第144号 家庭用PEFCで発電効率39%(LHV)
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.MCFC事業の展開
3.SOFC開発と事業計画
4.PEFC要素技術の開発と事業展開
5.家庭用および定置式FCの実証試験
6.家庭用FCの事業展開
7.FCV最前線
8.FC動力移動体
9.水素ステーションおよび水素製造事業
10.水素生成・精製技術の開発
11.水素貯蔵・輸送技術の開発
12.携帯用FCおよび関連技術開発
13.水素・FC関連技術開発と事業展開
14.水素・FC関連事業の展開
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)環境省
 環境省は4月1日、グリーン購入法に基づく08年度の環境物品の調達方針を発表した。知床国立公園内7ヶ所に計36kW程度の太陽光発電設備を設置するほか、一般公用車にハイブリッド車7台、FCV2台、低燃費車18台を調達する予定である。(電気新聞08年4月2日)

(2)NEDO
 NEDOは"PEFC実用化戦略的技術開発/劣化機構解析とナノテクノロジーを融合した高性能セルのための基礎的材料研究"と"FC先端科学研究事業"の委託予定先を決定した。(電波新聞08年4月2日)

2.MCFC事業の展開
 丸紅の100%子会社である日本燃料電池社は、MCFCの国内市場開拓を強化する。バイオマス燃料への注目が高まる中、有機廃棄物から発生するガスを発電に利用するシステムが受け入れられて、03年の販売開始以来、国内で8件、海外で35件と納入実績を伸ばした。更に08年には9件、09年には1件納入することが決まっている。多様な燃料源の中でも、生ゴミなどの有機系廃棄物の燃料化が活発化しており、同社はバイオガス発電システムを梃子にMCFCの普及拡大を図る意向である。(化学工業日報08年3月25日)

3.SOFC開発と事業計画
 TOTOは出力1kW当たり100万円の低価格な家庭用SOFCを開発した。同社が本業の衛生陶器で培った量産技術を応用することにより大幅な低価格を実現した。近く実証試験を開始し、2011年度中に発電・給湯機能を備えた装置を発売する予定である。又家庭用に先駆けて、08年4月にはアメリカの電源メーカー向けに出力75Wと200Wの携帯機器向け電源装置の供給を始める。(日本経済新聞08年3月31日)

4.PEFC要素技術の開発と事業展開
(1)日立マクセル
 日立マクセルはPEFC向けに、カソード用白金使用量を約半分に減らせる技術を開発した。白金に金を混ぜて微粒子化し、触媒としての性能を上げた。電極の素材となる炭素粒子に、白金の化合物と金の化合物を混ぜ、クエン酸を使って化学反応させると、炭素粒子の表面に直径2〜3nmの白金と金でできた粒子ができる。白金と金の比率は4:1である。マクセルは磁気デイスクで培ったナノ粒子合成技術を応用した。この炭素粒子を固めて電極にする。ナノ粒子の合成が白金の電子状態を変え、触媒機能を高めると解釈している。この粒子を使った電極は、白金が100%の触媒に比べて、電圧0.6Vの場合、約3.2倍の電流を流すことができる。従来から触媒の反応を高めるために鉄やコバルトなどを添加する方法があったが、電極付近は酸性が強く、これらの元素は発電中に溶けてしまう問題があった。金は酸に溶けにくく、耐久性は白金100%に比べてほぼ8割を確保した。同社は今後白金と金の混合比率を変えたり、他の添加物などの研究を進め、高い反応性と耐久性の両立を目指す。(日経産業新聞08年3月27日)

(2)富士新素材開発
 韓国ACMの代理店である富士新素材開発(東京都)は、PEFCセパレーター用炭素成形体の市場開拓を強化する。ACMの製品は樹脂などの粘結材を使わないため熱収縮が少なく、多様な元素を均一に拡散できることからニーズに合わせた特性を付与できる利点を有している。ACMの炭素成形体は、プリフォーム工程で特殊処理を加えることによって粘結材を不要としている。又プリフォームは気孔サイズを制御できるために、拡散させる元素を最適化することができる。ガス流路も金型成形可能で、厚みは0.25mm以下の薄型化が可能としている。成形体の生産は常温で加圧成形した後、焼成を経て仕上げ加工を行う。セパレーター用としてはアルミニウム・チタン・銅を複合化したグレードを開発しており、特にチタン・銅の複合品は耐食性が高まるだけではなく、体積抵抗が7〜8mΩcmとアルミ複合品などに比べて大幅に低くすることに成功している。ACMは08年5月にも量産工場を立ち上げる予定で、メーター角の大型サイズの供給が可能になる。これを受けて同社は自動車向けを中心にサンプル出荷による用途開発を活発化していく。(化学工業日報08年4月4日)

5.家庭用および定置式FCの実証試験
 東京工業大学と東京ガス、新日本石油の共同チームは、SOFCとPEFCを組み合わせたFCシステムによって発電効率を高める実証試験を09年に東工大大岡山キャンパスで始める。東工大統合研究院の荒木特任教授らが同キャンパスに09年に開設する交流施設(電力容量900kW)の1部に10kW程度を賄うFCを設置、3年間の実証運転試験によってデータを取得し、集合住宅や集落へFCを大量に導入する可能性を調査することにしている。実証実験ではSOFCを水素で運転、発電で使い切れなかった水素をボンベに一時貯蔵するとともに廃熱を水素生成に利用し、これらの水素をPEFCに燃料として供給する。廃熱を水素生成に利用することによって発電効率が60%程度にまで高まると期待している。(日本経済新聞08年3月28日)

6.家庭用FCの事業展開
(1)各社の量産態勢
 家庭用PEFCの市販化に向けて各社が量産態勢を強化している。松下電器産業は、滋賀県草津市に専用工場を建設中で、08年中に本格生産に入る。09年度以降に生産を増強する方針である。荏原製作所は07年、藤沢工場の生産ラインを増設し、生産能力を2000台/年に拡大する。生産計画は08年度の数百台規模から09年度に1000台以上、10年度には更にライン増設が必要になる数千台にする予定。三洋電機は新日本石油と事業統合し、今後の量産に向けて新会社を4月1日に設立した。(毎日新聞08年4月5日)

(2)東京ガス
 東京ガスは4月10日、神奈川県知事公舎に松下電器産業と共同開発した家庭用PEFCを設置、4月から稼動を開始したと発表した。(電気、日刊工業新聞08年4月11日、電波新聞、化学工業日報4月15日)

(3)松下電産
 松下電器産業は4月14日、750Wでの発電効率が39%(LHV)に達する家庭用PEFCを開発したと発表した。一般家庭に導入した場合、年間約3,260kWhのエネルギー削減が可能という。機器の寸法はFCユニットが幅78cm、奥行き40cm、高さが86cm、貯湯ユニットが幅48.6cm、奥行き75cm、高さ188.3cmである。08年度は実証実験用に草津市の工場で数百台を生産し、09年度から販売を始める予定。09年度の市場予測は5,000台前後。「現状では本体価格が1台数百万円となるが、将来(15年度)には年間6〜10万台を生産して60万円まで下げたい」と話している。(読売、朝日、毎日、産経、日本経済、電気、日経産業、日刊工業、電波、東京、京都、中国新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報、河北新報08年4月15日)

 松下電器産業の松下ホームアプライアンス社は、世界最高の発電効率に加えて、10年以上の耐久年数を想定した4万時間の運転と、起動停止4,000回の耐久性を実現した家庭用PEFCシステムを開発した。(建設通信新聞08年4月17日)

7.FCV最前線
(1)GM
GMのバーンズ副社長(研究開発・企画担当)は4月2日、全米水素協会(NHA)の会合において、カリフォルニア州の環境への取り組みに応じる形で、2012年から14年にかけて同州で1,000台の水素FCVを走行させる計画を明らかにした。(電気、日刊工業新聞08年4月4日)

(2)ホンダ
 ホンダは4月16日、新型FCV"FCXクラリテイー"が、17〜19日にツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)で開催される"インデイカー・シリーズ第3戦インデイジャパン"のオフィシャルカーとして採用されると発表した。(日刊自動車新聞08年4月17日)

8.FC動力移動体
 ボーイング社は4月3日、FCを搭載した飛行機の試験飛行に成功したと発表した。主翼の端から端までの長さが16.3m、重さが約800kgの2人乗りプロペラ機で、リチウムイオン電池とのハイブリッド型動力である。電気でプロペラを回転させ、高度1,000mまで上昇した後、水素FCからのみの電気により100km/hで約20分間飛行した。現段階では小型機か無人機に限られる。(読売、毎日、東京、中日、中国新聞08年4月4日、日本経済新聞4月5日、電気新聞4月7日、朝日新聞4月9日)

9.水素ステーションおよび水素製造事業
 岩谷産業(大阪市)は、同社のグループ企業である岩谷瓦斯(大阪市)千葉工場内に、約37億円を投じて液化水素の製造プラント(製造能力:3,000L/h×1系列)を建設する。08年6月頃着工、09年6月の稼動を目指す。液化水素は国内の宇宙ロケットやFCV、半導体、金属、ガラスなど幅広い産業に活用されている。近年は半導体や太陽電池などで需要が増加しており、供給体制の確立を目的に、関西地区(3,000L/h×2系列)に次いで関東地区に拠点プラントを建設することにした。(日刊建設工業新聞08年4月2日)

10.水素生成・精製技術の開発
(1)PEC
 石油活性化センター(PEC)は3月19日、08年度事業計画を発表したが、その中で製油所での効率的な水素製造や有機ハイドライドを用いた水素回収などの新規事業を開始することが含まれている。新規事業"将来型燃料高度利用技術開発事業"では8億6,000万円を計上した。ナフサを原料としたFCV用高純度水素を製油所で製造するため、水素とCO2を同時に分離できる最適な膜システムの検討を行う。又有機ハイドライドから高純度水素を回収するコンパクトな反応器を開発するほか、市販灯油を原料とした水素製造技術の開発を実施する。(化学工業日報08年3月21日)

(2)萩尾高圧容器
 萩尾高圧容器(新居浜市)は、自社開発したLPGボンベに外付けするFC用脱硫装置が、市販LPGを使って2年間、すなわち15,000時間以上にわたってFCへの影響なしに稼動可能であることを実証した。又100〜1,000ppmの硫黄濃度を平均10ppmまで低下させることに成功した。実証運転ではボンベのLPGを使い切る条件で家庭用PEFCシステムを運転した。09年にも始まるFCの一般販売に合わせ、同装置の本格販売を目指す。(化学工業日報08年3月24日、愛媛新聞4月3日)
 萩尾高圧容器は、LPG仕様家庭用PEFCに搭載する低圧型脱硫器を開発する。燃料のLPGボンベを使い切ると容器内で硫黄分が急増し、触媒や電極の劣化が進む原因となる。低圧脱硫器の搭載により、ボンベ内のLPGを使い切ることができるようにすると同時に、PEFCの長寿命化を図る。同社は1kW級PEFCを購入し、外付け脱硫器を取り付けて市販のLPGによる実証実験を行った結果、2年以上の連続運転条件を想定して同装置を使用した場合、LPGを100%使い切れることを実証しており、今回の搭載型の開発によって家庭用FCを総合的に運用管理したいFCメーカーのニーズに応える。(日刊工業新聞08年4月16日)

11.水素貯蔵・輸送技術の開発
(1)東北大
 東北大学大学院工学研究科の岡田益男教授(エネルギー情報工学)らのグループが、水素吸蔵のための発熱量を半分程度に抑えられる水素吸蔵合金を開発した。同グループは自動車メーカーからの要望を受け、3年前から少発熱合金の研究を始めているが、従来は40〜50%を占めていたチタンを極微量に減らし、発熱が少ないバナジウムやモリブデンを中心とした合金の開発、試験では発熱量が50%程度低減された。「もし冷却する必要がなくなれば、タンクの小型化や水素貯蔵量の増大が期待され、車体の省スペース化も図られる」と述べている。(河北新報08年3月26日)

(2)JRCM・新日鉄など
 金属系材料研究開発センター(JRCM)などのグループは、70MPaの高圧水素中でステンレスなどの材料特性データの取得に成功した。高圧水素ガスが金属材料に与える影響を示すデータは世界的にも少なく、JRCM,新日鉄、住友金属工業、愛知製鋼、高圧ガス保安協会(KHK)が、NEDOからの受託によりデータ収集を進めてきた。特に新日鉄は総合技術センターに最大圧力99MPaの試験装置を設置、SUS316Lなどを対象に引張試験や疲労試験などを行ってきた。取得したデータはKHKなどが活用し、70MPa級高圧容器の基準化につなげる。(鉄鋼新聞08年3月26日)

12.携帯用FCおよび関連技術開発
 佐藤ライト工業(三重県津市)はアメリカのNASA系開発型企業"バイアスペース"と共同で、独自の超音波/レーザー溶接技術を使って、FC向けカートリッジおよびバルブ部品を開発した。接合強度および機密性を大幅に改善しており、量産化技術にも目途を得ている。開発したのはメタノール透過性を抑えたポリエチレン製の燃料カートリッジと、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂などを用いたバルブ部品である。バイアスペース子会社でFCの開発を行うDMFCセルを協力会社として、設計から製品化までを手掛けた。サムソンでは携帯用電子機器向けFCに同部品を適用する計画で、07年9月からサムソンSDIにサンプル供給を行っていたが、同部品の採用が内定した。商品化に合わせて正式受注する見込みである。(化学工業日報08年3月28日、日刊工業新聞3月31日)

13.水素・FC関連技術開発と事業展開
(1)物質・材料研究機構等
 物質・材料研究機構と早稲田大学は、微細な穴が規則正しくあいたファイバー状金属を作る手法を開発した。穴の直径などが容易に制御できて、多様な金属に使える。FCの電極やバイオセンサーなどの幅広い分野で応用が期待される。金属を含む材料に界面活性剤や溶媒のエタノールを混ぜ、それを陽極酸化という技術でアルミナの板に空けた細長い穴に入れ、その中で金属を析出させると穴の向きに垂直な方向に規則正しく直径2〜20nmのドーナツ状の穴が空いた金属ファイバーが出来上がる。微細な穴が無数に空いたメンポーラス物質は大きな表面積を持ち、触媒担体への利用が期待される。(日経産業新聞08年3月31日)

(2)太陽金網
 太陽金網(大阪市)はシリコーン系耐熱接着剤"iシール"の市場開拓に着手した。300oC以上の耐熱性を有するとともに、可視光領域で99%以上の高い透過率を発揮するなどの特徴を持つ。ガラス、セラミックス、金属など異種材料同士の接着が可能なことから、高温環境で接着性とシール性を維持できる特徴を生かしてFC用部材、製造装置などで多様な用途展開が見込めると期待している。同シールはエス・エフ・シー(横浜市)が開発したもので、太陽金網が販売代理店として活動を開始した。(化学工業日報08年4月10日)

14.水素・FC関連事業の展開
 ダイニチ工業(新潟市)は3月21日、FCに使用するバーナーの開発を強化、将来的な量産化に備えるため担当部門を独立させ"FC開発課"を新設した。(新潟日報08年3月22日)

 ――This edition is made up as of April 20, 2008 ―――

A POSTER COLUMN

07年はクリーンエネルギー市場が活況
 2000年からクリーン・エネルギー市場の調査を行っているアメリカのクリーン・エッジによると、太陽光発電や風力発電、バイオ燃料、FCの07年度における売上高は全世界で773億ドルになり、前年より40%増加した。同社は10年後の2017年には2,545億ドルまで拡大すると見ている。
 以下に各種クリーン・エネルギー市場規模の07年実績と17年の予測を示す。単位は億ドル。

                          07年(実績)   17年(予測)
        バイオ燃料                254        811
        風力発電                 301        834
        太陽光発電                203        740
        FCと分散型水素製造システム     15        160   

(電波新聞08年3月20日、東京、中日新聞4月6日)

シンガポールに太陽電池関連企業が集積
 シンガポールにヨーロッパの太陽電池関連企業が進出、太陽電池が石油化学と並ぶ産業に育つ可能性がでてきた。総投資総額は約5,500億円に迫る。同国政府が研究開発支援や税優遇などで誘致した結果で、2010年には世界最大の太陽電池工場も誕生する。進出企業は同国を拠点にアジア市場に攻勢をかける意向である。
 ノルウエーのリニューアブルエナジーは、10年に世界最大の太陽電池工場を当地で稼動することを表明しており、シリコンウエハーから太陽電池パネルまでの一貫生産で、生産能力は年1.5GWに達する。又同国ノルサンは太陽電池用シリコンウエハー工場を建設、09年にも単結晶型太陽電池の生産を始める。生産能力は年産350MW。スイスのエリコン・ソーラーは、近く太陽電池の研究開発拠点と試験生産工場を設ける。薄膜型太陽電池ウエハーなどを生産、将来は本格的な生産拠点を建設する方針である。ドイツのソーラーワールドも生産を検討中。
 同国政府は07年m3億5,000万シンガポールドル(約260億円)を投じて太陽電池など新エネルギー産業の研究開発を支援する計画を打ち出したほか、08年3月には太陽電池パネルの国内普及を促進するため、2,000万シンガポールドルの基金を設けることを表明した。太陽電池の市場規模は08年の420億ドルから11年には1,210億ドルに拡大すると予測されている。
(日本経済新聞08年4月7日)

20年の温室ガス排出量を05年比11%減に
 経済産業省は、企業や家庭で今後開発される最先端の省エネ技術・機器を最大限に導入した場合、2020年には温室ガス排出量を05年に比べて11%減らせることが可能で、その市場規模は約52兆円と試算している。試算は第7回総合エネルギー調査会需給部会に示された。
 一般家庭では20年までに太陽光発電を新築持ち家住宅の7割に導入し、現在の10倍にあたる320万戸にエコキュートなどの高効率給湯器を、又FCを含むコージェネレーションを約2,800万台普及させる必要があるとしている。更に新車の2台に1台、普及台数のうち5台に1台は次世代自動車にする。
 一方、産業分野もオフィスでは省エネ率20%の高効率サーバーや同80%のストレージ、同45%の省エネ型ネットワーク機器が急速に普及する。
 こうした最先端の省エネ技術を搭載した機器の導入に必要な額は、家庭では約26兆7,000億円、企業全体では25兆6,000億円と試算している。
(電波新聞08年3月28日)

カリフォルニア州のゼロ排ガス車が難航
 カリフォルニア州の大気資源局(CARB)は3月27日、自動車メーカーに義務付けている"ゼロ排ガス車"の販売台数を7割削減する下方修正を決めた。90年に始まったZEV規制の手直しはこれで5回目になる。
 CARBの推計では06年現在、州内を走るFCVは160台、電気自動車(EV)は4,400台に留まっている。
(朝日新聞08年3月31日)

愛知県が次世代エネルギーパーク計画に名乗り
 愛知県は、常滑市の中部国際空港対岸部(前島)にある新エネルギー実証研究施設を中核とする知多地域について、国が認定する"次世代エネルギーパーク計画"に名乗りを上げる方針を固めた。次世代エネルギーパークは、全国で6ヶ所が認定されている。新エネルギー事業の実績など国の条件を満たしておりほぼ確実というが、認定されれば中部地域で初となる。
 エリアには新エネルギー関係の施設が多い。前島には愛知万博で活用された太陽光発電施設などが移設され、NEDO事業の1部を受け継いだ県は、太陽光発電の実証実験を12月にも始める。4月中旬には、FCやバイオマスなどを含めた技術開発に取り組む企業を公募し、新エネルギー開発の一大拠点とする。更に中部空港には天然ガスや太陽光で施設全体の電力や熱を賄っており、知多市は風力発電がある。
 県新産業課は「愛知万博の理念を知多地域でモデル的に展開したい」と話している。
(中日新聞08年4月10日、4月15日)

大容量タイプのラミネート型LiB開発
 NECトーキンは電池事業の軸足を大容量タイプのマンガン(Mn)系ラミネート形リチウムイオン電池(LiB)に軸足を移す。10年以降需要が立ち上がる自動車向けなどを目標としている。同社は角形とラミネート形のLiBを手掛け。角形はコバルト系とMn系、ラミネート形ではMn系を供給している。角形は海外の携帯電話向けから撤退する一方、デイジタルカメラや携帯ゲーム機向けに中心を据えて、今後は安全性の高いMn系にシフトする。
 同社が最も力を入れるのは大容量のラミネート形LiBで、自動車用では昨年、日産自動車およびNECとオートモーテイブ・エナジー・サプライ(AESC)を設立、10年にも自動車向けLiBの供給を開始することを計画している。
(化学工業日報08年4月14日)

次世代太陽電池の研究開発
 新日本石油は4月14日、東京大学先端科学技術研究センターと連携して、発電コストが現状の1/5以下となる次世代太陽電池の共同研究を開始したと発表した。先端研内に共同研究ラボを設置し、新日石からの常駐研究者10人を含む20〜30人体制で基礎技術の確立に取り組む。2015年度を目途に発電コストを23円/kWh、30年度には7円まで低減し、電力からの需要取り崩しを狙う。なお現在の一般的な太陽電池は発電コストが43円で、火力発電の23円に比べて約2倍となっている。
 両者で共同研究する次世代太陽電池は、発電効率を20〜30%高めた"次世代有機系"や同40〜50%アップする"量子ドット構造"など、研究費用は年間数千万円の見込みで、新日石が負担する。研究期限は設けず、基礎研究で確立した技術は、新日石の社内研究所で開発して商品化を目指す意向である。
(フジサンケイビジネスアイ08年4月15日)

日本の環境技術等についてJSTが国際比較
 科学技術振興機構(JST)は、環境技術、ナノテクノロジー・材料、電子情報通信、先端計測技術、ライフサイエンスの5分野について、研究者の意見をもとに過去2〜3年の競争力と将来に向けた潜在力を3月末にまとめて報告した。
 環境関連技術としては、FC,バイオ燃料、高性能2次電池、超伝導利用、リサイクル技術などの10分野で各国間優劣の評価を試みている。
 ハイブリッド自動車や家電機器などに使う高性能2次電池などで、日本は「基礎研究と応用の両面で世界の先頭を走っている」と評価している。しかし、海外勢がネイチャー、サイエンスなど著名な国際科学誌に電極材料などに関する論文を多数掲載している点を指摘、「世界各国で基礎研究が大きく進展している」、特に「中国や韓国で論文や研究者が増大し、追い上げが厳しい」と分析した。基礎研究のトップ集団でもイギリス、アメリカ、ドイツ、フランスが飛び抜けているとし、日本の成長に不安を残す評価となった。手をこまぬけば、ここ数年で欧米に差をつけられ、中国に追い上げられるという構図が透けて見えると結んでいる。
 バイオ燃料については「日本の技術水準は劣らないが、国家戦略を強力に進める欧米に技術開発や産業力で差をつけられている」として戦略の甘さに足元をすくわれると警鐘を鳴らした。
 FCでは潜在力の大きさを認めた。京セラや三菱マテリアルなどが家庭用や業務用に開発したシステムを取り上げ、「企業の着実な取り組みがこれまでの努力を結実させる」とコメントしている。
(日経産業新聞08年4月16日)

Kyoto-Carプロジェクト
 京都の文化の香りと最先端のナノテクノロジーを融合させる"京都電気自動車(Kyoto Car)開発プロジェクト"が発足した。推進母体は京都大学発ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)電気自動車開発プロジェクトと京都Neo西山文化プロジェクトである。
 同プロジェクトでは北海道洞爺湖サミットに先駆けて行われる"G8京都外相会合での環境情報コーナー(6/25~27)"にKyoto Carを出展する予定。注目のポイントはそのデザインで、蒔絵(漆塗り)や友禅染のEVコンセプトカーが登場する予定だという。歴史・伝統、そして環境に優しい街、京都にふさわしいEVとして注目を集めようとしている。
 同プロジェクトを推進する京都大学副学長松重教授によれば「これまではEVの変圧素子に使われる素材はシリコンが主流であったが、ナノ制御したシリコンカーバイト素子を使用することにより、電気をDCからACに変換したり、電圧を変える際のエネルギーロスを大幅に抑えることができ、電池の性能向上に貢献する」という。
 カーボンナノチューブなど、様々なナノテク素材の実用化により、EV用電池はより小さく高性能化することが可能である。
(環境ビジネス71号:08年5月1日)