第100号 ハイブリッド熱化学法による水素生成技術
Arranged by T. HOMMA
1.総合科学技術会議
2.国土交通省
3.経済産業省
4.地方自治体による政策と施策
5.SOFCの開発と実証研究
6.PEFC要素技術の開発と事業展開
7.PEFCの実証運転
8.FCV最前線
9.改質および水素生成技術の開発
10.水素貯蔵技術の開発
11.携帯機器用マイクロFCに関する動向
12.FCおよび水素関連計測技術
13.FCに関する新しい事業展開
・A POSTER COLUMN
1.総合科学技術会議
 総合科学技術会議は、05年度の科学技術予算を改革するため、新たに各府省の施策を統括する“科学技術連携施策群”の仕組みを創設するとともに、優先順位付けの改善や、競争的研究資金を大幅に拡充することを決めた。同会議では暫定的にポストゲノム、ユピキタスネットワーク、次世代ロボット、水素利用・FC、ナノバイオテクノロジーなど8分野を上記施策の対象として選定した。(日刊工業新聞04年7月26日) 
2.国土交通省
 国土交通省は、7月30日、概算要求をにらんだ重点施策を発表した。暮らし、安全、環境、活力の4分野で8テーマを設定したが、環境面ではトラックなど重量車向け燃費基準の導入、CNG車普及促進モデル地域の新設等に加えて、FCVの技術開発を盛り込んだ。(日刊自動車新聞04年7月31日) 
3.経済産業省
 経済産業省は、05年度自動車関連予算・税制の要求方針を7月30日の自民党経済産業部会自動車小委員会に報告した。FCV関連では、大規模実証試験実施(04年度は30億円)、研究開発、性能評価手法の標準化(同149億円)、政府率先導入、規制再点検などを予算要求する。(日刊自動車新聞04年8月2日)

 経済産業省は8月3日、2005年度予算の概算要求に向けた重点施策4項目をまとめ、自民党の経済産業関係合同会議で報告した。4項目の内、エネルギー環境政策の推進では「大規模集中型と分散型電源の適切な組み合わせを図る。具体的には原子力を基幹電源として推進すると同時に、定置用FCの導入支援や異業種連携によるFCの基礎的研究の強化」などを謳っている。(電気新聞04年8月4日)

 資源エネルギー庁は、05年度から家庭用1kW級FCの実用化に向けて、トップランナー(最も安い価格を提示した企業)方式で、年間400台規模のモニター事業を立ち上げる。3年間のモニター事業を実施して、07年度には5,000台に増やし、100万円/台までのコスト引き下げを図る。このための予算25億円を要求する。(日刊工業新聞04年8月18日)

 資源エネルギー庁は、産業技術総合研究所に“FC先端科学研究センター”(仮称)を設置し、全国の若手研究者に参加を呼びかけて、性能を向上させるための基礎研究を行う。その他SOFCの開発研究に33億円、FCの主要事業者10社が参加して設立する開発のための新会社に出資する初年度分10億円などを含めて、05年度FC関連予算として総額354億6千万円を要求する方針を発表した。(日刊工業新聞04年8月18日、日本経済新聞8月23日、産経新聞8月25日)

 経済産業省は8月26日、05年度予算について、科学技術振興費を04年度比約30%増の1,789億円を要求すること、および資源エネルギー関係の概算要求を発表した。エネルギー特別会計の要求額は、04年度予算に比べて4.2%減の1兆803億円となり、これに含まれる電源特会も11.9%減の4,436億円となった。経産省は地球温暖化対策大綱の見直しなどを踏まえ、省エネルギー対策の強化を重点要求の第1に掲げた。新エネの普及ではFCの技術開発・導入促進に355億円を盛り込んだ。(電気、日経産業新聞、化学工業日報04年8月27日)

4.地方自治体による政策と施策
(1)山口県
 山口県は05年1月、ソーダ工場であるトクヤマの徳山製造所や東ソの南陽事業所から発生する高純度の副生水素をパイプラインを通して直接供給し、周南市のコンビナートで水素燃料FCコージェネレーションシステムの実証実験を始める。既存のパイプラインから約100mの配管を新設する工事は04年中に完了、年明けから1年間の予定で実証実験を行う。周南市にあるこれらのソーダ工場からは、塩水の電気分解をベースとするカセイソーダの生成プロセスで、高純度の水素が年間約3億1,000万m生成される。これらの副生水素は多結晶シリコンの原料やウレタン製造に必要なアニリンの原料に利用可能であり、価格設定が課題である。トクヤマの白神徳山製造所副所長は「40円/m程度であれば、ぎりぎり絵が描けるのではないか」と話している。環境省の委託費で04年度には3,000万円を予算化、7月20日には関係企業や大学で構成する実証研究委員会を発足させた。又6月中旬に認められた国の地域再生計画“周南市地球温暖化防止まちづくり計画”には、06年度に出力1kWの家庭用3基と5kWの業務用1基の設置を明示した。(中国新聞04年7月24日)

(2)三重県
 三重県は、民間企業と共同で、太陽光発電とFCを組み合わせた新発電システムの実証実験に乗り出す。実験は産業集積を目指す構造改革特区に認定された四日市市内の国際環境技術移転研究センター(ICETT)で実施する。もともと同センターに設置されている太陽光発電の発生電力を使って水を分解し、そこで得られた水素をタンクに貯蔵、必要に応じて出力9.9kWPEFCにより電力を発生させるシステムである。PEFCはハイドロジェネックス製で水電解水素発生装置は日立造船が担当、約8,400万円の費用の内、県がその半額を補助する。(中日新聞04年7月24日)
 三重県でFC開発拠点形成に向けたプロジェクトが始動する。8月中に定置用FCによる実証試験の実施案件が決まり、コスモ石油、昭和シェル石油、出光興産、富士電機アドバンストテクノロジーなどの6社が選ばれる見通しである。三重県はFCを開発する企業に対して実証試験の場を提供し、開発拠点の集積を図って、新産業の創設を目指すことにしている。(日刊工業新聞04年8月2日)

(3)宮城県
 宮城県知事の諮問機関である宮城県自然エネルギー等・省エネルギー促進審議会は、自然エネルギー等・省エネルギー促進基本計画を05年9月までに策定する計画であることを明らかにした。基本計画には太陽光発電、太陽熱利用、風力発電、水力発電、FCの県内での普及目標や普及に向けた具体的プロジェクトなどを盛り込む。(日刊建設新聞04年8月3日)

(4)福岡県
 福岡県や九大の呼びかけで、8月3日福岡水素エネルギー戦略会議(会長八木新日鉄副社長)が発足した。産学官から144機関が参加、製鉄所で鉄鉱石を精錬する際に発生する大量の水素を利用して、FCや水素貯蔵技術などの研究を進め、将来には関連企業の集積を図る。九大が移転する元岡地区には水素エネルギーのみを使う“水素キャンパス”をつくることも計画している。(西日本新聞04年8月4日)

(5)静岡県
 静岡県静岡工業技術センターは、微生物を利用して生ごみからメタンガスを生成し、FC用燃料とするプラントの開発を進めている。これまでの研究で、槽内の微生物の密度を高める技術を開発し、少ないゴミでも効率良くガスを取り出せる手法を実現した。実用化にはまだ数年はかかると見られている。(フジサンケイビジネスアイ04年8月23日)
5.SOFCの開発と実証研究
 電源開発(Jパワー)は発電セルの構造を簡略化し、部品点数を40%削減した新構造SOFCの実用化に向けて、内部改質型25kWシステムの連続実証運転を、05年4月から技術開発センターで実施する。セルは三菱重工が提供、Jパワーがシステムに組み上げる。06年度からは25kWサブモジュールを組み合わせて、出力150〜200kWで1万時間の実証運転を行う計画である。
 Jパワーは三菱重工と共同で、円筒横縞型セルを開発、10kWで7,000時間、セル内部での内部改質で755時間連続発電を実証している。この成果をベースに、低コスト化を目指して新構造のモジュールを開発した。これは燃料がセル内をワンスルーで移動し、セルが機械的応力で破壊しないよう、両端を支えていた3cm厚の管をニッケル合金系0.3mmの薄厚材料に代え、フジツボのような形で支える構造とした。改質器は別置きカートリッジ構造で、多様な燃料への対応と、メインテナンス性の向上を図った。実証運転が予定されている出力25kWのサブモジュールは、100本のセルを束ねたカートリッジ5本で構成され、それに改質器を設置したシステムとなっている。熱利用としては、吸収式冷温水器も設置し、トータル熱効率70%台を実現する意向である。
 当面燃料には都市ガスを使うが、燃料を変えた実証も次のステージで計画しており、最終的には石炭ガス化と結びつけた数千kW規模での実用化を想定している。又コストについては、数年内にkW当たり百数十万円を達成し、最終的には同20万円以下を目指す。
(日刊工業新聞04年8月19日) 
6.PEFC要素技術の開発と事業展開
(1)イネオスクローエンタープライズ
 イギリスの本社を置くイネオスクローエンタープライズは、FC部材事業をアジア太平洋地域で本格展開するため、日本に事務所を開設した。同社はPEFCの金属系セパレータにおける耐食性を向上させるための被覆などに応用できる金属材向け無機系コーテイング材“PEM coat”(フッ素系をベースにした材料)を開発した。これまでの実証で7,000時間の耐久性をクリアしており、既にヨーロッパ市場で高い評価を得ている。(化学工業日報04年8月2日、日経産業新聞8月12日、日刊工業新聞8月24日)

(2)東大
 東京大学の近藤特認助教授らの研究グループは、もみ殻の燃えかすを高強度のマグネシウム合金の製造原料に利用する技術を開発した。日本とタイで採取したもみ殻の成分を詳しく分析した結果、二酸化ケイ素が94〜98%含まれていることに着目した。灰とマグネシウムを重量比1対1で混合、500℃で10分間加熱することにより、マグネシウムシリサイドを製造した。マグネシウム合金は軽量で、耐腐食性にも優れるので、PEFCのセパレータに応用できると期待している。(日経産業新聞04年8月2日)
7.PEFCの実証運転
(1)NEF
 NEFはPEFCフィールド実証テストで、純水素を使った1kW級PEFC2台を、8月末に東京都内と大分県内の住宅に設置して運転を始める。集合住宅に1台の大型改質器を導入し、そこからパイプラインで家庭に設置したFCに水素を供給しようという構想の検証となる。(日刊工業新聞04年8月19日、化学工業日報8月20日)

(2)関彰商事
 つくば市の新エネルギー特区で、関彰商事(下館市)が第1号の事業認定を受け、新日本石油が開発中のLPガス燃料家庭用PEFCコージェネレーションシステムを社員宅で稼動させて試験運転を開始する。(日刊工業新聞04年8月27日)  
8.FCV最前線
(1)ホンダ
 ホンダは7月29日、自社製FCスタックを搭載したFCV“FCX”が、アメリカ環境保護庁(EPA)とカリフォルニア大気資源局(CARB)から、販売するための認定を受けたと発表した。ホンダの自社製スタックは、金属プレスセパレータと新素材のアロマテイック電解質膜を採用しており、シンプルな構造で、部品点数は従来型の半分、コンパクト化して出力密度を2倍以上に向上した。−20℃から95℃まで発電が可能である。(毎日、日本経済、産経、日経産業、日刊工業、中日、北海道、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ04年7月30日)
 ホンダは8月24日、環境対応型の二輪車として原付ハイブリッド二輪車、FC二輪車、原付電動二輪車を市販化に近いモデルとして開発したと発表した。FC二輪車には自社製FCシステムを搭載している。車体中央部にFCスタック、周辺に補機類を配置し、同クラスのエンジンコミューターと同等な車体サイズを実現した。(日本経済、日経産業、日刊工業、日刊自動車新聞、フジサンケイビジネスアイ、化学工業日報04年8月25日)

(2)岩谷産業
 岩谷産業は、東京―大阪間の550kmを、同社がリースするトヨタFCHVとホンダFCXの2台で走行実証実験に挑む。東京有明の水素ステーションを出発、独自に開発した移動式水素ステーションとFCV搬送用専用キャリアカーが高速道路のサービスエリアでFCVに水素を充填し、大阪市で8月18日に行う低公害車フェア会場まで550kmを走行する計画である。(日刊工業新聞04年7月30日)

(3)玉川大
 玉川大学術研究所が開発した太陽電池とFCを併用したハイブリッドソーラーカー“アポロンデイーヌ号”のデモ走行が、8月4日JR新庄駅前アビエス広場で行われた。悪天候や夜間でも走行可能で、03年12月には約4000kmを9日間で走破するオーストラリア横断に成功した。(河北新聞04年8月5日)

(4)スズキとGM
 スズキとGMは8月5日、両社が開発しているFCVの700気圧圧縮水素貯蔵システムについて、高圧ガス保安協会の認可を得たと発表した。04年内にも公道実証運転を開始する。この700気圧水素ガス貯蔵システムは、アメリカのクオンタム社が開発、住友商事がスズキに納入した。(朝日、毎日、日本経済、日経産業、日刊工業、中日、静岡、日刊自動車新聞、化学工業日報、フジサンケイビジネスアイ04年8月6日、日刊水産経済新聞8月17日)

(5)出光興産
 出光興産が、04年3月にホンダからリース購入した“FCX”が、8月9日で走行距離1万kmを達成した。これまでに延べ566人が試乗した。(化学工業日報04年8月13日)

(6)栗本鐵工
 栗本鐵工所が、PEFC搭載のスクーターや車椅子を、大阪城公園内で開催されたイベント“なにわ百年城下町”で展示、一般向けの試乗も行った。(日刊自動車新聞04年8月14日)
  
9.改質および水素生成技術の開発
(1)京大
 京都大学大学院工学研究科の江口教授らの研究グループは、DMEから水素を製造するための高性能な銅・マンガン・アルミナ触媒を開発した。クエン酸錯体法を使ってスピネル構造を形成することにより銅を均一に高分散化し、低温での触媒活性を高めることによって、既存の銅・亜鉛・アルミ系触媒に比べて約100℃低い380℃で転化率100%を実現した。作製した触媒は銅とアルミナの触媒作用によりDMEを部分酸化して水素を生成する。低温環境で触媒活性が発揮されれば、触媒寿命の向上が図れることが見込まれる。より具体的には、まず銅硫酸塩とマグネシウム硫酸塩を混合、クエン酸を加えて200℃程度で熱処理する。その後900℃で焼成、還元させて銅を析出する。この時銅とマグネシウムは原子レベルで混ざり合っている。1000℃以下で焼成、高温処理による表面積低下を抑えたことも、銅を均一に高分散させることに寄与している。同研究グループは、今後より低温で触媒活性の高い触媒の開発を進めるとともに、DMEを直接FC用燃料として使える触媒の開発にも取り組むことにしている。(化学工業日報04年7月26日)

(2)バブコック日立
 バブコック日立は、工業用オンサイト水素製造装置に加えて、FCV用ステーション分野やPEFC向けに市場開拓を行う。現在家庭用PEFC向けでは、NEDOプロジェクトで水素製造部門を担当している。オートサーマル改質方式を採用、燃焼触媒(ハニカム・パラジウム系)の他、CO転化触媒(白金系)やCO選択触媒(ルテニウム系)など、DSS運転に対応した高性能触媒を開発中である。(化学工業日報04年8月5日)

(3)核燃料サイクル開発機構
 核燃料サイクル開発機構は、熱化学法と電気分解を組み合わせた“ハイブリッド熱化学法”と呼ばれる水素製造装置を開発、製造全過程の低温化と同時に装置のシンプル構造化を達成して、500〜550℃の低温での効率的な水素製造に成功した。これにより高温ガス炉のみならず、“もんじゅ”や“常陽”など既存のFBRでも水素製造の見通しが立ったことになる。(原子力産業新聞04年8月19日)

(4)日本原子力研究所
 日本原子力研究所は8月26日、水を熱分解して水素を取り出す装置の自動運転に成功したと発表した。電熱器の熱を使う方式で、自動化により1週間の連続運転に成功、今後大型装置を試作して実用化に結びつける。具体的には、水にヨウ素や二酸化硫黄を注入して3段階の化学反応で水素を抽出する。03年8月に基礎技術を開発したが、これまでは原料の供給速度を手動で調整する必要があり、20時間の連続運転が限界であった。研究チームは原材料の組成を超音波で計測する装置を組み込み、計測データをコンピューターで処理するシステムを開発、原料の供給速度を自動制御することに成功した。実験では約30L/hの水素を製造した。(日経産業新聞04年8月27日)

(5)日本電工
 日本電工はFCV用水素ステーションと、店舗や住宅に併設する定置式FC向けに、純水製造装置を受注した。工業用の純水装置やプール・井戸水の浄化装置の技術を応用して開発したもので、今回の成約を弾みに新規需要を開拓する。(日刊工業新聞04年8月27日)
  
10.水素貯蔵技術の開発
(1)広島大
 広島大学自然科学研究支援センターの藤井特任教授らは、FCVに搭載可能な高容量水素貯蔵材料を開発した。水素化リチウムとマグネシウムアミドを8対3で合成した粒子状の材料で、水素貯蔵容量は7wt%、150℃でも1気圧以上の圧力で水素を吸蔵・放出することができる。(中国新聞04年7月28日)

(2)九州大学等
 九州大学大学院工学研究院の杉村教授は、九州電力、三菱商事、キューキ(福岡市)と共同で、三菱商事の高圧縮水素エネルギー発生装置(HHEG)を使った40MPaの高圧水素を製造できる水素ステーションの開発に着手する。九大新キャンパスに05年度中にステーションを設け、5月から実証実験を行う。HHEGは、高圧下で固体高分子膜に純水を送って通電し、水電解の原理で高圧の水素と酸素を発生させるが、膜にかかる差圧の発生をさけるため、磁気式位置センサーでタンク内の圧力を一定にする。水素の純度と効率は高く、動力は半分以下になると述べている。(日刊工業、西日本新聞04年8月3日)

(3)長崎総合科学大
 長崎総合科学大学は、特殊構造のナノテクノロジー素材、ナノカーボン素材の新種、を開発した。リチウムイオン電池の電極への適用を目的としているが、水素の貯蔵にも利用が可能であると、同大学の藤井教授は語っている。炭素だけのナノカーボンに比べて化学的に安定している。(日経産業新聞04年8月16日)
  
11.携帯機器用マイクロFCに関する動向
(1)IEC/TC
 IEC/TC105の中に、マイクロFCについて、日本からの提案に基づいて、互換性に関するWG10を新設、2007年までにFCや燃料カートリッジの仕様について、標準のガイドライン策定を目指す。同WGの国際議長に東芝の上野文雄氏が就任の予定。(日経産業、日刊工業新聞、化学工業日報04年8月3日、電気新聞8月4日)

(2)アルプス電気
 アルプス電気は、携帯機器用FCの内部で、水溶液を還流させたり、メタノールを補給したりする小型マイクロポンプを開発した。開発したポンプは数種類あり、小さい製品は直径4mm、長さ1cm前後で、電流を流して発生する磁力を利用して液体を吸い込む仕組みである。燃料の過不足を管理したり、又最適な発電条件を満足するように、水溶液内のメタノール濃度を管理するセンサーも開発した。(日本経済新聞04年8月14日)
  
12.FCおよび水素関連計測技術
(1)東北大等
 東北大学工学研究科の山中教授らは、凸版印刷、山武、アメリカのボールセミコンダクターと共同で表面弾性波(SAW)を用いた高性能球状水素ガスセンサーを開発した。単独で水素濃度10ppmから100%までの広い範囲で計測できる。試作したガスセンサーは直径1mmの水晶球で、水素分子を選択的に捉えるパラジウム合金薄膜を蒸着してある。研究グループは、SAWは水素球の赤道上だけを周回し、それ以外の場所には広がらない現象を発見した。この原理を利用して、パラジウム合金薄膜が水素を捉えたときのSAWの変化を増幅して感知することにより、高感度化の実現に成功した。(日刊工業新聞04年8月6日)

(2)岡崎製作所
 岡崎製作所(神戸市)は、保護管(シース)熱電対を使ったFC用温度センサーを開発した。開発したのはシース外径が1.6mmと3.2mmの熱電対で、汎用タイプは正極側エレメントにニッケル・クロム合金、負極側にニッケル・アルミ合金を採用、シースはインコネル製とした。高機能タイプは、負極材料に銅・ニッケル合金を採用した他、シース材料も水素に対する保護性の高い材料を使用しており、超寿命化を図った。動作温度が1000℃のSOFCでも安定的に計測が可能である。福岡工場に1億円を投じ、年間100万本の能力を持つ専用ラインを建設する。(日刊工業新聞04年8月17日)
  
13.FCに関する新しい事業展開
(1)エナージ
 LPG小売の一高たかはし(札幌市)やミツウロコ(東京)、カマタ(同)、サンワ(前橋市)の4社は8月4日、LPGを使ったコージェネレーションやFCの設計、販売、研究などを行う新会社“エナージ”(東京)を共同出資で設立したと発表した。資本金は5,000万円。04年度はLPGを利用したプラグパワー社の4kWPEFCをつくば市内の住宅展示場内に設置し、8月下旬から1年間、公開で実証実験を行う。(電気、日経産業、日刊工業、北海道新聞04年8月5日)

(2)静岡県資源協会と静岡ガス
 静岡県資源協会と静岡ガスは、食品廃棄物(生ごみ)から発生するバイオガスと天然ガスの混合燃料によって駆動するFC発電システムを、05年に静岡市内の学校給食センターに設置し、06年度から実証試験を始める計画を発表した。小型のメタン発酵装置で給食センターから排出された生ごみを、1日当たり300kgの割合で処理する。(静岡新聞04年8月17日)

(3)GM
 GMはダウケミカルのフリーポート工場にPEFCによる出力1,000kW規模の移動可能な発電設備を完成、04年10月から順次運転を開始する。GMはダウケミカルの主力工場に計3万5,000kWの定置式PEFCの導入計画をスタートさせており、今回の1,000kWはその第1弾である。70kWのFCユニット14基を1トレーラーに設置し、それを1単位として計35台を順次工場内に設置する。水素は現在はタービンの熱源に使っている副生水素(純度98%)を高純度化して使用する。(日刊工業新聞04年8月18日)
  

 ―― This edition is made up as of August 27, 2004――

・A POSTER COLUMN

中国が風力・太陽光発電等に2兆円を投資、FCV等には補助金を
 中国政府は、2020年までに風力や太陽光など新エネルギーによる発電所の整備に1,400億元(約1兆9,600億円)を投じる。エネルギー不足や環境問題が経済成長や安全保障上の足かせになりかねないため、省エネ型社会への転換を目指す。
 現在、中国で使われる発電燃料の7割が石炭であるが、2020年までに石炭などの化石燃料を使わない発電源の整備に5千億元を投じるが、その内3,600億元を原子力発電所の整備に、残る1,400億元を風力や太陽光発電の整備に当てる。内モンゴル自治区やチベット自治区などに風力や太陽光発電設備を重点的に設置する計画である。
 一方、省エネ対策としては、2010年までに乗用車の新車に対して、平均燃費を2003年比で15%以上改善させる目標を設定、ハイブリッド車やFCVの開発費に補助金を出すほか、燃費性能の高い小型自動車の開発・導入を政府が指導・奨励する。自動車メーカーには燃費の公示を義務付ける。(日本経済新聞04年8月18日)


環境省が水素燃焼トラックの技術開発プロジェクトを開始
 環境省は05年度から3年計画で、水素燃焼自動車(トラック)の技術開発プロジェクトを開始する。プロジェクトは提案公募型で開発研究を進め、出力と価格面で市場投入が可能な車両を開発することを目的に、初年度2億円を要求する。水素エンジンの場合は、水素ステーションの設置が進めば普及しやすくなるとともに、開発費がFCVに比べて大幅に安上がりとなるメリットがある。(日刊工業、日刊自動車、東京新聞、化学工業日報04年8月25日)