第102号 PEM劣化メカニズムの解明研究が始動
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体の施策
3.SOFCの研究開発
4.PEFCおよびDMFC要素技術の研究開発
5.家庭用PEFCの事業化
6.FCV最前線
7.改質および水素生成技術
8.水素貯蔵関連技術の開発
9.マイクロFC関連技術の開発
10.FC複合エネルギーシステム
11.FC計測関連技術
12.水素・FC関連事業活動
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
 総合エネルギー調査会需給部会は、2030年までの“長期エネルギー需給見通し”の中間報告を決定した。エネルギー需要については、人口の減少、産業構造の高度化、経済の成熟化により、21年度には頭打ちとなり減少に転じると予測している。新エネルギーについては、10年度以降、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)が継続され、太陽光発電が増加することで、新エネルギー全体では、30年度までに導入目標量である1,902万kL程度まで導入が進み、FCについては、導入実績がほとんどないことから、試験的な導入に留まり、30年度までに12万kWと想定している。又京都議定書が日本に課したGHG削減目標の達成が困難な情勢の中、追加削減対策なども明記、具体的には風力発電の導入を促進するため、系統連携対策、各種土地利用規制との調整などを盛り込んでいる。(建設通信新聞04年10月5日)
2.地方自治体の施策
1)東京都
 03年8月に導入し、04年12月24日まで運行予定であった東京都営のFCB(バス)が、トヨタ自動車による点検のため運行を休止した。同バスと同じ構造のFCV用高圧水素タンクに水素漏れが発生したため、FCV16台とともにトヨタ自動車が回収した。(毎日、東京新聞04年10月19日、日刊工業新聞10月20日)
(2)山口県周南市
 国の構造改革特区により、企業間で電力と熱の相互融通計画を進めている周南コンビナートが、新たに水素の相互融通を目指すことになった。水素産出量が全国最大規模の同市を「水素タウン」にする構想の推進母体である山口県水素FC実証研究会の第2回会合が10月19日に県庁で開かれ、基本構想策定調査の提案を了承した。コンビナート内の複数企業を、水素輸送用のパイプで結び、水素の不足や余剰を平準化する。パイプの材質など水素供給システムの安全性を確認する試験も予定されている。(中国新聞04年10月20日)
(3)三重県
 DMFCから発生する電気、熱、それにCO2をイチゴの生育に生かそうとする実証実験を、三重県の補助事業でジーエス・ユアサ・パワーサプライ、県内企業、および三重大学が共同で実施する。鈴鹿市内でイチゴ農家が協力、1反(約990m2)のビニールハウスを試験場として提供する。夕方から早朝に2ないし3時間、出力1kWのDMFCの電力でハウスを照射、日照時間を増やすとともに、排熱を使ってハウス内の温度を上げ、CO2を導入してイチゴの育成を助長する計画。(中日新聞04年10月30日)  
3.SOFCの研究開発
(1)Jパワー
 Jパワーの中垣社長は、石炭火力とSOFCを組み合わせた新しい発電システムの商業化を早期に進める構想を明らかにした。同社長は「実現すれば石炭火力のエネルギー効率を現在の41%から60%に高めることができ、CO2排出を大幅に削減できる」と強調した。(フジサンケイビジネスアイ04年10月15日)
(2)芝浦工大
 芝浦工業大学エネルギーフロー研究センターは、住宅向け小型SOFCの産学コンソーシアムを発足させる。SOFCの研究は材料から機械システム工学にポイントが移りつつあるが、企業の研究体制は十分でないのが現状である。これに対し、同センターは機械系の教員が充実しているのに加えて、外国7大学と連携や他大学にない試験設備などが強みで、共同研究などを通じて企業の研究体制や人材育成を後押しすることにした。(日刊工業新聞04年10月21日)  
4.PEFCおよびDMFC要素技術の研究開発
(1)産総研等
 産業技術総合研究所と東京ガス、大阪ガス、新日本石油、松下電器産業、東芝IFC、三洋電機は、04年度から07年度までの3年半を掛けてPEFCセルスタックの劣化を解明する共同研究を立ち上げる。NEDOの劣化解析基盤研究に応募し、今週中にも認可を経てスタートする計画で、開発費用は40億円弱を予定している。具体的には産総研の関西支部が中心になって、05年からモニターによる天然ガス改質PEFCの実用化を目指す2大ガス会社と、LPG改質方式に取り組む新日石、そしてスタックメーカー3社が参加する。一定期間連続運転を行って電極触媒、電解質膜、セパレータなどスタック重要部品の初期劣化現象を解析、長期的な劣化メカニズム解明への評価解析技術を確立する。これらの研究成果と国のモニター事業に参画し、08年度以降での本格普及に備える意向である。(日刊工業新聞04年10月7日、電気新聞、化学工業日報10月8日、日経産業新聞10月11日)
(2)ポリフューエル
 アメリカのポリフューエル(カリフォルニア州)は、従来からDMFC用電解質膜の開発を行ってきたが、今回従来のフッ素系膜に対して強度が2倍になるとともに、硬度が16倍にも達する炭化水素系電解質膜を開発したと発表した。又この膜は水素透過性が4倍は低いという特性を有している。同社はこの膜は自動車用FCが抱えるほとんどの問題に対処できると述べており、今後は自動車用FC分野にも力を入れていく計画である。(化学工業日報04年10月14日、日刊自動車新聞10月19日)
(3)旭硝子
 旭硝子は、PEFC用フッ素系膜のMEAについて、準商業規模の設備を設置する。横浜の中央研究所にある既存のパイロット設備の能力を引き上げるもので、その規模は従来の2倍程度になる。高温下での耐久性など技術的課題をブレークスルーしつつあり、設備の増強で量産技術や実用サイズでの評価技術に目途をつけ、2ないし3年後には事業化につなげていきたい意向である。又同社は04年12月までにハイドロジニックス社の試験評価装置を導入し、05年からMEAの本格的な耐久性試験に着手する。(化学工業日報04年10月15日、日刊工業新聞10月21日)
(4)ジャパンゴアテックス
 ジャパンゴアテックスは、耐久性と信頼性を高めた新しいMEAとガス拡散層を開発した。各種構成部材を改良することにより、高耐久性・信頼性を高め、イオン交換膜をPTFEで補強することにより、薄膜ながら強度と寸法安定性を向上、又膜を透過するフッ素イオンの量を1/10にまで低減させた。クロスオーバーを抑制する効果を持つ。ガス拡散層は紙基材をベースに製法を工夫して、高密度で低加湿に適する性能を持つほか、クロス製の特徴である拡散性を備えている。(化学工業日報04年10月20日)
(3)産総研
 産業技術研究所は、科学的に安定で、自然界では分解しない有機フッ素化合物を、光触媒を使って完全分解する方法を開発した。有機フッ素化合物の1種であるパーフルオロオクタン酸による実験で効果が確認された。この化合物を約560ppm含む水溶液22mLを用意、液状の光触媒ヘテロポリ酸と混ぜ、酸素ガスを加えた条件で24時間紫外線と可視光を照射した。その結果、化合物は検出限界以下まで分解された。(日経産業新聞、化学工業日報04年10月29日)  
5.家庭用PEFCの事業化
(1)東邦ガス
 東邦ガスは、家庭用PEFCコージェネレーションシステムを05年度末に市場投入すると発表した。PEFCスタックはトヨタ自動車・アイシン精機、荏原バラード、松下電器産業の製品の中から選定する。今後実証運転を進め、05年度中頃にはメーカーを絞り込む予定。当初はモニターでの導入とし、段階的に市場を拡大する意向である。(日本経済、電気、日経産業、日刊工業、中日新聞04年10月8日)
(2)関電工
 関電工は、さいたま市浦和区の同社浦和寮に電気出力3.7kW、熱出力6.3kWの定置式PEFCを導入し、業務用としての実用性を検証するため、実証実験を進めているが、これまでの実測結果によると、総需要電力の約25%をFCによる発電で賄った。(電気、日刊建設工業新聞04年10月25日)
6.FCV最前線
(1)JHFC
 日本自動車研究所とエンジニアリング振興協会によるJHFCプロジェクトは、大阪市内で開かれた“御堂筋パレード2004”に参加、淀屋橋交差点から難波まで約3.3kmの区間で、国内外の最新FCV6台によるデモ行進を行った。参加車両は、トヨタFCHV、日産エクストレイルFCV、ホンダFCX、ダイムラー・クライスラーF−Cell、GMハイドロジェン3、トヨタと日野自動車共同開発のFCB、FCHV−BUS2である。(日刊自動車新聞04年10月14日)
(2)三菱自動車
 三菱自動車はダイムラークライスラーとの共同プロジェクトを見直し、FCV開発についてもダイムラーとは一線を画すことにした。現在同社が公道試験を実施しているFCVミニバン“グランデイス”は、DC社が開発したFCシステム(バラード製スタック)を搭載しているが、次期車両では自社開発のシステムを搭載する考えで、05年以降に完成させる。PEFCはバラード製ではあるが、次期車両ではDC社を介さないで直接バラードと協力関係を築く。(日刊工業新聞04年10月14日)
(3)トヨタ車体
 トヨタ車体はアイシンAWと共同で、小型水素タンク搭載1人乗りFCV“FCコムス”を開発した。回生エネルギーを蓄積するための2次電池を搭載しており、1回の水素充填で約100kmの走行が可能である。車体には植物のケナフを原料とした素材を採用しており、環境面への配慮を徹底させている。(日刊工業新聞04年10月18日、中日新聞10月20日、日刊工業新聞10月26日)
(4)GM
 GMのラリー・バーンズ副社長は、10月22日、日本経済新聞社の取材や中日新聞とのインタービューにおいて、FCVについて2010年までに一般市民が手に届く価格で量産化するとの見通しを示した。又水素の車載貯蔵技術が問題であったが、ここ数年で技術が格段に進歩し、1回の水素充填で最終的に500kmの航続距離達成を目指していると述べた。(日本経済、中日新聞04年10月23日)   
7.改質および水素生成技術
(1)北大
 北海道大学の辻助教授らは、プラスチックから水素を効率よく取り出すことに成功した。400℃でプラスチックのポリエチレンとポリステイレンを分解油にし、酸化アルミニウムにニッケルが付着した触媒を用いて、800℃で常圧の水蒸気と分解油を反応させた。分解油に含まれる水素成分のうち、97〜99%を水素ガスとして取り出すことができた。実験に用いた反応容器は、直径10mmの石英パイプで、今後は反応容器を大きくするなどの改良を加えて、実用化を意識した研究を進める。(日経産業新聞04年10月5日)
(2)広島大学等
 サッポロビール、島津製作所、広島大学は10月7日、微生物を利用し、廃棄するパンから水素を高効率で生成する技術“水素・メタン2段発酵技術”の開発に成功したと発表した。新技術は微生物による一般的なメタン発酵の前段階に水素発酵工程を設置、水素とメタンを別々に生成する。水素発酵用の微生物群は、パンくずなど固形有機物の分解に優れ、メタン発酵単独に比べて1/4の処理時間で発熱量を10%以上多く取り出せる。実験用の30L発酵槽で6ヶ月の連続運転を行った。このプロセスによりパン1kg当たり約100Lの水素を発生させることができる。他の食品や農林廃棄物にも有効なため、サッポロビールでは価値創造フロンテイア研究所において、700L発酵槽プラントによる実証実験を始め、2年後の実用化を目指すことにしている。(読売、毎日、日本経済、産経、日経産業、日刊工業、京都、中国、北海道新聞、河北新報04年10月8日、電波新聞10月9日、化学工業日報10月12日、建設通信新聞10月13日、日本食糧新聞10月15日)
(3)産総研
 産業総合技術研究所の佐藤主任研究員らの研究グループは、ナフサに含まれる硫黄分を効率よく除去できる技術を開発した。そのプロセスは過酸化水素と、水になじみやすい性質を持つ有機溶媒でナフサを反応させ、その後吸着剤のシリカゲルで硫黄分を除去する。 従来技術では1ppmまでが限度であったが、この方法により更にその1/100にまで硫黄濃度を下げることができた。(日経産業新聞04年10月27日)
8.水素貯蔵関連技術の開発
 ジャパンエナージーは有機ハイドライドを利用して水素を貯蔵する技術を研究している。有機ハイドライドから水素を吸脱着する反応を促進するために触媒を使用するが、連続して水素を取り出すためには、触媒の性能が長時間使用しても劣化しないことが求められていた。今回同社は酸化アルミニウムに微量の白金を付着させた新しい触媒を開発、実験による検証を行った結果、2,700時間以上使用しても性能が劣化しないことが確認された。(日経産業新聞04年10月25日)  
9.マイクロFC関連技術の開発
(1)室蘭工大
 室蘭工大の渡辺教授が、常温で水素の生成と発電ができる出力20Wの携帯型FCを開発した。この電池はセルを20個組み込んだ発電部分と、アルミ微粒子と水を反応させて水素を発生させる密閉された水素製造タンク部分の、2つの部分から構成されている。発電部分は吸い込んだ空気に含まれる酸素の濃度を25%に高める酸素富化膜を内臓し、更に薄いゲル電解質膜を9枚ずつ並べて発電効率を高めた。試作品では40gのアルミ微粒子と60ccの水を供給することにより、連続20時間稼動することができた。アルミ微粒子は、少量の水に触れても化学反応を起こすので、これまで冷凍庫で保存する必要があったが、窒素ガスを充填した袋に入れることにより、常温で保存することができる。このマイクロFCは、廃アルミを使うため、燃料コストがメタノールの半分に抑えられる。現在大手メーカー4社から商品化の申し出があり、同教授は今後酸素富化膜で酸素濃度を50%に高めるなど、実用化に向けた改良研究を行い、「05年4月までに室蘭市内に工場を開設して、商品化にこぎ着けたい」と述べている。(北海道新聞04年10月10、13日)
(2)NEC
 NECは10月19日、マイクロFCの発電効率を向上させて小型化し、FC一体型ノートパソコンを開発したと発表した。従来デイスプレーの背面に装着していたFCを薄くして、パソコン底部に搭載、メタノール燃料カートリッジ(250cc)も本体に収めている。又FCユニットに自律制御システムを組み込んだ点に特徴がある。連続作動時間は10時間程度であるが、将来は40時間まで延ばし、07年度前後での商品化を目指す。(日本経済、電気、日刊工業、電波、北海道新聞、化学工業日報、フジサンケイビジネスアイ04年10月20日)
(3)スター精密
 スター精密は、小型・薄型のマイクロポンプの試作品“SDMP205”を開発した。これは圧電素子を採用したダイヤフラム方式で、メタノールへの耐薬品性を向上させており、マイクロFC用への利用を目指している。(電波新聞04年10月23日、静岡新聞10月29日)
(4)水素エネルギー研究所
 須田教授が社長を務める“水素エネルギー研究所”(茅野市)は、10月28日、ノートパソコン用コンパクトで高性能なMFCを開発したと発表した。試作したFCは縦3cm、横2cm、厚さ3mmの薄型で、ホウ酸ナトリウムの結晶「硼砂」を原料とする水素化ホウ素ナトリウム水溶液「ボロハイドライド」を水素貯蔵材料として使っている。ボロハイドライドは室温で使用可能であり、蒸発しても水素を発生しないので使用上安全である。燃料の補給は、インクジェットプリンターのインクのような簡便な方式を想定、電極には比較的安価な合金を使用するので、リチウム電池と同等な価格が可能と同教授は述べている。現在欧米のメーカー2社と技術移転契約を交渉中で、年内にも成立の見通しである。(信濃毎日新聞04年10月29日)  
10.FC複合エネルギーシステム
 サンエス電気通信(釧路)と、北大、道立工業試験所は10月14日までに、風力発電とFCを組み合わせた複合システムを開発した。出力2kWの風力発電による発電電力をバッテリに蓄電、水電解によって200L/hの割合で水素を発生し、出力850WのFCを運転してコージェネレーションを行う。10月末から石狩管内厚田村で実証試験を始める。酪農家用電源以外に、送電線の無い地域でのロードヒーテイングや照明用電源としての利用を見込んでいる。(北海道新聞04年10月15日)
11.FC計測関連技術
 英和(大阪市)は、エフシー開発(日立市)やアイコン(大阪府)と共同で、FCの不良品検査を効率よく行える装置を開発した。従来品と比べて60倍の効率で電圧・抵抗を測定できるので、不良品検査の効率が大幅に上がる。商品名は“FCV−1000”で、大きさは横431mm、奥行き450mm、高さ199mmで、価格は120万円、05年3月までに50台の販売を目指す。(日経産業新聞04年10月18日、日刊工業新聞10月19日)
12.水素・FC関連事業活動
 電制(札幌市)は、水素供給システムの開発を手がけるグループ2社を統合した。研究体制を効率化するとともに29日付けで第3者割り当て増資を実施、開発資金を確保する。(日経産業新聞04年10月29日)  

 ―― This edition is made up as of October 31, 2004――

・A POSTER COLUMN

ハイブリッド車の出荷台数が2.7倍
 日本自動車工業会が10月13日にまとめた2003年度の低公害車などの出荷台数は、合計で前年度比10.2増の401万7684台となり、4年連続して増加した。特に次世代のハイブリッド車が約2.7倍の4万2423台に急増し、03年度から統計が始まったFCVは14台であった。(日本経済、日経産業、日刊自動車、北海道新聞、化学工業日報10月14日、中国新聞10月15日)  

水素ロータリーエンジン車の開発
 マツダは、水素とガソリンの2種類の燃料で走行できる水素ロータリーエンジン車の販売価格を500万円以下に抑える計画で、06年秋までに企業向けを中心にリース販売を開始する予定である。市販用に開発を進めているのは、“RX−8ハイドロジェンRE”で、350気圧の水素タンク(74L)を積載、水素での航続距離は70kmであるが、ガソリンタンクも搭載しているので、燃料を切り替えることができる。将来はターボの追加やハイブリッド化を検討している。(読売、日刊工業、日刊自動車新聞04年10月15日)
 マツダは10月27日、国土交通省広島運輸支局でナンバープレートを取得、デユアルフューエルシステム採用のRX−8水素ロータリーエンジン車による公道走行試験を開始した。(日経産業、日刊自動車、中日新聞04年10月28日)  

三洋電機がハイブリッド車用蓄電池をベンツと共同開発
 三洋電機は10月18日、ハイブリッド自動車(HEV)用蓄電池について、ダイムラークライスラーのメルセデスベンツ部門と共同開発することに合意したと発表した。HEV向け蓄電池の市場規模は、2010年に3,370億円に達する勢いで、三洋は同年にシェアの半分を占める売上高1,680億円を目標にしている。(朝日、中国新聞04年10月19日、日刊自動車新聞、化学工業日報10月20日)  

中国の水素自動車およびFCV研究開発事情
 中国の自動車メーカーが環境対応車の開発、生産に乗り出す。上海汽車工業はGMとハイブリッド車を開発、ドイツVWは上海の同済大学とFCVの共同開発を行うことで同意した。VWの乗用車の車体に、同大学が研究している駆動システムを搭載する。同済大学はこれまでもFCの開発を進めており、VWが実用化に向けて協力することになった。
 GMのリック・ワゴナー会長兼CEOは、上海汽車工業とハイブリッド車およびFCVを共同開発する覚書に調印するため、上海を訪問した。記者団に対し「GMの中国での販売台数が、04年には、カナダとイギリスでのそれを抜き、同社にとって世界第2位の市場になる」との見通しを述べた。同時に中国での自動車販売の伸びは、今後6ヶ月くらいは鈍化が続くと予想している。なお同会長は、上海汽車の陳会長や上海市政府要人らに、GMのFCV“ハイドロジェン3”を紹介した。
 東風集団は国家科学技術省の委託を受けて、独自にハイブリッドバスを開発、試作車を完成させており、05年から実用車の生産を始める。又2010年を目標にFCVの実用化を目指す。
 中国で環境対応車の開発が活発になっているのは、急速なモータリゼーションが背景にある。中国は03年には444万台の自動車を生産、世界第4位の自動車大国となり、05年には650万台に達し、日本を上回るとも予測されている。
 (日本経済新聞04年10月22日、10月31日、フジサンケイビジネスアイ11月1日)
 鹿児島市内のベンチャー企業“水素エネルギー開発研究所”が開発した水素エンジンで動くタクシーを、中国政府が約3万台購入することが決まった。一般のワンボックスカーを改造して製作したもので、中国政府は08年開催の北京オリンピックと10年に開催する上海世界博覧会で使用する。なお同研究所は独自に開発した“HAWシステム”により、ガソリン車の燃料供給系統を改造することで、容易に水素エンジン車とする技術を実現した。(日刊自動車新聞04年10月25日)  

水素ステーションの経済性比較研究
 電力中央研究所は、FCV導入期から普及初期にかけての水素ステーションの経済性について、各種の水素製造方式に対して比較評価した。それによると、水素供給設備が2.5万ヶ所まで拡大し、標準的な設備コストなどの低減が進展した場合、1Nm3当たりの水素価格は、
 副生水素オフサイト型;130円、 天然ガス改質型;120円、
 純水電解型;137円、 アルカリ水電解型;128円
となり、「普及初期では天然ガス改質型がコスト的に有利であるが、純水電解型がFCの技術進歩に合わせてユニットコストを低減できる余地が大きく、又夜間電力の単価が6円/kWh程度に低下すると、電解型が経済的に有利になる可能性がある」と指摘している。(化学工業日報04年10月27日)