第107号 金属セパレータ用ナノクラッドの開発
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.PEFC要素技術の研究開発
4.家庭用FCの実証試験と事業展開
5.FCV最前線
6.FCV以外の移動体電源
7.水素ステーションの技術開発と建設
8.水素生成・輸送および改質技術の開発
9.携帯端末用マイクロFCの開発
10.FCおよび水素関連の計測・観測技術
11.FCおよび水素に関する事業計画
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)国交省
 国土交通省はFCVの普及に向けて、完成車輸送の自由度を高めるよう通行制限を緩和するため、3月2日からパブリックコメントの募集を始めた。今回のパブコメは、道路交通法で通行を制限している水底トンネルなどを通行する危険物積載車両に対する規制を緩和するために実施する。FCVの燃料となる圧縮水素は、高圧ガス保安法に規定される物質に該当し、荷物として水素を積載する場合は通行制限の対象となる。道路法では、水底トンネルや5,000m以上の長大なトンネルなどを通行する危険物車両に対して通行を禁止、又は制限できることになっており、このようなトンネルは全国で24ヶ所存在する。これらは主要道路上にあるため、完成車輸送の妨げとなる懸念がある。国交省では03年度に検討会を設置、模擬トンネルや模擬キャリアカーを用いた実証実験を行い、トンネル内火災時の熱気流温度や発熱量、発熱速度、煙濃度などについてのデーターを収集したが、その結果、容器安全弁が機能することによって爆発は確認されなかった。同省は更に、あらゆる事態を想定して検討制度を高めるために、事故事例の分析や火災発生シミュレーションを行って、防災施設のあり方について検討する必要があるとしているが、通行制限の緩和は可能であるとの見通しを得ている。(日刊自動車新聞05年3月3日)

(2)経産省・資源エネルギー庁
 経済産業省は4月に新組織を設け、民間と連携して国際規格の原案作りを進め、ISOやIECに対する提案を始める。官民が協力して国際標準制定での発言力を確保し、競争力の強化を狙う。具体的には、日本規格協会に“国際標準支援センター”を新設し、関連業界団体などと協力して、ISOやIECに日本発の国際標準を提案する。当面は超微細技術(ナノテク)や光触媒、デイジタル家電、FCなどの新技術について国際標準化を重点的に進める。なおセンターは、ISOなどで日本人が規格作りの幹事や議長となる場合には支援し、海外での交渉に備えて専門知識のある人材を育成、ライバル国の動向についての情報収集なども手がける。(日本経済新聞05年3月4日)
 資源エネルギー庁は、産業技術総合研究所が母体となってPEFCの要素研究を行うFC先端基盤技術研究センターを4月1日に東京・台場に開設する。センター長にはトヨタ自動車から研究の第1人者を迎え入れ、産業界との橋渡しをする研究機関として発展させる。(日刊工業新聞05年3月8日)

(3)NEDO・NEF
 NEDOは05年度からFC開発に投入する200億円の半分以上を新規プロジェクトとして立ち上げる計画で、その目玉事業が家庭用FCにおける大規模な実証計画である。MCFCは開発予算を終了、家庭用や携帯用FCでの利用が期待されるPEFC(DMFC)、および電力業界が注目している発電効率が高いSOFCの2種類に絞り、FCの実用化を目指す。(日刊工業新聞05年3月8日)
   NEFがNEDOからの助成事業として実施している家庭用FCの実用化に向けたプロジェクトにおいて、参加者を3月中旬に公募し、4月中に委託先を決める大規模なモニター事業を始める。東京ガス、新日本石油、ジャパンエナージー、大阪ガス、西部ガスが参加を決めた。エネルギー事業者がメーカーからFCを購入する費用と設置工事費の合計額に対して上限600万円を補助し、3年間で初期投資額を100万円に抑えることを目指す。現状においては、メーカーからのFC購入価格が1,000万円、設置工事費は100万円、05年度は計400台の導入を促す計画ながら、モニター補助の上限が600万円であることから、その差額はエネルギー企業が負担することになる。(日刊工業新聞05年3月8日) 
2.地方自治体による施策
(1)兵庫県
 災害時での救出作業のための機器類用電源に対して、FCの利用可能性を研究してきた近畿経済産業局の自主研究“夢創造の会”と兵庫県西宮市の市消防局は2月18日、消防局の敷地内で実用化への最終実験を行った。使用したPEFCは高さ19cm、重さ8kgで、水素を燃料として動作し、騒音や振動の少ないのが特徴である。災害現場では救助を求める声や、かすかな反応を聞き分けなければならないが、従来の方式では発電機の騒音が支障になっていた。市販品を改造して耐水性などを強化している。(産経新聞05年2月19日)
 05年5月20〜22日の3日間、神戸空港開港予定地で、FCVやソーラーカーなどを使ったレース競技を行う他、低公害車の展示試乗会“第6回日本エコカー会議”などを開催する。エコカーフェスタ2005実行委員会が主催、文部科学省、経済産業省、国土交通省、神戸市などが後援し、神戸空港ターミナルビ会社が協力する。(日刊自動車新聞05年2月21日)

(2)三重県
 シャープは2月22日、三重県のFC実証試験補助事業によるPEFCと太陽電池を組み合わせた発電システムの運用実験を始めると発表した。3月末に四日市工業高校に設置し、1年間データを取得する。太陽電池とFCを合わせた発電能力は最大10kWで、発電した電力は蓄電池に蓄えて、校内での非常用電源に充てる他、排熱は温室に供給して樹木を育てる計画である。(朝日、産経、日本経済、日経産業、電波、中日新聞、化学工業日報05年2月23日)
 三重県が支援するLPG改質型PEFCの実証試験が相次いで始まった。コスモ石油と子会社のコスモ石油ガスは、東芝FCシステムと協力して四日市市で700W級PEFCシステムの実証実験を開始した。井坂ダムサイクルパークに設置して3月1日から運転を開始、電力を同パーク管理事務所の消費電力削減に役立てるとともに、排熱は足湯槽に給湯する。又出光興産はIHIと協力して鈴鹿市で5kW級PEFCシステムの試験を開始した。同市消防署東分署にPEFCシステムを設置し、市販プロパンガスを燃料として、3月2日から10月20日まで実証試験を行う。当面1日8時間運転し、電力需要の3割を賄うほか、温水は浴室などで利用する。(日刊工業新聞、化学工業日報05年3月3日、日経産業新聞3月7日、建設通信新聞3月9日)

(3)山口県
 山口県産業技術センターは、05年度県内で参加企業を募り、FC研究会を設立する。年4回程度の会合を開き、産学官連携による技術開発プロジェクトの創設につなげ、06年度から研究開発を本格化させる。研究会はFCの市場性や課題を探り、部品製造などで企業が参入できる分野を検討するのが目的。(中国新聞05年3月15日) 
3.PEFC要素技術の研究開発
(1)NOK
 NOKは水素と空気を分離させるPEFC用セパレーターを改良した。セパレーターとゴム製品のシールを一体化させることにより、工程不良を減らすことができるが、従来のように組み立て工程でセパレーターとシールを一体化する方式は、シール技術に難点が認められた。これを一体化部品にしてFCメーカーに納入すれば、工程不良を防止できるとともに、工程数自身も減らせるので、NOKはFCメーカーでのコスト削減が可能になると考えている。(日経産業新聞05年2月25日)

(2)信越ポリマー
 信越ポリマーは、炭素材料とポリフェニレンサルファイド(PPS)を配合したPEFC用モールドセパレーターの開発に目途を付けた。溶出が少なく穴あけ成形性などに優れているのが特徴である。同社は樹脂を高充填、均一分散する配合技術や精密な成形技術を持っているのが強みで、2年前からカーボン系およびPSS製セパレーターの開発を進めてきた。PSSセパレーターは、フェノール樹脂製と同等の機械特性を持ちながら低抵抗で、溶出レベルもフェノール樹脂製の約1/4に抑えており、強度や耐久性も要求される基準をクリアしている。同社はPPS製セパレーターの開発をほぼ90%完了しており、今後FCメーカーと実用化に必要な流路設計などの技術の詳細をつめていく予定である。(化学工業日報05年3月4日)

(3)大同特殊鋼  大同特殊鋼は3月10日、PEFCで使われる金属セパレーター用に、高い耐食性と導電性を持つ金属素材(ナノクラッド)を開発したと発表した。月産10トンの製造設備を設置して自動車、家電メーカーへのサンプル出荷を開始した。新金属素材は、特殊なステンレス鋼板表面に極めて薄い金膜(厚さ数nm〜数十nm)を強固に被覆したもので、金属の特徴である耐衝撃性、薄板化、量産性、低コスト、リサイクル性、ならびに金の特徴である高耐食性、高導電性を併せ持っている。生産サイズは板厚0.1mm、最大幅250mmである。社内での1,000時間発電試験では、現在一般的に使われているカーボンセパレーターと同等以上の発電性能が確認されている。ナノクラッド製金属セパレーターはカーボンセパレーターに比べて、PEFCの体積、重量を約1/2に小型軽量化することができるし、又価格的にも現在のところ1枚数千円であるが、今後コストダウンに努めることにより、2010年には100円/枚を実現することが可能と同社は語っている。(日経産業、日刊工業、日刊自動車、電波、鉄鋼、中日新聞、化学工業日報05年3月11日)  
4.家庭用FCの実証試験と事業展開
(1)出光興産
 出光興産は06年度から家庭用のLPG使用PEFC市場に本格参入する。灯油型は08年度中に発売の予定。出光は04年3月からNEFのFCプロジェクトに参加し、岐阜県中津川市でLPG型PEFCの実証試験を開始した。市場に投入するLPG型装置の仕様は検討中であるが、高さ700mm前後、幅700mm前後、奥行きは300〜400mmを目指すことにしている。他方灯油型については、改質効率80%を達成しており、実証実験を06年度中に開始する。販売価格はレンタル方式で年間6万〜10万円を予定している。(日経産業新聞05年3月1日、中国、北海道新聞3月3日、日刊工業新聞3月11日)

(2)積水ハウス
 積水ハウスは3月1日、PEFC設置の戸建て住宅を販売することを明らかにした。3月にも販売を開始する予定の“吉祥寺東町”の31区画の内、7区画でFC付住宅プランを提供する。PEFCは東京ガスが設置・運営する。(フジサンケイビジネスアイ05年3月2日)

(3)新日石
 新日本石油が発売した家庭用PEFCシステム“ENEOS ECO LP-1”に注文が相次いでいる。3月1日までの設置希望件数は150台の販売予定台数の1.5倍に達した。希望者を対象に同電池を使用する利点があるかどうかなどを調査した上で販売先を決め、6月に設置を決める。申込者の構成は8割以上が一般家庭で、残りが新日石の石油製品の販売先である特約店などである。設置条件は“1戸建てで、燃料となるLPGを使用または使用する予定がある”など全部で8項目あり、既に10件強の設置が決まっている。契約期間は3年、設置に伴う工事費用は新日石が負担し、年6万円のレンタル料は顧客が支払う。2006年2月までに150台の設置を終える予定である。(日経産業新聞05年3月3日)

(4)東ガス
 東京ガスが2月に市場投入した家庭用PEFCコージェネレーションシステム“ライフエル”の設置申し込みが、募集後1ヶ月の中間集計で資料請求が約600件、正式申し込みは70件になった。3月31日に締め切る。初年度200台の設置を計画、新築物件向けに170台、残りを既築物件向けに予定している。募集中の設置申し込みは、既築の戸建てを対象にした20台分である。選考に当たっては、システムの効果が調査集計できるように、最適なユーザー層として見込まれる床面積150m2規模で居住者の多い世帯などに優先的に割り当てることにしている。(日刊工業新聞05年3月8日)

(5)岩谷産業とMHI
 岩谷産業は、LPG改質型家庭用PEFCコージェネレーションシステムの実証運転を始めた。滋賀技術センター(守山市)にMHI製システム1基を導入し、MHIと共同で運転性能を試験する。実証機の発電効率は36%(LHV)で、総合効率は87%(同)である。10月での実用化を目指す。(日経産業、電気新聞05年3月11日、日刊工業新聞、化学工業日報3月15日)

(6)北ガス
 北海道ガスは3月16日までに、08年にも家庭用1kW級PEFCを市場投入する方針を固めた。現在北大と寒冷地向けの研究を進めており、又日本ガス協会が札幌市内の住宅で行った試験にも参加しているが、05年度からは北大構内のFCを最新式に更新する他、新たに複数の機器を導入し、社員宅など一般家庭での試験も進める。LPガス販売の一高たかはし(札幌)も販売を計画している。本州に比べて熱需要が高く、コージェネレーション設備が効率的に使える地域のため、1台100万円を切るようになれば、普及すると予想されている。(北海道新聞05年3月17日)

(7)家庭用FCモニター補助事業
 家庭用FC補助事業について、大阪ガスは05年度上期から天然ガス改質で三洋電機など3メーカーと組んで実証に着手し、06年度から実用ステージに入る。LPG改質型では新たに昭和シェル石油、九州石油、太陽石油が同事業に参加する予定。05年度のこのモニター事業では予定している400台をどう割り振るかが課題になっていた。
 家庭用FCの普及を目指した同補助事業はFC1台当たり600万円を補助する内容で、計25億円を予算化している。05年度は既に東京ガスが200台、新日本石油が150台をいずれも顧客から貸与料金を取って実用化に踏み切ることを決めている。加えて大阪ガスは先ず実証で、補助以外は自ら全額を負担することでモニター事業に参加する。
 パートナーのFCメーカーは3社で、住宅都市整備公団向けに21台を納める予定。05年度後半にはFCメーカーと正式に契約し、06年度から実用化ステージに持っていく予定で、05年度に80〜100台を実証する計画である。
 ガス業界は更に東邦ガス、西部ガスが参加する。石油業界でも出光興産とジャパンエナジーに加え、先に述べた昭シェル、九石、太陽石油が加わるので計6社となる。いずれも05年度は10台程度になりそうである。
 これらメーカーが導入を予定している量を単純に合計すると500台を突破する。しかもFCメーカーは供給がまだ限られており、この後その数をどのように調整していくかが当面の焦点になってきた。 (日刊工業新聞05年3月17日)
 
5.FCV最前線
(1)日産自動車
 日産自動車は2月21日、FCV用PEFCスタックを自社開発したと発表した。自社開発のスタック(出力90kW)は、薄型セパレーターを採用し、かつ配管部品を統合化するなどにより、購入品に比べて重量比出力は2倍に、そして寿命も2倍を記録した。他方カナダ・ダイナテック製70MPa高圧水素ガス容器は、アルミライナーに糸状のカーボンファイバーを巻いた構造であり、従来に比べて約30%貯蔵量を増やしている。SUV“エクストレイル”をベースとした車にこれらを搭載し、車両評価実験を開始する。(日本経済、産経、日経産業、日刊工業、日刊自動車、鉄鋼、中国新聞、フジサンケイビジネスアイ、河北新報05年2月22日、朝日新聞2月23日、化学工業日報2月24日、毎日新聞2月25日)

(2)昭和シェル
 昭和シェル石油とシェル・ハイドロジェンビーブイは2月21日、ダイムラー・クライスラー製“F-Cell”を導入したと発表した。リース料は120万円/月で、昭和シェルの営業車として2年間、各種イベントや試乗会などで使用する予定(化学工業日報05年2月22日、鉄鋼新聞2月23日、日経産業新聞2月28日)

(3)出光
 出光興産はホンダからFCV“FCX”をリースする契約を更新した。期間は3月1日から1年間で、リース料は80万円/月である。同社は自治体のイベントで試乗会を実施しており、現在までの延試乗者数は1,794人、走行距離は約16,580kmとなった。FCXの運転は、ホンダのFCV運転講習を受けた契約社員が担当しており、一般の人は運転できない。(日経産業新聞05年2月28日、化学工業日報3月1日)

(4)JHFC
 JHFCの第3回セミナーが3月10日、パシフィコ横浜で開催され、実証試験報告やFCV試乗・展示会が催された。内外からおよそ1,000人が参加した。実証試験報告では、FCVの燃費データ(平均値)が公表されたが、FCVはガソリン車に比べて、全ての車速域で2倍前後の値を示し、ハイブリッド車に対しても1ないし2割上回った。走行ルートは一般道から高速道まで11用意し、04年でのFCV13台の累計走行距離は2万9,000kmに達した。JHFCは05年度に、水素製造工程のエネルギー消費も試算し、Well-to-Wheel効率を算定することにしている。他方水素製造の効率について、原料のエネルギー投入量を分母に、得られた水素のエネルギー量を分子にして計算した場合、ナフサ改質で55.7%、メタノール改質で65.9%などの値が得られている。定格運転で大量に製造すれば、ナフサ改質で63.2%、メタノール改質で75%になり得ると推定している。(日刊自動車新聞05年3月11・15日、化学工業日報3月15日)

(5)DCとBMW
 ダイムラー・クライスラーはFCV“Fセル”60台を日本、アメリカ、ドイツ、シンガポールの4ヶ国に導入するとともに、新たに航続距離を400kmに伸ばした次世代“Bセル”の市場投入に向けて準備を始めた。FCバス“シタロー”は北京に新たに3台納め、計36台になる。他方BMWは水素直接燃焼のバイフューエル(ガソリンと水素)自動車の生産を前提としたモニターカーを、年末から日本を含む世界市場向けに計70〜80台製作して導入を進める。(日刊工業新聞05年3月11日、日刊工業新聞3月16日)
 ダイムラー・クライスラーの関係者は、同社の水素燃料FCVは、2012年に発売されるだろうとの見通しを示した。(鉄鋼新聞05年3月18日)

(6)トヨタ車体
 トヨタ車体は3月17日、愛知万博に同社が開発した小型FCV“コムスFCHV”などを提供すると発表した。コムスFCHVと2人乗り小型電気自動車“コムスw”は、万博スタッフの場内移動手段として活用する。(日刊工業新聞05年3月18日)
6.FCV以外の移動体電源
(1)FCバイク
 東京都立墨田工業高校自動車科の生徒たち9人が、FCバイク(ナンバー;江東区ふ3178)を完成させた。改造した自転車の荷台に出力0.16kWのPEFCを搭載しており、時速は20km台、1回の水素の充填で最大20時間、約400km走行する。本来なら300万円かかるところを80万円で完成させた。(毎日新聞05年2月21日)

(2)深海探査機
 PEFCを動力源とする深海探査機“うらしま”が、無人の自律航行で連続317kmの記録を達成したと、海洋研究開発機構が発表した。燃料は水素で、ミッシュメタルにマンガンとコバルトを添加した水素吸蔵合金に貯蔵されており、動力源としては、金属セパレーターを採用した出力4kWの密閉式PEFCスタックを2個搭載している。駿河湾で2月26日から56時間をかけて成就した。(朝日、日本経済、東京新聞05年3月1日、日経産業、日刊工業新聞3月2日、化学工業日報3月7日)

(3)FCバイク
 ホンダ・ベトナムは、ハノイ市内でFCシステム“HONDA・FC・STACK”を搭載した2輪車の試作機を紹介した。ハノイ市以外にホーチミン市でもFC2輪車のデモンストレーション走行を実施する予定。(日経産業新聞05年3月2日)

 
7.水素ステーションの技術開発と建設
(1)愛知万博
 愛知万博の長久手−瀬戸会場間を結ぶFCB(バス)に水素を供給する水素ステーションの開所式が3月7日に瀬戸会場バスターミナルで開かれた。東邦ガスと太陽日酸のグループ、および新日本製鉄が、エン振協の委託を受けて供給施設を1基ずつ建設した。前者は都市ガス改質型のオンサイト型、後者は新日鉄名古屋製鉄所で発生するコークス炉ガスを精製して得られる水素をトレーラーで輸送するオフサイト型である。水素の供給能力は2,000m3/日、圧縮貯蔵した水素ガス1万m3をシャトルバス8台およびFCV4台に供給する。(日経産業、中日、鉄鋼新聞05年3月8日、電気、日刊工業新聞、化学工業日報3月9日)

(2)太陽日酸
 太陽日酸は3月10日、FCV向けに70MPaの水素ガスを充填できるスペンサーを独自開発した。更に最高使用圧力110MPaを想定した圧縮機や蓄ガス器の選定、装置間や装置内に使用する配管の施工法の確立、FCVへの充填制御技術を含めた水素ステーションの全体システムを開発し、70MPa水素ガスステーションの実用化技術を確立したと発表した。水素ガス発生装置は、さまざまな種類があるが、全体システム制御にフレキシビリテイーを持たせることにより、それらの組み込みが可能な技術を実現する。水素ガス処理量は、毎時100/200/300Nm3を想定し、それらに対応する装置を用意した。将来的には燃料タンクの圧力を90MPa程度まで高めることも可能になると述べている。(化学工業日報05年3月11日、日刊工業新聞3月15日)
8.水素生成・輸送および改質技術の開発
(1)東ガス
 東京ガスは、水素分離膜型改質技術によって、都市ガスから76.2%の高い効率で水素を精製する技術を開発した。PSA方式では効率が68%に留まっている。製造容量は40Nm3/h、水素の純度は99.999%で、FCVへの水素供給に必要な水素精製技術の実用化を目的としている。効率を向上させるため、水素の分離スピードが速くなるように反応器内の都市ガスの流れ方を解析し、又反応器の温度分布が最適になるよう改良した。分離膜を使うので装置は小型化されており、開発したシステムは幅3.6m、奥行き2.6m、高さ2.3mである。同社が所有する2台のFCVへ水素を供給し、走行試験を行う。(日刊工業新聞05年3月3日)

(2)PEC
 石油活性化センター(PEC)は、出光興産と協力して灯油から改質製造した水素を高純度・高圧化して輸送・供給する実証試験を、2月下旬から3月半ばまでの予定で開始した。改質水素をPSAによって純度を99.99%まで上げ、灯油改質模擬水素と合わせて40MPaまで昇圧、この高圧水素を専用搬送車によって三重県多度町から名古屋市守山区および愛知県藤岡町まで輸送する。守山区では愛知県、名古屋市、出光興産が所有するFCVに、藤岡町では定置式FCに水素を充填する。(化学工業日報05年3月4日、日経産業新聞3月7日)

(3)三菱液化ガスと萩尾高圧容器
 三菱液化ガスと萩尾高圧容器(新居浜市)は、萩尾高圧容器が開発した“簡易型脱硫技術”をベースに、1kW級家庭用PEFCでの実用化を目的にしたLPG新供給方式の実証実験を始める。萩尾高圧容器は、LPGボンベと一体化した安価な触媒によって、硫黄分を約1/20以下にできる簡易脱硫装置を開発していた。これによって、改質器のニッケル触媒やPEFCの白金触媒への被毒を低減できるため、LPGのPEFCシステムでの利用が可能になり、かつコストを大幅に引き下げることが可能になる。又同社の脱硫システムは、ボンベの自動切換時にも対応可能であり、通常の配送形態を変えることなく、PEFCに使うことができる。実証実験は05年3月から06年5月までの予定。(日経産業新聞、化学工業日報05年3月11日)
9.携帯端末用マイクロFCの開発
(1)NTT
 NTTは2月22日、携帯電話に直接搭載可能なマイクロPEFCを試作したと発表した。水素を直接燃料に使うことにより、単位面積当たりの発電量を、DMFCに比べて約4倍の200mW/cm2にまで高めた。試作したPEFCは、縦8cm、横4.2cm、厚さ1.3cmの大きさで、重さは104gである。燃料の水素は水素吸蔵合金に保存され、1回で9L充填することにより、9時間の通話ができる。(日本経済、電気、日経産業、日刊工業、電波新聞、フジサンケイビジネスアイ05年2月23日)

(2)東芝
 東芝が04年に開発した世界最小のDMFCが、06年版のギネスブックに掲載されることが、2月28日明らかになった。このDMFCの発電出力は100mW、大きさは縦56mm、横22mm、最厚部91mmである。2mLのメタノール燃料で、小型オーデイオプレイヤーなどを20時間駆動することができる。燃料や空気の供給機構にはパッシブ型が採用されている。(朝日、産経、電気、日経産業、日刊工業、電波、日刊建設工業、中国新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報05年3月1日)

(3)ダウ・ケミカル
 アメリカのダウ・ケミカルは同ミレニアム・セルと携帯用FCシステムの共同開発で合意し、商品化を目指して消費者向け携帯電子機器用や軍事用のFC開発に着手した。ミレニアム・セルは、携帯用FCシステムのハイドロジェン・オン・デマンド技術、すなわち水素化ホウ素ナトリウムを使った安全で高品質の水素を発生させるエネルギーシステムを開発しており、材料には不燃性でエネルギー密度が高く、輸送も容易な化合物を使う。今後長時間の駆動で広域帯機能を実現するためには、新素材、化学工学での新技術が必要になることを見越して、ダウが共同開発に踏み切った。両社は3年間の開発プログラムを組んで実用化開発を進め、先ず05年に第1弾の商品化を目指し、更に軽量、低コスト、長時間駆動のエネルギーシステムを作り上げる。(日刊工業新聞05年3月4日、日本経済、電気新聞3月7日、化学工業日報3月8日)
10.FCおよび水素関連の計測・観測技術
(1)高エネ研究機構
 高エネルギー加速器研究機構の沢助教授らは、強力なX線を使って、フラーレンに閉じ込められた水素分子の直接観測に成功した。京都大学の小松教授らが合成した“開口型フラーレン”を、高温・高圧の水素ガス中に置くと、自然に水素分子が入り込み、内部に閉じ込められる。研究チームはこれを極低温にまで冷却しながら、放射光X線を様々な角度から照射し、データーをコンピューターで処理すると、フラーレン中に水素分子が入っていく様子が輪切り状の模様となって浮かび上がった。一般には中性子ビームを使って水素の原子核の位置を突き止める方法が有力視されているが、この放射光X線は水素を構成する電子に着目して解析する手法である。(日経産業新聞05年2月28日)

(2)菊水電子工業
 菊水電子工業は、FC関連市場に向けて、従来のFCインピーダンスメーターでは対応できなかった電圧やインピーダンス特性試験が可能になる新しいFCインピーダンスメーター“KFM2150”を市場に投入した。税込価格は131万2,500円で年間販売台数は100を予定している。周波数を変えながら交流電流を流してインピーダンスを測定するコールプロットのデータ取得だけでなく、FCを放電したり止めたりして膜抵抗を求める電流遮断法による測定機能も有している。インピーダンス測定は10mHzから20kHzまで対応できる。(電波新聞05年3月4日、日刊自動車新聞3月7日、日刊工業新聞3月11日)

(3)テクノリンク
 テクノリンク(新津市)は、手のひらにのるような超小型サイズで、0.1秒で水素ガス漏れを検出できるセンサーを試作した。この水素センサーは新潟大学の原田教授が開発し、同社が試作した。水素がセンサーに触れるとイオン化し、それを電位差の変化で捉える“EMF方式”が採用されている。水素だけを検出するので、都市ガス等と混ざっていても検出が可能である。今後は改良してICのようなチップ状にして販売する。(日刊工業新聞05年3月12日)
11.FCおよび水素に関する事業計画
(1)岩谷産業
 岩谷産業は管理本部内に水素エネルギー部を設立、メンバーは15人で、定置式FCおよびFCVを含めた水素エネルギーに関わる装置や事業、システムを纏め、短期から長期に至る水素エネルギーを利用した各種事業を創造していく。(日刊工業新聞05年2月24日)

(2)新日本エコ・システム
 新日本エコ・システム(千葉市)は、小型で研究・実験用に適した定格出力300WのFC“mirab-300”を開発、発売した。ボンベから15MPaの水素ガスを、水素吸蔵合金の水素ユニットに充填し、レギュレーターで水素ガスの供給圧力を0.03〜0.04MPaに調整してFC本体に供給する。又空気はFC本体に付属しているファンで送り込む。水素圧が低いので、安全性が高く、発電部の寿命が長い。FCに直接触れることによってFCに関する理解を深めるのが狙いである。1セット98万円で、企業の研究室や教育機関などに直販と代理店を通じて月50台の販売を目指す。(日刊工業新聞05年3月7日)

 ―― This edition is made up as of March 18, 2005――

・A POSTER COLUMN

第4世代原発の共同開発で国際協定
 天然ガス化火力発電所に競合可能な次世代原子力発電炉の開発を目指す国際協定“第4世代原発国際フォーラム(GIF)”の調印式が、2月28日にワシントンのフランス大使館で開かれた。これは日米欧などが2030年頃での実用化を目途に、次世代原子炉の研究開発を共同で行おうとする協定で、日本は発電のほか、水素の生成に役立つ高温ガス炉の研究開発などに関心を寄せている。フォーラムではナトリウム冷却炉や鉛合金冷却炉など6つの炉型を研究開発の候補に挙げ、実用化を目指すことにしている。(産経新聞05年3月1日)

ハイブリッド車快走で部品メーカーがアクセル
 環境負荷が低いエコロジーカーとして注目を集めている“ハイブリッド自動車”をめぐり、大手電機各社が充電池やエンジン制御半導体など基幹部品の事業拡大を急いでいる。京都議定書の発効に伴い、国産メーカーを中心にハイブリッド車の普及に本腰を入れ始めたからである。自動車業界では5年後に国内だけで累計200万台を突破するとの目標を掲げており、電機各社の受注獲得競争も過熱しそうな勢いである。次世代エコカーとしては、FCVも注目されているが、「実用化への課題も多く、ハイブリッド車は今後15年は続く」(中村松下電器産業社長)との声もあり、当面ハイブリッド車が生産を牽引すると思われる。(産経新聞05年3月6日)