第135号 高密度水素貯蔵が可能なアルミ水素化物
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.SOFCの開発と実証研究
3.PEFCおよびDMFCの要素技術開発
4.FCV最前線
5.水素ステーションの開発と事業展開
6.水素生成・精製技術の開発
7.水素貯蔵・輸送技術開発
8.マイクロFC関連技術
9.FC周辺機器の開発と事業展開
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)JHFCプロジェクト
 JARIとENNAは7月19日、両団体が実施する経済産業省補助事業JHFCプロジェクトが、8月3日に同プロジェクトに参加するFCVを初めて沖縄県に持ち込むと発表した。教育支援事業への協力。(日刊自動車新聞07年7月20日)

(2)NEDO事業
 NEDOは"PEFC実用化戦略的技術開発/次世代技術開発"の研究開発テーマと予定委託先を決定した。それらは、評価解析技術分野で"高輝度放射光を用いた炭素アロイ型FCカソード触媒の評価(東京大学)"、"カソード触媒としての炭素ベース材料の触媒機能と材料特性の電子論的解明の研究開発(北陸先端科学技術大学院大学)"など8件、要素技術分野が"電極触媒担体の劣化抑制を指向した表面修飾炭素材料の研究開発(大分大学)"をはじめ4件である。(化学工業日報07年7月17日、電気新聞7月25日)

(3)地域開発事業
 経済産業省は8月2日、地域で産学官が連携して高度な実用化技術開発を行い、新産業を創出して地域経済の活性化を図る提案公募型の地域開発事業2007年度採択案件を発表した。自動車関連では、FCや水素、バイオ燃料など環境対応型の技術開発プロジェクトが選ばれた。具体的には、インテリジェント・コスモス研究機構の"FCV用MEMS湿潤水素センサーシステムの開発"、あきた産業活性化センターの"木質バイオマスからの新規バイオエタノール生産技術の開発"、岡山県産業振興財団の"自己診断機能付き車載用水素センサーとガス多項目化の研究開発"、福岡県科学技術振興財団の"新型電解質膜を用いる車載用補助電源SOFCの開発"が地域新生コンソーシアム研究開発事業に選ばれた。(日刊自動車新聞07年8月4日)

(4)ベンチャー挑戦支援事業
 経済産業省・中小企業庁は"中小企業・ベンチャー挑戦支援事業"で、石関プレシジョン(群馬県)の"燃料電池セパレータの低コスト生産技術の開発"など77件を選んだ。(日刊工業新聞07年8月6日)
2.SOFCの開発と実証研究
(1)PEC
 石油活性化センター(PEC)は、コスモ石油が運営しているJHFC横浜・大黒水素ステーションにSOFCを併設、発電試験を開始した。経済産業省からの委託事業の一環。08年1月まで実施する。(化学工業日報07年7月26日)

(2)TOTO
 TOTOは、一般家庭を対象としたSOFCのフィールド試験を、同社茅ヶ崎工場内で07年12月から08年7月まで実施する。茅ヶ崎工場内の食堂と事務所棟にそれぞれ1台の2kWシステムを設置、燃料には都市ガスを使う。フィールド試験では系統電力に接続して実使用条件下で運転を行い、発電ユニットの性能、システム運転条件、補機類の耐久性、エネルギー効率を評価・検証、2011〜12年を目標に、家庭用システムとして50万円/kWを切る発電システムの実用化を図る考えである。
 同社は衛生陶器製造で培った湿式法を採用し、セラミックスラリー、高温焼成などの技術を生かした低コストのセラミック製セル・スタックと発電ユニットの開発を進めており、国内5〜6社、海外2社にセル・スタックと発電ユニットを供給している。これまでに1kW発電ユニットで発電効率53%(LHV)、5,000時間の連続運転を達成した他、±50%の負荷変動に対する高い耐久性を確認した。セル構造は円筒型で、電解質と電極の4層から構成されており、押し出し成形で作製した空気極の外側に、スラリーコート法でインターコネクター、電解質、燃料極を製膜している。 (日経産業、日刊工業、電波、日刊建設工業新聞、化学工業日報07年7月30日、電波新聞7月31日、建設通信新聞8月10日)
3.PEFCおよびDMFCの要素技術開発
(1)山梨大
 山梨大学の渡辺教授らは、PEFC電極近くに存在する酸素の量を簡単に確認できる技術を開発した。特殊な試薬を塗った基材を電極の調べたい部分に配置し、外からレーザー光を当てると、酸素の量に応じて試薬が発光する仕組みである。FC内の酸素量は、電池内で反応が順調に進んでいるかどうかを調べる手がかりになるため、高性能電池の開発に繋がると期待している。すなわち新技術によって、FCの構造や運転条件を変えたときの酸素の減り具合から、内部で期待通りの反応が起きているかどうかが調べられる。同教授らは高い湿度でも働く試薬を作製、調べたい部分に均一に試薬を分散させる技術を開発して高精度な酸素量測定に成功した。(日経産業新聞07年7月26日)

(2)日立
 日立製作所、日立プラントテクノロジー、池上金型工業(埼玉県)は共同で、FCに使う電解質膜など樹脂にナノ単位の微細構造を転写する新しい金型を開発した。直径200nmの半球状のニッケルメッキを細かく貼り付けたベルト状で、連続して樹脂に微細構造を転写できるのが特徴であり、転写速度を従来の10倍に高められる。電解質膜を迅速に生産できる技術として08年度での実用化を目指す。(日経産業新聞07年7月30日)
4.FCV最前線
(1)ホンダ
 ホンダは08年に日米で発売予定の新型FCVの内装材として、植物性樹脂を用いた布地"バイオファブリック"の使用範囲を広げる。トウモロコシなどの植物を主原料としたポリエステル素材の布地を、シートだけではなくドアトリムなどの車室内で使用する部分を拡大し、内装材として本格採用に踏み切る。(日刊自動車新聞07年7月13日)

(2)トヨタ
 トヨタ自動車は、大阪で開かれる"第11回IAAF世界陸上競技選手権大阪大会(8月25日〜9月2日)"にハイブリッドカー"プリウス"134台を含む計220台の公式車両を提供すると発表した。プリウスの他には、FCバス"FCHVバス"が含まれる。(フジサンケイビジネスアイ07年7月14日、日刊自動車新聞7月17日)

(3)東海大とエルナー
 東海大学の庄善之准教授は、電気2重層キャパシターの電極にカーボンナノチューブ(CNT)を添加し、内部抵抗を1/4に抑える技術を開発した。この技術を基に、エルナーは大容量化が簡単な捲回型キャパシターの試作品を完成、技術的には100Fを超える大容量化の目途がついたとし、FCVの加速用電源などでの活用を見込んでいる。(日刊工業新聞07年7月23日、25日)

(4)日産
 日産自動車は、8月20〜26日に開催される"軽井沢8月祭"に、FCV"X-TRAIL FCV"4台を演奏者の送迎や環境教育用に提供する。このため水素ステーションを太陽日産の協力を得て現地に設置する。(化学工業日報07年7月27日、日経産業新聞7月30日)
5.水素ステーションの開発と事業展開
(1)ジャパンエナジー
 ジャパンエナジーは7月10日、太陽日酸、バブコック日立とともに舟橋油槽所で移動式水素ステーション"JHFC舟橋水素ステーション"の運用を開始したと発表した。東京都青梅市に設置していた設備を移設した。供給水素純度は99.99%、連続充填能力は乗用車2台。(化学工業日報07年7月12日、フジサンケイビジネスアイ7月16日、日経産業新聞7月17日)
6.水素生成・精製技術の開発
(1)神戸大
 神戸大学大学院工学研究科の市橋準教授らは、光触媒の酸化チタンに金属を担持させることにより、大幅に水素生成量を増大させることに成功した。担持方法を工夫することで酸化チタンのみの場合に比べて100倍以上の生成効率を達成しており、還元剤としてメタンを利用するので、気相反応で水素が得られる。具体的には、銀を担持した酸化チタンでは水のみで0.1〜1wt%の水素が得られたが、メタンを加えると生成量は3倍になり、更に紫外光だけでなく可視光にも活性を示す酸化チタンを用い、銀の替わりに別の金属を利用して担持方法を工夫すると、100倍以上の水素を得ることができた。水とメタンの反応では水素以外にCO2ができるが、CO2の温暖化係数はメタンに比べて1/21であり極めて低い。還元剤としてはメタノールやギ酸も用いられるが、メタノールはメタンから合成されるので、合成段階が不要になる他、気相で反応が行われる点が利点となる。太陽日射光の利用を考えると、日射時間により水素生成量が大きく変わるため、熱触媒と組み合わせることによって生成量を平準化し、それによって効率的な分散型水素生成・FCシステムが構築できるとみている。(化学工業日報07年7月11日)

(2)原産協会
 日本原子力産業協会は、高温ガス炉の実用化を視野に、用途や将来展開の可能性を盛り込んだ報告書を取りまとめた。導入シナリオとして、FCV向け水素供給、コンビナートの自家発電設備代替用、水素タウンエネルギー供給用を想定、2030年頃から高温ガス炉の導入を本格的に開始する見通しを示した。最高950℃の高温を利用できる高温ガス炉は、発電だけではなく、水素製造や高温の蒸気・水をつくる熱源として潜在的な利用価値を持つが、実用化へのプロセスは、FBRほどは明確ではない。原産協会ではこのような長期展望を示すことで、国や産業界の積極的な支援で研究開発を促進したい意向である。(電気新聞07年7月12日)

(3)東北大
 東北大学多元物質科学研究所の斉藤所長・教授らの研究グループは、木材チップなどのセルロースに微量の金属水素化物を添加し、メカノケミカル(MC)処理と呼ばれる新たなセルロース分解プロセスを適用した後、加熱処理によって高純度水素を生産することに成功した。MC処理とは、固体の結晶構造を変化させ、結合状態の変化によって発現する物理化学的な性質の変化や活性化を利用して、多様な化学反応を起こさせるプロセスである。このプロセスはCOやメタンなど副生物が非常に少なく、高純度の水素を高効率で生成することができる点に特徴がある。同研究グループは、遊星ミルを用いてセルロースと微量の金属水素化物をMC処理し、セルロース結合を緩めることで変化させ、アルゴン雰囲気の電気炉による加熱、ガス化処理によって結合から水素を選択的に離脱させた。同教授は「金属水素化物が、ある種の反応速度を促進させる役割を演じているのではないか」と見ており、「間伐材を粉砕処理して加工ボードなどを製造する既存プロセスを活用し、熱源として400℃程度の廃熱が容易に利用できる環境であれば、水素を得ることが可能で、実用化の可能性は十分ある」と話している。(化学工業日報07年8月6日)
7.水素貯蔵・輸送技術開発
 日本製鋼所と東北大学金属材料研は7月20日、高密度で水素を貯蔵できるアルミ水素化物の合成技術を確立したと発表した。貯蔵密度は一般的な水素貯蔵合金の3〜5倍となる10wt%を示し、80℃の低温度で容易に水素を放出するため、高効率で軽量な水素貯蔵材料として活用できる。FCVや小型FC機器を開発中の国内ユーザーに100kgでサンプルを提供、アルミ水素化合物のリサイクル技術の開発や、アルミ合金と水素を直接反応させる技術開発も進める。東北大金材研の折茂准教授と中森助教の研究グループが、アメリカハワイ大学と共同でアルミ水素化物の代表的な3種類の結晶構造の合成に成功し、日鋼・室蘭製作所がアルミ水素化物を安定的に合成する技術を確立した。(日経産業、鉄鋼新聞、化学工業日報07年7月23日、日刊工業新聞7月30日)
8.マイクロFC関連技術
 ナノフュージョン(東京都)は、パソコンや携帯電話用マイクロFC向け燃料のメタノールなど液体を、低電圧駆動によって一定の流れを実現することに成功し、この技術を用いて開発した無動脈で無動作音のマイクロポンプを日本、アメリカ、アジアのマイクロFC向けに供給する。このため、日英両国のベンチャーキャピタル4社から計2億7,300万円の出資を得て、マイクロ流体診断キッドなど新たな用途開発と生産対応に乗り出した。具体的には、電気浸透現象を応用したマイクロポンプで、シリカの多孔質材料を通して流体が流れ、シリカ粒子が−、流体が+の帯電現象を起こす。ポンプ両極に電圧をかけると、機械的な動作なしに液体の流れを発生させることができる。マイクロポンプのサイズは外径8mm、厚さ4mm、重量は0.44g、電圧は30V以下である。圧力が40kPaでも100kPaでも一定の流れを実現することができる。耐久試験では連続で4千時間近くを達成しており、今後はユーザの要求する駆動と停止の繰り返し性能を実証する。このポンプを導入して、アルテア技研(横浜市)が、マイクロ流体診断キットを実用化した。(日刊工業新聞07年7月20日)
9.FC周辺機器の開発と事業展開
 サンリット商事(大阪府)は、家庭や店舗などへの設置を想定したFC用インバーターを発売した。重量は一般的なFC用インバーターの半分である約10kgに軽量化し、製品サイズも幅約400mm、奥行き約250mm、高さ約200mmと小型化した。価格は25〜35万円。交流電力の変動を制御し、スムーズな変換を実現して、直流から交流への電力変換効率は92%となった。部品にはアモルファス金属や炭素を使用し、高い周波数にも対応する。又各国の規格に対応することで海外販売にも注力する。(日刊工業新聞07年7月17日)

 ―― This edition is made up as of August 10, 2007――

・A POSTER COLUMN

バイオエタノール・ジャパン関西が生産設備を完成
 建設廃木材を原料としたエタノール製造プロジェクトは、大阪市堺市に設備が完成し、実用化に向けて本格的に動き出した。このプロジェクトは環境省の補助事業で、大成建設、サッポロビール、東京ボード工業、大栄環境、丸紅の5社が出資した"バイオエタノール・ジャパン・関西"が生産を担当するとともに、地域のガソリンスタンドの協力を得て、給油・自動車利用の実証など、需要サイドでエタノール利用の環境整備を行う。
 バイオエタノール・ジャパン・関西は、大阪府域で発生する建設廃木材を原料に醗酵などによって燃料用エタノールを製造する。07年1月に完成した設備は建設廃木材年間4万8,000トンから燃料用エタノール年間1,400kLを製造する能力をもっており、総事業費は約37億円、セルロース系バイオマスとしては最も条件の厳しい木材に挑戦することで話題を集めている。
 生産されたエタノールは、ガソリンに3%直接添加するE3利用を立ち上げるための環境整備が目的で、大阪府の公用車などで使用する実証試験を平行して進める。環境省は「地産地消によるゼロエミッションと地球温暖化対策を両立させる事業」と位置づけている。 (化学工業日報07年7月23日)

フロート型太陽光発電システム
 シャープは"フロート型"と呼ばれる水上浮遊タイプの世界最大級太陽光発電システムを、亀山工場(三重県)に隣接する雨水調整池に設置した。NEDOフィールド試験の一環。出力は200kWで、一般家庭50世帯分に相当する年間20万kWhの電力を供給する能力がある。シャープは「これまで水上は、太陽電池の設置場所としてほとんど利用されていない。フロート型の本格的な実用化を目指す」としている。
 このシステムは、多結晶シリコンタイプで、架台に1,216枚のモジュールを乗せた構造になっており、インバーターは100kWタイプを2基備えている。貯水池は亀山市の所有で面積12,000m2、システムの架台によって面積の1/3が覆われている。フィールド試験の期間は4年間。シャープは発電時の詳細なデータを収集し、それらを製品化のためなどに活用していく方針である。 (化学工業日報07年7月25日)

トヨタ自動車が今秋にも家庭充電可能なHVの公道試験
 トヨタ自動車は7月25日、家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車(PHEV)の公道試験を今秋開始すると発表した。ニッケル・水素電池が電源の"プリウス"をベースとした車両を開発、日、米、欧の3カ国で実証実験を行う。2010年代の早い時期にも市場投入し、エコカーを軸に世界市場で一段のシェアアップを狙う。
 電池を従来のプリウスの2倍積み、充電できる回路と充電口を設置した。モーターのみで走行可能な距離は13km(10.15モード)、200V、1時間〜1時間半で充電する。PHEVは、日本で試算した場合、プリウスと比較すると燃料代は41%削減(25km走行、深夜電力利用)が可能で、発売当初の車両価格は高くなるが、運転上の経済性が評価されれば商品性が高まると期待されている。又始動時にモーターを使うので、エタノール車に適している。
 ライバルのGM社はリチウムイオン電池の開発で2社と提携し、試作車"シボレー・ボルト"を公開している。トヨタ社はPHEVについてはリチウムイオン電池が基本としながらも、会見で「開発の時期はまだ見えていない」と繰り返した。 (日刊工業新聞07年7月26日)

微生物利用水素生成や微生物動力源FCの研究
 微生物の中には、水素を生成できるものがあり、それはヒドロゲナーゼという酵素の働きによるが、京大理学研究科三木教授や理化学研究所播磨研究所のグループは、ヒドロゲナーゼを生体内で作り上げる様々なタンパク質の立体構造を解明した。鉄や硫黄を含む複雑な金属錯体の反応が、どのような構造のもとに起こるかを突き止めた。ヒドロゲナーゼを持つ微生物を育てて水素をつくることができれば、FCの運転など次世代クリーンエネルギーへの応用に活路を開くことになる。(東京新聞07年7月31日)
 アメリカペンシルベニア州立大学の研究グループは、特殊な細菌を組み合わせて植物繊維のセルロースを摂取させ、電気を発生させることに成功した。グルコースなどの糖や廃水を使い、微生物を動力源とするFCが製造できるという。
 このFCは細菌が水や堆積物に含まれる有機物を摂取して電流を生み出す作用を利用する。研究グループはセルロースを醗酵させる微生物と、電気活性を有する微生物の2つに着目、この2つを組み合わせることによってFC機能を実現した。 (日経産業新聞07年8月2日)

マツダが水素RE車を経産省に納入
 マツダは8月1日、水素ロータリーエンジン(RE)車"RX-8ハイドロジェンRE"1台を経済産業省に納入した。マツダの水素RE車の納入は8台目。(中国、北海道、日刊自動車新聞07年8月1日)

日産エコデイーゼル車を08年秋に市場投入
 日産自動車は8月6日、次世代の環境対策車として"クリーンデイーゼル乗用車"を08年秋に国内市場に投入すると発表した。スポーツ多目的車(SUV)"エクストレイル"の一部車種に搭載する。環境対応車ではハイブリッド車が先行しているが、ガソリン車よりも燃費の良いデイーゼル車が今後伸びる可能性がある。10年までにアメリカや中国でも投入する。
 日産は提携先のルノーと共同開発した新型デイーゼルエンジン"M9R"を搭載したSUVを2月からヨーロッパで発売しているが、同社はM9Rを独自開発の触媒技術などを用いて更に性能を向上させており、この新エンジンは2009年から導入予定の新排ガス規制にも対応できる。デイーゼル先進国のヨーロッパでは新車の50%超がデイーゼル車である。ダイムラークライスラーやフォルクスワーゲンが開発にしのぎを削っている。日本メーカーでもホンダは最も規制の厳しいアメリカで"アキュラ"を09年に投入し、その後国内での発売を予定している。トヨタ自動車もいすゞ自動車と組んでデイーゼルエンジンの共同開発を進めている。
 デイーゼルが次世代の環境技術で急浮上しているのは燃費性能の高さで、ガソリンエンジンに比べて2〜3割り燃費が良く、CO2排出量が少ない。課題であったNOxや粒子状物質の抑制技術もここ数年で大きく進歩し、原油高で燃費への関心が一段と高まるとの思惑から開発競争は激化する一方である。しかし、課題の1つにガソリン車より20万円程度高くなるという価格設定の問題があり、消費者の動向が注目される。 (産経、中国、西日本新聞、河北新報07年8月7日)

片手で持てるガスタービンエンジン
 東北大学、IHI、東北学院大学、東京都立科学技術大学、東京大学のグループが、片手で持てるサイズ(直径10cm、長さ15cm、出力は不明)の世界最小ガスタービンエンジンを開発した。ガスタービンエンジンは、2次電池に比べて充電の必要がなく、同じエンジンサイズなら大きなエネルギーが取り出せる可能性がある。レシプロエンジンに比べて排気ガスがクリーンであり、出力は同じ大きさのFCよりも大きいという特徴を持つ。
 自立ロボットやパーソナル移動機械の電源などへの応用が期待される。 (化学工業日報07年8月9日)

地球温暖化ガス国内排出量は10年度で2.1%増、削減目標に届かず
 地球温暖化をもたらすCO2など温室効果ガスの2010年度の国内排出量が、現状の削減対策を続けても90年度比で0.9〜2.1%上回るとの政府による推計結果が8月8日明らかになった。京都議定書で認められた森林による吸収分や海外からの排出量購入などを見込んでも、10年度には90年度比3.3〜4.5%減に留まり、国際公約の6%削減には届かないことが分かった。
 政府の目標達成計画では、森林吸収で3.8%分、途上国での削減プロジェクトで発生した排出量の取得などができる京都メカニズムを利用して1.6%分を確保することになっているが、目標より1.5%〜2.7%分(2,000万〜3,400万トン)不足する。不足が生じたのは、計画を策定した2年前と比べて経済成長見通しの上方修正を迫られたことが主な要因とされる。更に高効率照明の普及や、信号待ちなどの際に自動的にエンジンが止まるアイドリングストップ車の導入など、目標達成が絶望しされている対策も多い。推計では、情勢次第でさらに排出量が多くなる可能性も否定していない。 (朝日新聞07年8月9日)

エネ庁が施策検討で太陽光・風力を3倍超に
 資源エネルギー庁は2010年度の新エネルギー導入見通しを纏めた。新エネルギー合計で05年度実績に比べて最大で原油換算752万kL増の1,910万kLに拡大、1次エネルギー総供給量に占める割合は同1.0%増の3.0%に拡大する。太陽光と風力発電が最大で3倍以上、廃棄物・バイオマスも2倍以上に増加する見込みである。
 導入見通しの内訳によると、廃棄物・バイオマス発電が05年度の252万kLから10年度は421〜586万kL、バイオマス熱利用が同142万kLから同277〜308万kL、太陽光発電が同35万kLから同66〜118万kL、風力発電が同44万kLから同99〜134万kLへ夫々拡大する。太陽熱利用や廃棄物熱利用、未利用エネルギー、黒液・廃材などを含む"その他"も05年度の685万kLから10年度には最大764万kLまで増加する見通しである。
 同庁は8月下旬に新エネルギー部会を開催し、今後の新エネルギー導入拡大の方向性を議論する。"美しい星50"の革新的技術開発プロジェクトにも位置づけられている高効率次世代太陽光発電、水素社会構築のためのFCなどの技術開発、新エネルギー導入拡大策など各種施策の強化・拡充について検討する。 (化学工業日報07年8月10日)

セラミックス素材でCO2回収
 イギリスのニューカッスル大学などの研究グループは、セラミックス素材を使って火力発電所からの温暖化ガス排出をほぼ0にする技術を開発した。このもともとFC向けに開発されたこのセラミックス素材は、空気中から酸素を分離するのに優れた特性を持つ。火力発電所からの燃焼排ガスにはCO2やNOxなどが含まれるが、開発したセラミックス素材が燃焼ガスから酸素のみを分離し、簡単に高濃度のCO2を取り出すのに役立つ。 (日経産業新聞07年8月8日)