第112号 集合住宅用FCコジェネの効果を実証
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方公共機関による施策と事業
3.PEFC要素技術の開発
4.家庭用PEFCコージェネレーション事業
5.複数家庭向けFCコージェネレーションの実証運転評価
6.FCV最前線
7.水素生成・精製および改質技術開発
8.DMFCおよびマイクロFCの開発
9.エタノール型FCの開発と事業展開
10.パッシブPEFCの大出力化
11.FCおよび水素関連計測技術の開発
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)経産省・NEDO
 NEDOは、新エネルギー技術開発プログラムの一環として、大学、公的研究機関などの先端的な研究ポテンシャルを活用し、FCVに応用可能な高効率・高信頼性・低コストの次世代FCの研究開発を促進するため、次世代FC技術開発で研究開発委託先の公募を行う。(化学工業日報05年8月3日)

(2)国交省
 国土交通省は、風力発電とFCを組み合わせたエネルギー利用システムのモデル化地域に北海道の稚内市と室蘭市を選定した。道内に豊富に存在するバイオマス資源や風力資源などから水素を取り出し、それを集合住宅や病院などのFCに供給するシステムを検討し、それを活用した産業振興策も纏める。北海道は1人当りのCO2排出量が全国平均に比べて3割多い反面、畜ふんや風力、天然ガスなど水素資源が豊富に存在する。調査事業費の総額は5,300万円で期間は年度末まで、秋にも民間企業などに調査を発注する。(電気新聞05年8月8日)
 国土交通省は、住宅・建築関連先導技術開発助成事業に23課題を採択した。その中に大阪ガスと東芝FCシステム、長府製作所の“集合住宅における水素供給FCコージェネレーションに関する技術開発”が含まれている。(化学工業日報05年8月15日)   
2.地方公共機関による施策と事業
(1)山口県
 山口県産業技術センターは、水素を安全に管理するため、センサーの開発に乗り出す。同センターは06年度までに、水素や都市ガスなど複数のガスを数十ppmから数十%の範囲で1秒以内に検知できるセンサーを実用化したい考えである。光を当てることにより複数のガスを検知する独自のノウハウを活用し、水素に反応する機能性薄膜なども開発する。 同時に水素配管の素材や構造も研究し、コンビナートから家庭に水素を直接供給する技術の確立を目指す。配管については、鋼管を2重に組み合わせ、内側の管には水素を、外側の管には窒素を充填する方法を基本にする。複数の鋼管や加工しやすいポリエチレン管、ならびにこれらの継ぎ手やバルブから水素の漏れを測定し、水素配管の安全性を検証する。コンビナートの水素の副生量が全国1の周南市は、06年度に家庭用FCに水素を供給するモデル事業の実施を目指しており、そのためにセンサーと配管の開発を行う。05年度予算は約700万円で、9月から2ヶ月間試験する。(中国新聞05年7月22日)

(2)名古屋市
 名古屋市は、地球温暖化対策の一環として、愛知万博で採用されているFCコージェネレーションシステムの導入を検討する。導入対象の市有施設を絞り込み、早期の具体化を目指す。市有施設へ先行導入し、見学会などで民間事業者の関心を高め、普及促進を図るのが狙いである。(日刊建設工業新聞05年7月25日) 
3.PEFC要素技術の開発
 首都大学東京の川上助教授は、ナフィオン膜より約4倍優れたプロトン伝導性を持つ高分子素材の電解質膜を作製した。親水性の高いスルホン酸基を持つ親水性低分子と、親水基を持たない疎水性低分子を重合したもので、ブロック化により形成された親水鎖を通ってプロトンが移動する。すなわち、スルホン酸基からなる親水性部位をブロック化と相分離によって集めることにより、プロトン輸送チャンネルを形成するので、ランダムにスルホン酸基が存在している他のポリマーに対してプロトン導電性が高められている。又ナフィオンは100℃での使用が限界であるが、この電解質膜は約250℃の高温でもプロトン伝導性が維持できると報告されている。炭化水素系材料のため、ナフィオンより安価であり、ハロゲンを含んでいないので、環境への負荷も少ない。今後耐久性を高めるなど、実用化に向けての改良を行う。(日刊工業新聞05年7月26日)
4.家庭用PEFCコージェネレーション事業
(1)パナホーム
 パナホーム(大阪府豊中市)は、家庭用FCコージェネレーションシステム“ライフェル(LIFUEL)”を導入した住宅の分譲を開始する。神奈川県“京浜ニューシテイ湘南大津の丘”で8月1日から建売住宅6戸を販売する。(日経産業、電気、日刊工業、日刊建設工業新聞、フジサンケイビジネスアイ05年7月27日、神奈川新聞7月28日、化学工業日報7月29日、住宅新報8月2日、電波新聞8月10日)

(2)出光興産
 出光興産の定格700WLPG家庭用PEFCが8月4日に運転を開始した。NEFの定置式大規模実証事業に申請、8台分の助成金交付を受けたが、今回前橋市の1戸建て住宅に設置した1台が稼動した。国内8県の10家庭に同種システムを無料で設置、それらの1台が稼動した。機器のレンタル料や工事・設置代は出光が国の助成金や自己資金で負担するので、消費者の支払いはLPGの月額使用料のみである。試験期間は2年。(日経産業新聞、化学工業日報05年8月5日)

(3)日本海ガス
 日本海ガス(富山市)は新日本石油の定置用FC大規模実証事業に協力する。8月8日、富山市内の家庭にLP供給型PEFCシステム1台を設置して運転を始めた。今後3年間データを収集し、新日石に提供する。(富山新聞05年8月9日)

(4)松村物産
 松村物産(金沢市)は、家庭用LP供給型PEFC“ENEOS ECO LP-1”を金沢市の社員宅に設置し、実証運転を開始した。新日本石油の定置用FC大規模実証事業に参画する。(北国新聞05年8月9日)

(5)ハゼヤマと鳥取ガス産業
 ハゼヤマ(浜田市)と鳥取ガスグループの鳥取ガス(鳥取市)は、新日石のLPガス家庭用PEFCシステム(750W)の実証実験に参加、3年間で実用化に向けたデータを提供する。(中国新聞05年8月16日)

(6)九州石油
 九州石油は8月16日、NEFの定置用FC大規模実証事業で採択された8台のFCが運転を開始したと発表した。PEFCは東芝FCシステム製で、LPガス型。(化学工業日報05年8月17日)

(7)新日石と荏原バラード
 新日石と荏原バラードは、8月17日、灯油燃料1kW級家庭用PEFCシステムの実証試験を横浜市で始めたと発表した。札幌市や仙台市など計5ヶ所で実施する。(産経、日経産業、日刊工業、電気、中日、北海道新聞、化学工業日報、河北新報05年8月18日、電波新聞8月19日)

(8)敦井産業
 敦井産業(新潟市)は8月18日、LPガスENEOS ECO LP-1で家庭用大規模実証事業に参画、19日から運転を始めると発表した。(日刊工業新聞05年8月19日) 
5.複数家庭向けFCコージェネレーションの実証運転評価
 トヨタ自動車、アイシン精機、都市再生機構中部支社、東邦ガスの4社は8月18日、05年2月から展開している家庭用PEFCに関する実証実験のデータを発表した。通常の電気や都市ガスを使用する住宅に比べて、エネルギー消費量を約13%削減し、CO2排出量を約23%減らすことができた。愛知万博の公式参加者用宿舎に2台の家庭用FCコージェネレーションシステムを設置し、同システムでつくる電気と熱を4戸の住宅に供給している。1台で2戸の住宅に電気と熱を供給するマイクログリッドを形成している。2月から6月までの5ヶ月間の実験により、1戸に1台の割合でFCを設置した場合に比べて、エネルギー消費量を約8.3%削減し、約6.1%のCO2削減効果が得られることが計算上判明した。集合住宅の場合には、負荷変動の平準化効果により、更にFC導入の効果が高まると推定される。今後9月末までの期間、夏場での運転を含むデーターの収集と解析により、効果の検証と最適な運転制御方法の確立を目指す。(日本経済、電気、日経産業、日刊工業、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ05年8月19日)
6.FCV最前線
(1)トヨタ・GM
 トヨタ自動車とGMは7月29日、今夏での合意を目指していたFCV開発の合弁会社設立を見送る方針を固めた。(朝日新聞05年7月30日、西日本、中国新聞7月31日)

(2)ホンダ
 ホンダは8月4日、FCVの液体水素の充填技術に関して、GM、BMW、欧米部品メーカーなどがつくる研究グループ“液体水素コンソシアム”に参加したことを明らかにした。カプラー(連結器)の規格標準化を研究する。ホンダは「FCVの共同開発が目的ではない。当社のFCV燃料の本命は圧縮水素」と話しており、情報収集が狙いと見られる。ホンダの福井社長は、FCVに関して「10年あればコスト、連続走行距離がかなり改善できる」と述べ、10年以内に市販を目指す考えを示した。(読売、日本経済、東京新聞05年8月4日、毎日、日刊工業、日刊自動車、東京、中日、中国、西日本、北海道新聞、フジサンケイビジネスアイ、河北新報8月5日)
7.水素生成・精製および改質技術開発
(1)JRCM等
 JRCM(金属系材料研究開発センター)、新日本製鉄、帝国石油は共同で、コークス炉ガス(COG)から水素を取り出す技術開発を進めているが、このほど新日本製鉄所内にベンチプラント試験設備が完成、稼動を開始した。7月25日、現地で竣工式を行い、8月からは技術検証・FSのための試験を本格化する。これは01〜05年間に経産省からの補助を受けて行われている“製鉄プロセスガス利用水素製造技術開発”プロジェクトで、筑波大学、群馬大学、東北大学とも委託研究などの形で協力しており、昨年度までの要素研究の次段階として本プラントによる技術可能性検証が実施される。技術開発の主眼は、COGが保有する顕熱および製鉄の廃熱を利用して、COG中のメタンなどを改質し、水素に転換する技術の開発である。(鉄鋼新聞05年7月25日)

(2)三菱マテリアル
 三菱マテリアルは、混合ガスに含まれるCO2を、従来法に比べて最大80%少ないエネルギーによって分離・回収できる技術を開発した。イオン性液体は、CO2のみを吸収するが、液化したCO2とは分離する性質を持つことを利用して、吸収液であるイオン性液体に溶け込ませたCO2を液体のまま分離できるようにした点に特徴がある。CO2をガスとして分離する従来法では、CO2を貯蔵・運搬するために圧力を加えて再度液化していた。2年以内にこの技術を応用した装置の実証試験を開始する方針である。省エネルギーのみならず、1kg当りの回収コストは従来の約10円から6円程度になると試算されている。(日経産業新聞05年7月27日)

(3)MHI
 三菱重工業は、酸素気液分離器と水素気液分離器、イオン交換フィルターを一体化したPEM水電解法を開発した。システムのコンパクト化や簡素化、低コスト化を実現するとともに、エネルギー効率やセル耐久性の向上が見込まれる。開発した一体化装置は、電解熱からの自立を図っている他、水素側では循環によるスタックの均温化を行っている。初期性能試験では、電流密度1A/cm2、平均セル電圧1.63V、電流効率98.2%(電解圧力0.7MPa)、エネルギー効率は89.4%を達成した。又セパレーターと給電体、MEAの面内均一化、接触抵抗の低減、圧力損失の低減を図ることにより、2A/cm2の電流密度において、エネルギー効率82.6%を達成した。(化学工業日報05年8月2日)

(4)新日鉄
 新日本製鉄は、下水の汚泥から水素を効率よく取り出す技術を開発した。炉の中で乾燥させた汚泥に酸素を加え、汚泥に含まれる有機物を酸化させることにより、有機物のほとんどを水素を含むガスに変える。水素発生量は、メタン発酵法の約2倍、処理コストも焼却処分に比べて、約半分となる。処理量が約10トン/日の実験設備では、1トンの乾燥汚泥から150m3の水素を製造することができた。ガス化の後に残った溶融灰も建築資材として再利用可能である。水素1m3の製造コストは20円以下と推定される。又汚泥を焼却しないので、重油などの燃料が不要であり、焼却炉で処理する方法に比べて、エネルギー消費量は半分になる。そのため汚泥1トン当りの処理コストは1万円程度になると試算している。現在下水の汚泥の年間発生量は約210万トンであるが、その内7割程度は焼却後に埋め立て処分されている。(日本経済新聞05年8月5日) 
8.DMFCおよびマイクロFCの開発
(1)名工大
 名古屋工業大学の野上教授と大幸大学院生らの研究グループは、DMFCの発電性能を高める電解質膜を開発した。ナフィオン内部の表面層に無機成分を浸透させ、メタノールの透過を抑えることによって、電極の単位面積当りの電流密度を1.5倍にした。重合反応が進んだ無機成分をナフィオンに注入することは難しいので、無機成分原料の金属アルコキシドをナフィオンに浸透させ、ゾルゲル法で合成することにした。具体的には、ナフィオンを金属アルコキシドのアルコール溶液に漬けて、無機成分原料を浸透させる。その後酸性溶液に浸して加水分解させ、アルカリ性溶液に浸して重合反応を起こし、更にリン酸溶液に浸すことによって無機成分のプロトン伝導性を高めた。無機成分の合成には、酸性溶液とアルカリ性溶液の濃度、温度などの条件が重要なポイントである。このようにして創られたナフィオン膜は、メタノールと接触したときの膨張が起こりにくい。(日刊工業新聞05年8月1日)

(2)SII
 セイコーインスツル(SII)は、常温で金属水素化物である水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)から水素を取り出して発電する効率の高い小型FCを開発した。水素発生制御にFC内の水素ガスの圧力変動を利用した制御機構を独自に開発、これによりポンプなどの補器が不要の完全パッシブ型とし、常温で高出力発電を実現した。水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)は、常温で水と混合することにより水素を発生するが、制御性を向上させるためにリンゴ酸を水素発生触媒として採用している。プロトシステムで1W、5Vの出力で、約8時間稼動させられることを確認した。携帯電話用充電器、デジタルカメラ、カムコーダ、ノートPCへの応用を想定している。(電気新聞05年8月2日、化学工業日報8月5日)
(3)ミレニアム・セル
 ダウ・ケミカルなどが参加しているミレニアム・セル(ニュージャージー州)の開発チームは、携帯用FCでの実用化を目指したFCカートリッジの商用生産に向けたプロセス開発について、全米製造科学センター(NCMC)と資金提供を受ける契約を結んだ。ミレニアム・セルが開発するのは、水素化ホウ素ナトリウムを使って、安全で高品質の水素を発生させる水素エネルギーシステムである。(日刊工業新聞、化学工業日報05年8月4日)
(4)NTTドコモ
 NTTドコモは、次世代携帯電話用電源の開発について、FCを軸にリチウムイオン電池(LiB)、太陽電池の3本立てで推進する。同社は本体のLiBに充電するための外付けDMFCを富士通研究所と共同開発しているが、2008年以降での商用化を目指して内蔵型FCの開発も行う。今後のFC開発スケジュールは、06年中に充電器タイプを製品化し、続いて内蔵タイプの実用化開発を進め、08年には製品化する考えであり、究極的にはFCでLiBを代替する目標を掲げている。(化学工業日報05年8月8日) 
9.エタノール型FCの開発と事業展開
 住友商事と小会社の住商メデイケムは、イタリアのVBであるアクタが開発したFC用触媒について、日本、韓国、台湾での独占販売権を取得した。エタノール燃料のFC用触媒で、理論上はDMFCより高出力が得られる。アクタは特殊な水溶性樹脂を用いて、直径0.3〜0.7ナノの微細な金属触媒を分散させる技術を確立、DMFCでは白金触媒の使用量を1/10に減らすことに成功している。同時にアクタはコバルト・ニッケル・鉄を金属触媒として用いるエタノール燃料のFCを開発した。エタノールは劇物指定になっているメタノールと異なり、飛行機への持込が可能である。今後、製品化に向けた研究が進むと見ており、研究機関や大学、企業などへ売り込む。初年度にサンプル出荷として500万円、08年度には50億円の売り上げを目指す。(日経産業新聞05年8月15日) 
10.パッシブPEFCの大出力化
 大同メタル工業は、加湿器やポンプ、ブロワーなどの補機を使わないパッシブ型PEFCにおいて、その出力を数百W規模に引き上げる大出力化に向けた開発に乗り出した。同社は数ミリW単セルの超小型からエコランを目的としたレースカー(ミニカー)用70WまでのFCを開発し試験供給を行っているが、電池の大出力化を図るとともに、軽量・コンパクトなパッシブ型の特徴を生かした市場開発を積極化する。(化学工業日報05年8月16日) 
11.FCおよび水素関連計測技術の開発
(1)日立
 日立製作所は、薄膜TFT型半導体水素センサーおよび同センサーを用いて低濃度水素を迅速に検知できる水素検知システムを開発した。具体的には、感度100ppm、応答速度1秒以内の性能を持つ水素センサーとともに、このセンサーを数個組み込んだセンサーノードとアクセスポイント、サーバーなどで構成した検知システムにより、水素を多点で検知し、データをワイヤレスで収集して水素漏洩を検知する実験を行った。実験の結果、水素漏洩をセンサーが検知して3秒以内にサーバーへ濃度データが伝送され、同時に10点の水素濃度が計測されて、数秒以内に水素濃度の空気中での分布がサーバーに表示されることを確認した。(化学工業日報05年7月28日)

(2)山里産業
 山里産業(大阪府高槻市)は、FC用温度センサーを増産する。本社工場敷地内に第2工場を新設し、FC改質器などの温度計測に使用するシース熱電対の完全自動化生産ラインを2本設置する。12月にも稼動の予定。需要拡大に対応して、FC用は年間50万本からスタートする。(日刊工業新聞05年8月1日) 

 ―― This edition is made up as of August 19, 2005――

・A POSTER COLUMN

蓄電池導入ハイブリッド型で風力発電を2010年に300万kW
 経済産業省は、総合エネルギー調査会・新エネルギー部会を7月26日に開き、風力発電系統連系対策小委員会が纏めた国内風力発電の一層の普及に向け、不安定電源を電力貯蔵でカバーする蓄電池導入ハイブリッド風力発電および電力会社間連系線の活用を06年度から展開していくことを了承した。電力業界も前向きな対応で臨んでおり、166万kWまで立地が見えている風力発電を、2010年に300万kWまで増強する道筋を示した。なお04年末の国内風力発電規模は93万kWである。
 又新エネ部会は2010年、30年に向けた今後の新エネ普及への対応について、1)新エネ産業自立へ向けた対応、2)RPS法の評価、3)太陽光発電の世界リーダーとしての持続、4)バイオマス熱利用、5)クリーン自動車・FCなど需要サイドの一層の普及、などをテーマに今年度一杯の審議に入る。(日刊工業新聞05年7月27日)

脱化石燃料へのエネルギー技術戦略行程表素案 - 経済産業省
 原油や天然ガスの産出量減少が見込まれる50〜100年後をにらみ、資源エネルギー庁は7月26日、2100年までの省エネ対策に向け、エネルギー技術戦略の行程表素案を纏めた。官民あげて省エネ技術の開発に取り組むほか、新エネルギーへの移行で地球環境問題の解決も目指す。今回の素案は、2030年、2050年、2100年段階の分野ごとのエネルギー削減目標を数値化し、必要な技術開発テーマなどを示している。7月27日の産業構造審議会の研究開発小委員会に提出し、06年度概算要求にも技術開発費を盛り込む。
 電力では、化石燃料による発電から原子力や太陽光、風力などの発電へ切り替えを進め、2100年にはCO2排出量を0にする。このため使用済み核燃料サイクルの実用化や新型軽水炉の開発、太陽光発電の高効率化、電気の貯蔵技術向上などが必要としている。
 自動車でも2100年にCO2を0にする目標を掲げ、そのためにEVやFCVの開発スケジュールを提示。他の産業分野では、素材の高剛性化などで素材生産量を削減し、エネルギー消費を抑制する技術の確立を目指す。
 家庭では、熱の発生を抑えた照明やエネルギー消費の少ない家電機器などによる省エネルギーに加え、太陽光発電などを推進する。
 資源エネルギー庁によると、世界のエネルギー消費が増大する中で、石油の生産量は2060年頃、天然ガスは2090年頃をピークに減少する可能性があり、脱石油・天然ガスの技術が不可欠になる。(産経新聞05年7月27日、日刊工業新聞7月28日、毎日新聞8月7日)  

次世代電気自動車
 富士重工は高性能のリチウムイオン電池を搭載した次世代型の電気自動車(EV)を開発した。富士重が開発したのは、軽乗用車“R1”にNECとの共同出資会社“NECラミリオンエナジー”で開発した高性能リチウムイオン電池と駆動用モータを搭載したEVである。発電の際に化石燃料を燃やすために排出されるCO2は、ガソリン車の排出量と比べて半分以下で、走行コストも低価格の夜間電力を使えば、ガソリン車の1/8、ハイブリッド車の1/5で済む。従来のEVは1度の充電で走行できる距離が短く、又2年に1度電池を交換する必要があり維持費が高いのもネックであった。富士重の次世代EVは、1度の充電で200km以上の走行が可能で、10年間は電池交換が不要であるため維持費は安くつくと同社は語っている。充電時間は5分間で90%、100%充電で2時間。05年内にも公道での実用試験を開始し、09年を目途に商品化する計画である。(日本経済新聞05年8月11日、フジサンケイビジネスアイ、産経、上毛、株式新聞8月19日)
 三菱自動車工業は、ホイール内に設置する駆動用モーター“インホールモーター”と高性能リチウムイオン電池を組み合わせた次世代EVの技術“MIEV”を発表した。10年度までに軽自動車で商品化を目指す。(日刊自動車新聞05年8月16日)
 三菱自動車と東京電力は、家庭のコンセントで充電して走る次世代電気自動車の開発と普及に向けて提携することが、8月18日に明らかになった。東電は電気自動車への充電や蓄電池の技術などを提供し、三菱が開発中の小型電機自動車“MIEV”の商品化を進める。三菱はこれによりMIVEの開発期間を短縮し、発売時期を当初予定の2010年から08年に前倒しする。1回4時間程度の充電で250km走行できる軽自動車クラスの電気自動車が、200万円以下で市販されることになりそうである。(読売新聞05年8月18日、19日)

東京ガスが方針転換してガスエンジン式コージェネ器を発売
 東京ガスは06年1月、ガスエンジン式の家庭用コージェネレーションシステムを発売する。これまでPEFCシステムに力を入れてきたが、開発が遅れるとの見通しから方針を転換し、都市ガス事業者が“エコウイル”で販売しているガスエンジン式を採用し、オール電化住宅への対抗商品に育てたい考えである。エコウイルは出力1kWのホンダ製エンジンを搭載しており、エネルギー効率ではPEFCシステムを上回り、大量に温水を使う家庭に向いている。価格は約80万円。(朝日新聞05年8月5日)