能実証試験などを行い、高出力・高効率SOFCシステムの実用化を目指す。(電気、日経産業、日刊工業新聞09年2月13日、フジサンケイビジネスアイ2月20日)

5.PEFC要素技術開発
(1)産総研
 産業技術総合研究所は、白金の構造を工夫して性能が劣化しにくい触媒材料を開発し、電池の耐久時間を従来の3倍に高めた。改良を進めFCV向けの触媒材料として企業と実用化を目指す。直径100〜150nmの球形のカーボンブラックに、直径7〜8nmの微細な穴を多数開けて、表面に直径2nm程度の白金微粒子を付けた。産総研ではカーボンブラックに均一な穴を多数開けることによりカーボンブラックの表面積を広げたり、白金が中に入り込みやすいようにし、白金の性能を高めた。電位の上下を測定して触媒性能を確認する試験を実施したところ、3倍の耐久性があることが分かった。白金使用量を減らすことができる。(日経産業新聞09年1月29日)

(2)広島県立西部工業技術センターと戸田工業  広島県立西部工業技術センター(呉市)と磁性粉末製造の戸田工業(大竹市)は共同で、ニッケルを使った触媒を開発している。ニッケルをnmサイズにまで砕いた後、他の金属とともに直径3mmの球状に固めて触媒として活用する。実証実験では2万時間の使用で性能に変化がない耐久性を確認した。今後はガスの流量を変える実験や、水素を発生するまでの時間短縮を図るなどの改良を重ねる。2年後の量産化を目指す。(中国新聞09年1月30日)

(3)東京農工大
 東京農工大学の永井教授らの研究チームは、白金を使わないカソード電極用触媒を開発した。比較的安価なコバルトとタングステンを主原料に、窒素を添加することにより触媒の性能を高めることに成功、開発した触媒の特性を調べたところ、白金触媒に比べて15%の活性を確認した。研究チームは今後、新触媒を使ったFCを試作し、電池の性能や耐久性を確かめ、改良していく。(日経産業新聞09年2月4日)

(4)東京理科大
 東京理科大学の桑野准教授や斎藤助教らの研究室は、マンガンやチタンの酸化物をイオン交換などでナノシートに剥離し、化学的に再凝集すると酸化還元の特性が高まることを見出した。FCのポリマー電解質と触れても特性が安定しているため、白金の代替触媒として期待できる。このナノシートは層状の化合物を化学的な処理で結晶構造の最小基本単位の層1枚にした物質で、厚さは約1nmで、幅は数μm単位である。同研究室は、酸化物ナノシートの特性に着目し、チタン酸ナノシートが剥離した溶液を作り出し、オキソニウムイオン(H3O+)を混ぜて再凝集した物質の酸化還元触媒としての特性を調べた。そして2電子還元反応の有無を調べたところ、白金と同等な性能であることが分かった。再凝縮した物質をアルカリ膜FCのセル構造に組み合わせたところ、白金よりもやや劣るが、遜色はない出力特性が得られた。再凝縮した物質は、層状に均一に並んだ状態と異なり、シートの間にまちまちの大きさの空間ができ、酸化還元特性の向上につながったと見られる。(日刊工業新聞09年2月18日)

6.家庭用PEFCに事業展開
(1)都市ガス4社、新日石、アストモスEなど6社
 都市ガス大手4社(東京、大阪、東邦、西部)と新日本石油、アストモスエネルギーの6社は1月28日、家庭用FC"エネファーム"の商用機を5月1日から300万円前半で順次発売すると発表した。同日各社の社長が都内のホテルでセレモニーを行い、家庭用FCの普及促進に一丸となって注力する共同宣言「エネファームを環境立国ニッポンへ」に署名した。セレモニーに出席した石田資源エネルギー庁長官は「購入額の1/2、140万円を上限に」と補助率の見通しに言及、普及を後押ししていく考えを示した。6社は初年度販売目標を示し、都市ガス大手4社が合計2,800台、新日石が2,000台、アストモスは5年間で5千台を掲げた。政府の長期エネルギー需給見通しは、30年にFCを含む家庭用コージェネレーションについて累計250万台の普及を掲げている。5月以降に順次発売するFCメーカーは、パナソニック、荏原バラード、東芝FCシステム、ENEOSセルテックの4社で価格は320万~346万5千円である。(朝日、毎日、日本経済、産経、電気、日経産業、日刊工業、東京、中日、中国、西日本新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報09年1月29日、電波新聞1月30日、東京、中日新聞2月1日、住宅新報2月3日)

(2)ホンダ
 ホンダはFCと太陽電池による家庭用発電システムの開発に着手した。既存事業である家庭用コージェネシステムの技術を基盤に、都市ガスなどを組み合わせて水素を生成・貯蔵・発電する技術を確立する。EVやFCVなどのエネルギー源である電気や水素を住宅で生成する分散型システムとして実用化を急ぐ。同社は家庭用システムで要素技術を蓄積、事業者向けに水素や充電ステーション用プラントの開発まで踏み込む方針で、次世代エコカーのエネルギー供給の在り方検討する。事業化は10年代後半の見込み。(日刊工業新聞09年2月6日)

(3)日ガス
 日本ガス(鹿児島市)は09年秋から家庭用FC"エネファーム"の販売を始める。グループ会社を通じて県内全域へ広げたい意向。販売価格は300万円台の見込みである。(南日本新聞09年2月7日)

(4)新日石
 新日本石油は北海道内でLPガス式PEFCを発売する。同社は06年度から札幌など道内の一般家庭に計18台のFCを設置、寒冷地での作動状況などのデータを収集しており、従来の給湯器などと比べてCO排出量を30〜40%減らせるという。販売地区は札幌以南の道央が中心になる。(北海道新聞09年2月14日)

7.FCV最前線
 ホンダは2015年度にも市場投入を狙うFCVの新モデルを開発する。現行のFCXクラリテイーをベースに機能の絞り込みを行い、将来年産1〜2万台の生産を見据えたコストダウンに取り組む。現行車は車体を専用設計して年産200台程度、販売は法人などの一部顧客向けリースに限られており、量産効果が薄いことから、既存の乗用車へFCシステムを搭載することも検討してコストを下げる。先ずコスト半減を狙う。搭載する車体としては"アコード"などが候補に挙がっている。(日刊工業新聞09年2月11日)

8.FCおよび水素関連計測技術
 四国総合研究所(高松市)は、水素ガスの空間濃度分布を遠隔測定しそれを可視化する技術を開発した。開発した測定装置は、レーザー照射により発生する水素ガスと大気中の窒素ガスのラマン散乱光を同時測定、装置から水素までの距離、濃度を演算・表示する。すなわち、水素の散乱光検知時間で水素までの距離を特定するとともに、水素、窒素それぞれの散乱光の強度比から水素の濃度を算出する。結果は測定装置からの距離と濃度分布をグラフ状に表示して可視化する。将来は測定装置からの距離と濃度分布を色彩の違いで表示するサーモグラフィーのように、空間中の水素濃度分布を分かり易く表示することを目指す。(電気新聞09年1月30日)

9.ポータブルおよび携帯機器用マイクロFCの開発
(1)フジクラ
 フジクラは発電密度が105mW/cm2で、従来比5倍に高めたDMFCを開発した。又出力を従来比8倍の最大20Wに向上した。スタックの温度を制御する技術や電解質膜を開発した他、メタノール濃度と発電密度の相殺関係を緩和するように構造を工夫した。従来のDMFCでは、ポンプでメタノールをスタックに供給する仕組みであったが、今回は電子機器内部の放熱などに使うヒートポンプの技術を応用しておりポンプを使わない。実用化段階では温度制御の難しさから、60〜70mW/cm2の発電密度まで減少する可能性がある。最終製品メーカーとの共同開発を模索、09年度末の実用化を目指す。(日刊工業新聞09年2月5日)
 フジクラはノートパソコンの外付け充電器向けDMFCの実用化を目指す。セルの構造を見直すことにより、パッシブ型で20〜50%の高濃度メタノール燃料を使用してもクロスオーバーの発生がない構造を開発、これにより出力密度は、08年度モデルの30mW/cm2に対して105mW/cm2と3倍以上に向上した。又メタノールの漏洩防止、発生する水の1部を循環利用する機構も備えている。製品のサイズは、縦100、横170、高さ120mm、重量1kgと小型ながら平均出力10W、最大20Wを実現している。09年度中にも開発の目途をつけ11年度の製品化を目指す。将来は携帯電話用携帯電話用の外部充電器など、より小型な製品の開発を目指している。(化学工業日報09年2月20日)

(2)カーツ
 園芸機械製造のカーツ(岡山市)は、自社製の送風機や刈り払い機など園芸機械に搭載するPEFCを試作した。FCシステムは、縦横各30cm、奥行き15cmの発電部、水素を結合させた粉末マグネシウムを入れた容器、およびファンから構成されている。FCは水素化マグネシウムを水と反応させることにより発生する水素で動作する。実用化は2013年を目途とし、将来的には業務用掃除機などへの適用も考える。(山陽新聞09年2月10日)

10.バイオFCの開発成果
 東京工業大学資源化学研究所山口教授の研究チームは、糖を使って発電するバイオFCの性能を大幅に高める基盤技術を開発した。電極表面の構造を工夫し、糖を分解して電子を取り出す酵素の働きを高めた結果、電流値は従来の6倍になった。基盤技術はまず、炭素電極の上に直径約30nmの炭素微粒子を載せ、微粒子に水と親和性のあるアクリルアミドと、電子伝達機能を持つビニルフェロセンが繋がった鎖状の高分子をくっつける。そこにグルコースを分解して電子を取り出す酵素のグルコースオキシダーゼを付ける。グルコースオキシダーゼは血糖値の診断などに使われている酵素で、直径5〜6nm、グローブ状の形をしている。この技術ではその形を維持したまま炭素微粒子の表面にくっつけている。その結果、電極電流密度は12mA/cm2であった。鎖状の高分子を付けない従来の技術では、電流密度は2mA/cm2にとどまっていた。酵素がグローブ状の形ではなく炭素微粒子にべったりとくっつくために、活性が失われているためだという。研究チームのコンピューターシミュレーションでは、使用する酵素などを改良すれば「水素で発電するSOFCと同等な300mA/cm2同程度の性能を実現することも可能」との結論がでている。なおソニーなどもバイオFCの試作品を発表している。(日経産業新聞09年2月18日)

11.企業による事業展開
(1)日清紡
 日清紡はPEFC用セパレーターの本格事業化に向け、効率的な生産体制の構築に取り組む。09年春にも千葉事業所に新ラインを導入し、その後約半年をかけて美合工機事業所(岡崎市)から既存ラインを移設する。生産能力は年産400万枚と変わらないものの、プロセスの自動化を進め、低コストで高品質な製品の生産を実現する。同社のセパレーターは、カーボン・樹脂モールド製で、波板形状により高強度で薄く柔軟性に優れているのが特徴。同社はFCV用への採用をにらみ、一層の薄型化を進めている。09年度の5,000台から10年度に15,000台、11年度は3万台相当のセパレーター供給を見込む。需要が拡大すれば、価格は現在の1台250万円から数十万円まで下がるとみられている。(化学工業日報09年1月27日)

(2)オルガノ
 オルガノはFC内の循環水を浄化する水処理装置に、電気でイオン交換樹脂を再生する"電気再生式脱イオン(FDI)方式"を採用し、優れたメンテナンス性と軽量小型化を実現した。FDIは直径70mm、長さ80mmの円筒形で、給水流量は10〜60mL/min、消費電力は約1W、長時間にわたりメンテナンスフリーで純水を供給することが可能で、PEFC向けでは1万時間以上の稼働を実現している。コストはPEFC向けで2万円を達成、2015年度には年間10万台の販売を目指す。(化学工業日報09年2月12日、日経産業、日刊工業新聞2月20日)

(3)大日本印刷
 大日本印刷は、水素選択透過膜の実用化を目指す。メッシュ状で厚さ50μmのステンレス支持体に、電解メッキで厚さ5μmのパラジウム薄膜を形成したもので、独自プロセスによりピンホール欠陥をなくし、水素透過性能が高くかつ低コスト、更に高強度でシール性に優れる点に特徴がある。更なる性能向上を図り、FC関連部材としてランアップを目指す。同社の試験では、パラジウム圧延箔の水素透過性に近づいている他、水素とヘリウムの選択透過試験において、ヘリウムリーク量が0.01cc/min以下と高水準を達成している。(化学工業日報09年2月12日)

(4)ファイバー社
 イタリアのファイバー・インダストリー社は日本で、FCV向けクロムモリブデン鋼製容器に高強度炭素繊維を巻く付けたFRP容器の受注活動を開始する。高圧ガス保安協会から、同容器の日本国内で高圧ガス容器として使用することができる個別認定を取得したことで、日本の自動車メーカーに売り込みを図る。同社のクロモリ鋼FRP容器は極薄肉のシームレス容器の上に高強度炭素繊維を巻く付け、更にガラス繊維を表面巻きにした構造である。(鉄鋼新聞09年2月19日)

12.FCの市場導入動向
 JEMAが公表した07年度の"FC導入量統計調査"によると、NEFによる実証事業など普及支援策の効果もあり、PEFCの導入台数は年間1,008台(NEF大規模実証分は930台)と伸びた。SOFCの納入実績は31台(29台がNEF実証分)、MCFCは0で、PAFCは官庁ビルに入った1台であった。(電気新聞09年2月2日)

 ――This edition is made up as of February 20, 2009――

・A POSTER COLUMN

環境省が太陽光発電は20年に26倍と試算
 環境省は国内で見込める自然エネルギー導入量を試算した。普及策を講じることにより、太陽光発電の発電能力は2020年までに05年の26倍に相当する3,700万kWへ引き上げが可能と指摘、風力発電なども大幅増が見込め、関連装置の製造などで60万人の雇用を生み出す効果があると試算した。同省は2月10日午後に開く"中央環境審議会の地球環境部会"で提示する。
 太陽光発電は設置費用の補助に加え、発電した電力を電力会社が固定価格で一定期間買い取る制度の採用を想定、約30年かかる太陽光パネル設置費用の回収年数を、10年に短縮することにより、家庭などへの普及が進むとみている。発電能力は15年には世界首位のドイツを抜き、30年には現状の50倍以上に達すると試算している。
 同様の普及策などで風力発電も陸上・洋上建設を合わせて20年までに05年実績の10倍、小水力は15倍、地熱は2倍の発電能力に拡大することが可能と見積もった。こうした自然エネルギーの導入により、CO排出を4,700万トン削減できるとしている。これは1990年のCO排出量の4%に相当する。
 実現には、設備投資などで20年までに13兆円の費用がかかるが、石油や石炭などの燃料費抑制などを通じ約2倍の経済効果が得られると試算した。
(日本経済新聞09年2月10日)

新日石、トヨタ、MHIなど6社が非食用原料でバイオ燃料を共同開発
 新日本石油、三菱重工業、トヨタ自動車など6社は2月9日、食料にならない植物を原料とするバイオ燃料の共同開発を進めると発表した。植物の栽培や糖化、発酵など各社の技術を持ち寄って一貫体制を構築、2015年までに生産コストを40円/L程度まで下げ、石油に劣らないコスト競争力を持つ代替燃料の実用化を目指す。
 鹿島やサッポロエンジニアリング、東レを加えた計6社で"バイオエタノール革新技術研究組合"を2月下旬に設立、本部を東京大学内に置き、理事長に新日石の松村副社長が就任する。組合の研究開発費は5年間で40〜50億円の見込みである。
 新日石などは食料にならない植物の茎などに含まれるセルロースを利用し、バイオエタノールを生産する。トヨタが持つ植物の品種改良や栽培技術、三菱重工の分解技術などを持ち寄り、東大などとも連携してコストを現状の1/4程度に下げる。入手が容易で加工に最適な植物の選定も課題となる。先ず国内で実験設備を建設し、将来は海外で原料となる植物の栽培やエタノールの商業生産も検討する。
 政府は10年度に50万kL/y(原油換算)導入する目標を掲げている。石油業界などが販売を始めたが、原料は輸入に頼っているのが実情で、安定調達するため、新日石などは国産技術の確立を目指す。
(日本経済新聞09年2月10日)

堺市が環境モデル都市に
 堺市の木原市長は、政府認定の"環境モデル都市"に選ばれたと発表した。臨海部では、関西電力とシャープが世界最大級の太陽光発電施設の建設を企画中。臨海部の太陽光発電施設は、シャープの液晶テレビ用パネルや太陽電池工場などに電力を供給、同工場には世界最大級のFCも導入される。
 市では一般家庭にも10万世帯を目指して太陽光発電の導入を支援し、COなど温室効果ガスを60%カットする目標を掲げた。市内の一般家庭の太陽光発電は、現在2,400世帯。市では5年後に1万世帯、2030年度に10万世帯の導入を目指し、補助や税減免などの支援を行う予定。更に自動車からLRT(次世代型路面電車)や自転車などに転換し、別地点で乗降できるレンタルサイクルの導入も検討する。
(読売新聞09年1月23日)

三洋・新日石が薄膜型次世代太陽電池で合弁会社を設立
 三洋電機と新日石石油は1月23日、"薄膜型"と呼ばれる次世代太陽電池の開発から生産・販売まで手掛ける合弁会社"三洋ENOSソーラー(東京)"を設立した。折半出資で社長は三洋側から出す。三洋の技術力と新日石の販売を組み合わせることで、2015年度に薄膜型で世界シェア25%を目指す。
 薄膜型は原料のシリコン使用量を、現在主流の"多結晶型"の1/100に抑えることができる。合弁会社は10年度までに、年産8万kWの生産設備を三洋の岐阜事業所内に稼働させ、15年度に100万kW、20年度に200万kWに拡大する計画である。
(読売新聞09年1月24日、日経産業新聞、化学工業日報1月26日)

バイオ燃料のトラブルが続出
 使用済み食用油から精製でき、環境対策などで普及が進むバイオデイーゼル燃料を使う車両で、エンストなどのトラブルが相次いでいる。精製時に副産物としてでるグリセリンなど粘度の高い不純物が燃料フィルターやエンジン噴射口にたまって固まることなどが原因で、少量を軽油に混ぜて使えば問題はないが、100%の濃度で使うとこのようなトラブルが起き易い。「深刻な事故につながりかねない」とみた国交省は、フィルターの定期点検などを徹底するよう運送業界に呼びかけている。バイオデイーゼル燃料は地球環境対策の観点から約10前から普及し始めたが、最近自治体で定期バスやゴミ収集車向けに製造したり、ガソリンスタンドが運送業者向けに販売するなどによって普及が進み、07年度の国内精製量は約1万kLとなり、前年度に比べて2倍にまで増加した。
 国交省が06年に同燃料を使う運送業者などに聞き取り調査を行ったところ、127件の回答において約45%でエンジンの停止や出力低下などが起きていた。資源エネルギー庁は、バイオデイーゼル燃料を濃度5%以下で軽油に混ぜて使用すれば問題はないとしているが、実際には100%のまま使うケースが大半である。法律などで100%での使用を禁止していないのに加えて、同燃料には約32円/Lの軽油取引税がかからず、コストを抑えられることが理由となっている。
 国交省は2月10日、フィルターの定期点検などの対処法をまとめたガイドラインを全国のトラック協会などに配布、資源エネルギー庁も1月下旬、濃度5%以下の使用を勧めるパンフレットを全国の市町村に配布した。2月25日からはバイオデイーゼル燃料の製造元に、国への登録と定期的な品質確認を義務付ける制度を開始する。 (日本経済新聞09年2月21日)

微生物利用の白金族元素ナノ粒子触媒の生成
 日本原子力研究開発機構と名古屋大学は2月18日、微生物を用いてFCの電極触媒として使われる白金族ナノ粒子を生成することに成功したと発表した。微生物を白金酸溶液とパラジウム酸溶液にそれぞれ添加し、微生物の細胞表面にnmスケールの粒子を作製する技術である。この材料を水素と重水素の同位体交換の触媒として使うと、同一重量の場合、表面積で従来比約6倍の効率で交換できる。
 研究では増殖させた微生物を水洗いして、塩化白金酸と塩化パラジウム酸を溶解した溶液にそれぞれ添加し、電子を生物に与える物質である電子供与体の水素を加えた。微生物を添加した場合だけ、溶液中に黒い沈澱物をつくり、微生物細胞表面に白金あるいはパラジウムを含むナノ粒子を生成した。
 微生物を加えない菌無添加の場合、又殺菌した微生物に還元剤を添加した減菌細胞添加の場合は、直径の大きな白金やパラジウム粒子を作成した。 (日刊工業新聞09年2月19日)