第106号 ガラス材電解質で中温動作FC出現か
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.PEFC要素技術の研究開発
4.家庭用PEFCコージェネレーションシステムの事業展開
5.FCV最前線
6.水素ステーションの建設
7.改質および水素生産・精製技術の開発
8.水素貯蔵・輸送技術の開発と実証研究
9.ポータブルFCの開発
10.携帯端末用マイクロDMFCの開発
11.FCおよび水素関連計測技術
12.新規なFC技術の開発
13.FCおよび水素の新しい利用
14.FCに関する企業活動
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)経済産業省・資源エネルギー庁
 資源エネルギー庁は05年4月から、FC全般の先端技術や基盤研究を集中的に研究・開発するための“燃料電池先端基盤技術センター(仮称)”を立ち上げる。このための費用として05年度予算に10億円を盛り込んでいる。センター長には民間トップ科学者を抜擢する予定である。このセンターは、東京・台場にある産業技術総合研究所臨海副都心センターの中に拠点を置き、産総研の関連研究部門とも連携を図る。国内外の若手研究者を集め、先端科学知識を持つ人材の育成や海外のトップラボとも交流し“若手梁山泊”を目指すとしている。資源エネルギー庁のFC関連予算は05年度355億円で、上記センターの他、家庭用FCの大規模実証実験では1台当たり600万円前後の補助金を付け、全国に400台の実機を設置し、稼動データーをモニターで集約・検証する。(建設通信新聞05年1月28日)
 経済産業省は、05年度から省エネルギー・高効率リアクター、具体的には低温・急速作動を特徴とするセラミックリアクターの開発に着手し、そのための材料やプロセス技術の研究を進める。実現すれば手のひらサイズの超小型システムが可能になり、小型SOFC、水素製造装置などへの応用が期待できる。開発するのは、0.3〜0.5mm程度のミクロ多層チューブを束ねて、1cm3程度の立方体を形成、この立方体を集積してモジュール化したセラミックリアクターである。高温動作となるジルコニアの代わりに、セレン又はランタンガレート系材料を用いることにより、500℃程度の低温動作を可能にし、鉄など一般的な素材を使用できるようにする。又コンパクトなモジュールとすることにより、起動時間を大幅に短縮、将来は分・秒単位でオン・オフすることが可能になるとともに、1L以下の体積で5kWの高出力が実現できるようになることを目指している。05年度の事業費は2億円の予定で、09年度までに合計22億円を計上する。NEDOを通じて委託し、プロトタイプの実証を行い、実用化の目途をつける。 (化学工業日報05年1月31日)

(2)NEDO
 NEDOは1月27日、大学・研究機関などの有識者から成る“FC・水素技術開発ロードマップ委員会(委員長渡辺山梨大学教授)”を設置し、1月27日に初会合を開いた。又大阪科学技術センターに“技術動向調査員会”を置き、ロードマップの詳細化を行うとともに、4月上旬までに第2回会合を開催、最終案を取りまとめる。(化学工業日報05年1月28日) 
2.地方自治体による施策
(1)滋賀県
 滋賀県は05年度から、琵琶湖の水を電気分解し、水素を燃料として蓄え、酸素は湖水に送り込んで水質改善に役立てる“エネルギー確保と環境保全を目的としたシステム”の開発に乗り出す。3年かけて基礎実験を行い、効果や実現の可能性を検証する。05年当初予算案研究費として約1,000万円を盛り込み、県の新エネルギー推進室と同志社大学の伊藤研究室が研究開発を進める。(朝日新聞05年1月22日)

(2)福岡県
 福岡県がFC技術の確立と普及を目指して官民一体で取り組む“水素エネルギー戦略”の概要が2月9日に明らかになった。10月に糸島半島へ移転する九大キャンパスを舞台に、高圧水素の製造・貯蔵を行う“水素ステーション”の建設、企業の研究開発支援、技術者育成など、実証実験、研究開発、人材育成の3本柱で戦略を展開する。05年度予算に関連費約1億3,500万円を盛り込む。九大新キャンパスでは、水素ステーションで圧縮機を使わない水電解技術により40〜70MPaの高圧水素を製造・貯蔵し、そこから各施設にパイプランで水素を供給、FCで電力を賄い、構内にFCVを走らせる。(西日本新聞05年2月10日)
 福岡県は、構造改革特区の第7次提案として“水素利用技術開発特区”を政府に申請した。福岡市や九州大学と共同で進めている水素利用技術の研究開発を、規制緩和によってスピードアップさせるのが狙いである。(電気新聞05年2月15日)

(3)三重県
 三重県は県内の工業高校などの生徒を対象にFC技術に関する授業をスタートさせる。同県はFC開発拠点化を目指し、全国のFC開発企業を対象に公募して実証試験を行っているが、県内でFC関連の人材不足が課題になっている。実証試験を行う企業の研究者が講師になって高校生にFC技術の授業を行うことにより、将来の人材育成につなげるのが狙いである。(日刊工業新聞05年2月16日) 
3.PEFC要素技術の研究開発
(1)スリーボンド
 スリーボンドはFC向け2液性加熱硬化型オレフィン系シール材の製品開発を急ぐことにした。2液タイプにすることにより、よりフレキシブルな硬化条件を可能にすることが狙いである。このシール剤は、主成分のポリイソブチレンを主鎖とするテレケリックポリマーで、これをセパレーターのシール面周囲に添付して熱硬化させる。硬化後も柔軟性を持ち、水素ガスの透過度はシリコン系シール剤の1/20、湿度透過度は1/100と優れたガスバリア性を示している。現在、塗布したシール剤を両面から挟みつけた後で両面硬化接着させるFIPG用の“スリーボンド1152”と、片面だけを接着させる“同1153”を商品化しているが、今後は2液性を商品化することで、ユーザーの要求するスペックに応えることを考えている。05年中に市場投入する意向。(化学工業日報05年1月31日)

(2)北大と京大
 北海道大学の竹口助教授と京都大学の菊地助教授らは、PEFC電極の周囲を酸化スズで覆うと、これが触媒の働きをして白金上でのCOの吸着を抑えることを発見した。PEFCの炭素電極に、ゼリー状の酸化スズの溶液をしみ込ませ、その上に直径8nmのパラジューム触媒を付けると、パラジューム触媒の電子の状態が変わり、COの付着を妨げる。この電極をPEFCに使ったところ、500ppmのCO濃度の水素ガスでも出力低下が3割程度に抑えられた。(日系産業新聞05年2月1日)

(3)旭化成
 旭化成は100℃の作動温度で4,000時間の耐久性を持つ低加湿タイプの新構造フッ素系高分子膜を開発した。同社は過酸化水素によるフッ素漏れと熱による酸化が原因の劣化率を、大幅に減らす改良を進めてきたが、その結果4,000時間までの耐久性を達成したので、今後スタックメーカーと共同で評価するため、PEMプロジェクト室にベンチスケールのバッチ式生産設備を設置した。100℃の耐久性のある膜を80℃に下げて運転すると、耐久性が10倍程度に高まると見られている。同社では旭化成ケミカルズでの事業化を視野に、100℃で4万時間の耐久性を実現する膜性能や低コスト化を進めていく。(日刊工業新聞05年2月3日、化学工業日報2月7日) 
4.家庭用PEFCコージェネレーションシステムの事業展開
(1)石川島芝浦機械、静岡ガスなど
 石川島芝浦機械は、静岡ガスなどと共同で、PEFCを使った家庭用コージェネレーションシステムを開発した。開発したシステムは、都市ガスを燃料とし、電気出力は1kWである。石川島芝浦機械が、改質器とPEFC本体の開発を担当、静岡ガスが研究施設と都市ガスを提供し、高木産業(沼津市)が貯水槽を開発した。現在、静岡ガス総合研究所で性能向上やコスト削減について研究を行っている。05年秋までに一般家庭に設置し、実証研究を開始して、06年度での商用化を目指す。契約電流が40Aの家庭では、年間3〜5万円程度の光熱費が削減できると予想している。(信濃毎日新聞05年1月22日)

(2)都市機構西日本
 都市再生機構西日本支社は1月20日、家庭用PEFCコージェネレーションシステムを集合住宅で導入した“アーベインなんばウエスト”を報道関係者に公開した。このシステムで住宅の電力需要の約74%、給湯需要の約92%がPEFCから賄える。その結果 年間で光熱費が12ないし13%節約できると予想している。この集合住宅は14階建て2棟で252戸となっているが、FCが設置されているのはこの内の4LDK26戸である。(日刊建設工業、建設通信新聞05年1月24日)

(3)東電と大ガス
 経営再建中の藤和不動産に対し、東京電力と大阪ガスが出資することで最終調整していることが1月25日に明らかになった。東電と大ガスは、電化マンションの普及や都市ガスによる家庭用FCの導入を意図している。(毎日、日本経済、産経、東京、西日本新聞05年1月26日)

(4)Jエナージー
 ジャパンエナージーは1月31日、LPGを燃料とする家庭用PEFCシステムの本格運用を開始したと発表した。川崎LPガス基地に内に、東芝FCシステム製700W級システムを設置、性能検査およびメインテナンス体制を構築する。発電効率は34%(LHV)以上で熱回収効率は39%。05年春までに同様のシステムを2ヶ所に導入、5月からのレンタルリース式での本格販売に備える。料金は新日本石油と同様、年6万円前後となる見込み。(朝日、日経産業、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報05年2月1日)

(5)新日石
 新日本石油は3月1日、LPG型FCシステム“ENEOS ECO LP-1”の設置申し込み受付を開始した。申し込み期間は28日まで。(日経産業新聞05年2月2日) 
5.FCV最前線
(1)ホンダ
 ホンダは1月27日、FCV“FCX”の北海道庁へのリースを開始した。月額80万円のリース料については、道が走行データーの収集に協力することで支払いを相殺する。(日経産業、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報05年1月28日、日刊自動車新聞1月31日)

(2)GM
 GMは1月27日、FCVのリース販売を2007年までに現在の5倍になる40台に引き上げる計画を発表した。増加分は“シークウエル”を投入する。同時に提携先のロイヤル・ダッチ・シェルグループとともに、NY市内にある既存のガソリンスタンドに水素スタンドを併設する。(日本経済新聞05年1月28日、朝日新聞、フジサンケイビジネスアイ1月29日、電気新聞、化学工業日報1月31日、日経産業新聞2月2日)

(3)トヨタと日野
 愛知万博の長久手、瀬戸両会場を結ぶFCバスが、トヨタ博物館で公開された。PEFCとニッケル水素電池を動力源とするハイブリッド型FCB“FCHV−BUS”で、トヨタ自動車と日野自動車が共同で開発した。(産経、日経産業、日刊工業、東京、中日、北海道新聞05年2月1日、毎日新聞2月7日)

(4)三菱自動車とMHI
 三菱自動車と三菱重工業は、FCVの共同開発を検討していることを明らかにした。MHIの技術を活用することにより先行する他のメーカーを追い上げる。(東京、西日本、中国、中日、北海道新聞05年2月8日)

(5)愛知万博でのVIP先導車
 愛知万博を訪れたVIPを先導するために儀礼隊が使用するFCVが決まり、博覧会協会は使用する車両を公開した。採用するのは“トヨタFCHV”とダイムラークライスラー日本の“F-Cell”でえある。両社がそれぞれ2台ずつ協会へ無償提供する。(日刊工業、中日新聞05年2月8日、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ2月16日) 
6.水素ステーションの建設
(1)愛知万博
 愛知万博瀬戸会場に近い瀬戸市の上之山町3丁目町内会の住民らが1月24日、同会場で建設中の水素ステーションについて、危険性や地震対策の説明を求める要望書を博覧会協会や県などに提出した。危険性のある施設なのに、会場直近の町内に対して十分な説明がなされていないと述べている。(中日新聞05年1月25日)

(2)マツダ
 マツダは、水素自動車に水素を充填する水素ステーションを、広島市南区の本社宇品地区に開設した。実用化を目指す水素ロータリーエンジン(RE)車の走行試験を行う。ガスボンベから、圧力を水素RE車に合った気圧に調節する。1日10台分を充填する能力を備えている。(中国新聞05年2月17日) 
7.改質および水素生産・精製技術の開発
(1)埼玉工業大学とエコデバイス
 エコデバイス(川口市)は1月26日、水素中のCOを室温で酸化する新触媒の事業化に着手したと発表した。田中埼玉工業大学特任教授が開発した技術で、同教授の指導で実用化を進める。新触媒は白金を担持した酸化チタンの表面を酸化鉄で覆ったタイプで、30℃で約80%のCOを酸化してCO2に転換する能力を持つ。更にCOは酸化するが水素は酸化しにくいと云う選択酸化の特性を備えている。PEFCシステムのみならず空気中のCO除去にも使えるので、空調向けにも需要があると予想している。(日経産業、日刊工業新聞05年1月27日、化学工業日報1月28日)

(2)北大
 北海道大学触媒科学研究所の市川教授らは、牛の糞尿から発生するメタンガスを、ベンゼンと水素に選択的に変える“複合金属MTB触媒”を開発した。MoとRhなどの貴金属を組み合わせた複合金属をシラン修飾ゼオライトに担持させた。メタンを約750℃、約5気圧の条件でメタンを反応させると、水素の発生とともにベンゼンが90%以上の選択率で生成した。約15%が化学反応を起こしてベンゼンと水素に変わる。大型実証プラントでの実証実験では、糞尿から1日当たりに発生する200m3の改質バイオガス(メタン濃度99%)に、数%の水素又はCO2を添加することにより、1日当たりベンゼン58kgと水素120m3を生産することに成功した。(朝日新聞05年1月28日、北海道新聞1月29日、化学工業日報1月31日、日刊工業新聞2月18日) 
8.水素貯蔵・輸送技術の開発と実証研究
(1)川崎重工業
 川崎重工業は1月26日、液体水素を運ぶ専用コンテナを開発し、約600kmの長距離輸送に成功したと発表した。コンテナの長さは6m、幅と高さは2.6mで、容積14.65m3の水素貯蔵タンクを内蔵する。液体水素の蒸発を1日当たり0.7%に抑制するための高い断熱性や振動防止機能など最新技術を導入した。1月26日に尼崎市の液化基地から東京都の有明水素ステーションへ高速道路などで10時間かけて約5.5m3の液体水素を搬送した。タンクローリーよりも大量に水素を輸送することが可能で、鉄道や船での輸送もできる。(朝日、日本経済、電気、日経産業、日刊工業、神戸、中日、西日本新聞、化学工業日報05年1月27日、フジサンケイビジネスアイ1月31日)

(2)那須電機鉄工等
 那須電機鉄工、東京都立産業技術研究所、東海大学工学部応用物理学科などは、水素吸蔵合金を使った風力・太陽光ハイブリッド発電システムの実証実験を始めた。風力や太陽光で得られた電気による水電解で水素を生成、それを水素吸蔵合金に蓄える。(日本経済新聞05年2月4日) 
9.ポータブルFCの開発
 バンテック(塩原市)は、背中に担いで持ち運べるPEFCセットを開発した。1000Lの水素を蓄える重さ5kgのニッケル水素系吸蔵合金とPEFCを組み合わせた。制御装置などを改良して重さは20kgであり、静かなため、災害地や工事現場のポータブル電源として有望である。100Vの交流電源か24Vの直流電源として利用できる。出力は最大1kW、15台のノートパソコンを約1時間半駆動できる。05年3月に1台250万円前後で販売する。(日経産業新聞05年1月25日) 
10.携帯端末用マイクロDMFCの開発
(1)NTTとKDDI
 NTTドコモとKDDIは、リチウムイオン電池とDMFCを組み合わせ、FCによる発電電力で電池を充電することにより、携帯電話の利用可能時間を10倍(テレビ電話で20時間程度)に延ばすことを計画している。ドコモは04年9月末、富士通研究所と共同で、縦152mm、横57mm、厚さ16mmの置き台型マイクロFCを開発した。KDDIは、東芝、日立製作所とそれぞれ共同開発しているが、小型化の課題は克服されていない。KDDI技術開発本部は、07年頃には商用化したいと語っている。(中国新聞05年1月22日)

(2)原研と日東電工
 日本原子力研究所と日東電工は、放射線照射などにより耐久性を従来比6倍、電気伝導度を市販品に比べて2倍に高めた高濃度メタノール用FCフッ素系高分子樹脂電解質膜を開発、連続ロールフィルム製造にも成功した。原研は既にPEFC用電解質膜の開発に成果を挙げてきたが、今回はDMFC用に優れた膜を製造した。具体的には、先ず“フッ素系高分子樹脂膜に放射線を照射し、グラフト重合に必要な反応活性点を高分子鎖に生成する。続いてグラフト重合により化学橋架けグラフト分子鎖を導入、更に放射線照射により同時橋架けした後、グラフト鎖をスルフォン化してイオン交換基を保持した電解質膜を製造する”プロセスである。(原子力産業新聞05年2月10日) 
11.FCおよび水素関連計測技術
(1)オーバル
 オーバルは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂を採用したコンパクトで低価格の容積式液体流量計“を開発し、FCや製造プロセス向けにサンプルワークを開始した。定置式FCシステム向けに要求される耐熱性や機械的強度、耐摩耗性などの性能を備え、高い信頼性を持つ。同社では改質器用の原料流量や内部循環用純水の精密制御などの用途に使われるものと期待している。サンプル価格は約5万円。(化学工業日報05年1月25日)

(2)東洋インキと横国大
 東洋インキ製造と横浜国立大学は、本来は電気抵抗率が1,000億Ωcmである顔料“ピロロピロール”に窒素を混ぜ込むと、これが水素に触れたとき、電気抵抗率が100万Ωcmと10万分の1になる現象を発見し、これを水素検出センサーに応用できると判断した。センサーは、先ずガラス基板の表面に酸化させた金属化合物によるクシ形の透明電極を形成し、その上にピロロピロールに窒素を混ぜたペースト状の有機化合物を塗布、それを自然乾燥させる工程によって試作された。大きさは約1cm2である。製造方法が簡単で、センサーは200〜300円の価格で商品化できると予想されている。FCVには通常1台当たり5ないし6個のセンサーが搭載されている。東洋インキは、有機化合物のみを販売する予定であるが、自動車部品メーカーや計測機会社に電極の生産技術などをライセンス供与することも計画している。(日経産業新聞05年1月26日)

(3)タツノ・メカトロニクス
 タツノ・メカトロニクスは70MPaの超高圧充填に対応したFCV用固定式水素計量器を開発した。開発した計量器は横浜工場内の水素安全研究ステーションに設置した。予定では、05年度中に圧縮機や蓄ガス機ユニットなど計量器の付帯設備を70MPa対応に切り替え、06年度と07年度の2年間で安全検査を行う。同計量器の開発費用は3,000万円である。(日刊工業新聞05年2月15日) 
12.新規なFC技術の開発
(1)UWE
イギリスのウエスト・オブ・イングランド大学(UWE)のクリス・メルフィッシュ教授らの研究チームは、死んだハエやリンゴから微生物を利用してマイクロFCを動作させ、それを動力源として動作するロボット“エコロボット2”を開発した。1時間に30cm動かすことができる。(日刊工業新聞05年1月24日)

(2)東邦ガス、TYK、中部大学
 東邦ガスとTYK、中部大学は、ガラス素材の電解質を用いたFCを開発し、300℃の中温域での発電に成功した。このガラス素材は、リン酸塩ガラスに改良を加えたもので、水素イオンを透過しやすくするためにガラス内部に水分を多く含んでいる。又ガラス素材の耐熱温度が400℃と高いので、電極触媒の劣化や使用量が抑えられ、加湿機構が不要になるので低コスト化につながる。このFCはPEFCとSOFCのいわば中間タイプといえるものであり、排熱用途を広げられるとともに、起動停止が容易であり、両者の短所を補っている。今後はガラス素材の耐久性や量産技術の確立、電極の高機能化などに取り組み、実用化を目指す。(日刊工業新聞05年2月2日) 
13.FCおよび水素の新しい利用
(1)JAXA
 無人の大型飛行船を長時間静止させるため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、太陽電池とFCを搭載する飛行試験を行うことを検討している。高度20kmから通信・放送や交通観測などを行う“成層圏プラットフォーム”計画の一環である。(産経新聞05年1月30日、日刊工業新聞2月1日)

(2)NTTファシリテイーズ等
 NTTファシリテイーズ、NTT建築研究所、東北福祉大学、仙台市の4つの企業・自治体は2月8日、05年度内に仙台市内で新エネルギーを利用した品質別電力供給システムの実証研究に着手すると発表した。太陽光発電、天然ガスコージェネレーション、FCなど総出力940kWの分散電源を建設、各電源からの電力を一旦高品質電力供給装置に集め、そこから直流、高品質A、高品質Bに分けて公共施設に供給する。系統電力は補完的に利用する。東北福祉大学のキャンパス内に分散電源を集約するエネルギーセンターを設置、市内の大学、福祉施設、浄水場などに送電する。(電気、日経産業、建設通信、日刊建設工業新聞05年2月9日)

(3)DESSコンソーシアム
 日本総合研究所に荏原、松下電器産業、三菱電機など26社が参加し、FCなど分散型電源によるネットワークシステム(マイクログリッド)作りを目指している“DESSコンソーシアム”は、05年度に核となる制御システムを低コストで開発し、06年度に実証試験を行う計画に乗り出した。再生可能エネルギーや省エネ電源のような分散型電源を、 基本的に電力系統から独立させてネットワーク化するための安価な制御システムの確立が目的として挙げられている。具体的には、1ヶ所にネットワークを制御するセンターを置き、電力を受け入れるサイトにはパソコンレベルの制御機器を導入するシステムを想定している。(日刊工業新聞05年2月15日)

(4)東海大学
 東海大学の西教授と内田教授らは、水素を吸収して高速で動く駆動装置を開発した。ランタンとニッケルでできた厚さ約1μmの水素吸蔵合金を、長さ2cm、幅1mm程度の樹脂基板に貼り付けて、水素吸蔵合金に水素を吸収させると、合金が変形して約20%膨張する。これが従来の駆動装置のメカニズムであるが、吸蔵合金の表面を厚さ0.1μmのパラジウムで覆うと、この変形速度が2倍になり、駆動装置の動作速度を100倍に速めることができた。より具体的には、動き始めるまでの時間が100秒から1秒に短縮し、動作が終わるまでの時間も従来の10万秒から約1000秒になった。この理由は、パラジウムの触媒作用により水素が効率的に吸蔵された結果であると解釈されている。(日経産業新聞05年2月17日) 
14.FCに関する企業活動
 FC試験を事業内容にしているアメリカのフィデリスは、スイスのチューリヒにフィデリス・テスト・ソリューションズという名称の新オフィスを開設した。同オフィスは欧州、中東、アジアの顧客を担当する。(電波新聞05年2月12日) 

 ―― This edition is made up as of February 20, 2005――

・A POSTER COLUMN

アメリカDOEの06年度予算案で原子力発電技術の改良
 アメリカ大統領府予算管理局が2月8日に発表した06会計年度予算案(05年10月−06年9月)と平行して、DOEの06会計年度予算案が明らかになった。この中で“原子力発電技術の改良”が重点項目の1つとして打ち出され、官民合同のコンソシアムを結成し、09年までに新規プラントを発注、14年までに運転開始を目指す具体的なスケジュールが盛り込まれた。アメリカでは新規原子力を建設する動きはこれまでにもあったが、このような政府のスケジュールが明示されたことにより、こうした動きに一層拍車がかかると見られている。DOE予算案では、大統領の国家エネルギー政策と整合性を持たせた上で、原子力以外には、水素経済への移行のための研究開発、FCV、炭素の貯留・貯蔵、クリーンコール技術、核融合エネルギーへの開発投資が重点項目として掲げられている。(電気新聞05年2月10日) 

BMWやマツダによる水素自動車の開発
 BMWのヘルムート・パンケ社長は2月16日、共同通信などとのインタービューで「20年後にBMWグループが販売する車の10%は水素自動車になると述べ、水素自動車の開発と将来の販売を強化する考えを示した。又同社長は「従来のエンジンを活用する水素自動車は加速性にも優れている」と語っている。BMWは07年を目途に水素自動車の市販者を投入する予定である。(北海道新聞05年2月17日)
 マツダの水素ロータリーエンジン(RE)車は、1月末で3ヶ月間の公道走行試験を終え、現在は社内のテストコースで走行試験を行っている。2年以内に官公庁か企業向けのリース販売を目指しており、そのために広島市に水素ステーションを建設した。(中国新聞05年2月17日) 

日本の主要メーカーによる太陽光発電の増産体制
 世界最大手のシャープは、1月までに約50億円を投じ、葛城工場(奈良県)の生産能力を3割増強し、年間400MWの生産体制を整えた。京セラも05年度中に約100億円を投じ、生産能力を2倍の240MWに拡大する予定である。三洋電機は06年度までに1.6倍の250MWに引き上げる。(建設通信、中国新聞05年2月17日)