第127号 建築設備用水素利用システム構想
Arranged by T. HOMMA
1.総合エネルギー調査会
2.地方自治体の施策と活動
3.SOFCの開発と関連事業
4.PEFC要素技術の開発と事業化
5.家庭用PEFCシステムの実証計画と事業化
6.業務用PEFCの開発と事業展開
7.FCVその他FC移動体の開発最前線
8.水素生成・精製技術の開発
9.水素輸送・貯蔵技術の開発
10.水素利用システムの構築
11.携帯用マイクロ電池の開発
12.DCFCの研究開発
・A POSTER COLUMN
1.総合エネルギー調査会
 総合エネルギー調査会新エネルギー部会は10月26日、新エネルギーの方向性を示す中間報告を大筋で了承した。エネルギー構造の変化を踏まえ、今後は再生可能エネルギーの導入拡大と、革新的なエネルギー技術の開発・利用の促進を積極的に進めるよう提案している。特に官公需での新エネルギーの採用、技術開発の加速、バイオマスエネルギーに関する取り組みの強化を謳っている。技術開発については、太陽電池とFCの研究・開発を引き続き推進するよう求めた他、製品の低価格化や新エネルギー設備の普及に直結するエネルギー貯蔵技術の高度化を急ぐよう提案した。バイオマスエネルギーについては、下水汚泥のエネルギー利用に"拡大の余地がある"と指摘し、汚泥処理で発生するメタンの有効利用や汚泥発電の拡大を促す必要があると述べている。(日刊建設工業新聞06年10月30日)
2.地方自治体の施策と活動
 山梨県は11月6日、県科学技術会議を開き、"やまなし科学技術基本計画"の原案について協議した。原案では、重点投資分野にFCの実用化を盛り込む考えなどが示された。(山梨日日新聞06年11月7日)
3.SOFCの開発と関連事業
(1)産総研等
 産業技術総合研究所と日本ガイシは、600℃でも高出力が期待できる小型高出力密度のSOFCモジュールを開発した。ハニカム構造のマンガン系ペロブスカイト材料(LSM)にセリア系酸化物(GDC)、GDCを含むニッケルを積層した材料によってセルが作成されている。具体的には、256個(16×16)の空間(0.7mm角)を有する15mm角のマンガン系ペロブスカイトのハニカム構造体を混練抽出により製造した後、サブミリ角のチャンネル中にGDCをコートし、1300℃で焼結する。その後セリア系酸化物を含むニッケルをコートし、1100℃以上で焼成して作製される。ハニカム基材中のチャンネル壁面には20μmの緻密な電解質膜とポーラス電極として厚さ10μmの酸化ニッケルGDC層ができており、急加熱、急速冷却にも耐えることが確認された。実証実験では、650℃で0.13W/cm2、700℃では0.23W/cm2、750℃では0.37W/cm2の発電性能を達成した。又ハニカム型セラミックス基材は、多数のチャンネル構造を押し出しプロセスにより一度に形成できるため、製造期間も大幅に短縮される。急速起動、停止運転にも対応可能で、小型化も実現していることから、自動車の補助電源やポータブル電池への応用が期待される。(日経産業、日刊工業新聞、化学工業日報06年11月1日)

(2)日本ガス協会
 日本ガス協会は、SOFCの規制緩和に向けた安全性の検証作業にほぼ目途をつけた。一般家庭や小規模事業者向けの10kW未満が対象となる。同協会は05年度から大阪ガス・京セラと東邦ガス・住友精密工業の2グループの家庭用SOFCを使って検証データの収集に着手したが、規制を見直す公的委員会へ提出するデータ収集はほぼ終了し、現在は追加的に求められたデータ収集を行っている。又検証機種を拡大するため、10月にアメリカ・アキュメントリックス製を新たに検証作業に追加し、11月末にはTOTOの機種も加える。実験作業で最大の障害となる常時監視義務は12月にも緩和され、その他設置に関わる規制も07年度中には緩和される見通しである。具体的には、電気主任技術者の専任や壁から3m以上離すことなどを義務付けている法規制に関して、電気事業法は07年度上期、消防法は07年度中に法令改正となる見込みである。(日刊工業新聞06年11月10日)
4.PEFC要素技術の開発と事業化
(1)東レ
 東レは自動車向けPEFC用電解質膜のコスト低減と耐久性を向上させる新しい技術を開発した。この電解質膜は炭化水素系材料で、膜の寿命は従来の約20倍になり、コストは1/10程度になると見ている。特に自動車向けの場合、発電と停止を繰り返すため、膜の膨張と収縮が頻発し、破れ易いという問題があった。東レは独自に開発した炭化水素系高分子が規則的な構造を作るようナノレベルで制御することによって、膜の強度をフッ素系の約3倍に高めることに成功した。又従来の膜は水素を透過するクロスオーバーの問題があり、それが膜を劣化させる要因の1つであったが、開発した膜では水素の透過を1/10に抑えることができた。これらの結果、膜の寿命はフッ素系に比べて20倍に向上すると予想している。(日本経済新聞06年11月3日)

(2)日立
 日立製作所は、ナノサイズの微細構造を樹脂の薄膜上に高速で作製する技術を、池上金型工業(埼玉県久喜市)、日立プラントテクノロジーと共同で開発した。ベルトコンベヤーのように移動できる特殊なシート状金型を作製、それによって樹脂の薄膜に押し当てて微細な凹凸を作ることが可能になる。又連続処理が可能なため従来の10倍以上の速度で微細加工をすることができる。電解質膜の表面に細かな凹凸をつけることができれば、電気化学反応が活発になり、発電性能は向上すると期待されている。(日本経済新聞06年11月10日)

(3)JSR
 JSRは、電解質膜において、温度領域が広いなどの特徴を持つ製品の開発に成功し、既存のフッ素膜系製品に比べて飛躍的な性能向上のあることを確認している。JSRの電解質膜は、芳香族系炭化水素系樹脂が原料で、低温操作性については、−20℃までの使用に耐える(フッ素系では0℃)とともに、耐熱変形特性は、95℃でも変形を起こさない(フッ素系では70℃)、などに加えて、耐久性に関してもフッ素系よりも優れているという。自動車向けではホンダのFCVに搭載されるとともに、現実の使用条件における実用テストが進められている。又携帯用DMFC向けに出力特性と耐メタノール透過性のバランスを改良した膜も用意しており、メタノールと水の透過をバリアする層と取り入れることなどでメタノール透過性を大幅に低減することに成功した。(化学工業日報06年11月24日)

(4)日清紡
 日清紡はPEFC用カーボンセパレーターと電気2重層キャパシターを07年度にも本格事業化する。これまで進めてきたサンプル評価の結果、両製品ともに市場競争力が十分あると判断し、量産工場の建設計画を具体化する。(日刊工業新聞06年11月27日,化学工業日報12月1日)
5.家庭用PEFCシステムの実証計画と事業化
(1)新日石
 新日本石油は、家庭用PEFCコージェネレーションシステムの07年度設置先の募集をホームページ上で始めた。LPG仕様と灯油仕様がある。契約期間は3年で、メンテナンス費用として年6万円を徴収する。(日刊工業新聞06年11月2日、化学工業日報11月9日)
 新日本石油は特約店に対して家庭用FCシステムの技術研修を07年度から開始する。現在は新日石本体やスタックメーカーが定期点検や部品交換などを行っているが、研修ではこれらのメイテナンス作業を現場の特約店が自ら行えるように教育する。(日刊工業新聞06年11月8日)
 新日本石油は、東京ディズニーランド内の中央救護室に設置したLPガス仕様1kWPEFC(ENEOS ECO LP-1)の稼動を開始したと発表した。(化学工業日報06年11月15日)

(2)荏原バラード
 荏原バラードは、家庭用PEFCで4万時間の耐久寿命を達成したスタック"V3"(バラードが開発)の量産工場を荏原藤沢工場内に整備した。MEAについては、将来同工場で生産することも視野に、当面はバラードから導入、セパレーターは国内から調達してスタックに組み立てる。そして08年度以降には新スタックの1kW機を生産する体制を整える。東京ガスに納めて行ってきた今までの実証運転では、発電効率は33〜35%で、30%の負荷運転でも29%を実現、実際に家庭に設置した実用機では07年5月に1万時間の耐久性を目指している。(日刊工業新聞06年11月29日)
6.業務用PEFCの開発と事業展開
 新日本石油は灯油を使った業務用PEFCを06年12月中に実用化する。兵庫県尼崎市のプール施設で電源および熱源として利用する。発電能力は8.5kWで、灯油の持つエネルギーの36%を電力に、同45%を給湯に使う。プールの施行、管理を担当する三菱重工が兵庫県からの補助金を得てFCの導入を決めた。今回は試験目的ではなく、利用者が2000万〜3000万円の初期投資を負担する初めてのケースになる。新日石は今後補助金制度の充実も期待しつつ、FCの大型化への取り組みを進める予定である。(日経産業新聞06年11月20日)
7.FCVその他FC移動体の開発最前線
(1)GM
 アメリカGMのワゴナー会長は、11月6日午前、中国・上海市でのインタービューで、FCVを中国などアジア市場に投入する検討に入ったことを明らかにした。なおGMは上海市の韓正視聴を招いて最新のFCV"シボレー・シーケル"の公道試験を実施した。中国政府や上海市当局などと、水素ステーションなどインフラ整備について協議を進める方針である。(読売、中日新聞06年11月6日、日本経済、日経産業新聞11月7日、フジサンケイビジネスアイ11月8日)

(2)JHFC
 JARIとENAAが実施するJHFCプロジェクトは、11月からFCVの運転試乗会を定期開催すると発表した。試乗会は毎月1回、横浜市鶴見区の見学施設"JHFCパーク"で開催する。(日刊自動車新聞06年11月11日)

(3)FCバイク
 東京都立墨田工業高校・自動車科の生徒らは、佐藤教諭の指導で開発し、ナンバープレートを取得しているFCバイクを、11月16、17日の両日、日東工器が愛知県刈谷市
で行う50周年のフェアに出展する。正式には水素燃料使用のペダル式原動機付自転車で、FCスタック(200W)については、安価な中国製を購入して荷台に巻きつけた。栗本鉄工が開発した水素吸蔵合金のボンベ(貯蔵量500m3)を採用、日東工器製の水素供給継ぎ手を介して水素を供給する。ボンベ1本で時速30km/hで10時間連続走行が可能である。100万円で完成した。(日刊工業新聞06年11月16日)

(4)栗本鉄工所
 FC搭載の車椅子などが大阪国際会議場の"EXPOセミナー-in大阪"で公開された。栗本鉄工所(大阪)が開発したFC車椅子は、時速6km/hで、連続10時間の走行が可能であることなどが披露された。(読売新聞06年11月29日)

(5)バラード
 カナダのバラード・パワー・システムズは11月始めにジェネラル・ハイドロジェンとの間で、フォークリフト2,900台分のPEFC受注契約を結んだ。(電気新聞06年12月1日)
8.水素生成・精製技術の開発
(1)福島大学
 福島大学共生システム理工学類の佐藤助教授は、化合物半導体を用いて高純度の水素を安価に精製する原理を発見した。インジウム・ガリウム・ヒ素に炭素を加えた化合物半導体の膜を作製し、圧力差を利用して水素を透過させたところ、水素は陽子1つの水素イオンとなって透過するが、不純物は透過しないので、ほぼ100%の高純度水素を精製することができる。この方法による水素の精製は、貴金属のバナジウムを使う方法に比べて安価になることが期待される。(日刊工業新聞06年11月2日)

(2)東ガスとMHI
 東京ガスと三菱重工は、都市ガスから効率よく高純度の水素を得る技術を確立した。水蒸気改質の前に水素分離膜を組み合わせたもので、水素ガスの生成と分離処理を同時に行う"メンブレンリアクター"である。水素エネルギー効率で70%以上を達成するとともに、大幅なコンパクト化が図れる。具体的には、内燃式の水蒸気改質器の内壁周囲にチューブ状の水素分離膜モジュールを取り付けた構造で、水蒸気改質で生成した水素ガスを選択的に回収する仕組みである。モジュールは高純度パラジウム製薄膜(50μm)を多孔質金属支持体に取り付けたもので、減圧吸引によって99.99%以上の高純度水素ガスが得られる。透過速度はパラジウム・銀系に比べて7倍、他方COなど可燃性ガスはオフガスとして再び燃焼し、排熱回収して排出する。特徴は、改質反応温度が約550℃で低く、従来のシフト反応が不要であり、改質反応効率をアップしたことである。又設置スペースを従来方式に比べて1/3以下にすることができる。実証テストはJHFCプロジェクトの千住水素ステーションで実施する。又水素ステーションのみならず、オンサイト供給装置向けにも商品化を図る。(化学工業日報06年11月30日)
9.水素輸送・貯蔵技術の開発
 カナダのウインドソー大学の研究グループは、水素を吸蔵できる新物質を開発した。それはホウ酸塩を含む混合物で、温めると水素を放出し、冷やすと水素を蓄えるが、その詳しいメカニズムは分かっていないと云う。(日経産業新聞06年11月29日)
10.水素利用システムの構築
 (1)高砂熱学
 高砂熱学工業と産業技術総合研究所は、水素エネルギーを建築設備に利用する具体的な水素利用システムの枠組みを確立した。本システムは水素貯蔵設備(ニッケルを中心とした金属化合物による水素吸蔵合金タンク)、水電解設備、FC設備、排熱処理・熱回収設備で構成される。電気は建物の設備に、FCからの排熱は建物の空調などに有効利用する。水電解に必要な電力は太陽光発電など再生可能エネルギーが導入される。システムの核となる水素貯蔵設備については、タンク内の水素含有量と温度、圧力の相関性について数値解析モデル(設計ツール)を構築し、それによるシミュレーションと実用規模システムでの運転試験結果との比較で有効性が確認された。すなわち、水素貯蔵密度と圧力、温度の間で成り立つ水素貯蔵合金の特性曲線モデルを確立し、それに基づくタンク内の温度制御で、水素の吸着、放出をコントロールすることが可能になった。システムの総合効率は62.4%と報告されている。これにより1つの建物の中でエネルギーの貯蔵、生成、利用を完結し、自立的運転ができる可能性が見えてきた。又災害時におけるライフラインの確保にも役立つと期待されている。(日刊工業、建設通信新聞、化学工業日報06年11月1日、フジサンケイビジネスアイ11月3日、日経産業新聞11月9日)

(2)九州大学等
 海上に大型風車を設置し、風力発電を使って海水から水素を取り出す産学連携プロジェクトが始動した。プロジェクトには九大の他、京大、宮崎大など8大学の研究者と炭素繊維メーカーなど6社が参加している。洋上に6角形のコンクリート製土台(直径600m)を蜂の巣状に浮かべ、風を効率的に集めることのできる"風レンズ風車"(直径100m)を設置、電気分解によって生成した水素は船で陸上まで運ばれ、FC等によって電気に変換される。風車要素材として、疲労に強くてさびない炭素繊維強化プラスチックが使われている。耐用年数は100年、発電コストは原子力発電の半分以下と予想している。(西日本新聞06年11月4日、日本経済、東京新聞11月27日、電波新聞11月28日、建設通信新聞12月1日)
11.携帯用マイクロ電池の開発
(1)カシオ
 カシオ計算機は、メタノール改質方式を採用したノートパソコン向けPEFC(出力2〜4W)を試作した。DMFCに比べて発電出力が高く、製品化も早いと判断した。試作したマイクロFCはメタノールなどが流れる流路基板の大きさが縦150mm、横80mmで、流路基板には燃料のメタノール、発電反応に必要な水素と酸素、発電反応後に排出する水や炭酸ガスを流す多層構造の溝が配管されている。基板上に搭載されている発電反応を制御するセンサー、バルブ、ポンプ類などの補機類は、アルプス電気、オムロン、ミツミ電機、ドイツのフラウンフォーファーマイクロエレクトロニクス信頼性研究所と共同開発した。心臓部品のメタノール改質器は縦27.2mm、横46mm、厚さ2.8mmと超小型化されている。改質器は発熱量が49Wに相当する水素を発生する能力があるので、高出力のFCを搭載すれば20Wの出力を得ることが可能である。航空機内への持込が緩和される予定の07年度から試供品をパソコン各社に提供する。(日経産業新聞06年11月14日)
 カシオ計算機は11月29日、メタノールを吸い上げて高圧で噴射できるマイクロFC用超小型ポンプを開発したと発表した。ナノフュージョンが開発した電気浸透材料を使った電気浸透(EO)方式で、電気を流すとイオンが発生し、イオンの力で燃料を送り出す。ガス抜き構造で、マイクロFCの高効率化や低コスト化に大きく貢献する。サイズは縦11mm、横11mm、高さ4mm、容積は0.5ccで、100kPaの圧力で90μL/分のメタノールを噴射できる。07年度中のサンプル出荷を目指す。(日経産業、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報06年11月30日)

(2)ナノフュージョン
 ナノフュージョン(東京都)はマイクロFC向けに、メタノールなどの液を送るマイクロポンプを開発した。電気浸透現象を利用したもので、シリカの多孔質材料を通して液が流れる仕組みになっている。すなわち、シリカ粒子が−、流体が+の帯電現象を起こすため、ポンプの両極に電圧を掛けることによって、機械的部品無しに流体を流すことができる。開発したマイクロポンプは外徑8mm、厚さ4mm、重量は0.44gの円盤状で、駆動電圧は12〜24V、無脈動、無動作音を実現した。12Vで40μL/分の流量を0.7気圧で、24Vでは同100μL/分を1.5気圧で送り込むことができる。2000時間の耐久性をクリアした。(日刊工業新聞06年11月27日)
12.DCFCの研究開発
 東京工業大学の伊原助教授は、Direct Carbon Fuel Cell (DCFC)を開発した。プロパンガスなどの燃料を熱分解して固体炭素をアノードに析出させ、カソードに空気を供給する。5分間の熱分解で連続して83分間発電が可能であることを確かめた。固体炭素の析出は最大6回繰り返すことができる。出力密度は最大52mW/cm2で、携帯電子機器向けのDMFCと同等以上である。(日経産業新聞06年11月16日)

 ―― This edition is made up as of December 1, 2006――

・A POSTER COLUMN

水素自動車の開発最前線
 ドイツBMWは07年3月から水素自動車"ハイドロジェン7"のリースを始める。11月13日にこれを報道陣に公開した。最初の開発から6世代目の初めての実用車で、ガソリンとバイオフューエルの内燃機関で走行する。動力機関は6L12気筒のエンジンで、液化水素8kgとガソリン80Lを搭載し、最高速度230km/hで700km以上走行可能である。ボイルオフで発生する水素は、触媒燃焼により水蒸気となって放出される。如何なる走行状況でも2種の燃料切り替えが自由にできるのが特徴で、先ず欧州向けに100台程度をリースする。(日刊工業新聞06年10月30日、朝日、西日本、北海道新聞、河北新報、フジサンケイビジネスアイ11月14日、東京新聞11月15日)

大型リチウムイオン電池用新素材の開発
 産業技術総合研究所は11月6日、大型リチウムイオン電池用の素材として、従来よりも高容量、高出力で安価な新材料を開発したと発表した。資源的に希少なコバルトではなく、鉄やマンガン、チタンなどの安価な材料を使用し、素材コストを抑えた。
 新素材はプラス極の材料として開発したもので、鉄とマンガンを主成分とし、チタンについてはそれを含む化合物と含まない化合物の2種類が作られた。充放電容量は両タイプとも既存材料の1.5倍以上で、通電焼結法と呼ばれる製造過程を導入することにより高出力化を実現した。又、原材料費はコバルトをプラス極に使った電池に比べて1/3にまで低減する。
5年後の実用化を目指し、電池メーカーや素材メーカーと開発を進める予定。 (日刊自動車新聞06年11月7日)

バイオデイーゼルの開発
 トヨタ自動車は11月9日、業務提携で基本合意したいすゞ自動車に、植物油などバイオ燃料で走る新型デイーゼルエンジンの共同開発を提案する方針を明らかにした。今後3年程度での実用化を目指す。バイオデイーゼル車は現在のガソリンスタンドを活用して燃料の供給が可能なため、水素供給インフラを要するFCVに比べて整備費が少なくてすむ利点がある。
 トヨタが提案する新型エンジンは、バイオデイーゼル燃料(BDF)を使うが、これ以外にもDMEやGTLを使うタイプも研究する予定である。バイオ燃料は軽油と性状が異なるので、燃料を供給する制御装置や部品の耐久性を確保する技術の開発を提案する方針である。 (西日本、中日、中国、北海道新聞、河北新報06年11月10日)

電気自動車開発情報
 日産自動車は3年後を目途に電気自動車を商品化する方針を固めた。同社はリチウムイオン電池の性能を向上させ、1回の充電で走行できる距離を200km程度に延ばすことを目指しており、通勤用など都市での交通手段として需要があると見込んでいる。(日本経済新聞06年11月26日)