第96号 水素エネルギー社会のモデル実証研究
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.FC関連規格や試験法に関する国際標準化
3.海外政府機関の施策
4.SOFCの開発
5.定置式PEFC実証実験
6.FCV最前線
7.FC駆動の鉄道車両
8.水素ステーションの建設と実証試験
9.水素の製造および改質技術動向
10.水素エネルギー社会のモデル事業
11.ポータブルおよびマイクロFC関連技術開発
12.FC計測装置の開発と事業
13.教材用FCキッド
14.その他のFC関連活動
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)経産省2004年度エネルギー関連予算
 経済産業省の2004年度予算は、一般会計で前年度比2.7%減の8,652億円となった。又4つの特別会計は、石特6,242億円、電源開発促進対策5,033億円、特許1,416億円、貿易再保険1,576億円となっている。環境エネルギー関係では、地球温暖化対策としてCO抑制を引き続き進めるとともに、FC、水素エネルギー分野の技術開発に重点配分した。エネルギー対策は、0.9%増の9,603億円、FC開発関連では、7.2%増の329億円を計上した。
(厚生福祉5183号04年3月19日)

(2)高温ガス炉の日米共同開発
 日米両政府は次世代原子力発電の技術開発を共同で進めることで合意した。両政府が共同で開発する原子力技術は、冷却材にヘリウムガスを使い、1000℃近い高温熱を発生する「高温ガス炉」で、軽水炉に比べて設備が小型で分散型電源に適している。日本原子力研究所は、高温ガス炉を熱源として水を熱化学的に分解し、水素を生成する技術を開発している。共同開発は水素生成技術の開発とそれによる水素供給も視野に入れている。
(朝日新聞04年4月4日、日本経済新聞4月22日)

(3)環境省
 環境省はグリーン購入法に基づく04年度の調達方針を決定した。それによると、一般公用車における低公害車については、ハイブリッド自動車6台、FCV1台(継続リース)、排出ガス75%低減かつ省エネ法基準達成車16台を予定している。
(化学工業日報04年4月5日)

(4)NEDO
 NEDOは、FCなどの新エネルギーを利用した分散型電源と系統電力を組み合わせ、異なる品質の電力を供給するシステム開発プロジェクト“品質別電力供給システム実証研究”に取り組む。システム構成では、系統電力が停電した場合、開閉器を自動制御して、容量は限られるものの分散型電源から必要な電力を供給し続ける仕組みを構築する。産業界などから具体案を公募し、4年間をかけて実現の可能性を実証する。
(日刊工業新聞04年4月15日)

2.FC関連規格や試験法に関する国際標準化
 日本自動車研究所が、NEDOの補助金を受けて進めているFC用燃料の規格や燃費試験などが、国際標準に採用される見通しとなった。耐久性向上に向けた単セルの効果的な試験方法も開発し、この試験基準も国際標準化することを目指す。
FC車の水素規格は純度が99.99%以上で、COは0.2ppm以下、硫黄分は0.2ppb以下とし、これらのデータはISOや国際水素経済パートナーシップ(IPHA)で認められ、日本規格が05年までに採択される。
FC車の燃費試験については、±1%の精度で燃費消費量を算出する手法として、水素容器重量の変化と容器内の圧力、温度、容積の変化の関係を求める2通りの方法をまとめており、いずれの方法の選択も有効であると述べている。
単セル評価の基準については、外形標準化装置と手法を開発した。MEAを評価するため、MEAをセットした評価セルを外側から厚さ12mmの締め付け板、絶縁シート、集電板(銅に金メッキした材料)、セパレータでセットし、手順を組んで評価する。試験評価装置は1台50万円で販売を開始、これまでに国内で100台が販売された。
(日刊工業新聞04年4月13日)

3.海外政府機関の施策
 アメリカDOEは、アメリカ研究評議会に、水素経済に関する技術的、政策的問題の調査を依頼、特に技術の現状、将来のコスト評価、CO排出量、水素の供給・貯蔵・利用に関する問題点、DOEの水素研究開発を検討するよう求めた。これに対して学術研究会議は「電気分解による水素製造は、経済的であればCO削減に大きく貢献する。DOEは電解槽の開発と、原子力や補助金を受けていない再生可能エネルギー源からの電力による水素製造コストの大幅削減に力を入れるべきである」と勧告している。
(原子力産業新聞04年4月1日)

4.SOFCの開発
 三菱マテリアルは、3つの低温動作SOFCスタックを組み合わせた3kW級発電モジュールを、関西電力と共同開発したと発表した。安定した運転性能を確認し、かつ55.3%(DC:LHV)の発電効率を達成した。今後はセル、モジュールの高性能化に取り組み、06年度末を目途に、数十kW級システムの実用化、商品化を目指す。
(電気、日経産業、日刊工業、フジサンケイビジネスアイ、鉄鋼新聞、化学工業日報04年3月30日、日経産業新聞4月6日)
5.定置式PEFC実証実験
(1)ユアテック
 東北電力グループのユアテックは、NEFの「定置用FC実証研究」の一環としてPEFCの実証運転を開始した。同社の人材開発センター(宮城県)内に、アメリカのプラグパワー製で都市ガス改質型の出力5kWPEFCシステムを設置し、1年間に亘り運転して業務用としての実用性を評価する。
(電気新聞04年3月31日、日経産業新聞4月8日、河北新報4月13日)

(2)松村物産
 松村物産(金沢市)は4月7日、NEFの定置式FC実証研究の一環として、金沢市駅西本町の長田給油所に、新日本石油が貸与するナフサ改質出力5kWPEFCシステムを設置、実証運転を始めた。
(北国新聞04年4月8日、日本経済新聞4月9日、日経産業新聞4月14日)

(3)MHI・広島ガス・広島大学他
 三菱重工広島研究所を中心に広島ガスなど広島地区に拠点を置く企業5社と広島大学が共同で、マンションなど集合住宅向け都市ガス利用PEFCシステムの開発に乗り出している。50〜100所帯を対象に、大型の都市ガス改質装置を1ヵ所に設置し、水素を配管で各所帯のPEFCに配送する仕組みであり、初期投資を半分に、又保守管理の費用も大幅に削減されるものと期待されている。05年から参加企業の社宅や寮にシステムを設置し、実証試験に入る意向である。
(中国新聞04年4月17日)

(4)大阪ガス
 大阪ガスは4月21日、松下電器産業、三洋電機、東芝IFC、荏原バラードの4社と個別に開発を進めていたPEFC家庭用コージェネレーションシステムについて、引き続き共同開発を継続していくと発表した。メーカー選定では性能、耐久性、コスト、信頼性の4項目で判断しているが、結果はまだ満足できる状態には至っていない。特に耐久性とコストに重点が置かれており「耐久性では4万時間は欲しいところであるが、まずは2万時間」と述べているが、現状ではフルスタック運転で1万時間以下である。コストは生産量によるが、05〜06年での製造価格は500万円/kWであり、これが1万台までいけば100万円台に下がると見込まれている。
(産経、電気、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ04年4月22日)

(5)新日本石油
 新日本石油は、LPG改質家庭用PEFCを05度末に実用化するため、国が進めようとしているモニター制度を活用して、低コスト化や耐久性など実用化に向けた開発ステージに移行する。実用化では、基本的にDSS運転で2万時間の耐久性、発電効率34%を目指している。
(日刊工業新聞04年4月23日)

6.FCV最前線
(1)日産自動車とコスモ石油
 日産自動車は、アメリカでも同社製FCV“エクストレイルFCV”による公道試験を04年内に開始すると発表した。カリフォルニア州のみならず、暑さの厳しいアリゾナ州でも走行する。
(日刊工業新聞04年3月30日)
 日産自動車は4月7日、エクストレイルFCVを、神奈川県と横浜市にそれぞれ1台ずつリース販売したと発表した。同社の販売はこれで3台目。
(日経産業、日刊工業、日刊自動車、鉄鋼新聞、フジサンケイビジネスアイ04年4月8日、日刊自動車新聞4月16日)
 日産自動車とコスモ石油は、FCVの航続距離を大幅に伸ばすため、高圧水素(70MPa)燃料装置を開発する。コスモが中心となって、超高圧に対応できる燃料充填装置を、日産が中心になって超高圧の水素ガスタンクを開発する。
(日刊自動車新聞04年4月2日)

(2)ブリッジストンとDCJ
 ブリッジストンとダイムラークライスラー日本(DCJ)は4月5日、小平市のブリッジストン技術センターで、FCV“F−Cell”の納車式を行った。ブリッジストンがDC社と03年に締結した“F−Cell グローバルプログラム・パートナーシップ”に基づく実証試験計画に基づくもので、車両のボデイーにはブリッジストンが開催した絵画コンクールの優秀作品がデザインされている。
(読売、日経産業、日刊工業、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ04年4月6日)
 DCJは日本で、年内を目途に企業や自治体などに向け、メルセデス・ベンツAクラスをベースとした量産FCV“F−Cell”10台を納入する計画である。同社は03年から04年にかけて、日本、ドイツ、アメリカ、シンガポールの4カ国で60台のF−Cellを導入する“F−Cell グローバルプログラム”を進めている。車両提供を受ける企業は、年間1,200万円をDCJに支払い、DCJは1年の内60日間車両を預かって、メンテナンスや日常の走行条件下でのデータを収集する。
(日刊自動車新聞04年4月14日)

(3)ホンダ
 ホンダはニューヨーク国際自動車ショウで、独自のPEFCスタックを搭載したFCVの公道テストを、アメリカのカリフォルニア(4月)およびミューヨーク(今秋)の両州でも開始すると発表した。カリフォルニア州では、ホーム・エネルギー・ステーション(HES)から水素の供給を受ける。
(日本経済新聞04年4月8日、日経産業、日刊工業、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ4月9日)

(4)GM
 GMは4月14日、MITなどアメリカ名門大学を巻き込んだ産学連携プロジェクトを立ち上げた。各大学のビジネススクールなどと協力し、FCVの普及を進める方法などを研究する。ハーバード大学にも声を掛けており、年内にスタンフォード、デユーク大学など5大学で同様の説明会を開く。
(日経産業新聞04年4月16日)

7.FC駆動の鉄道車両
 鉄道総合技術研究所は4月16日、出力30kWPEFC駆動による電車の模擬試験に成功したと発表した。走行模擬試験装置上で実際の通勤電車の1/3の性能で、50km/hまでの安定した加速を実現した。2010年をめどにFC列車の実用化を目指す。
(東京新聞04年4月17日、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ4月19日)

8.水素ステーションの建設と実証試験
(1)屋久島ゼロエミッションプロジェクト
 ホンダ、太平洋セメント、昭和電工と鹿児島大、国連大学などの産学グループは、屋久島において、水力発電による水電解で製造した水素を使った水素ステーションを建設、水素をホンダのFCV“FCX”に供給して公道走行実験を行う「屋久島ゼロエミッションプロジェクト」を4月にも始める予定である。屋久島電工が提供する施設内に、昭和電工の水素製造装置を使い、鹿児島大学が水素ステーションを建設、一方ホンダは降雨量が多く、気温差が激しい屋久島の環境でFCVの走行試験を実施する。又同グループは、家庭用FCの普及なども視野に入れて、水力で水素エネルギーシステムを商用化した場合の経済性などについて調査する。
(日本経済新聞04年4月5日、読売、毎日、日経産業、日刊工業、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ4月6日、西日本新聞4月7日、南日本新聞4月21日)

(2)新日本製鉄等
 新日本製鉄、東邦ガス、日本酸素は共同で、05年に開催される日本国際博覧会(愛知万博)の会場に水素ステーションを建設、会場間を走行するFCバスに水素を供給する。新日鉄名古屋製鉄所(東海市)のコークス炉から副生物として発生する水素の純度を高めて輸送・貯蔵するオフサイト型と、都市ガス改質のオンサイト型の2基となる。バス40台分に相当する約2,000mの水素を1日で製造することができる。東邦ガスはステーションを設計するとともに都市ガスを供給、日本酸素は水素供給の制御ノウハウを提供し、ステーションを運営する。
(日本経済新聞04年4月10日)
 エンジニアリング振興協会は、愛知万博で使用するFCV用水素ステーションの建設業者の入札結果を公表した。10件の提案の中から新日本製鉄、東邦ガス、日本酸素が提案しているオンサイトとオフサイト水素製造複合施設を採択した。
(化学工業日報04年4月14日)

(3)アメリカ・カリフォルニア州
 アメリカ・カリフォルニア州のアーノルド・シュワルツネッガー知事は、4月20日、今後10年内にFCV用水素ステーションを主要な高速道路に設置する知事令に署名した。
(フジサンケイビジネスアイ04年4月22日)

(4)出光興産
 出光興産は4月22日、灯油改質型“秦野水素ステーション”を4月27日にオープンすると発表した。50Nm/hの供給能力を持つ。JHFCプロジェクトの一環。
(日刊工業新聞、化学工業日報04年4月23日)

9.水素の製造および改質技術動向
(1)岩谷産業と関電
 岩谷産業は3月30日、液体水素の生産能力では日本最大となる新工場を大阪府堺市に建設すると発表した。06年4月の稼動を予定。
(読売新聞04年3月31日)
 岩谷産業は、関西電力と共同で液体水素などの製造会社「ハイドロエッジ」を4月1日付で設立すると発表した。資本金は2億4,500万円、堺LNGの用地内に敷地面積約3万mの工場を建設し、6,000L/hの製造能力を持つ液体水素プラントを設置する。液体水素以外に液体酸素や液体窒素も製造し、初年度30億円の売り上げを見込んでいる。
(日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ04年3月31日、電気新聞4月20日)

(2)原研
 日本原子力研究所は大洗町の高温工学試験研究炉(HTTR)で、高熱を利用した水素製造技術の予備実験を始めた。原子炉から950℃の熱を取り出し、それを水の熱化学分解に利用する技術で、熱利用効率を70%に高めることを目指す。これはヨウ素と硫黄を循環物質として使う熱化学法ISプロセスと呼ばれ水素製造手法であり、現在50L/hの水素を得る基礎試験装置で実証試験を行っている。同装置を自動制御化し、04年度には200時間の連続運転に入る計画である。
(日経産業新聞04年4月2日、日刊工業新聞4月14日)
 日本原子力研究所は4月19日、高温ガス炉の出口配管で950℃の温度を記録したと発表した。
(日経産業新聞04年4月20日)

(3)三菱商事
 三菱商事は、水素製造市場に参入する。水を固体高分子型電解槽で電気分解して高圧水素を直接製造する技術を独自に開発し、世界約40カ国に特許を申請した。同社開発によるこの装置は“HHEG;High compressed Hydrogen Energy Generator”と呼ばれ、水素と酸素の両方を同圧で電解質膜の両側に蓄える方式であり、圧縮機を要しない点において大きな特徴を持つ。05年に400気圧の装置を開発、販売する計画。30mの水素を1時間で製造でき、価格は1億円強の見込みである。07年までには700気圧以上の装置も商品化する予定である。
(日本経済新聞04年4月13日、日経産業新聞4月15日)

10.水素エネルギー社会のモデル事業
 早稲田大学の勝田正文教授を中心に、大阪府立大学、三洋電機、アイテック(堺市)など7社が参加して、埼玉県本庄の早稲田地域で水素エネルギーモデル社会を実証するプロジェクトを始めることになった。廃アルミや廃シリコン、バイオマスから水素を製造、水素吸蔵合金で貯蔵・輸送して電源やFC駆動車椅子に利用する他、吸蔵合金装置のヒートポンプなど水素利用技術開発を、04年度から3年をかけて実証する。早大・環境総合研究センターが環境省から地球温暖化対策技術開発事業の補助を受け、3年間で約20億円を投じる。廃アルミにカセイソーダなどのアルカリ溶液を混ぜ、水酸化反応で水素を取り出すシステムはアイテックが開発しており、バイオマスをガス化して水素を生成する装置は三洋電機が担当する。又早大はFC車椅子を製作、大阪府立大と早大は、ランタンニッケルで重量当たり水素吸蔵効率を倍増する合金を開発することにしている。勝田教授は「プロジェクトを通じて長期的な水素社会へのロードマップを発信したい」と語っている。
(日刊工業新聞04年4月6日、日本経済、日刊工業、電波新聞4月23日)

11.ポータブルおよびマイクロFC関連技術開発
(1)スター精密
 スター精密は圧電素子を駆動源として、消費電力が極めて少ないマイクロポンプ“SDMP105”を試作した。ポンプの内部空間に設けられた隔膜を振動させることにより液体や気体を輸送する。流量は周波数によって制御する。マイクロFC向けの需要を狙う。
(静岡新聞04年4月9日、日経産業新聞4月13日、電波新聞4月16日)

(2)サムソン
 韓国のサムソン電子とサムソン先端技術研究所(SAIT)は、100ccのメタノール燃料でノートPCを充電なしで10時間以上連続駆動できる高性能DMFCを開発したと発表した。超微細触媒分子を効率よくサポートする炭素素材“メソポーラス”を使用、これによって触媒層の50%縮小に成功した。又メタノールのクロスオーバーを90%以上防止するユニークなナノ合成技術も開発した。DMFCの効率は、並列燃料供給フローと呼ばれるユニークなスタック設計によって最適化され、高効率コントローラー、サムソンの電子パッケージング技術を一体化して、サムソンのノートPCに搭載される。開発の指揮を執るヒュク・チャン博士は「われわれはエネルギー密度、コストを含めて商用基準を達成するため、更に幾つかの追加研究を計画している。サムソン電子のノートPCシリーズにおけるDMFC導入については、成功を確信しており、将来的には携帯用および住宅用電力供給源をFCに置き換えることを目標にしている」と述べている。
(電波新聞04年4月9日)

(3)東京精電
 東京精電は大同メタル工業が開発したPEFCと5気圧の水素吸蔵合金ボンベを組み合わせて、ポータブル交流電源“FCAC−1000”を開発し、7月を目途に発売する。250Wの出力で2.2時間、1kWで1時間の発電が可能で、本体の大きさは幅38cm、奥行き60cm、高さ61cmである。鉛蓄電池やニッケル水素電池を備えており、待機時に蓄電しておくことができる。災害時や停電時の他、キャンプ地などでの利用を見込んでおり、価格は200万〜250万円の予定、年間30台の販売を目指す。
(日経産業、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ04年4月20日)

12.FC計測装置の開発と事業
 チノーはPEFC単セル用評価試験装置2機種を4月9日に発売する。価格はコンパクト型が465万円から、高機能コンパクト型は909万円からで、初年度200セットの販売を狙う。
(日刊工業新聞04年4月9日、電波新聞4月10日)
13.教材用FCキッド
 マウビック(浜松市)は、アメリカのフューエルセルストアーと業務提携し、教材用FC関連製品のインターネット販売に乗り出す。そのためサイト“フューエルセルストアー・ジャパン”を開設し、年間1,500万円の売り上げを目指す。出力0.2W〜1Wの教材用FCキッドが4,000円からで、出力1kWの実用FCシステムなども受注する。マウビックはフ社サイトの日本語版を運営しており、扱い商品は関連部品、材料を含めて400種にのぼり、そのうち100種は在庫を持っているので、受注の翌日には発送できるという。
(日刊工業新聞04年4月22日)

14.その他のFC関連活動
(1)同志社大
 同志社大学は4月30日、次世代コージェネレーションやFCなどの研究拠点「エネルギー変換研究センター」を京都府の京田辺キャンパスに開設した。延べ床面積は2,500m2で、建設費は約7億5,000万円、設備費は約5億円である。
(日経産業新聞04年3月31日)

(2)青木精工
 青木精工(横浜市)は、板厚50μmから0.3mmまでの極薄金属板の溶接加工に対応できる技術を開発し、真空度の高さが要求されるFCケース向けなど、ステンレス製薄板の溶接加工事業に乗り出した。04年4月から受注活動を本格化する。
(日刊工業新聞04年4月5日)

(3)東洋ラジエーター
 東洋ラジエーターは、ごみガス化発電システム向けに950℃の温度に耐えられる小型のプレートフィンタイプ熱交換器を開発した。三菱マテリアルと共同でニッケルを主成分とする耐熱合金を開発、それを熱交部品の素材に採用した。SOFCや水素改質システムなどへの応用を目指す。
(日経産業、日刊工業新聞04年4月7日)

(4)循環型社会研究所
 荏原、東芝、清水建設の3社は、廃棄物を有効利用してエネルギーとして循環させ、地域のエネルギー供給の自立を支援する新会社“循環型社会研究所”を04年4月末にも設立する。地域の実態に合わせて、FCなどの新エネルギーやリサイクル技術を組み合わせた最適なシステムを提案する。資本金は5,000ないし6,000万円。三井物産、日揮などにも出資を呼びかけており、最終的には7~8社が参加する見通しである。
(日本経済新聞04年4月10日)

(5)豊橋技術科学大学等
 中部ガスとガステックサービス(豊橋市)は、豊橋技術科学大学と共同で、FCに関する研究を開始した。水素の貯蔵、供給やFCに関する技術の習得が目的で、豊橋技術科学大学が設立した未来ビークルリサーチコア協議会に2社が参画した。中部ガスと豊橋技術科学大学は、家庭用PEFCシステムの効率化を予測するソフトウエアを開発するとともに、PEFCの運転条件変更による影響を測定し、家庭用PEFCの高効率化、汎用性の拡大を狙う。ガステックサービスと豊橋技術科学大学は、耐水性水素吸蔵合金を利用した水素の貯蔵、供給システムの開発を目指す。チタン・ジルコニウム・鉄・マンガン系合金の表面に酸化ケイ素の膜を作って耐水性を持たせるとともに、合金重量当たりの水素吸蔵量を2.5%に引き上げ、水素放出温度は100℃以下に下げることを計画している。
(日刊工業新聞04年4月13日、日経産業新聞4月19日)

 ―― This edition is made up as of April 24,2004 ――

・A POSTER COLUMN

水素エンジン自動車の普及は2010年に累計4万台との予測
 矢野経済研究所は、水素を燃料とする水素エンジン自動車の普及台数が、2010年には累計で4万台に達するとの予測を纏めた。FCVよりも先に普及が拡大するとしている。水素エンジン自動車の技術開発で先行しているのはBMWであるが、同社は最高級車“7シリーズ”の現行モデルに加えて、05年にも水素エンジン仕様を設定して発表する予定である。日本ではマツダがスポーツカータイプの四ドアセダン“RX−8”に水素エンジンを搭載、3年後を目途に販売する予定で、アメリカのフォードも技術開発を進めている。
(フジサンケイビジネスアイ04年4月9日)

わが国における最終エネルギー消費のピークは2014年
 総合エネルギー調査会の需給部会が4月12日に開催され、資源エネルギー庁が「省エネルギーが進展した場合、最終エネルギー消費量は2014年をピークに減少する」との試算を発表した。従来の2022年ピークという見通しに比べて大幅に前倒しされた。すなわち、エネルギー消費が増加している民生、運輸部門で新たな省エネ策を採用し、FCなどの新エネルギーの導入を進めれば、エネルギー消費は14年に原油換算4億1,200万kLでピークとなり、30年には3億8,700万kLと95年時点の水準まで減少すると予想している。
(中国新聞04年4月11日、日刊工業、電気新聞04年4月13日)


NEF、電事連、中電協による提言
 新エネルギー財団(NEF)は、FCや廃棄物発電など新エネルギー5分野について導入促進に必要な提言をまとめた。FCについては、導入量が減少傾向にあるPAFCについて、公的施設が率先してモデル導入すること、そして技術開発の支援では、PEFCに予算が集中していると指摘、MCFCやSOFCなども強化してバランスの取れた開発を進めることが重要であると述べている。MCFCについては、COの分離・濃縮機能を持つことから火力発電と組み合わせたCO回収システムの開発・実証試験の実施が必要としている。又SOFCでは、10〜100kW程度のコージェネやガスタービンとのコンバインドシステムの開発を支援するとともに、低コストやコンパクト化に向けた要素技術の開発支援を継続していくことなどを求めた。
(電気、日刊工業新聞04年4月20日、化学工業日報4月21日、フジサンケイビジネスアイ4月22日、日経産業新聞4月23日)
 電気事業連合会と中央電力協議会は2004年度の技術開発計画をまとめた。分散型電源の増加に対応できるような系統技術など、電力品質の確保や、石炭ガス化発電(IGCC)など地球環境保全のための技術に比重を置く。FCについては、「MCFCやSOFCなど高温型FCの開発を継続し、MCFCについては、04年度内に高性能モジュールを作製してセルの高積層化技術の確立を目指す」としている。
(電気新聞04年4月20日)



ガス器具市場の分析と展望
 ガス需要の1つの目安となる都市ガスは、現在約2,500万の家庭に、快適な暮らしを日々届けている。ガスの需要はこの10年間で2倍近くにまで拡大した。なかでも工業用需要は著しく伸び、産業のあらゆる分野へ広がっているが、全ガス需要の約40%は家庭用需要で占められている。特に都市ガスに限ってみると全ユーザ(2,600万件)の内90%以上(約2,400万件)が家庭用と推定されている。
 家庭用ガス機器の需要で、台数ベースで多いのは、ガステーブルで年間約490万台、次いで瞬間湯沸かし器が約200万台、以下ふろがま;約140万台、ファンヒーター;57万台、温水給湯暖房機;40万台、炊飯器;33万台、調理器;7万7,000台、ストーブ;6万5,000台と続く。最近は新しい商品の登場(ビルトインガスコンロ、床暖房など)により、ガス機器の市場は今後も拡大していくものと見られている。加えて天然ガス自動車の普及、家庭用FCコージェネレーションの導入によって、新しい形態や分野においてガス機器が発展するものと期待されている。
(電波新聞04年4月23日)