第94号 地方自治体においてFC開発意欲が活発化
Arranged by T. HOMMA
1.わが国政府および政府関係機関の施策
2.地方自治体による施策
3.海外政府関係機関の施策
4.DMEによるPAFCの運転実証
5.SOFCの開発と商品化計画
6.PEFCに関連する要素技術開発
7.PEFCの開発と実証実験
8.FCV最前線
9.家庭用FCシステムの開発、実証および経済性評価
10.水素生成および改質技術の開発、実証および経済性の評価
11.水素貯蔵供給システムの開発と実証
12.FCシステム性能診断技術
13.FC工作キッド
14.企業活動と組織
・A POSTER COLUMN
1.わが国政府および政府関係機関の施策
(1)経産省・NEDO
 NEDOはFC・水素エネルギー技術開発について次期プロジェクトの検討を始めた。
「FC・水素技術小委員会(委員長渡辺政廣山梨大学クリーンエネルギーセンター長)」を設置、同委員会は国内外の技術開発動向を把握した上で、04年4月までにNEDOが実施すべき技術開発分野や開発目標について報告書を取りまとめる。NEDOは次期プロジェクトにおいて、評価・計測技術の開発、材料物性などのメカニズム研究、水素製造のための新規触媒の探索などを取り上げる方針である。(化学工業日報04年2月6日)
 NEDO北海道支部は、道内の風力発電設備やFC関連施設などを地図上に示した「北海道エネルギーマップ」を初めて作成した。
(北海道新聞04年2月24日)

(2)経産省・FCCJ
 FC実用化推進協議会(FCCJ)は、PEFC技術開発のロードマップを作成した。家庭用およびFCVについて、導入(2005年〜)、普及(2010〜)、本格普及(2015〜)の各段階において、克服すべき技術開発課題を抽出するとともに、産学官の役割分担などを示した。電解質膜や電極触媒の開発などは、引き続き国家プロジェクトとして実施することを求めている。
(化学工業日報04年2月18日)

(3)国交省
 国土交通省は、住宅でのFC普及を目指し、03年度から2ヵ年計画で1kW級FC計7台による実証研究を実施するが、最初の4台について東芝IFCなど以下の4社がガス会社へ設置して実証運転を行う。具体的には、東芝IFC製については東京ガスが横浜で、松下電器産業製は大阪ガスが大阪で、三洋電機製は大和ハウスが奈良で、荏原バラード製は京葉ガスが千葉で実施する。
(日刊工業新聞04年2月5日)
 国土交通省自動車交通局とアメリカ高速道路交通安全局(NHTSA)は、自動車のリコールやFCVに関する情報交換を緊密化することで同意した。FCVについては安全基準や規格を決める政府当局者として互いに連携し、FCV実証試験データなどを共有する。特にFCVの安全基準作りをスピードアップさせるほか、水素供給口など関連部品規格の共通化を進めることを考えている。
(日刊自動車新聞04年2月10日)

(4)環境省
 環境省はFCの一般への啓蒙を目的に、昨年導入したFCV(ホンだFCX)の車体に貼り付けるラッピングのデザインを一般から募集することにした。募集期間は4月2日まで。
(日経産業新聞04年2月23日、日刊工業新聞2月24日、化学工業日報2月25日)

2.地方自治体による施策
(1)大阪府
 大阪府はダイハツ工業製軽FCV1台を公用車として導入する。レンタル料は30万円/月。大阪府は03年に、ダイハツ工業(池田市)や岩谷産業(大阪市)などとFCV普及推進会議を設立した。
(朝日新聞04年2月13日)

(2)新潟県
 新潟県は、家庭用PEFCの実証実験を長岡市の一般住宅で開始、12月末までデータを収集する。各種データは県工業技術総合研究所に自動送信されることになっており、出力は700W、供給温水温度60℃で、機材一式は1,500万円である。
(日経産業新聞04年2月18日)

(3)三重県
 三重県は02年に設置した水素エネルギー社会の実践を目指す構造改革特区に関して、企業への説明と協力を目的に、都道府県会館で「三重県FCセミナー」を開催した。野呂知事は、四日市市臨界部工業地区で検討を進めている「水素を媒体とするエネルギー循環社会の実証体制整備」に加えて、2月から鈴鹿市と協力してFC製造のための特区新設の検討を始めたことを明らかにした。又三重県の事業に協力している各界関係者らが「地方自治体における水素エネルギービジネス環境の整備」にどのような取り組みが必要かなどの提言を行うためのパネルデイスカッションが開催された。東京に拠点を置く国内外の企業から150人が参加した。
(電気新聞04年2月23日)
 三重県は04年度からFCの実証実験を開始、04年度の県予算に1億円を計上した。PEFCメーカから参加を募り、7月を目途に出力10kW以下の家庭用FC装置を、四日市市、川越町、楠町の何れかに設置、3年を掛けて実用化のための検証を行うとともに、四日市市臨海部工業地帯にある化学プラントからの副生水素を利用するインフラ面整備の実証も行う。県が産業再生の大きな柱の1つに位置づけている「県北部におけるFC関連産業の集積地設置構想」の第1歩となる。既に3社が参加を表明しており、この内東芝IFCが正式に認定を受けた。県ではこの3社以外にも更に参加企業を募ることを検討すると述べている。実証期間は取り敢えず06年度までとしているが、この間に10kW以上のPEFCに関しても実証事業を始めることを計画している。更に05年度中には特区を活用したPEFCの実証試験を鈴鹿市でも行う。
(電気新聞04年2月26日)

(4)広島県など
 JETRO、広島県、広島市、中国経済通産局の主催により、アメリカ、ドイツ、オーストラリアなど6カ国の自動車部品関連企業12社と地場企業のビジネス交流会が1月29日広島市で開催された。市経済局がマツダを中心に自動車産業が集積する地域の特性を紹介し、FCに使う水素タンクや管理ソフト、溶接機械などをPRした。30日にはマツダ本社や地場部品メーカを視察した。
(中国新聞04年1月30日)

3.海外政府関係機関の施策
 アメリカDOEは、2月3日に発表した2005年度予算案で、FCVなど水素エネルギー技術開発費とCO固定技術開発費を大幅に増やすと表明した。具体的にはFCおよびFCVの開発、風力を利用した水素製造などで約2億1,900万ドル、原子炉の熱で水素を製造するプロジェクトの経費約900万ドル、両者を合計した水素エネルギー関連で2億2,800万ドルとなる。
(電波新聞04年2月4日)
 NEDOレポートによると、アメリカ・ブッシュ大統領の05年度予算教書におけるエネルギー関連予算は、04年度比1.8%減であったが、FC関連予算は同18.9%増しの7,750万ドル、水素技術開発は同16.3%増の9,532万ドルであった。
(日経産業新聞04年2月18日)

4.DMEによるPAFCの運転実証
 新日本石油ガスは東芝IFCと共同で、DMEを燃料とする出力200kWPAFCの実証プロジェクトを、新日石ガスの新潟LPG輸入基地において、04年5月から2年間の計画で開始する。DME燃料については、JFEホールデイングスを中心とする企業連合が、03年から釧路で実証プラントの運転を行っている。又東洋エンジニアリングは中国から、天然ガス転換でDMEを年10万トン生産するプラントを受注し建設に入っている。DMEは硫黄分が0で、価格はLPGのように乱高下しない点に特徴がある。資源エネルギー庁は、DMEを普及させるため、FCシステムの実用化に開発費の2/3を補助することにしている。
(日刊工業新聞04年2月19日)

5.SOFCの開発と商品化計画
 京セラ、東京ガス、リンナイ(名古屋市)、ガスター(神奈川県)の4社は、5kW級SOFCの実用化を目指して共同開発を開始した。京セラは既に単独で1kW級家庭用SOFCシステムを開発しているが、今回開発しようとしているのは、750℃の低温で動作する横縞型セルスタックである。東ガスが設計した横縞形電極構造を基に、京セラの持つ筒状平板セル技術を応用、セラミックス基板にセル18枚を搭載して約10Wのセルスタックとした。1枚のセラミックス基板に複数のセルを焼成する印刷技術などを用いた焼成・成形技術を活用するため、製造工程を簡略化でき、量産では大幅なコスト低下の実現が期待されている。07年春には商品化、コンビにエントストアなど小規模事業所などに販売する計画で、商品化時点での目標性能としてAC送電端発電効率45%(HHV)を挙げている。
(朝日、毎日、日本経済、産経、電気、日経産業、日本工業、日刊工業、電波、日刊建設工業、鉄鋼、京都新聞、化学工業日報04年2月20日、電波新聞2月24日)

6.PEFCに関連する要素技術開発
(1)住友金属
 住友金属工業は、PEFCのバイポーラプレート用材料として特殊な処理を施した新しいステンレスを開発した。ステンレスは耐蝕性には優れるが、表面を不良導体の膜が被うため、それを解決するために微細な金属を表面に分散させる技術を適用、その結果従来のステンレスに比べて電気抵抗は1/6以下まで低下した。又比重は7.9程度で軽量であり、加工性も高いと報告されている。更にこのステンレスは熱伝導性に優れており、これを使ってホンダは−20℃でも水が凍結しないFCVを試作した。
(産経新聞04年2月15日)

(2)東北大
 東北大学大学院工学研究科の高村仁助教授らのグループは、プラセオジウム・ストロンチウム・アルミニウム・鉄酸化物を素材に用いて、酸素透過性セラミックスの薄膜化と大面積化に成功した。大きさは5cm角、厚みが100μmの四角い膜を作成、800〜1000℃の高温で空気中の酸素のみを透過することを実証した。高温下で空気から10mL/cm2minの酸素を透過することができた。PEFC用改質器への応用を考えている。
(日経産業新聞04年2月16日)

7.PEFCの開発と実証実験
(1)新日本石油
 新日本石油は、安価な灯油を燃料とする出力8.5kWPEFCシステムの実証運転試験を、2月から東京都品川区のコンビニエンスストアで始めると発表した。約1年掛けて発電効率や耐久性などを検証して、06年度中に商品化したい考えである。PEFCはMHIと共同開発した機種である。
(電気、日刊自動車新聞04年2月3日、建設通信新聞2月6日)
 仙台市ガス局と新日本石油は共同で、定置式1kW級PEFCコージェネレーションシステムの実証運転を、仙台市内ガス局のショールーム「ガスサロン」において開始した。LPGと都市ガス、どちらの燃料にも対応できる点に特徴がある。運転状況はシステムの向かい側に設置されたパソコン画面に表示され、来場者に発電効率などが一目で分かるよう工夫されている。同社はLPG・都市ガスが利用可能なこの種の機種を投入することにより、FC市場でシエア拡大を目指すことにしている。
(電気新聞04年2月9日)
(2)GMとダウ・ケミカル
 アメリカ・フリーポートのダウ・ケミカル化学品工場に設置されたGM製PEFC第1号機が稼動を開始し、産業用FC発電プロジェクト第1次計画がスタートした。今回導入したのは出力75kWのユニット1基であるが、今後実証試験運転を行い、その成果を見ながらユニットを追加していく予定であり、最終的には400〜500台のGM製FCを設置して35MWの電力をダウ・ケミカルの工場に供給する契約になっている。GMは今回のプロジェクトによって技術開発とコストの削減を実現したいと考えている。
(日本経済、日経産業、電気、電波新聞、化学工業日報04年2月13日、日刊自動車新聞2月14日、建設通信新聞2月18日)

(3)高木産業
 高木産業(富山市)は、アメリカのヌヴェラ・FCsと、出力3.3kWの業務用PEFCコージェネレーションシステムを共同開発したと発表した。ヌヴェラが発電システムを、高木産業が給湯システムを担当した。既に第1号機を日本ガス協会に納入、日本ガス機器検査協会でテストが行われている。同社は5kW級システムの開発も視野に入れて研究開発を進める考えで、07年までの商品化を計画している。商品化段階では100万円/kWを切る価格を目指す。
(日本工業、静岡新聞04年2月27日)

8.FCV最前線
(1)玉川大学のTSCP
 玉川大学の工学部の学生らが、昼は太陽光を使い、夜はFCで走るハイブリッドソーラーカーを開発、オーストラリア大陸4,000kmの横断に成功した。それは工学部の小原宏之教授を総監督とする「タマガワ・ソーラー・チャレンジ・プロジェクト(TSCP)」で製作した「アポロンデイーヌ号」で、全長が4m、1人乗り、最高時速110km/h、03年12月9日に西岸のパースを出発し、27日に東海岸のシドニーに到着した。
(朝日新聞04年2月17日)

(2)ホンダ
 ホンダは2月26日、氷点下20℃での始動が可能な次世代FCスタックを搭載したFCV「FCX」によって、北海道での走行テストを実施、−11℃での始動に成功したと発表した。前日の夜から屋外の駐車場に放置して始動を確認、その後公道試験で性能確認を行った。同社はアロマテイック電解質膜を採用して−20℃から95℃までの温度範囲で稼動できる次世代PEFCスタックを開発したが、今回のFCV走行実験で氷点下での始動性と走行性能を確認したことになる。
(日本経済、電気、日経産業、日本工業、日刊工業、東京、日刊自動車新聞04年2月27日)

9.家庭用FCシステムの開発、実証および経済性評価
(1)MHI
 三菱重工は「LPGを燃料とするMHI製の1kW級家庭用PEFCコージェネレーションシステムを利用すれば、光熱費を年間約10万円削減できる」との試算結果を発表した。オール電化住宅に対抗するため、LPG業界が格安のFC向け料金を設定すると予想されるためで、PEFCスペックとしては、発電効率32.5%(HHV)、総合効率78.5%、電気料金は税込みで23.5円/kWh、4人家族でガス消費量を80Nm3/月と仮定している。LPG燃料費については、FC用特別料金として250円/Nm3(通常は400円/Nm3)の大幅な割引メニューを検討していることを考慮すれば、年間光熱費で9万9,492円の削減メリットがある。都市ガスについては、やはりガスエンジンコージェネレーション用割引料金103円/Nm3(通常は134円/Nm3)を適用したとして、年間約7万円の節約となった。
(電気新聞04年2月4日)

(2)中国電力
 中国電力は、安い夜間電力で水を電気分解し、それによって生成された水素をタンクに貯蔵、昼間にFCで発電する出力1kW級家庭用PEFCコージェネレーションシステムを、神鋼環境ソリューション(神戸市)と共同で開発し、2月10日から実証実験を開始する。水素を生成するプロセスは、水道水を純水に変え、電極板と固体高分子電解質膜で水素イオンと酸素イオンに分解、膜を通過した水素イオンに電子を結合させる方式である。システムの大きさは、幅1m、奥行き1.3m、高さ1.5m、核となる水素発生装置は、従来型に比べて、電解効率が30%高く、大きさは1/5になっている。同社の計算では、このシステムを適用することにより、光熱費は約40%削減できることになる。試験運転はエネルギー・ソリュウション・アンド・サービス(ESS)のエネルギー利用技術開発センター(松江市)で実施、1年間を掛けて性能を評価する予定である。
(朝日、日刊工業、神戸、中国新聞04年2月11日、電気、日経産業、鉄鋼新聞2月12日、産経、日本工業新聞、化学工業日報2月13日、電波新聞2月21日、建設通信新聞2月27日)

(3)富士電機
 富士電機アドバンストテクノロジーは、家庭用1kW級PEFCにおいて、耐久性、信頼性を検証するため、近く第3次試作機の設計に着手する。03年度内に完成させ、04年度には2ないし3台出荷する予定である。同社が第2次試作機で実現した機器は、都市ガス改質方式ではあるが、FCから発生した水を改質プロセスに供給する水自立型である点において特徴がある。装置容量250L、発電効率35%(LHV)、コージェネレーションとして利用した場合の総合効率は80%、ただし75℃の温水を供給することができる。
(電気新聞04年2月13日)

(4)太陽石油
 太陽石油は、NEFが実施する2003年度の”定置用FC実証研究”に参画したと発表した。LPG燃料改質で東芝IFCの1kWPEFCを、愛媛県菊間町の集合住宅に設置し、1年程度使用条件下で実証運転を行う。
(化学工業日報04年2月13日、愛媛新聞2月20日)

(5)三菱電機
 三菱電機は、2月17日、発電効率34%、70℃の温水利用を含めた総合エネルギー効率が83%の性能を持ち、かつ大幅な抵コスト化を実現した1kWPEFC発電システムを開発したと発表した。同社は蓄積した業務用換気扇の技術を応用して、熱交換と加湿の機能を持つ低価格のロスナイ方式加湿器を新たに開発、これを採用することによってシステム全体の製造コストを大幅に削減することに成功した。又新開発の加湿器は、周辺機器のサイズにおいて、純水器でこれまでの1/40に、排熱回収熱交換器で1/100に低減でき、これのよって加湿関連の小型化・低コスト化が可能になる。電池スタック関連では、セパレータの材料に熱硬化樹脂とカーボンで構成するモールド成形品を採用することにより、材料コストをこれまでの1/100にまで下げ、更に改質器については、材料を高価な耐熱合金から汎用ステンレスに切り替えることで製造コストを削減した。この結果、1万kWのFCで100万枚のセパレータを200円/枚で製作する目途がついたと述べている。同社は1kW級PEFC実証機で、DSS運転や寒冷地対策について信頼性を検証する。
(電気、日刊工業、電波新聞、化学工業日報04年2月18日)

10.水素生成および改質技術の開発、実証および経済性の評価
(1)オクト
 オクト(西宮市)は、独自に開発したPEFC用水素発生装置の実証試験を始める。県立農林水産技術総合センターの病害虫用蛍光灯の電源として利用し、水素発生にかかるコストや性能を1年かかりで検証する。
(日本経済新聞04年1月31日)

(2)日本製鋼所など
 日本製鋼所やアメリカのロスアラモス研究所など、日米欧の6社・団体は共同で、地熱蒸気から水素を分離精製し貯蔵する技術開発プロジェクトを、アイスランドで2005年から開始する。参加企業団体は、アメリカ・ガステクノロジー協会、イギリス・インテリジェントエナジー、アイスランドのバルマラフとアイスランデイックニューエナジーである。
(日本経済新聞04年2月6日)

(3)電中研
 電力中央研究所は、原子力発電からの余剰・夜間電力による水電解水素、コークス炉から出る副生水素、および天然ガスの改質から得られる水素の経済性を分析比較した結果、現状では原子力発電による製法が割高になるとの結論を得た。この分析では、FCVへの水素の供給を想定し、水素ステーションで製造するオンサイト方式と、大規模設備で製造し輸送するオフサイト方式の両方で経済性を評価している。分析によると、深夜電力の利用による30%程度の低い設備利用率では、単位水素当たりの製造コストが高くなり、約48円/Nm3の副生水素と競合するためには、60%程度の設備利用率が必要となる。又オンサイトとオフサイトの比較では、前者では2.5円/kWh、後者では3.5円/kWh程度の電力単価が競争可能な条件であるが、オンサイトでは送電費用も考慮しなければならないのでこの価格の達成は困難と見ている。オフサイトでは発電所近辺のプラントで水素を製造すれば、電力単価から送電費用を差し引いた額での電力調達が可能と予想されるので、水素価格の低減が可能と予想される。結局現状では副生水素や天然ガス改質法が価格優位性を持つことは確かなようである。
(電気新聞04年2月9日)

(4)アメリカ・ミネソタ大
 アメリカ・ミネソタ大学の研究グループが、「エタノールから水素を効率的に生産する技術を開発した」と2月13日付け科学誌”サイエンス”に発表した。エタノールと水を混合して高温の気体にし、新触媒を働かせて1/100秒で水素を取り出すことができた。装置は比較的コンパクトで、車載が可能であると述べている。エタノールはアメリカではトウモロコシなどの植物から年間約100億L生産され、ガソリンに混ぜて使われている。エタノールはメタノールに比べて人体への影響が小さく、腐食性も小さいので取り扱いが容易であり、また環境にも有利な燃料といえる。
(朝日新聞04年2月13日)

(5)アメリカ・ペンシルベニア州立大学
 アメリカ・ペンシルベニア州立大学の研究グループは、汚水を利用したFC発電システム技術を開発した。微生物の働きで汚水中の有機物を分解して電子を取り出し、負極に送り込んで発電する。研究グループは、長さ6インチ、直径2.5インチの筒状装置の中に、8枚の電極を入れて実験、10〜50mW/m2の電気出力密度を確認した。
(日経産業新聞04年2月25日)

11.水素貯蔵供給システムの開発と実証
 ジャパンエナジーは、有機ハイドライド(水素をベンゼンやナフタレンなどと反応させ液化させたシクロヘキサンやデカリンなど)を利用した水素の貯蔵・供給システムの技術を、パイロットスケールにおいて確立したと判断し、今後は実証レベルでの経済性評価を目的に、JHFCの水素ステーション事業への参画を目指すことにした。同社は製油所で発生した水素および芳香族を、有機ハイドライドとしてローリー運搬し、水素ステーションで供給した後、製油所で回収するビジネスモデルの検討に着手しており、03年から精製技術センター内で試験機による評価試験を進めていた。
(化学工業日報04年2月3日)

12.FCシステム性能診断技術
 カナダのハイドロジェニックスは、改質器なども含めたFCシステム全体の性能を診断するシステムを開発し、04年3月から水素燃料10kWFCと併せて国内メーカに納入する。同社は多様な燃料から水素を生成するシステムも開発しており、日本市場を開拓し、参入することを目指している。
(日経産業新聞04年2月12日)

13.FC工作キッド
 西野田電工(大阪市)は、産業技術総合研究所関西センター小型FCグループと共同で、電池の仕組みを学ぶことができる工作キッド「水空電気(みずからでんき)」を製作した。このキッドはPEFCの2セルと、水素を供給する水電解で構成されており、組み立ては1時間で完了する。企業向けを中心に市場開拓を進める他、学校教材としても売り込むことにしている。
(日本工業新聞04年2月13日)

14.企業活動と組織
(1)三井物産
 三井物産はFC関連ビジネスを強化するため”水素・FC・環境室”を2月に発足させ、海外のベンチャー企業への投資などを始める。今後2年間で30億円の投資を予定している。重点分野は、FCVの周辺機器、定置式FC、水素の製造と供給インフラである。
(日本経済新聞04年2月23日)

(2)GM・アジアパシフィック・ジャパン
 GM・アジアパシフィック・ジャパンは、GMにおけるFCV開発の経緯や考え方を解説した小冊子”GMにおけるFCV開発”を作製した。
(日刊自動車新聞04年2月25日)

 ―― This edition is made up as of February 26, 2004 ――

・A POSTER COLUMN

将来の自動車用燃料
 トヨタ自動車は、将来の自動車用燃料について、多くの資源から製造できて、石油代替効果の高い燃料の候補としてDME,GTL、メタノール、水素の4種類を挙げたが、それらの中で、GTLが最も有力との評価を発表した。水素はFC用の燃料として将来的に有望であるが、DMEとメタノールについては否定的な見方を示した。評価項目は車両性能、経済性、大気環境性能、エネルギー供給性で、軽油代替として使えるGTLは、多くの評価項目でガソリン車と同等かそれ以上、特に排出ガス特性や既存インフラを活用できる点が優れているとしている。
(日刊自動車新聞04年2月6日)

  
京セラのSOFC事業計画
  1kW級SOFCで世界最高レベルの発電効率を達成した京セラの西口泰夫社長は「今後の電力需要の増加に、従来通り原子力発電で対応するのは現実的に難しい。どのような電源で追随するのかが大きな課題である」と語り、京セラはSOFCによる家庭用コジェネレーション用電源を製品として来年にも投入する予定であると述べた。更に同社長は「2010年度には200億円の売り上げを計画している」と語り、家庭用のエネルギー需要を地域単位で賄うビジネスに意欲を示した。
(電気新聞04年2月9日)