第151号 水素貯蔵材料に有望なAlHの新合成法
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.PEFC要素技術開発
4.家庭用FCの事業展開
5.FCV最前線
6.水素生成・精製技術の開発
7.水素輸送・貯蔵技術の開発
8.水素インフラ構築事業
9.FCおよび水素関連計測技術
10.企業活動と事業展開
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)経産省
 経済産業省は、環境や医療分野の新技術の研究開発投資を促進するため、"懸賞金型"補助金制度を09年度から導入する方針を固めた。省エネ機器などであらかじめ明確な技術開発課題と目標を設定し、達成すれば確実に補助金を交付し、実用化に成功すれば補助金を上積みする。例えば"白金の使用を3割削減するFCの開発"や"プールの水を淡水化するシステムの開発"などの具体的課題と補助金総額を設定、課題をクリアした申請者には全員に等しく補助金を分配、技術が実用化されれば、倍程度に補助金交付額が増える仕組みである。09年度予算の補助金枠として3億5,000万を要求し、3つの課題を設定する方針である。(毎日新聞08年10月26日)
 総合資源エネルギー調査会総合部会の政策小委員会は10月27日に初会合を開き、石油代替エネルギー促進法(代エネ法)の見直しの本格的な検討に着手した。(電気新聞08年10月28日)

(2)国交省
 国土交通省は10月29日、政府・与党がまとめる追加経済対策に、中古ビルの省エネ改修促進を盛り込む方針を固めた。オフィスビルや商業ビルのオーナーが改修を希望し、その計画に"高効率ヒートポンプ"や"FCシステム"の導入など、省エネ効果が高いと認めれば、回収額の1/2を補助する。(産経新聞08年10月30日)
 国交省は2008年度第2回"住宅・建築物省CO推進モデル事業"を決定した。住宅・建築物省COの先導的なモデル事業として評価された新築・戸建住宅は、京都地場工務店の省エネ住宅研究会(代表・大阪ガス)による"京都型省CO住宅普及プロジェクト"、住友林業による"国産材利用木造住宅による太陽エネルギーのパッシブ+アクテイブ利用住宅/住人同士の省CO住まい方アイデイア共有"、パナホームによる"家・街まるごとエネルギーECOマネジメントシステム"等で、パナホームのシステムは、太陽光発電とFCの導入に加え、それらの機器に対応した省エネナビシステムを導入するプロジェクトである。(電波新聞08年11月17日)

2.地方自治体による施策
(1)山梨県
 山梨県は11月19日、09年度の国の施策・予算に関する要望事項53項目をまとめた。重点項目が20、一般項目が33で、この内FC関連産業の育成、支援に関しては、山梨大学に設置した"FCナノ材料研究センター"の充実の他、研究に携わる人材や県内の中小企業育成、支援などを文部科学省などに求める。(山梨日日新聞08年11月20日)

(2)静岡県
 静岡県は11月21日、浜松市の浜名湖ガーデンパークにスズキが開発中のDMFC駆動の電動車椅子1台をリース導入すると発表した。園内の移動用に障害者や高齢者に貸出し、新エネルギーの普及啓発を図る。導入するのはスズキが07年と06年の国際福祉機器展に参考出品し、実用化に向けて開発を進めているFCセニアカー"MIO"で、県とスズキの共同実証試験として導入し、スズキは今後の開発に生かすためのデーターを収集する。満タンのメタノール4Lで充電式電動車椅子に比べてほぼ倍の約60kmを走行できる。最高時速は6km/hである。(静岡新聞08年11月22日、日刊工業新聞11月24日、日刊自動車新聞11月25日)

3.PEFC要素技術開発
(1)北陸先端科技大
 北陸先端科学技術大学院大学の寺倉特別招請教授らの研究チームは、炭素材料を触媒として利用するPEFCにおいて、触媒分子の動きをシミュレーションで再現し、触媒として働く理由を解明した。群馬大学が開発した"カーボンアロイ"と呼ばれる炭素の立体構造物が触媒として働くメカニズムを調べ、ナノメートルレベルで物質の性能や構造を計算する"第1原理計算"と呼ぶ手法を使い、炭素や窒素などの原子が1個ずつ動いて触媒として働く様子をシミュレーションで再現した。その結果、立体構造のうちジグザグ構造の端にある部分に窒素があると、その付近の炭素を活性化し触媒として働くことが分かった。カーボンアロイは高価な白金を使わないため、PEFCのコストダウンにつながるが、そのメカニズムが解明されたことにより実用化レベルまで改良する手がかりが得られたという。解析した結果を基に触媒を改良し、白金を使わないPEFCの実現を目指す。(日経産業新聞08年10月22日)

(2)MIT
 アメリカのMITの研究チームはFC向け触媒の原子構造を撮影することに成功した。プラチナとコバルトからなる触媒の微細構造が分かるようになり、製造技術や性能向上のためのヒントを探すことができると期待している。観察した触媒はプラチナ原子とコバルト原子が層状になっており、適切に製造できた際の触媒表面はプラチナで覆われていたという。(日経産業新聞08年11月5日)

(3)東大と群馬大
 東京大学の尾嶋教授、群馬大学の尾崎教授らの研究チームは、白金触媒を使わないPEFC電極向け触媒材料を開発、そのメカニズムを解明した。新触媒材料はポリマーに鉄やコバルトを加えた球殻状(ナノシェル)の炭素物質で、尾崎教授が"カーボンナノシェル"と名付けた。微細な炭素原子の構造体が触媒作用を持ち、ホウ素や窒素などを添加すると更に性能が向上する。今回窒素を1%添加、折り曲げて発電性能を高めた新炭素触媒を開発し、放射光を使って窒素の結合状態を調べた結果、窒素は炭素触媒のジグザグ構造の端でより活性化することを発見した。又理論計算の結果とも一致した。未だ白金よりは劣るが、端に窒素を多く添加すれば白金よりは2〜10倍程度性能を上げられる見込みである。白金は電解質膜中に析出し劣化につながるが、同触媒は劣化しないため寿命が長い。NEDOが進める"PEFC用カーボンアロイ触媒の研究開発"プロジェクトで、宮田プロジェクトリーダー、寺島北陸先端科学技術大学院教授らが研究に協力した。(日刊工業新聞08年11月18日)

(4)横浜市立大・IHI
 横浜市立大学の橘教授とIHIは、カーボンナノウオール(CNW)の構造をX線によって解析することに成功した。CNWはカーボンナノチューブ(CNT)同様、ナノサイズ炭素材料であるが、CNTは均一なチューブ状であるのに対して、CNWは結晶子で構成されるシート状のナノ構造体が基板に対して垂直に立っているものである。成長の初期段階では基板に平行に堆積し、その後垂直方向に成長することが明らかになった。今回CNWの成長メカニズムを解明したことから両者は今後CNWを構成するグラファイト性結晶子のサイズや成長速度などの制御に取り組む方針で、実用化に必要な知見を蓄積していく。CNWは製造には触媒を用いないため、金属不純物を含まないという利点もあり、その電界放出特性を生かしてFC、薄型デイスプレイ、水素吸蔵材などの応用が期待される。(化学工業日報08年11月25日)

4.家庭用FCの事業展開
(1)東ガス
 東京ガスは10月31日、家庭用FC向け新料金メニューを09年4月1日から設定すると発表した。"エネファームで発電エコプラン"は既存の家庭用選択約款で最も安価な料金水準となり、ガス温水浴室暖房乾燥機やガス温水床暖房機と合わせて導入すれば、標準的な家庭で電気・ガス料金の合計額が年間5万〜6万円程度割安になるという。従来は国の大規模実証事業に対応して一般料金から3%割引き、月々の請求上限額を9,500円とする契約を設定していたが、3年間の時限契約のため新しい料金メニューを設定した。現行の家庭用FC契約が満了する顧客と、09年4月以降に新たにFCを使用する顧客が対象となる。(電気新聞08年11月4日、電波新聞11月5日、化学工業日報11月6日)

(2)積水ハウス
 積水ハウス(大阪市)は、7月の洞爺湖サミットに合わせて展示した"ゼロエミッションハウス"を、同社の関東工場(茨城県古川市)の"ゼロエミッションセンター"内に移設した。茨城県次世代エネルギーパークとして28日から一般公開する。これは大容量の太陽光発電システム、家庭用FC、断熱性能の高いガラス窓、高効率証明、省エネ家電など地球温暖化防止に関する日本最先端のエネルギー・環境技術を結集した未来住宅であり、同社は今回移設した同ハウスにおいて、最新の省エネ技術と創エネ技術を組み合わせることにより、快適な生活を実現しながら、住宅の建設から生活、そして解体に至るまでのライフサイクル全体のCOを削減する取り組みを公開する。(電気新聞08年11月21日、読売新聞11月24日、住宅新報11月25日)

5.FCV最前線
(1)GM日本法人
 GM日本法人は11月10日、FCV"シボレー・エクイノックス"と北米で販売中のハイブリッド車"タホ・ハイブリッド"を日本で初公開した。エクノックスは現在欧米や中国などの政府要人らに貸し出し、商用化に向けた情報収集を行っている。同FCVは1回の水素補給で約320km走行でき、最高速度は160km/h、水素の補充時間は5分以内で、氷点下でも始動できる。リック・ブラウン社長はスズキと共同で行っているFCVやHEVなどの環境技術の開発について「遅れは一切ない」と述べ、経営危機による技術開発への影響を否定、又スズキとの関係については「提携を解消することはない」と述べた。更に同社長は2010年に生産を開始するEV"ボルト"については12年に日本市場を目指すとした。ジョウージ・P・ハンセンFC事業本部アジア太平洋地域担当デイレクターは「白金をガソリン車の触媒と似たような量に抑える技術に確信が持てるようになった」と語っている。(読売、毎日、日本経済、日経産業、日刊自動車、東京、中日新聞、フジサンケイビジネスアイ08年11月11日、中国新聞11月12日)

(2)GMAPJ
 GMAPJ(アジアパシフィックジャパン)は11月17日、GMとアメリカ農務省(USDA)が、FCVの市場化テストの推進について提携したと発表した。GMがFCV"シボレー・エクイノックス1台をUSDAに貸与し、USDAは今後6ヵ月間ワシントンで政府関係者の移動手段に使用する。(日刊自動車新聞08年11月18日)

(3)日産
 日産自動車は11月14日栃木県庁の昭和館前で、官公庁向けのPRを目的に、FCV"エクストレイルFCV"の体験試乗会を開いた。同タイプのFCVを、日光市が12月から月額42万円のリース契約で公用車として導入する。(下野新聞08年11月15日)

(4)ホンダ
 アメリカ・ロサンゼルス自動車ショウにホンダはFCVコンセプトモデル"Honda FC Sport"を出展した。小型・軽量が特徴のFCスタック"V Flow FC stack"を採用し、設計の自由度が増した。フロント中央に運転席をデザイン、後部の2座席間にFCスタックを配置、バッテリーは低い位置に搭載されており超低重心とした。(日刊工業新聞08年11月21日)

(5)アルカデイア
 アルダデイア(仙台市)は水素精製式小型FCVを開発した。公道を走行することができ、時速30km/hで約1時間の走行が可能。特殊な水(溶媒)とアルミの化学反応で燃料の水素を精製する方式で、1gのアルミで1.24Lの水素が得られる。反応後は水酸化アルミ(AlOH3)となり、還元して再利用する他、焼成して化学材料アルミナとしてリサイクルすることもできる。又FCVは蓄電池を備えており、充電しながらの走行も可能である。農業、漁業の動力用以外に災害時非常用電源などの引き合いが増えているという。(電波新聞08年11月25日)

6.水素生成・精製技術の開発
 敦賀市の若狭湾エネルギー研究センターが、鉄と水を反応させて高純度の水素を大量に製造することに成功した。同センターの新宮所長と研究開発部熱利用グループは、細かい酸化鉄粉と木炭の粉を混ぜて950℃で1時間熱し、太さが3μの繊維状の鉄を作った。この鉄を水に入れて反応させると水素が発生し、100gの鉄から38Lの水素を回収することができた。水素を発生させた後の酸化鉄は、再び木炭粉など炭素を混ぜて製鉄すれば繰り返し使うことができる。製鉄の熱源には同センターで開発したレンズで太陽光を集める太陽炉を使用した。(福井新聞08年11月20日)

7.水素輸送・貯蔵技術の開発
(1)日本原子力開発機構
 日本原子力研究開発機構は10月20日、水素貯蔵材料として有望視されている"アルミニウム水素化物(AlH3)"の新しい合成方法として、アルミニウムと水素の直接反応による合成に成功したと発表した。約600℃、9万気圧で水素が極めて反応性の高い流体になる現象を利用して、アルミ内部に水素を直接取り込ませる。大型放射光施設"SPring-8"を用いたX線回折による実験でアルミ内部が水素化していることが判明した。水素が反応性の高い流体の状態に変わり、酸化膜を除去したという。(電気、日経産業新聞08年10月21日、日刊工業新聞10月24日)

(2)新日石
 新日本石油はFCVの燃料となる水素を工場から水素スタンドまで効率的に運ぶため、水素をより高圧に圧縮して運搬するための容器を開発する。容器の壁面に特殊な樹脂を塗布したカーボンファイバーを採用し、内部の圧力を40MPa以上に高め、より多くの水素を充填できるようにする。更に容器の内部には特殊な水素吸蔵剤を入れるが、水素吸蔵剤用に金属などの分子が入りこんだ錯体と呼ばれる物質の研究を始めた。高圧状態でより多くの水素分子を内部に取り込み、圧力を元に戻すと外に放出するような物質を化学合成で開発する。このような新技術の容器は水素輸送量を約900kg(FCV300台分)と従来の5倍にまで増加させることができる。又有機ハイドライドによる水素輸送技術の研究も並行して行うことにしている。(日経産業新聞08年11月19日)

8.水素インフラ構築事業
(1)フレイン・エナジー
 フレイン・エナジー(札幌市)は10月21日、イギリスのプロセス・イノベーション・センター(CPI)と水素インフラプロジェクトを共同推進する契約を結んだと発表した。イギリスやEU地域で水素自動車やFCVへのエネルギー供給体制を構築していく。フレイン・エナジーは風力など再生可能エネルギーで水素を生成し、それをトルエンなどに化合させた液体"有機ハイドライド"として貯蔵する技術を持つ。これらの技術を水素エネルギーインフラに応用することを意図している。(日刊工業新聞08年10月22日、日経産業新聞10月23日)

(2)エア・ウオーター
 産業ガス大手のエア・ウオーターは水素供給事業の強化に乗り出した。触媒化学研究の乾智行京大名誉教授が確立した新たな触媒技術を活用した超小型の水素発生装置"VH"(商品名)の普及に取り組むとともに、水素ステーション専用装置の実用化に向けた検討を開始した。又オンサイト事業の拡大にも意欲的で、こうした戦略を足掛かりに、現在の水素関連事業の売上高約80億円を先ず2割程度引き上げることを目指す。(化学工業日報08年11月14日)

9.FCおよび水素関連計測技術
(1)ジャパンエコセンサー
 ジャパンエコセンサー(福岡市)は、太陽光発電、FCや蓄電池から発する直流(DC)を正確に測定するセンサーを開発した。開発したのは磁性流体を充填した輪にコイルを巻いたドーナツ型のセンサーで、電流が流れる際に発生する磁界を検知して電流値を測る。現在主流の磁気センサーは、内部の鉄合金などの磁性材料に磁力が残る課題があったが、磁性流体を活用することにより、mA単位の精密な計測が可能になった。DCは交流(AC)のように電流を正確に測定する技術がなく、例えばリチウムイオン電池の場合、過充電による発火などを回避するため、容量の7割程度しか充電できなかった。(日本経済新聞08年11月12日)

(2)山武
 山武はマスフローセンサー"MCS200"を11月18日から発売すると発表した。同装置は全機種"MCS100"に比べて、容積比は1/3、重量比では1/2にまで小型・軽量化し、更に高精度・再現性を実現した。配管との接続方法も従来のネジ接続を廃してマニホールド接続を採用し、より高効率な設置を可能にした。このメリットを生かして移動ヘッド機構を小型・軽量化し、より高速の実装タクト時間も実現した。更に計測レンジ毎に最適な流量口径とし、計測精度を向上させた。駆動電圧もDC14V以外にDC5V駆動を可能にしたので、パソコンや携帯電話用マイクロFCなどの用途に提案していく。価格はサンプル販売で2万円、3年後に20万台の販売を目指す。(化学工業日報08年11月19日)

10.企業による事業展開
 富士電機システムズは11月1日付けで"FC製造準備室"を新設する。準備室は当初8人でスタート、研究開発小会社の富士電機アドバンストテクノロジーの開発担当者と、富士電機システムズの事業化担当者が兼務の形で配属される。09年度から事業の本格立ち上げを目指して準備を進める。富士電機では出力100kW級PAFCと同1kW級PEFCの開発を進めており、PAFCでは24台の納入実績がある。(日経産業新聞08年10月31日)

 ――This edition is made up as of November 25, 2008――

・A POSTER COLUMN

IEC次期副会長に日本人の藤沢氏が就任
 IECの次期副会長に日立製作所の藤沢浩道氏が就任する。ブラジルのサンパウロで11月21日に開催された総会で決まった。任期は09年から3年間。IECは太陽光発電やFCなど新しい分野の国際標準づくりに取り組んでいる。(日本経済新聞08年11月23日)。

天然ガスを効率的に改質、GTLやFC向けに有効
 筑波大学の富重准教授は、天然ガスの合成ガスへの改質を効率的に行う触媒を開発した。触媒となるニッケルの表面に微量の白金を含浸させることにより材料の劣化を防ぐ。反応が高速化し、改質装置を1/4程度に小型化できる。GTL(Gas to Liquid)プロセスにおける合成ガスの製造、FCなどへの適用が可能という。
 今回開発された触媒はニッケルにその1/100程度の白金をゆっくり含浸させていくことにより、ニッケル微粒子の表面部分へ合金相を形成し、ホットスポットの発生を抑えて還元性や耐酸化性を向上させる手法である。同じ効果はニッケルにパラジウムを含浸させた場合にも確認された。
(電気新聞、化学工業日報08年10月24日)

京都市がバイオ資源リサイクル統合システムの構築を計画
 京都市は07年度から家庭ゴミなどの資源化を目指す"京都バイオサイクルプロジェクト"に取り組み、廃食用油の燃料化事業を核に、燃料化に使う資源のグリーン化と副産物の循環利用を推進してきた。これまで進めてきた地球温暖化環境対策のより一層の高度化を図る方針である。
 市のバイオデイーゼル(BDF)は粘性の高い廃食用油を石油系メタノールと反応させてグリセリンを除去して製造されてきたが、市は廃木材や間伐材などのバイオマスを熱分解でガス化し、それからバイオメタノールを生成するのに加え、製造過程で除去した廃グリセリンをバイオガス化してFC燃料の水素を生成することなどを計画、11月からメタノール製造装置で実験を始める。又建築廃材については回収ルートも確保済みで、間伐材を効率よく回収するシステムの検討を始めており、水素生成前段階のメタン発酵についても効率化する技術開発を推進している。07年度から80℃で発酵する超高温可熔化槽をプラントに追加、従来(発酵温度55℃)比でバイオガス発生量が20%増、発酵残渣発生量は50%減、発酵廃液処理量も70%減となることを実証した。
 2010年度内に地域から出る多様な廃棄物を活用し、バイオ資源のリサイクル統合システムの構築を目標に掲げている。
(日刊工業新聞08年10月27日)

家畜の糞尿を原料にカーボンナノチューブと水素製造プロジェクト
 室蘭市に"ベンチャーE・C・O(北海道浜中町)が、メタンガスを原料とした"バイオメタン触媒直接分解装置"を稼働させた。近郊の酪農家から集められた家畜の糞尿から発生したメタンガスを、酸化鉄を触媒として水素とカーボンナノチューブ(CNT)に分解する装置で、COを全く排出することなく、40m3のバイオメタンから8kgのCNTと30m3の水素を製造することができる。
 メタン改質技術は北海道経済産業局が採択した産学連携事業で、日本製鋼所と北見工大、鹿島などが取り組んでいた。07年E・C・Oがその一部を受託して事業を目指していた。トルエンやエチレンを原料とする従来のCNT生産方式に比べて、環境に効果的であるのみならずCNTのコストを数分の1にまで低減することが可能という。
(フジサンケイビジネスアイ08年11月17日)

バイオエタノールからブタノールの効率的な合成技術を開発
 関西大学の石井教授とダイセル化学工業の研究グループは、デイーゼル燃料や化学品に広く使われるブタノールを、バイオエタノールから効率よく合成する技術を開発した。
 関大などの研究グループは、イリジウム微粒子と有機物を組み合わせた触媒や、水酸化カリウムなどを利用、エタノールを入れた容器にこれらの触媒を入れると、4〜5時間で約85%がブタノールに変わることを確認した。バイオエタノールは将来ブタノールの原料としても使われるようになると思われる。
(日本経済新聞08年11月17日)

ホンダが太陽電池販売で公共・産業用へ参入
 ホンダは10月23日、太陽電池で新たに24日から企業や公共施設など大口顧客向けの公共・産業用市場に参入すると発表した。既に受注を開始しており、08年度内に20件を販売する。国内市場を確立した上で、需要の大きい欧米などへの輸出も検討する。
 太陽電池を生産するのは全額出資子会社"ホンダソルテック"(熊本県大津町)。発電能力3kW程度の住宅向けシステムについては140件販売した。今後は発電能力20〜100kW以上の大型システムを狙う。同社の太陽電池材料はシリコンではなく銅やインジウムなどの金属化合物であり、世界的に品薄が続くシリコンに比べて安定調達ができて、生産コストも低減できるという。
(産経新聞08年10月24日)

色素増感太陽電池の完全固体化セル
 綜研化学は10月27日、色素増感太陽電池(DSSC)を完全固体化したセルの開発に成功したと発表した。DSSCを固体化するために重要な電荷移送(カソード材料)層において、通常の電解液に代えて特殊な導電性ポリマー(ベラゾール)を用いることにより固体化を実現した。独自の重合方法とドーパント設計により、汎用の有機溶剤への溶解、他の樹脂との混和性、コーテイングやポッテイング処理による層形成を可能にした。
 ベラゾールは太陽電池、FCの電極材として活性があるため、ITO表面に塗工したものを使用することで対極材としての低コスト化が可能になる。
 なお、産総研で開発された、湿式セルでは有機系色素として最高レベルの効率を発現している"MK−2"の技術移転を受けて、本開発は行われた。
(化学工業日報08年10月28日)

東京電力が09年度にEV300台を導入
 東京電力は09年度に、三菱自動車が量産する"i MiEV"を中心に約300台のEVを営業用車両としてリース方式で導入する。営業所に専用充電器を設置するなどインフラも整備、CO排出削減につなげる。10年度以降も導入を拡大、将来は全営業車両の約4割に相当する3,000台をEVにする予定である。
 "i MiEV"は1回の充電で約160km走行できる。東電が開発した充電器を営業所などに設置すれば営業車両として使えると判断した。
 なおEVに関しては、日本郵政グループの郵便事業会社が保有する約21,000台の車両の全てをEVに切り替えていく方針である。
(日本経済新聞08年11月17日)

ロス自動車ショウ:"環境"で各社が次世代技術を競う
 アメリカ・ロサンゼルス自動車ショウが11月19日開幕した。環境対策に関心が集まる同ショウでは、日米欧の各社が低燃費技術やガソリンに替わる燃料の活用技術を競った。トヨタ自動車が世界初の量産ハイブリッド車"プリウス"を発売して11年目になる今年は、電気自動車(EV)など"ポストハイブリッド"の座を狙う動きが活発である。
 ショウ会場ではドイツBMWが小型車"ミニ"のEV"MINI-E"を公開した。リチウムイオン電池を採用、時速100km/hへの到達時間は8.5秒で、充電1回での走行距離は240kmと長いが、電池を搭載するために後部座席が使えず、2人乗りになるなどの制約も多い。カリフォルニア州などで実施する500台限定の試験的なリース販売に対し、1万人以上の応募があったという。
 日産はEVの普及でオレゴン州と連携すると発表、同州は充電スタンドの拡充や購入者への5,000ドルの税控除などを検討しているという。ゴーン社長は「2020年までに世界の新車販売の10%がEVになる」との見通しを示した。
 ホンダはスポーツタイプのFCV"FCスポーツ"を公開、同社は7月からカリフォルニア州南部で"FCXクラリテイ"のリース販売を開始している。トヨタが初公開した"レクサスRX"(日本名ハリアー)の新型ハイブリッド車は、燃費性能を現行モデルより8%向上させた。ガソリンではなく天然ガスと電気モータを併用するハイブリッド車のコンセプトも出展した。
(日経産業新聞08年11月21日)

シンガポール政府が"ウビン島"を大規模新エネルギー実証実験場に
 シンガポール政府はこのほど、同国北東部の小島"ウビン島"で、太陽光や風力、バイオマスなど各種再生可能エネルギー技術の実証実験を行う方針を打ち出した。エネルギー市場監督庁(EMA)は、具体的な計画を策定するコンサルタント企業を11月中に募集、09年3月までに選考を終え、実証実験を行う予定である。
 ウビン島はジョホール水道の東端に位置し、面積は10.2km2で、シンガポール本島から船で10分余りの距離にあり、住民も100人余りと少ないため、本島からの電力供給はない。住民や商店は現在個別のデイーゼル発電で電力を賄っている。EMAは原案として、島内や周辺洋上に再生可能エネルギーを利用する発電施設を配置し、これら施設と島内の住居、商店、行政施設などを結ぶ"島内専用マイクログリッド"を構築する構想を示している。
(化学工業日報08年11月11日)