第134号 家庭用SOFC実証運転に29基が参加
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.PAFCの商用化計画
4.SOFCおよび関連技術開発
5.家庭用SOFCの実証研究
6.PEFCおよびDMFCの要素技術
7.FCV最前線
8.改質および水素生成・精製技術の開発
9.マイクロFCの開発
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)レアメタル確保
 政府は6月11日、ハイブリッド車やFCVなどの製造に不可欠な希少金属(レアメタル)について、石油やウランなどに並ぶ資源外交における柱の1つに位置づけて、安定確保に乗り出すことを決めた。中国などの工業化に伴って世界的に需給が逼迫しており、政府のODAなど外交手段を駆使して民間企業の権益確保を全面的に後押しする。例えば4年で2倍に値上がりした白金は、業績好調な自動車各社の足元を揺さぶっている。(朝日新聞07年6月12日、日本経済新聞6月21日)

(2)HV、EVに乗員保護の安全基準
 国土交通省は、ハイブリッド自動車や電気自動車の乗員保護に関する安全基準を定める。 衝突時の感電などから乗員を保護するための基準を設けることにし、道路運送車両法の保安基準などを1部改正する。(日刊自動車新聞07年6月12日)

(3)新ベンチャー技術革新のNEDO事業
 NEDOは07年度からスタートした"新エネルギー・ベンチャー技術革新事業"の委託先公募を開始した。分野は、太陽光、バイオマス、FCと蓄電池、風力発電その他未利用エネルギーの4分野である。ベンチャー企業などが保有する潜在的技術の活用を図り、10年度以降の継続的な新エネ導入普及を導く新たな技術オプションの発掘・顕在化につなげる。事業化までのステップとして2つのフェーズを設け、フェーズ1(FS)が1年以内、事業費(全額負担)は1,000万円以内、フェーズ2(技術開発)は原則2年、同5,000万円以内を予定する。07年度の予算は3億円で、20〜30件の採択を予定している。(電気新聞07年6月11日、電波新聞6月19日、西日本新聞6月26日)

(4)水素貯蔵材料先端研究事業委託先
 NEDOは07年度から5ヵ年事業としてスタートした"水素貯蔵材料先端基盤研究事業"の委託予定先として、産総研、日本原子力研究機構、高輝度科学研究センター、物質・材料研究機構、高エネルギー加速器研究機構、上智大、広島大、北大、兵庫県立大、神戸大、大阪大、岐阜大、東北大の5機関、8大学の研究グループを選定した。07年度要求額は7億6000万円。官学で構成する拠点を持たないバーチャルな組織で、Spring-8やJ-PARCの活用なども予定している。(化学工業日報07年6月18日、電気新聞07年6月20日)

(5)PEFC次世代技術開発等
 NEDOはPEFC次世代技術開発で、07年度は電極の劣化抑制や耐CO被毒性電極触媒の開発など12件の研究テーマと委託予定先を決定した。評価解析技術分野や要素技術分野、新規概念分野について基礎研究開発を実施する。この内、日本原子力研究開発機構へは中性子イメージングによる高空間分解能FC内部可視化技術、筑波大には耐CO被毒性・耐腐食性電極触媒、北大には高CO濃度対応多元機能アノード触媒の研究開発を夫々委託する。(日刊工業新聞07年7月4日、日経産業新聞7月9日)
2.地方自治体による施策
(1)青森県
 青森県は、外部電源からの充電が可能なプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)や新エネルギーなどを活用した地域エネルギー供給システムに関する新たな研究会を7月にも設置する。青森県内にあるエネルギー資源を家庭や運輸向けに活用し、脱石油依存や地球温暖化防止に加えて地域経済の活性化を目指す。夜間電力を活用するPHEVの実用化については、2010年を目途に六ヶ所村での普及を想定した3シナリオを作成する。そして今後の地域エネ供給システムのモデル形成に反映させる。08年北海道・洞爺湖サミット開催前に青森市で開かれる予定のG8エネルギー大臣会合で、同県独自のエネルギー供給構想をアピールする。
 青森県はPHEVについて、六ヶ所村300世帯を対象に、内燃エンジン車の代替として普及した場合の3つのシナリオを作成、シミュレーションデータを纏めた。シミュレーション結果によると、PHEVが300世帯に各1台普及した場合、石油燃料の使用量削減や新たな電力需要の喚起に繋がり、電気による30kmの走行で、CO2排出量はこれまでの7割を削減し、エネルギー自給率も2割向上する。
 県はPHEVに加えて、風力発電や水素FC、エタノールなどのバイオ燃料を組み合わせることにより、地域内でのエネルギー自給や環境保全を更に向上させる。原子力発電についても、電力供給のみならず排熱を利用した水素精製などを想定している。 (電気新聞07年6月21日)
 上記記事に関連して、原産協会はこのほど"高温ガス炉導入シナリオおよび研究開発ロードマップ"と題する高温ガス炉将来展開検討会WG2の報告書を取りまとめ公表した。導入シナリオの検討では、1)FCV向け水素供給、2)コンビナート向け自家発電と蒸気供給、3)青森県が提唱している"水素タウン"向け水素・電力・熱供給構想に、高温ガス炉を利用しようと考えている。(原子力産業新聞07年6月21日)

(2)富山県
 富山県新世紀産業機構と富山県は7月2日、07年度の新商品・新事業創出事業の委託調査課題に、トナミ運輸などが進める"容器包装用アルミ系廃棄物を利用したFCシステムの開発"など12課題を採択した。(富山新聞07年7月3日)
3.PAFCの商用化計画
 アメリカ・ハイドロゲン社(オハイオ州)は7月3日、400kW級PAFCの技術開発が間もなく完了と発表、オハイオ州アシュタブラの化学工場に同工場で製造した水素を燃料に使う400kW級PAFCの商用・実証設備を建設する準備に着手した。PAFCが生み出す電気、排熱および水は工場内で消費する。同社以外でのPAFC商用設備としては、富士電機アドバンステクノリジーが98年から市場投入したプラントがあり、日本国内で23台の納入実績がある。PAFCの事業を展開する企業は、世界でもハイドロゲンと富士電機のみだという。(電気新聞07年7月5日)
4.SOFCおよび関連技術開発
(1)Jパワー
 Jパワーは07年度から、若松研究所で石炭ガス化炉の高効率発電で発生するCO2を分離・回収する技術の確立に向けた実証運転を開始する。日量150トンの石炭をガス化して複合発電すると同時に、CO2を回収する。これまでに松島火力発電所や、オーストラリアでIHIや現地資本とともに実証してきたCCSシステム技術や、蓄積してきた酸素吹き石炭ガス化複合発電技術を応用し、CCSを目的としたCO2回収技術を確立する。このガス化複合発電は、1500℃級のガスタービンで送電端効率45%を実現、更にSOFCを加えたトリプルコンバインドサイクル発電をすれば、同55%の効率を達成することができる。(日刊工業新聞07年6月21日)

(2)NEF
 新エネルギー財団(NEF)は家庭用SOFCの実証試験について、大阪ガス・京セラグループなどへ計30〜40台の規模で委託する。送電端で40%以上の効率を出している京セラのスタックを用いた大ガスグループが最も多くの台数を設置するが、更に1〜2グループも参加する。実負荷環境下における運転データ−、故障データ−、効率に関するデータ−などを収集・分析することで、SOFCシステムの実用化に向けた技術開発課題を明らかにする。5節参照。(日刊工業新聞07年6月26日、電気新聞6月29日)
5.家庭用SOFCの実証研究
(1)NEF
 NEFは、07年度"家庭用SOFC実証研究"に、京セラ、新日本石油、TOTOの3社がシステムを提供し、東京ガス、大阪ガスなど6社が一般住宅などへの設置や運転を行うと発表した。システムは計29台設置、出力は1kW級1台につき、提供者に1600万円を、設置・運転試験者には400万円をそれぞれ上限として助成する。実証研究は10年度まで。(読売、日本経済、産経、日刊工業、東京、京都、中国新聞、化学工業日報07年7月10日、フジサンケイビジネスアイ7月16日)

(2)大ガス
 大阪ガスは7月9日、NEFによる同上"SOFC実証研究"に参画すると発表した。大ガスが京セラと開発した家庭用SOFCコージェネレーションシステムを大ガスの社員世帯から抽出した戸建住宅20軒に1台ずつ設置、実証運転データを収集する。(産経、電気新聞07年7月10日)

(3)日石
 新日本石油は7月9日、SOFCの実証試験を始めると発表した。燃料として灯油を使うもの、LPGを使うものの2種類を試験する。試験期間は6ヶ月以上。同システムの発電出力は700Wで、発電効率は45%(LHV)が目標である。(朝日新聞、化学工業日報07年7月10日)

(4)PEC
 石油活性化センター(PEC)・将燃袖ヶ浦研究室は7月11日、灯油を燃料とするSOFC研究開発プロジェクト(05年から3年間の予定)で、発電効率52%(発電端LHV)を達成したと発表した。灯油は都市ガスなどに比べて炭素数が多いため改質が難しいが、これまで開発してきた改質技術を応用して1kW級SOFCスタックによる発電を可能にした。(電気、日刊工業新聞、化学工業日報07年7月12日)

(5)出光興産
 出光興産は7月11日、灯油燃料SOFCの研究開発で52%の発電効率を達成したと発表した。PECが実施する将来型FC高度利用研究の一環として行われた研究。(日経産業新聞07年7月12日)
6.PEFCおよびDMFCの要素技術
(1)京大等
 京都大学の大嶋教授と三菱樹脂は大きさが均一の微小な穴が無数に開いたプラスチックシートを開発した。材料はポリプロピレンの繊維とゴムの複合シートである。CO2を高圧の超臨界状態にしてゴムに吸収させると、ゴム分子の隙間にCO2分子が1つずつ入り込み、圧力を下げて加熱するとゴムの中でCO2が気化して微小な発泡ができる。超臨界状態で吸収させるCO2の量や加熱の条件などを変えることにより穴の直径を40〜500nmで制御できる。従来からPEFCのポリプロピレン製電解質膜は存在したが、シートを作る際に自然にできた穴を利用しており、比較的大きな穴があると、その穴を通じ水素と酸素が反応して発熱する。そのためシートを厚くする必要があった。新シートは穴の大きさが均一で微小なため、このような反応を抑えられ、膜をより薄くすることができる。(日経産業新聞07年6月15日)

(2)長岡科技大学
 長岡科学技術大学の梅田教授らは、静電噴霧法でPEFCの電極触媒を形成する技術を確立した。接着性に優れ電極反応活性が向上すると述べている。この静電噴霧法は、外部電場下で液体を霧化して対極上に堆積させる技術で、絶縁物に近い乾燥させた電解質膜に水滴を乗せて触媒液を噴霧すると、水滴部分にのみ白金/炭素の触媒が付着する。ナフィオンで検討したところ、塗工ムラがなく、水滴部以外には堆積せず、効率的に触媒層を形成することができた。1枚の電解質膜上での触媒層のパーターニング化も容易で、ユニットの積層や、セルの小型化などにも役立つと見ている。FCメーカーとの共同研究を募りながら実用化を目指す。(化学工業日報07年6月27日)

(3)大同工業大
 大同工業大学工学部の堀教授らの研究グループは、PEFCを無加湿で長時間作動する技術を開発した。カーボン電極を改良して水蒸気は保水、水滴は撥水する構造とすることにより発電時に発生する水分によって適度な湿度を保つことができた。具体的には、先ず電極のカーボン繊維の表面に凹凸をつけて材料の親水性を高め、発電時に発生する水蒸気によって電極が保水、更にカーボン繊維の配列を改良して撥水性を高めた。これにより発電時に飽和蒸気量を超えて発生する水滴は電極を通り抜ける。その結果、セル全体の湿度が作動に対して適当な範囲で保たれ、電解質の劣化を防いで耐久性が高くなる。今回の技術により、100℃では未だ燃料を加湿する必要があったが、20〜90℃の動作温度では完全に無加湿で作動した。今後は耐久能力5000時間を目標に耐久試験を行い、早期の実用化を目指す。(日刊工業新聞07年7月3日)

(4)NEDO
 NEDOは7月5日、FC内の酸素濃度分布の可視化に成功したと発表した。山梨大学渡辺教授をプロジェクトリーダーとする早稲田大学、島津製作所、富士電機アドバンストテクノロジー、日立製作所の研究グループが開発に成功した。今までPEFCのMEAやセルの作動状況をミクロンオーダーで可視化することは困難とされ、高性能・高耐久化への壁になっていた。同グループは、照射される光を吸収して特定の波長の光を発光し、その強度が酸素分圧によって変化する試薬を用いて、それをレーザ光で計測する技術を開発、この試薬を透明基材に添付してプラス極のガス流路上に配置することにより、酸素分圧分布の可視化に成功した。今後、可視化装置の高性能化を図るとともに、水分・温度を含めた同時測定可視化装置の開発を進め、システムの早期商用化を図る方針である。(電気、日刊工業新聞、化学工業日報07年7月6日、建設通信新聞7月9日)
7.FCV最前線
(1)アメリカGM
 アメリカ・GMはプラグインハイブリッド車(PHEV)の基盤となる"イーフレックスシステム"向けリチウムイオン電池の開発で、韓国LG化学子会社のコンパクトパワー とドイツのコンチネンタル・オートモーチブ・システムズと契約した。電池の能力や寿命などの性能、および電池と自動車の統合や接続などの最適条件を検証する。GMイーフレックスシステムは外部電源からの充電や、水素FCによる電気駆動を可能にするシステムであり、07年1月にコンセプトカー"シボレー・ボルト"をアメリカで発表、4月には中国・上海でFCに対応した自動車を展示した。電気駆動で約480km走行できる。(電気新聞07年6月27日)

(2)旭硝子
 旭硝子は、FCV用PEFCのMEA効率を、1.3V理論電圧で従来比20%引き上げたと発表した。同社のMEAはフッ素系交換膜の両側を白金・電極被覆樹脂、ガス拡散層で覆った5層構造で、膜の素材により定置式とFCV用に分かれる。04年から実証実験を開始したが、現在耐久性では120℃、50%の湿度で6000時間近く運転しても極めて低い劣化率にとどめており、又40から25mmへの薄膜化にも成功した。他方同社は70〜80℃、100%加湿では数万時間の耐久性を実現する見通しを得ている。(日刊自動車新聞07年7月2日、化学工業日報7月5日)
 旭硝子はMEAサンプル供給拡大をにらみ、千葉工場を候補に新設備の導入を検討する事業化調査(FS)に着手した。開発テーマを自動車に絞った取り組みが奏功し、様々な試験や検証用に引き合いが増えてきているからで、遅くとも08年には稼動させたい考えである。(化学工業日報07年7月5日)
8.改質および水素生成・精製技術の開発
(1)阪大
 大阪大学接合化学研究所の西川・田中准教授らの研究グループは、木屑などの木質廃棄物を有効利用して水素ガスを大量に作る技術を開発した。水蒸気のプラズマ(電離ガス)を使うのが特徴で、廃棄物に金属やガラスが混じっていても無害化する処理も同時にでき、ダイオキシンの発生も抑えられる。具体的には、アルゴンガスを満たした装置内で、高周波放電を発生させ、それに170℃に加熱された水蒸気を吹きつけて酸素イオンと水素イオンからなるプラズマを作る。これを木質廃棄物に含まれる炭素と反応させると、水素ガスとCOができる。60gの木炭を使って実験したところ、濃度が3300ppmの水素ガスが発生した。水蒸気プラズマの作用で炭素はほとんどCOに変わる。(日経産業新聞07年6月15日)

(2)東京農大
 東京農工大学大学院の越田教授らは、液体中でも動作する電子電源を開発した。対向電極、参照電極が不要で、高エネルギー電子を放出し、強い還元効果によって水素イオンを直接還元することにより、副次的な気体を発生させずに水素のみを直接生成することができる。ナノシリコンをベースとした材料を用いており、素子駆動が単純で集積化、小型アレイ化が可能なため、水素製造装置や酸化還元電位の制御、バイオ利用や医療分野など広い分野への展開が期待できる。同グループは陽極酸化というウエットプロセスを用いてナノ結晶シリコン層を作成し、数エレクトロンボルトオーダーで高効率に電子を放出することを発見している。又純水、生理食塩水中などで水素発生制御が可能なことを確認、電子放出効率と水素発生量などの相関関係について定量的な解析を行っている。(化学工業日報07年6月15日)

(3)JFCC
 ノリタケカンパニーリミデドと(財)ファインセラミックスセンター(JFCC)、および東京大学大学院工学研究科中尾教授は7月2日、天然ガスや都市ガスから水素を取り出すセラミックス製水素分離膜モジュールを開発したと発表した。多孔質セラミックスの細管(直径6mm、長さ40cm)の中に、特殊なガスを注入して反応させる方式によりセラミックスの非晶質シリカ膜を形成するが、膜には直径0.3nmの微小な穴が無数にあって、直径0.28nmの水素分子だけが通過できる。装置ではこの細管6本を束ねることによって、660L/hの流量で水素を取り出し、家庭用PEFC1台を作動することができる。パラジウムなどを触媒に使い化学反応でガスから水素を取り出す装置に比べて安価に水素を製造できる。既存装置に比べて低温の500℃で機能するが、室温でも能力が低下せず、耐久性も高い。2010年の実用化を目指す。(フジサンケイビジネスアイ、中日新聞07年7月3日)
9.マイクロFCの開発
 東京工業大学の谷岡教授と松本准教授らは、PEFCの小型化に繋がる新しい素材を開発、電解質をフィルムから中空繊維に変えた。繊維の直径は0.4〜2μmの範囲で調整できるので、中心部に直径が0.2〜1μmになるような中空の穴を作ることができる。繊維の内側に水素を通し、外側を空気に触れる仕組みによって発電が可能である。繊維状の電解質が実現すると、単位体積当りの反応効率が大幅に高まり、FCが小型化するのみならず、着衣型FCの開発も可能になるという。(日本経済新聞07年6月18日)

 ―― This edition is made up as of July 12, 2007――

・A POSTER COLUMN

日産とNEC、自動車用リチウム電池の供給で世界市場トップを狙う
 日産自動車とNECは、ハイブリッド車や電気自動車向けのリチウムイオン電池を、富士重工とフランス・ルノーに供給する。日産は親会社のルノーの他、トヨタ自動車と資本提携関係にあるグループ外の富士重にも供給し、量産化で競争力を高める。アメリカ・フォードモーターとも供給に向けて交渉しており、世界市場でトップシェアの30%確保を目指す。(読売新聞07年6月14日)

トヨタが低公害デイーゼルエンジンをいすゞに生産委託
 トヨタ自動車は低公害型エンジンの生産を資本提携先のいすゞ自動車に委託する。いすゞが約300億円で北海道に専用工場を新設、トヨタの欧州向け小型車用に、2012年を目途に年約20万台の供給を始める。新工場は、いすゞの生産子会社"いすゞエンジン製造北海道(苫小牧市)の隣接地に建設する方向で調整している。生産するのは両社が共同開発する排気量1,600CCのデイーゼルエンジン。素材にアルミニウムを採用して大幅に軽量化し、最先端の燃料噴射技術や触媒技術を採り入れる。
 デイーゼル車はガソリン車に比べてCO2排出量を2割程度減らせる。自動車各社が開発を競う低公害型の次世代デイーゼルは、触媒装置の開発などで、弱点であったNOxやPMの排出を大幅に抑えることが可能になった。 (日本経済新聞07年6月15日)

JHIFがPHEVやバイオ燃料を検討する新分科会を設立
 日本水素エネルギー産業会議(JHIF、平田会長)は、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)やバイオ燃料を用いた地域エネルギー供給システムを構想する新たな分科会を設立する。会員企業、団体に参加を呼びかける他、外部の学識経験者や行政、電力・ガス・通信業界などにも研究協力を求める。
 新分科会の名称は"地域エネルギー供給構想検討分科会"である。地域エネルギー供給システムの観点から成立性などを検証する。実用段階では、1)PHEV導入効果と定置用FCの給電熱効果、2)バイオマス利用を追加、3)原子力地域利用を追加、に分けて、効果を検討する。PHEVによる効果として、石油使用量の削減、環境保全、経済性向上などに加えて、2次電池を系統と繋げる"バッファー効果"を活用した地域エネルギーシステム安定化やエネルギーの有効利用も含まれる。PHEVの電源を非常用や系統運用の調整用に利用する"VtG(Vehicle to Grid)"の概念はアメリカで提案されている。 (電気新聞07年6月20日)

"エキシージ265E(E85バイオエタノール車)"試乗会
 イギリスのロータスエンジニアリング社は、静岡県駿東郡の富士スピードハイウエイでバイオ燃料"E85(バイオエタノール85%)"で走る"エキシージ265E"の試乗会を開催した。バイオ燃料技術や次世代燃料に対する同社の将来展望を披露した。(日刊自動車新聞07年6月29日)

トヨタが補記類で家庭用PEFCプロジェクトに参加
 トヨタ自動車は、PEFC用補機類で大幅コストダウンや高耐久性スタックなどを目的とした国のプロジェクトに参加する。今まで開発してきた自社技術の1部公開を含めて参加し、家庭用でも本格的な事業家を加速する。(日刊工業新聞07年6月29日)

プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の開発と商用化計画
 天然ガス自動車の製造・改造を10年間手がけ、700台以上の納入実績を挙げてきたフラットフィールド社(東京)は、トヨタ自動車のハイブリッド車"プリウス"を改造してPHEVの開発を目指している。現行プリウスの車両システムを改良することにより、外部電源からの充電を可能にし、電気駆動による走行距離の延長を図る。
 プリウスには電気で走行する"Eモード"と呼ばれる機能があるが、現在では2km未満しか走れない。同モードで走行できる距離を30km程度に伸ばすのが目標で、ニッケル水素電池を標準比3倍の3個搭載、充電器を車両に組み込み、家庭用コンセントでの充電を可能にする。100V電源で安価な夜間電力を使って、8時間かけフル充電する。又ハイブリッドモードに変わる設定条件を緩和するために、車載コンピューターの設定条件を変更しなければならない。7月末までにコンピューターの設定条件の変更を含めて改造を終える予定で、それ以降テスト走行やデータ収集を行う予定である。
 テストを終えた後には、ユーザから販売会社を通じた依頼を受けて改造するか、改造車を販売するか、何らかの形で商用化したいと同社は語っている。又将来的には、プリウス以外のトヨタ車種についてもプラグイン化を広げたい意向である。 (電気新聞07年7月4日)

BMWジャパンが水素自動車を公開
 BMWジャパンは7月3日、水素エンジン車"ハイドロジェン7"を日本で初公開した。日本での坑道走行の認証を17日までに取得する予定で、一般の人々を対象にした試乗会を開催する。 (フジサンケイサンケイビジネスアイ07年7月4日)

自民党実務者会議がバイオ燃料などに優遇税制拡充を盛り込んだ中間報告書
 自民党の農林、経済産業、国土交通、環境の4部会実務者会議は7月5日、地球温暖化対策の重要課題について中間報告をまとめた。目に見える効果を引き出すために、省エネやバイオ燃料などへの優遇税制拡充などを盛りこんだ。(北海道新聞07年7月6日)

経済産業省がエコイノベーションを推進
 経済産業省は、ゼロエミッション型エネルギー供給システムなどの"エコイノベーション(環境重視の技術革新)"を推進する。次世代軽水炉や中小型原子炉の開発を始め、CO2の分離・回収、EVやPHEVなどのインフラ整備に取り組む。OECDなどの場でも各国の工程表作成などを主導したい考えである。産業構造審議会の産業技術分科会が報告書を纏めた。08年度の概算要求にも反映される見込み。
 ゼロエミッション型エネルギー供給システムでは先進的原子力技術、高効率石炭利用技術、電力利用の高度化などを推進する。その他、シリコンをほとんど使わない薄膜系シリコン太陽電池、メンテナンスフリーの蓄電池技術開発の促進、家庭用FCの効率向上と価格低下のための研究を強化し、普及拡大を促す。輸送システムの革新も進め、FCVやEV用次世代バッテリー開発、普及に向けた基盤整備を進める。