第140号 SOFC100kWで3,300時間
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.SOFCの開発と実証運転実験
3.PEFC等FC関連要素技術開発
4.家庭用PEFCの事業展開
5.FCV最前線
6.PEFCの新しい利用展開
7.水素生成・精製技術の開発
8.FCおよび水素関連計測器の開発と事業
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
 経済産業省の08年度予算内示額は、一般会計が全年度予算額に比べて1.2%減の4,212億円となり、エネルギー特別会計の繰り入れを含めると0.6%減の1兆208億円となった。次世代自動車・燃料技術の開発では前年度予算額566億円に対して内示額は582億円で、次世代自動車・燃料イニシアテイブに基づいた技術開発の推進に向け、FC・水素に関する技術開発などに289億円を認めた他、バイオマス燃料の調査研究・技術開発に127億円、蓄電池システムの戦略的技術開発・導入促進に83億円などとなっている。(日刊自動車新聞07年12月22日)

2.SOFCの開発と実証運転実験
(1)Jパワー
 Jパワーは12月6日、技術開発センター・茅ヶ崎研究所で07年1月から試運転を実施している都市ガス燃料の"常圧150kWSOFCシステム"による試験運転において、100kW(DC発電端)を超える発電出力に成功したと発表した。このシステムは出力25kWモジュール6基で構成されている。運転時間についても11月末で連続約1,050時間を含む累積約3,300時間を達成した。今後は08年度末までの本格試験で、発電出力150kW級、運転時間累計1万時間以上を目指す。約1年間にわたって長期信頼性・運用性の確認試験を実施してシステムの課題を抽出、商用化を見据えたSOFCシステムの開発を行う予定である。又同社は長期的には、ガス化した石炭を水素の燃料とする発電施設の実用化を目指している。(電気、日刊工業新聞07年12月7日)

(2)PEC
 石油活性化センター(PEC)は12月13日、経済産業省の"新燃料油研究開発調査"事業の一環として、SOFCシステムの発電試験を開始したと発表した。灯油型SOFCシステム実用化に向けた性能評価を進める。ジャパンエナジー精製技術センター内のPEC燃焼戸田第2研究室で開発を進めており、定格出力1kW級で脱硫灯油を燃料としたプロト機の開発に成功した。自己熱改質方式を採用しており、発電量の変化に応じて改質ガス製造を調節する速さとなる"負荷追従性能"に優れている。(日刊工業新聞、化学工業日報07年12月14日)

3.PEFC等FC関連要素技術開発
(1)大日本印刷等
 大日本印刷は関西ペイントと共同でセパレータをアルミで製造する技術を開発、サンプルの出荷を始めた。軽量な金属を使うことで、薄さ(カーボンに対して)と軽さ(ステンレスに対して)を両立させたのが特徴である。開発したセパレータは樹脂膜を電着させたアルミで、アルミの弱点であった耐腐食性を高め、2,000時間の連続運転に耐える性能を確認した。又製造コストはステンレス比で約1/2になる見通しである。セパレータの表面には幅0.8−1.0mm、深さ0.3−0.8mmの溝が掘られているが、アルミの表面を電着しやすいように整えるとともに、電着後の熱処理を工夫することによって溝の内部までの均一な樹脂コーテイングを実現した。(日経産業新聞07年12月12日)

(2)京大等
 鉄と酸素の原子が平面上に並び積み重なった新しい構造の鉄酸化物(SrFeO2)を作ることに、京都大学と高輝度光科学研究センター、フランスのレンヌ第1大学の国際チームが成功した。陰山京大理学研究科准教授らは、1,100oCの高温で鉄、ストロンチウム、酸素の鉄酸化物(SrFeO3)を作り、その後温度を300oCに下げ1/3の酸素を取り除いたところ、鉄原子の周りに6個ある酸素原子が部分的に4個になる単純な層構造の新しい物質ができた。この物質は高温超伝導に使われる銅酸化物(SrCuO2)と構造が似ており、鉄酸化物では初の高温超伝導を実現する可能性があるとともに、又多くの酸素を吸収できるので、FCのカソード電極に使うと高効率化、小型化が図れるという。(読売新聞、化学工業日報07年12月13日)

(3)関西大学等
 関西大学化学生命工学部の川崎准教授、宮崎大学の木島教授らは溶液中で厚さ3nmの白金ナノデイスクを作製した。白金触媒として使う場合、粒子状に比べて白金を薄くできるので白金使用量の削減につながるほか、溶液は繰り返し使える利点がある。FC用触媒以外に自動車排ガス浄化装置、医薬・油脂製造の触媒としての活用を見込んでいる。実験では、界面活性剤(C16TAOH)と塩化白金酸の溶液に黒鉛基板を約30分浸すと、黒鉛基板と溶液界面で界面活性剤と塩化白金酸の複合体が形成され、直径5〜10nmのファイバー状自己集合体ができた。黒鉛基板を取り出し、純水中でファイバー内の塩化白金酸を25oCで約10分間還元すると、直径5〜10nmのデイスク状白金がファイバー上に高分散状態でできることが分かった。黒鉛基板のファイバー上に白金イオンが付くと、溶液の底に沈んでいる固体から白金イオンが供給され、溶液は再度利用できる。白金ナノデイスク精製後に過剰な界面活性剤を除去するため有機溶媒で基板表面を洗浄するが、デイスクは安定している。白金活性剤が無くなっても白金ナノデイスクは室温で安定しており、温度が上がった場合の形態保持については有機物での保護などが考えられるという。(日刊工業新聞07年12月14日)

4.家庭用PEFCの事業展開
(1)新日本石油
 新日本石油は09年度にも市販灯油を利用できる家庭用PEFCシステムを商品化する。新日石では06年3月に荏原バラード、荏原製作所と硫黄分を低減した専用灯油を使うシステム"ENEOS ECOBOY"を共同開発したが、これをベースに脱硫機能などを追加するものと見られる。同社では08年度に大規模実証事業が修了し、商業化の段階に移った場合、製油所から少量の専用灯油をドラム配送していては価格競争で圧倒的に不利であり、オール電化攻勢が強まる灯油市場でFCシステムを普及させるためには市販灯油への対応が不可欠と判断した。市販灯油での対応では、出光が東芝FCシステムと共同開発に成功し、実証実験として08年度に10台程度一般家庭への設置を計画している。(日刊工業新聞07年12月13日)

(2)積水ハウス
 積水ハウス、日本総合研究所、ウエブ・パワー・サービスは、街単位で電気や熱をやり取りできるFCタウンの実現に向けた実証実験を積水ハウスの分譲地"コモンライフ古河市(茨城県)"で開始した。一戸建て住宅14棟に家庭用FCを設置、2年間にわたり電気、熱の利用状況に関するデータを収集、コンピューター内に構築した仮想的な住宅地で、計測データを活用し、電気と熱のやり取りを模擬実験する。(日経産業、日刊工業、日刊建設工業新聞07年12月14日、電気新聞12月17日、住宅新報12月18日)

5.FCV最前線
(1)ホンダ
 ホンダの福井社長は12月19日、都内での記者会見で、次世代自動車の中でFCVの開発に力を注ぐ考えを示し、PHEV(プラグインハイブリッド車)については「技術的な面からも存在理由が不明」と重視しない方針を明らかにした。07年秋に量産を開始した非シリコン型太陽電池については、販売網の拡充と世界販売を視野に入れていくとした。FCVについて、「燃料性能、航続距離を向上させた新型FCV"FCXクラリテイ"を08年夏にもアメリカで、秋には日本でそれぞれリース販売する」と表明。同車は4kgの水素で500km走れ、ガソリン並みの使い勝手が見込まれる。子会社の"ホンダソルテック"が製造販売するCIGS系太陽電池について「08年春に熊本県の量産工場で生産能力が27,500kWに達する。販売網を現在の80拠点から08年中に200拠点に増やし、海外販売に向けた体制も整えていく」と意欲を示した。又"エコウイル"を構成する家庭用小型コージェネレーションユニットについては、月販1,000台と販売が堅調であり、国内の累計販売は56,000台を超え、アメリカでも販売を開始した」と述べた。(電気、東京、中日新聞07年12月20日、日刊工業新聞12月24日)

(2)カナダ
 カナダの業界団体"ハイドロジェン・アンド・フューエル・セルズ・カナダ(H2FCC)のジョン・タック代表は「最近自動車用FCでバラードとドイツのダイムラー、アメリカのフォードモーターが共同出資会社を設立した。実質的にはバラードの部門売却となるが、研究開発は引き続きカナダで取り組まれる。外国の巨大資本が入ることで産業集積がより拡充していくだろう」と述べた。(日経産業新聞07年12月26日)

(3)トヨタ
 トヨタ自動車は高輝度光科学研究センター(兵庫県作用町)の実験設備"Spring-8"に、早ければ09年4月に専用ビームラインを設ける。放射光を用いて微細レベルで物質の特性や構造を解析、電池材料や部品材料の高機能化などを目指す。豊田ビームラインでは、豊田中央研究所が運用主体となり、FCVやHV向けの研究開発を行う。(日刊工業新聞07年12月27日)
 トヨタ自動車は12月26日、HVや生活支援ロボットなど重点分野を強化するため、08年1月1日付で組織を再編すると発表した。特装・福祉事業部を"特装・福祉営業部"と"特装・福祉製造部"に分割し対応力を強化する。製品企画センターに先行企画を検討するグループを新設する。新事業部の水・空気環境事業室を廃止し、植物材料・FCなどの開発プロジェクトを強化する。生産技術部門では、管理スパンの是正と効率化を図る。車両実験部安全実験室を"衝突安全実験室""室内安全実験室"に分割する。第1生産技術部プレス技術室と化成技術室をそれぞれ2室に分割する。(日本経済新聞07年12月27日、日刊自動車新聞12月28日)

6.PEFCの新しい利用展開
 フランスのエリオン社は独自にPEFCの開発・製造を手がけているが、07年5月には出力30kWの定置式PEFCの市場投入し、その第1号はフランス原子力庁(CEA)本部に設置された。同社は原子力とFCの融合という視点から市場開拓を進めようとしている。同社は世界有数の原子炉メーカーであるアレバの子会社として2001年発足、研究開発はフランス原子力庁と緊密に協力して行ってきた。エリオンとCEAが考えているのは「原発で発生したエネルギーで水素を発生し、それによってFCで発電する」という構想である。エリオンのPEFCは民生用だけではなく、潜水艦や船舶での利用の想定されている。(日経産業新聞07年12月7日)

7.水素生成・精製技術の開発
(1)戸田工業
 戸田工業(大竹市)は炭化した木質バイオマスから水素を効率よく発生させる特殊な酸化鉄を開発した。06年4月に東京工大炭素循環エネルギー研究センターと共同で、その酸化鉄を活用して消費地で水素を生産するシステムを構築した。特殊な酸化鉄を混ぜ合わせ、蒸し焼きにして作った木炭から水素を分離する仕組みで、消費地で高温にした木炭に水を当てると発生した水蒸気から従来よりも多量な水素が取り出せる。同社は「水素は取り扱いに注意が必要であるが、木炭なら輸送も気軽にできるメリットがある」と話している。(中国新聞07年12月16日)

(2)産総研中国センター
 産業技術総合研究所中国センター(呉市)と中国電力、広島大は04年、木材から高濃度の水素を生産する技術を開発した。高温の水蒸気中で木屑と酸化カルシウムを反応させ、水素濃度80%以上のガスを生成する。現在は石炭エネルギーセンターからの研究委託期間が終わって研究は中断しているが、工場で水素を作る方法と比べて生産コストが高いのが問題点とされている。(中国新聞07年12月16日)

(3)ブルックヘブン国立研
 アメリカDOEのブルックヘブン国立研究所は、FC燃料向けの新しい触媒を開発した。金やセリウムなどを使った酸化物で、水素とCOを含む合成ガスから水素を取り出すときに利用できる。開発した触媒は金の表面にセリウム、又はチタンの微粒子を付着させた酸化物で、金だけであると水素を製造する過程で活性を示さないが、微量のセリウムやチタンを添加すると高い活性を持つようになる。(日経産業新聞07年12月19日)

8.FCおよび水素関連計測器の開発と事業
 東海物産(名古屋市)は12月18日、アメリカのバイアスペース社(カリフォルニア州)のFC用湿度計HS−1000を、主に自動車メーカーや家庭用FC向けに日本で販売する契約を締結したと発表した。HS1000はレーザーダイオードをセンサーに採用することによって、従来困難とされてきた高速でメンテナンス不要の湿度計測を可能にした。応答時間が非常に速く、連続してリアルタイムで正確な湿度計測が可能である。センサー部が被計測ガスと接触しない構造のため、日常のセンサー部清掃や校正、メンテナンスが不要となり、従来に比べると格段に使い易くなった。(電波新聞07年12月19日)

 ―― This edition is made up as of December 31, 2007 ―――

・A POSTER COLUMN

木質バイオマスからのガス製造装置
 リョウセンエンジニアリング(広島市)は、MHIソリユーションテクノロジーズ、鳥栖環境開発センターとの共同研究により、発熱量が従来に比べて約3倍となる木質バイオマスガスを製造する装置を開発した。ガスを発生する工程を2段階に分けることによって、ガスに混入するCO2を減らしてガス濃度を高めた。ガスはガスエンジン発電機や、FC用メタノールの合成に使われるが、ガス濃度が高まることによってエンジンの小型化やメタノール合成の効率化が期待される。2年後の実用化を目指す。
 装置は熱ガス炉と、ガスを化学合成するガス化炉で構成される。熱ガス炉で木や竹などのバイオマスチップを燃やして約1000oCの高温ガスを造り、それをガス化炉に送る。ガス化炉は高温ガスを熱源に、粉状の木質バイオマスと水蒸気を加熱し、化学反応でガスを生成する。従来のプロセスでは、木質バイオマスの燃焼と化学反応を1つの炉内で行っていたため、CO2やN2が生成ガスに混入していたが、新装置はこれらのガスを分離して排出するために、生成ガス濃度が3倍に高まった。
(中国新聞07年12月7日)

世界でFCが普及すれば温暖化ガス削減量は1億1600万トンに
世界中でFCが普及すれば2025年時点で最大1億1,600万トンの温暖化ガス削減効果が得られるとの試算を、アメリカFCメーカーのプラグパワーとカナダのバラード・パワー・システムズがまとめた。最大で560万台の自動車からの温暖化ガス排出を削減するのに等しい効果であるという。
 家庭用や通信設備の補助電源など、現段階で普及が見込める用途で、FCが既存の技術に置き換わった場合を想定し、どの程度の温暖化ガス削減が可能であるかを調べた。ただし自動車向けは除外している。
(日経産業新聞07年12月7日)

リチウム電池電解質の安全性を高める
 東北大学の研究チームは、パソコンや携帯電話に使うリチウムイオン電池の安全性を高める電解質用新素材を開発した。新素材はリチウムとホウ素、水素からなる。室温では電気をほとんど通さない絶縁体であるが115oCに加熱すると導電性が一気に1000倍まで高まることを発見した。
 この新素材の構造を調べたところ、室温ではリチウムのプラスイオンとホウ素・水素化合物のマイナスイオンの居場所が固定されて動かないが、115oCになるとプラスイオンが動き易い通路のような構造が形成された。
 これは無機化合物の固形粒で、押し固めればシート状にできる。現在のリチウムイオン電池の電解質は、液体の有機化合物であり、揮発性のために漏れ出すと引火の恐れがあるが、新素材は流れないので安全性が高いと見ている。又現段階では115oCにならないと電気が流れないが、素材の改良によってより低温で電気が流れるようにできると予想している。
(日経産業新聞07年12月7日)

総合エネルギー調査会石油分科会でバイオ燃料のあり方を検討
 バイオ燃料のあり方を検討する総合エネルギー調査会石油分科会の次世代燃料・石油政策に関する小委員会は12月7日、バイオ燃料をCO2対策の手段とするためには中長期的な取り組みとして、食料と競合しない原料の活用や、次世代自動車などの代替手段を含めた技術革新を見ながら段階的に導入するという方針を打ち出した。又バイオ燃料の品質確保を目的として、生産事業者の登録制度導入などを柱とする"揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法)"を改正する。品確法については、経済産業省が08年の通常国会で改正案を提出する方針である。
 バイオ燃料の中長期的な取り組みとでは、LCA上でのCO2削減効果やエネルギー収支の他、供給安定性の確保、燃料価格など経済性などの克服を重要な要素とした。これらについては食料と競合しないセルロース系原料の活用など技術革新の実現が必要としている。又FCVなど次世代自動車を含めた技術革新の進展を見ながら段階的に導入を検討していくべきとした。
 他方、バイオ燃料の品質確保については、従来は石油精製会社などを規制していれば品質が確保できたが、今後は商社や農協がバイオ燃料とガソリンを混ぜて販売するケースなども見込まれるため、生産事業者の登録制度を導入して粗悪品の排除を狙う。事業者が生産したバイオ燃料を販売、消費する際に品質確認を義務付けるほか、品確法による立ち入り検査や行政処分の強化なども図る。
(日刊自動車新聞07年12月8日)

GSユアサなど3社がEV向けリチウムイオン電池の共同出資会社設立
 GSユアサ、三菱商事、三菱自動車は12月12日、電気自動車向けリチウムイオン電池の共同出資会社リチウムエナジージャパン(京都市)を設立したと発表した。資本金は08年4月時点で40億円、GSユアサグループが51%、三菱商事が34%、三菱自が15%を出資する。社長にはGSユアサの小野勝行常務が就任した。
 GSユアサの京都市本社工場に約20億円を投じ、生産ラインを構築する。年間の生産能力は電池セル20万個で、先ず三菱自のEV"i-Mive"およそ1000台分に相当する10万個を生産する計画である。
 12月11日には、東芝が同電池への参入を表明しており、トヨタと松下電器産業が共同出資で設立した"パナソニックEVエナジー"では量産化に向けた検討を始めた。北海道電力は07年度内に三菱自動車とEVの実証試験を行う予定である。次世代車載用電池の実用化に向けた動きが熱を帯びてきた。
 なおEVは三菱自動車が09年、日産自動車が12年にそれぞれ国内で発売する計画で、都市部の短距離通勤などでの利用を見込んでいる。
(日経産業新聞07年12月13日、株式新聞12月27日、河北新報12月28日)

ハイブリッド車"プリウス"の累計世界販売台数が87万台を突破
 トヨタ自動車のハイブリッド車"プリウス"が、1997年12月に国内でデビューして以来07年12月で丁度10年を迎えたが、環境性能を重視する国際的な潮流の中で世界トップレベルの性能が評価され、累計世界販売は10月までに87万台を突破した。特に北米市場では05年以降、ガソリン高を追風に販売を着実に伸ばし、年10万台を超す人気車種に成長した。(毎日新聞07年12月11日、中日新聞12月13日)

熱電変換素子による排熱回収技術
 昭和電線ホールデイングスと産総研は12月18日、排熱から電力を取り出す熱電変換素子の量産化に目途を付けたと発表した。素子材料には産総研が開発したコバルト系の層状酸化物を利用する。金属系に比べて変換効率が高く、800oC以上の高温でも安定的に作動する他、毒性元素を含まないので、熱電変換に適した性質を持つ。産総研はこの酸化物によって、高温空気中では最高となる10%以上の変換効率を達成した。
 超伝導材料研究で培った昭和電線の押し出し成型技術や熱処理技術を使い、従来製法に比べて生産効率を50倍向上させた。1回の熱処理で数千個の素子を製作できる。
工業炉やFCを含む分散型電源などの排熱回収システムとして利用が広がると見ており、今後は製法の改良や最適な熱電変換材料の探査を続けて熱電変換モジュールの性能向上に注力し、2010年での実用化を目指す。
(電気新聞07年12月19)

環境省のCO2対策事業と科学技術関連予算
 環境省の予算内示額は、一般会計とエネルギー対策特別会計を合わせて、前年度比0.7%増しの2,230億円となった。
 自動車関連では、CO2対策推進事業が21億1,700万円、低公害車普及事業は1億1,700万円(+38%)、エコ燃料実用化地域システムの実証事業は23億円で、何れもエネルギー特会で賄う。大型施設となるエコ燃料実用地域システムの実証事業では、地域完結型の生産、消費体制を目指して、バイオエタノール関連事業に取り組む地方自治体などを支援する。沖縄県宮古島では島内で利用するガソリンの全量をバイオエタノール3%混合ガソリンとして検証する。
 新規に認められた主な施策は、省エネ製品買い換え促進事業(3億円)や1人1日1kgCO2削減国民運動の推進事業(3億円)などである。
(日刊自動車新聞07年12月22日)
 08年度における環境省の科学技術関連予算は212億円で、07年度に比べて1%減であった。目玉となるのがバイオ燃料の開発で、生ごみや下水道汚泥など廃棄物系バイオマスからメタンガスやバイオエタノールを開発する。09年度にはモデル地区を決め、小規模な生産に取り組む意向である。又バイオエタノールの混合濃度が高い燃料の開発も進める。07年から始まったE3の導入のみでは、政府が掲げるバイオ燃料の普及目標(10年度50万kL)の達成が難しいので、E10の実用化を加速する。
 更に温暖化ガスを海底に埋めるCO2地下貯留技術(CCS)の開発にも乗り出す他、FCVやEVの普及事業も拡充することにした。
(日経産業新聞07年12月27日)