第122号 家庭用SOFCの90日間実証運転成果
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.SOFCおよびその関連技術開発と実証成果
4.PEFC家庭用コージェネレーションシステムの実証と事業展開
5.FC2輪車の開発
6.水素ステーションや供給設備の建設
7.改質および水素生成精製技術の開発と実証
8.マイクロFCの開発
9.ポータブル又は災害用FCの開発
10.FCおよび水素関連計測機器の開発と事業展開
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)経産省とNEDO
 経済産業省とNEDOは、プラグインハイブリッド車などへの応用をにらんだ高性能2次電池の開発支援に着手する。06年で終了する“FCV等リチウム電池技術開発”の後継計画として、重さ40kg程度、エネルギー密度100Wh/kg、10年間の耐久性などを実現する要素技術を開発すると共に、評価技術や統一規格の確立も目指す。プラグインハイブリッドとは、外部電源からの充電を併用して、電気モーターのみの走行領域を増やし、現行ハイブリッド車よりも環境負荷を抑えようとするる技術であり、電気自動車(300〜400kg)とハイブリッド車(12〜35kg)の中間となる重さ50〜100kgの電池を搭載し、電池だけで20kmから60km程度走れるようにした車種である。欧米では実証実験などが行われている。通常のハイブリッド車用バッテリーとは充放電特性が異なるので流用が難しく、経産省は国家プロジェクトとして要素技術の開発を後押しすることにした。同省は環境対策やエネルギーコスト高騰対策の観点から、早期普及に期待をかけている。(日刊自動車新聞06年5月15日、化学工業日報5月19日)

(2)NEDO・産総研
 NEDOと産業技術総合研究所は5月25日、アメリカのロスアラモス国立研究所との間でFC・水素技術開発分野で技術情報交流を行う覚書を締結した。今後3機関の間で定期的に技術情報の交流を行うとともに、06年8月にはアメリカ・サンタフェでPEFC劣化機構の解明、水素貯蔵技術などをテーマにしたワークショップを開催する。(日刊工業新聞、化学工業日報06年5月26日、日刊自動車新聞6月5日)

(3)NEDO委託研究
 NEDOは5月29日、FCの利用拡大に向けた標準化、LPG利用定置式PEFCの改質技術、水素先端科学技術基礎研究の3分野での06年度委託研究と委託先を決めた。“新利用形態FC標準化など技術開発”では、JEMAと産総研の研究テーマ「新利用形態FCの基盤研究開発」を選定した。その他の助成研究テーマと助成先は以下の通りである。*純水素型FCを搭載する移動式電源車および小型・軽量水素供給システムの開発(岩谷産業)、*ポータブル機器用FCの性能特性向上の研究開発(日立製作所)、*パーソナル機器のコードレス化を実現するFC技術の開発(NEC)、FC構内運搬車および水素供給システムの開発(JFEコンテイナー、関東農機、東京ガス)、*小型移動体用高性能FCシステムの開発(ヤマハ発動機)。(日刊工業新聞、化学工業日報06年5月30日)  
2.地方自治体による施策
(1)東京都荒川区
 東京都荒川区は5月15日、エコ助成金制度を始めた。区が06年度に始めた“地球温暖化・ヒートアイランド対策推進事業”の1つ。助成対象は、家庭用PEFCの設置(助成限度額10万円)、太陽光発電の設置(同20万円)、および高反射塗料を使った遮熱性塗装の施工(同20万円)で、07年3月16日までに設置完了することが条件。区は410万円を予算計上している。(読売、東京新聞06年5月16日)

(2)三重県
 三重県は県内中小企業と共同でFCの周辺機器を研究開発する“三重県FC関連技術研究会”を6月7日に立ち上げる。周辺機器などのコストダウンや耐久性向上を進めるため、機器ごとに開発を進め、技術者が交流して技術テーマの課題解決のために共同で取り組む。これらの事業を通じて県内中小企業のFC関連技術力を底上げし、それを新産業育成につなげていくのが三重県の戦略である。三重県は04年度から、県外メーカーが中心になって10件のFC実証試験を実施中であるが、今回の研究会では、実証試験に参加する開発メーカー9社のもとに、県内中小企業約10社ずつが集まって6つの分科会を設置する計画であり、全体では約60社が参加することになる。(日刊工業新聞06年6月2日)
3.SOFCおよびその関連技術開発と実証成果
(1)東ガスと京セラ等4社
 東京ガス、京セラ、リンナイ、ガスターの4社は5月15日、2.5kW級常圧型SOFCユニットにおいて、DC端で発電効率56.1%(LHV)を達成したと発表した。セルスタックに低温作動横縞型構造を採用しており、温度750℃で安定な動作が可能である。この横縞型とは、1本のセラミックス基板上に多数のセルが焼成されており、各セルを基板上で直列に接続した構造である。したがって、比較的少ない本数で高電圧が得られ、高圧・低電流運転が実現できるとともに、エネルギー損失の低減につながり、又材料が安価でセルの積層工程が不要のため、量産による低コスト化も期待できると述べている。4社は今後、発電ユニットにインバーターや各種補機類を装備してパッケージ化し、AC発電端で50%LHV(45%HHV)以上のSOFCコージェンレーションシステムの開発に取り組み、08年頃の実用化を目指す。(読売、電気 日刊工業、電波新聞、化学工業日報06年5月16日)

(2)大ガスと京セラ
 大阪ガスと京セラは5月16日、両社で開発した家庭用SOFCコージェンレーションシステムの居住住宅(1戸住宅、4人家族、床面積108m2)での運転試験に関する成果を発表した。大阪ガスの実験集合住宅“NEXT21”に、05年11月下旬から06年3月上旬まで、定格1kW家庭用SOFCを設置し、約90日間日常生活運用試験を行ったが、発電効率は開発目標を上回る49%(AC送電端LHV)、排熱回収効率は34%(LHV)の結果を得た。1日の平均発電効率も、家庭内の電力需要への追従性能を向上させることにより、44.1%(AC送電端LHV)を達成、1日の平均排熱回収効率も34%(LHV)を記録した。又電気を火力発電所から供給し、熱を都市ガス会社のガスから供給する従来方式に比べて、1次エネルギー削減率は31%、CO2排出削減率は45%になるとの評価結果が得られた。両社は08年での商用化を目指して、今後耐久性とコストダウンのための研究を共同で進める。(電気、電波、日刊工業、京都新聞、化学工業日報06年5月17日、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ5月18日)

(3)電中研
 電力中央研究所は5月18日、阿南化成(神戸市)、徳島大学、徳島文理大と共同で、セリウム酸化物ナノ粒子の量産技術を開発したと発表した。1,200℃以下での焼結を可能にするナノ粒子成長法を開発、最小粒子が凝集した約100nmの粒子(2次粒子)を形成することに成功し、更に2次粒子をばらばらにし易い長楕円形にして量産可能にするなどの技術を実際の工程に適用した。生産規模は大型製造装置を用いて1回65kgへと大幅に拡大、価格は従来の1/3から1/4で供給できるとしている。電中研は、加熱形成する方法で、SOFCの電解質や電極への応用を図り、モジュール・スタック化技術の開発を行う計画である。(日本経済、電気、日刊工業新聞06年5月19日、日刊自動車新聞、化学工業日報5月22日)

(4)日産化学
 日産化学工業は、酸化物ゾルの新しい製造方法を確立するとともに、同製法による第1弾の製品としてジルコニアゾルを開発した。アルカリ性ゾルと酸性ゾルの両方を製品化しており、近く本格発売を開始する。同社は新製品による製品を“ナノユース”と命名、シリーズ第1弾となるジルコニアゾル“ナノユースZR”に続いてセリア、チタニア、アルミナの各種ゾルも開発し、市場に出す計画である。特にジルコニアは化学的安定性、耐熱性に優れ、光学的屈折率が高い。SOFCの電解質、反射防止膜、チタン精密鋳造用バインダーを主要ターゲットにナノユースZRの用途展開を目指す。(化学工業日報06年5月29日)

(5)ファインセラミックス協会
 ファインセラミックス協会は、構造材料、電子機能材料、生体・生活材料の3分野を対象に、2015年までを見通したファインセラミックスの技術開発課題ロードマップを取り纏めた。FCでは作動温度300℃、発電効率45%などの達成を15年における到達点として設定し、新規電解質開発やセラミックス金属材料の同時利用技術などが必要になるとしている。特に高効率発電特性を実現するために、低温側での反応性を向上させる必要があり、そのためにはナノ空間などの電気化学反応場の最適化が不可欠とし、技術シーズを詳細に説明している。(化学工業日報06年6月9日)
4.PEFC家庭用コージェネレーションシステムの実証と事業展開
(1)コロナと出光興産
 コロナと出光興産は5月19日、市販灯油を燃料とした1kW級家庭用システムの試作機を共同開発し、AC端発電効率33%(LHV)、システム全体の総合効率で76%を達成したと発表した。灯油改質器では改質触媒の改良や運転条件の見直しにより、改質温度を700℃以下に低減、他燃料を用いたPEFCと同等レベルの初期性能を達成した。今後システムのパッケージ化を進め、12月から試験運転を開始、07年度からは一般家庭などで実証運転を予定している。(新潟日報06年5月20日、電、日刊工業新聞5月22日、化学工業日報5月23日、電波新聞5月24日)

(2)荏原と荏原バラード
 荏原と荏原バラードは6月8日、4万時間の耐久寿命を持つ新たな第3世代PEFCスタック(形式:“MK1030V3”)の開発が完了、バラード・パワー・システムズ社から荏原バラードに出荷されたと発表した。荏原バラードが08年度以降の市場投入に向けて開発を進めている家庭用システムの商用機に搭載される。バラードで新たに開発された加速試験の手法によって4万時間の設計耐久寿命が確認されている。又第2世代機に比べて40%軽量化し、容積も26%小型化することに成功した。今回の開発成果を踏まえて、東京ガスおよび新日本石油に対し、プロトタイプを搭載した家庭用システムの試作機を06年度中に提供する予定である。(日本経済、日経産業、日刊工業新聞、化学工業日報06年6月9日)  
5.FC2輪車の開発
 ヤマハ発動機は6月7日、DMFC駆動2輪車“FC−Me”を公開した。出力は0.6kW、32Lタンク満タンで約100km走行できる。燃料は天然ガス由来のメタノールであるが、将来はバイオマス原料も研究したいと同社は述べている。(日刊工業新聞06年6月8日)
6.水素ステーションや供給設備の建設
 岩谷産業と関西電力グループが共同出資して設立した液体水素、産業用ガス製造会社“ハイドロエッジ”(大阪府堺市)は、6月5日、堺市の臨海部で完成した製造工場の竣工式を行った。隣接地に設けたLNG基地から、天然ガスとLNG冷熱の供給を受け、各種産業用ガスを生産するが、水素製造に関しては、圧縮水素の製造能力は1,200Nm3/hで、液体水素については2,700Nm3/h容量の生産設備を2基備えている。製造規模は国内最大級である。(産経新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報06年6月6日)  
7.改質および水素生成精製技術の開発と実証
(1)ノリタケ
 ノリタケカンパニーリミテッドは、中部電力と共同で窒化ケイ素系のセラミック材料を用いて、水素分離膜を開発した。ケイ素や炭素を含む複合材料に特殊な熱加工をすることで、水素だけが通過する1nm以下の穴を開け、水素とメタンの混合ガスから水素を分離する。穴の大きさを調節すれば、水素以外の気体の分離もできる。今回開発した膜は、パラジウムの2割程度の価格である窒化ケイ素を使うので、従来技術の約1/5のコストで水素分離膜を製造できると期待している。(日経産業新聞06年5月15日)

(2)京大と荏原
 京都大学と荏原は、エチレンをナフサから製造する過程で発生する重質油(分解重油)から水素を生成する技術を開発した。酸化アルミニウムの表面にカルシウムを付着させた触媒を詰めた反応器に分解重油を入れ、ヘリウムと水蒸気を10対1の割合で混ぜたガスを加えた。1000℃に加熱すると水素を含むガスが発生した。実験では、分解重油0.1Lと、ヘリウムと水蒸気の混合ガス3.3Lから、水素150mLを生成した。重質油は炭素の含有量が多いため、触媒に炭素が付着して性能が落ちる問題があったが、カルシウムを付着させることで触媒の性能を向上させることができた。ただ同然の分解重油を原料とするので大幅なコスト低下が見込まれる。(日経産業新聞06年5月18日)

(3)東ガス等
 東京ガスは東京ガスケミカルズ、東京ガスエンジニアリングと共同で、アメリカH2ジェン・イノベーションズ社が開発した高性能水素製造装置を導入、07年度から実証試験を行う。これは50Nm3/hの天然ガスから、新開発の触媒を用いた水蒸気改質法で水素を生成し、PSAにより99.999%に純度化する装置で、265Nm3/hの大容量装置も開発中である。従来の装置に比べて、大きさが1/3、コストは30%以上低く、起動時間は1時間以内で、大幅な省スペースと低価格化が実現できる。全6機種のうち1機種を日本仕様とし、伊藤忠商事を通して購入、根岸工場で1年間の耐久性試験を開始した。東ガスは今回の装置を即戦力として実用化し、同社グループが販売とメンテを行う。(日刊工業新聞06年5月24日)  
8.マイクロFCの開発
(1)カシオとアルプス電気
 カシオ計算機は5月15日、開発した携帯メタノール改質型マイクロPEFCで、体積出力密度882W/Lを達成した。燃料カートリッジおよびマイクロ改質器と組み合わせ、ノートパソコンであれば、現在のLiBと同体積でもそれの約4倍の時間駆動できる。新開発の発電スタックは金属製セパレーターとMEAで構成するセルを20枚重ねた構造で、ガス封止機構の小型化や、メタノール改質ガスの特性に合わせたガス流路の最適化、COに対するMEAの耐性改善、各部材の高密度実装などの技術を集約することにより、体積22mLで出力19.4Wを実現した。07年度中にもサンプル出荷を開始する考え。(日刊工業、電波新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報06年5月16日、日経産業新聞5月22日)
 アルプス電気とカシオ計算機は、ノートパソコンや携帯電話など携帯機器用FCシステムを共同開発する計画を明らかにした。第1弾としてカシオは07年度中にもノートパソコン向けFCシステムの評価用サンプルを開発し、そのコアであるマイクロバルブの開発をアルプス電気が担当する。アルプス電気が開発したサンプル品のマイクロバルブは、直径3.5mm、長さ10.3mmで、遮断性が高い。気体・液体の流路遮断に最適な構造を持ち、電磁駆動方式を採用している。(日刊工業新聞06年5月30日)

(2)アメリカMTIマイクロとサムソン電子
 アメリカMTIマイクロフューエル・セルズ社は、韓国のサムソン電子社と提携し、共同でサムソンの携帯電話向け次世代マイクロDMFCのプロトタイプを開発すると発表した。MTIマイクロDMFCの特許技術“Mobion”を試作品のベースとして採用する。このMobionは化学反応中に生じる余分な水を完全にFCの中で管理するため、複雑な設計が不要で大量生産に適している。又長時間動作が可能で、燃料の充填も簡単であると記されている。(電波新聞06年5月23日、化学工業日報5月29日)

(3)NTTドコモ
 NTTドコモは富士通と共同開発している携帯電話用のマイクロFCを07年春に商品化する方針を固めた。商品化されるFCを、現在の内臓電池と組み合わせると約4倍の電気容量を確保できる見込みである。05年夏に完成した試作品のDMFCは、大きさが縦15cm、横5.6cm、厚さ1.9cmで、重さは190gである。メタノール溶液18ccが入ったカートリッジ1本分で、第3世代携帯電話“FOMA”の内臓リチウム電池に比べて約3倍の電気容量となる。他方KDDIは携帯電話に内蔵するFCを開発中であるが、商品化の時期は未定としている。(朝日新聞06年5月27日)

(4)クラレ
 クラレはDMFC用炭化水素系電解質膜の実用化を加速させ、08年度にMEAの事業化を目指す。更にPEFC向けの電解質膜の開発にも着手した模様である。同社の炭化水素系電解質膜は、独自のエラストマー系ポリマーと製膜技術の融合により開発したもので、水素イオンの伝導性を低下させることなく、発電時のMCO(メタノール透過量)を40%削減し、DMFCの最大出力を1.6倍に高めることを可能にした。又エラストマー由来の柔軟性によって電極との密着性が高まり、それによって発電性能の向上やアセンブリーが容易になることも特徴である。今後は膜の耐久性などの機能評価やMEA開発に進み、同時に同膜に適した新規触媒の開発も行う予定で、先ず携帯用DMFCで実用化、この技術をベースにPEFCへの事業への展開を図る。(化学工業日報06年5月29日)
9.ポータブル又は災害用FCの開発
 岩谷産業は6月2日、車に搭載して災害時などに非常用電源や工事用として使うFCの開発を始めると発表した。照明などの電源として使えるように、純水素を燃料として10kWレベルの発電ができるFCの開発が目標である。3年後の実用化を目指す。(日経産業新、フジサンケイビジネスアイ06年6月5日)
10.FCおよび水素関連計測機器の開発と事業展開
(1)チノー
 チノーは東北大学多元物質研究所水崎教授のグループとの共同研究によって、SOFC単セル評価用ホルダーを開発、評価用ホルダー“FC−400H”(200万円から)と評価試験装置“FC5300−1NN”(520万円から)を近く発売する。高温でのセル電極接触具合の調整が可能で、アノード支持体型ガスシールを容易に取り付けることができる。(日刊工業新聞06年5月16日、日経産業新聞5月23日、電波新聞5月31日)

(2)高砂製作所
 高砂製作所はFCの評価に最適な電流遮断機能と交流重塁入力端子を装備した直流電子負荷装置“FK/U(マークU)シリーズ”5タイプを7月中旬に市場投入する。年間販売目標は5タイプ合わせて1,000台。(電波新聞06年5月18日、24日)

 ―― This edition is made up as of June 9, 2006――

・A POSTER COLUMN

自民党新エネ戦略で提言
 自民党エネルギー戦略合同部会・新エネルギー推進戦略分科会は5月12日、新エネルギー推進戦略に関する緊急提言を取り纏めた。原子力、資源の各分科会でまとめられた提言と合わせ、合同部会がこれを参考に中間報告を作成する。提言では、化石資源からの転換を目指すため“再生可能エネルギー”の開発・普及を強調、特に農産物を活用したバイオエタノール導入推進を前面に打ち出す内容になっている。
 バイオエタノールについては、政府に対し国産燃料の生産を進めると共に、混合ガソリンなど導入支援を求めた。輸入については、国際的な需要の高まりからブラジルの供給余力が厳しいと予測し、安定供給に向けたバイオエタノールの備蓄、アジア諸国向け輸出中継基地などの案が示された。
 新エネルギーについては、太陽光、風力、バイオマスに加え、再生可能エネルギーとして水力、地熱、雪氷、温度差、海洋の各エネルギーについて開発の必要性を明記した。
 又クリーンエネルギー自動車やFCの開発、化石燃料の有効利用に向けたCO2分離・貯蔵技術の検討も指摘した。(電気新聞06年5月15日、日刊建設工業新聞5月18日) 

総合エネルギー調査会総合部会による省エネ・新エネ技術戦略論
 総合エネルギー調査会総合部会は5月15日の第4回会合で、今後の省エネ・新エネ政策や技術戦略などについて議論した。
 省エネ政策として2030年にまでにエネ効率を30%改善する数値目標のもと、省エネ技術戦略を今夏までに策定するとともに、セクター別ベンチマーク手法を導入する方針である。
 新エネ政策ではバイオマスエネルギーを強化する他、太陽電池やFC、蓄電池へと技術開発を重点化する。国際協力では“アジア省エネプログラム”を策定して中国やインドなどの重点対象国と協力を推進する。
 エネ技術戦略では、1)総合エネルギー効率の向上、2)運輸部門の燃料多様化、3)再生可能エネの開発・導入の促進、4)原子力利用の推進と安全確保、5)化石燃料の安定供給の確保とクリーン利用、の5点を重要技術の柱と位置付けた。この内、原子力では次世代軽水炉、核燃料サイクル、FBRサイクル、放射性廃棄物、高経年化対策などの安全研究に取り組む。(電気新聞06年5月16日、日刊建設工業新聞5月18日)
 総合エネルギー調査会新エネルギー部会は5月26日の第18回会合で、中間報告案を基本的に了承した。次回会合で正式に取り纏める。今回の会合では、新エネ政策の見直しへ新たな基軸を示すとともに、バイオマス・エネルギー政策を再構築する方針を示した。新エネの定義見直しに向けた概念整理、石油・ガス業界による熱利用分野の対策強化なども確認した。
 技術開発は太陽電池とFC、蓄電池などに重点化する。バイオマス・エネルギー政策の再構築では、国内外の情勢変化を指摘、石油業界が輸送用燃料に10年度でガソリン需要量の20%相当分にETBE(Ethyl Tertiary Butyl Ether)を導入する方針を記載した。(電気新聞06年5月29日) 

共同研究活動の展開
 九州大学(梶山学長)と産業総合技術研究所(吉川理事長)は5月28日までに、研究や人材育成で広く協力することを決め、同大学で協定書に調印した。九州大学では、水素を利用したFCやエンジンの実用化に向けた研究を進めており、既に産総研も協力しているが、これを他に分野にも広げる計画である。具体的な共同研究の対象などについては、今後随時開催する連絡協議会で話し合う。(産経、日経産業新聞06年5月29日)

繭(マユ)から高性能活性炭の製造
 群馬工業高等専門学校の小島教授は、県産の繭(まゆ)を材料にした高性能活性炭の製造技術を開発した。繭を炭化させて特殊な化学処理を行うことにより、1g当たりの表面積を約5,400m2にまで引き上げた。化学物質を大量に吸収する性能を生かし、脱臭剤やFCの電極への応用が期待できるとしている。廃棄品を含む安価な繭を電気炉で300〜400℃に加熱・炭化した後、炭酸カリウムなどの塩基性薬剤を染み込ませて再加熱した。繭は加工しやすく、板状や筒状など様々な形状の製作が可能である。(日経産業新聞06年5月15日)

九大水素ステーション事故で中間報告
 05年12月の九州大・伊都キャンパス内の実証実験施設“水素ステーション”パイプ破裂事故で、九大は6月6日、有害物質が施設外に飛び散り、周辺に駐車中であった車両のガラスなどが1部腐食していたことを明らかにした。人体にかかれば、やけどなどにつながる可能性があったと述べている。
 この施設は水を電気分解して高圧の水素を造る装置であるが、水素発生装置にはチタンやフッ素などの素材を使用していた。同装置内で異常な化学反応が起きて、圧力や温度が急上昇したため、有害なフッ化水素酸や硫化水素などが発生し、破裂したと思われる。化学反応の原因は不明である。フッ化水素酸は施設外に飛散し、約10m先にある車両5台のフロントガラスやボンネットなどに幅1〜2mmのくぼみができた。
 同大工学研究院教授らで作る内部調査委員会の杉村委員長は「このシステムの発想そのものに問題がないか、検討を進めたい」と話している。(西日本新聞06年6月7日)

経産省が自動車用電池の開発に本格着手
 経済産業省は6月6日、電気自動車の性能を飛躍的に高める電池の開発に取り組む方針を明らかにした。年内に開発の概要や方向性を固めた後、NEDOを通じて研究プロジェクトを立ち上げる。同省はリチウムイオン電池の高性能化を目指しており、風力発電の電圧を安定化させる蓄電池などにも応用したい意向である。
 二階堂経産相は6月6日の衆議院決算行政監視委員会で、電気自動車について「技術開発は一刻を争う。その波及効果は経済全体に及ぶ」と述べ、早急に開発を進めるよう指示したことを明らかにした。07年度の予算要求には、電池の材料などを開発する数年間の基盤技術研究を盛り込む予定である。現在市販されている電気自動車は、走行距離が最大でも200km程度で短く、価格は同クラスのガソリン車に比べて各段に高い。今後の開発では、瞬間的なパワー、持続力、軽量化、コスト低下、安全性などの向上を目標とする。
 資源エネルギー庁新エネルギー対策課は「電池は国際競争力が高く、将来は日本の産業の柱になる」と期待しており、用途を従来の家電中心から産業用に広げたいと考えている。(産経新聞06年6月7日)