第123号 水素生成・精製技術の研究が活発化
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体の施策
3.MCFCの事業展開
4.SOFCの開発
5.PEFC要素技術の開発研究
6.家庭用PEFCの実証と事業化
7.FCV最前線
8.水素ステーションの建設
9.改質および水素生成・精製技術
10.水素貯蔵および輸送技術の開発
11.マイクロおよびDMFC技術
12.FCおよび水素関連計測技術
13.FC関連技術の開発
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)国交省
 国土交通省は05年度に引き続いて、大型FCVに対する技術基準の検討に向けたデータ収集を目的に、06年7月にもFCバスの公道走行試験を開始する。中部国際空港(セントレア)の周辺地域のバス路線を活用し、トヨタ自動車と日野自動車が共同開発したFCバスを運行、セントレアに設置する水素ステーションを使用する。(日刊自動車新聞06年6月24日)

(2)経産省
 経済産業省の第2期“JHFCプロジェクト”が、2010年までの5年間を計画期間としてスタートした。輸送事業者を交えた本格的な走行試験の他、電動車椅子や電動アシスト自転車のFC化などに取り組む。車両側はJARI、インフラ側はエン振協が実施主体となり、実証試験推進委員会(石谷久慶大教授)傘下に2委員会と5つのWGを設置して計画を進める。新たに参画したマツダはロータリーエンジン水素自動車“RX-8ハイドロジェンRE”で参画する。走行試験によるデータ収集以外に、FCV試乗会や体験型イベントなどの広報活動も実施する。水素ステーションは従来の首都圏と愛知県に加え、大阪府にも2ヶ所新設する。(日刊工業、日刊自動車新聞06年6月27日、化学工業日報6月28日)

(3)NEDO
 NEDOはFC開発のロードマップ2版を作成した。05年に初めて作成した2005年度版を技術開発の進捗状況やロードマップ委員会での議論を踏まえて内容を見直した。最も大きく変更されたのはSOFCである。SOFCは当初PEFCに次ぐ次世代FCの位置付けであったが、研究開発の進展により独自のシナリオで市場に浸透していくと見られるようになった。このためロードマップでは、小中容量型を数kWと数十〜数百kWまでの2つに分けそれぞれの目標を設定した。出力数kWの小容量システムは2010〜15年頃に初期導入を目指し、数十〜数百kWの中容量型や、ガスタービンと組み合わせた数百kW以上のハイブリッド型は同時期に実証段階に入ることを目標とする。SOFCの課題は、さらなる高出力化・大容量化による小型化とコストダウンの追及であるが、又他用途への展開のために低温動作化も重要になっている。
 定置用PEFCでは、早期導入を重視して、本格普及が始まる2020〜30年頃の価格を20万円から40万円未満に変更した。
 自動車用についての大きな変更は作動温度で、今回高温側のみならず低温側も目標値が設定され、次世代車本格普及期の20〜30年頃には−40℃から100〜120℃を実現する。
 水素製造については、本格普及期の2020年頃にまでに、化石燃料由来のエネルギーを用いたオンサイト改質で、改質効率75〜85%(HHV),設備費はNm3/h当たり25〜40万円を目指す。(化工業日報06年6月30日、7月10、11、13日)
2.地方自治体の施策
(1)秋田県
 秋田県FC関連産業導入促進協議会は、FC関連機器の製造を県内で促進するため、“ものづくり部会”を設置し、約70人が参加して第1回部会を開いた。(日刊工業新聞06年6月30日)

(2)愛知県
 愛知県は7月5日、名古屋市中区の県公民館に設置した家庭用FCの実証試験の開所式を行い、試験をスタートした。(日刊工業新聞06年7月6日)

(3)大分県
 大分県は“新エネルギー産業化研究会”を8月1日に新設する。水素やバイオマスに関する研究、事業を行っている大学や企業を対象に会員を募り“FC・水素エネルギー会議”の開催など、新エネルギ−産業を振興する。(日刊工業新聞06年7月7日)

(4)静岡県
 静岡県は静岡大学と連携大学院制度に基づく協定を結び、その一環としてとして静岡工業技術センターで8月から10月まで3ヶ月間1人を受け入れて研究指導を行う。研究テーマは“PEFCシステムの開発”(日刊工業新聞06年7月14日)
3.MCFCの事業展開
 丸紅グループの日本燃料電池は、MCFCの普及に拍車をかける。05年度までにキリンビール取手工場、福岡市西部水処理センターなど国内8ヶ所の他、韓国に3ヶ所設置した。06年度は更に国内6ヶ所、韓国1ヶ所に設置することが決定している。設置費用は約60万円/kWで、今後は公共施設や食品・化学工場に加えてホテル、病院などにも積極的な営業活動を展開し、07年度10基の販売を目指すとしている。又今後の販売増によっては、MCFCの組み立て・製造拠点も視野に入れる。(化学工業日報06年7月14日)
4.SOFCの開発
(1)Jパワー
 Jパワー(電源開発)は6月21日、常圧150kW級SOFCのシステム試験に07年1月から着手すると発表した。技術開発センター内に6月から試験設備の据付を開始した。同社は4〜5月、三菱重工と共同で新型発電構造を採用した25kW級円筒横縞型セル構造によるサブモジュール試験を実施、その結果性能目標をクリアしたので、大型化を図り、システム化と長期信頼性の検証に単独で取り組む。都市ガスを燃料に、発電効率は45%(LHV)、累計発電1万時間以上を目標として、長期運用性や起動・停止、部部負荷、負荷変化試験などを進める。新型発電構造は、円筒セルの両端を支持する方式で、輸送時や地震発生時の振動でも高い耐久性を確保でき、又燃料供給方式もシンプルで、将来の抵コスト化も可能と述べている。コージェネレーション市場、電気事業用、石炭ガス化燃料複合発電(IGFC)への適用を視野に実用化を目指す。(電気新聞06年6月22日、化学工業日報6月23日)

(2)デルファイ
 アメリカのデルファイ・コーポレーションは、開発中のSOFCにおいて、DOEのSECAプロジェクトで設定した効率、耐久性などの性能目標でフェーズ1をクリアしたと発表した。ピーク時の発電効率で37%を確保するなど各項目で目標値を上回る成果を出し、市販開始に向けて前進した。天然ガス主成分のメタンを改質するタイプで、ピーク時の発電電力は4.24kW、1,500時間運転後の減衰率は7%、製造原価は770ドル/kWで、サイズと重量は開発初期と比べて75%削減した。4月に開発を完了、5月にDOEが性能を確認した。今後はDOEと開発費を分担しながら、製造原価で600ドル/kW未満、発電効率40%以上などのフェーズ2の早期達成に取り組む。デルファイは99年にSOFCシステムの開発に着手、大型トラックの補助電源などの用途を念頭に実用化を進めている。(日刊自動車新聞06年6月29日、化学工業日報7月5日)
5.PEFC要素技術の開発研究
 東京工業大学の谷岡教授らは、フラーレンを混ぜることにより、劣化しにくい炭化水素系電解質膜を開発した。炭化水素系膜は低コストである反面、反応性の高い過酸化水素ラジカルの酸化作用によって劣化する欠点があるが、谷岡教授らはフラーレンが過酸化水素ラジカルを捉える能力をもつことに着目した。ポリスチレンを水素イオンが通リ易い状態にして、重量比で数%のフラーレンを混ぜて製膜し、厚さ50〜100μmの電解質膜を試作した。この膜の水素イオン伝導速度はフッ素系膜と同レベルであることが観測された。現在のフッ素系電解質膜と比べて1/10以下のコストで製造できるという。今後は企業と組んで実用化を目指す。(日経産業新聞06年6月28日)
6.家庭用PEFCの実証と事業化
(1)北海道ガス
 北海道ガスは天然ガスを使った家庭用PEFCの実証実験を拡大、10〜11月を目途に、寒さの厳しい北海道向けに、FF(強制給排気)式の屋内設置型独自機種を住宅に10台設置し、実証運転を行う。(日経産業新聞06年6月19日)

(2)新日石
 新日本石油は7月10日、横浜市立南台小学校にLPG改質1kW級家庭用PEFCを設置したと発表した。今後3年間運転するが、発電した電力は学校内で使用、排熱を利用して得られたお湯は給食室などで利用し、今後の普及に向けた検証を行う。又同社はFCなどに関する小学生向けの教育ソフトを提供し、エネルギー・環境教育に役立てる意向である。(電気新聞06年7月11日、化学工業日報7月13日)

(3)荏原
 荏原バラードは08年度から家庭用PEFCシステムの商用機投入を目指し、荏原・藤沢事業所を有力候補に量産体制を構築する。第3世代PEFCスタック“MK1030-V3”をベースに一層のコストダウンに取り組み、初年度から数千台規模の生産を見込んでいる。08年以降の方針について、当初は1台当たりの値段を120万円前後、2010年頃には10万台の市場を想定してシェア40%を目指すとしている。(化学工業日報06年7月11日)
7.FCV最前線
(1)トヨタ
 トヨタは北海道でFCVによる−30℃での冬季始動テストを行い、その実用可能性を確認したので、このスタックを第2世代のFCHVに搭載し、公道走行を行うことにした。材料を変えた高分子膜を使い、触媒なども見直している。(日刊工業新聞06年6月14日)

(2)ヤマハ
 ヤマハ発動機は、FC2輪車の開発で、DMFC方式に加え、125cc以上の中・大型2輪車用に水素ガスを使用する方式の開発も検討する。課題は水素貯蔵タンクの配置で、50〜90ccクラスでは車体のサイズが小さいため、“FC-me”にはDMFCを採用する。(日刊自動車新聞06年6月17日)

(3)DC日本
 ダイムラークライスラー日本と三菱ふそうトラック・バスは7月6日、国際貨物輸送のDHLジャパンにFCV(F-Cell)とハイブリッドトラックをそれぞれ1台納車したと発表した。(日刊工業、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ06年7月7日、日本海事新聞7月10日、繊研新聞7月11日、日経産業新聞7月14日)  
8.水素ステーションの建設
 05年愛知万博の瀬戸会場に設置されていたFCV用水素ステーションが、中部臨空都市・空港島に移設され、7月21日にオープンする。東邦ガスが運営し、水素ガスの供給能力は1,100Nm3/日である。(日刊工業、中日、鉄鋼新聞、化学工業日報06年6月22日、建設通信新聞6月23日)
9.改質および水素生成・精製技術
(1)東工大と伸光テクノ
 東京工業大学と伸光テクノ(一宮市)は、廃棄プラスチックから水素を効率よく製造する技術を開発した。東工大の吉川教授らが開発した装置は、次のようなプロセスで創られる。先ず1cm程度の長さに切断したプラスチックを熱分解炉に投入し、空気のない状態で300〜400℃に加熱してガス化する。次にガス化したプラスチックを、酸化アルミニウムの表面にルテニウムを付着させた触媒を詰め込んだ反応器に送り込む。これに水蒸気を加えて700℃に加熱すると、水素を含む混合ガスが発生するので、分離装置によって水素を取り出すことができる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンを投入したところ、1kg当たり200〜240gの水素を取り出すことができた。従来は廃プラをμmサイズの粉末状にした上で、1300℃で酸素と反応させて水素を製造していたが、この手法に比べて発生量は約2倍になり、しかもプラスチックを粉末状にする手間が省かれる。現在の装置では廃プラスチックの処理能力は100g/hであるが、これを1t/dayまで大型化するとともに水素を連続して生成できるように改良する予定である。(日経産業新聞06年6月12日)

(2)ノリタケ
 ノリタケカンパニーは、福岡女子大学の草壁教授との共同研究により、COを選択的に分離除去する触媒膜リアクターを開発した。ナノ細孔構造の分離膜にCO選択酸化触媒を担持した構造で、COと水素を分子サイズで分離するとともに、COを酸化してCO2に変える。具体的には、アルミナやジルコニアなど多孔質支持基材に、ゼオライトなどナノ細孔膜を焼結し、分子サイズ差を利用してCOと水素を分離する。更にナノ細孔膜の表面に白金系のCO選択反応触媒を担持することにより上に述べた目的を達成した。改質器やFCメーカーなどへの技術提案を積極化し、早期の実用化を目指す。試作機によりPEFC改質ガスのCO濃度を約1%から0.001%以下に低減することができた。PEFC以外にSOFC向けや小型化も容易なことからモバイル用FCにも応用できると考えている。(化学工業日報06年6月14日)

(3)東工大
 東京工業大学の花村教授らは、木質バイオマスから従来法より少ない触媒量で水素を効率よく製造できる装置を開発した。開発した装置は、外経3cm、高さ30cmのステンレス製反応器の中に、ニッケル触媒を付着させた微細な穴を多数持つ酸化アルミニウムを詰め込んだ構造で、酸化アルミニウムは直径2cm、高さ2mの円柱状である。内部にも触媒が付着している。この反応器を800℃に加熱して水蒸気を上部から流し込み、次に木質バイオマスの主成分であるセルロースを粉末状にして投入すると、水素を含む混合ガスが発生する。この装置の特徴は、触媒が酸化アルミニウムに付着しているため、触媒同士が接触する心配がなく、又酸化アルミニウムはスポンジ状のため、触媒とバイオマスが接触する面積が広いことである。水素発生効率は従来法と同等であった。花村教授は「開発した装置を家庭用SOFC向け水素発生源として利用できるようにしたい」と語っている。(日経産業新聞06年6月22日)

(4)早稲田大学
 早稲田大学の桜井教授らは光合成するバクテリアの遺伝子を操作することにより、光と水から水素を生成する効率を10倍にまで高めることに成功した。ラン色細菌とよぶバクテリアに含まれる酵素“ニトロゲナーゼ”が、光合成でできた糖質を利用して水素を発生することに着目し、ラン色細菌の遺伝子を操作して水素を吸収する酵素“ヒドロゲナーゼ”を作れないようにした結果、水素の発生量は10倍になることを可視光による実験で確認した。光のエネルギーを水素のエネルギーに変換する効率は1.7%であった。このラン色細菌は水田に多く存在する。(日経産業新聞06年6月27日)
10.水素貯蔵および輸送技術の開発
(1)サムテック
 サムテック(大阪府)は、35MPa水素貯蔵用タンクに関する認可を高圧ガス保安協会(KHK)から取得した。同容器は容積70.8Lで、外経412.5mm、長さ838.2mm、、アルミ製の薄肉ライナーの周りに炭素繊維を巻きつけ、高い耐圧強度を実現した。なお“おおさかFCV”推進会議に第1号製品を納め、今後FCを研究する自動車メーカーや研究機関などへ、サンプル供給していく。(日刊工業新聞06年6月26日)

(2)アメリカ・ペンシルベニア大
 アメリカのペンシルベニア州立大学の研究チームは、中空構造をした特殊なダイヤモンドで水素を貯蔵する新技術を開発した。炭素含有量の多い無煙炭の粉とシクロヘキサン、鉄粉を円筒形の容器に入れて混ぜると、鉄粉との摩擦で石炭の粉とシクロヘキサンは高温、高圧となって化学変化を起こし、その生成物には水素が含まれる。透過電子顕微鏡で観察した結果、ナノメートルサイズのダイヤモンドができていることが判った。温度条件を変えると水素は放出される。(日経産業新聞06年6月28日)  
11.マイクロおよびDMFC技術
(1)大日本インキ
 大日本インキ化学工業は、DMFC用セパレーターで、独自の精密加工技術を使い、厚さが0.15mmと従来の半分程度の製品を開発した。導電性の炭素と軽量の樹脂の複合材料を使い、重量は1.8g/cm3で金属(ステンレス)製の1/4弱である。メタノールによって腐食しにくい点も金属製に比べて長所とみなされる。モバイル電子機器用に07年にも生産を始める予定。(日経産業新聞06年6月15日)

(2)メデイステクノロジー
 イスラエルのメデイステクノロジー社は、携帯電話や携帯音楽プレーヤーなど携帯機器の補助電源に適したデイスポーザル(使い切り)型の出力1.3WのAFC“パワーパック”を開発し商品化した。原料にボロンハイドライド、KOH、アルコール、および添加剤を使うAFCである。構造が簡単で電極に高価な貴金属を使わないため安価に製造できる。使用後にボロンハイドライドは水になり、KOHは分解され、ケースの樹脂はリサイクルが可能である。現在イスラエルでテスト用ユニットを月間1万個生産しており、又アイルランドに07年中頃の完成を目標に月産150万個の工場を建設中である。ジェイコブ・ヴエイス社長がパートナー探しのために来日した。(日刊工業新聞06年6月15日)

(3)SII
 セイコーインスツル(SII)は水素ホウ素ナトリウム(SBH)を利用したPEFCにおいて従来の約1/3まで大幅な小型化に成功した。出力3Wで、電圧8V、80mm´70mm´40mmのサイズであり、それは水素発生ボックス、発電セル、昇圧・制御回路で構成され、パッシブ型PEFCでる。水素発生ボックスの構造改良と新開発のレギュレーターによりスペース効率を向上し、水素均一供給構造を開発して電圧のばらつきを抑え、高電圧化を実現した。すなわち、触媒に用いるリンゴ酸水溶液の容器を水素発生ボックス内に収め、水溶液の量が減ると下部のばねの力で容器が縮む構造が採られている。又MEAは同一平面上に3つの電極触媒を配置し、水素供給部や水素拡散部については、水素導入入り口の個数、形状を見直すことにより水素を均一供給できる構造とした他、水の排出にも改良が加えられた。07年中にも技術を確立し、携帯電話用外部電源やデイジタルカメラ向け、ノートPC向けで実用化を目指す。今後は20W前後の小型機器用電源にも展開することを考えている。(化学工業日報06年6月23日)  
12.FCおよび水素関連計測技術
(1)横浜国大
 横浜国立大学の水口教授らの研究グループは、空気中の水素ガスを1秒以内で検知できるセンサーを開発した。新技術はパラジウムと水素イオンに反応する顔料を組み合わせて水素を検知する手法であり、ここで使われる顔料は、赤色のピロロピロールと呼ばれる物質で水素イオンをはまり込ませる性質を持っている。センサーは1cm角のガラス基板上に顔料と電極を100μmの間隔で交互に並べ、そこにパラジウム粉末を均一につけた構造である。水素分子が近づくとパラジウムの働きで水素がイオンになり、それが顔料に取り込まれて電気抵抗が変化するので、電流値を測ることによって水素濃度が計測される。100ppmの水素濃度でも検知が可能である。今後他の顔料で同様の機能を持つものがないかを探索し、より高感度にした上で実用化を目指すことにしている。(日経産業新聞06年6月12日)

(2)山里産業
 山里産業(大阪府高槻市)は、FC向け温度センサー(熱電対)“AD-THERMIC”の量産を始めた。自動化ラインを導入した新工場で、年間25万本の生産体制を構築し、年末には同センサーの樹脂部成形工程も自動化し、08年には年間100万本の量産体性を整える。(日刊鉱業新聞06年6月19日)

(3)チノー
 チノーはPEFCの開発試験や耐久性試験向けの小型評価試験装置“FC5105M”を発売した。価格は1セット330万円から。(日経産業新聞06年6月20日)  
13.FC関連技術の開発
 山口大学の喜多教授らは、100℃以上の高温ガスからCO2だけを分離できる無機物の膜を開発した。開発した膜は、直径1μmの小さい穴が多数開いた厚さ5mmの酸化アルミニウムの基板上に、厚さ数μmのゼオライト膜を形成した構造である。ゼオライト膜はケイ素、アルミニウム、ナトリウム、カリウムを水に混ぜてゲル状にしたものを基板に添付して100〜200℃に加熱して作る。形成したゼオライト膜には0.4nmの微細な穴が開いており、CO2を選択的に吸着・分離する。実際に使用する場合は、ゼオライト膜を外側にして丸め、中空のパイプ状にして束ねて使う。100℃の混合ガスで実験した結果、CO2の70%を分離することができた。(日経産業新聞06年6月19日)

 

 ―― This edition is made up as of July 14, 2006――


・A POSTER COLUMN
全固体型リチウムイオン電池の開発
 物質・材料研究機構のナノスケール物質センター・ソフトイオニクスグループは6月15日、市販のリチウムイオン2次電池(LiB)並に性能を向上した全固体型LiBの開発に成功したと発表した。
 正極材にリチウム−チタン酸化物やリチウムーニオブ酸化物などのリチウムイオン伝導性酸化物を数nmの厚さで表面を被覆したコバルト酸リチウム(LiCoO2)を使用、電極の抵抗を低減して高い性能を実現した。安全性の高い不燃性LiBの実用化に大きく前進する成果で、将来のEVや電力貯蔵向け大型LiBへの展開が期待される。(化学工業日報06年6月16日)

都市ガスコージェネレーション普及状態
 日本ガス協会が6月30日に発表した05年度末の都市ガスコージェネレーションシステムの累計設置容量は、全年度末に比べて14.6%増の3,593,000kWになった。産業用が同37.3%と大幅に伸びて2,735,000kWになり、家庭用も設備容量全体でみた割合は低いものの、110%増しの21,000kWとなって倍増する勢いをみせた。蒸気タービンを除くガスエンジン、ガスタービン、FCを対象に、全国211の事業者から調査した。全国の発電設備容量に対する比率は1.29%であった。京都議定書目的達成計画で、ガスコージェネは2010年に489万kWの普及目標が掲げられている。
 産業用では発電効率の高い大規模ガスエンジンの導入が進んでおり、家庭用は1kW級ガスエンジン“エコウイル”が急速な立ち上がりを見せているのが特徴で、05年度単年度での設備容量増加分は465,000kW(04年度は70万kW規模)であった。(電気新聞06年7月3日) 

大規模太陽光発電・水素貯蔵実証実験
 バンテック(栃木県那須塩原市)はNEDOと協力し、大規模な太陽光発電システムの実用化に向けた技術開発を本格化する。07年4月から出力20kW太陽光発電の実証実験を開始、水の電気分解を利用して水素を水素吸蔵合金に貯蔵し、安定的な電力供給を目指す。NEDOは“2006年度太陽光発電新技術等フィールドテスト事業”にこのプロジェクトを採択し、5年間7,000万円の開発費の2,400万円を負担する。(日経産業新聞06年7月7日)

アメリカで水素エンジン車の走行プロジェクト
 アメリカで水素エンジン車の走行プロジェクトが相次いでいる。水素エネルギー協会によると、04年にカリフォルニア州の5都市で“水素エンジンプリウス”の運行がスタートしたのを皮切りに、オクラホマ州やフロリダ州でも水素エンジン乗用車・バスの運行が始まる。1番熱心なカリフォルニア州では、南海岸大気保全管理区の公用車として購入したプリウスを水素エンジンに改造し、約30台を走らせている。フォードは排気量4.6L級のシャトルバス10台を水素エンジンに改造し、フロリダ州などで走らせる。又今秋にはオクラホマ警察のパトカー30台が水素エンジン車になる予定である。水素協会は「短期に利用できる現有技術を使用して水素の早期利用を加速する方向に動き出した」とみている。(日刊自動車新聞06年7月8日) 

昭和飛行機工業がEV事業に進出
 昭和飛行機工業は、スイスの電気メーカが製造する高性能2次電池“金属・食塩電池”を利用し、EV事業に参入、市販車をベースに改造した軽商用車や小型バス、独自の原付4輪車などを製造販売する。第1弾商品として、06年10月を目途に、軽商用車の“e-VAN”を発売、当面は官公庁や地方自治体の公用車、大手企業の社用車向けに営業活動を展開する。(日刊自動車新聞06年7月13日)