第148号 バイオマス利用を目指す微生物FC
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.PAFC事業展開
3.SOFC関連技術の開発
4.PEFCおよびMCFC要素技術開発
5.家庭用FCの事業展開
6.FCV最前線
7.水素ステーションの事業
8.水素生成・精製技術の開発
9.水素貯蔵・輸送技術の開発
10.FCおよび水素関連計測技術
11.微生物FCシステムの開発
12.FC・水素関連の新事業計画
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
 NEDOは7月31日、20〜30年頃と予測されるFCVの将来的な普及に向けPEFC次世代技術研究開発について行った公募において、27件の応募に対して東大や京大に加えて、横浜国大と日産による"PEFC用多孔体内における熱・物質移動現象の担体評価技術"、早稲田大と日産のグループなどによる"PEFC内における熱・物質輸送現象の評価"、貴金属代替触媒材料を開発する筑波大など20機関、16件の委託先を決定した。実施期間は2年間で、1件当たり約2,000万円を助成する。(日刊自動車新聞08年8月1日、日経産業新聞8月7日)
 NEDOは、白金代替の"カーボンアロイ触媒の性能検証に係る先導研究"の委託先を東工大、東大、北大に決定した。同触媒は群馬大の尾崎純一教授が発見した。カーボンアロイ触媒は窒素およびホウ素をドープしたナノシェルカーボンと呼ばれる酸素還元特性を持つカソード触媒で、多様な原料から作れるほか、白金触媒に比べて約60%の出力密度を達成している。FC以外にも化学合成の代替触媒としての応用が期待されており、アメリカDOEが追試を始めるなど研究が活発化している。(化学工業日報08年8月11日)
2.PAFC事業展開
 日本電気協会は8月1日、消防法に基づくFC設備の認定第1号として、富士電機アドバンストテクノロジー(AT)に認定書を授与した。PAFC設備が06年に消防法上の非常電源への適用が認められた。実際の適用には、消防庁の登録認定機関である電気協会の認定基準に適合する必要がある。富士電機ATは08年4月に申請し、同基準に基づく非常電源切り替え試験、防水試験などを実施して7月に認定者に決定した。このPAFCは、災害などで主燃料の都市ガスの供給が止まった場合でも、予備のLPガスに切り替えて給電を継続できることに特徴がある。定格出力は100kW、発電端効率は42%である。(電気新聞08年8月4日)
3.SOFC関連技術の開発
(1)NTT環境エネ研
 NTT環境エネルギー研究所は、54%の高い発電効率と、現時点での実績では1,000時間の安定した発電を両立させた出力1kWSOFC(セル数50枚)を開発した。セルを30枚重ねたスタックでは、発電効率54%で最高3,500時間の安定動作を実現している。電解質材料にはランタン鉄ニッケル酸化物を採用した結果、セルを直径12cmに大きくしても安定して動作させることに成功、又セルの中に燃料ガスを回収する配管を通し、利用する燃料の量を調節したり、余ったガスを再利用できる仕組みを導入することによって効率を高めた。しかし現在燃料利用率は67%であり、これを80%程度まで上昇することができれば、発電効率を現在の54%から60%以上に高められると述べている。今後燃料の利用効率を上げるなどの改良を進め、数万時間以上の安定した動作が可能なSOFCを開発し、先ず同社の施設で電力供給に利用、2〜5年後の実用化を目指す。(日経産業新聞08年7月22日)

(2)丸エム
 丸エム製作所(大阪府大東市)は、SOFC向けに低価格の高温耐性ネジを開発した。独自の冷間圧造法で製造することによって、切削による従来の製造方法と比べてコストを1/3にまで引き下げた。低価格を武器にSOFC等FC向け専用ネジで高いシェアを目指す。(日刊工業新聞08年7月25日)

(3)大阪ガス
 大阪ガスは家庭用SOFCシステムの連続稼働時間において、セル部分の改良による耐久性のアップにより、4万時間の稼働を実現する可能性が高まった。発電ユニット部のメーカーである京セラとの共同開発による成果で、空気極の孔の数について酸素透過量を増やしながら強度を維持できるように調整し、更にセル間を結ぶ集電材に耐熱コーテイングも施して耐久性を高めた。これまでの耐久試験の実績は2万時間、大ガスは改良型で4,000時間のフィールド試験を実施し、同試験をベースに4万時間前後におけるセルの劣化を予測した。その結果、セル1枚当たり(初期電圧0.8V)の出力低下予測値は0.7Vに留まったという。この他、発電ユニット内の熱交換器を改良して排熱回収効率を40%にアップし、交換器の性能向上で水素改質時に必要な水分をセルからの排ガス凝縮により全量を賄うことができた。外部からの水道水を取り込む必要がなくなり、製造コスト削減も可能という。今後はNEFによる実証試験を経て一般家庭への早期販売を模索する。(日刊工業新聞08年8月7日)

(4)京大
 京都大学の蔭山准教授や高輝度光科学研究センターなどのグループは、原子がハシゴ状に並んだ鉄酸化物の合成に成功した。平面上の合成にも成功しており、新構造ができたことで高温超電導やFCの効率化など広範囲で応用できる可能性が高くなった。研究グループは1,100℃で鉄とストロンチウム、酸素の化合物を作り、300℃に下げて酸素を取り除くことによりハシゴ状の構造を作った。(日本経済新聞08年8月11日)

4.PEFCおよびMCFC要素技術開発
(1)立命館大
 立命館大学の研究グループは、nmサイズの金属微粒子を炭素でコーテイングする技術を開発した。炭素と金属を高温で蒸発させ、瞬間的に冷却して固体になった金属微粒子を炭素でコーテイングする技術である。具体的には、先ず直径数mm、長さ5cm程度の炭素の棒に直径1mm程度の穴を開けて、細い金属線を入れる。これを圧力と温度に耐えられる特殊な装置に入れ、アーク放電によって炭素棒と金属線を同時に3,000℃以上に加熱する。蒸発した炭素と金属は、装置内に満たしたアルゴンなどの気体に触れて冷やされるが、融点の高い炭素が先に固まる過程で金属の蒸気を取り込み、炭素に取り込まれた金属は直径数十nmの粒子のまま固まる。この結果金属微粒子は厚さ10nm前後の炭素で覆われている。気体の種類や圧力を変えることにより、金属の直径を10〜100nmに制御できるし、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄など10種類以上の金属で成功した。金属触媒は酸化したり、塊になって劣化しやすいが、炭素コーテイングで金属の劣化を防ぐ効果が期待され、FCなどに適用すれば、寿命の向上が期待される。(日経産業新聞08年7月28日)

(2)九大
 九州大未来化学創造センターの小江教授の研究グループは、常温常圧の水中で水素から電子を取り出すニッケル系触媒の開発に成功したと発表した。研究グループは、自然界に存在する"ヒドロゲナーゼ"が常温常圧の水中で水素から電子を抽出するメカニズムについて研究し、新たに開発したニッケル系触媒を使って、4個の電子を持つ2個の水素分子から2個の電子を取り出す仕組みを解明、水素からの電子抽出に成功した。PEFCのコストダウンが可能で、既に自動車メーカーから問い合わせがある。同教授は「今後は酸素についても、常温常圧の水中で機能する安価な触媒の研究を進めたい」と述べている。(日本経済、西日本新聞08年8月9日、日刊工業新聞8月12日、フジサンケイビジネスアイ8月13日)

(3)MIT
 アメリカMITの研究チームは、高効率で水を分解して酸素を作り出す触媒を開発した。分解エネルギーに太陽光発電を使い、分離した酸素をFCに利用すれば、いつでも安定した電力を供給できるシステムが実現するという。新触媒はコバルトやリン酸で、電極を水の中に入れて電気を流すと酸素ガスを発生する。白金触媒などで水素イオンを発生させれば、FCの燃料を供給する仕組みが実現する。(日経産業新聞08年8月14日)
5.家庭用FCの事業展開
(1)新日石
 新日本石油は家庭用FCの量産に乗り出す。新日石は三洋の家庭用FC事業を事実上買収し、4月にENEOSセルテックを群馬県大泉町の工場内に設立したが、この工場に量産設備を導入し、09年度に年1万台、15年度までに年4万台を生産できる体制を整える。総投資額は100億円。自社ブランドで販売する他、コスモ石油やジャパンエナジーにもOEM供給する。15年度までの累計生産台数で15万台を見込み、量産効果などで15年度までに価格を50万円程度にまで引き下げる。国内ガソリン販売量は07年度で前年度比2.5%減の5,906万klと3年連続で減少し、新日石のガソリンなど国内石油製品事業(石油化学を除く)の経常損益は原油高による在庫評価損を除く実質で08年3月期は366億円の赤字であった。同社はFCを石油製品の販売不振を補う収益源に育てる意向である。(日本経済新聞08年8月2日)

(2)セコム
 セコムは09年春を目途に出力1kW家庭用FCのレンタル事業に参入する。プロパンガスのボンベを併設し、地震などで電気と都市ガスの供給が止まった時にも家庭内に電気を供給する。電池の具体的仕様はセコム向けにOEM供給するメーカーと調整中であるが、一般的な戸建て住宅に設置できる大きさにする予定。レンタル料金は月2万円程度で、同社の警備サービスの営業網を生かし、災害対策への意識が高い富裕層などに売り込む意向である。09年度に600件の契約を目指す。(日本経済新聞08年8月14日)

(3)積水ハウスとパナホーム
 積水ハウスは9月から太陽光発電装置付きの建売分譲住宅を売り出すが、都市近郊ではPEFC付きの分譲住宅も販売する。積水ハウスはFCと太陽電池を併用することにより、建て替え期を迎える1980年代の住宅に比べて光熱費が1/4以下に減ると述べている。又パナホームも09年度から首都圏や中部、九州でFC付き住宅の販売を開始、省エネ家電との併用や小規模な分譲地での建売販売などで独自性を出す。(日本経済新聞08年8月15日)
6.FCV最前線
(1)日産自動車
 日産自動車は7月18日、8月16〜24日に長野県軽井沢で開催予定の文化・芸術祭"第2回軽井沢8月祭"に協賛し、同社のFCV"X-TRAIL FCV"の2005年モデルを2台提供すると発表した。(日刊自動車新聞08年7月19日、化学工業日報7月23日)
 日産自動車は8月6日、次世代自動車技術を発表した。出力体積密度が2倍のPEFCスタックの開発し、又10年度に発売予定のEVと後輪駆動HEVの実験車両を公開した。PEFCスタックはカーボン製に替えて薄型金属セパレータを採用し、スタック全体を小型化するとともに、MEAを改良して発電性能を向上させ、その結果体積を従来の3/4となる68Lに、出力を1.4倍の130kWに高性能化した。又電極触媒層構造を見直して白金使用量を半減、耐久性も高め、大幅な低コスト化と長寿命化を達成、年末から車両試験を開始する。(日本経済、日刊工業、日刊自動車新聞、化学工業日報08年8月7日、電気新聞8月8日)

(2)日光市
 日光市はFCVを12月から公用車として導入する。8月12日に市議会全員協議会で報告された。日光水素エネルギー社会促進協議会の会員企業である日産自動車からリースを受ける予定で、市は環境保全のシンボルとして活用したい考え。料金月額42万円の半額は国からの補助を受ける。3年間は続けたいとしており、水素補給用の仮設ステーションは会員企業3社が市内に設ける。(下野新聞08年8月13日)
7.水素ステーションの事業
 東京ガスはFCV向け水素ステーションで、水素供給過程で出る排ガス中のCOを高効率で分離・回収するシステムの実用化に乗り出す。同社の高性能水素供給装置と組み合わせ、小型分離装置でCOの液化ができるようにし、COを回収する。東ガスの水蒸気改質装置では、特殊なパラジウムの合金膜でできた水素分離管を使い、高純度の水素を高効率で取り出しており、排ガスの90%はCOである。分離装置は改質装置からの排ガスを5MPa以上の高圧でCOを液化、液化COは回収してタンクローリーに積み込み、地下貯留施設などに運ぶ仕組みである。COが高濃度のため、回収装置の大きさは一辺が約1mの比較的小さな箱状で、20kg/h程度の容量でCOを回収することができる。分離装置の基本設計は終えており、今秋に実証試験を始める。将来FCV向けの水素供給ビジネスを拡大できれば、都市ガスの需要開拓につなげられる。(日経産業新聞08年7月30日)

8.水素生成・精製技術の開発
(1)新日本製鉄等
 新日本製鉄は家庭やオフィスなどから排出される紙類や生ごみ、廃プラスチック、木材、汚泥、タイヤなど広範囲な廃棄物を原料に、製鉄所のノウハウを利用して、水素を取り出す技術を開発した。3種類の炉でゴミを処理するが、先ずゴミを蒸し焼きにして炭化、次に1,300℃の高温で不完全燃焼させて水素を取り出す。炭化したときにでるタールからも水素を得る。同社の八幡製鉄所に20トン/日のゴミを処理できる試験炉を設置、ゴミは北九州市から提供を受ける。京大、北九州大と共同研究した。(日本経済新聞08年7月28日)

(2)東大
 東京大学の堂免教授と久保田准教授らの研究チームは、可視光領域の長い波長でも高効率に水から水素を生産できる光触媒を開発した。硫化物と窒化物を反応させて作った"ガリウムナイトライド"と酸化亜鉛を高温で混合した。波長が400〜500nmの青色を吸収する。開発した光触媒は材料の表面を高温で焼くなどの加工により結晶格子の状態を制御して、触媒性能を上げることができた。水素の量産技術として実用化を目指す。(日経産業新聞08年7月29日)
9.水素貯蔵・輸送技術の開発
 千代田化工建設は水素ガスを有機ハイドライドに蓄え、効率よく水素を抽出する技術を開発、水素を取り出す際に使う触媒の寿命を従来の1か月程度から1年以上に伸ばすことに成功した。有機ハイドライドは水素とトルエンなどと化合させてできる液体で、白金を使った触媒を利用すれば水素を簡単に取り出せるが、不純物が白金の表面に付着して性能が劣化するという欠点があり、触媒の長寿命化が課題であった。千代田化工では触媒を極めて小さくすれば表面に不純物が付きにくくなり、寿命が延びることを確認した。具体的には酸化アルミニウムの表面に直径1nmの白金を塗りこんだ触媒を開発、それにより実験では連続で5,000時間、通常の使用なら1年以上は触媒の性能が維持できることが分かった。有機ハイドライドは既存の給油所で使えるので、ガソリンスタンドに触媒の入った反応器を設置すれば、そのまま水素供給ステーションとして使える。2015年までの実用化を目指す。(日経産業新聞08年8月14日)
10.FCおよび水素関連計測技術
(1)静岡大
 静岡大学創造科学技術大学院の近藤准教授は8月5日、DMFC向けに弾性表面波式の小型メタノール濃度センサーを開発したと発表した。携帯電話などに電子部品として使われる弾性表面波(SAW)素子の上に液体を載せると、液体表面のわずかな変化によって振幅、速度など波の極性が変わるが、その変化分を検出することによって液体を細かく識別することができる。SAW素子の特徴を利用し、浮き電極を持つ一方向性電極(FEUDT)を用いてDMFCのメタノール濃度を計測するセンサーを開発した。メタノール以外の液体についても濃度センサーとして活用できる。メタノールの誘電率変化をとらえて濃度を測定するので、電池切れを予告するなどDMFCの管理が容易になり、又SAW素子は1個が100円以下なのでコストダウンが可能とみている。試作システムの寸法は10×10×5cmであるが、システムをICチップ化して実用化する計画である。(電気新聞、化学工業日報08年8月6日、電波新聞8月8日)

(2)阪大
 NEDOは8月14日、大阪大学の大原准教授らのグループが革新的なハイブリッドナノ水素ガスセンサーを開発したと発表した。開発したパラジウム−DNAハイブリッドナノ構造体を用いたセンサーは、室温において検知に1秒以内という高速性と、濃度5,000ppm以上という高検知濃度を同時に実現した。DNAは表面に金属イオンを濃縮する性質があり、この性質を利用することによって、金、白金、銅、コバルトなどの金属ナノワイヤを作製することができる。DNAは通常ひも状であるが、カウンターイオン(陽イオン)濃度が増すと折り畳み構造相転移を示し、この構造を活用してナノパーテイクル、ナノネックレス、ナノリングという構造体の作製に成功した。こうして作製したパラジウム−DNAハイブリッドナノ構造体は、水素ガスに対して良好な応答速度と感度、そして安定性を持つことが確認され、又水素を吸蔵することで体積膨張依存型の電気応答性を示すことや、水素以外のガスは検知に影響を与えないために、従来型に比べてより高感度で優れたガス選択性を備えている。今後は実用化に向け、パラジウム−DNAハイブリッドナノ構造体のパッケージ・素子化を進める。その後、水素ボンベストッカーやカートに搭載して実証実験を行うが、数万円以下での販売という低コスト化を実現する必要があり、コスト分析にも取り組む予定である。(電気新聞08年8月15日、電波新聞8月18日)
11.微生物FCシステムの開発
 鹿島は東大先端科学技術研究センターと共同で、リアクターに取り外しのできる電極を差し込むことで、発電性能の低下や電極の劣化を防ぐことのできる"カセット微生物FCシステム"を開発した。微生物電池はFCの触媒に微生物を活用し、微生物が分解する有機物から電力を取り出す技術で、下水処理水や地域から発生するバイオマスなどをエネルギーとして利用することを指向している。今回開発したシステムでは、ボックス型カセットに空気極を組み合わせた"カセット正極"を、微生物が付着する負極と合わせてリアクターに取り付ける構造で、正極の交換により長期間の性能安定化やメンテナンスの容易さを実現することを目的としている。実証実験では、高さ20cm、幅20cm、奥行き5cm、容積1Lのベンチスケールのリアクターを作成し、12個のカセット電極を装着した実験で129W/m3の出力密度を達成した。今後5年後を目途にパイロットプラントを設置して、1,000W/m3の出力を目指す。(電気、日刊建設工業、建設通信新聞、化学工業日報08年7月23日、日刊工業新聞8月4日、日経産業新聞8月11日)
12.FC・水素関連の新事業計画
(1)日清紡
 日清紡はセパレータの新工場を千葉県に建設する方針を固めた。09年中の稼働を目指す。新工場は現在セパレータを製造する美合工場(岡崎市)の製造設備を移管し集約する。新工場の生産能力は現行比2倍の年800万枚となる。フル稼働は2010年夏の見込みであるが、今秋に最終決定する。総投資額は約30億円を見込む。(日刊工業新聞08年7月18日)

(2)山梨大
 山梨大学は、簡易公募型プロポーザル方式で選定を進めていた"山梨大学FCナノ材料研究センター設計業務"の委託先を梓設計に決めた。委託金額は2,400万円、予定価格は2,466万円であった。同大学はNEDOからの委託を受け、次世代FCの開発・研究を行うため"FCナノ材料研究センター"を新築する。設計が順調に進めば、11月にも工事に着手し、09年6月末の完成を目指す。(日刊建設工業新聞08年7月22日)

 ――This edition is made up as of August 18, 2008 ――

・A POSTER COLUMN

都市ガスコージェネ累計容量が431万kWに
 日本ガス協会が7月17日に発表した07年度の都市ガスコージェネレーション導入実績によると、08年3月末の累計設置容量は431万1,000kWであった。前年度末に比べて30万8,000kWの増加で、伸び率は7.7%、累計設置件数は前年度末に比べて18,666件増加し、6万2,256件となった。
 ガスエンジン、ガスタービン、FCを対象に、全国213都市ガス事業者(08年3月末現在)から調査した。
 累計設備容量の内訳は業務用が約98万kW、産業用が約328万kWに対して、家庭用は5万7,000kWとなり前年度末に比べて50%の高い伸びとなった。累計設置件数では、業務用と産業用の合計件数が5,395件で前年度末に比べて327件の増加。家庭用は5万6,861件で、同1万8,666件の増加であった。
(電気新聞08年7月18日)

東電が首都圏にEV向け充電拠点網整備
 東京電力は首都圏で、ショッピングセンターや大学などの公共施設に協力を求め、EV急速充電が可能な専用設備を設置する。09年度に最大200ヵ所、3年程度で約1,000カ所に増やす。東電は既に5分の充電で40km、10分で60km走れる急速充電器を開発済みで、三菱自動車や富士重工業と実証試験を行っている。両社が09年度にEVの販売を始めるのに合わせて充電器を設置する。
なお、三菱自動車は8月6日、車載用リチウム電池の量産について、09年春に共同出資会社"リチウムエナジージャパン"が滋賀県草津市に約25億円をかけて新工場を建設して09年1月から稼働、年間2,000台分の電池を量産すると発表した。又7日にはアメリカ・カリフォルニア州でも電力会社2社とEVの実証実験を始めると発表した。アメリカメデイアの報道によると、試験期間は3年間で同社のMiEV10台程度が提供され、実証試験の主目的は、電力系統にEVが入ることによる電力負荷への影響や、信頼性のテストである。
 東電は充電器メーカー2社と連携し、駐車場と電源設備を持つ企業などに設置を働きかける。既に三菱自や富士重のデイーラーの他、イオンが埼玉県内の店舗に設置を決定しており、更に大規模小売店やコンビニ、銀行や郵便局などを想定している。小売店などは充電器設置で環境対応をアピールでき、集客効果が見込める。充電器は工事込みで400万円、東電と設置側の費用負担は拠点ごとに協議する。
 EVは上記2社の他、日産自動車が販売を計画(10年以降)、トヨタ自動車はプラグイン型ハイブリッド車を10年までに発売する。安い夜間電力を使えばエネルギー費用は1円/kmでガソリン車の1/10以下、CO2排出量はW-t-Wで7割程度の削減になると推定されている。
 EVを巡っては、東電が営業用軽自動車5,000台のうち3,000台をガソリン車から切り替える他、日本郵政グループの郵便事業会社も大量導入する方針である。価格は三菱自は300万円前後に設定している。
(毎日新聞08年8月7日、日本経済新聞8月8日、電気新聞8月11日)

太陽光発電の本格導入に備えて経産省がインフラ強化策を検討
 6月に発表された"福田ビジョン"では、太陽光発電の導入量を2020年に現状の10倍、30年に40倍に引き上げる目標を盛り込んだが、太陽光発電の大量導入に備えて、経済産業省は蓄電や送電装置などの整備に乗り出す。経産省は20年までに太陽光、風力など新エネルギーの普及に10兆円を超えるコストがかかると試算しているが、安定電力維持のための設備費用は、太陽電池パネル本体以外に6兆円に上る可能性もある。これらは、電力が不足する時に貯蔵しておいた電力を利用できるよう蓄電池を普及させることや蓄電池の低コスト化、揚水発電の増設であり、送電線の強化では、電圧上昇を抑制するために電圧調整装置や変圧器の増設などの費用が挙げられる。一般家庭や企業などの需要家、電力会社、国、地自治体間などでの費用負担方法についても検討し、電力料金への転嫁など、新たな電気料金制度の導入も視野に入れる。
 経産省は8月8日の"低炭素電力供給システムに関する研究会"小委員会の設置を決める予定で、同委員会は年内にも報告書をまとめる。
(日本経済新聞08年8月8日)

関西でバイオ燃料の量産に向けた動きが加速
 関西でバイオエタノールの実用化や量産に向けた動きが加速してきた。三菱重工業は09年夏にも兵庫県内で収穫した稲や麦わらを原料にバイオエタノールを生産する実験設備を二見工場(明石市)に建設する。費用は5億3,000万円で当初は800L/年程度の生産を見込む。
 廃木材を原料とするプラントを07年1月堺市で発足させたバイオエタノールジャパン関西は、09年までに生産能力を3倍の4000kL/年に引き上げる。3〜4年後に単年度黒字を目指す方針を明らかにした。今後は更に生産効率を高め、国内外で製造プラントの納入を目指す。
 この他関西では、月桂樹(京都市)が清酒酵母を使ってバイオエタノールを製造する技術を開発。装置メーカーと共同で試作機作りに乗り出すことにした。又清酒大手の大関や神戸大学など7団体は、廃油など植物油脂からバイオデイーゼル燃料を開発する。大関がリパーゼと呼ばれる酵素を麹菌を活用して短時間で大量に培養する技術を開発、酵素を安価に提供し、プラント会社や大学などと協力して2年後を目途に生産装置を作ることを計画している。更に熱性酵素研究所(大阪市)は高温でも反応が衰えない発酵用の酵素を開発した。生産効率を10倍に高められるとしており、3年後の実用化を想定している。
(日本経済新聞08年8月8日、8月9日)

非食料の稲わら・廃材からの安価なバイオ燃料生産技術
 東京工業大学の原教授らは、稲わらや廃材などセルロース系バイオマスからバイオエタノールを安く生産する手法を開発した。独自の触媒を使い、原料を沸騰水に入れるだけで分解し、エタノールのもとになる糖ができる。現在の分解法に比べて3割以上コストが下がり、全体の生産コストもトウモロコシなどを原料とするのと同等になりそうである。
 バイオ燃料の生産は、植物原料を糖に分解する"糖化"という処理が必要であるが、セルロース系を分解するのは手間やコストがかかり、そのため稲わらや廃材などからのバイオ燃料生産は、トウモロコシやサトウキビを原料とする場合に比べて競争力が低かった。新触媒は"固体酸触媒"で、これはセルロースに強く吸着したり、確実に切り刻んだりする複数の分子を表面に張り付けた炭素材であり、分解効率が飛躍的に改善する。水に触媒と稲わらを混ぜて100℃に加熱すると、触媒とセルロースが反応して糖が水に溶けだすので、粉末の触媒だけを取り除けば、糖を含む水を簡単に回収できる。又触媒自体も安価な炭素系材料で作れるという。
 生産した糖は微生物によってエタノールに変換されるが、セルロースを分解して得られた糖は医薬品や樹脂の原料にも転用することができる。同研究室では、化学関連企業と組み、同手法の工業化に向けた研究を始める計画である。
(日本経済新聞08年8月25日)

GMがタイに代替燃料拠点を建設
 アメリカのGMはタイで石油代替燃料に対応した生産設備や開発で大型投資に踏み切る。バイオ燃料に対応した新型デイーゼルエンジン工場を建設する他、タイ政府などと自動車用代替燃料を開発する。
 バイオデイーゼル燃料に対応した新型エンジン工場は8月13日、タイ中部のラヨーン県で着工、4億4,500万ドル(約480億円)を投じる。年間10万基以上の生産能力を整え、2010年の操業開始を目指す。07年に株式の50%を取得したイタリアのエンジン開発会社"VMモトリ"が開発したバイオ燃料で加速性能の高いターボ・デイーゼルエンジンを投入。排気量2500cc、2800ccの2種を生産、10年に量産開始予定のピックアップトラック"コロラド"の次期モデルに搭載する。
 更にタイのエネルギー省やタイ石油最大手PPT、タイ自動車産業協会と、バイオ燃料、CNG、LPG等を効率良く自動車に用いる研究やFCV開発など、自動車用代替燃料の開発で提携することを合意、14日に覚書を交わした。
(日経産業新聞08年8月18日)