第109号 120℃低加湿でフッ素系膜を4千時間運転
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.PEFC要素技術の開発
3.家庭用PEFCシステムの事業展開
4.FCV最前線
5.移動体用FC動力
6.改質および水素生成技術開発
7.水素貯蔵技術の開発
8.DMFCおよび小型FCの開発
9.バイオFCの開発
10.FC市場予測
11.企業による事業活動
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1) 経産省・資源エネルギー庁
 資源エネルギー庁長官の諮問機関“FC実用化戦略研究会”が4月19日に開かれ、06年度以降の研究開発、実用化に向けた取り組みの方針を検討した。会合では先ずエネ庁がFCをめぐる最近の動向を説明、05年3月までにFC導入を促すための規制緩和が終了したこと、および各種実証試験の成果が紹介された。又FCCJやPEFC先端基盤センターなどの取り組みや05年度予算の内容などが報告された。FC開発には政府が年間300億円以上の予算を投じて支援しており、05年度から定置式で大規模な実証実験が始まるなど、具体的な進展が見られる一方で、大幅なコストダウンには基礎分野に戻った研究が必要である。委員からは「部品の標準化などコスト低下への取り組みが必要」「基礎研究は産学官で方向を決めて行うべき」などの提案、および「国がエネルギー政策の中に水素エネルギーをどのように位置づけるかを決めて欲しい」などの注文も出された。一方、今後の方向性としては、FC関連の予算配分を随時見直していくほか、安全性への取り組みを検証していく必要があることが指摘された。(日刊工業新聞05年4月20日、電気新聞4月22日)

 経産省は、産総研に“PEFC先端基盤研究センター(通称・FCキュービック)”を儲け、PEFCの基本メカニズムを科学的に解明する研究に着手した。5ヵ年の事業で、05年度予算には10億円を計上している。主要な研究テーマとしては、電気化学反応の速度論を究明して触媒に使用する白金の使用量を減らす、プロトンおよび水関連物質の移動現象や電荷の移動現象を解明することにより、性能や耐久性の向上を図る、などが挙げられている。国内から若手の研究者を集め、独創的な研究を行うことで世界トップレベルの研究センターへ育て、PEFCの研究開発をリードするとともに、知見を産業へ移転する人材も育成する。又世界のトップラボとの人材交流も活発化する方針である。(化学工業日報05年4月21日、読売新聞5月15日)

 経済産業省は、家庭用FCシステムの周辺機器(補機類)に必要とされる仕様(スペック)のリストを纏めて公表した。公表されたのはアンケートを元に作成したポンプ・ブロア類、弁類、センサー・流量計など全32部品の新しい仕様である。条件として、消費電力が小さいなど省エネルギー性、10年程度、あるいは6〜7万時間以上の耐久性、更に低騒音、低振動など環境性が求められるとしている。(化学工業日報05年5月6日)

(2)NEDO−NEF
 NEFは4月25日、NEDOからの助成を受けて行う05年度の定置用1kW級PEFC大規模実証事業について、助成先を7社に決定したと発表した。助成先は東京ガス、大阪ガス、新日本石油、ジャパンエナジー、出光興産、九州石油、太陽石油の7社で計175台、05年度で総額25億円を助成する。(電気、日刊工業新聞05年4月26日、化学工業日報4月27日)   
2.PEFC要素技術の開発
(1)旭硝子
 旭硝子はFCV用PEFCにおけるフッ素系電解質膜の開発で、実用レベルの高温耐久性を実現した。FCVの使用環境とされる120℃、湿度50%の高温・低加湿条件で4000時間の連続運転に成功、更に自動車の運転を想定した過酷なオン−オフや負荷変動試験でも延べ2,300時間の運転実績を記録した。電圧低下率も同社の従来品に比べて半分に抑えられ、これで長時間に亘り安定して発電する能力を実証したことになる。(日経産業、日刊工業新聞05年4月25日) 

(2) 大日本印刷
 大日本印刷は、コーテイング技術や金属加工などの印刷関連技術を活用し、水素選択透過膜や金属セパレーターなど部材の開発に成功、又部材からFC性能の総合評価までを行える仕組みを社内に構築、電機メーカーや自動車メーカーに対して部材のサンプル提供を通じて、共同開発体制を整備した。現在、主力製品としてMEA作製用触媒転写フィルム、金属セパレーター、水素選択透過膜、メタノール改質器の実用化を進めている。MEA作製用触媒転写フィルムは、固体高分子膜に電極触媒をフィルムで転写する技術であり、触媒インキをポリエステルのロールシート上に塗って熱転写するため、薄くて均一な触媒層を形成することができる。金属セパレーターについては、エッチング技術で精密な流路を形成し、金属同士の接合もできるため、内部流路の設計も可能である。水素選択透過膜については、メッキ技術を使ってパラジウム膜の厚さを従来の1/4にすることを可能にした。今後は各部材の性能評価や組み合わせなどをデータベース化し、共同開発に役立てていく。(日刊工業新聞05年5月17日)  
3.家庭用PEFCシステムの事業展開
(1)静岡ガス等
 静岡ガスと石川島芝浦機械、高木産業(富士市)は共同で、天然ガス改質の家庭用1kW級PEFCを開発、8月に最初の実証機を一般家庭に設置し、06年度からは国の大規模モニター実証に参加する。石川島芝浦機械がPEFCスタックと天然ガス改質装置、高木産業が排熱回収と給湯器の熱利用技術、静岡ガスがシステム設計と全体をそれぞれ担当した。発電効率は定格で30%、60%負荷運転でも29%、総合効率は75%を実現する。150Lの給湯タンクを備えており、追い炊き機能が付いている。実用化では発電効率35%、総合効率85%以上を目標としている。今後は耐久性を高めるとともに、コストの大幅削減に向けてアルマイト基板の改質装置や金属セパレーターの実用化開発を加速する。石川島芝浦は多孔質アルマイトに触媒を担持して通電可能なニクロム材を付けた触媒板の開発を始めた。水蒸気改質器の起動時間を5分に短縮することが可能になり、更に改質器で100万円はするシステムのコストを1/50まで圧縮することを狙っている。板状の触媒層はプレス加工により大幅な低コスト化を実現することが可能で、COシフト反応とCO選択酸化も同じ材料を使用する。金属セパレーターについては、耐食性、導電性に優れた材料とコーテイングによって1枚200円までのコスト引き下げを狙っている。(日刊工業新聞05年4月21日)

(2)Jエナジー
 ジャパンエナジーは07年度までの3年間で、家庭用PEFCシステムなど新規事業に約60億円を投資する。新事業の発掘を担当する事業開発部の人数も、従来の10人程度から20人強に拡大する。同社は家庭用PEFC事業では、LPGを燃料とするシステムを東芝と共同開発し、5月からリース方式で販売する予定である。灯油燃料のFCシステムについては、3年以内での商品化を目指す。(日経産業新聞05年4月26日)

(3) 東京ガス
 東京ガスは4月26日、都市ガスを用いる家庭用FCコージェネレーションシステム“ライフェル”を設置した戸建て住宅が4月29日から分譲されると発表した。積水ハウスが分譲する“京王堀之内・ビーフリーキャンパス”内の新築住宅3戸にFCシステムが設置された。積水ハウスは武蔵野市吉祥寺でもこのライフェルを設置した戸建て住宅7戸の販売を8月頃に計画している。(日本経済、電気、日経産業、日刊工業新聞、化学工業日報05年4月27日、毎日新聞4月28日、住宅新報5月10日)

(4) 新日石
 新日本石油は今春販売した家庭用FCの保守・管理体制を整備する。各家庭に設置したFCを遠隔監視する拠点を、6月を目途に横浜製油所に設け、定期点検や故障時の修理などを手がけるメインテナンス要員を20〜30人程度配置する。遠隔監視システムによって各家庭での運転状況を随時把握し、メインテナンス要因は定期的に各家庭を訪問して、故障発生に対しては24時間体制で対応することにしている。06年度以降にFCの販売を全国展開するのに合わせて、保守・管理網も拡充していく方針である。(日本経済新聞05年5月1日)

(5) 北海道ガス
 北海道ガスは今秋から天然ガス利用家庭用コージェネレーションシステムの実用化に乗り出す。寒冷地での凍結防止や放熱ロス抑制のため室内設置型を採用、5〜10台弱を実際の住宅に据付けて実証する。設置工事代を含めたコストを現在の約10%となる1台100万円程度に引き下げた上で、08年度を目途に市場に本格参入する計画である。具体的には05年度は松下電器産業と荏原バラードがそれぞれ東京ガスと共同開発した機種を室内設置型に改良して10月を目途に導入することを予定している。又NEFの大規模実証事業に参加して、事業化や市場投入機の開発に向けたノウハウ蓄積に努める。(北海道流通新聞MJ05年5月2日)

(6) 大阪ガス
 大阪ガスは、NEFの05年度第1期“定置用FC大規模実証事業”に参加する。8月末までに家庭用PEFCシステムを実住宅に28台設置し、順次運転を開始する。(電波新聞05年5月4日)

(7) 企業連合
 東京ガス、新日本石油、松下電器産業、三洋電機、旭硝子、旭化成の6社は垂直連携し、温度や湿度の変動、負荷などの運転条件が大きく振れても十分な耐久性が保障され、補機に特注品を使わない定置式FCの開発に5年をかけて取り組むことにした。2012年頃の大規模普及を目指した取り組みである。NEDOのFC実用化戦略的技術開発に100%委託事業で応募し、採択されれば40億円を投じて大幅なコスト低下、高効率化を実現することを目指す。改質については、ガス改質とLPG改質に分けて、東ガス、松下、旭硝子のグループと、新日石、三洋、旭化成グループがそれぞれ開発に取り組む。(日刊工業新聞05年5月11日)

(8) 太陽石油
 太陽石油はNEFが実施する05年度の大規模実証事業にエネルギー供給事業者として参画すると発表した。地元自治体と協力して、松山市内の公共施設に3台、今治市では老人ホームに1台、住宅に4台の合計8台のLPガス利用定置式PEFCシステムを設置する。PEFCシステムは東芝FCシステム製で、出力は700W、発電効率は34%(LHV)、総合効率は79%(同)と発表されている。9月から2年間の予定で実証運転を行い、一般の市販は08年を目指すとしている。(化学工業日報05年5月17日、日刊工業新聞5月20日)  
4.FCV最前線
(1)三菱自動車
 三菱自動車は、これまでダイムラー・クライスラーと共同で進めてきたFCVの開発を、自社の単独開発に切り替える。巨額な開発費を要するFC本体の開発は行わず、車体に絞って開発する。同社は1970年代からEVの開発も進めており、その技術はFCVへの応用も可能なことから「これまでに蓄積した技術を応用すれば独自開発は可能」としており、4輪駆動車の投入も検討している。06年秋以降に、自社開発の新型FCVを投入する考えである。(読売新聞05年4月18日)

(2)中国
 中国におけるエネルギー分野の技術開発を目標とした“863計画”の第10次計画(01〜05年)で、中国政府はFCV開発に約8億8,000万元(約115億円)を計上した。整備中の“超越2号”にも補助金が供給されている。「今は研究開発段階であるが、15年後にはガソリン車と競争できる価格でFCVを生産することが目標である」と独自のFCV“超越号”の開発を続ける孫教授(上海同済大学自動車学院副院長)は商用化に自身を見せていた。(毎日新聞05年4月23日)

(3)トヨタとGM
 トヨタ自動車とGMは、合弁会社の設立を軸に、FCVの開発で提携を強化する方向で検討に入った。5月14日に予定されているトヨタの張社長とGMのワゴナー会長との会談でも議題になると思われる。合弁会社ではFCスタックなどの基幹部品から試作車開発まで一貫して手がける方針で、共同開発したFCVの合弁生産まで検討する。しかし、本格的な普及まで時間がかかるFCV開発での提携は、経営不振に陥ったGMにとって開発コストを圧縮する効果はあるものの、即効性のある支援策とは云いきれない面がある。(読売、毎日新聞05年5月11日、朝日、日本経済、日刊工業、中国新聞5月12日、日刊自動車新聞5月13日、中日、愛知、東京新聞5月15日)

(4)トヨタ等
 トヨタ自動車は豊田合成と共同で高圧水素タンクを開発し、今秋以降にも35MPa高圧水素タンクを搭載した新しいFCVを投入する。FCVは日本ではトヨタ、ホンダ、日産自動車が自主開発しているが、35MPa高圧水素タンクは、アメリカのクオンタム製か、カナダのダインテック製であった。今回トヨタが開発した高圧水素タンクは、基板材に樹脂を多層に巻きつけた(フィラメントワインデイングス)樹脂ライナー製の複合容器であるが、水素透過防止性能に優れたナイロン系樹脂を採用、タンクの外側にはカーボンファイバーを巻き付けることにより、タンクの板厚を薄肉化して軽量化を図るとともに、口金構造を改良して信頼性と容積効率を高めた。又トヨタと豊田合成は、更に高圧の70MPa水素タンクの開発も進めている。(日刊工業新聞05年5月16日、読売、毎日、日本経済、日経産業、中日、日刊自動車新聞5月17日、鉄鋼新聞、化学工業日報5月18日)

(5)JARI
 日本自動車研究所(JARI)は城里テストセンター内に建設していたFCV安全性評価試験施設を完成し、新たに液化水素試験設備も導入した。FCVや水素自動車の安全性評価、70MPa水素タンクの評価、およびボイルオフの問題を抱える液化水素タンクとステーションのインターフェイスにおける安全性実証試験もこれからスタートする。(日刊工業新聞05年5月18日)  
5.移動体用FC動力
 栗本鉄工所は5月10日、リチウムイオン電池とFCのハイブリッドシステムを搭載した車椅子およびPEFC用セパレーターを開発したと発表した。栗本鉄工所は03年6月に、台湾のベンチャー企業APFCT社からPEFCの国内独占的技術供与に関する提携を締結した。今回発表の車椅子には、同社製250Wの空冷式PEFC、水素貯蔵合金ボンベ4本、リチウムイオン電池が使われており、重量は60kg、連続走行時間は10時間である。同社は同時にPEFC用ステンレス製セパレーターの開発も進めており、2010年までにPEFC駆動の車椅子やシルバーカーなど小型移動体を約1,000台市場に投入することを目論んでいる。(朝日、日本経済、日経産業、日刊工業、鉄鋼新聞、化学工業日報、フジサンケイビジネスアイ05年5月11日、読売新聞5月14日、毎日、鉄鋼新聞5月19日)  
6.改質および水素生成技術開発
東京大学大学院工学研究科堂免教授、長岡技術科学大学大学院工学研究科井上教授らの研究グループは、可視光応答性光触媒を開発し、太陽光の広い波長領域によって水から水素を生成することに成功した。この触媒は窒化ガリウムと酸化亜鉛の固溶体であり、酸化亜鉛と酸化ガリウムの混合粉末をアンモニア雰囲気において850℃で焼成することにより作成される。現在実用化されている光触媒の酸化チタン(酸化物系)は、可視光よりも波長の短い紫外光を吸収して光触媒活性を発揮するが、可視領域では活性を持たない。この窒化物系触媒は、触媒活性を示す光波長領域の上限(吸収端)を約500nmの可視領域まで長波長化させた。今後窒化物系に硫化タンタルなど硫化物系を加えた材料系についての研究開発を進め、数年後に実用化の目途を付けることを目指す。(化学工業日報05年5月2日)
7.水素貯蔵技術の開発
 アメリカの国立標準技術研究所(NIST)は、チタンなど金属で表面が覆われた新構造のカーボンナノチューブをコンピューターで設計する手法を開発した。金属製の“飾り”は、水素を取り込む能力が非常に優れているので、これを量産できれば、FCV用水素貯蔵システムの飛躍的な性能向上につながる可能性がある。NISTによれば、重量比で8%の水素を貯蔵することができる。この成果はフィジカル・レビュー・レターズに掲載された。(日本経済新聞05年5月16日)
8.DMFCおよび小型FCの開発
(1)SII
 セイコーインスツル(SII)は、金属水素化物から常温で水素を取り出して発電するマイクロPEFCを開発した。FC内の圧力変動を利用して水素の発生を制御するので、ポンプやヒーターなどの補機類が不要であり、かつ高電圧で発電するので小型化しやすく、デジタル1眼レフカメラやノートパソコンなどの電源として商品化することを考えている。水素化ホウ素ナトリウムと触媒溶液のリンゴ酸を反応させて水素を発生させ、水素発生器とPEFCセル内部の圧力が上昇すると、弁が閉じて触媒の供給が止まる仕組みになっている。逆にセルと水素発生器内部の圧力が低下すると、水素発生器と触媒溶液箱を結ぶ弁が開き、触媒溶液を水素発生器に自動的に供給する。試作した電池の大きさは、125mm×50mm×30mmで、1Wの電力を5Vの電圧で約8時間発電することができる。07年度での商品化を目指している。(日経産業新聞05年5月11日)

(2)GSユアサ
 ジーエスユアサコーポレーション(京都市)は、独立電源として設置が簡単で、安全かつ取り扱いが容易な可搬型DMFCシステム“YFC−1000”を開発した。出力は最大1,000VAで、当面農業施設用電源や災害時の非常用電源の分野でサンプル出荷を行い、キャンプなど屋外用電源を始め、遠隔観測機器用電源、ロボット用電源などの分野に需要開拓を進めていく。(鉄鋼新聞05年5月12日)
9.バイオFCの開発
(1)東北大等
 東北大学大学院工学研究科の西沢教授の研究グループは5月12日、第1化学薬品と共同で、血液中のグルコースや酸素を利用して発電するバイオFCの開発に成功したと発表した。体内に埋め込む医療機器の電源に利用できる可能性がある。今回開発したのは1円玉ほどの大きさで、血液中のグルコースが水素の役割を果たし、発電能力は約0.2mWであった。同研究グループは3年以内に動物の体内にバイオFCを埋め込む実験を行う予定である。(読売、朝日、日本経済、日経産業新聞、化学工業日報05年5月13日、河北新聞5月18日)

(2)東京農工大發バイオベンチャー
 東京農工大学發バイオベンチャーのアルテイザイム・インターナショナルは、糖の量を直接信号として取り出す“FC型酵素センサー”を開発した。糖と反応して出てきた電子を電極に直接移動する特殊酵素を電極に張り付けることによって、このようなセンサーが可能になった。体内に挿す電極部分は、針灸治療に用いる置針程度に出来る見込みで、電流計測型には必要な信号を取り出すための制御装置が不要になり、小型化が可能になった。(フジサンケイビジネスアイ05年5月19日) 
10.FC市場予測
 富士経済はFCシステムの市場動向を纏めた。家庭用や情報端末機器向けの伸びを見込んで、2010年度の市場規模は04年度比25倍の506億円に拡大すると予測している。家庭用については10年度に152億円、ノートパソコンや携帯電話向けは207億円に拡大する。(日経産業新聞05年4月28日) 
11.企業による事業活動
(1)第1希元素化学工業
 第1希元素化学工業は、FC用材料の供給余力を高めるため、SOFC向けファインセラミックスやジルコニウム化合物を生産する新工場を福井市内の工業団地(テクノポート福井)に建設する。投資額は40億円、生産能力は年間2,500トン前後で、07年秋の稼動を目指している。SOFC向け材料では、電解質用を中心にYSZやScSZの製造技術を持っており、今後は電極を含めた幅広い分野に進出することを考えている。(日本経済新聞05年5月9日、日経産業新聞5月10日、化学工業日報5月12日)

(2)英和
 英和はFC向け測定装置の新商品開発を進めるため、産学連携を強化することにした。先ず研究開発部門を新設し、茨城大学とは研究員2人を派遣して、MEAの高性能化を進める。又東工大の山崎教授とはエタノールFCの研究で連携する。研究目的で計2,500万円を拠出、研究成果に関しては、大学側がベンチャー企業を設立、それに対して英和が出資することによって実用化を進めるなどの方法を模索している。(日経産業新聞05年5月18日) 

 ―― This edition is made up as of May 20, 2005――

・A POSTER COLUMN

SOFCの開発現状と開発ロードマップ
 現在の定置式SOFCの性能は、小容量・中容量型で発電効率が40%弱、耐久性1万時間と他のFCに比べて高効率で高性能ではあるが、システムの製造コストは高く、1千万円/kWに近いのが現状である。NEDOのFC・水素技術開発ロードマップ委員会が作成したロードマップによると、2007〜20年にかけて発電効率を42%、耐久性を4万時間にまで向上し、2030年頃には最終的に発電効率が45%、耐久性については9万時間を目指すことになっている。又システムの製造コストは、年間30万kW製造を前提に、25万/kWまで下げることが目標である。他方数MW級の大容量型については、07年頃からハイブリッドシステムの検証を開始すると同時に、ガスのみならず液体燃料を含めた燃料多様化の検討を実施する。そして、2020〜30年頃には発電効率が60%を超え、システム製造コストは10万円/kWを切るようなハイブリッドシステムの実用化を達成するというシナリオが描かれている。SOFCも劣化機構の解明やその対策、抵コスト化や高性能化を図ることの重要性は他のFCと変らないが、SOFC固有の課題としては、大容量型における運転技術の開発や燃料多様化技術が重要視されている。(化学工業日報05年5月20日)