第115号 メタノールから低CO濃度の水素を生成
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方公共団体による施策
3.国際機関の動向
4.家庭用FC認証システム
5.SOFCの技術開発
6.PEFC要素技術の開発
7.家庭用FCシステムの開発と実証事業
8.定置式PEFCの実証試験
9.定置式FC周辺技術の開発
10.FCV最前線
11.水素ステーションの開発と建設
12.水素生成・精製技術の開発
13.マイクロFCの開発と事業展開
14.FC計測および性能評価技術
15.FC関連の企業活動と事業展開
16.FCシステム市場予測
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
 NEDOは“PEFC実用化戦略的技術開発/次世代FC技術開発“に31件を決定した。大学、公的機関の研究者が対象で、FCVの本格普及期2020年〜30年頃に求められるFC技術の実現を図るために、必要な技術開発を行うことが目的である。(電気新聞05年11月7日)
2.地方公共団体による施策
(1)京都市
 京都市は家庭ごみから水素を生成する研究を産学官連携で11月7日から始める。市が収集する家庭ごみの1部を研究に使い、京都大学や環境省、タクマ、日立造船、三菱重工業などプラントンメーカーなどと組んで上記の技術を確立する。実験では家庭から出る生ごみや、廃食用油からでる廃グリセリンをプラントで発酵させ、メタンを主体としたバイオガスを発生させる。更にメタンを水蒸気改質によって水素に変換、FC用燃料に使用する。2013年に市内に完成するごみ処理施設に実証プラントを併設し、60トン/日の家庭ごみから1万8,000m3の水素を取り出し、燃料電池によって約1,800世帯分の電力を発生させる計画である。(朝日、毎日、日刊工業、京都新聞05年11月3日、日本経済新聞11月4日、日経産業、建設通信新聞11月7日、日本経済新聞11月14日)

(2)愛知県
 愛知県は知多市、東海市と共同で“知多地域水素インフラ活用研究会”を立ち上げることになり、初会合を11月9日に開催する。2月に発足した県水素エネルギー産業協議会の一環として、産学官約40人でスタートする。05〜06年度にFCの開発状況や産業展開の可能性を調査するとともに、実証実験や各種プロジェクトを提案する。(日刊工業新聞05年11月3日)
 愛知県は11月22日、県産業技術研究所(刈谷市)にFCの開発支援拠点“FCトライアルコア”を開設する。同日13時30分から、研究所内で式典と記念イベントがあり、講演会やFCV試乗会が開かれる。(中日新聞05年11月5日、日刊工業新聞11月7日、日刊建設工業新聞11月14日)

(3)三重県
 三重県水素エネルギー総合戦略会議の設立総会が、11月8日に四日市市内のホテルで開かれた。三菱化学、コスモ石油など会員企業105社を含む産学官の175人が出席した。今後、FCに関する実証実験など国家プロプロジェクトへの参加や関連情報の収集・発信、水素の製造・運搬・貯蔵技術の研究に連携して取り組み、水素社会実現に向けたモデル地区の構築を目指す。(日経産業新聞05年11月9日) 
3.国際機関の動向
(1)IPHE
 15カ国が参加するIPHEはEU、アメリカ、ロシアなどから提案のあった10プロジェクトを認定した。提案国が資金を出して共同で取り組み、IPHE参加国が自由に利用できる仕組みになっている。認定された研究項目は、EUの“既存の天然ガスパイプラインを利用して水素を混合気体として送り、先端の分離技術を用いて水素を取り出す”、ロシアの“可逆式固体水素貯蔵と精製システムを開発し、FCによる電力供給を一体化する”、アメリカの“DMFC用高耐久性イオン交換膜の開発”などである。(化学工業日報05年10月27日)

(2)ICAO
 携帯用小型DMFCのメタノール・カートリッジの航空機への持込について、このほど国際民間航空機関(ICAO)の審議を通過したので、今後国際航空運送協会(IATA)でも議論され、順調に進めば07年1月1日から持込が可能になる。この問題については、04年12月に国連の危険物小委員会において、危険物輸送に関する勧告“オレンジブック”で輸送基準が承認され、これを受けて05年春からICAOで議論が始まり、10月下旬からモントリオールで約2週間かけて審議してきた。今回審議を通過したのは、メタノールの他、ブタン、ギ酸、改質メタノールなどの可燃性液体で、これらを燃料とする小型FCの航空機への持込や使用が可能になる。(化学工業日報05年11月10日)
4.家庭用FC認証システム
 日本電機工業会は10月21日、家庭用FC認証システムが運用を開始したと発表した。04年“家庭用FC認証システム検討委員会(委員長正田東京理科大教授)を設置、05年4月に首相公邸に導入したPEFC2台は、この認証システムで初めて認証された。同委員会は10kW未満の定置式FCにおける安全性担保を目的に、04年から学識経験者やエネルギー産業、消費者団体などで構成され、認証システムの仕組みや試験方法を審議して04年12月から運用を開始した。今後、政府の実証事業などで同システムを活用する。認証は電機安全環境研究所、日本ガス機器検査協会、日本燃焼機器検査協会が行い、同事業を安全面からサポートする。(電気新聞05年10月24日)
5.SOFCの技術開発
 明電舎とシーメンス・パワー・ジェネレーションは、日本でのSOFCシステムの開発・製造・販売サービスについて業務提携することで基本同意した。明電舎の持つ分散型電源市場の豊富な実績と、シーメンスのSOFC技術を生かし、日本市場に競争力のある商品を投入していく。今後、合弁企業の設立についても協議、1年以内に実現する予定である。明電舎は、シーメンスのSOFCを分散型電源のラインアップに加えることにより、発電事業を強化する。(日本経済、日刊工業、建設通信新聞、フジサンケイビジネスアイ05年11月9日)
6.PEFC要素技術の開発
(1)大日本印刷
 大日本印刷は11月1日、関西ペイントと共同で低コスト化が可能なPEFC用金属セパレーターを開発したと発表した。ステンレスを基材に表面処理方法を金メッキから樹脂コーテイング(樹脂の厚みは30μm)に変えることにより、導電性、耐腐食性を維持しながら表面処理コストをほぼ半減できたと述べている。12月からモバイル機器メーカーを中心にサンプル出荷を開始、07年での量産化を目指す。今回、同社は塗料用樹脂などで高い技術力を持つ関西ペイントと共同で導電・耐腐食性樹脂を共同開発した。新製品は同樹脂を半導体リードフレームで培った電着法によって表面にコーテイングしている。樹脂の組成は明らかにされていないが、導電性を有する複数の材料を複合化している。又電着法を採用したことによって、基材の凹凸部、端面などにも樹脂を均一にコートできた。(日経産業新聞、化学工業日報05年11月2日)

(2)三菱電機
 三菱電機は11月10日、PEFCの性能を短時間で正確に評価するシミュレーターを開発したと発表した。電解質膜を移動するプロトンの伝導性をコンピューターで予測する手法である。従来は実機と材料を使って検証していたため、材料を取り寄せて加工するなど、実験までに数ヶ月を要することもあったが、同社が新しく開発した手法“局在化分子軌道法”では、電子の動きに応じて高分子の断片を選択して計算する。したがって、コンピューターに材料の分子構造を入力すれば4日程度で計算が終了し、誤差も±20%以内で、実験に近い結果が得られると述べている。(日経産業、電気、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報05年11月11日)

(3)名工大
 名古屋工業大学大学院の野上教授の研究グループは、無加湿条件下で動作可能なガラス電解質を開発した。ゾル溶液中に、白金担持カーボン(Pt/C)と分散剤としてポリビニルピロリドン(PVP)を加え、ゾルゲル法により作製した。ナフィオンとは異なり、同ガラス電解質は無加湿雰囲気で加湿状態と同等の出力が得られた。同研究グループでは、無加湿で動作するガラス電解質の合成にはPt/Cの分散が重要であり、PVPが分散性を高めるのに効果的であると述べている。同研究グループは、金属アルコキシドを用いてゾルゲル法により高プロトン伝導性ガラス電解質の作製を目的とする研究を行っている。今回の実験ではゾル調合時にPt/Cを加えると共に、分散剤としてPVPおよび2−プロパノールを添加した2種類のガラスを作製し、これらを電解質としてFCを組み立て、加湿および無加湿条件下で性能を測定した。測定結果では、ナフィオン電解質では無加湿状態では2時間で出力がほとんど出なくなり、2−プロパノール添加のガラスでも2時間後に出力が低下し始めたが、PVPガラスの場合には加湿状態に比較して出力の変化が見られなかった。なお加湿状態での最大出力は8.4mW/cm2であった。(化学工業日報05年11月14日)
7.家庭用FCシステムの開発と実証事業
(1)大阪ガス
 大阪ガスは10月27日、家電メーカー4社と開発を進めてきた家庭用PEFCシステムの共同開発で、9月から三洋電機、東芝FCシステムの2社との共同開発に注力し、コスト削減や耐久性の実証に向けた手法開発に乗り出したことを明らかにした。現在までの耐久性評価では、スタックについては15,000時間の運転実績を得ている。9月からは、耐久性を高めやすい連続運転性を重視した開発にシフトし、発電容量が700〜750Wシステムを用意した三洋電機および東芝FCシステムと共同開発を進める。(産経新聞05年10月28日)

(2)東京ガスと積水ハウス
 東京ガスと積水ハウスは11月10日、家庭用PEFCコージェネレーション“ライフェル(LIFUE)”を設置した一戸建て住宅の分譲を、東京都武蔵野市で開始すると発表した。導入するのは、積水ハウスが11月12日から販売を開始した分譲地“コモンステージ吉祥寺・桜の杜”内の戸建て分譲住宅7棟である。(電気新聞05年11月11日、日経産業新聞11月14日、毎日、電波新聞11月17日、産経新聞11月18日) 
8.定置式PEFCの実証試験
 栗田工業は三重大学、三重県立科学技術振興センター、シナネン、三重品川産業と共同で、三重県四日市市で、LPGを使用する業務用出力5kWPEFCシステムを振興センターの研究室内に設置し、実証試験を開始した。水素の精製にはアメリカ企業から導入した水素透過膜を使っており、貯湯槽の容量は370Lである。運転期間は05年10月から06年3月まで。試験データを基に商用機を開発、コンビニやファミリーレストランへの導入を図る。なお実証研究には三重県の補助金を受けている。(日経産業、日刊工業新聞、化学工業日報05年10月26日)
9.定置式FC周辺技術の開発
 日東工器は10月26日、液体・気体兼用超小型ポンプ“ユニモルポンプ”を11月11日に発売すると発表した。圧電振動素子の屈曲・屈伸運動を駆動源としており、最大吐出流量は36mL/s 、家庭用FCの冷却水循環やガス分析機器の気体吸引・排出などの用途を見込んでいる。従来の“バイモルポンプ”では2枚であった素子の枚数を1枚としてコストダウンを図り、同時に厚さを14mm、重量を13gとするなど小型軽量化されている。又モーターや駆動軸を使わないので、作動音が小さい。価格は6,000〜15,000円、年間1万台の販売を目指す。(日刊工業新聞05年10月27日、日経産業新聞10月28)
10.FCV最前線
(1)九州共立大
 九州共立大学(北九州市)の山口教授らは、PEFC(300W、24V)で駆動するパイプ式EVを完成させた。水素貯蔵タンクを搭載、フル充填は約15分で完了する。水素が満タンであれば20〜25km/hで約120kmの走行が可能である。発車時の補助電源としてコンデンサーを搭載しており、スムーズな発進を可能にした。製造は五十畑工業(東京都)が担当する。同教授らのグループは3年程前から4輪小型電動車の開発を続けており、EVについては既に商品化、全国で30台ほどの納入実績がある。(日刊工業新聞05年10月25日)

(2)トヨタとGM
 トヨタ自動車の渡辺社長とGMのリチャード・ワゴナー会長は、11月2日に都内で会談、FCVを中心とする先端技術の研究期限が06年3月末で切れるので、提携関係の更新などを議論し、協力関係を続けることを確認した。アメリカ・カリフォルニア州にあるGMとトヨタとの合弁工場の生産計画なども議論されたと見られる。(読売、朝日、毎日、日本経済、産経、東京、中日、中国、西日本新聞、フジサンケイビジネスアイ、河北新報11月2〜3日)

(3)出光興産
 出光興産は型式認証を受けたホンダのFCV“FCX”をリース契約した。リース期間は05年10月1日から1年間、リース料は80万円/月で従来と同額である。(日経産業新聞05年11月7日)

(4)上海汽車
 中国の上海汽車集団は、地元の同済大学と共同で、FCVを共同開発、試作車を上海市で開催中の工業博覧会に出展した。7人乗りのミニバンにFCを搭載、水素ボンベは車体下部に備えられている。最高時速は185km/h、始動から時速100km/hまでの時間は19.3秒、連続走行距離は185km、2010年までに量産化を目指す。(日本経済新聞05年11月8日)
11.水素ステーションの開発と建設
(1)九大等
 九州大伊都キャンパスに、水を電気分解して水素を造り、FCVにそれを供給する実証実験設備“水素ステーション”が完成した。九大、九州電力、三菱商事が開発し、11月7日に完成した。1日にFCV3台分の水素を製造する。一連の実証試験には100億円の費用がかかる。(西日本新聞05年11月9日)

(2)ホンダ
 ホンダは11月15日、家庭用水素供給システム“ホーム・エネルギー・ステーション(HES)V”の実験をアメリカ・カリフォルニア州で開始したと発表した。同システムは、天然ガス改質による水素燃料の供給と、それに併設するPEFCによるコージェネレーション機能を持つ。一般家庭で必要な電力量やFCV用水素量に適した性能などを確認する。新システムでは、小型で高性能な改質器を新しく開発しており、従来のシステムと比較して約30%の小型化を実現した。発電量を25%、水素の貯蔵能力を50%向上させるとともに、起動時間を1分に短縮した。(産経、日経産業、日刊工業、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ05年11月16日)
12.水素生成・精製技術の開発
(1)カリフォルニア大学と東京理科大
 アメリカ・カリフォルニア大学の中村教授と東京理科大学の研究グループは、10月26日、基礎研究の段階ではあるが、次世代DVDの光源などとして実用化が進む窒化ガリウム結晶を活用して、水から水素を生成することに成功したと発表した。中村教授が総括責任者を務める科学技術振興機構の研究プロジェクトでの成果である。東京理科大学の大川助教授が中心になって進めた。研究グループが開発した手法は、先ず窒化ガリウム結晶と導線を結んだ白金を水に浸す。その上で窒化ガリウムに光を照射すると、水に電流が流れて水の電気分解が起こり、水素を発生する。光を照射するために費やすエネルギーに対する得られた水素のエネルギー量の割合、すなわち変換効率は0.5〜0.7%とまだ低いが、理論的には20%以上に高められると考えられており、今後改良を続ける考えである。(日本経済、産経、日経産業新聞05年10月27日)

(2)GS・ユアサ
 GS・ユアサコーポレーションは11月7日、メタノールから30〜90℃以下の低温で水素を取り出す新しい水素製造技術を発見したと発表、ノートパソコンなど携帯機器向けに07年度までの実用化を目指す。同社は燃料極と空気極の間に電解質を挟んだ構造において、送り込む空気を少量(DMFCにおける空気供給量の1/10程度)にして酸欠状態にすると、メタノールが分解して水素を発生することを発見、水素ガスとして取り出すことに成功した。この水素発生装置は、生成ガスにCOをほとんど含まないことが特徴で、今後電解質膜メーカーなどと共同開発を進め、水素の発生効率の向上や小型化を進める。将来的には、自動車用や家庭用PEFCにこの技術が活用されることを見込んでいる。(日本経済、日経産業、日刊工業、日刊自動車、京都新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報05年11月8日、電気新聞11月9日、鉄鋼新聞11月17日) 
13.マイクロFCの開発と事業展開
 キャノンはデジタルカメラや小型プリンター、携帯端末に使える水素PEFCを開発し、3年後の実用化を目指す。水素をカートリッジ内の合金に蓄え、それとFC部分を組み合わせたシステムで、全くCO2を排出しない。小型プリンター用の比較的大きい電源、デジカメ向けの中型、携帯向け小型の3種類の試作品を作成した。出力が数W程度の最小型のサイズは3cm・4cm。水素1回の充填で稼動する時間は、同じ大きさのリチウムイオン電池と比べて現段階では同等であるが、将来は2〜3倍を目指す。キャノンのデジカメなど小型機器の全製品にこのFCを使えば、DMFCに比べてCO2排出量は年間15万トン削減できると期待している。(日本経済新聞05年10月25日)
14.FC計測および性能評価技術
(1)菊水電子工業
 菊水電子工業は10月28日、中国・大連市にある中国科学院大連化学物理研究所(DICP)との間で、FCの性能評価技術の確立に向けた技術協力の覚書を交わした。中国の国家標準となるFCの評価方法を確立し、その測定器の製品化を目指す。FC市場でのビジネスチャンスを広げると共に、中国市場で“電子計測・産業用電源装置のリーデイングカンパニー”を目指すことにしている。なおDICPは、エネルギー・環境問題に取り組む中国中央政府が、産学一体で推進する“国家ハイテク研究発展計画(863計画)の基で、FCの研究開発を主導しており、精華大学や同済大学と連携してFCバスなどの研究開発を行うなど、中国でのFC実用化を実現するための中核となる研究機関である。特に08年北京オリンピックでのFCVによる公共交通の実現を目指している。(電波新聞05年11月2日、フジサンケイビジネスアイ11月3日、日刊工業新聞11月4日)

(2)長野計器
 長野計器は熱や火花が発生しない“本質安全防爆構造”(IEC規格)の小型電子式圧力計を発売した。圧力トランスミッター“KJ91”と差圧トランスミッター“KJ92”の2種類で、水素ステーションなど、爆発性ガスを扱うプラント向けに売り込む。サイズはKJ91が表示部外徑67mm、重量は520g、価格は10万8,000円から20万9,000円で、初年度1,000台の販売を目指す。KJ91は120Mpaの水素圧に対応可能。(日刊工業新聞05年11月8日) 
15.FC関連の企業活動と事業展開
(1)バンテック
 バンテック(那須塩原市)は水素吸蔵合金と組み合わせた自然エネルギー有効利用を目的とするFCを11月15日に発売する。“アーセーバー4800”と呼ばれるFCは出力4.8kWで、北海道稚内市の稚内新エネルギー研究会に5,000万円で販売する。稚内公園内の風力発電と接続して、発生した電力で水を電気分解して水素を生成、水素吸蔵合金に水素を貯蔵し、FCの燃料として使う。(日経産業新聞05年11月7日)

(2)ぺメアス
 ドイツのペメアス社は、東京事務所を開設、日本およびアジアのFC市場に本格参入する。MEAの普及拡大と技術開発の促進を目指し、日本およびアジアでの有力企業や学術機関へ取り組みを開始する。同社はドイツのヘキスト社のFC研究開発部門が独立し、2004年に日欧米の有力企業のコンソシアムが支援して設立された。05年にはイタリアのデノーラの電極部E-Tek を買収、MEAおよび電極を手がけている。同社のMEAは、フッ素系電解質膜に比べてメタノール反応効率が高く且つ低コストで信頼性の高い炭化水素系の電解質膜を採用している。高温対応(120〜200℃)MEAのセルテックPは、CO許容範囲が広く、低温対応(60〜120℃)のセルテックVは、メタノールのクロッスオーバーを大幅に抑制した。DMFCやPEFC向けで加湿プロセスが不要とされている。現在欧米の有力企業が評価試験やフィールドテストを実施中である。(化学工業日報05年11月10日) 
16.FCシステム市場予測
 富士経済は11月17日、FCの市場規模が2020年に1兆3,000億円近くに達するとの調査結果を発表した。自動車向けが9,000億円、家庭用が3,075億円、業務用・産業用が671億円と見込んでいる。普及のカギとなる製造コストは、現状で800万〜1000万円と推定、部品の量産で08年には250万円程度に下がると予想した。10年には120万円程度になり、補助金により家庭用需要が最初に確保されると予想している。FCVについては、量産は10年以降と予想、コストが下がるまでは実用化への具体的な動きは乏しい見込みである。携帯機器用は07年頃から商用化が始まり、10年以降に導入が加速するとみている。ただ、従来型電池の高性能化もあって、20年時点での市場規模は144億円に留まると予測している。(日経産業新聞05年11月18日)  

 ―― This edition is made up as of November 20, 2005――

・A POSTER COLUMN

アメリカGM社が中国でHVおよびFCVを生産
 GMは05年10月30日までに、ガソリンエンジンと蓄電池を併用したハイブリッド車(HV)を中国で現地生産することを決め、提携先の上海汽車工業集団(SAIC)と上海で覚書を交わしたと発表した。08年度を目途に中国市場に投入する。両社の現地合弁会社PATACが技術開発を担当する。GMとSAICは04年10月、HVおよびFCVなど環境対応車の中国での商品化を狙い、複数の技術開発プロジェクトを進めることで同意していた。(日刊自動車新聞05年11月1日、日刊工業新聞11月2日)

光熱費ゼロ住宅のライフスタイル
 太陽光発電設備を備えた戸建住宅“セキスイハイム”を展開する積水化学工業は、照明や給湯、冷暖房などにかかるエネルギー料金を負担しないで済むという生活スタイルを提案している。同社のシミュレーションによると、4人家族の一般的な住宅で1年間に支払う光熱費は22万円になる。30年住むと仮定すれば、合計で660万円に達する。住宅を建てた後にかかるコストとして最も“かさむ”のが光熱費であるが、同社の秋山広報担当部長は「セキスイハイムに住んでいる人の中には、光熱費を全く払わないで暮らしているのみならず、太陽光で発電した電気を電力会社に売って、儲かっている人さえいる」と話している。これを可能にしたのは、積水化学工業の機密性、断熱性に優れた住宅設計に加えて、太陽光発電システムによる“創エネ”と、エコキュート(CO2冷媒ヒートポンプ式電気給湯器)などによる“省エネ”のドッキングである。
 共働き率が80%に達する現在、昼間はほとんど電気を使わない家庭も少なくないが、昼間の太陽光発電による発電電力は、すべて電力会社売電し、それによる収入が期待される。電気料金の差は昼と夜とで3倍の開きがあるので、時間差を上手に使うことにより、光熱費ゼロまたはプラスの生活が実現する。(環境ビジネス05年12月1日)  

ブレークする電気自動車(EV)
 EVの普及に取り組んでいる日本EVクラブ(東京世田谷区)は、筑波サーキットで11回目の日本EVフェステイバルを開いた。手作りのEV45台とメーカーから15台が参加、EVの可能性を発現する場となった。石油価格の大幅な高騰を背景に、ガソリン・ハイブリッド車が世界的に普及し、それがEVにも大きなインパクトを与えている。
 富士重工とNECが実用化に乗り出し、三洋電機も力を入れているリチウムイオン電池は、ニッケル水素よりも倍以上の電気を蓄え、かつ安価で性能が安定、充・放電が容易である。東京電力を始め関西、九州などの各電力会社は一斉にEVに目を向け始めている。
 コスト面から評価すると、EVの車両価格はガソリン車の1/3、電池のコストはリース方式でカバーできる。又EVは維持費でガソリン車の半分以下、燃料費は1km当たり5円ですむ。車1人1台の時代に、1日当たり数十km程度で利用する層がEVのユーザーとして期待できる。
 EVは急速充電に課題があるが、三菱自動車はリチウム電池を使って1回3時間の充電で400kmの走行を実現した。現在は200Vで4時間充電が可能であるが、将来は5〜10分で充電を可能にする急速充電設備のインフラが出現するであろう。(日刊工業新聞05年11月7日)