第132号 07年度には定置用930台の実証運転
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.MCFCの開発と事業展開
3.PEFCおよびDMFC要素技術開発
4.家庭用PEFCの実証と事業展開
5.FCV最前線
6.FCによる移動体
7.水素ステーションの開発動向
8.改質および水素生成・精製技術の開発
9.水素貯蔵・輸送技術の開発
10.水素・FC関連センサーの開発
11.マイクロFCの開発動向
12.その他のFC関連技術
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)日中エネルギー協力セミナー
 4月12日午前に開催された日中エネルギー協力セミナー(180社が参加)で、日本と中国のエネルギー関連企業や研究機関が6件の合意文書に調印し、エネルギー利用の効率化や新エネルギーの利用に向けて、両国の企業、研究機関の間で多くの合意がなされた。 その中で新日本石油は、中国最大の石油会社"中国石油天然気集団(CNPC)"との間で、FCやコージェネレーションの技術協力を拡大することに合意した。(日本経済新聞07年4月12日、日経産業新聞4月13日)

(2)NEDOのFC次世代技術開発
 NEDOは07年度の"PEFC実用化戦略的技術開発/次世代技術開発"の依託先公募を開始した。(電波新聞07年4月30日)

(3)消防庁
 消防庁は、決められた安全対策を講じれば、既存のガソリンスタンド(SS)に水素供給設備を併設できるよう消防法を改正する。FCVや水素自動車などが誤ってガソリン軽量機に衝突しないよう誘導することや、漏れた水素が溜まることのないような構造にするなど、安全措置を義務付ける。消防庁の"水素供給施設の安全対策に関する調査委員会"が報告書をまとめた。係員のいないセルフスタンドへの水素供給設備については、FCVなどがガソリン供給エリアに誤って進入し、ガソリン軽量機に衝突する恐れがあると指摘、係員による誘導や誤進入を防ぐ表示を設置するなど、安全対策が必要であるとしている。又屋内給油所への水素供給設備の設置については、充填時などに漏れた水素がキャノピーに溜まる恐れがあるため、キャノピーを水素が滞留しない構造とすることや、電気設備も防爆構造にする必要があるとした。(日刊自動車新聞07年5月10日)

(4)特許庁
 特許庁は5月9日、エネルギー、ライフサイエンス、社会基盤に関する特許出願動向調査の結果をまとめた。エネルギー分野ではFC出願数の増加が目立ち、日米欧への出願件数で日本勢が67%を占めた。1998年から2004年までのFC関連企業別出願件数では、日産自動車1980件、トヨタ1546件、ホンダ1526件の順に自動車メーカーがトップ3を占めた。次いで松下電器980件、三菱重工456件、東芝376件、三洋電機456件となっている(フジサンケイビジネスアイ07年5月10日、電気新聞5月11日)

(5)近畿経済産業局
 ネオクラスター推進共同体(事務局:関西情報・産業活性化センター)は、次世代の電池作りを目指す"新エネルギー技術創生研究会"を6月下旬に結成する。大企業と中小企業が共同して2010年を目途にFC、2次電池、太陽電池の3部門で新製品・技術を開発する。FC関連では、中小企業の得意技術であるメッキや微細加工を取り入れ、周辺機器の共通化やコスト低減に挑む。大学や研究機関の協力も得る。(日刊工業新聞07年5月10日)
2.MCFCの開発と事業展開
 韓国のポスコ社は、慶尚北道および浦項市と覚書(MOU)を締結し、子会社のポスコパワーが2010年までに発電用100MW規模のMCFC工場を建設することにした。計画によると、ポスコパワー社は2期計画で工場を建設し、それを慶尚北道および浦項市は行政面から事業を支援することになる。両地方自治体は現在推進中の東海岸エネルギークラスター整備計画にFCの導入を盛り込んでおり、関連産業の集積地として育成していく方針である。ポスコは2003年に浦項産業科学研究院(RIST)や浦項工科大学と基礎技術開発をスタート、07年2月にはアメリカのフューエルセルエナジー社と技術移転契約を締結してポスコパワーとともにFCの本格事業化を推進しており、将来は完全国有化を目指している。(化学工業日報07年4月12日)
3.PEFCおよびDMFC要素技術開発
(1)日本ペイント
 日本ペイントは、首都大学東京の種村教授らと共同研究で、白金などの貴金属ナノサイズ粒子を室温でカーボンと化学的に合成する技術を開発した。白金化合物を水と有機物の混合溶媒に溶かした溶液において、市販のカーボン粒子を溶かし、その後他の有機溶媒を追加すると、白金イオンが還元されてカーボン粒子の表面に付着する。続いて水で洗浄しながらろ過して不純物を取り除き、室温で乾燥させる。これらの工程により、粒径約3nmの白金ナノ粒子が付着した粒径50〜100nmのカーボン粒子を得ることができた。用途としてPEFCの電極用、自動車の排ガス浄化用、センサー用などを視野に入れている。(日経産業新聞07年4月18日)

(2)東京理科大
 東京理科大理工学部の早瀬講師は、厚さ250μmの薄型シリコン電極を開発した。湿式メッキで多孔質シリコン層が多孔質白金層に改質する現象を発見し、これを利用してプラズマエッチングのストップ層に利用する新一体成形プロセスを開発した。すなわち、多孔質シリコン層を湿式メッキによって白金を堆積させることにより、シリコンと白金が置換され、スポンジ状の多孔質白金層が形成できることを発見した。開発された電極は、微細加工技術でシリコン基板に燃料流路を刻み、背面からエッチングで形成した多孔質層をメッキして触媒とする構造になっている。又従来の四価の白金イオンを成分としたメッキ液に二価の白金イオンとフッ素を加えることにより、多孔質層の崩壊抑制に成功した。この電極と膨潤が少ない細孔フィリング膜を用いて製作したセルで、出力密度35mW/cm2を実現した。今後はFCスタックの製作へ進み、白金-ルテニウム触媒層の形成にも取り組む予定である。(化学工業日報07年5月8日)
4.家庭用PEFCの実証と事業展開
(1)新日石とコスモ石油
 新日本石油とコスモ石油は4月10日、家庭用FC事業で提携したと発表した。新日石はコスモにLPGおよび灯油を燃料とするPEFCシステムをOEM供給し、両社で市場開拓を進めるほか、機器の共有化やコストダウンを狙った共同開発を行う。コスモは従来機器と平行して販売する方針であるが、将来は規格を統一する。(日本経済、産経、電気、日経産業、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報07年4月11日、建設通信新聞4月16日)

(2)07年度実証事業
 都市ガス、石油元売りなど14社は、07年度に家庭用FC930台で実証事業に参加する。NEFが4月20日に助成先を発表した。新日石が06年度より95台、東京ガスが50台増やし、両社で実証台数の2/3を占めた。燃料別では都市ガスが355台、LPGが424台、灯油は151台となっている。1台当りの助成上限は350万円。(日本経済新聞07年4月21日、日刊工業新聞4月23日、日経産業新聞4月24日、電気新聞5月7日)

(3)東邦ガスの実証評価
 東邦ガスが顧客宅で実施している家庭用PEFCコージェネレーションのモニター試験で、石油などの1次エネルギー消費量は平均8.9%の省エネ効果があり、CO2排出量は平均26.6%削減効果があったと発表した。同社システムの省エネ性と環境性を実証できたとしており、1台当たり470万〜790万とされるFCのコストダウンを図り、2010年での商品化を目指す。モニター試験では国からの助成金(1台に付き最大350万円)を得て、東海3県(愛知、岐阜、三重)の顧客を対象に、05年に12台、06年に40台設置した。07年度は、信頼性の確保、耐久性の検証に加えて、省エネルギー性の追及、施行面での低コスト化を推進するため、新たに38台を追加、これによりモニター導入数は合計90台となる。(電気、日刊工業、中日新聞07年5月8日)
5.FCV最前線
(1)トヨタ
 トヨタ自動車は4月19日、FCV"トヨタFCHV"を事業用貨物車として中部国際空港周辺で営業運行すると発表した。SUVベースの事業用貨物車をヤマト運輸に無償貸与し、空港周辺の配送業務に使ってもらう。自家用車よりも過酷な事業用車両の試験運行を通じて、性能や使い勝手を改善するためのデータを収集するのが目的。(日経産業、日刊工業、日刊自動車、中日新聞07年4月20日、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報4月25日)

(2)上海モーターショウ
 中国最大級の自動車展示会"上海モーターショウ"が4月20日上海市で開幕し、ハイブリッド車やFCV、水素エンジン車など環境対応車も多数展示された。中国は06年自動車販売台数でアメリカに次ぐ世界第2位の市場になっており、欧米や日本のメーカーが出展、28日までの会期中に約50万人の入場者を見込んでいる。GMはFCV"シボレーボルト"のコンセプトカーを世界で初めて公開、同社ワゴナー会長は「中国は広範なFCインフラの整備が進む最初の国になるのではないか」と述べた。(産経新聞、フジサンケイビジネスアイ07年4月21日、日経産業新聞4月23日)
6.FCによる移動体
 大阪市立大学の脇坂教授はFCで動く魚型ロボットを開発した。頭部で水素を発生させ、背中から取り入れた酸素を混ぜて胴体部で発電、それによって尾ひれを動かす。開発したのは長さ10cm、幅3cm程度の大きさで、頭部にはあらかじめ水を含んだ高分子と粉末カルシウムが入っており、カルシウム水素化物(詳細な記述はない)と水の反応によって水素を発生する。カルシウムの代わりにマグネシウムを使う方式を開発中である。(日本経済新聞07年4月27日)
7.水素ステーションの開発動向
 岩谷産業は4月18日、関西電力と共同で、車載タイプ "液化水素型移動式水素ステーション"を開発したと発表した。5月上旬に関西圏で運用を始める。小規模需要を対象に直接現地を訪れ、水素を供給する。水素発生に必要な構成機器を小型化し、トレーラーに全ての必要機器を搭載することにより、水素供給時間の短縮化を図った。液化水素タンクの貯蔵能力は約2,000Lクラス、35MPaの圧力で水素燃料車両に直接充填できるほか、40MPaでサテライトステーションなどの蓄圧器に充填が可能である。バイク向けに水素を供給するサテライト型ステーションの補給などに活用する。(日刊工業新聞、化学工業日報07年4月19日)
 岩谷産業は5月7日、関西空港水素ステーションを大阪府佐野市の空港島にオープンした。JHFCプロジェクトの一環で、4年間かけて実用化に向けた調査やデータ収集を行う。FCV1〜2台分の水素充填に対応した小型の簡易ステーションであるが、需要の増大に応じて設備を追加することができる。(毎日、電気新聞、化学工業日報07年5月8日)
8.改質および水素生成・精製技術の開発
 神戸製鋼所は天然ガスから99.99%の高純度水素を、80%回収することに成功した。天然ガスを精製して得られる改質ガスには、水素やCO,CO2、メタンなどが含まれるが、特にCOの除去が難しく、従来は水素回収率が70%に留まっていた。新手法は銅化合物を添加した吸着剤を利用してガス中のCOを除去しているが、これは従来使用されていた吸着剤に比べて7倍のCO吸着力を発揮する。したがって、装置の大きさが30%程度縮小され、コストの低減が見込まれると期待されている。(日本経済新聞07年4月20日)
9.水素貯蔵・輸送技術の開発
(1)新日石と山口大学
 新日本石油と山口大学は、FCVや水素スタンド用水素貯蔵タンクで、マグネシウムと錫の複合系水素貯蔵材料を共同開発した。マグネシウムと錫からなる化合物の粉に、有機溶媒のシクロヘキサンを加えて混ぜ合わせることによって造られる。マグネシウムが水素を吸着するが、錫を使うことによって軽量化し、水素の放出温度を大幅に下げることができた。実証実験で、重量当たり3.5%の水素を吸蔵し、200℃の温度で水素を放出することが確認された。(日刊工業新聞07年4月9日)

(2)東海大学
 東海大学の久慈教授らは、安価な材料を用いて大量の水素を吸収できる新しい金属系物質を合成した。これはマグネシウムとアルミニウムでできた"金属間化合物"である。粒径が100μm前後のマグネシウムとアルミニウムの微粒子をタンクに入れ、真空にして室温で高速回転させて混合させる"メカニカル・アロイン法"を採用することによって、ガンマ相だけの合成に成功した。マグネシウムの配合量は基本の組成に対して0.8〜1.2倍の間で調整できる。最大1.2倍にし、触媒としてニオブ酸化物を1%加えたとき、4.3%の水素ガスを吸排出した。300℃では水素ガスの吸収と排出はともに1時間程度ででき、吸収した水素を全て排出できる。今後は触媒材料の選択によって動作温度を下げるなど性能条件の向上が実現できると期待している。(日経産業新聞07年4月27日)
10.水素・FC関連センサーの開発
 日本特殊陶器は4月19日、熱伝導式水素センサーを開発したと発表した。シリコンMEMS技術を適用してダイヤフラム構造のマイクロヒーターと温度センサーを集積した超小型検知素子で構成され、精微なセンシングアルゴリズムを構築した電子回路を持つ。パッケージング技術を駆使することにより高湿度環境に対応可能で、FCの水素漏れに対する予防安全と、高効率な発電制御の両用途に適用できる。水素センサーの用途の1つとして、FCガス配管内環境での水素濃度のモニターとしての利用が想定されるが、配管内は高濃度の湿度とFCのシール材から揮発する有機シリコンガスが混在するので従来型センサーでは耐久性が十分では無かった。新開発の水素センサーは、微量の水素による極めて微小な熱伝導率の変化(水素による冷却)を検出し、又電子回路とともに堅固なセンサーハウジング内にパッケージされているので、有機シリコンによる触媒被毒の可能性が回避されている。(日刊工業、電波、中日新聞、化学工業日報07年4月20日、日刊自動車新聞4月21日)
11.マイクロFCの開発動向
 アメリカのメデイステクノロジーズは、マイクロFCと充電器をセットした"24/7パワーパック"の商業販売を開始したことを明らかにした。最初の顧客はマイクロソフトで、4月13日に出荷された。この24/7パワーパックは、スマートフォンを含む携帯電話や携帯情報端末(PDA)、オーデイオプレーヤー、ゲーム機、デジタルカメラなどの民生用途以外に軍事用途への展開も視野に入れて開発された製品である。(化学工業日報07年4月19日)
12.その他のFC関連技術
 オーストラリアのビール会社とクイーンズランド大学が、微生物を使ったFC発電を開発している。バクテリアを使ってビールの醸造排水に含まれるデンプンやアルコールから水素を取り出しFCで発電する構想で、発電と同時に廃水の浄化ができると述べている。(フジサンケイビジネスアイ07年5月5日)

 ―― This edition is made up as of May 11, 2007――

・A POSTER COLUMN

経済産業省による電気自動車の開発計画
 経済産業省は自動車や電機業界、大学と協力して、電気自動車の本格普及に向けた共同開発に乗り出す。2015年を目途に、価格が現在の15%程度になるリチウムイオン電池を開発し、電気自動車車両の販売価格を160万円程度に抑えるとともに、充電スタンドの普及や優遇税制など利用奨励策も検討する。更に2030年には1回の充電で500kmの走行が可能な電池を開発する。(日本経済新聞07年4月8日)

アメリカDOEがプラグイン・ハイブリッド車開発に17億円投入
 アメリカDOEはプラグインハイブリッド車(PHEV)用電池の研究開発に1,400万ドルの資金を拠出する。アメリカの革新的電池コンソシアム(USABC)の要望に応えた施策で、1回の充電で40マイル(約74km)を走行できるPHEV用電池の開発を目指す。アメリカは中東からの石油輸入依存度を低減するために、エタノール燃料やハイブリッド車両用電池の開発を表明している。(電気新聞07年4月12日)

日産自動車とNECがリチウム電池量産へ向けた新会社を設立
 日産自動車とNECは4月13日、高性能リチウムイオン電池の開発・販売を手掛ける共同出資会社"オートモーテイブ・エナジー・サプライ"(相模原市)を4月19日に設立すると発表した。NECの子会社NECトーキン(仙台市)も出資参加し、当面はトーキンの富山事業所なで試験生産するが、量産化に向けた新工場の建設も検討している。 高性能自動車用電池は、トヨタ自動車が松下電器産業と共同開発を進めているほか、三洋電機も実用化を目指している。 (朝日、毎日、日本経済、東京、中日、西日本新聞、河北新報07年4月14日、化学工業日報4月16日)

三菱自動車はGSユアサと新会社
 三菱自動車は5月8日、ジーエス・ユアサコーポレーション(GSユアサ)、三菱商事と共同で、リチウムイオン電池の製造会社を設立すると発表した。新会社は将来他の自動車メーカーにも電池を供給したいと考えている。GSユアサが51%、三菱商事が34%、三菱自動車が15%それぞれ出資して半年以内に約30億円を投じてGSユアサ本社工場(京都市)内に生産ラインを新設する。09年までに稼動し、初年度に電池セル(厚さ4cm、横約17cm)20万個の生産を予定している。
 三菱自動車の子会社が生産していたリチウムイオン電池に比べて、1回の充電で走る走行距離が130kmから200kmに増え、電池にかかる費用も大幅に減らせるという。「電池の調達先が確保でき、電気自動車の実用化が視野に入ってきた」と三菱自動車の相川常務は記者会見で語っている。又プラグイン・ハイブリッド車などへの利用も想定している。 (朝日新聞07年5月9日)

国産バイオ燃料への取り組み
 国産バイオ燃料の拡大に向けて国も本腰を入れ始めたが、代表的なのがガソリン代替のトウモロコシやサトウキビを原料にしたバイオエタノールと、軽油代替で廃食油などから作るバイオデイーゼルである。
 政府は07年2月下旬、「国産バイオの大幅な生産拡大」と題した工程表を公表したが、それによるとバイオ燃料の年間生産力を、2005年現在での約30kLを、30年度には600万kLまで向上できる可能性があると強調している。工程表によれば、現時点で使えるもの(規格外農産物、サトウキビ、建設廃材)、今後5年で技術開発するもの(稲わら、製材工場残材)、今後10年で技術開発するもの(林地残材、ゲノム情報を利用した新品種)のように原料の範囲を広げていくことを目指している。
 政府の動きに呼応して、民間での動きも活発化している。例えばアサヒビールは沖縄県伊江村で地元サトウキビを使ったエタノールの生産に参画している。大成建設や丸紅などが出資するバイオエタノール・ジャパン・関西が07年1月に堺市で廃木材を原料にエタノール生産を開始した。三井造船は岡山市真庭市で針葉樹の端材からエタノールを生産し、自動車燃料に使う実証実験に参加、07年度からは稲ワラやモミ殻等から生産する試験に乗り出すことにしている。新日鉄エンジニアリングは北九州市で食品廃棄物を活用する実験を進行中である。 (日経産業新聞07年4月20日)

海水取水口に付着する貝からのバイオガス生成技術
 発電所や工場等で冷却用海水を取り入れる取水口にムラサキガイなどの貝殻が付着すると、水の流れが悪くなるため、定期的に除去が必要であるが、これまでこれらを効率的に処分する方法がない上、屋外に長時間放置すると強い悪臭を放つなどから企業側は対応に苦慮していた。これらの貝からバイオガスを精製、エネルギーや資源として活用する技術が開発され、新技術として実用化を目指すことになった。エンジニアリング振興協会からの委託によって、鹿島、東大、産業技術総合研究所の3者が新技術を開発した。
 その技術の内容は、貝殻を酢酸や高圧のCO2で溶かし、溶かした液体からセメントや化粧品などの原料となる炭酸カルシウムを取り出し、残った貝殻は処分場などでメタン発酵させ、バイオガスを精製する仕組みである。鹿島では「貝殻と貝肉を同時に処理できるほか、コストも数万円/トンで可能」としている。実験では貝肉1gから約30mLのバイオガスが発生、これは天然ガス自動車では350km走行可能で、発電によれば1世帯10日分の電力を供給する容量である。又得られえたバイオガスを改質して水素を生成し、FCを運転することもできる。 (産経新聞お07年4月22日)

  国連IPCC第3作業部会報告書案
 国連"気候変動に関する政府間パネル(IPCC)"の第3作業部会が、4月30日からバンコクで開く総会で採択する予定の報告書案が明らかになった。地球温暖化を食い止めるための効果的な"緩和策"をまとめたもので、各国が平均でCO2を1トン削減する費用に100ドルをかければ、2030年に最大で現在の世界における年間総排出量を上回る300億トン削減できると提言している。
 報告書は1970〜2004年に世界の温室ガス排出量は70%増えたと指摘、追加的な緩和策を講じなければ、排出量は2030年までに00年比で25〜90%増加すると警告している。
 世界のCO2排出量は現在、年間約270億トンであるが、CO21トンを削減するためにかける費用が20ドル以下なら2030年には90〜180億トン、100ドルまでなら160〜300億トンを削減できると予測した。
 緩和策のうち、既に実用化されている技術では、原子力、太陽光や風力など再生可能エネルギー、ハイブリッド車、照明や冷暖房の効率化、省エネ製品を列挙、又今後実用化されれば大きな効果を期待できる技術としては、火力発電などで大量のCO2を地中に閉じ込める"CCS"、水素FC,高効率航空機、バイオ燃料用植物を育てるための遺伝子技術などを挙げている。 (読売新聞07年4月25日、毎日新聞5月5日)

PHEVは2015年に商用化ベースで年間10万台
 アメリカ・カリフォルニア州環境保護庁大気資源局(CARB)が、専門調査委員会によってまとめられた低公害車(ZEV)技術に関する報告書によって、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)が2015年にも商用化ベースで年間10万台に到達するとの予測結果を発表した。
 PHEVは2010年に1,000台、12年に1万台の商用化初期に入るとし、他方、電気自動車(BEV)は15年まで商用化段階が続き、30年から量産化が始まると予測している。 (電気新聞07年4月26日)

バイオエタノール混入ガソリンの試験販売がスタート
 バイオエタノールを混入したガソリンの試験販売が、4月27日首都圏のガソリンスタンド計50ヶ所で始まる。原料調達や普及に向けた課題は多い。(毎日新聞07年4月26日)

バイオエタノールによるCO2排出効果の検証
 バイオエタノールのCO2排出量を正確に見積もる研究が進んできた。
 三菱総合研究所はブラジル産エタノールを日本で消費するまでの全行程で排出されるCO2の量を分析した結果、ガソリンによるそれと比較して1/5であった。すなわち、エタノールは熱換算量で1GJ当り15.9kgのCO2を排出するが、ガソリンにおいてはそれが80kgとなる。
 システム技術研究所の試算では、一般的なブラジル産エタノールであれば、生産や輸送に投入した化石燃料の約6.7倍のエネルギーが得られる。これはガソリンとほぼ同じ値であるが、エタノールの場合は燃料として消費したときCO2の排出量は0となるので、エタノールのCO2削減効果はそれだけ大きくなる。
 しかし、原料や生産効率によってはCO2排出量が増える場合もあり得る。産業技術総合研究所がサトウキビ由来のタイ産エタノールによる排出量を分析したところ、古い生産設備を使用した場合などではCO2排出量が増加する可能性のあることが判った。又トウモロコシから作るアメリカ産エタノールは、投入した燃料の1.3倍のエネルギーしか得られない。サトウキビに比べて生産工程が複雑で、トウモロコシの粉砕などにエネルギーを消費するからである。トウモロコシのエタノールはガソリンよりもCO2排出が多いとの見方もある。
 鳥取大学の簗瀬教授は「食料を原料にしたエタノールの生産には限界が見えている」と語っている。サトウキビやトウモロコシに比べて、生育段階で必要なエネルギーが少なくてすむ樹木や雑草など食料以外の植物から、エタノールを生産する研究が進んでいる。 (日本経済新聞07年4月30日)