第139号 家庭用PEFCシステムの量産計画始動
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.PAFC事業展開
3.SOFCの開発
4.PEFC要素技術の開発
5.家庭用FC実証と事業展開
6.FCV最前線
7.水素ステーションの実証
8.水素エネルギー研究センターの設立
9.マイクロFCの開発
10.直接エタノール形燃料電池(DEFC)の開発
11.周辺機器の開発動向
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)環境物品調達実績
 環境省は、国や独立行政法人による環境物品の06年度調達実績をまとめた。グリーン購入法の対象となる特定調達品目のうち、調達物品の調達率が95%以上のものは、前年度比1ポイント増の94.2%だった。低公害車の調達率向上や太陽光発電の導入促進も目立った。前年度に比べて調達率が大幅に向上したのは、一般公用車以外の低公害車(54.0%→85.7%)などで、この他太陽光発電システムの設備容量は前年度比約2倍の417kW、FCの新規導入量は同4.5倍の9kWに増加した。(電気新聞07年11月21日)

(2)温暖化ガス半減
 経済産業省は11月27日、世界全体の温暖化ガス排出量を2050年までに半減するという政府の目標を達成するための技術テーマ20を盛り込んだ"エネルギー革新技術計画"骨子案を発表した。FCV、CCS、プラグインハイブリッド車、EVや発電効率が4倍の太陽電池など20テーマが挙げられている。(日本経済新聞07年11月27日、毎日、日経産業、日刊工業新聞、化学工業日報11月28日)

2.PAFC事業展開
 富士電機システムズは、100kWPAFCシステムの販売価格を大幅に引き下げる方針を明らかにした。配管などを含めたシステムとして、従来の半額で提供する。現在は富士電機グループの研究開発を担う富士電機アドバンストテクノロジーが同100kWPAFC機を販売している。同社は98年から100kWPAFCの販売を開始、これまでに二十数台納入した実績がある。06年には燃料を改質する機器とFCセル寿命を7.5年に延ばした新型機"FP−100"の販売を開始した。価格競争力を高めた製品の市場調査を今春から始めており、工場の生産ラインを整備さえすれば、「このシステムをすぐにでも販売できる」という。燃料としては都市ガス、LPG,下水処理施設から発生する消化ガス、化学工場の副生ガスを利用できる点が特徴である。拡販体制が整い次第、年間20〜30台を販売したいと考えている。現在は生産ラインと呼べるような装備はなく、量産するためには生産工程を整備する必要があり、その時期は明らかにしていないが、早急に取り組むものと見られる。今後は富士電機システムズが新型機を拡販する。(電気新聞07年11月22日

3.SOFCの開発
 東邦ガスはより低い温度で作動することが可能でかつ耐久性が高いSOFC用セルを開発した。電解質材料のスカンジウムの配合率を従来比で2.5倍に増やすことにより酸素イオン導電率を高めた結果、従来作動温度の800oCから750oCに下げても高い発電性能を発揮することが分かった。作動温度の低下は材料の選択肢を広げ、コスト削減に貢献する。又電解質材料と電極の中間層に酸化セリウムを吹き付けて焼成することにより劣化率を抑制、1000時間当りの劣化率を従来の3%から0.25%にまで改善することができた。東邦ガスは発電部品をSOFCシステム開発会社へ販売し、低価格で起動時間の短いシステムの開発を促進したい意向である。(日経産業新聞07年11月26日)

4.PEFC要素技術の開発
(1)中嶋金属
 中嶋金属(京都市)は、電極に使用するプラチナの使用量を従来比で約1/100に減らせ、耐食性も高められるプラチナメッキ技術を開発した。メッキ層におけるプラチナ粒子間の隙間をなくし、液体電解質による腐食から電極を守る。具体的には、メッキ浴槽内の電流値や液体温度、濃度などをそれぞれ10段階程度で変化させると、プラチナの直径は2nmと従来の1/5となり、形も楕円形や鋭角を持つ粒子が作られる。これで従来よりも小さく形の異なる粒子を積層することにより、粒子間の隙間を埋めて耐食性を向上させることができ、コストダウンに寄与する。(日刊工業新聞07年11月10日)

(2)理化学研究所
 理化学研究所はFC用薄膜の開発を行うベンチャー企業として設立されたナノメンブレン(東京都)を理研ベンチャーに認定した。これは理研の時空間機能材料研究グループのトポケミカルデザイン研究チームが開発した高機能ナノ膜技術を基盤として9月に設立した会社である。同理研研究チームは、有機・無機薄膜の基礎研究を元に、多様な素材を使って巨大なナノ膜を作製する技術開発などで成果を挙げている。(日刊工業新聞07年11月13日)

(3)太陽化学
 食品素材・化学品メーカーの太陽化学は、食品用乳化剤など界面制御のノウハウを応用し、直径1.5〜7nmの超微細な穴が規則的に並んだシリカ"メソポーラスシリカ"の量産技術を開発した。0.1nm単位で孔径を制御できる。先ずケイ酸塩を入れてpH調整した水中で、界面活性剤分子の集合体を作り、それに静電気をかけると、ケイ酸塩が界面活性剤の周辺に引き付けられ、厚さ1nmのシリカ分子膜がハチの巣状に組織化する。これを焼成し、界面活性剤を除去して合成する。白金を溶液化しメソポーラスシリカの孔に染み込ませると、超微粒子の白金が表面積に広がり、25〜50oCの常温かつ少量で従来と同じ触媒作用を出すことができる。白金の触媒としての性能が大幅に高まり、FCの性能向上などに役立つ。光合成する機能材料の実現も可能で、ナノ技術を生かした多機能材料として売り出す。(日経産業新聞07年11月14日)

5.家庭用FC実証と事業展開
(1)新日本石油
 新日本石油は11月15日、FCの本格的な販売に向けた取り組みの一環として、大阪府吹田市でFCフォーラム"2007年度臨時オープンセミナー"を開催する。大阪ガスの協力を得て、同社ショールーム"生活誕生館DILIPA"で最新エネルギーシステム機器などを見学するとともに、講演も予定している。(電気新聞07年11月13日)

 新日本石油は三洋電機の家庭用FC事業を事実上買収することで同意した。08年4月に三洋が同事業部門を分社化、新日石が8割出資し経営の主導権を握る。三洋は量産投資などが重荷になるとみて単独展開は断念する。分社化して設立する新会社の資本金は5億円程度で、出資比率は新日石が81%、三洋が19%、社長は新日石側が派遣する。新会社を核に両社のFC関連部門を集約し、開発から生産、販売までの一環体制を整える。新日石はLPG用FC製品を三洋電機と、灯油用製品を荏原製作所と共同開発、05年度から一般家庭へリース販売している。(読売、毎日、日本経済、産経新聞07年11月15日、朝日、産経、日本経済、日経産業、日刊工業、東京、中日、中国、電波新聞、フジサンケイビジネスアイ、河北新法11月16日)

 新日本石油と三洋電機は11月29日、08年4月を目途に家庭用FC事業で合弁会社を設立すると正式に発表した。新会社が製品の企画・設計を手がけ、三洋が東京製作所で生産、新日石が"エネオス"のブランド名で販売する。家庭用FCシステムを12年度から本格的に量産、現在350万円する本体価格を15年度には50万円以下にまで下げ、一般家庭への普及を狙う。(読売、朝日、毎日、産経、日本経済、電気、日経産業、日刊工業、電波、中日新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報、河北新報11月30日、日刊自動車新聞12月5日)

 新日本石油は11月26日、今治市の住宅団地"夢が丘団地"の22世帯にLPガス仕様家庭用PEFC(出力750W)を設置し、実証実験を行うと発表した。同団地の102世帯のうち、ガス使用量が多い55世帯に設置を依頼し、22世帯が同意した。家庭の負担は契約料の年間6万円。LPガスはコーアガス愛媛が供給する。(愛媛新聞07年11月27日、30日、電気新聞11月28日)

(2)松下電産
 松下電器産業は家庭用PEFCの量産工場を滋賀県草津市に建設し、08年度に稼動させる。当初は年千〜2千台を量産するが、順次拡張して10年には年産1万台態勢とする。当面の設備投資は10〜20億程度と見られる。長時間運転の耐久性能などにメドがつき、政府も助成制度の導入を検討していることから、本格的な市販が可能になると判断した。都市ガスを使う製品は東京ガスなどを通じて販売する意向である。(日本経済、産経新聞、河北新報07年11月27日、フジサンケイビジネスアイ11月28日)

(3)その他のメーカー
 荏原は藤沢工場(神奈川県)を増設して08年度に年1,500台規模で都市ガス、灯油それぞれに対応する製品の量産を開始し、09年度にも1万台規模の生産能力を整える意向である。東芝FCシステムは生産計画を今年度中に固める。新日石は三洋電機のFC事業を実質的に買収する方針で、自から資金を投じて量産するものと見られる。

 各社が量産に乗り出すのは、4万時間の使用耐久時間達成にほぼメドがついたためで、製造コストは現在1台400〜500万円と見られるが、10年頃には量産効果や部材・仕様の共通化によって百万円前後まで下げられると予想しており、15年には50万円程度にすることを目指している。(日本経済新聞07年11月27日)

(4)大阪ガス
 大阪ガスは家庭用PEFCシステムにおける天然ガス改質装置で改質触媒の低コスト化に成功した。触媒機能を持つ貴金属の粒子を細かく分散し、反応部分を増やすことで性能を維持しながら貴金属の使用量を従来比で約1/3に削減した。この触媒はアルミナ担体と触媒機能を持つ貴金属粒子からなるが、貴金属粒子のサイズを数十nmから数nmに抑え、更に貴金属粒子が反応促進に寄与するよう担体表面に集めるなどの改良を施した。10年間の連続使用にも対応可能で、実験室レベルでは15,000時間後も触媒性能に変化のないことを確認した。既に自社開発のPEFCシステムによる触媒の実証実験もスタートさせている。同社は08年度を目処にSOFCシステムの市場導入を目指しているが、SOFCについても今回の触媒使用を検討する。(日刊工業新聞07年11月28日)

6.FCV最前線
(1)ドイツDC等
 ドイツのダイムラーは、アメリカのフォードモーター、カナダのバラード・パワー・システムと共同出資で、自動車用FCの新会社を設立したと発表した。ダイムラーが50.1%を出資、経営トップを送り込み、システム開発の主導権を握る。又新会社にはバラードの自動車用FC事業を移管する。(日本経済新聞07年11月9日、朝日新聞11月10日、日経産業新聞11月13日)

 ドイツ・ダイムラーは、FCとリチウムイオン電池を併用するFCハイブリッドバスの開発に着手した。実用化は2020年以降の見通である。第1ステップとして09年に、デイーゼルエンジンを使う"シターロ"ブランドのシリーズ式ハイブリッドバスを量産化、このエンジンをFCに替える。(日刊工業新聞07年11月14日)

(2)第3回大阪モーターショウ
 第3回大阪モーターショウが11月30日からインテックス大阪で開幕する。FCを活用したホンダの"PUYO"はジェルボデイーを起用し、親しみのあるデザインが特徴。(日刊自動車新聞07年11月13日)

(3)ホンダ
 ホンダは11月14日、アメリカ・ロサンゼルスオートショーで新型FCV"FCXクラリテイ"を発表した。最高出力は100kWと前モデルより26%向上、リチウムイオン電池を搭載しており、水素タンクの圧力は350気圧、燃費は20%改善(水素1kg当り110km)し、1回の水素充填で走行可能距離は約570kmと現行FCXより3割向上した。アメリカで08年夏から3ヶ月契約600ドル/月でリース販売を始め、日本では08年内にリース販売する。(読売、朝日、日本経済、日経産業、日刊工業、日刊自動車、東京新聞07年11月16日、毎日新聞11月17日、フジサンケイビジネスアイ11月19日、産経、日刊工業、日刊自動車、東京、中日、中国新聞、河北新報11月22日、鉄鋼新聞11月27日)

(4)トヨタ
 12月2日から5日までアメリカ・カリフォルニア州アナハイムで開催された"第23回電気自動車シンポジウム(EVS23)で、トヨタ自動車はFCHVのコンセプトを展示、来場者の関心を集めた。FCと従来の内燃エンジンを組み合わせたハイブリッド電力が、車輪に動力を伝える仕組みを示しており、展示されたFCHVには電動モーター、FCスタック、電力制御装置、3個の高圧水素ガスタンク、NiMH電池、エンジンなどを装備すると体裁が整う。(電波新聞07年12月6日)

7.水素ステーションの実証
 ホンダはアメリカでFCVへの水素供給とコージェネレーション機能を持つシステム"ホーム・エネルギー・ステーションW"の実験を開始した。カリフォルニア州ホンダ研究所内に設置し、稼動を始めた。同社はプラグパワー社と共同で初代システムを開発し、03年に稼動開始、今回で4代目のシステムとなる。天然ガス改質による水素精製方式で、4代目システムでは高効率化と小型化に重点をおき、水素精製とFCを統合したことにより初代システムに比べて約7割小型化した。(産経、電気新聞07年11月22日)

8.水素エネルギー研究センターの設立
 産業技術総合研究所が水素研究の世界的拠点として福岡市西区の九州大学伊都キャンパスに整備した"水素材料先端科学研究センター"の開所式が11月9日午前、同センター研究棟前で行われた。今後国内外から水素エネルギーに関するトップレベルの専門家が集まって共同研究に取り組む。同センターでは、産総研や九大の他、各国の研究者計50人が、金属材料の水素脆性についての解明や水素の熱伝導等に関する研究を進め、水素に関する安全性の確立を目指す。(西日本新聞07年11月9日)

9.マイクロFCの開発
 イギリスのCMRフューエル・セルズ社は、ラップトップ・コンピューター電源用充電式電池に替わるカートリッジタイプ・マイクロDMFCを開発した。プロトタイプの研究を続けているが、2010年には市場向けに量産化に入る計画である。現在特許に関する独自のポートフォリオ整備に取り組んでおり、世界の主要市場の関係者に対して独占使用権を供与していく方針と伝えられる。既に日本と韓国の大手パソコン、ラップトップコンピューターメーカーとの間で、このDMFC技術の採用に関して同意に達しているという。(日刊工業新聞07年11月9日)

10.直接エタノール形燃料電池(DEFC)の開発
 旭化成と九州大学などの研究グループは、白金を使わないDEFC用触媒を開発した。エタノールはメタノールに比べると人体に害がない点で優れており、又バイオエタノールを使えばCO2排出を抑制する効果も大きい。新型の触媒は旭化成、九大、野口研究所が共同で開発したもので、それはアルコールの酸化触媒として使う銅を中心に持つジチオオキサミド系金属錯体と呼ばれる化合物で、エタノールを分解して酸素と反応させる効力を持つ。開発した触媒を化学反応膜に塗って調べたところ、0.1mW/cm2の出力密度が得られることが分かった。現在は効率が低く、出力はDMFCに比べて数百分の1に過ぎないが、シミュレーション上では効率を100倍にすることが可能で、今後は触媒や電極構造の改良に取り掛かり、DMFC並みの出力を目指す。DMFCと同様、携帯機器用電源としての利用を想定している。(日経産業新聞07年11月29日)

11.周辺機器の開発動向
(1)松下電工
 松下電工は水など粘性が低い流体にも使える超小型ベーン式ポンプを開発した。ベーン方式の特徴とポンプ室内の圧力損失を抑える機構の併用により、水中の溶存空気から発生する空気を排出する能力を向上し、ポンプ性能を落とさずに動作する。ベーン式ポンプは回転型容積ポンプの1つで、回転運動によってベーンで仕切られた空間(ポンプ室)の流体を全て押し出すため、空気が混入しても全て排出することができる。更にベーン間をのこぎり歯状に加工し、空気をかき出し排出する機構を開発、加工がない場合に比べて圧力を約20%高め、排出能力を向上させた。大きさについては30mm×30mm、厚さ10mmに目途をつけ、又耐用時間44,000時間の長寿命化を果たした。携帯電話用マイクロDMFCやパソコン用水冷装置向けに提案する。(日刊工業新聞07年11月10日)

(2)シーアイ化成
 シーアイ化成は大きさが指先に乗る程度に最小級の送液ポンプを開発、販売を始めた。同社製の極小モーターを取り付けて、マイクロDMFCでメタノール送液用として販売する。開発した超小型送液ポンプは、縦4.5mm、横6.5mm、全長が1.9cmで、ポンプ内で液体を押し出す役割をする2つのローターの表面を曲面に近い形状にして内部での動きをスムーズにすることに成功した。少量の液体を送出することにも対応できるようにしている。動作電圧は4.5Vでポンプが供給する液体の量は15mL/minである。重さは0.8g、モーターの大きさは小型ポンプよりも若干小さく、注文に応じてポンプの大きさや液送量を変えることも可能という。現在東京都墨田区にあるパイロットプラントで生産、3年後に数億円の販売を目標としている。(日経産業新聞07年11月26日)

 ―― This edition is made up as of December 6, 2007 ―――

・A POSTER COLUMN

バイオ燃料E3政府公用車に供給開始
 環境省は11月9日、廃木材から作ったバイオエタノールをガソリンに3%直接混合した"E3"を、東京都内で政府公用車向け供給を始めた。一般販売はない。ガソリンを使っている全ての公用車をE3に替える方針である。(朝日新聞07年11月9日)

総合エネ調がバイオ燃料をEVやFCVに至るつなぎとして位置づける
 総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)石油分科会の"次世代燃料・石油政策に関する小委員会は11月22日、バイオ燃料を技術革新に応じて段階的に導入していくことで合意した。運輸部門の温暖化対策としては、安定供給、経済性に課題が多いとし、中長期的には電気自動車やFCVの方が効果は高いと指摘し、バイオ燃料はこれらの技術が普及するまでのつなぎと位置づけた。
 電気自動車が75%のCO2削減効果を持つのに対して、バイオガソリンはわずか3%の削減効果しかない。本格的な電気自動車の普及が予想される2030年以降は、競争力を持つことは難しいと判断している。
(電気新聞07年11月26日)

経産省がバイオ燃料の着実な導入を推進
 経済産業省はバイオ燃料の導入に当たっての短期と中長期の方向性をまとめた。短期的には開発途上の電気自動車(EV)やFCVなど次世代自動車に比べて即効性があるとし、京都議定書計画で示された原油換算50万kLのバイオ燃料導入を着実に推進する。一方で、中長期的にはライフサイクル上のCO2削減効果やエネルギー収支、輸入および国産バイオ燃料の安定供給性、経済性などの課題を克服することが、将来のCO2対策のポイントになるとした。このためにセルロース系原料を活用して安定供給と経済性を実現するための技術革新を確立することが必要と指摘している。
 バイオ燃料のあり方については、総合資源エネルギー調査会石油分科会の次世代燃料・石油政策に関する小委員会で検討を進めており、年内にも報告書をまとめる。世界各国で導入が進んでいるバイオ燃料について、日本では2010年までに50万kLを導入することを目標としているが、こうした中で経産省は、バイオ燃料への対応などを議論する必要があるとして小委員会を設置した。専門的、技術的な審議を行ってバイオ燃料導入における今後の方向性を示す。
(日刊自動車新聞07年11月29日)

リチウムイオン電池モジュールの開発
 ジーエス・ユアサコーポレーションは、強制空冷式タイプのリチウムイオン電池モジュール "LIM30H-8R" を開発し実用化したと発表した。鉄道用として、走行試験中の架線・バッテリーハイブリッドLRM(Hi-tram)に供給し、停車中にパンタグラフからバッテリーに急速充電することも可能とした。
 同社は最大600Aの産業用リチウムイオン電池"LIM30H"の実用化に成功したが、この電池を8セルでモジュール化し、鉄道用の蓄電媒体としての適用が可能なタイプとして開発した。本体に電動ファンで冷却風を送りこむ強制空冷式を採用、電池の発熱を効率的に排出できる構造としており、最大許容電流600A、連続定格電流100A(1.0m3/min空冷時)の大電流充放電を可能にした。
(日刊自動車新聞07年11月10日、鉄鋼新聞11月14日)

上海で車の環境イベント
 中国・上海でトヨタ、GM、ドイツダイムラー、上海汽車など世界の自動車メーカー約50社とエネルギー会社が参加する車の環境イベント"チャレンジ・ビバンダム上海2007"が11月15日から17日までの日程で開かれている。各メーカーが開発したFCVやハイブリッド車など最新のエコカー約120台が参加、試乗会も行われた。中国の07年の新車販売台数は800万台を越すと予想され、06年の721万台から拡大傾向にある。環境保護や省エネが課題で、中国メーカーも環境対応車の開発体制を整えている。(毎日新聞07年11月17日、日本経済新聞11月18日)

シンガポール科学技術庁が新エネ技術センター開設
 シンガポール科学技術庁(ASTAR)は、分散型エネルギーシステムやマイクログリッドシステムなど持続可能なエネルギーシステムを対象にした研究開発体制を作り上げる。新エネルギー技術(SINERGY)センターを新設し、研究開発活動に乗り出すことを決めた。同庁の計画では3850万シンガポール(S)ドルを投じてセンターを開設し、エネルギー供給システムの研究開発に対して800万Sドルを拠出する。
 同庁では一連の投資によって、シンガポールをアジア地域における持続可能なエネルギー開発の中核拠点に育成する考えで、今回の投資により、FC,次世代太陽電池、水素エネルギーなどの研究開発プログラムに加え、上記の持続可能なエネルギーシステムにも開発の領域を広げることになる。
(化学工業日報07年11月28日)

総合資源エネ調査会がEV普及を明確化
 総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)需給部会は11月30日、2030年の社会インフラ構造について審議を行い、運輸部門のエネルギー需給見通しに電気自動車(EV)やFCVなど次世代自動車の普及を明確に位置づけることを決めた。最終消費における熱需要については、高効率ヒートポンプ給湯器の普及を産業、業務、家庭の全部門で位置づける方針を示した。
 運輸部門のエネルギー需給構造は"次世代自動車・燃料イニシアテイブ"の目標を最大限盛り込む方針である。同イニシアテイブでは、プラグインハイブリッド車を通じて30年までに本格的なEV普及を打ち出している。需給部会は30年時点での運輸部門のエネルギー消費量について、EVやFCVを想定した非石油燃料の位置づけを明確にするが、EVの最終的な普及率はインフラ整備状況、電力供給のキャパシテイーなどから総合的に判断する。石油系燃料については、燃費改善対策も盛り込むことから、消費見通しは大幅に下がる見込みで、バイオ燃料は、EVやFCVが普及するまでの限定的な扱いにとどまると見られる。
 30日の会合では電力、ガス、石油、自動車、LPガス、鉄道貨物の各業界からヒヤリングも行った。電力業界はヒートポンプやEVの普及による省エネルギー効果などをアピールした他、分散型エネルギーを系統電力の補完的な位置づけにするよう訴えた。
(電気新聞07年12月3日)

大阪ガスの"エコウイル"の累計販売台数が4万台突破
 大阪ガスの家庭用ガスコージェネレーションシステム"エコウイル"の累計販売台数が、07年11月末までに4万台を突破した。全国計の約8割に相当する。03年に販売を開始し、05年以降は年間1万台を超えるペースで増えており、07年度は1万2600台を目標に掲げている。建築基準法改正の影響で新住宅着工数が落ち込んでいるものの、環境性、経済性を前面に打ち出し目標達成を目指す。
 エコウイルは電気出力1kW、排熱出力2.8kWでエネルギー利用率は85.5%(電気22.5%、熱63%)で、PEFCに比べて熱エネルギーの割合が高い。都市ガスが石油や石炭よりも環境面で優れている点、自宅にコージェンレーションシステムを設置する先進性、省エネ性、学習機能を取り入れた効率的な運転、割安な料金メニューなどが評価され、関西を中心に全国で普及が進んでいる。
 国の設備補助金も大きな後押しになっている。エコウイルは、ガスエンジン発電ユニット、排熱利用給湯暖房ユニット、台所・浴室リモコンのセット標準価格(税込み)で79万5690円で、07年度は15万2000円が補助されている。
 最近ではエコウイルと太陽光発電を併せて導入する戸建て住宅も徐々に増えており、大阪ガス営業エリアには800軒程度になっている。
 大阪ガスは太陽光発電を取り扱っていないが、併設した場合の環境性や買電減少・売電増加などのコストメリットを紹介し、販売の拡大につなげていく考えである。
(電気新聞07年12月6日)

GMがEV向け電池技術の開発に取り組む
 既報のアナハイムで開催された"EVS23"では、各社が最新の環境対策技術を披露した。 アメリカのGMは、同社の"E-Flex"と名づけられたプロジェクトで、LG化学、コンパクトパワー、A123システム社と共同で独自のリチウムイオン電池開発に取り組むことになった。同社のジョナサン・ロークナー副社長は「大きな挑戦だが、大きなチャンスがある」と意気込んでいる。
 アメリカ・エナーアイ社もハイブリッドカー向けのリチウム電池を展示し、「パワー、安全性、どれをとっても世界市場で通用する商品」と自身を見せた。
 EVS23では、電池以外にも大容量コンデンサーも電力貯蔵製品として注目された。日本ケミコンは DLCAPと称される電気2重層キャパシター、ニチコンも"EverCAP"シリーズの電気2重層キャパシター、韓国のLSケーブルもキャパシターを出品した。松下電器はEVや2重層キャパシター利用の電力バックアップシステムを発表している。
(電波新聞07年12月6日)