第98号 マイクロFCで国際標準の議論が進展
Arranged by T. HOMMA
1.内閣による施策
2.経済産業省・資源エネルギー庁による施策
3.NEDOによる施策
4.国土交通省による施策
5.地方自治体での施策
6.PAFC事業
7.SOFCの開発と事業化
8.定置式PEFCシステムの実証運転試験および事業化
9.FCV最前線
10.FC駆動潜水船
11.水素供給ステーションの計画と事業
12.水素製造および改質技術の開発と実証
13.高圧ガス圧縮・貯蔵技術
14.水素ガス漏洩と火炎検知技術
15.マイクロFC(MFC)の開発と事業化
16.FC関連計測技術および製品の紹介
17.FC教材用キッド
・A POSTER COLUMN
1.内閣による施策
 政府は5月28日、環境白書04年度版を閣議決定した。経済・社会・世界とのつながりの項目では、環境ビジネスの国内市場規模が00年の29兆円から20年には58兆円になるとの推計を紹介し、光触媒やFCに関する国際標準策定には「日本が戦略的に人的資源を投入することは重要である」と訴えている。
(日刊自動車新聞04年5月29日、日刊工業新聞5月31日)
2.経済産業省・資源エネルギー庁による施策
(1)家庭用PEFCとSOFCに実用化開発支援
 資源エネルギー庁は、家庭用PEFCとSOFCの実用化を支援するため、半額程度の補助制度の導入ではなく、3年間を目標にトップランナー方式によるモニター制度を立ち上げる方針を固めた。個人住宅のみならず集合住宅も対称にする。トップランナーにはほぼ全額補助することにより早期の実用化を目指す。モニターにはFCメーカーと設置者がペアで応募することになると思われ、東京ガス、大阪ガス、新日本石油、出光興産の参加も見込まれており、最初の実用化規模は100〜数百台になる見込みである。
(日刊工業新聞04年5月31日)

(2)希少金属の国家備蓄見直し
 資源エネルギー庁は、希少金属の国家備蓄を見直す方針を固めた。その背景に、ニッケル電池からリチウムイオン電池に需要が移り、Niの相対的な重要度が低下する一方、FC向けにプラチナや希土類の需要が急増しているなどの現象がある。
(日刊工業新聞04年6月4日)

(3)研究開発センター構想
 経済産業省が提唱し、トヨタ自動車、松下電器産業、東京ガス、三洋電機などが参加して、FCの基盤技術開発を行う新会社“FC・R&Dセンター(仮称)”を設立する国策プロジェクトが検討されている。新会社は民間企業の出資で、それに国が開発費を提供する形式となる。早ければ05年春に設立、経産省は今後5年間に総額100億円を投じる予定で、初年度分として05年度に約20億円を要求する。民間企業には1社当たり数億円から10億円程度の出資を求め、最終的に10社程度が参画するものと思われる。センターの拠点は、産業技術総合研究所の東京・台場の施設に置き、実際の研究開発は、つくばや関西など複数の拠点を活用して展開されることになる。
(日刊工業新聞04年6月11日)

(4)総合エネルギー調査会等による提言
 経済産業省は、6月16日、総合エネルギー調査会需給部会に“2030年のエネルギー需給展望”の中間報告原案を提出した。
(日刊自動車新聞04年6月17日)
 経済産業省の諮問機関である産業構造審議会と総合資源エネルギー調査会の合同部会は6月16日、「世界に冠たる省エネ国家の実現」など10項目の提言をまとめた。この中でFCなど分散型エネルギーの導入による水素エネルギー社会を実現するため、具体的な政策目標を提示、国の総力を挙げることを求めている。
(毎日、産経、日刊工業新聞04年6月17日、フジサンケイビジネスアイ6月18日)

(5)新エネルギー産業ビジョン
 経済産業省は6月24日、新エネルギー産業ビジョンを発表した。風力や太陽光などの発電事業者と環境に関心のある需要家を直接結ぶ仕組みを整備する。裾野を広げて新エネを自立した産業に育て、2030年までに新エネ市場の規模を3兆円(現在の6倍)、雇用を約31万人(現在の24倍)にする目標を掲げた。又一次エネルギーに占める新エネの割合については、00年の2.5%から30年には7.7%に高めたいとしている。発電手段を地域にあった形態とし、FCなどと組み合わせることによって、電力の安定供給を確保するネットワークを形成する。
(朝日新聞04年6月25日)
3.NEDOによる施策
(1)公開シンポジウム
 NEDOは“FC・水素技術開発の技術開発課題および開発目標”についての公開シンポジウムを、7月21日に大手町サンケイプラザにおいて開催する。FC・水素関連研究者や技術者の集まる公開の場で、05年度以降5年間に取り組むべき技術開発課題および技術開発目標について討議する。
(日経産業新聞、化学工業日報04年6月4日、建設通信新聞6月14日)

(2)愛知万博でのプロジェクト
 NEDOは、愛知万博で独自のパピリオンを出し、FCと太陽電池の大規模な実証運転を行う。FCに関しては、会場から発生する生ごみ(4.8トン/日)をメタン発酵してIHI製350kW・MCFCを運転(トヨタ自動車)、木質チップや廃プラは高温ガス化し、都市ガスと混合してIHI製370kW・MCFCを運転(中部電力)、MHIは出力50kWのチューブ型SOFCを導入、PAFCについては東芝IFCが200kW機を4台設置、などが挙げられている。
(読売、日刊工業、電波新聞04年6月18日)

(3)SOFC技術開発委託
 NEDOは6月18日、SOFCシステム技術開発の委託先および共同研究先6件を決定した。事業総額は4年間で16億円、小・中規模分散型電源市場に投入できるシステムの開発を目指す。採択された研究テーマは以下の通り、
1)円筒型縦縞形SOFCセルを用いた20kW級コージェネレーションシステムの開発:日立製作所、東陶機器、九州電力
2)MOLB形平板SOFCセルを用いた200kW級コージェネシステムの開発:MHI、中部電力
3)800℃以下で動作するランタンガレート系セルを用いた10kW級コージェネシステムの開発:関西電力、三菱マテリアル
4)インターコネクトレスアノードサポート型円筒セルを使用した10kW級コージェネシステムの開発:新日本製鉄、アキュメントリックス・ジャパン
5)円筒横縞形SOFCセルを用い、ガスタービンを組み合わせた350kW級コンバインドサイクルシステムの開発:MHI
6)SOFCシステム性能評価技術の開発:電力中研、産総研
である。
(日経産業、日刊工業新聞、化学工業日報04年6月21日)
4.国土交通省による施策
 国土交通省は6月にも北海道大学、日本製鋼所などと共同で、家畜の糞尿や下水汚泥などのバイオマスから水素を製造し、およびFCによる発電システムの実証実験に乗り出す。家畜の糞尿や食品廃棄物などのバイオマスは、日本全体で輸入原油の10%である2,400万kLの石油に相当すると推定されている。北大触媒化学研究センターの市川教授の研究成果を適用して、水素を有機化合物の中に閉じ込めて安全に輸送・貯蔵するシステム技術の実証が予定されている。北海道別海町に実験施設が完成した。
(日本経済新聞04年6月11日)
5.地方自治体での施策
(1)大阪府
 大阪府がFCVを公用車として採用することになり、納車・出発式が6月4日府庁前で行われた。導入されたのはダイハツ工業(池田市)が開発した軽自動車FCV“ムーブFCV−K−2”であり、リース料金は20万円/月と伝えられている。太田房江知事は「府民に環境意識を深めてもらうきっかけにしたい」と語っている。
(朝日、産経新聞04年6月4日、読売、日刊自動車、電波新聞、フジサンケイビジネスアイ6月5日、日経産業新聞6月7日)
 大阪府は、トヨタ自動車に対し、路線バス用としてFCBの提供を打診していることを明らかにした。トヨタは日野自動車と共同開発したFCB8台程度を、05年3月から9月まで開かれる愛知万博の会場移動用に走らせる計画であるが、大阪府は会期後同バスを譲り受け、路線バスとして走らせたい意向。
(日刊工業新聞04年6月7日)

(2)東京都
 東京都は6月7日、トヨタ自動車および日野自動車と共同で03年8月から行っているFCBの運行を、6月4日から休止したと発表した。アメリカで作られている部品の一部、高圧水素タンクの圧力センサーの金属部品に欠陥が見つかり、部品メーカーがリコールの届けを出したための措置である。トヨタ自動車ではリコールの事実関係を確認した上で、再開の時期を決めるとしている。
(毎日、産経新聞04年6月8日)

(3)三重県
 三重県と鈴鹿市の“FC技術を核とした産学官連携ものづくり特区”が6月15日特区として認められた。
(電気新聞04年6月16日)

(4)三鷹市
 三鷹市は04年9月にも、市内で活動する民間事業者による省エネルギーや環境保全を目的とした新エネルギーの導入、非営利団体による環境対策活動に対する助成を始める。対象は05年3月までに導入する太陽光発電、風力発電、およびFCコージェネレーションシステムである。
(日本経済新聞04年6月23日)
6.PAFC事業
(1)東邦ガス
 東邦ガスは、名古屋ワシントンホテルプラザで1999年から稼動している出力100kWPAFCが、4万時間の運転時間に達したので、オーバーホールしてFC本体および改質系機器を交換した。交換用費用は明らかにされていないが、イニシアルコストの1/5程度と思われる。再度長期の耐久性や信頼性を検証するため4万時間の継続運転に入っている。同PAFCは10階建て・延べ床面積7,083mのホテル内の電力需要の他、排熱を給湯などで利用している。同ホテルによると、エネルギー使用量の17%が削減された。
(日刊工業新聞04年6月16日)

(2)富士電機アドバンストテクノロジー
 富士電機アドバンストテクノロジーは、PAFCシステムのスタックおよび都市ガス改質装置の寿命を、従来のそれの1.5倍となる7年半にする技術を開発、05年10月に実用化する。これによりFCの維持費を大幅に安くできると期待している。
(日経産業新聞04年6月22日)
7.SOFCの開発と事業化
 住友商事と新日本製鉄、三洋電機は、アメリカのアキュメントリックスが電池本体を開発する円筒型SOFCの小型商業用システムを、共同で開発することで合意した。国内販売に向けて、ア社と住商、新日鉄が共同でアキュメントリックス・ジャパンを設立する。このSOFCは作動温度が800℃と低く、起動時間が10〜15分と短い。又20%までの部分負荷運転も可能であり、05年度にはコンビニや集合住宅向け5および10kW機の販売をスタートさせ、06年以降はホテル向け100kW機も投入する計画である。出力5kW機は6月中にも八幡製鉄所で性能評価を開始し、続いて実証実験に取り組む。アメリカでは2および5kW機は20数台販売済みで、日本では天然ガスやLPGに適した機種に仕上げて限定販売する。又3年以内にセラミックス電解質、熱交換器、インバーターなどの構成部品、部材の約2/3を日本国内で調達、国産化率を高めることで品質向上を図るとともに、部品交換なども迅速に対応できるようにする。価格は08〜10年時点で20万円/kWレベルの実現を目論んでいる。
(日本経済、日刊工業新聞04年6月2日、鉄鋼新聞6月3日、日経産業新聞6月18日)
 新日本製鉄、日立製作所など9社5グループは、NEDOの支援を受けて、SOFCを開発、発電効率40%以上のシステムを試作して性能を確認する。開発予算は4年間で約60億円。
(日本経済新聞04年6月19日)
8.定置式PEFCシステムの実証運転試験および事業化
(1)ユアテック
 ユアテックは、NEFが実施しているPEFCコージェネレーションシステムの実証実験に参加した。
(河北新聞04年6月1日)

(2)北陸ガス
 北陸ガスは日本ガス協会と協力し、新潟市の社宅で都市ガス式PEFCコージェネレーションシステムの試験運転を開始した。定格出力750W、発電効率は30%、三洋電機製である。
(新潟日報04年6月2日)

(3)日本ポール
 日本ポール(東京都)は、同社の持つ膜製造・膜表面修飾技術、吸着材応用・カートリッジ技術、流体制御技術などを応用して、改質器やセルスタックの性能を阻害する不純物の除去モジュールを開発し、05年度以降家庭用PEFC市場向けに事業化を目指す方針を固めた。具体的には、燃料脱硫モジュール、セルスタックの吸気ガス中に含まれるNOxやSOx、有機物などを除去するモジュール、改質用水やセル中で発生する水に溶出したフッ素イオンや炭酸イオン、金属イオンなどを取り除く循環利用モジュールなどである。社長直轄のプロジェクトチームを組織した。
(化学工業日報04年6月15日)

(4)葛巻バイオガス高度利用コージェネレーションシステム研究会
 東北大の野池教授を代表に、葛巻町畜産開発公社、清水建設、岩谷産業、三洋電機、オリオン機械が参画している“葛巻バイオガス高度利用コージェネレーションシステム研究会”は6月21日、岩手県葛巻町で行っているバイオガス利用PEFCプラントの発電実験に成功したと発表した。今回の実験結果を踏まえて本格的な運転試験を開始する。このプラントは、成牛20頭分に相当する日量1.2トンの牛の糞尿を発酵させ、日量19m3のバイオガスを発生、これを精製・濃縮してFCの燃料として使い、約1kWの電力を発生する。
(日刊工業、電波新聞、フジサンケイビジネスアイ04年6月22日、日経産業新聞、化学工業日報6月23日)
9.FCV最前線
(1)GM
 アメリカのGMと郵政公社(USPS)は6月15日、郵便配達車両にGM製FCV“ハイドロジェン3”を導入することで合意した。9月からワシントンDC周辺の配達作業を始める。既に議員や環境団体向けなどに、ワシントンで6台を試験走行中であり、9月には水素ステーションをガソリンスタンドと併設してオープンする。GMは状況に応じて郵便配達車の増車も検討するが「地理的には全米50州での展開も可能」と増車に前向きである。
(日本経済、日経産業新聞04年6月17日)
 GMのFCVが、5月から6月までの1ヶ月間欧州14カ国において約9,694kmを走破、ダイムラークライスラーの5,250kmを超えて、長距離走行で世界新記録を樹立した。GMのラリー・バーンズ研究開発および企画担当副社長は「このたびの長距離走行を通して、GMのFCVが10年の商業化実現に向けて確実に進展していることを実証できた」と述べている。
(日刊自動車新聞04年6月19日、化学工業日報6月22日)
10.FC駆動潜水船
 海洋研究開発機構は6月22日、PEFCを動力源とした無人深海探査機“うらしま”が、水深800mの地点において、43時間で自動連続航行220kmを達成したと発表した。05年度中に実用化し、300kmの航行に挑む。“うらしま”は海底地形や北極海の氷などを調査するために開発され、海底3,500mまで潜水が可能で、搭載コンピューターで自動航行する。
(読売、毎日、日本経済、産経、日経産業、東京新聞、フジサンケイビジネスアイ04年6月23日)
11.水素供給ステーションの計画と事業
(1)太陽石油
 太陽石油は、水素エネルギー事業進出の検討を始めた。FCV向け石油改質型水素ステーションのみならず、ステーションを起点とした家庭向けコージェネレーション事業の可能性についても検討する。具体的にはスタンドに10kW以上のFCを設置し、周辺地域に電力と熱を供給するビジネスである。
(電気新聞04年6月3日)

(2)バブコック日立
 バブコック日立は、FCV用移動式水素ステーションを青梅市に開設した。天然ガス改質機と水素精製装置を積んだ車両と、水素ガスを圧縮充填する装置を積んだ車両の2台で構成されており、任意の場所で水素を供給できる。圧縮機と充填装置などは日本酸素が担当、水素製造能力は30m3/hである。
(日経産業、日刊工業新聞04年6月21日、朝日新聞、化学工業日報6月23日)

(3)岩谷産業
 岩谷産業は6月21日、移動式の簡易水素充填装置を搭載したFCV専用のキャリアカーを製作し、有明水素ステーションで公開した。10トントラックを改良し、全長11.3mで、荷台にFCVを格納するコンテナとともに水素ボンベ12本を備えた移動式の簡易充填装置を搭載した。開発費は4,400万円。
(日本経済、産経、日経産業、日刊工業、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ04年6月22日、化学工業日報6月23日)

(4)東邦ガス、新日本製鉄、日本酸素
 東邦ガスと新日本製鉄、日本酸素は6月21日「05年3月に開幕する愛知万博の瀬戸会場にFCB(バス)用水素供給ステーションを建設する」と発表した。都市ガスを原料とする系統(東邦ガスと日本酸素)と、製鉄所内でのコークス製造過程で出るガスを原料とする系統(新日本製鉄)の2系統から成り立っており、両系統とも供給能力は100kg/日、水素の充填は1台当たり10分以内と発表されている。05年1月に完成予定。
(日本経済、電気、中日、東京、鉄鋼新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報04年6月22日、日経産業新聞6月23日)
12.水素製造および改質技術の開発と実証
(1)産総研等
 産業技術総合研究所環境化学技術研究部門の原主任研究員と三菱化工機、それに三菱マテリアル、金属系材料研究開発センターが参加するグループは、04年度中にジルコニウムとニッケルが元素比で36対64のアモルファス合金膜を用いた水素製造システムを構築し、実証試験を始めることになった。既に液体急冷法を用いて幅50mm、長さ30mのリボン状の膜を作成しており、混合ガスから水素を分離できることを確認している。水素透過能はパラジウムの数分の1から1/10程度であるが、250℃の大気雰囲気中に長時間保持しても結晶化せずに安定性が高く、8気圧の高圧水素にも対応できるなどの特徴が認められている。家庭用FCへ水素を供給するシステムを想定している。
(日刊工業新聞04年6月1日)

(2)九州電力
 九州電力は6月8日、COと水蒸気を効率的に反応させ、水素製造効率を高めることのできる新触媒を開発したと発表した。水素製造コストを最大2〜3%削減できる見込みである。従来の触媒は銅と亜鉛が主成分であるが、亜鉛の替わりに複数の金属を使用したところ、新触媒の方が反応が速く、触媒の量も1/2から2/3で同じ性能が得られた。又耐熱性も2倍となり、製造コストは現在の触媒と同程度ではあるが、交換回数が減らせるため、触媒費を減らすことができる。
(電気、西日本新聞04年6月9日、日刊工業新聞6月11日)

(3)原研
 日本原子力研究所(大洗研究所)は6月24日、水素製造技術を目的に研究している高温ガス炉(熱出力3万kW)で、950℃で連続運転した際の安全性を確認したと発表した。今後は水の熱分解により、水素を効率よく製造する研究を本格化させる。
(日経産業新聞04年6月25日)
13.高圧ガス圧縮・貯蔵技術
(1)加地テック
 最高1,100気圧まで圧縮できる装置を、コンプレッサー製造の加地テック(大阪府美原町)が開発した。この装置は日本自動車研究所の安全評価施設(茨城県常北町)に設置される。
(産経新聞04年6月13日)

(2)神戸製鋼
 神戸製鋼所はアメリカ機会学会(ASME)から、超高圧容器の品質管理プログラム認定“U3”を取得した。アメリカの工場で圧力容器を設置するためには、ほとんどの州でU規格取得が義務付けられており、これを機に当社は等方加圧(IP)装置で海外への受注攻勢をかける。ASME・U3は、700気圧以上の圧力容器に関する認定であり、U規格の中でも最上位に位置し、設計、製造、性能試験などで厳密な品質管理を求められている。神戸製鋼所は現在、最大1万気圧の均一加圧、3000℃の熱間処理に対応できる熱間等方加圧(HIP)装置、冷間等方加圧(CIP)装置を事業展開しており、NEDOのFC実用化プロジェクトの材料物性試験装置としても採用されている。
(日刊工業新聞04年6月24日)
14.水素ガス漏洩と火炎検知技術
 四国総合研究所(高松市)は、水素の可視化装置を開発したと発表した。紫外光・赤外光カメラとレーザー光などを組み合わせることにより、水素の火炎およびガスの鮮明な画像を得ることに成功した。モニター上にそれらを表示、目視でその位置を確認することができるので、遠隔から安全確実に水素火炎や水素ガスの漏洩箇所の特定が可能になった。FCシステムや水素ステーション向けの安全装置として使用できる。従来の検知器では、着火位置やガス漏洩箇所の特定が難しく、誤動作が多いことが課題であった。
(電気新聞04年6月25日)
15.マイクロFC(MFC)の開発と事業化
(1)室蘭工科大学発VB
 マイクロFCの開発を目指して、室蘭工科大学発のベンチャー企業“ハイドロデバイス”(社長;渡辺正夫客員教授)が6月1日に設立された。同社のFCの動作メカニズムは、まず細かい傷をつけた20〜50μmのアルミ微粒子に水をかけ、水分中の酸素とアルミニウムを結合させることにより水素を発生させる。これを特殊なゲル電解質膜で空気中の酸素と反応させ、発電する仕組みである。約20℃の常温で動作し、反応が止まると、水とアルミニウムを補充して発電を再開させることができる。既に出力4W機の開発に成功しており、現在20WFCを開発中である。早ければ05年春に、700〜800gの軽量FCが4万円程度で発売される。
(北海道新聞04年6月2日)

(2)NTT−AT
 NTTアドバンステクノロジー(NTT−AT)とその子会社は、MFCやバイオテクノロジー向けに、孔径1μm程度の均一な微細孔を規則的に加工成形したフッ素樹脂シート(PTFE膜)を開発した。具体的には半導体微細加工技術を適用、それに1部X線を使用して10μm厚の薄膜に、形状・寸法・孔密度を制御した均一な微細孔を形成する。DMFC用電解質膜の作成に役立つと期待されている。7月から販売開始の予定。
(電波新聞、化学工業日報04年6月11日)

(3)国際標準化
 6月30日から横浜で開催されるIEC/TC105専門委員会国際会議では、携帯機器用マイクロFCの作業部会として性能部会が新設される予定であるが、性能部会の国際議長に日立製作所開発本部の横山主幹技師長が就任する見込み。同じく10月にシカゴ会議で設置される互換性作業部会では、東芝の上野デイスプレイ部品材料統括技師長が国際議長に就任の見込みである。
(電気、日経産業、日刊工業、電波新聞、化学工業日報04年6月17日)

(4)アルプス電気
 アルプス電気は、DMFC向けに、各種センサーや水素を供給するマイクロポンプ、液体バブルなどの主要な制御部品などを開発した。センサー類では、水素や酸素の供給状態や化学反応のコントロールを行うデータ監視センサー、メタノールの液面レベルを監視する液面レベルセンサー、傾斜センサー、水素やメタノール濃度センサーなどを開発している。モバイル用FC向けに事業化を目指す。
(化学工業日報04年6月22日)

(5)東芝
 東芝は6月24日、小型電子機器向けに、親指サイズの超小型DMFCを開発したと発表した。縦56mm、横22mm、厚さが4.5〜9.1mm、重さは8.5gで発電出力は100mW。燃料の循環は小型化に適したパッシブ型を採用、電解質膜の最適化を行うとともに、電極内に配置する触媒をさらに微粒子化して一層の小型化を実現した。2mLの高純度メタノール燃料で、携帯用音楽プレーヤーなら最長20時間駆動させることができる。2年後を目途に出力を2Wまで高め、07年の実用化を目指す。
(読売、朝日、毎日、日本経済、産経、電気、日刊工業、日経産業、電波、日刊自動車、日刊建設工業新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報04年6月25日)
16.FC関連計測技術および製品の紹介
 チノーはDMFC用メタノール濃度計を、6月1日に発売する。検出器、測定セル、光ファイバー、接続ケーブルで構成され、測定セルを通過するメタノール水溶液に赤外線を照射、吸収減衰した受光量をセンサーでとらえて濃度を算出する仕組みとなっている。価格は一式255万円から。
(日刊工業新聞04年6月1日、電波新聞6月2日)
17.FC教材用キッド
 ケミックス(相模原市)は、PEFC(発電出力120W)で動くカート(全長約1.6m、幅約0.8m)を、小学生向け教材として開発した。水素200L分を水素吸蔵合金製タンクに蓄え、時速4〜6km/hで1時間程度走行できる。04年夏にも発売する。
(日経産業新聞04年6月16日)

 ―― This edition is made up as of June 25, 2004――

・A POSTER COLUMN

福岡に水素エネルギー利用技術の研究開発拠点設立
 トヨタ自動車や新日鉄、新日本石油など約60社と九州大学、福岡県は共同で、福岡の九大新キャンパス内(05年開学予定)の”水素利用技術センター”に、水素エネルギー利用技術の研究開発拠点を開設する。7月には推進機関”福岡水素エネルギー戦略会議”が発足、会長には新日鉄の八木副社長、副会長にはトヨタの渡辺専務が就任する模様で、事務局は福岡県におく。戦略会議には日産自動車、松下電器産業、日立製作所、三菱商事なども参加を予定しており、産業界から幅広く参加を募って先端技術の集積を目指すとしている。
(日本経済新聞04年5月29日,西日本新聞6月2日、鉄鋼新聞6月9日)
 

超微細黒鉛ナノチューブ(GNT)の開発
 「黒鉛のテープをらせん状に巻いて固めた超微細なチューブを開発し、それを“グラファイトナノチューブ(GNT)”と名づけた」と、科学技術振興機構“相田ナノ空間プロジェクト”の福島研究員らが雑誌“サイエンス”に発表した。カーボンナノチューブ(CNT)に似た性質を持つが、簡単な製法で効率よく生産できる。GNTの長さは十数μm、太さはCNTのそれに比べて10倍強で20nm、表面は水になじみやすい。相田東大教授は「CNTの生成反応には高温、高い真空度という過酷な条件が必要であるが、GNTは化学処理したシートをある溶剤に入れ、温めながら溶かしてから冷やせば、自然に合成される」と簡単な製法のメリットを強調している。
(フジサンケイビジネスアイ04年6月4日)
 

DMEの実用化を目指した実証実験
 北九州市立大学、九州電力、Jパワーなどが参加する九州DME研究会(藤本北九州市立大学教授)は、05年度にも北九州市でDMEの実用化に向けた実証試験を開始する。試験では自動車、FC、デイーゼル発電機など複数の利用方法を同時に検証する他、その運転情報などをデーターベース化して、DME利用技術の確立に生かすとしている。
(電気新聞04年6月9日)
 

東ガス管内で都市ガスコージェネ累積設備容量が100万kW突破
 2003年度末で、東京ガス管内の都市ガスコージェネレーション累積設備容量が100万kWを突破、前年同期比17.3%増の107万2,000kWになった。最近10年で3倍に増加、特に産業用の伸びが著しい。設備容量の内訳は、民生用が同9.5%増の31万2000kW、産業用が同20.8%増の76万kWであった。
(電気新聞04年6月10日)
 日本ガス協会のまとめによると、2003年度末における全国の都市ガスコージェネレーションの累積設置容量は、前年度比10%増の295万6000kW、設置件数は123.7%増の5,799件であった。家庭用は、発電出力1kWのガスエンジンコージェネ“エコウイル”が爆発的に普及したため、設置件数が463.4%増の2,941件と大幅に増加した。
(電気新聞04年6月15日)
 

シャープ、ニューメキシコ州と太陽光発電・FCなどの技術開発で提携
 シャープは、6月16日「アメリカ・ニューメキシコ州と、太陽光発電やFCなど新エネルギー技術開発を共同で進めることに合意した」と発表した。同州にはサンデイア国立研究所やロスアラモス国立研究所など有力な研究施設が立地するとともに、州立大学が太陽光発電の研究に取り組んでいる。州政府が橋渡し役となって、州内の研究施設とシャープとの共同研究に着手する。
(読売、朝日、毎日、日本経済、産経、日経産業、日刊工業、電波新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報、河北新報04年6月17日)