第117号 JHFCプロジェクトを中部と大阪に拡大
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.SOFCの研究開発
4.PEFC要素技術の開発
5.家庭用PEFCシステムの実証運転
6.FCV最前線
7.改質および水素生成・精製技術の開発
8.携帯機器用マイクロFCの開発
9.FCおよび水素関連計測器の開発
10.企業のFCおよび水素関連事業活動
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)06年度予算動向
 06年度の経済産業省予算で、7,764億円が内示された。昨年度予算よりも411億円の減少である。又特別会計は総額1兆2,567億円で、同1,304億円の減少となった。(化学工業日報05年12月21日)
 愛知万博でデビューした先端技術や、環境に優しいエネルギーを継承する幾つかの取り組みが、12月20日に内示された06年度予算の財務省原案に盛り込まれた。万博の会場間バスとして活躍したFCバスは、中部国際空港での乗客輸送や路線バスとして使われる可能性が高まった。経済産業省のFCシステム等実証事業に13億600万円、国土交通省のFCバス実用化促進に1億6,600万円がそれぞれ計上された。(中日新聞05年12月21日)

(2)経済産業省
 経済産業省・資源エネルギー庁は、水素FCプロジェクト(JHFC)の第2フェーズを京浜、中部、大阪の3地区に拡大する。FC車などFCを使った移動システムの普及に向けた06年度から5年間の事業である。京浜地区ではFC車による配送事業(フリート走行)で、FC車メーカーが1社2台以上営業車ナンバーを取得して軽配送業務を行う。3年後にはタクシーなどで営業用としての利用も進める。中部地区では愛知万博で使った水素ステーションを中部国際空港に移設、2台のFCバスで移送業務を行う。大阪地区ではハイブリッド型水素ステーションを設置し、FC車への供給と同時に、定置式発電向けにも水素を供給できるシステムとする。又水素吸蔵合金による水素貯蔵システムを社会福祉施設などに設置し、FC電動車いすやFC2輪車の運転実証を行う。(日刊工業新聞05年12月27日)
 愛知万博瀬戸会場で用いられた水素ステーションが、中部国際空港の中部臨空都市・空港島内の同県企業庁所有地に移設されることが正式に決まった。06年1月中にも着工する。今後施設をFCVの実証走行実験などに活用していく。(中日新聞06年1月6日、日刊工業新聞1月10日、建設通信新聞1月11日、日刊建設工業新聞1月12日)
 経済産業省は12月27日、家庭用FCシステムメーカー4社が、ポンプ、センサーなど周辺機器(補機)の共通目標スペックを開示したと発表した。同省は機器システム開発メーカーの松下電器産業、荏原バラード、三洋電機、東芝FC、富士電機アドバンスドテクノロジーなどに対して、補記類のスペックの開示を要請するとともに、共通化を図った上で補機メーカーのFC市場への参入を促すことにした。他方、05年夏からは、NEDOに委託事業で、システム開発メーカーからの再委託先として、アルバック機工、オーバル、愛知時計電機、イワキ、鷺宮製作所、ミクニ、日本電産コパル電子など、23社の補機メーカーが加わっている。(化学工業日報05年12月28日)

(3)NEDO情報
 NEDOは05に年開催された愛知万博において、日本政府館“長久手日本館”への電力供給の100%を、会場内に設置した新エネルギー実証プラントで行ったことを明らかにした。新エネルギーによる会期中の総発電量は約270万kWhで、会場全体の供給電力量の約5%に当たる。長久手日本館では約126万kWhを消費した。新エネルギープラントでは、万博会場の造成時に伐採された木材や会期中に会場から出る生ごみ、ペットボトルをFCの燃料として使用、生ごみ587トン、ペットボトル3,360kgを処理した。NEDOでは今後、プラントを中部臨空都市に移し、一般的な需要を対象とした実証研究を07年度まで行う。(電気新聞06年1月6日)
2.地方自治体による施策
 愛知県と中部経済界がリサイクル事業に新エネルギー技術を組み合わせ、地域で廃棄物0の“ゼロエミッション・コミニュテイー”の実現に向けて動き出すことになった。愛知万博の成果を継承するプロジェクトで、06年度に県が基本構想を策定し、07年度から可能性の調査に取り掛かる。先導的なリサイクル施設を集中させるエリアを設定、それにFCを含む新エネルギーのプラントを組み合わせ、廃棄物をリサイクルすると同時に電力と熱を利用する。(中日新聞06年1月3日)
3.SOFCの研究開発
(1)小沼技研
 小沼技研(長野市)は、SOFCのセルを開発した。通常は電解質となるセラミックスの粉末を電極に塗った後に焼き固めるが、同社のセルは粉末の形や大きさの改良によって焼き固める必要がなく、したがって工程が少ないため、単価を抑えることができる。このセルは直径1.2cm、長さ30cmの円筒形で、酸化ニッケルなどで造った円筒の表面にセラミックスの粉末、電極となるコバルトやマンガンの化合物を順次塗って作製された。電極と電解質を一体的に製造するため、改めて焼き固める必要がないという。現在は1本数万円で研究機関などにサンプル出荷している。小沼社長は「工程を減らせば、完成までの時間が短くなり、それだけ製造費用が安くなる。現在の1/10程度の価格にしたい」と話している。なお同社は、新光電気工業でFCを研究していた小沼氏が04年6月に設立した会社である。(信濃毎日新聞05年12月22日)

(2)京セラと住友精密工業
 京セラはSOFCを家庭に持ち込んで、運用効率の評価に乗り出し、出力1kW級のSOFCで定格発電効率45%をクリアした。このSOFCでは、天然ガスから水素を得るのに、750℃の反応温度で内部改質し、1部は高温の排熱を熱源として水蒸気改質を行う。FCスタックはフラットチューブ型で、今回の実証実験を通じて確認する耐久性アップは、実用化に対する課題である。 日本ガス機器検査協会は、家庭にSOFCを導入するための規制緩和に向けたデータを収集するため、京セラと住友精密工業の1kWSOFCについて、05年12月からトヨタ自動車、東芝FCシステム、松下電器産業など6社のPEFCと同一に設置して運転を始めた。一般電気工作物と同じ扱いとして届け出を簡略化していく。 京セラは東ガスとも10kW級SOFCでハードからの共同開発を進めており、システム機器の運転実験を06年中頃から始める予定である。08年度から先ず1kW機をリース、レンタルなどで限定導入することを目指しているが、コストはPEFCよりも高くなると思われる。PEFCと競争し、夜間電力利用のCO2ヒートポンプと対抗するためにも、実証運転とコストダウンを同時並行で進めることになる。 (日刊工業新聞05年12月26日)

(3)大日本印刷
 大日本印刷は、名古屋大学日比野教授が開発している表面伝導型SOFCに用いる空気極、燃料極材料の研究に取り組む。表面伝導型SOFCは従来タイプと異なり、電解質片面上に燃料極、空気極を形成するもので、セパレーターが不要であるのみならず、燃料ガスと酸化剤ガスの混合ガスが使えるため、構造が簡単で割れなどが起きにくいという特徴がある。同社は酸化セリウム系などのセラミックスをペースト化し、スクリーン印刷で電解質に電極を形成する技術の開発を目指している。作動温度を低くして耐久性を向上し、用途領域の拡大を見込んでいる。(化学工業日報06年1月5日)  
4.PEFC要素技術の開発
 大日本印刷は、PEFC用金属セパレーターの市場開拓を強化する。フォトマスクやリードフレーム事業で培ったエッチング技術を駆使した流路の形成技術、独自の表面処理による低抵抗化技術を生かして、ユーザーの多様なニーズに対応する体制を整えた。同社は金メッキタイプに続き、関西ペイントと共同で、抵コスト化が可能な樹脂コーテイングタイプを開発している。この樹脂は導電性物質を含んでおり、金と同様に電気を通すと同時に腐食を防ぐ機能もある。樹脂は関西ペイントが開発、複雑な形状の金属部材表面に樹脂を均一にコーテイングする技術は、大日本印刷が05年11月に確立した。今後はステンレスの他、アルミやチタン、鉄など幅広い金属基材を利用したセパレーター材の性能向上、試作評価作業を積極的に推進する。(化学工業日報05年12月26日、日経産業新聞06年1月1日)
5.家庭用PEFCシステムの実証運転
(1)岩谷産業
 岩谷産業は、LPG改質型家庭用PEFCシステムを首都圏の一般家庭3軒に設置した。NEFの実証事業で、05年度下期に10台分の助成金を受けることから、06年1月中に更に7台を設置する計画。来年度以降も大規模実証に参加し、06年度に30台超、07年度には60台超を設置する予定である。(フジサンケイビジネスアイ05年12月17日)

(2)北ガス
 北海道ガスは1月5日、松下電器産業、荏原製作所とそれぞれ個別に家庭用PEFCシステムを共同開発すると発表した。寒冷地仕様とし、08年の発売を目指す。北海道ガスは01年から天然ガスを使った家庭用FCシステムの開発に着手、同技術研究所が中心となって北大構内や社員宅で実験を行ってきたが、従来の機器は室外設置型で凍結の問題が残り、室内に設置する寒冷地仕様の開発が必要と判断した。06年2月にも荏原バラードが製作した室内仕様の試作機1台を技術開発所内に設置して実証実験を行い、06年度から国の大規模実証事業に参加するほか、松下電器産業とも寒冷地仕様の開発を進める。1台120万円前後に抑えたいとしている。(北海道新聞06年1月6日) 
6.FCV最前線
(1)現代自動車
 韓国の現代自動車は2010年を目途にFCVの商用化を目指す方針を明らかにし、12月16日からアメリカで実証実験を始めた。UTC−FCと共同開発したFCスタックを搭載したSUB“トウーソン”をカリフォリニア州のバス運行会社ACトランジットに供給した。同車両は152Lの水素タンクを搭載し、航続距離は300km、氷点下−20℃でも始動可能である。今後5年間に32台のFCVをアメリカの主要都市で走らせ、走行性や燃費、耐久性などをテストしたうえで、市販可能なFCVの開発を目指す。販売先は政府機関などが中心になる見通しである。 韓国政府も12月20日、国内メーカーのFCV・ハイブリッド車の開発・普及を促す5カ年計画を策定した。 (日本経済、日経産業新聞05年12月21日)

(2)日産
 日産自動車は、高圧水素燃料FCV“X−トレイルFCV”が国土交通大臣認定を取得したことを受けて、限定リース販売を開始すると発表した。03年モデルは既に大臣認定を取得し、リース販売を実施している。05モデルは、03年モデルでの公道走行実験を通じて得たデータを活用するとともに、自社開発のFCスタックを導入し、性能を大幅に向上させた。又同社は70MPaの高圧水素容器を搭載し、航続距離を従来の1.4倍である500kmに向上させた車両を開発しており、06年2月にカナダで公道走行試験を行う予定である。(日経産業、日刊自動車新聞05年12月27日、日刊工業新聞12月29日、化学工業日報06年1月5日)

(3)ホンダ
 ホンダは1月8日、05年秋のモーターショウで参考出品した低重車の“FCXコンセプト”をベースにした新型FCVを09年にも投入すると発表した。新FCVは小型のPEFCスタックや低床プラットフォームを採用、FCから発生した水を重力で迅速に排出し、−30℃の低温でも走行可能である。(日刊工業新聞06年1月10日)

(4)フランスPSA
 フランスのプジョーシトロエングループ(PSA)は、フランス原子力庁(CEA)と共同で、新タイプの小型FCを試作した。パソコン2台を並べた程度の大きさで、最大出力は80kWと、FCV用実用水準に達したと述べている。低温での性能向上や触媒の改良などを経て、実際に車に搭載し商用化できるのは10年程度先になる(PSAフォルツ会長)としている。新FCの電極については、薄い鉄板を等間隔に多数並べた構造を採用することにより、小型化に成功した。3年前に試作した同性能のFCに比べて、体積は約1/10になった。出力20kWのものを4つ組み合わせたモジュール方式で、用途に応じて出力を調整することができる。出力密度は1.5kW/L、重量密度は1kW以上/kg、エネルギー変換効率は45〜50%である。年間10万台の車がこのFCを搭載すれば、出力1kW当たりのコストは100〜150ユーロに下げられると試算している。17件の特許を出願した。(日経産業新聞06年1月11日)

(5)GM
 GMのラリー・バーンズ副社長(研究開発担当)は1月9日、北米自動車ショウの会場でインタービューに応じ、将来の自動車についてハイブリッド車の重要性を指摘したものの「究極のシステムは電気的なものになる」と述べ、今後もFCVを重視する考えを強調した。(毎日新聞06年1月11日) 
7.改質および水素生成・精製技術の開発
(1)萩尾高圧容器
 萩尾高圧容器(新居浜市)は、家庭用PEFCに使うLPGの脱硫装置を開発、06年3月末までの予定で実証実験を始めた。装置は円筒形で直径7インチ、高さ14インチである。特殊加工を表面に施したヤシガラ活性炭を内部に詰めており、この活性炭が硫黄分を吸着する。(日本経済新聞05年12月19日)

(2)埼玉工業大
 埼玉工業大学の田中特任教授は、ルテニウム系や白金系に替えて、金を使用したCO除去触媒を開発した。COの選択性が高く、動作温度は高くなるもののCO2への変換効率が高いのが特徴である。白金に比べて価格が安い上に使用量を減らすことができるため、低コストの触媒になると期待される。同触媒は酸化チタン光触媒を手がけるエコデバイス(埼玉県川口市)が特許ライセンスの委嘱を受けている。
 この触媒は、金を担持した酸化チタンに鉄を被覆したもので、COからCO2への転換は80℃において90%以上と、白金以上の変換効率を示した。酸化チタンの重量に対する金の割合は約1%で、鉄は酸化チタンと同じ重量を被覆させた。特に粒子サイズや担持 方法などを厳密にコントロールしなくても高い触媒作用がみられており、簡便に作製できるのが特徴である。金はナノサイズでようやく触媒作用が現れるといわれるが、今回の金粒子のサイズはナノサイズの超微粒子ではないので、従来とは異なるメカニズムで作用しているものとみられ、現在詳細なメカニズムを探査している。金を鉄で覆ってしまうという変わったタイプの触媒であり、COガスが鉄の隙間を通って内部に入り、金の触媒作用を受けると考えられている。エコデバイスは、高効率で安価、かつ簡便に触媒を作製できることから、実用性は高いとみており、事業化のためにライセンス供与する方針で、提携企業などを募っていく予定である。 (化学工業日報06年1月13日)

(3)九大
 九州大学大学院農学研究院の北岡助教授とエフ・シー・シーは1月12日、水素を高効率で製造できる紙状の触媒を開発したと発表した。紙漉きの技術を用いて粉末状触媒を紙上に形成し、加工性や触媒反応機能を高めた。ペレット状の触媒と比べて、製造効率は2倍になった。紙状の触媒は厚さ約1mm、多数の穴(3〜20μm)を持つ多孔質構造体で、材料に植物繊維を使うことにより、紙漉きによる成形が可能になった。触媒を折り曲げられるなど加工性が高く、改質器の軽量化が図れると期待される。今後、事業化に向けて共同開発を望む企業を募集、3年後の実用化を目指す。(日刊工業新聞06年1月13日) 
8.携帯機器用マイクロFCの開発
 松下電器産業は、ノートパソコン向けに、マイクロDMFCを開発した。出力は平均13W、最大20W、体積は約400ccであり、これは従来の製品にくらべて約半分の大きさである。アメリカのペンシルバニア大学との共同研究などにより高濃度メタノールの利用を可能にした。FC出力の急激な変動を避けるため、リチウムイオンを併用している。燃料利用効率を従来の70%から80%以上に高めたことなどにより、200ccのメタノールを充填すると、約20時間駆動が可能になる。2010年にも実用化の予定である。(日本経済新聞06年1月4日) 
9.FCおよび水素関連計測器の開発
(1)HIOKI
 HIOKIはFC評価などで高精度に電流が測定できる“9709AC/DCカレントセンサー”を開発、発売した。電流計自身の誤差を従来品の約1/10に、読み取りの際の誤差は約1/2に減らした。又外部磁場の影響を小さくして、配線が込み入った場所でも計測がし易くなっている。0℃から50℃の範囲で測定が可能。価格は10万円5,000円、ハイブリッド自動車、生産設備やFCの研究開発、生産設備などに適している。年間3,000台の販売を目論んでいる。(電波新聞06年1月5日、日経産業新聞1月10日、日刊工業新聞1月13日)

(2)東工大
 東京工業大学総合理工学研究科の八島助教授らは、物質・材料研究機構の田中主席エンジニア、名古屋工業大学の井田助教授らと共同で、高温下で精密な結晶構造を解析する検出器用加熱装置を開発、解析速度を従来の約6倍に高めた。これにより高温において材料の電子密度分布を測定することが可能になった。この装置は放射光を用いるX線粉末解析装置で、0.04%と高分解能の計測が行える。今回、6連の多連装検出器用の加熱装置を開発することにより、計測を高速化した。ヒーターにモリブデンシリサイドを用い、大気中で1800Kまで加熱できる。使い易く耐久性にも優れていると述べている。実際に自動車の排ガス触媒、SOFC電極材料のセリアを1703Kに保持して計測し、データを精密に解析することにより、高温でのセリアの電子密度分布を初めて可視化することに成功した。(日刊工業新聞06年1月9日、日刊工業新聞1月12日)

(3)東北大
 東北大学未来科学技術共同研究センターの山中教授(超音波工学)らの研究グループが1月12日、極めて高性能の水素ガスセンサーの開発に成功したと発表した。FCVの水素漏れ検知器などとして、07年にも実用化を目指す。暴発防止を低コストで済ませることができると期待している。山中教授らが開発した高性能ガスセンサー“ボールSAWセンサー”は、直径1mmの水晶球の表面に貼り付けた膜が水素に反応して超音波を発生し、その超音波を電気信号に変える仕組みである。従来に比べて100倍の感度があり、検出時間も最短2秒と伝えられている。実用第1弾として、07年3月までに、FCVに液体水素を供給する水素ステーションにおいて水素漏れ検知器として設置する。山中教授は「この計測法は環境ホルモンなど様々の物質のセンサーにも応用できる」と話している。(読売新聞06年1月13日)  
10.企業のFCおよび水素関連事業活動
 三菱商事は、フラーレンを使ったFC用電解質膜の開発を目的に、本荘ケミカル(大阪府寝屋川市)と合弁で設立した“プロトンC60パワー”(東京都)を清算した。同社は資本金1億円で、三菱商事が49%、本荘ケミカルが51%を出資、03年5月に設立された。フラーレン単独でのFC用電解質膜の製品開発が困難であると判断した。「フラーレン化合物の開発には成功したが、強い膜にすることができなかった」と述べている。今後は、両社の共同研究という形に改め、フラーレンと他の技術を組み合わせたFC用電解質膜の開発を進めていく。(日刊工業新聞05年12月19日)

 ―― This edition is made up as of January 13, 2006――

・A POSTER COLUMN

ホンダが住宅用太陽電池事業に参入
 ホンダは住宅用の太陽電池事業に参入する。07年に熊本製作所で量産を始める。当初の生産能力は、一般住宅用(3kW)で1万軒分に相当する30MW級を想定している。原料は現在主流のシリコンより安価な素材を使う“非シリコン系薄膜型”で、発電効率は多結晶シリコン系よりはやや劣るが、既存製品より2〜3割安くすることにより、普及を後押しする。太陽電池は地球環境への配慮から世界での需要が急増していることに応えるとともに、将来はFCVの燃料インフラにも活用する方針である。発電した電力を住宅で使うだけではなく、水を電気分解して発生した水素を蓄える“水素ステーション”を家庭に置き、FCVに充填する構想も進める積もりである。(日本経済新聞05年12月18日フジサンケイビジネスアイ12月19日、日経産業、熊本日日新聞12月20日)

住宅で効率改善実験
 建築研究所は、パワーシステム(横浜市)と共同で進めている蓄電装置を組み込んだ住宅用エネルギーシステム開発の検証実験を始める。様々な電力消費パターンを設定し、消費電力の平準化やコージェネレーションシステムの効率改善、発電源と蓄電装置の最適な組み合わせを求める。
 同システムは、FCスタックによって発電した電力をキャパシテイ−バンクに充電し、住宅で要求される電力に応じて充電した電力を供給する。現状ではFCコージェネレーションの対既存システムの省エネ率が約10%であるのに対し、同システムでは30%を目標としている。又太陽光や風力などの再生可能エネルギーとの組み合わせにより、完全自立に近いエネルギーシステムが構築され、開発途上国や離島などエネルギーインフラが未発達な地域で効果的な利用が期待できる。
 2kWhのキャパシターが全住宅の10%に当たる約500万戸に導入された場合、約1000万kWの電力が夜間などの非ピーク電力消費帯に移動でき、深夜電力を有効に利用できる。国土交通省“住宅・建築関連先導技術開発助成事業”に採択された。 (建設通信新聞05年12月20日、日経産業新聞12月22日)

経済産業省による新エネルギー戦略
 経済産業省がエネルギー政策の指針として纏めた“新・国家エネルギー戦略”の全容が、月5日に明らかになった。総合エネルギー調査会で検討、修正した上で6月に正式に取り纏める方針である。 中国の需要急増などで激化する国際的な資源確保競争をにらみ、“エネルギー安全保障”の強化を前面に打ち出したのが特徴である。1次エネルギーに占める石油の割合を示す石油依存度を、現在の50%から40%以下に引き下げるなど、2030年の数値目標も盛り込んだ。新戦略は、省エネ、石油依存度の低減、資源確保、原子力の推進、国際協力、エネルギー企業の育成からなる6つの課題で数値目標を示している。 省エネルギーでは2030年までにGDP対比でエネルギー消費量を30%程度削減する。又石油依存度の引き下げでは、太陽光や風力などを使った新エネルギー産業の確立を目指す。ほぼ100%を石油に依存する自動車などの運輸部門では、FCの他、天然ガス、植物由来のエタノールなどを導入することにより、約20%を“脱石油エネルギー”で賄う。又電力需要に占める原子力の割合を現在の約30%から30〜40%以上に高めることも盛り込まれている。 (読売新聞06年1月5日、東京新聞1月6日、毎日新聞1月7日)