第152号 自動車各社がFCVとEVを市場導入
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.PEFCおよびDMFC要素技術開発と事業展開
4.家庭用PEFCの事業展開
5.業務用FCの導入
6.FCV最前線
7.水素ステーション技術と実証事業
8.水素生成精製技術の開発
9.水素輸送・貯蔵技術の開発
10.携帯機器用マイクロFCの開発と事業
11.水素・FC関連計測技術の開発
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)自民党税制調査会
 自民党税制調査会(津島雄二会長)は12月10日、09年度税制改正で自動車重量税と自動車所得税について、低公害車を対象に3年間の時限的な軽減措置を設ける方針を固めた。党税調は現行制度を参考に、家庭で充電できるプラグインハイブリッド車や電気自動車、FCVなどの新規購入について、重量税と取得税を100%軽減(免除)する。その他の低公害車に関しては、排ガス基準などに応じて25%から50%の軽減措置を設ける方針である。重量税の軽減措置に関しては、今回は新車購入時に限る。(日本経済新聞08年12月11日、日刊自動車新聞12月12日)

(2)経産省09年度予算
 09年度予算の財務省原案が12月20日、経済産業省に内示された。エネルギー対策特別会計(エネ特会)内示額は、08年度予算比2.5%減の7,034億円、エネルギー関連予算向けの一般会計額は5億円増の96億円で、補正予算額は9億円が盛り込まれた。項目別では、低炭素社会の実現に向け、エネルギー革新技術計画の実行に257億円増の886億円(補正予算額98億円)を計上、新規案件はCCSの実証試験研究に33億円(同10億円)、住宅用太陽光発電導入補助金に291億円(同90億円)、革新型蓄電池開発の拠点整備に30億円、民生用FC導入補助金に61億円が認められた。京都メカニズムの本格活用には218億円、クリーンエネルギー自動車導入促進補助は34億円(同10億円)が配分された。(電気新聞08年12月22日)

2.地方自治体による施策
(1)大阪市
 大阪市建設局は、大野下水処理場と住之江下水処理場の消化ガス有効利用事業に関する民間発案事業で、日本燃料電池・丸紅グループを優秀提案者に決めた。優秀提案は、消化ガスを発電設備の燃料として活用し、大野・住之江下水処理場内に電力と熱を供給する事業で、大野処理場に300kWMCFC2台、25kWマイクロガスエンジン発電機20台、住之江処理場には300kWMCFC2台、25kW同発電機15台を設置する。大野下水処理場は平均消化ガス量が13,900m3/日(06年度)で、住之江下水処理場は同10,400m3/日である。(建設通信新聞08年12月3日)

(2)山梨県
 09年度予算の財務省原案について、山梨県が要望、提案した72項目を分析した結果、FCの技術開発などに前年度比34.4%増しの297億円を内示されたことが12月21日に分かった。県は「山梨大学FCナノ材料研究センターで行われている研究開発や人材育成の充実が図られる」と期待感を示した。(山梨日日新聞08年12月22日)

3.PEFCおよびDMFC要素技術開発と事業展開
(1)山陽特殊製鋼と北大
 山陽特殊製鋼(姫路市)は北海道大学首藤准教授と共同で、DMFCなどの発電出力を従来の3倍に高めるセパレーター技術を開発したと発表した。水素ガスなどの気体を電極に送る通路を備えるセパレーターの形を、溝型から自社製ステンレス系素材でできた球状金属粉末の焼結体からなる新しい構造の多孔性流路に替えた。新セパレーターをDMFCに適用した結果、出力密度は134mW/cm2を達成、今後は電解質膜、触媒など構成部材の改善と組み合わせて商品化を目指す。(朝日、日経産業、日刊工業、鉄鋼、化学工業日報08年11月26日、神戸新聞11月29日)

(2)九大、高輝度光科学研究センター、東工大
 九州大学、高輝度光科学研究センター、東京工業大学の研究グループは共同で、原子層オーダーで有機分子と無機高分子が積層構造をとり、結晶性を有する多孔性配位子のナノハイブリッド薄膜の合成に成功した。FC用電極触媒の薄膜材料として有力視され、エレクトロルミネッセンス、トランジスターなどへの応用にも期待される。結晶薄膜化に成功したルベアン酸銅という錯体は、プロトン電導性が高く、触媒として働くことが知られており、FC用素材として開発が進められてきた。しかし、バルク素材は作製されているものの、薄膜ではアモルファス材料であるため、構造の均一性に課題があり、結晶化によるデバイス化に適していなかった。同研究グループは、ルベアン酸と銅イオンを用いて、独自に考案した自己組織化法により結晶性の有機無機ハイブリッド膜を作製、Spring-8の表面X線により調べた結果、層間、層内で錯体が原子層オーダーで結晶構造をもって周期的に配列していることを確認した。この膜を電極となる炭素の上に作れば電極との接触面積が増えて触媒としての性能を大幅に向上できるため、将来は白金触媒の代替となる可能性がでてきた。今後炭素電極と一体化して実用化を狙う。(日刊工業新聞、化学工業日報08年11月27日、日経産業新聞12月3日)

(3)日本金型工業会
 日本金型工業会西部支部(大阪市)は、大阪府立産業技術総合研究所の協力を得て200tonサーボ駆動式プレス機を使い、FC用金属セパレーターを09年1月に試作する。ステンレス製の金属板に空気と水素が通る幅1mm、深さ0.5mmの微細通路をプレス加工で作る。誤差2μm以内の高精度プレス金型と、同20μmの完成品製造を目指す。金属板は10cm角のステンレス鋼SUS304を使い、プレス加工で金属板がどう変形するか、スプリングバック(跳ね返り)をどれくらい見込まなければならないか、などの問題点を調べて今後の実用化に繋げる考えである。大阪府の"地場産業等総合活性化補助事業"の認定を受け、試作を経てFCメーカーに売り込む予定。(日刊工業新聞08年12月18日)

4.家庭用PEFCの事業展開
(1)静岡ガス
 静岡ガスは09年4月から出力1kW家庭用PEFC"エネファーム"の一般販売を始める。標準的な一般家庭で年間約6,000時間の稼働が可能で電気使用量の約6割、給湯の約8割を賄えるという。初期の導入費用は国の補助制度を利用して100〜120万円を見込む。当面は新築戸建住宅向けに販売し、電機メーカーによる機器の量産体制が整い次第、リフォームや集合住宅へ販路を拡大し、家庭用FCの普及を図る。初年度は新築住宅で30~50台の需要を想定、機器の小型化や価格の大幅な引き下げが進むと見られる20年度には、年間5,300台の販売を目標にしている。(静岡新聞08年11月26日)
(2)大ガス
 大阪ガスの尾崎社長は、現在開発を進めている家庭用PEFCシステムについて、09年度早々にも商品化を図りたいとの考えを明らかにした。システムはENEOSセルテックおよび東芝FCシステムと共同で開発している。戸建て住宅などを対象にした実証試験は05年から実施、現在365戸が参加しており、又4万時間の耐久性に目途をつけるなど、開発は順調に進んでいる。(産経新聞08年12月5日、朝日新聞12月6日、毎日新聞12月12日)

(3)西部ガス
 西部ガス(福岡市)は12月18日、出力1kWの家庭用PEFCを09年度春から販売することを明らかにした。12月に入ってリビング企画部内にFCプロジェクトチーム(4人)を発足させており、取り扱う商品や販売戦略、FC向けのガス料金体系などの具体的な検討を進めている。商品はパナソニック製か荏原バラード社製の何れかを予定、料金は通常契約に比べて20%程度割安の家庭用コージェネレーションシステム"エコウイル"と同じにする方針である。機器の販売価格は現状では400万円以上と高価ではあるが、政府が新設予定の補助金を使えば100万円以下に下がる見込みである。西部ガスはFCと太陽電池をセット販売するなどして"省エネ住宅"とし、オール電化攻勢に反攻したいとしている。(西日本新聞08年12月19日)

5.業務用FCの導入
(1)シャープ  シャープの町田会長は11月28日、堺市で2010年3月までに稼働予定の液晶テレビ用パネルなどの工場で、電力源として約1万kWのFCを導入する方針を明らかにした。更にシャープを含む進出企業18社の電力使用状況をモニターする"統合エネルギー管理センター"を設けて、省エネルギーに努める。(読売新聞08年11月29日)

(2)飲料自販機協議会
 飲料自販機協議会は12月1日、自販機の総消費電力量を2050年までに05年比60%削減するための自主行動計画を策定したと発表した。短期的にはヒートポンプの活用や屋内自販機照明の24時間消灯などを推進する。中長期的には発光ダイオード(LED)照明やFCなどの新技術の開発を促進する。(日刊工業新聞08年12月2日、日本食糧新聞、化学工業日報12月3日、食品産業新聞12月11日)

6.FCV最前線
(1)ホンダ
 ホンダは11月25日、新型のFCV"FCXクラリテイ"の国内販売をリース方式で始めたと正式に発表した。リース代は月80万円。当面は官庁や民間企業を対象とし、第1号車を環境省に同日納車した。FCXクラリテイは1回の水素補給で走行できる距離が約620kmで、従来車に比べて30%伸びた。3年間で日米合わせて200台程度の販売を目指す。(読売、朝日、日本経済、日経産業、日刊工業、日刊自動車、西日本新聞08年11月26日、電気新聞11月27日)

(2)北ガス、トヨタ、北海道
 北海道ガスは11月26日、道とトヨタ自動車と共同で12月1日から約4ヵ月間、トヨタの新型FCV"トヨタFCHV-adv"による走行試験を実施することを明らかにした。北ガスと道は1台ずつトヨタから貸与され、業務用車両などで使用、寒冷地の公道での動作や性能などのデータを収集してトヨタに提供する。(北海道新聞08年11月27日、日経産業新聞12月1日、電気新聞12月2日、日刊自動車新聞12月3日)

(3)日産
 日産自動車は11月28日、FCV"エクストレイルFCV"1台を日光市にリースすると発表した。12月1日に納車し、リース料は月額42万円である。(下野新聞08年11月29日、日経産業新聞12月2日、日刊自動車新聞12月8日)

(4)GM
 アメリカGMはドイツでFCV"シボレー・エクイノックス"の走行試験プロジェクトを実施する。ドイツ交通建設都市開発省出資の"クリーンエネルギー・パートナーシップ"により運営する。(日刊自動車新聞08年11月29日)

(5)JHFC
 JHFCは12月2日、トヨタのFCV"FCHV-adv"をリースで1台導入したと発表した。リース料金は80万円/月、期間は2011年まで。試乗会など広報用に活用する。(日刊工業新聞08年12月3日、日刊自動車新聞12月4日)

(6)帝都自動車交通
 帝都自動車交通(江東区)はFCVをハイヤーとして試行導入した。今後環境対策車両導入を計画する上でのモデルケースとする。導入したのはホンダの"FCXクラリテイ"で、当初はホンダの契約ハイヤーとして運行する。(日刊工業新聞08年12月22日)

7.水素ステーション技術と実証事業
 コスモ石油は12月1日、横浜・大黒水素ステーションで70MPaの高圧水素充填実証プロジェクトを開始したと発表した。充填ノウハウの蓄積や安全性、環境特性やエネルギー効率、経済性についてのデータを取得する。実証試験はJHFCからの委託で、岩谷産業の協力を得て進めていた充填設備の能力増強工事が完了、従来の35MPaから70MPaに引き上げたFCVへの水素供給が可能になった。JHFCプロジェクトでは大黒水素ステーションを含めて、関東圏の4ステーションで70MPa化を推進している。(フジサンケイビジネスアイ、日刊工業新聞、化学工業日報08年12月2日、電気新聞12月4日)

8.水素生成精製技術の開発
(1)東工大
 東京工業大学の宮崎名誉教授は、調味料や乳化剤で使うリン酸二水素ナトリウムとリン酸二水素カリウムの水溶液とマグネシウムを混ぜることにより簡単に水素を生成できることを発見した。リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムの水溶液を各々20mL用意し、マグネシウム0.1gを混ぜたところ、2時間でリン酸二水素ナトリウムにより23mL、リン酸二水素カリウムにより27mLの水素が発生した。水素水を生成する実験でも、酸化還元電位が−200以下で水素イオン指数が6.4の中性を示した。FCなど産業用途での利用を探る。(日刊工業新聞08年11月28日)

(2)東京農大
 東京農工大学工学府の亀山教授らは、低濃度のバイオエタノールから水素を高効率で発生させる反応器を開発した。水素と同時に生成されて反応の邪魔をするCO2を吸着・除去する仕組みで、純度30%エタノールでも反応が進むようにした。反応器はニッケル系水蒸気改質触媒と、リチウムシリケートを塗ったCO吸収体で構成される。電気を通して加熱できる多孔質アルマイトの担体にこれらを載せ、原料純度30%のエタノール蒸気から先ず500℃にした触媒で水素を発生させる。平衡反応に達して水素の発生が止まるが、同時に発生するCOを吸収剤で除くと、平衡が崩れて反応を更に進めることができる。PEFCで問題になる微量のCOも吸収剤によって794ppmまで減少した。吸収剤の能力が低下したら反応器を切り替え、650℃に加熱してCOを放出、再生・再利用するシステムにする。稲わらや木材など廃棄物バイオマスから発酵で10%エタノールを作り、30%に軽く蒸留してこの反応器で水素を生成、それをFCに導入すれば、家庭用FCなど分散型エネルギーシステムとして利用できる。(日刊工業新聞08年12月3日)

9.水素輸送・貯蔵技術の開発
 九州工業大学大学院工学研究院の米本教授は、水素ガスバリア性に優れる粘土膜プラスチック複合材料を開発した。産業技術総合研究所が開発した粘土膜"クレースト"を利用したもので、粘土結晶を緻密に積層させることによって水素の透過を抑制できる。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の間に挟み込んだ複合材料を作製して水素ガス透過率を測定したところ、CFRP単体に比べて100倍以上低いことを確認した。今回採用した粘土膜の構成は90%がクレースト、残りがナイロン原料のカプラクタムで、混合液を成形、乾燥させて造られる。粘土の結晶は厚さが1nm、長さが1μmと高いアスペクト比を有しているのが特徴で、同じ方向に配向させ緻密に積層することでガスバリア性が向上する。米本教授は航空宇宙分野を中心に複合材料の研究を行っており、粘土を主材料とした膜がガスバリア性を高めることを見出した。(化学工業日報08年12月2日)

10.携帯機器用マイクロFCの開発と事業
 FC−R&D(神奈川県相模原市)は、キョウーシン(徳島県吉野川市)と共同で、緊急時の照明と携帯電源として、FCと発光ダイオード(LED)をセットした"エルマップ"を完成した。FCを付属の照明に接続して使用する他、パソコンなどの電子機器向け電源としても使用可能である。水素吸蔵合金を使用したタイプで、出力は300Wで、LED照明のみで使う場合の連続使用時間は約60時間、発売は09年3月を予定している。価格は仕様により異なる。(日刊工業新聞08年12月1日)

11.水素・FC関連計測技術の開発
(1)山里産業
 山里産業(大阪市高槻市)は熱電対温度センサーでJIS認証(C1605)を国内で初めて取得した。高槻工場内の自動化ラインで製造したFC向けセンサー"AD-THERMIC"や、射出成形用金型向けのシース型熱電対である。同社の温度センサーは海外からの引き合いも増えており、国際規格に準拠したJIS認証を受けることでトレーサビリテイーを含めた品質保証体制を高めた。認証登録機関は日本品質保証機構。(日刊工業新聞08年11月27日)

(2)山武
 山武は12月17日、気体中の水分量を計測する卓上型鏡面冷却式露点計"ファインデユー(FINEDEW)"と組み合わせた専用ヒーターユニットを開発し、18日に出荷を開始すると発表した。FCの燃料ガスなど、高露点気体の計測品質向上に貢献するファインデユーは、従来のサンプリング方式ではなく、センサープローブ部分をユニオンテイーチューブ継ぎ手を介して計測管系に挿入する構造を採用しているが、今回同社ではそのセンサープローブ部分の専用ヒーター2タイプを開発した。価格はユニオンテイーヒータージャケット付きが30万円からで、プローブヒータージャケット付きが50万円からである。メーカーや大学・研究機関のFC研究部門やFC評価装置メーカーなど向けに販売する。(電気新聞、化学工業日報08年12月18日、日刊工業、日刊建設新聞、フジサンケイビジネスアイ12月19日、電波新聞12月22日、日経産業新聞12月25日)

 ――This edition is made up as of December 25, 2008――

・A POSTER COLUMN

JR東日本が10年後の実用化を目途にバッテリー搭載電車を開発
 JR東日本は、バッテリーを搭載し、架線からの電力供給を必要としない電車を開発する方針を明らかにした。蒸気機関車から電車への"電化"に次ぐ変革で、次世代電車の主力と位置付ける。電力利用の効率化や保守点検の省力化は勿論、沿線の景観を大きく変える可能性を秘める。清野社長は「鉄道の夢として10年がから20年後の実用化を目指す」と意気込んでいる。次世代電車は、リチウムイオン電池や将来開発される軽量・高効率の新型バッテリーを搭載する構想が有力で、現行の車両が1日に走る約700kmを急速充電でノンストップ走行できるようになれば、実用化の水準に達する。次世代電車が実現すれば、高圧電流を架線に流し続けることで生じる放電ロスを回避、架線の保守点検も不要になる。
 JR東日本はFC走行の車両についても試験を実施しているが、水素生産や安全性の課題もあって、バッテリー技術への期待が大きい。
(電気新聞08年11月28日)

微生物FCの性能を50倍に
 自然界には下水や生ゴミなどの有機物を分解してエネルギーに変える過程において、電子を出す特殊な菌が存在する。東京大学の橋本教授、中村助教らの研究グループは、このような特殊な菌を使って下水や生ごみから電気を発生する微生物FCの性能を50倍以上に高める技術を開発した。
 同研究グループは、電子を放出する性質を持つシュワネラと呼ばれる菌が、酸化鉄が多く存在する環境で生息する点に着目し、菌の餌となる有機物が入った培養液に酸化鉄の微粒子を入れて透明なガラス電極に載せた。酸化鉄を入れない場合に比べて発電性能が最大50倍になった。菌と菌の間に取り込まれた酸化鉄が、菌から出てきた電子を電極まで効率よく運ぶ媒介になっていると解釈される。
 今後実用サイズの微生物FCを試作して、酸化鉄添加によって実験レベルと同様の性能向上が得られるかどうかを検証する意向である。
(日経産業新聞08年12月1日)

環境省が大規模EV実証事業を来年から実施
 環境省は12月9日、50台以上の電気自動車(EV)・二輪車および約10台のEV用充電設備を地方自治体、企業に貸与する大規模実証事業を09年1月中旬から開始すると発表した。08年度の補正予算で計上された"次世代自動車等導入促進事業"として行われるもので、予算規模は4億900万円。自治体等に幅広い活用の機会を提供し、EVの初期需要の創出および使用実績の収集に役立てる。
 実証試験を行うのは神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、横浜市、北九州市の6府県市で、公用車として実証利用する計画である。自治体以外では、配送用途で佐川急便と郵便事業会社にEVと電動二輪車が貸与される。実証期間は09年1月中旬から3月末としているが、納車時期によっては6月までの延期もあるとしている。
 実証試験に用いる車両は三菱自動車の"i-MiEV"5台、富士重工業"プラグイン・ステラ"15台の他、ベタープレイス・ジャパンのバッテリー交換型EV1台、東京R&Dの電動二輪車30台、ホンダのFCV"FCXクラリテイー"1台を用意する。この内i-MiEVとFCXクラリテイーはメーカーからのリースで調達し、その他は補正予算を活用して新たに制作する。
 充電設備は急速充電器をハセテックと九州電力が供給し、各自治体で最低1台、全体で10台以上導入される見込み。ベタープレイスは横浜市内にバッテリー交換ステーションを建設する。
 斎藤環境相は実証事業キックオフ会見で「来年はEVが市場に本格投入される。今回の事業がその先兵として日本を引っ張ってくれることを願っている」と述べた。
(日本経済、電気、日経産業新聞、化学工業に報08年12月10日、日刊自動車新聞12月18日、読売新聞12月22日)

三菱自動車が次世代EVをフランス大手PSAに供給
 三菱自動車は独自開発した次世代電気自動車(EV)をフランスのプジョー・シトロエングループ(PSA)に供給する。高性能リチウムイオン電池を搭載し、1回の充電で約160km走行する"i-MiEV"が対象で、2010年にも開始、11年以降は年1万台以上の規模とする見込みである。11年頃の価格は200万円前後の見通し。欧州メーカーでは世界第2位のPSAに車両を供給することによって最大市場を押さえ、日欧連合で世界での普及加速を狙うとしている。PSAに対しては電池や電力の制御技術を供与する計画もあり、全面的な協力関係を築く。
 欧州各国はEVなどの普及促進策を打ち出しており、新市場の離陸をにらんだ大手同士の合従連携が活発化しそうである。フランス政府は購入時に最大5,000EUR(約63万円)の補助や税金の減額措置を導入しており、イギリスやドイツなども優遇策を導入、ヨーロッパは世界で最も早く普及し、規模も最大級になるとみられている。
(日本経済新聞09年1月8日)

トヨタは小型EVをアメリカ市場に先行投入
 トヨタ自動車は、近距離コミューターとして2010年代初頭に量産化する小型EVを、アメリカ市場に先行投入する。排出ガスを出さない無公害車を一定の割合で販売することを義務付けるカリフォルニア州のZEV規制が10年以降強化されるため、家庭で充電できるプラグインハイブリッド車などとともにEVを投入して次期規制に対応する。カリフォルニア州だけでなく、ZEV規制に賛同する他の州でも必要に応じて販売する。
 EVはリチウムイオン電池を搭載した超小型車で、09年1月の北米自動車ショウにコンセプトモデルを出展する。
 なお、同社はFCVの新型を開発して国内でリース販売を始めたが、アメリカでも近くリース販売を開始する予定である。
(日刊自動車新聞08年12月19日、毎日新聞12月20日)

住友化学が電池部材事業部を新設
 住友化学は09年1月1日付で、リチウムイオン電池主要材料であるセパレーターを扱う"電池部材事業部"を新設すると発表した。これまでは本社部門の事業化推進室で開発や販売を担当していたが、本格的な事業拡大に向けて情報電子化学部門の中に事業部として独立させる。
 住友化学は06年にリチウムイオン電池用セパレーターの生産を開始した。09年年央までに100億円を投じて生産設備の増強を進めており、10年度に100億円の売上高を目指している。
 現在事業化推進室で開発中のリチウムイオン電池用正極材やFC用部材についても、早期の実用化を目指す。
(日経産業、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報08年12月19日、日刊自動車新聞12月20日)

太陽電池パネルを搭載する自動車運搬船の完成式典
 太陽光発電からの電力を動力の一部に使う自動車運搬船"アウリガ・リーダー"の完成式典が、12月19日に三菱重工神戸造船所で行われた。共同開発した日本郵船の草刈会長と新日本石油の渡会長、それに実証実験に協力するトヨタ自動車の張会長の3氏が甲板上に並んだ太陽光発電パネルを視察、記者会見をして、CO2の排出削減など環境対策をアピールした。
 アウリガ・リーダーに設置された太陽光発電パネルは328枚、出力は計40kW、賄える電力量は船内使用量の0.8%程度に過ぎないが、将来の導入拡大に向け、塩害、風圧、振動に対する耐久性、船内発電機と組み合わせた安定供給、CO2削減効果について検証する。蓄電池の設置も検討している。
 草刈氏は「費用対効果などの課題を克服して実用化したい」と語り、張会長は「自動車の世界市場は厳しいが、中近東など堅調な地域もある。FCなどトヨタが培ってきた技術面でも船の環境対策に協力できる」と話した。
(神戸新聞08年12月20日、日経産業、日本海事新聞、化学工業日報12月22日)

トヨタが太陽電池車で危機に挑む
 これは日本経済新聞2009年元日第1面のトップ記事である。主題は「戦後初の連結赤字に転落するトヨタ自動車で、次世代車の開発計画がひそかに進んでいる」であり、同社の東富士研究所で太陽エネルギーだけで走る究極のエコカーの開発が行われていることを報じている。先ずは住宅や車に設置した太陽パネルで発電した電気で車を走らせる。そして最終的には車のパネルだけを動力源にどこまでも走る車を目指す。
 トヨタは心臓部のパネルを内製し、自ら"太陽電池メーカー"にもなるほどの熱の入れようである。実用化には少なくとも数年を要するが、渡辺社長が"かってない緊急事態"とする経営環境の激変で開発には一段と力が入る。
(日本経済新聞09年1月1日)

大阪駅北10ヘクタールを"低炭素"モデルに
 近畿経済産業局は大阪駅北地区の2期開発地区(対象面積約17ha)における新エネルギー導入調査を始めた。09年1月に産学官の検討委員会も設置する予定で、同3月に報告書をまとめる。対象地域を低炭素社会の最先端モデルとするため、街開きをする2018年の新エネルギー・省エネルギー技術動向などを調査・検討、最先端技術導入の可能性を探る。太陽光発電やFCなど10年後に実用化が見込める技術を検討し、大阪湾岸で計画が進む太陽光発電との連携についても可能性を探る。
 大阪駅北地区は1日約250万人が乗降する西日本最大のターミナルに隣接しており、"都心に残された最後の一等地"と云われている。なお先行開発区域(約7ha)は2012年度下期に街開きの予定である。
(日刊工業新聞08年12月25日)