第101号 PEFCのMEAにおいて革新技術の波
Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体による施策
3.海外政府機関による施策
4.MCFCに関する事業展開
5.SOFCの開発と事業展開
6.PEFCの要素技術の開発研究
7.家庭用および事業用PEFCの開発と実証、事業展開
8.FCV最前線
9.FCV用水素ステーション技術と建設
10.FCの新用途開拓
11.水素製造および改質技術開発
12.水素貯蔵技術の開発
13.マイクロFCの開発
14.FCおよび水素関連計測技術
15.FC関連事業
・A POSTER COLUMN
1.国家的施策
(1)環境省
 環境省は、地球温暖化問題に関する教育を目的に、小中学校にFCを設置する事業を05年から始める。初年度は全国で10校に導入し、06年度には各都道府県に1校まで広げる計画で、05年度1億円を要求する。(毎日新聞04年8月31日)
環境省の05年度科学技術関係概算要求額は前年度比22%増の382億円となった。又地球温暖化対策技術開発は27億円(04年度16億円)で、水素やFCを使ったエネルギー技術の開発やバイオマスを利用した再生可能エネルギー導入技術の実用化に焦点を絞る。水素とバイオマスの利用推進・普及を促す技術開発は公募する意向である。(日経産業新聞04年9月2日)

(2)総合科学技術会議
 総合科学技術会議は、9月9日に本会議を開き、05年度の科学技術関係概算要求の概要と競争的研究資金の制度改革等について正式決定した。科学技術関係概算要求は前年度比11%増の4兆111億円。科学技術施策連携群については、ポストゲノム、新興・再興感染症、ユビキタスネットワーク、次世代ロボット、バイオマス利用・活用、水素利用・FC、ナノバイオテクノロジー、地域科学技術クラスターの8分野で取り組むことを決めた。(日刊工業新聞04年9月10日、薬事日報9月13日)  
2.地方自治体による施策
 東京都は10月1日から29日まで、FCB(バス)を霞ヶ関や銀座三越前で運行する。晴海ふ頭を発車して、勝どき駅前と銀座4丁目などを経由して、東京駅に至る路線を1日1往復、晴海ふ頭を発車後、東京駅には停車せず、銀座4丁目から四ツ谷駅に至る路線を1日2往復運行する。料金は200円。(日本経済新聞04年9月28日) 
3.海外政府機関による施策
 アメリカDOEのガーマン事務次官は8月30日、世界再生可能エネルギー会議で、水素エネルギーの開発計画に、国内で7,700万ドル以上の投資を行うと話した。ブッシュ大統領の水素イニシアテイブの一環である。(電気新聞04年9月1日) 
4.MCFCに関する事業展開
(1)三菱重工
 三菱重工業は、バイオエナージーから、国内最大の食品廃棄物処理施設を一括受注し、本格的な建設に着手した。東京都大田区城南島に4,800m2の用地を確保、04年7月から本格的な現地工事を開始した。総事業費は土地・開発費を含めて約39億円で、04年度末までに完成する。これはメタン発酵技術によって日量110トンの廃棄物を処理できる施設で、それにアメリカFCE製出力250kWMCFCを導入、発電・売電を組み合わせた事業を展開する。すなわち、今まで焼却処分していた食品廃棄物に関してリサイクル受け入れの範囲を広げ、それらをバイオマスとして減容化するとともに、FC発電用燃料として有効利用する。又排熱は蒸気として回収し、汚泥脱水液の真空乾燥機用熱源として利用する。(化学工業日報04年9月1日)

(2)丸紅と川重
 丸紅はFCE製MCFCを川崎重工業と共同で開発する。又04年8月にはメインテナンス専業会社“日本燃料電池”を設立した。両社は05年度にも日本国内で生産、組み立てを開始する。年内に出力250kWのMCFCを川重の明石工場に設置し、日本向け独自仕様の開発に着手、1年以内に国産化の目途をつける予定である。なお日本燃料電池にはFCEから技術者2人を常駐させる。(日本経済新聞04年9月8日)  
5.SOFCの開発と事業展開
(1)日本触媒
 日本触媒は、05年初めにも同社姫路製造所において、SOFC用電解質のパイロットプラントを建設し、SOFCメーカーなどへの用途開拓を本格化させる。又同電解質を応用し、東邦ガスとSOFC用セルの共同開発に取り組んでおり、電解質からセルまでの一環生産体制を確立していく方針である。2010年にこれらFC材料事業で10億円の売り上げを目指すと述べている。
 日本触媒は、SOFC電解質として薄膜ジルコニアシートを開発し、2001年からスイスのスルザー・ヘキサス社へシートを供給している。この電解質は、独自の粉体加工技術やセラミックス焼成技術などを用いて薄膜・大型化を実現、又量産化技術も確立した。東邦ガスとの共同開発では、スカンジア安定化ジルコニアを電解質として採用しており、又電解質と組み合わせて使用する電極についても、原材料の選択および粉体調整技術を適用することにより、800〜900℃の温度領域でも優れた活性を示す材料を開発している。 (化学工業日報04年8月30日)

(2)TOTO
 TOTOは開発中の出力1.5kW都市ガス燃料SOFCスタックで、発電効率55%を達成、3,000時間の運転に成功した。動作温度は900℃で、衛生陶器の技術を応用してスタック内部の燃料ガスの流れや温度分布を均一にすることを実現し、反応効率を向上させた。セラミック製電極の薄膜形成には陶器のコーテイング技術を応用、内部抵抗を減らすとともに、燃料ガスの流れを均一にするために、衛生陶器の水流を検証する独自開発の流体解析モデルを活用した。TOTOは基礎技術を確立できたと評価しており、今後は装置の耐久性を高めて4万時間の運転を実現し、2007年での実用化に目途をつけたいとしている。(日経産業、日刊工業新聞04年9月17日、電波新聞9月23日)  
6.PEFCの要素技術の開発研究
(1)東工大
 東京工業大学総合理工学研究科の大坂教授の研究グループは、PEFCやDMFCのカソード用触媒として、コバルト錯体とマンガン酸化物の2種類の物質を組み合わせることにより、それが白金触媒に替わる触媒能力を示すことを確認した。動的能力では白金触媒に劣るが、静的な酸化還元能力は、白金と同等の触媒能力を発揮している。ナノレベルで構造や粒径を制御すれば、白金を上回る能力を出す可能性があると研究者は述べている。(日経産業新聞04年8月30日)

(2)産総研
 産業技術総合研究所は9月16日、PEFC電極触媒において、白金・ルテニウム合金に替わる新たな高性能触媒を開発したと発表した。白金の補助触媒として、バナジウムやニッケル、鉄などの金属を有機化合物と結合させた有機金属錯体を使う。すなわち、これは白金の化合物と有機金属錯体を混合し、カーボン粒子の上に担持した状態で蒸し焼きすることによって作成した電極触媒であり、100ppm以上のCO耐性を有している。作用機構については解明中としながらも、1つの仮説として有機金属錯体が熱処理の過程で白金と複合体を形成し、白金の電子状態を変えたためと推定している。この手法が実用化されれば、改質プロセスを含めたPEFCシステムのコストが大幅に削減できると期待される。(日本経済、日経産業、日刊工業新聞、化学工業日報04年9月17日、電気新聞9月24日)

(3)原研・東大
 日本原子力研究所・高崎研究所と東京大学の研究グループは、低湿度でも性能が落ちないPEFC電解質用固体高分子膜を開発したと発表した。この膜はフッ素系膜に放射線を照射してスルホン酸分子をより多く結合させた点に特徴がある。80℃、湿度70%の使用条件で実験したところ、従来の高分子膜に比べてイオン伝導率が約4倍に向上した。又従来の膜はスルホン酸分子を結合させるために化学反応を繰り返す工程が必要であったが、新しい膜は放射線照射のみによって結合させるので、製造コストを低減させることができると期待されている。(日経産業新聞04年9月28日)

(4)旭硝子
 旭硝子は9月28日、高温耐久性を大幅に向上させたMEAの開発に成功したと発表した。新開発のMEAは、新しい化学構造のプロトン導電性ポリマーコンポジットを利用することにより、120℃の高温下で劣化率(フッ素イオンが溶け出す量)を従来の1/100〜1/1000に抑制、それにより2000時間以上の連続運転が可能になった。これによりPEFCの運転温度を大幅に引き上げられると期待しており、同社は複数の自動車メーカーにサンプルを提供、評価を依頼する予定である。(日本経済、日経産業、日刊工業新聞、化学工業日報04年9月29日、日刊自動車新聞9月30日)  
7.家庭用および事業用PEFCの開発と実証、事業展開
(1)東芝IFC
 東芝IFCは、水素利用700WPEFCコージェネレーションシステムを開発、発電効率44%(LHV)を実現した。PEFCでの水素利用率は80%で、残る20%の水素は触媒燃焼で燃やし、湯を70℃にまで昇温したり発電にカスケード利用する。又同社はFCシステムと補機類、貯湯槽を縦型にし、同一パッケージに収納するシステムを開発、貯湯槽は150Lとエコキュートの40%の容量でコンパクトにした。(日刊工業新聞04年9月9日)

(2)東京ガス
 東京ガスは、9月16日、家庭用PEFCコージェネレーションシステムを総理新公邸に設置すると発表した。細田官房長官が、総理新公邸にFCを設置すると発言したことを受けて、積極的に対応していくことを決めた。利用する機器としは、03年から同社が共同開発を行ってきた松下電器産業、荏原バラードの2社の発電容量1kW・貯湯槽容量200Lの製品を各1台ずつ納入する方向で検討している。(読売、朝日、毎日、日本経済、産経、電気、日経産業、日刊工業、日刊建設工業新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報04年9月17日、電波新聞9月21日)

(3)松下電産
 松下電器産業は、品質管理の手法をフルに導入して、実用化フェーズと同様な生産方式により、家庭用PEFCの最終試作器を04年10月までに数十台製作、11月以降限定生産に入る。国の大規模モニター事業としてガス会社や石油会社が家庭用FCを400台程度導入するのを睨んでの処置である。同社はフルスタックで最長15,000時間の実証運転を実施しており、3年間はスタックを替えずに運転できる目処を得ていると語っている。(日刊工業新聞04年9月22日)

(4)伊藤忠・日立造船・ハイドロジェニックス
 伊藤忠・日立造船・ハイドロジェニックス(カナダ)は共同で、PEFCの実証試験を三重県四日市市で開始した。太陽光発電と組み合わせた出力9.9kW設備を、国際環境技術移転研究センター内に完成、実験では太陽光発電により水を分解して1.4m3の水素をタンクに貯蔵し、需要に応じてFC用燃料として導入する。業務用での利用を想定している。(日経産業新聞04年9月30日)  
8.FCV最前線
(1)GM
 GMはFCを利用した社会の未来像をCG(コンピューターグラフィックス)によるアニメで示した。GMのFC事業本部ジョージ・ハンセン日本支部長が、都内で開かれたFC開発に関するセミナーで、ある音楽関係の仕事をする男性の生活をアニメで紹介した。それによると、この男性の家の屋根には太陽光発電装置が設置されており、それにより得られた電力で水素を生成、その水素をFCVに充填する。又男性が経営する音楽事務所の電力は、FCVからの発電を利用して賄うことが可能である。このFCVは“オートノミー”と呼ばれる車台を採用しており、座席などボデイー部分を交換することができるので、仕事場に行くときには2人乗りのスポーツカーの車体を使用、週末にはこれをGMがレンタルする家族向けの車体に交換する。ハンセンは最後に「明日にも実現させたい夢であるが、実現はいつになるのか私にも分からない」と結んでいる。(日刊自動車新聞04年9月10日、化学工業日報9月14日)

(2)岩谷産業
 岩谷産業は9月10日、大阪府、大阪市や民間企業など11団体で構成する“おおさかFCV推進会議”と共同で、“トヨタFCHV”と“ホンダFCX”のFCV2台による東京−大阪間の長距離走行を15日に実施すると発表した。15日には東京都庁から大阪府庁までの往路、21日には大阪府庁から東京都庁までの復路で、東名と名神の高速道路を走行する。同時に移動式水素ステーションを搭載した岩谷産業の専用キャリアが併走する。(毎日新聞04年9月10日、16日、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ9月11日、16日、電気新聞9月13日、日刊工業新聞、化学工業日報9月14日、産経新聞9月15日、16日、読売、朝日、北海道新聞9月16日、電気新聞、化学工業日報9月17日)

(3)ヤマハ
 ヤマハ発動機は9月22日、DMFC(ヤマハDMFCシステム)を駆動源とするFC2輪車“FC06PROTO”の公道走行を開始したと発表した。公道走行のためのナンバーを東京都港区と静岡県磐田市から取得した。05年中に市販の予定。(読売、毎日、日本経済、産経、日刊工業、日刊自動車、西日本、静岡新聞、フジサンケイビジネスアイ、河北新報04年9月23日、日経産業、東京、中国新聞9月24日)

(4)JARI、エン振協
 日本自動車研究所とエンジニアリング振興協会は、10月9〜10日の2日間、大阪でFCVのイベントを開く。国内外のFCV6台を集め、御堂筋でパレードする他、FCVの試乗、講義、又モデルカー工作など各種イベントを開催する。(日経産業新聞04年9月24日、日刊自動車新聞9月25日)  
9.FCV用水素ステーション技術と建設
 日本電工は、工業用水向けで実績のある純水装置を、FCVに水素を供給する水素ステーション向けに受注、今後本格販売に乗り出す。(日本経済新聞04年9月6日)
10.FCの新用途開拓
 荏原は8月30日、水素燃料PEFCを使って交通信号機の非常用電源システムを開発したと発表した。東京都目黒区の柿の木坂1丁目交差点に設置し、9月1日から日本交通管理技術協会と実証実験を行う。水素燃料を蓄えるボンベは7m3、出力は1kWで24時間の発電が可能である。信号機の非常用電源は、現在デイーゼル発電機が主流で、全国で約3,700台が設置されている。これをFCに置き換えれば、LEDと合わせて環境配慮型の信号機となる。(日本経済、日経産業、日刊工業新聞04年8月31日、電気、日刊工業新聞、化学工業日報9月2日、日経産業新聞9月3日) 
11.水素製造および改質技術開発
(1)PEC
 石油活性化センター(PEC)は、出光興産・中央研究所で評価試験を進めてきたPEFC用灯油改質触媒の寿命が、3万時間を突破したと発表した。これはISR−7Gと呼ばれるルテニウム系の触媒で、水蒸気改質に採用されている。硫黄濃度が0.02ppm以下に脱硫した市販灯油を、連続3万時間以上に亘って100%改質し、この間触媒性能の劣化が認められなかった。目標とする最終的な触媒の寿命は、4万時間であり、05年度以降は出光興産の自主研究として上記目標寿命の達成を目指すとしている。(日刊工業新聞、化学工業日報04年9月2日、フジサンケイビジネスアイ9月4日、日経産業新聞9月6日)

(2)Jパワー
 電源開発(Jパワー)は住友精化と共同で、DMEを改質して水素を取り出す水素供給システムの開発に着手した。05年夏までに住友精化の姫路工場で小規模なシステムを設け、フィールド試験運転に乗り出す。このシステムは、姫路工場から導入する毎時10m3のDMEを400℃で改質して30m3の水素を製造する。DMEは石炭や天然ガス、バイオマスなど広範な原料から製造できるし、硫黄分が0でCO2の発生量も少ないクリーンな燃料である。(日刊工業新聞04年9月3日)

(3)荏原等
 荏原は、丸善石油化学、東洋エンジニアリングと共同で、エチレンの製造副産物から水素を取り出す技術を開発した。エチレンは原油を蒸留してつくるナフサを分解して製造するが、その過程でエチレンボトムと呼ばれる副産物が発生する。開発した技術は、まず荏原が持つ高温で廃棄物を分解するガス炉にエチレンボトムを入れて熱分解し、含まれるナフサや灯油などの成分を気化させ、次に東洋エンジニアリングの改質炉で水素に転換するというプロセスである。ガス化の過程で出るタールなどは燃焼させる。平均的なエチレンプラントで1日に発生する副産物は250トンであるが、これを処理すると約50万m3の水素を取り出すことができる。
 石油精製などで使う水素は現在ナフサから作っているが、副産物の活用ができれば、原油使用量を減らすとともにコスト削減にもつながると期待されている。国内の発生量は約70万トンで、これを水素に転換できれば、石油精製やFCに用途が広がることになる。06年度には国内の石油化学工場に30〜50億円を投じて実証炉を建設、08年には処理能力が200〜300トン/日の実用設備を建設したいと考えている。 (日本経済新聞04年9月23日)  
12.水素貯蔵技術の開発
 産業技術総合研究所は、超臨界CO2と担持ロジウム触媒との組み合わせによる有機系水素貯蔵材料の合成技術を開発した。産総研超臨界流体研究センターの白井有機反応チーム長は、超臨界CO2と担持ロジウム触媒を用いて、60℃の条件下でナフタレンの水素化反応を行い、転嫁率、選択率ともに100%でデカリンを得ることに成功した。超臨界CO2の溶媒効果によって触媒表面が清浄化され、触媒の繰り返し使用や長期使用が可能になる。反応後生成物を簡単に分離でき、触媒とCO2は容易に回収再利用ができる。デカリンやシクロヘキサンなど環状飽和炭化水素は、ナフタレンやベンゼンに変換する際に水素を放出する。デカリン1分子は水素5分子を貯蔵(デカリン100gで約8gの水素を貯蔵)することが可能で、安全性にも優れるため、水素貯蔵材料として期待されている。しかし、従来のナフタレンの水素化では担持白金触媒を用い、反応温度200℃以上の高温で行っている。そのため分解副生物や高分子環状副生物が生成され、収率が下がるという課題があり、又反応中に触媒表面に炭素質が堆積し、触媒が劣化しやすいという欠点があった。(日経産業新聞、化学工業日報04年9月21日) 
13.マイクロFCの開発
(1)水素エネルギー研究所
 水素エネルギー研究所は、ノートパソコン用に最小クラスのマイクロFCを開発した。基本構造の最小単位が縦3cm、横2cm、厚さ1mmで、重さが5gである。ノートパソコンに25Wの出力を供給する場合は、50枚重ねる。水素化ホウ素ナトリウムをアルカリ溶液に溶かした液体を燃料として使い、したがって付帯機器として燃料供給装置を備える。常温でもメタノールに比べて単位面積当たりの出力が4倍高くなる。電極に白金など高価な触媒を使わないので、付帯機器を含めても1万円以下で商品化できると、須田社長は語っている。(日本経済新聞04年9月7日)

(2)ドコモ
 NTTドコモは9月30日、第3世代携帯電話“FOMA”用マイクロDMFC(重さは190g)を試作したと発表した。現段階では、受電1回分の電力をFOMA端末に供給することができる。電力量を4回分まで増やして06年度に商品化する方針である。同社は富士通研究所にFOMA用マイクロFCの開発を委託してきたが、05年度末に端末に外付けできるタイプとして開発を完了する見込みである。(日本経済、産経、電気、日経産業、日刊工業、電波、東京新聞、フジサンケイビジネスアイ04年10月1日)

(3)松下電器産業
 松下電器産業は、砂糖で動く小型FCを試作、発電実験に成功した。試作したFCはコイン状で直径5cm、厚さ2cmで、電極(負極)に砂糖を分解する酵素を付着してある。砂糖が水とCO2に分解する過程で電子を放出(酸化)、外部回路を経て正極に電子が移動する。電極には酸化チタンの微粒子も付けてあり、光を当てると砂糖の分解反応が速くなる。実験では単4電池の1/4程度の約300μWの発電に成功した。これは心臓ペースメーカーを動かす出力レベルに相当する。砂糖は安全で調達しやすく、持ち運びも容易であり、同社は「体内の糖分を燃料に利用することも可能で、将来は心臓ペースメーカー向け電源として利用できる」と語っている。(日本経済新聞04年10月1日)  
14.FCおよび水素関連計測技術
(1)オムロン
 オムロンはわずかな気体の流量を検出できるフローセンサーを、家庭用FC向けに供給する。毎秒1cm/s以下の微流速で風量計測が可能であり、FCの燃料や空気の流量測定用に売り込む予定である。(日経産業新聞04年9月6日)

(2)三重県科学技術振興センター
 三重県科学技術振興センターは、COガスセンサーの感度を10倍以上に高める技術を開発した。家庭用ガス漏れセンサーの多くは、直径1〜10μm程度の酸化スズの粒子からなる薄膜などで電極を覆っている。新技術では酸化スズの薄膜作成時に有機成分のポリエチレングリコールをスズ溶液に添加、検知素子は800℃程度で焼成してスズ薄膜を定着させているが、その際ポリエチレングリコールが酸化スズ粒子同士の結合を妨げ、粒子は直径0.01μm程度になる。この結果、対面積当たりの粒子数が増え、ガス検知面積も拡大し、センサーの感度が上がる。三重県はこれをPEFC用ガスセンサーなどの商品化に結び付けたいと考えている。(日経産業新聞04年9月8日)

(3)横浜国大等
 横浜国立大学大学院工学研究院の水口教授と東洋インキエンジニアリングは共同で、室温で動作する高感度水素センサーを開発した。有機顔料で水素イオン親和性が高いピロロピロール系顔料(DPP)の誘導体を用いたガスセンサーで、水素イオンと結合して電気抵抗が低下する現象を利用して水素を高感度で検知する。DPP薄膜に櫛型の透明電極を形成したシンプルな素子構造であり、電極内にパラジウムや白金などの触媒が組み込まれている。常温では、水素濃度0.1%で電気抵抗が2桁低下する水素選択性があり、応答速度もミリ秒と優れている。素子構造は簡単で、低コストでの量産が可能と考えられている。(化学工業日報04年9月9日)

(4)チノー
 チノーはFC向け評価装置の自社ブランド化を進める。センサーなど要素技術開発と平行して、評価装置に必要な機器開発に着手、FC性能を測る測定器の開発も始めた。同社は評価装置の標準機器として、100−200Wのコンパクトタイプと、高機能タイプ“FC5000シリーズ”を提供しているが、新たに1−10kWの大容量を評価するショートスタックタイプを市場投入する。又FCの評価目的が性能から耐久性へシフトしていることから、第3者機関に連続運転試験を委託する予定。今後は燃料の改質や加湿などの要素技術とともに、SOFC、マイクロDMFC評価装置の標準機種開発を進めていく。(日刊工業新聞04年9月20日)  
15.FC関連事業
(1)有志によるFCサービス事業
 FCの専門家、工学系コンサルタント会社経営者ら5人が、中小企業のFC事業支援を目的とする組織を設立した。事業の第1弾として05年4月を目途に、FCの研究開発に役立つ支援ソフトウエア付ハンドブックをオーム社から出版する。顧客の希望を見極めながら、技術移転サービスや、事業コンサルテイングなどを行う計画である。この組織は本間FCDIC常任理事が代表となって設立した。任意団体としてスタートし、事業の拡大に合わせて賛同者を登録制で会員にし、メンバーのスキルや人的ネットワークを提供する形で、FCの事業化を目指す企業をソフト面から支援する。(電気新聞04年9月10日)

(2)北川工業
 北川工業(名古屋市)は、ドイツの公的研究所“フラウンホフアー”の半導体微細加工部門“マイクロエレクトロニクス信頼性研究所(IZM)”と業務提携を結んだ。同研究所が開発したDMFC用マイクロポンプの技術ライセンスを日本、中国、台湾の企業に仲介できるとともに販売窓口にもなる。このポンプはFC内の液体流量を変更するために必要な部品である。(日刊工業、中日新聞04年9月23日、日経産業新聞9月24日)  

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・A POSTER COLUMN

太陽光発電を組み合わせた分散型エネルギーシステムの戸建て住宅の環境評価
 
 神奈川県と民間企業によるツインシテイ協働研究モデル事業“戸建て住宅型エネルギー自立街区の研究”の構想と研究成果が纏まった。これは戸建て住宅型のエネルギー自立街区を構築する構想で、住宅20~30戸を対象とし、街区規模4,000〜6,000m2を想定している。戸建て住宅地に、太陽光発電などとFC、ガスエンジン、マイクロガスタービン等の動力源を組み合わせた小規模分散型コージェネレーションシステムを集中的に導入することによって、1次エネルギー消費量は63%、CO2排出量は71%、NOxおよびSOx排出量は100%削減、更にランニングコストも86%削減できるとの試算結果を発表した。この構想を実現するためには、電気事業法上の取り扱い(街区を1機構1需要とみなす)、居住者組織の設立、定期借地方式の導入、コーポラテイブ住宅の手法採用、公的補助の導入を挙げている。(建設通信新聞04年9月17日)