第95号 フラーレン電解質膜のDMFCを試作
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.海外政府関係機関の施策
3.PAFCコージェネレーションの導入
4.MCFCの事業展開
5.SOFCの研究開発
6.PEFCの要素技術開発
7.家庭用PEFCの開発、実証、および事業展開
8.業務用PEFCの実証研究
9.FCV最前線
10.水素生成技術の開発と実証
11.水素貯蔵技術の開発と実証
12.水素ステーションの設計
13.新燃料技術の開発と実証
14.情報端末用FCの開発
15.FC関連計測機器
16.教材用FCの発売
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)文部科学省・日本原子力研究所
 日本原子力研究所は、アメリカDOEに対して、05年以降にアイダホ州に新設される高温ガス炉による水素製造に協力、大量生産に向けた基礎技術を蓄積する方向で両国間の調整を進めている。高温ガス炉では、ヨウ素と2酸化硫黄のサイクルを使うことにより、水を高温熱化学分解して水素を生成することができる。アメリカは80年代末までに高温ガス炉の発電用原型炉を営業運転するまでに至ったが、コスト低減が図れず、現在では運転を中止している。一方原研は試験研究炉を大洗研究所に建設し、01年には850℃の熱を安定的に取り出すことに成功している。DOEは原研に共同研究を申し入れた。
(朝日新聞04年3月3日)

(2)経済産業省
 経済産業省自動車課とEC企業総局自動車課は東京で会合を持ち、FCVや、中国・韓国・ロシア自動車市場、燃費・地球温暖化対策などについて意見を交換した。
(日刊自動車新聞04年3月8日)
 経済産業省は水素社会実現に向けて、2030年までにFCVを累計で1500万台普及させ、定置式は1250万kWの発電規模にするとの方針を打ち出し、FC実用化戦略研究会(資源エネルギー庁長官の諮問機関)がシナリオを策定する。2020〜30年を本格的な普及期と位置づけ、FCVについては、2010年以降毎年約8万台ずつ増加、2030年には年間120万台の市場規模になるとのシナリオを描いている。定置式については、2005年から市販が始まり、2010年には累積で220万kWに達し、更に一般家庭やオフィスに設置した複数のFCを相互接続して電力を融通し合う「マイクログリッド」が普及、2020年には1,000万kWの規模になると予想している。
(読売新聞04年3月10日、日経産業、電気、日刊工業、日刊自動車、中日新聞、化学工業日報3月12日)
 経済産業省・資源エネルギー庁は、05年度から家庭用FCの普及を目的に、最初の数年間はモニター販売事業として、ユーザにインセンテイブを付けて実用化を促進していく方針を固めた。FCメーカが07年度以降、大量生産への判断を下せるよう国がバックアップしようとする政策で、補助ではなく、コスト的に進んだ企業に優先的にインセンテイブ額を高め、開発競争を刺激する。最初に登場するFCは寿命が2万時間程度になると思われるので、3年間の運転期間でのモニター機導入となる見込みである。3〜4年後には本格事業化に向けた補助制度に切り替え、年間1万台の生産体制を目指す。
(日刊工業新聞04年3月17日)
 経済産業省は、出力10kW以下のFCで運転停止時に窒素でパージする規制を廃止する省令改正を04年4月に施行する。
(日刊工業新聞04年3月24日)

2.海外政府関係機関の施策
 国連は、携帯機器用マイクロFC用燃料であるメタノールについて、航空機への持ち込み規制の緩和に関連して、危険物輸送専門委員会を開催、04年内に持込基準を決定することを目途に本格的な論議を開始した。FC実用化で先行する日米を軸に欧州を加えて、議論が進められる見通しである。メタノールは可燃物かつ毒性があり、現在は航空機への持ち込みは認められていない。したがって、機内持ち込みの国際合意が実現すれば、モバイルFCの標準化に向けた動きが加速し、量産化への基盤整備が整うことになるので、モバイル用マイクロFCの実用化を目指した開発が活発化するものと予想されている。
(化学工業日報04年3月16日)

3.PAFCコージェネレーションの導入
 岡崎信用金庫は、本部ビル敷地内にPAFCコージェネレーションシステムを完成した。富士電機システムズ製で、投資額は約1億円、本部ビルで消費する電力の約2割を賄い、原油換算で年間25,000L、CO2排出で181トンの削減効果が見込まれている。
(日刊工業新聞04年3月5日、ニッキン3月12日)

4.MCFCの事業展開
(1)丸紅
 丸紅は、アメリカFCE製出力250kWMCFCプラントを、セイコーエプソン向けに2基、石油資源開発向けに1基をそれぞれ納入した。セイコーエプソン向けは、伊那工場に設置、現在試運転中で3月中の運用開始を予定している。燃料はLNGで工場内の電力を賄う。石油資源開発向けは、同社の片貝ガス田(新潟県)に導入、同ガス田の天然ガスを直接MCFCに導入して近く運用を開始する予定である。既にキリンビール取手工場に1号機を、福岡市下水道局の西部水処理センターに2号機を納入しているので、これで納入数は合計5基となる。
(化学工業日報04年3月12日)

(2)市川環境エンジニアリング
 市川環境エンジニアリングが中心になり、三菱商事系のサンアールと要興業が共同出資で設立したバイオエナージーが、東京・城南島のスーパーエコタウン事業として、食品廃棄物をガス化、そのガスによってMCFCで発電する事業を始めることになった。リサイクル施設をMHIが建設する。1日110トンの生ごみを中温でメタン発酵し、発生したガスで出力250kWMCFC(FCE製)および750kWガスエンジン(MHI製)を並列運転し、発電電力のうち所内動力を除く電力は東電に売却する。総事業費は39億円、05年度に操業開始の予定である。
(日刊工業新聞04年3月18日)

(3)ESCO
 ESCO(エネルギー・サービス・カンパニー)事業大手のファーストエスコは、現在進めている事業のうち、FCやバイオマスを活用した電力供給オンサイト事業を積極展開する。具体的には、粗トール油などを燃料としたバイオマス発電や、LNGを燃料とした出力250kWMCFCによるオンサイト発電に力を注ぐ。バイオマス産業再生法に基づく事業再構築計画を関東経済産業局に提出して3月1日に認可された。
(電気新聞、化学工業日報04年3月2日、日刊工業新聞3月3日)

5.SOFCの研究開発
(1)第1稀元素化学工業
 第1稀元素化学工業(大阪市)は、04年内にもSOFC用次世代電解質材料スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)の量産を開始する。そのため本社工場内に専用製造ラインの新設を計画している。SOFCについては東邦ガスとの共同開発であり、東邦ガスはこの材料を採用した電解質を使い、発電効率が50%以上で小型・低価格のSOFCを実用化を目指した開発を急いでいる。ScSZはYSZに比べて導電率が2倍であり、発電効率を大幅に上昇できると期待されている。これまでの実験ではFCのサイズを半分程度にまで低減できることが確認されているし、コスト面でも有利であると予想されており、将来的には大型需要があるものと期待される。第1稀元素化学工業は、これまで量産時に求められるScSZの耐久性や低コスト対応について研究を続けてきたが、これらの問題は既にクリアしたようである。サンプル出荷はパイロットプラントで行ってきたが、来期から始まる工場の増設に合わせて専用の設備を導入し、生産量を年産数百kgから近い将来にはトン規模にまで引き上げる意向である。
(化学工業日報04年3月18日)

(2)セイミケミカル
 セイミケミカル(茅ヶ崎市)は、SOFCの電解質、空気極、燃料極、インターコネクター用複合化合物の開発を強化する。同社は高品位で環境負荷が小さいクエン酸合成法を確立しており、月産2トンの試作設備を導入してSOFCの開発に対応した体制を整える。同社のクエン酸合成法は、金属イオンの炭酸塩又は水酸化物をスラリー化し、クエン酸を反応・乾燥させて前駆体を得た後、焼成、粉砕工程を経て各種の複合酸化物を生産する仕組みである。
(化学工業日報04年3月22日)

6.PEFCの要素技術開発
 日立製作所は、PEFC用に低コストの炭化水素系電解質膜MEAを開発、4,000時間を越える連続運転に成功したと発表した。炭化水素系膜は水を吸収して膨潤しやすいが、新たに芯材を炭化水素高分子膜に複合化することにより強度を確保した。原材料には汎用芳香族エンジニアリングプラスチックを使用している。この炭化水素系高分子でイオン伝導を担うスルホン酸の修飾に工夫を凝らすことによりフッ素系と同等の伝導性を確保し、又耐熱性も実現した。フッ素系に比べて1桁以上安価である。04年内にもMEAをサンプル出荷し、08年には量産体制を確立する予定である。
(日刊工業新聞04年3月4日、日経産業新聞3月8日)
7.家庭用PEFCの開発、実証、および事業展開
(1)東京ガス
 東京ガスは、FCの家庭向け商品のリースを05年3月に始める。生産能力やメインテナンスを考えて最初は100台程度に抑える。(フジサンケイビジネスアイ04年3月8日)東京ガスは、松下電器産業、荏原グループと共同で出力1kW家庭用FCを開発中であるが、05年1〜3月頃に発売する計画で、プロジェクトチームをグループ組織に格上げし、人員も04年4月から10人程度に増やす。
(日本経済新聞04年3月8日、読売、日刊自動車新聞3月9日、電気新聞3月22日)

(2)LPG改質家庭用FC開発
 新日本石油は、NEDOの補助で進めているLPG改質技術プロジェクトから03年度で撤退し、独自の開発に全力投球する。出光興産は04年度からFCスタックメーカと組んで実用化に乗り出し、大阪ガスは04年度から改質器のライセンス供与を開始、MHIや松下電器産業もLPG改質での1kW機実証を始めた。
(日刊工業新聞04年3月8日)

(3)三洋電機
 三洋電機は、07〜08年中に耐久時間4万時間で価格が50万円を切る家庭用PEFC製品の完成を目指す。24時間連続運転ながら夜間には低出力発電(出力750W)運転を想定したシステムを、05年中に製品化する方針で開発してきたが、耐久性やコストに関する条件をクリアした普及品としての製品を完成できるのは07〜08年と予想している。この目標が達成されれば、できるだけ早い時期に年間1万台を販売したいと、同社は語っている。購入する家庭毎にエネルギー消費量を時間別に分析し、最適な制御ができるようシステムを調整し、放出熱を最低限に抑えることを計画している。又製品化当初はガス会社へのOEMとなるため、ガス会社と同社のメンテ要員が連係する形でサービスを行うが、完成品となった後は、同社独自の販売網を構築して、自社ブランド製品を発売する計画である。
(電気新聞04年3月16日)

(4)NEF
 新エネルギー財団(NEF)は、3月16日にイイノホールで「定置用FC実証研究中間報告会」を開催し、02年10月から全国13サイトで収集した1年間の運転状況を公表した。全体のデータ取得総運転時間は12サイトで3万1,540時間、最長データ取得時間3,943時間、発電効率は定格運転時の最高で32%(HHV)、排熱回収効率は46%となった。03年度は31サイトで実証実験を進めており、全サイトで系統連系試験を実施する。総合的には住人に故障時を含めて電力・熱の使用を制限したことはなく、系統連系技術ガイドラインに準拠した運転が行われた。又DSS運転や24時間連続運転は何れも計画通りの運転が実施された。改良点については、分部負荷時の効率や起動時および待機時におけるエネルギー消費に改善の余地のあること、又貯湯槽への熱の蓄え方や補助バーナーの点火タイミングなど、排熱の有効利用のための熱システムに改善の余地があることが立証された。
(電気、建設通信新聞04年3月17日)

(5)九州電力
 九州電力は、3月18日、一般家庭用に設置した天然ガス改質PEFC(荏原製作所)コージェネレーションシステムの実運転を開始したと発表した。運転データは同社総合研究所を介してNEFに提供、NEFがデータ分析を行う。期間は05年1月までの約1年間。
(電気、日経産業、日刊工業、西日本新聞04年3月19日、日経産業新聞3月24日)

(6)その他
 室蘭市内の1戸建て住宅で4月からNEFによる家庭用PEFCの実証試験が始まる。燃料はLPGで、新日本石油が開発したシステムを採用。
(北海道新聞04年3月24日)
 高知市内の民家で、家庭用PEFCの実証試験が始まった。システムは新日本石油が提供。24時間運転で750Wを上限に発電中である。
(高知新聞04年3月25日)
 岐阜県は、家庭用PEFCシステムを中津川市の「にぎわいプラザ」に設置した。燃料はLPガス。
(日刊建設工業新聞04年3月25日)

8.業務用PEFCの実証研究
(1)新日本石油
 新日本石油は、NEFの「定置用FC実証研究」に参加、灯油を燃料とする出力10kW業務用PEFCの実証試験を3月15日から品川区のコンビニエントストアで実施する。試験期間は約1年、試験データを基に効率と耐久性の向上を図り、06年度中を目途に商品化を目指す。同社はこれまでMHIと灯油仕様の業務用PEFCを共同開発してきたが、このほど発電効率31%を達成したことから、普及に向けたより詳細な実証試験を一般の店舗で開始することにした。
(電気新聞04年3月9日)

(2)出光興産
 出光興産は、灯油を燃料とするPEFCシステムの実証試験を3月18日から苫小牧で始めると発表した。IHI製5kWPEFC(幅180cm、奥行き70cm、高さ165cm)を採用、北海道製油所で働く従業員向け独身寮の敷地内に設置、58人が入居する独身寮における消費電力の1/6を賄うとともに給湯も行う。寒冷地での運転に適しているかどうかを試験する。
(フジサンケイビジネスアイ、北海道新聞04年3月18日、日刊工業新聞、化学工業日報3月19日、日経産業新聞3月22日)

9.FCV最前線
(1)出光興産
 出光興産は、3月2日、ホンダのFCXをリース購入すると発表した。契約期間は1年間でリース料金は80万円/月である。8日に東京国際フォーラムで関係者による納車式を行った。これでホンダが納車したFCVは日米で10台となった。出光興産は03年度からJHFCに参加している。
(化学工業日報04年3月3日、読売、産経、日経産業、日刊工業新聞、フジサンケイビジネスアイ3月9日)

(2)大同メタル
 大同メタル工業は、全長19cm、全幅10cm、全高8.5cmのFCVミニカー「水電解E−FCV」を製作した。工場で洗浄用などに使う純水を利用、水電解で水素を生成する05年愛知万博用ライセンス商品として、インターネット上などで売り出した。価格は1台約2万円で当面500台を販売する。
(日経産業新聞04年3月9日)

(3)JHFCセミナー
 日本自動車研究所とエンジニアリング振興協会は、03年度JHFCセミナーを開催、実証研究の成果を発表した。03年度に参加した自動車メーカは8社、インフラメーカの参加は14社となった。水素供給設備は10基となり、FCVの走行距離は03年12月末現在で延べ2万3,450km、水素供給量は203.6kgとなった。水素ステーションに関しては、エネルギー効率の定義を定め、試験データから5種類の異なる燃料および水素生産方式で、効率を算出した。
(日刊自動車新聞04年3月18日)

(4)日産
 日産自動車は3月22日、スポーツ用多目的車(SUV)をベースに開発した「エクストレイルFCV」をコスモ石油にリース販売すると発表した。
(毎日、産経、日刊工業、日刊自動車、北海道新聞、フジサンケイビジネスアイ04年3月23日)

(5)ホンダ
 ホンダは4月26日に一般公開が始まるバンコク国際モータショウにFCXを展示する。
(日経産業新聞04年3月24日)

10.水素生成技術の開発と実証
(1)新日本製鉄
 新日本製鉄は君津製鉄所にコークス炉から出る副生ガス(水素55%、メタン30%)から99.99%まで純度を高めた水素を取り出して液化する設備を完成、東京有明の水素ステーション向けに供給を開始する。液体酸素(−180℃)製造用の現有設備を活用して、200kg/日(2,200Nm3/日)の液体水素を作り出す。
(日刊工業新聞04年3月3日)
 新日鉄・君津製鉄所でコークス炉から水素を回収する実証プラントが本格稼動した。
(日経産業、日刊工業、北海道、鉄鋼新聞、化学工業日報04年3月19日、フジサンケイビジネスアイ3月22日)

(2)栗本鐵工所と大阪産業大学
 栗本鉄工所は大阪産業大学の山田修教授、同大学発ベンチャーのオーエスユー(大阪府大東市)と連携してバイオマスによる水素生成事業に乗り出す。オーエスユーが持つ1000℃を超える高温過熱水蒸気発生システムを軸に、栗本鐵工所が草木、間伐材の減容成形機や炭化装置などのプラント製作面で協力することによって事業化することを目指している。孔径50μm級の微細な多孔質材料を高周波加熱用ヒーターとして使用し水蒸気を生成、それを草木などに通すことにより発生する可燃性ガスを水素に改質する仕組みである。国土交通省と連携して、1級河川周辺から、年間14トンの草木を採取することも検討する。
(日刊工業新聞04年3月10日)

(3)JFCC
 ファインセラミックスセンター(JFCC)は、水素分離膜用にニッケルナノ粒子分散型シリカ膜を開発した。シリカ膜に水素親和性を持つニッケルを複合化させたもので、水素の透過率は分子サイズが小さいヘリウムに比べても約5倍になることを確認した。分子ふるい機能だけでは、ヘリウムよりも分子サイズが大きい水素の透過率が、ヘリウムの透過率を越えることはなかったが、約10nm径のニッケルを多孔質シリカ膜に分散させることによって、水素の透過率を大幅に高めることに成功した。今後、ニッケルの分散性などを最適化することによって、従来にない高い水素選択性を持つセラミックス多孔質膜の実用化を目指すことにしている。
(化学工業日報04年3月17日)

11.水素貯蔵技術の開発と実証
 那須電機鉄工は、3月1日、新たな水素吸蔵合金(Ti-Fe系合金)を開発したと発表した。経産省の研究開発事業として東海大学、東京都立産業技術研究所と共同で開発を進めてきた。この研究は、Ti-Fe系水素吸蔵合金をベースに、メカニカルアロイング法とナノ構造組織制御により水素の吸蔵能力を高め、安価な吸蔵合金を大量に生産する方法を確立するのが目的である。今回初期の研究目標である最大水素吸蔵量1.8wt% を実現した。
(鉄鋼新聞04年3月2日、日本経済新聞3月3日)

12.水素ステーションの設計
 東京ガスと鉄道総合技術研究所は3月4日、FCで走行する鉄道車両向けの水素供給設備の共同研究を始めたと発表した。容量や建設費などを具体的に設定して、天然ガス改質方式水素ステーションの設計作業を実施、今後はシュミレーションを重ねて問題点を洗い出す。水素製造能力は2基で3,100Nm3/h、供給水素ガスの圧力は35MPa、建設費は10〜20億程度を想定したと思われる。電車の場合は、1セットで500kWの出力が必要であり、ステーションは1回で1,000Nm3以上の水素充填能力が不可欠と見なされている。一方充填時間に制限がないので、水素を製造しながら供給することが可能であり、技術的なハードルは自動車用よりも低いと思われている。
(日本経済、電気、日経産業、建設通信新聞04年3月5日)
 東京ガスと鉄道総合技術研究所は、鉄道用の水素ステーションを設計した。天然ガスから水素を生成し、圧縮して貯蔵、線路際に設けられた水素充填装置から、1日当たり80両のFC電車に水素を供給する。
(東京新聞04年3月23日)

13.新燃料技術の開発と実証
 JFEホールデイングス、日本酸素、石油資源開発など10社が共同出資している研究法人・DME開発は、北海道白糠町で進めているDME直接合成実証プラントの試運転に成功した。容量100トン/日、DME純度99.6%を達成した。04年と05年に2〜3ヵ月間の運転を2回づつ、06年に1回運転し、早ければ07年頃に開始予定の商用プラントに向けて各種データを収集して技術の蓄積を図る。
(化学工業日報04年3月1日)

14.情報端末用FCの開発
(1)日立
 日立製作所は、ノートパソコンにメタノール燃料カートリッジ付FCを随時外付けしてそれを電源とする新方式を開発した。具体的には、デイスプレーの裏に取り付け、アダプターの差し込み口につないで使う。電源は厚みが約1cm、重さ約500gのDMFCで、濃度20%のメタノール水溶液20ccを入れたカートリッジにより、4〜5時間PCを稼動することが可能である。又DMFCの内部にはメタノールの予備タンクがあるので、メタノール燃料カートリッジの交換時にPCを止める必要はない。
(日経産業新聞04年3月17日)
 日立製作所は、3月23日長時間利用可能なFC利用PDAを開発したと発表した。05年のサンプル出荷を目指す。マイクロソフトのOSを搭載しており、パワーポイントなどの応用ソフトが使える。
(東京新聞04年3月24日)

(2)東芝
 東芝は3月17日、ノートパソコン用マイクロDMFCを試作したことを明らかにした。B5サイズのパソコン「PORTEGE M100]に接続し、動作を確認した。小型のポンプを使ってDMFCの発電時に発生する水を循環・再利用する方式を採用することによってカートリジのメタノール濃度を高め、カートリッジを小型化した点に特徴がある。3月18日からハノーバー市で開催される情報通信技術見本市「CeBIT2004」に出展する。
(日本経済、日経産業新聞04年3月18日)

(3)プロトンC60パワー
 本荘ケミカルと三菱商事が出資するプロトンC60パワー(寝屋川市)は、フラーレン誘導体(フラーレンを化学修飾して作ったプロトン伝導体)を電解質に用いたDMFCを試作、国際ナノテクノロジー総合展「nano tech2004」に出展した。この電解質は有機高分子膜に比べてメタノールが通りにくく、100℃を超えても分解しない、より安価に製作できる可能性、などのメリットがある。
(日刊工業新聞04年3月18日)
 フラーレンの応用研究開発会社であるプロトンC60パワーは、フラーレンを電解質膜に使ったDMFCを試作した。メタノールのクロスオーバーを抑えられ、水素イオンがフッ素樹脂系膜以上に移動するが、現状では電極で発生した水素イオンが効率よく電解質膜に移動しないため、フッ素樹脂系膜のDMFCに比較して出力で劣るようである。電解質膜の表面構造を工夫するなどの改良を進めて実用化を目指す。
(日経産業新聞04年3月26日)

15.FC関連計測機器
 英和はDMFC向け測定装置を販売する。新型測定装置「FCD−100」は、エフシー開発(日立市)が開発・製造を担当、英和を通じて販売する。装置の大きさは、高さ20cm、幅17.6cm、奥行き28.8cm、で価格は250万円、初年度50台の販売を目指す。
(日経産業、日刊工業新聞04年3月23日)

16.教材用FCの発売
(1)斉藤製作所
 斉藤製作所(富山県大沢野町)は、富山県工業技術センターなどと共同研究しているメタノールFCを中学、高校生向け教材として売り出す。
(北国新聞04年3月20日)

(2)ケミックス
 ケミックス(相模原市)は、FC組立キット「ペスマスター」を4月1日に発売する。出力は0.1〜0.5W、価格は3万3,000円、初年度1,000台の販売を見込む。
(日刊工業、日刊自動車新聞04年3月22日)

 ―― This edition is made up as of March 26, 2004――

・A POSTER COLUMN

プラチナ市場価格急騰
 好調な中国経済動向を反映し、亜鉛やアルミを含めたメタルインフレになっている。東京工業品取引所でのプラチナ先物相場は、4月渡しの限月物が2月26日に3,000円/gの大台に乗り、3月1日には終値が3,153円まで高騰した。今年の最高値である。田中貴金属の小売価格は、3月2日には3,216円にまで上昇した。プラチナは自動車の排ガス浄化装置の触媒に欠かせないが、FC用触媒としても使われるため、高騰が長期化すれば新技術の開発に影響する可能性も出そうである。
(産経新聞04年3月3日)

  
NECが住友商事にカーボンナノチューブの特許ライセンス契約
 NECは3月3日、住友商事にNECが所有するカーボンナノチューブの特許ライセンス(基本特許の通常実施権)契約を結んだと発表した。NECはライセンス収入を得る一方、住商は同チューブの量産や、次世代デイスプレーやFCの電極、超高感度センサー、薬品や化学物質用カプセルなど、カーボンナノチューブの応用製品開発にライセンスを生かす。なお住友商事は単層カーボンナノチューブの本格的な量産を4月から始めるアメリカCNIと販売提携している。
(日本経済、産経、日経産業、日刊工業、電波新聞04年3月4日)


中国で低公害車の開発が本格化
 中国で初めての低公害車フェア「全国清潔汽車行動巡展」が、中国科学技術部、上海市人民政府の主催によって、2月12日から上海で開かれた。具体的な内容は、最先端のFCVやLNG自動車など研究開発途上にあるものから、天然ガスないしLPガスをサブ燃料とするバイフュエル自動車などの実用車までで、低公害車に関してもあらゆる技術的取り組みが一挙に開花しようとしている。中国政府の基本姿勢は、当面の目標としてユーロIIの排ガスレベルの達成を挙げている。又天然ガスの利用促進ならびに豊富にある石炭を自動車燃料として利用するため、CTL(コールツーリキイッド)技術開発に力を入れていることが伺われる。
(カードック71巻122号04年3月13日) 


コージェネレーション普及の実績
 日本コージェネレーションセンターの発表によれば、04年3月末現在で、国内のコージェネレーション導入台数は前年比で11%増加し、8,446台に達する見込みである。
(日経産業新聞04年3月17日)


愛知万博を支える新エネルギー源
 長久手日本館は全ての電力を、会場内の飲食店で発生する生ゴミなどから発生するガスを燃料にしたFCで賄う。トヨタ自動車グループのパピリオンに必要なエネルギーを実質的に風力発電で賄い、万博終了後も継続して使用する。トヨタや中部電力などは、太陽光発電、FC、電力貯蔵用NaS電池など複数の新エネルギーを組み合わせて、一括して制御する実証実験に取り組む。又長久手、瀬戸の会場間3.5kmを結ぶシャトルバスにはトヨタのFCHVを採用する。
(日本経済新聞04年3月25日)