第145号 モバイル用DMFCで最高出力密度
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.SOFCの開発と実証事業
3.PEFCおよびDMFC要素技術の研究
4.家庭用PEFC事業および実証試験
5.FCV最前線
6.水素ステーション技術
7.水素生成・精製技術の開発
8.水素輸送・貯蔵技術開発
9.水素製造ポテンシャル
10.モバイル向けマイクロFCの開発
11.新型FC
12.水素タウン構想
13.FC関連事業の展開
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
 総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会(柏木部会長)は4月18日、定置式FCやクリーンエネルギー自動車について有識者からヒヤリングを行った。クリーンエネルギー自動車では日本自動車工業会がEV、プラグインハイブリッド車、FCVなどの動向を紹介、中長期的に期待される次世代自動車としてEVとFCVへの期待が高いとし、新型電池など官学民による長期的な基盤技術研究の促進を訴えた。小池松下電器産業副社長は、09年度から家庭用FCが商用化されることをにらんで市場形成の初期期間を対象とした国の補助金を求め、中上住環境計画研究所長は、集合住宅向け定置式FCの標準化を進めるべきであると述べた。福岡水素戦略を説明した麻生福岡県知事は、先進地域を国が集中的に後押しする特区型支援制度を提言した。(電気新聞08年4月21日)

2.MCFC事業の展開
(1)新日石
 新日本石油は4月23日、NEFが実施する"08年度SOFC実証研究"プロジェクトに参加すると発表した。改良を加えたLPG仕様2台、灯油仕様1台の合計3台を試験運転する。(化学工業日報08年4月24日)

(2)NEF
 NEFは07年度に続いて08年度のSOFC実証研究システム提供者と設置・運転試験者を採択した。メンテナンスを含めたシステム提供者としてメーカー3社36台、試験場所とデータを提供する設置・運転試験者としてエネルギー事業者など7社36サイトを決定した。SOFCの出力は700W、900Wの2種類で、燃料は都市ガス、LPG,灯油の3種類がある。システム台数が最も多いのは京セラで都市ガス仕様の30台を提供、三洋電機からFC事業を買収した新日石がLPG、灯油で合計3台、TOTOも都市ガスで3台を提供している。サイト数で最も多いのは大阪ガスで、一戸建て・集合住宅で25サイトを提供、東京、北海道、西部の各都市ガス会社、新日石、TOTOが1〜2サイト、東京電力は一戸建て向けに都市ガス1台を設置する。(電気新聞08年5月2日)

(3)日本特殊陶業
 日本特殊陶業は5月12日、700℃の低温動作型1kW級SOFCモジュールで、発電効率60%を達成したと発表した。開発したスタックは、都市ガス燃料を水蒸気改質する改質触媒層や発電残存燃料と残存空気を燃焼させる燃焼層を内臓、燃焼層はスタック上下に配置し均一な温度による均一な発電を可能にした。この一体化スタック構造によって、燃料極の高効率と高出力を両立しつつ発電セル数を16枚に削減することができた。又燃料極における気孔率の最適化により、高電流密度の条件下でも80%超の燃料利用率まで出力電圧を維持した。こうして高い出力密度によって有効発電面積100cm2のセル16枚で1kWの出力を実現、従来の平板型セル(〜40枚)や小型筒状セル(100〜200本)から大幅にセル数を削減するとともに、各セルへの燃料分配のばらつきを抑えた。燃料流量増大による圧損と集電抵抗によるジュール熱の増大は、通気性と電気伝導性に優れた多孔性金属を燃料極集電体に採用することによってクリアした。この第1段階の試作機において、都市ガス燃料で定格発電出力時におけるDC端発電効率が最高57%に達した。今回の試作機に続いて08年内にも第2段階の試験機を開発、09年度以降の社外実証試験に向け信頼性確認と量産化を検討することにしている。又現在年内を目途にパワーコンデイショナーや脱硫器、温水製造用排ガス熱交換器を収容したユニットの開発も進めている。(日刊工業新聞、化学工業日報08年5月13日、電波新聞5月16日)

3.PEFCおよびDMFC要素技術の研究
(1)横浜国大
 横浜国立大学の太田教授は、脱白金触媒を開発した。これは部分酸化したタンタル炭窒化物(TaCNO)とカーボンブラックなどの導電材を混合したもので、これにより240mW/cm2の出力密度を達成した。ジルコニウム炭窒化物系(ZrCNO)では、より高い開放端電圧が得られている。太田教授は早くから正極触媒に着目、低いpH値でも安定で酸素還元能を有する酸化物系物質を探索してきた。触媒調整を最適化することによって更に触媒性能が上がる可能性があり、同教授はこの新規な触媒の実用化について「白金と同等の性能を目標としているが、現段階でも表面粗度を上げる工夫をすれば、原理的には実用化は可能と思う。ただ商業生産の方法を検討することが必要」と述べている。(化学工業日報08年4月21日)

(2)東工大
 東京工業大学資源化学研究所の山口教授は、細孔フィリング膜においてメタノールクロスオーバーを1/300にまで低減することに成功した。この膜はポリイミド製の基材を使った厚さ10〜100μm程度の膜に100nmの細孔を空け、そこに電解質ポリマーを充填する構造で、同教授は「モノマーを充填し、細孔内重合を行う方法と重合後のポリマーを充填する方法があるが、高密度に構造を制御して充填することが重要となる」と述べている。細孔内部に更に高次構造を形成させることにより、束縛水の状態で水分を保持できることに大きな特徴があり、その結果としてメタノールの透過をほぼ完全に抑えながらプロトンの透過可能なチャンネルを多数確保するという理想的な状態が達成される。同教授は更に「今回開発した技術を基に燃料メタノールの透過度を1/500以下に下げる目途もつけている。耐熱性をあげるため、ポリマーの素材も芳香族系に変えたことで、車載用や定置用としても使える可能性が高まった」と話している。(化学工業日報08年5月12日)

(3)九大
 九州大学の許斐教授等の研究チームは、PEFCの発電量を最大で1.5倍に高める技術を開発した。酸素供給効率を上げることにより電流密度を高め、発電量を増大させた。酸素はセパレーターに刻まれた溝からカソードに供給されるが、通常は1本の溝を流れる間に、溝から漏れた酸素が拡散層を通過して電極に接触している。研究チームは、くし状の溝が2本かみ合うようにして、一方の溝から酸素を入れ、他方の溝から酸素を出すように改造した結果、全ての酸素が一旦溝から離れるため、電極と触れる酸素の量が増えて電流値が増大した。2.2cm角のPEFCを試作、拡散層とセパレーターを密着させ、空気の圧力が均一になるように最適化したところ、電流密度は従来の1.5A/cm2から2.3A/cm2にまで向上した。(日経産業新聞08年5月23日)

4.家庭用PEFC事業および実証試験
(1)日本ガス協会
 日本ガス協会の野村会長(大阪ガス会長)は4月17日の定例記者会見で、2030年を目標とするガス排出削減計画を発表したが、そこで家庭用に燃料電池約300万台の導入を図るなど、顧客先でのCO排出量を約4,800万トン(原油換算で約1,200万kL)削減できると述べた。(日刊工業、西日本新聞08年4月18日)

(2)NEF
 NEFは08年度の定置式PEFC大規模実証事業の助成交付先を決定した。エネルギー供給事業者16社が設置する1,120台に対し1台220万円を上限に助成する。最も多くのPEFCを設置するのは新日石の497台で、次いで東京ガスが276台を設置する。荏原製作所や松下電器産業、新日石と三洋電機の合弁会社ENEOSセルテックなど5社がシステムを提供する。燃料は都市ガス、LPG,灯油の3種類。05年度からの累計台数は3,307台となる。(電気新聞08年5月7日、日刊工業新聞5月19日)

(3)東邦ガス
 東邦ガスは5月9日、PEFCコージェネレーションシステムのモニター評価を行うため、08年度にトヨタ自動車、荏原製作所、松下電器産業の3メーカーから計34台を導入すると発表した。累計では124台になる。最新機器の省エネ性などの性能や信頼性を確認する他、耐久性、施工面での低コスト化の追及に重点をおき、商品化に向けた評価を実施する。(電気新聞08年5月12日、日刊工業新聞5月13日)

(4)トヨタ
 トヨタ自動車は、定置式PEFC大規模実証事業に参画する東邦ガスに対して、アイシン精機と共同開発してきた発電出力1kW級PEFCコージェネレーションシステムを、継続して提供すると発表した。08年度は既存ユニットを改良、熱回収率を20%向上して家庭での1次エネルギー消費量やCO排出量の低減を図ったシステムを供給する。提供台数は24台。東邦ガスは東海3県の一般家庭にシステムを設置し、利用データなどを収集する。(日経産業、日刊自動車新聞08年5月12日、化学工業日報5月13日)

(5)大ガス
 大阪ガスは、家庭用FCコージェネレーションシステムのモニターを募集する。対象は戸建て住宅で募集件数は約70、熱量や発電量など1年間分の運転データー収集に協力してもらう。募集は6月30日まで。(読売、朝日、電気新聞08年5月13日)

5.FCV最前線
(1)北京国際自動車ショウ
 中国最大規模の自動車展示会である北京国際自動車ショウが4月20日に開幕、22日から一般公開が始まり28日に閉幕する。海外勢、中国メーカー合わせて約200社から約890台が出展された。日米欧のメーカーが新型車やコンセプト車をアピール、08年には1,000万台に達すると予測される世界第2位の市場に成長した中国で需要喚起を狙う。ホンダはFCV"FCXクラリテイー"を展示した。(日経産業新聞08年4月18日、産経、中国新聞、フジサンケイビジネスアイ4月21日、電気新聞4月22日)

(2)北見工大
 北見工大が製作した"FCカート"の試乗会が4月19日札幌市中央区道心プラザで開催された。同大機械システム工学科の佐々木教授が、FCVの仕組みを説明した。(北海道新聞08年4月19、20日)

(3)FCCJ
 FCCJによると、同協議会に参加する自動車メーカー等各社は2015年にFCVの事業化を決める方針で足並みを揃え、信頼性向上やコストダウンなどを急いでいる。ハイブリッド車やEVが普及期に入る中、FCVは価格面などの課題を積み残したままであるが、EVでは長距離を走る用途には向かないとして開発のピッチを上げる。FCCJが車両側の事業化時期を明示する背景には、巨額な費用を要する水素インフラの整備をし易くするという狙いがある。エンジニアリング振興協会によると、水素ステーションを1ヶ所整備するのに必要な資金は、土地代を除いて6〜7億円であり、FCVの確実な普及が見込めないと整備が進まない。このため、自動車各社は足並みを揃えて2015年に「少なくとも事業化の方向性を示す」ことで国による補助制度を含めてインフラ整備を後押しする意向である。FCV実用化の課題は耐久性、コストダウンおよびインフラ整備であるが「コストを下げると耐久性が犠牲になる」などの問題があり、なお困難が残されている。(日刊自動車新聞08年4月25日)

(4)ホンダ
 ホンダは5月13日、東京南青山の本社で新型FCV"FCXクラリテイー"を国内で初公開した。小型化したスタックを車体中央に置く新設計を採用、今夏にアメリカ、今秋に国内でリース販売する。新型車はFCをあらゆるタイプの車両に搭載可能な技術として開発を進めるホンダの姿勢を示すため、スポーテイーなセダンベースのモデルとした。FCスタックの他、駆動モーター、リチウムイオン電池、水素燃料タンクなど各部で小型・軽量化し、最高時速160km/h、作動温度−30℃などの走行性能を実現、航続距離を620kmに向上させた。(毎日、日刊自動車、北海道新聞08年5月14日、産経新聞5月15日)

6.水素ステーション技術
(1)大阪ラセン管工業
 大阪ラセン管工業は高圧仕様(70MPa対応)の金属製フレキシブルチューブを開発した。ステンレス薄板を細かく折りたたんで蛇腹状に加工した構造のチューブで、ブレードと呼ばれるワイヤを編みつけており、圧力が加わった際に膨張を抑える仕組みになっている。したがって、安全でフレキシブル、女性でも簡単に折りたためることができる。水素ステーションでの用途を想定、既にサンプル出荷した。(日刊工業新聞08年4月23日)

(2)JHFC
 JHFCはFCVに水素を効率的に充填する技術を開発する。現在はFCVごとに水素流量をあらかじめ変えて充填しているが、外気温によって圧力を自動制御する充填方法を開発し、どのメーカーのFCVでも同じように水素を充填できるようにする。1部の水素供給施設で試験運用を始めており、08年中に35MPaの充填圧力で技術を確立、将来は70MPaに対応できるようにする。JHFCで整備された水素ステーションは現在国内に12ヶ所あり、50〜60台のFCVや水素自動車が利用している。施設では水素に圧力をかけて車両側のタンクに充填するが、その時タンク内の温度が上がるため、各社は水素ガス温度が安全基準の85℃を超えない範囲で最大流量を個別に定めている。この方式だと車両ごとに流量を設定するために連続充填の妨げになる。そのため、外気温やタンク内温度に応じ、流量を最適化する技術を開発することにした。既に千住SSで試験に入っており、08年中には必要な技術を確立する。(日刊自動車新聞08年5月12日)

7.水素生成・精製技術の開発
(1)東ガスとMHI
 東京ガスと三菱重工業は、都市ガスから水素を効率よく精製する技術を開発し、製造装置を従来型に比べて1/3程度に小型化することに成功した。純度99.999%の水素を81.4%の効率で製造できるので、効率向上により使用する都市ガスの消費量は15%程度少なくなる。水蒸気改質に特殊な合金膜を使って水素だけを分離する方式であり、水素の精製工程が不要になるため、大幅な小型化が実現した。(日本経済新聞08年4月28日)

(2)バージニア工科大
 多糖類のデンプンに水と酵素を加えて効率よく水素を生成する技術を、アメリカ・バージニア工科大学の研究チームが開発した。張以恒(チャンイヘン)博士らのチームは、デンプンと水に、よく知られている13種類の酵素を加え、人間の体温ほどの温度に保つなど条件を工夫した結果、これまで知られている反応より3倍も効率よく水素が発生した。水素ボンベではなく、より安全で利便性の高い砂糖タンクと反応器によってFCVを走らせる可能性があると述べている。張博士らは、水素の発生効率を上げることができれば「8〜10年先なら、砂糖自動車に使えるほどの効率にできるのではないか」という。(朝日新聞08年5月1日)

8.水素輸送・貯蔵技術開発
 九州工業大学と産業技術総合研究所、津山工業高等専門学校は、水素タンクに適した軽量高性能の複合材料を開発した。CFRPの間に粘度薄膜をはさんだ構造で、ガス漏れを防ぐ能力は金属に近い。材料を重ねて150℃に加熱、数気圧の圧力で押し付けるだけで作れ、接着材などは不要である。厚さ1mmの板を50気圧の水素ガスをタンクに使った場合、漏れる量は年間0.01%で、ガス漏れを防ぐ能力は従来の樹脂材料の100倍以上で、金属と比べても差はなかった。−196℃の低温に100回さらしたり、1万回ひずみを加えても、ガス漏れを防ぐ能力に変化はなかった。(日経産業新聞08年5月19日)

9.水素製造ポテンシャル
 中国地方のコンビナートが外部に供給できる水素の量は、年間9億4,000万m3になり、FCV約10万台分の燃料を賄う能力があることが、中国経済産業局の調査で分かった。同局は水素ステーションなどのインフラ整備にコンビナートを活用する構想を近く決定する。調査はコンビナートに立地する石油精製や化学、鉄鋼などの主な29工場を対象に07年12月から08年3月にかけて実施した。(中国新聞08年4月25日)
 中国経済産業局は、中国地方のコンビナートを活用した水素供給インフラ構想"西日本水素社会形成イニシアテイブ"を策定した。スーパー特区の認定を目指す。構想では、当面10ヶ所程度の水素ステーションを整備、水素を使うトラックやローリー車、路線バスの実証試験を誘致、水素船の導入も支援する。又コンビナートの水素を住宅団地などに供給するためのパイプラインの整備も計画、家庭用FCに直接水素を送り込めるようにする。(中国新聞08年5月20日)

10.モバイル向けマイクロFCの開発
 シャープは5月15日、携帯電話、ノートパソコンなどモバイル機器向け高効率マイクロDMFCを開発したと発表した。リチウムイオン充電池に比べて体積では8割、重さでは約4割にまで小型化し、より長時間連続で動作できる。発電部を構成する単位電池の形状を薄い短柵状にし、薄型の発電板を1層から3層に増やして空気に触れる表面積を約7倍に増やし、DMFC内部を空気がスムーズに流れる構造にしたこと等により、容積当りの出力密度が0.3W/cm3となった。新技術の実用化時期は未定。(読売、朝日、毎日、産経、日本経済、電気、日経産業、日刊工業、電波、東京、中日、中国、西日本新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報08年5月16日 朝日新聞5月17日)

11.新型FC
 大分大学天尾准教授の研究チームは、植物に含まれるデンプンを燃料に、光を当てて発電する新型のFCを開発した。発電過程でCOを排出しない。開発したFCは、デンプンや酵素などを含む溶液を、白金触媒および光合成に使われる色素と光触媒を塗布した透明電極で挟んだ構造である。透明電極に光を当てるとクロロフィルと呼ばれる色素が光を集め、光触媒から電子が放出される。電子は白金触媒に到達して、溶液中に含まれる酸素と反応して水になる。他方、デンプンは溶液中に含まれるアミラーゼと呼ばれる酵素などによって分解され、その過程で電子を出し透明電極に電子を補う。排出されるのはデンプンが分解された結果生じるグルコン酸のみである。グルコン酸は食品添加物などに使われており、無害で再利用が可能。具体的には3cm角のFCを試作、ソーラーシミュレーターで太陽光を模した光を当てたところ、電圧600mVで20μA/cm2の電流が得られた。電流値は小さいが、今後改良する余地があると述べている。又草木の主成分であるセルロースも利用できるといい、今後実験で確かめる予定である。(日経産業新聞08年5月21日)

12.水素タウン構想
 福岡水素エネルギー戦略会議は5月2日、水素を燃料とする家庭用FCで一般世帯の照明や給湯を行う"水素タウン"を前原市に整備するのに備えて、同市に"福岡水素タウン前原事務所"開設した。同事務所には民間企業から7人程度が常駐、5月16日以降に計8回開く住民説明会などに対応する。09年3月まで開設の予定である。(西日本新聞08年5月3日、5月17日)

13.FC関連事業の展開
(1)日清紡
 日清紡は関東地区にPEFC用セパレーターの新工場を建設する方針を固めた。同社は美合工場(岡崎市)に生産設備を有しているが、家庭用PEFC市場の立ち上がりなどを受け、09年夏以降に需要が拡大すると見込まれるため、量産工場を新設し需要増に対応する。夏までに正式決定するが、研究開発拠点がある千葉地区が最有力と見られる。同社のカーボン系セパレーターは、従来のカーボン成形品に比べて約2倍の強度と金属セパレーター並の厚さ、それに柔軟性を持つことが特徴である。(化学工業日報08年5月16日)

(2)BASF
 ドイツの化学メーカーBASFは、5月23日、三重県四日市市にある研究施設内に"FC用途開発センター"を開設した。センターでは国内のFCメーカーと協力して部品を開発し、国内市場に本格参入する。スタッフは研究担当3人とマーケッテイング担当1人、鈴鹿高専や大同工業大とも提携する。(中日新聞08年5月24日)

 ――This edition is made up as of May 24, 2008 ―――

A POSTER COLUMN

クールアース―エネルギー革新技術の検証
 (1) MACC発電
 高効率コンバインド火力発電(MACC : More Advanced Combined Cycle)は、圧縮空気の中でガスを燃焼させるガスタービンとその後段に蒸気タービンを組み合わせたLNG仕様火力発電システムであるが、そのガス温度が1,500℃と高くなっており、1990年代後半から実用化された改良型コンバインドサイクル(ACC)に比べて、温度を200℃以上上昇させている。MACC火力発電の最新施設が07年から東京電力川崎火力発電所において順次運転を開始したが、その発電効率は59%に達した。
(フジサンケイビジネスアイ08年4月21日)

(2) 高効率CO2回収技術
 関西電力は1990年から三菱重工業と共同で、COの分離・回収技術の研究に着手、既に技術を確立して91年から同社南港発電所内に設置したパイロットプラントで実証試験を通じた研究開発を進めている。
 この技術は化学反応により排ガス中のCOと吸収液とを結合させて取り出す"化学吸収法"であるが、関電は94年に既存吸収液より約22%効率が高まる吸収液"KS-1"を開発、更にシステム設計に改良を加えることにより、プラント全体で当初より約35%高い回収効率を実現した。同技術は、回収したCOを活用して尿素製造する化学肥料工場などに導入されており、関電では今後もより高効率の吸収液開発などにより、分離・回収コストの低減に向けた研究開発を続ける意向である。
 なお、関電グループの環境総合テクノス(KANSO)は07年度まで北海道夕張市で行われた炭層固定によるCO固定化技術の実証プロジェクトに実施主体として参画した。

(3) MCFC利用CO2回収型発電システム
 中国電力は三隅発電所においてMCFCを利用し、発電所排ガスのCO回収型発電システムの開発に取り組んでいる。

(4) EV研究加速
 九州電力はEVに関する研究開発を進めている。08年2月から三菱自動車製の次世代型EV"i MiEV"10台を総合研究所や支店、営業所に配備した。本格普及を視野に、走行データを収集、又自社開発の急速充電器やLiBの評価も実施する。
(電気新聞08年4月23日)

多様化する環境対応型自動車導入シナリオ
 自動車やその動力源のこれからをキーワードで示すと、先ず"ハイブリッド車"、燃料噴射システムなどエンジンの改善によって注目を集める"クリーンデイーゼル車"、ガソリンや軽油にバイオエタノールを混入した"バイオ燃料"、家庭用電源から充電できる"プラグインハイブリッド"、EV,水素を活用したFCVを挙げることができる。
 しかし、既に実用化されているハイブリッド車やクリーンデイーゼル車をみても、各国の燃料事情やエネルギー政策の差異によって普及に大きな差が生じている。新車販売の過半数をデイーゼル車が占めるヨーロッパの場合は、軽油にかかる税金が安いという事情がある。他方、アメリカはこれまでほとんどクリーンデイーゼルには目を向けず、バイオ燃料を推進し、将来的にはプラグインハイブリッドに力を入れようとしているのは、ガソリンよりも軽油の価格が高いことによる。日本は当面CO削減対策としてバイオ燃料の導入を目指すとともに、クリーンデイーゼル車の普及にも本格的に乗り出そうとしており、将来をにらんだFCVの開発も進めている。
 自動車燃料に詳しい専門家は「CO削減の実効性を考えると、サルファーフリー(硫黄分が10ppm以下)軽油基盤が整っていることもあり、クリーンデイーゼル車へのシフトが効果的」「デイーゼルハイブリッド車も有望」と分析している。
 FCVについては事業化のタイミングを2015年頃においていることがJARIのヒヤリングで分かった。FCVの開発優先度が後退したと云えそうである。
 (フジサンケイビジネスアイ08年4月25日、電気新聞5月7日)

熱電素子を使ったEVの開発
 大阪産業大学(大東市)の山田修教授らのグループは5月9日、都市ガスを使って発電し駆動する電気自動車(EV)を開発したと発表した。燃焼で得た熱を熱電素子(TEG)によって電気に変え、モーターを駆動する方式で、効率は低いが、草木バイオマスでも走行することが可能である。燃やされたガスの燃焼熱は熱電モジュールの高温面を加熱、その裏面をラジエーターの循環水で冷却することによって発電するので、軽量かつ静粛、そして故障が少ないのも特徴である。
 発表されたコンセプトモデルは、バイオガスの代替燃料として模擬バイオガス(ブタン、プロパン)を使用、最高出力は150W、性能は最高時速20km/h、燃料ボンベは4.7L、最大2時間走行可能と発表されている。TEGは東芝から、ガスを燃やして熱を取り出す高負荷ガス燃焼器はリンナイから供給を受けた。 現在、大学では高温加熱水蒸気を用いて草や木、廃プラスチックの完全ガス化によるバイオガス製造の研究開発を行っている。
(日経産業新聞08年5月12日、日刊自動車新聞5月14日)

バイオ燃料技術革新計画案
  経済産業省と農林水産省は07年11月にバイオ燃料技術革新協議会を発足させ、08年春に"バイオ燃料技術革新計画案"をまとめた。
 同計画案では、免税を視野にいれた価格競争力を勘案し、製造コスト100円/Lを目標とする"バイオマス・ニッポンケース"のシナリオを導き出し、15年には年産1.5万kLのエタノール生産を目指そうとしている。同ケースでは、エタノール生成の原料を国内未利用バイオマスとしているが、農水省の調査では国内未利用バイオマス賦存量は下表の通りで、ポテンシャルの大きいものは稲ワラ類や間伐材等林地材、古紙などとなっている。


                  賦存量(万トン/年)  集約性(発生場所)  既利用率(%)  利用可能量(万トン/年)   
草木   稲ワラ、籾殻、麦わら     1,400    農地、ライスセンター     3          980 (70%)
木質   林地残材             340         林地          2          330 (98%)
木質   木材工場等残材        430         工場          95           20 (5%)
木質   建設発生木材          470         工場          70          140 (30%)
その他   古 紙            3,063        都市部          91          279 (9%)

 国内に薄く、広く賦存するバイオマスを活用する場合、製造前の収集プロセスや貯蔵施設、運搬などがコストを大きく左右することから、この領域での技術ニーズが発生する。特に原料に季節性があり、稼動時期が限定される場合には、大きな設備が必要になり、非稼動時の人件費、光熱費で無駄を生じる可能性がある。
(建設通信新聞08年4月28日)