第149号 70MPa水素ステーション実証運転試験
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.PAFC事業展開
3.MCFC事業展開発
4.SOFCの開発と事業展開
5.PEFCおよびDMFC要素施術開発と事業展開
6.家庭用PEFCシステムの事業展開
7.FCV最前線
8.FCフォークリフトの開発と実証
9.水素ステーションの開発と実証事業
10.水素生成・精製技術開発
11.携帯機器用マイクロFCの開発
12.FC・水素関連計測・試験装置
13.企業による事業展開
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)経産省、環境省等
 経済産業省や環境省など温暖化防止対策に取り組む関係10省庁は、09年度の概算要求で温暖化防止向けに総額1兆1,500億円以上の予算を要求する。8月20日に開かれた自民党の地球温暖化対策推進本部会議で10省庁の幹部が、現段階で見積もっている大まかな要求額について説明した。経済産業省は、革新的技術として太陽電池、原子力、FC,製鉄工程、CCSを挙げ、研究開発を促進する。既存先進技術としては企業などによる大規模太陽光発電(メガソーラー)の全国展開や住宅用太陽光発電の導入を支援する他、オフィスビルへの省電力機器の導入を加速させる。(電気新聞08年8月21日)

(2)経産省
 経済産業省が09年度予算の概算要求に盛り込む地球温暖化対策が明らかになった。家庭用FCコージェネレーションシステムを導入する世帯を対象に、購入費の一部を補助する制度を新設する。1世帯当たりの補助費用の上限は未定だが、09年度に総額で70億円超の予算を要求する見通しである。又クリーンデイーゼル車を購入する企業や個人にも費用を補助する。EV,HVなどクリーンエネルギー自動車向けの補助はこれまで通り継続し、総額50億円前後を予算要求する方向である。温暖化対策は1)温暖化ガス排出の少ない新エネルギーの普及、2)省エネルギー対策、3)革新的技術開発などが柱で、石油石炭税などを財源とするエネルギー特別会計を中心に予算を要求する。
 経済産業省は8月25日、09年度概算要求に、太陽光発電の普及促進など新エネルギー関連で08年度予算の約1.5倍になる約1,300億円を盛り込む方針を固めた。エネルギー対策特別会計全体は14.3%増の8,248億円となる。新規案件では、住宅用の太陽光発電システムの導入補助に238億円、家庭用FCの導入補助に74億円(技術開発を含めて304億円)を要求、又EVなど次世代自動車の普及促進、企業や自治体の大規模太陽光発電(メガソーラー発電)の展開支援などの予算を拡大する。例として革新型蓄電池の開発に向けた拠点整備に30億円、EV・PHVタウンの推進に1億円を計上した。
(日本経済新聞08年8月22日、毎日新聞08年8月26日、電気新聞、化学工業日報8月27日、電波新聞8月27日、産経新聞8月28日)

(3)閣僚懇
 政府は8月26日の閣僚懇談会で、国家公務員が使う公用車4,000台をHVなど次世代自動車に切り替えることを決めた。斎藤環境相が「政府の一般公用車は全て次世代自動車とすることを念頭に、先駆けとして大臣公用車は京都議定書約束期間内にHV、FCV、水素ロータリー車などに切り替えて欲しい」と提起、首相が同意し、各省の公用車を次世代自動車に切り替えるよう指示した。(朝日新聞08年8月26日、産経、電気、日刊工業、日刊自動車新聞8月27日、化学工業日報9月2日)

(4)文科省
 文部科学省は8月28日、09年度概算要求をまとめ公表したが、一般会計は前年比12.8%増、エネルギー対策特別会計は0.7%増しの1,485億円を計上した。未来を切り開く教育の振興や、成長力の強化につながる科学技術の振興に力を入れている。科学技術関連では、ナノテクノロジーを活用し、大容量2次電池、太陽電池、FCなどで革新的環境技術を生み出すための事業について新規に10億円要求している。(電気新聞08年8月29日)

(5)国交省
 国土交通省は、水素とFCを活用した都市エネルギーシステム実現に向けて、09年度から水素配管などの技術開発に着手する。新規のプロジェクトは"低炭素・水素エネルギー活用社会に向けた都市システム技術の開発"で、開発期間は12年度までの4年間を予定する。開発技術の内容は、1)地域内・建物内の水素配管敷設建設技術、2)エネルギーセンターを中心に水素配管網によって業務建築で水素をトータルで活用するエネルギーシステム、3)水素エネルギーシステムの化石燃料依存度を評価する手法、の3つを柱から成る。(建設通信新聞08年9月1日)

(6)NEDO
 NEDOは、15年頃を目途とするFCV普及のため、水素供給インフラ市場を立ち上げることを目的とする水素製造技術などの次世代研究の委託先を決めた。水素の製造、輸送、貯蔵技術などに関する革新的な次世代技術について探り、有効性などを研究する。08〜09年度の研究委託で、産総研や横浜国大、東大、物質・材料研究機構、金沢大、東北大、東海大の7件を採択した。(日刊自動車新聞08年9月2日)

2.PAFC事業展開
 電機システムズ(FES)は、数十台規模の受注に向け拡販を進める考えで、これと並行して製造ラインの見直しを1年かけて実施し、コストの引き下げにつなげる。PAFCについては現在、富士電機アドバンストテクノロジーが、FES千葉工場の敷地内に製造ラインを保有している。しかし、一品ものの受注生産ではコストが高くなるため、FESが市場の状況を見極めながら営業活動により一定の物量を確保し、これに合わせて生産ラインの手直しを実施する。既設ラインの改造で対応するのか、新設となるのかは今後検討する。白倉社長は「定置型の普及が思うように進まない要因は、コストの問題が大きい」と指摘している。(電気新聞08年8月20日)
3.MCFC事業展開発
 韓国鉄鋼大手のポスコは業務用MCFC(新聞記事ではFCと記述)工場を建設、4日に量産を始めたと発表した。生産能力は年間50MWで、同社によると世界最大規模である。工場は浦項製鉄所横に建設した。心臓部のスタックはアメリカFCEから輸入する。発電効率は47%、発電量に応じて設備の大きさを変えられ、工場やマンション、ホテル、病院など幅広い需要に対応できる。同社はFCを戦略輸出品目に位置付け、11年までに更に同規模の工場を建設する方針で、2012年までに1,700ウオン(170億円)を投資する。専門研究所の開設などで技術の国産化の推進し、現在よりも発電効率を10%高め、生産コストも20%以上削減することを目指す。韓国政府も支援する方針。(日本経済新聞、産経、日経産業新聞08年9月5日、朝日新聞9月10日)
4.SOFCの開発と事業展開
(1)田中化学
 田中化学研究所(福井市)は、07年6月に開発したSOFCの電極材料を量産化する方針を決めた。これまで試作品を含め、ガス会社など一部の取引先に提供してきたが、製品の安定性と供給体制が整ったと判断した。顧客が開発するSOFC製品に新しい電極を導入すると、従来比で2割程度の出力アップと、コストダウンや品質の安定化が期待できるという。同社は2年後をめどに量産化する。(北国新聞08年8月19日)

(2)第一稀元素化工
 第一稀元素化学工業と田中化学研究所は8月18日、両社共同で07年6月に開発に成功したSOFC用酸化ニッケル(NiO)/ジルコニア(SZ)複合電極材料の工業化技術を確立し終えたと発表した。これによりSOFCの発電効率アップを可能にする次世代電極材料の量産に目途をつけ、両社は試作ラインを第一稀元素・大阪工場(大阪市)内に新設し、8月末から本格的なサンプル供給を始める。国内のガス会社などは、家庭用SOFCコージェネレーションシステムの早期商品化を目指して動き始めており、両社は下期から電極材料の量産時期や製造拠点について詰めの作業に着手する。第一稀元素では「2年後には量産に移行したい」とし、製造拠点については両社の工場がある福井県内に設置することが決まっている。07年に開発した複合材料はアノード用電極で、NiOとスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)複合タイプの低温対応品と、NiOとYSZ複合の高温対応品の2種類で、これらをアノード電極に使うと発電効率が2割アップするという。又粉体に加工する前段階でNiOとScSZ、YSZの合成を行うことによる複合粉の粒形や混合比率を精密にコントロールできる点も特徴で、電極メーカーがこれまでのように自身で単品を購入して混合していた場合に比べて品質の安定度が高いという。両社は昨秋から、SOFC開発に関係する数社とこの新電極材料の実用性について検討してきたが、一部製造工程に改良を加えることで量産時の品質安定性が飛躍的に向上することを立証した。確立した量産技術により複合品でも通常の高純度ジルコニウムを製造するのと同等の安定した品質が得られる。(日刊工業新聞、化学工業日報08年8月19日)

5.PEFCおよびDMFC要素施術開発と事業展開
(1)岐阜大
 岐阜大学の神原准教授と小島プレス工業は、白金触媒の使用量を減らす新技術を開発した。空気が水素電極側に漏れ出て水素濃度が下がり発電効率が悪くなるのを避けるため、余分な水素ガスを白金触媒で燃焼させることにより取り除いていたが、新技術では、高電圧をかけてプラズマ状態を作り余分な水素ガスを燃焼させる。又触媒反応よりも1/5以下の低い温度で燃焼するため、安全性も高くなると期待される。産学協同研究グループは、1分間に8Lの余分な水素ガスを処理する装置を試作して実験し、性能を確認した。自動車向けPEFCでは排出する水素ガスの量は0.2L/min.程、処理に必要な電力量は0.2%程度、全体で白金使用料を1割減らせるという。小島プレスがPEFC向けに製品化する計画である。(日経産業新聞08年8月19日)

(2)東京理科大
 東京理科大学工学部の桑野准教授の研究室は、30万円程度の安価な機材で霜柱のように柱状で密集した(高配向)カーボンナノチューブ(CNT)を簡単に合成する方法を開発した。メタロセンなどありふれた有機金属化合物や有機塩などの触媒を溶かしたアルコール液に電極を固定したステンレス基板を入れ、交流電流で約800℃に加熱すると基板上にCNTが合成できる。新製法では溶液中に適当な素材源を添加してCNTのチューブ内、壁中、外壁に素材を混合させたリ、まぶせたり(担持)することが簡単にできる。例えば白金ナノ粒子を担持させてFCの電極触媒層を作ることが可能となる。(日刊工業新聞08年8月22日)
 東京理科大学工学部の桑野准教授、斎藤助教らのグループは、白金を使わない触媒用新材料を開発した。鉛とルテニウムを含む酸化物にマンガンを添加したもので、新材料は酸素欠陥を多量に含むパイロクロア型結晶構造を持つ。この構造特性から電解質劣化につながる過酸化水素の発生が少なく、白金代替触媒として優れているという。現状では可逆水素電極に対しての立ち上がり電位で白金には及ばないが、近い性能が得られる前処理技術を確立しつつある。更に粒子を現状の数十分の1である約10nmにすれば、酸素の還元能力が高まることから白金を上回る触媒性能も期待できる。既に液相沈澱法による微細化に目途をつけている。鉛を希土類のプラセオジムやネオジムに、ルテニウムを他の遷移金属に置き換える研究も進めており、置換前のものに近い性能が出ているという。(日刊工業新聞08年9月4日)

(3)住金
 住友金属工業は、12年を目標にステンレス箔セパレータの本格事業化を目指す。FCVの量産第1世代が登場する時期を捉え、連携関係にある国内大手メーカー向けを中心に需要拡大を見込む。又家庭用PEFC、小型機器用DMFC向けに有償サンプルの供給に着手、PEFCの普及加速とコストダウンを目指す。ステンレス箔セパレーターは鋼中に均一に分散する微細な導電性金属析出物が鋼板表面上に形成した不動態膜を突き破って露出する構造。鋼中の析出物が電気の通り道となり接触抵抗を下げ、不動態膜が耐食性を発揮する。セパレーターの厚さは100〜200μmで、約1万時間の耐久性を確認済みである。(化学工業日報08年9月10日)

(4)上智大
 上智大学理工学部の睦川教授らの研究グループは、100〜200℃の中温域で動作する無加湿型FCを開発した。塩基性高分子電解質膜にリン酸をドープしたポリベンゾイミダドール(PBI)を用いており、電解質膜と触媒に含まれているリン酸の量を最適化することによって、室温起動を確認した。電解質膜はリン酸吸着量を上げると発電効率が上昇する一方、触媒層はリン酸吸着量を上げると発電効率は下がってしまう。今回、触媒作製の条件を最適化しリン酸含有量を50%以下に抑制することによって室温起動を達成することができた。160℃における最大出力密度は270〜280mW/cm2、電解質膜のリン酸吸着量は2.52モルであるが吸着量を上げすぎると耐久性が劣化する傾向を示す。今後は電解質膜に使う塩基性高分子の改良を進めて出力密度、耐久性などの向上に取り組む。(化学工業日報08年9月18日)

6.家庭用PEFCシステムの事業展開
(1)新日石
 新日本石油は8月21日、三洋電機と共同で設立した"ENEOSセルテック"(群馬県大泉町)が、約20億円を投資して工場を拡張すると発表した。09年4月から"エネファーム"の商用量産を始める。年産3,000台で量産を始め、10年度には年産1万台の体制を整える。更に追加投資をして15年度までに年産4万台にまで拡張する方針。(読売、朝日、日本経済、産経、電気、日経産業、日刊工業、建設通信、中日、上毛新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報08年8月22日)

(2)東ガス
 東京ガスは家庭用FCシステムの普及に向けて、専門のメンテナンスチームを立ち上げる。これまで秘密保持のため、電池メーカーが保守点検を行ってきたが、メーカー側の協力を得て自社メンテナンスに切り替える。東ガスは09年度にシステムの販売を08年度見込みの3倍以上に拡大する計画で、本格的な普及段階に入るのに備えて迅速な顧客対応を整える。(フジサンケイビジネスアイ08年8月22日)

7.FCV最前線
(1)現代・起亜自動車
 韓国の現代・起亜自動車グループ会長は8月18日、08年中に11兆ウオン(約1兆1,600億円)を設備や研究開発部門に投資、ハイブリッド車の量産体制を09年中に整え、販売を開始するとともに、「世界4大グリーンカー強国」を目指す韓国政府の方針に合わせ、12年からFCVを生産開始し、早期に実用化を図ると発表した。(日本経済、北海道新聞、フジサンケイビジネスアイ08年8月19日)

(2)トヨタ
 トヨタは8月29日、新FCV"トヨタFCHV−adv"を9月1日からリース販売すると発表した。月額84万円で30か月限定の契約、第1号は環境省と締結した。高圧水素タンク圧は70MPaで、1回の水素充填での走行距離は前モデルの2.5倍で約830kmに達する。(読売、毎日、日本経済、産経、中日新聞、フジサンケイビジネスアイ08年8月30日、日経産業、日刊工業新聞9月1日、化学工業日報9月4日)

(3)日産
 日産自動車は9月5日、EVやHVの性能向上に繋げる新型インバーターを開発し、FCV"エクストレイルFCV" 搭載して走行試験を始めたと発表した。今回の新型インバーターは、ロームと共同開発した炭化ケイ素(SiC)素子を使った独自構造のヘテロジャンクションダイオードを搭載しており、従来のインバーターに比べて面積を7割減らし、回路のエネルギー効率を2割改善させた。冷却装置も小さく、インバーター全体では15〜20%の小型・軽量化が見込めるという。今後はインバーター構成部品であるトランジスターにもSiC素子を応用し、1段の効率向上や小型・軽量化を目指す。(日刊自動車新聞08年9月6日、日経産業新聞、化学工業日報9月8日)

8.FCフォークリフトの開発と実証
(1)豊田自動織機
 豊田自動織機は"国際物流総合展2008"に、ハイブリッドFCフォークリフトを展示する。始めて自社開発したFCシステムを搭載した。(日刊自動車新聞08年9月6日、電気新聞9月11日)

(2)MHI等
 三菱重工業は9月8日、日本輸送機、JFEコンテイナーと共同で、FC式フォークリフトの早期商品化に向けた実証試験を実施すると発表した。水素供給に持ち運び可能なカセット式供給ユニット(容量13Lのボンベ4本)を採用しており、水素ステーションなどインフラなしで導入できるメリットがある。連続稼働時間は現在は4〜5時間で将来は8時間を目指す。基本的な性能については見通しを得ており、今後はカナダのハイドロジェニック社製FCユニットなど複数のFCを搭載し、コストなどの検証を行う。三菱重工は2012年にも商品化が可能とみており、今後コスト低減や信頼性・耐久性の向上に関する各種試験・検証を実施する。(日本経済、電気、日経産業、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報08年9月9日)

9.水素ステーションの開発と実証事業
 JHFCプロジェクトおよび東京ガスは9月11日、千住水素ステーションで70MPaの実証実験を開始した。従来の圧力スイング吸着方式の水素製造装置に加え、80MPaの水素圧縮機、蓄ガス設備などを増強した。JHFCでは08年度中を目途に、大黒(横浜市鶴見区)、船橋(船橋市)、旭(横浜市旭区)でも70MPa化を進める。70MPa水素ステーションでの実証実験では、水素の充填圧力や充填速度を変化させ、高圧下に伴う安全性や耐久性に関する実証を行い、高圧下によるメリットや課題を明らかにする。更に部品や充填方法を標準化するためのデータ収集も行う。実証試験に参加するFCVは、トヨタ "FCHV-adv"、日産"エクストレイルFCV"、スズキ "SX4-FCV" の3車種である。(電気、日経産業、日刊工業、日刊自動車新聞08年9月12日、フジサンケイビジネスアイ9月13日)

10.水素生成・精製技術開発
 東京大学の菊地准教授らのグループと京都大学、出光興産、科学技術振興機構の研究チームは、DMEを原料に水素を効率よく作る触媒を開発した。開発した水素製造触媒は、酸化鉄の表面に微小な銅が分散して結合した立体結晶構造をしている。比較的安価な銅などを使うので低コストで利用が可能である。新触媒は350℃の低温で反応、劣化しにくい。1,000時間利用も可能で、劣化しても空気中で加熱すると再利用できる。DMEはメタノールなどから作られ、常温では気体であるが、圧力をかけたり低温にすると液体になり、タンカーやタンクローリーで輸送ができる。又メタノールのように毒性がないので、DMEから水素を安価に作る方法が実現すれば、商業生産に繋がる可能性がある。(日経産業新聞08年8月25日)

11.携帯機器用マイクロFCの開発
 ハイドロジェン・エナジー・デバイシス(相模原市)は、環境エネルギー研究所(町田市)との共同開発により、ノートパソコン用などの携帯電源として、水素化ホウ素ナトリウムの加水分解による水素を燃料とするマイクロPEFCを完成した。サイズは縦160mm、横80mm、奥行き80mm、最大出力40W、定格出力で最大8時間の連続使用が可能である。本体にNaBHおよび特殊な薬品を含む水を入れた交換式カートリッジを取り付けて作動させる。NaBHの水素含有率は10.6wt%である。本体価格は3万円程度を予定、9月を目途にサンプル出荷を始め、初年度1,000台の販売を目指す。(日刊工業新聞08年8月19日)

12.FC・水素関連計測・試験装置
(1)チノー
 チノーはPEFC用試験装置、製品名"FC評価装置"を9月10日に発売する。スタックセルの電圧や単セルの電圧・電流などを幅広く測れる。計測できるスタックセルの枚数は20で、規模は3kW級、最大30V、電流は最大500Aまで計測可能で、価格は3,930万円からである。高速の演算処理を実現した"FCアーキテクト"を搭載しており、試験内容に応じた条件設定・変更が容易にできる。初年度10台の販売を見込む。(日刊工業新聞08年9月2日、日経産業新聞9月3日)

(2)東陽テクニカ
 東陽テクニカはSOFCの性能評価を効率的にできる装置"AutoSOFC2"を開発、販売を始めた。資料の取り付け時間が従来の半分以下で済む他、極めて薄い膜の試料も破壊せずに分析できるのが特徴である。九州大学、九州計測器(福岡市)との共同開発で、新方式の試料固定装置を採用した。パイプの試料との接触面に段差を設け、段差の形状に合わせて作った資料と密着させる。ガラス素材で密着する必要をなくしたことで、ガラスの密着や剥離など手間のかかる課題を解消した。電極は先端にプラチナ製ペーストで固定する方法を使い、電極を圧力で押しつける必要がなく、厚さ200μm以下の試料でも傷めずに分析が可能である。価格は1,280万円、1年で10台の販売が目標。(日経産業新聞08年9月3日、化学工業日報9月5日、日刊工業新聞9月11日)

(3)エスアイアイ・ナノテクノロジー
 エスアイアイ・ナノテクノロジー(東京)は、−150℃から600℃までの冷熱や熱を加えて物質の変化を調べる熱分析装置"TAM/SS7100"を9月3日に発売する。10nmから物質の伸びなど温度変化による変形量を測ることが可能で、PEFC膜材料などの寸法変化量を調べるのに使える。測定値から不要なノイズを除去する技術を採用しており、測定感度を2倍高めた。価格は735万円からで、年80台の販売を見込む。(日刊工業新聞08年9月3日)

13.企業による事業展開
 日清紡は8月8日、太陽電池とPEFCセパレーター事業を拡充し、工場を新設すると発表した。最新設備を導入して需要の拡大に対応する。一方繊維事業は国内生産を縮小する。総投資額110億円を見込む。(日本経済、日経産業、日刊工業、中日、静岡新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報08年8月29日、建設通信新聞9月2日)
 日清紡は千葉市緑区大野台の千葉市気緑工業団地に、家庭用PEFCセパレーターの生産拠点となる新工場を建設する方針を固めた。PEFC"エネファーム"年間2万台分に相当するセパレーター生産を行える最新機器を備えた新工場を建設する。新工場には同社美合事業所(岡崎市)を移設するとともに、工場建屋は年間30万台に相当する生産に対応しうる規模とする。10年3月完成を予定、初期投資額は35億円を見込む。(日刊建設工業新聞08年9月11日)

 ――This edition is made up as of September 18, 2008 ――

・A POSTER COLUMN

新日石が太陽光発電事業の本格育成
 新日本石油は、太陽光発電をエネルギープロバイダー事業の核として育成する。シリコンウエハー大手のスペースエナジーに約15%出資した他、独自の太陽光発電システムを開発し、サービスステーション(SS)ネットワークを活用して地域に根ざした販売を展開する。又次世代型太陽電池の開発を強化、15年の事業化を目標に色素増感型(DSC)を、続いて有機薄膜型の実用化を目指す。09年には事業戦略を固める予定で、システムインテグレーターから総合エネルギープロバイダーへと飛躍を図る。
 新日石は天然ガスやバイオマスなど新たな資源の確保に取り組むとともに、CO削減の観点からFCや水素、蓄電材料、太陽光発電などのエネルギーベストミックスで低炭素社会を実現する総合エネルギープロバイダーを目指しており、なかでも太陽光発電には大きな期待を寄せている。
(化学工業日報08年8月22日)

経産省が電気自動車(EV)実証のモデル地域公募
 経済産業省は09年度、EVの普及・拡大に向け、モデル地域での実証実験を開始する。8月末にも公募し年内に全国数か所を選定、走行データの収集など各種調査や充電スタンドの整備などを実施する。地方自治体を中心に地元企業や住民の参加を促し、運輸部門の低炭素化に向けEVの普及につなげていく意向である。(日刊工業新聞08年8月27日)

新丸ビル地下駐車場に急速充電装置
 東京電力は9月17日、東京都千代田区の新丸ビル地下駐車場にEV対応の急速充電装置を設置し、実証実験を始めた。地下駐車場に設置した場合の利便性や環境への影響、技術的課題などを評価する。設置場所を段階的に増やし、EVの普及を後押しする。
 三菱自動車が09年に発売する "i MiEV" などに対応、5分間で走行距離40km、10分間で60km分の充電が可能で、ガソリンスタンドのような接続ホースを車に差し込みボタン操作だけで充電できる。
(日本経済新聞08年9月18日)

住商がブラジルでバイオ燃料事業に参入
 住友商事は、ブラジルで現地企業と合弁会社を設立、200〜300億円を投じて2011年にも生産を開始する。当初は年20〜30万kLのバイオエタノールを生産、売上規模は同100〜200億円前後になるとみられる。
 双日も現地合弁会社"ETH ビオエネルジア"のバイオエタノール生産量を、現在の年20万kLから15年までに同300kLまで15倍に引き上げる。農園の拡大や製造設備の増強に300億円強を投資する計画で、双日の追加投資額は約110億円となる。
 国内商社が海外のバイオ燃料事業を相次いで拡大するのは、世界の需要が今後も拡大し続けるとの見通しからで、OECDは市場規模が今後10年で2倍に膨らむと試算している。
(日本経済新聞08年9月19日)

紙屑からバイオ燃料の生産
 清水建設は紙くずや生ごみから可燃ガスと液体メタノールなどのバイオ燃料を生産する技術を開発した。ゴミを分解ししてガスを回収し、これを触媒と反応させてメタノールを作る。都市の商業施設やオフィスビルで廃棄物として出たバイオマスをその場で処理し、発電用燃料として活用することが可能という。
 3mm以下に細かく破砕したゴミと水蒸気を炉の中に入れ、900℃の熱で瞬時にガス化、発生したガスから高品質の可燃ガスを取り出して、濃度90%以上のメタノールに変える。ガスは発電に、メタノールはバイオデイーゼルやFCなどの原燃料として使う。
 小型プラントをビルの地下などに置き、紙のシュレッダーくず、コーヒーや茶ガラ、木くずなどを原料としてガスとメタノールをほぼ同時に回収し、これを使って発電する。15〜20階の高層ビルの場合、そのビルで使う電力の1割弱を賄えるよう設計する。装置の価格は3,000万円程度、2年内の実用化を目指す。
(日本経済新聞08年9月13日)

もみ殻から高機能活性炭の開発
 秋田県立大学の熊谷助教は、ジャパンエナジーと共同で、米の収穫に伴って発生する"もみ殻"を使った高機能活性炭の開発に成功した。燃料中の硫黄化合物を効率的に除去できるので、灯油仕様のFCにおける脱硫の低コスト化が期待されるという。
 もみ殻に含まれるシリカを細孔骨格とし、安全性の高い糖類を細孔発達と成形性向上に利用することにより、不純物を効率的に除去する。燃料油中の硫黄化合物の吸着除去以外にも、食品や医薬品の精製過程への応用が見込まれる。
(電気新聞08年9月8日)