第88号 来年度にSOFC実証支援制度が始動

Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2. 地方自治体・公共団体による施策
3.海外の政府関係機関による施策
4.PAFCの事業展開
5.SOFCの開発研究
6.PEFCの新技術開発と事業展開
7.家庭用PEFCコージェネレーションシステムの開発と実証
8.FCV最前線
9.FCV以外の移動体用電源
10.FCV対応水素ステーションの建設
11.改質、水素生成および供給技術
12.水素貯蔵技術の開発
13.情報機器端末用マイクロFCの開発
14.その他FC関連技術
・A POSTER COLUMN

1.国家的施策
(1)経産省
 経済産業省はDMEの実用化開発や、PEFC開発などLPガスの効率的利用促進、需要構造の安定化を強化することを目的とした予算を04年度に概算要求する。特に新規エネルギーの内DME関連では、燃料としての普及基盤技術の確立に向けた実証試験研究に6億1,000万円、又FCやガスエンジンによるLPガス利用コージェネレーションシステムの本格的普及を図るため、補助要件の緩和に踏み切るとともに組み換え新規で2億4,000万円を要求した。
(化学工業日報03年9月3日)
 経済産業省は04年度に、SOFCの実用化促進を目指した支援制度を創設、試作機の性能評価を行う実用化開発段階のテーマを民間企業から幅広く募り、採択案件には交付金を給付する。試作機設置に必要な経費の半額を国が負担することを検討しており、04年度は総額17億円を見込んでいる。
(日本工業新聞03年9月5日、電気新聞9月9日)

(2)NEDO
 NEDOはFCV用700気圧水素ガス貯蔵タンクの開発プロジェクトを、JFEコンテイナー、IHI、岩谷産業グループに委託、又水素タンクの実証試験など安全性を評価する爆発実験設備を日本自動車研究所に委託して建設する。
(日刊工業新聞03年9月9日)

 
2.地方自治体による施策
(1)北海道
 北海道内の自治体が、太陽光や風力、FCなど新エネルギーを活用した街づくりを進める。室蘭市は水素エネルギーを地域インフラの柱にするための産学官による研究会“室蘭地域水素利用タウン研究会”を発足させた。新日本製鉄室蘭製鉄所、日本製鋼所など民間5社の他、室蘭工業大学、北海道開発局室蘭開発建設部などが参加する。
(日経流通新聞MJ 03年9月4日)

(2)大阪府
 FCVの普及促進を意図して、大阪府や自動車メーカ、ガス会社などは、FCVに不可欠な水素ステーションを府内各地に設置する方針を決めた。都市再生と自動車公害対策の面から官民が連係して独自のプロジェクトを展開する。9月17日に“おおさかFCV推進会議”を発足させ、水素ステーションの設置と府内での走行実験に乗り出す。プロジェクト参加団体・企業は、大阪府、大阪市、近畿経済産業局、近畿運輸局、岩谷産業、ダイハツ工業、大阪ガス、都市交通問題調査会である。
(読売、朝日、毎日新聞03年9月11日)
 おおさかFCV推進会議の初会合が9月17日に大阪府の特別会議室で開催された。
(日刊工業新聞03年9月17日、読売新聞9月18日)

(3)つくば
 つくば市が進める“つくば市新エネルギー特区”構想が、政府の構造改革特別区域計画の第2次提案募集で認定を受けた。対象地域は市全域で、電気事業法上の家庭用FCの設置に関する規制を1部緩和して、FCを事業用電気工作としての扱いから一般用電気工作物に位置づけ、保安規定の届出と電気主任技術者の選任を不要とする。更に停止したときに装置内に残留する燃料ガスを排除するための不活性ガスボンベの常備義務も撤廃した。その替わり設置するFC1台ずつに対して技術的な面で安全評価を行うことが義務づけられた。同市は専門家や学術経験者、市民、企業、防災保安関係機関で構成する安全評価委員会を近く設立し、市としての認証制度を発足させる。FCについては家庭用、事業用併せて2010年度までに1万kW程度を普及させたい意向である。
(電気新聞03年9月19日)

 
3.海外の政府関係機関による施策
(1)フランス政府
 フランス政府は、04年に4,700ユーロ(約62億円)を投じて、FCVや電気自動車の開発を加速させる計画を発表した。民間と併せると03〜04年の2年間で開発費は1億5,500万ユーロ(約200億円)に達する。
(日本経済新聞03年9月18日)

(2)IPHE
 欧州各国、日本、韓国、中国、インド、ブラジルなど世界十数カ国の閣僚級を集めたアメリカDOE主催水素経済国際協力会合(IPHE)が、03年11月19〜21日にアメリカで開催される。水素経済に向けた研究協力や安全基準の設立を話し合う初めての国際会議である。
(日刊工業新聞03年9月26日)

 
4.PAFCの事業展開
 東邦ガスと岡崎信用金庫は9月10日、岡崎信金が東邦ガスから出力100kWPAFCシステムを導入することで同意した。同信金の本部ビルに設置し、04年2月から稼動する予定。同ビルの電気およびガスのランニングコストは年間約6,500万円であるが、PAFC導入後は年間300〜400万円が節約できると予想されている。
(中日新聞03年9月11日、日経産業、日刊工業新聞9月12日、ニッキン9月19日)

 
5.SOFCの開発研究
(1)東工大
 東京工業大学総合理工学研究科の八島正知助教授らは、SOFC電解質用材料として注目される酸化ビスマスで、酸化物イオン空間分布を正確に求める手法を開発した。電子による影響を避けるためにX線回析に替わって中性子回折を用いたが、この手法によって原子核イオンの動きを観察、酸化物イオンの広がりや伝導経路を推定することができた。又SOFCは高温動作のため、1,000℃までの高温でも測定が可能な中性子回析装置を、東北大学金属材料研究所と共同で開発した。
(日刊工業新聞03年9月5日)

(2)ホソカワミクロン
 ホソカワミクロンは大阪大学接合科学研究所の協力を得て600℃の低温で動作するSOFC用電極の開発に着手した。同社子会社のホソカワ粉体技術研究所(大阪市)内に“FCチーム”を新設し、上記大阪大学野城清教授が開発全体を統括する。ホソカワ粉体研究所は03年2月に、酸化ニッケル粒子とジルコニア粒子を使ったSOFC用電極を開発しており、700℃での動作を確認している。発電効率を高く維持したまま、600℃より低温での動作を実現するため、電極材料用ナノレベルの結合超微粒子を開発、電極の製造にはホソカワミクロンの超微粒子を接着剤なしで結合する技術を適用することにしている。
(日経産業新聞03年9月12日)

(3)関西電力
 関西電力が1997年から開発を進めている低温動作SOFCにおいて、03年春に開発したモジュールは、01年に開発したセルを実用サイズの直径12cmに大型化し、41枚積層した構造になっている。内部改質のため外部から熱を供給することなく運転を継続できる“熱自立”タイプで、発電効率40%を達成している。
(生産性新聞03年9月15日)

(4)東邦ガス
 東邦ガスは9月24日、住友精密工業(尼崎市)と共同で1kW級SOFCシステムを開発したと発表した。東邦ガス総合技術研究所で実証試験を進めており、06年での商品化を目指す。開発した実証機では、スタック構造がコンパクトに設計されており、セルスタック部分の大きさは1kW当たり2リットル程度で体積効率の面で優れている。東邦ガスは今後、5kW級SOFCシステムの開発を進めるほか、排熱回収ユニットを組み合わせたコージェネレーションシステムとして、コンビニや小規模店舗向けに売込む予定である。
(電気、日経産業、日本工業、日刊工業、中日、建設通信新聞03年9月25日)

 
6.PEFCの新技術開発と事業展開
(1)丸紅
 丸紅はアメリカプラグパワー製のプロパンガス燃料出力5kWPEFC“GenSys”試験機1台をNEFにリース販売する。同財団は秋田県男鹿市に同機を設置し、実際の使用条件下でエネルギー効率や環境特性などのデータを収集する。05年にも実用機を販売する計画で、都市ガスが供給されていない地方の外食チェーン、ガソリンスタンド、研究施設、社宅、マンションなどをターゲットに売り込む予定である。NEFにはプロパン以外に都市ガス燃料のPEFCも2台リース販売することを計画している。なお丸紅はプラグパワーと資本提携するGEFCシステムと02年9月に提携し、日本におけるFCの販売およびアフターサービスについて代理店となった。
(日経産業新聞03年9月17日)

(2)横国大
 横浜国立大学工学研究院の渡邉正義教授は、PEFCで高温稼動を可能にするイオン性液体の電解質を開発した。このイオン性液体とは、室温では液体状態のプラスイオンとマイナスイオンが対になった有機塩であり、高温でも蒸発しないため、これに電解質として必要なプロトン伝導性を与えたものである。選んだ有機塩はプロトンを受けてプラスに帯電する塩基のイミダゾールと、プロトンを放出してマイナスを帯びるフッ素系超強酸の組み合わせで、イミダゾールが過剰に加えられている。過剰に加えられた中性イミダゾールの窒素―水素部分を使って、プロトンが次々とリレー式に動いていくことによりイオン伝導性が生じると見られている。130℃で0.1S/cmの電気伝導度が観測された。
(日刊工業新聞03年9月19日)

 
7.家庭用PEFCコージェネレーションシステムの開発と実証
 東邦ガス、荏原バラード、バラード・パワー・システムズ、荏原製作所の4社は9月4日、05年度での商品化を目指して、家庭用PEFCコージェネレーションシステムの共同開発研究を始めることで同意した。東邦ガスはリンナイと共同で排熱利用システムの開発を進めているが、4社は荏原バラード製家庭用PEFCシステムと、東邦ガスの排熱システムを組み合わせて試験運転を実施する。
(日本経済、電気、日経産業、日本工業、日刊工業、中日新聞、化学工業日報03年9月5日)

 
8.FCV最前線
(1)岩谷産業
 岩谷産業は、トヨタの商品化したFCHVを札幌市内で走行した。サッポロファクトリーで開催するイベント“イワタニラインアップフェステイバル”で展示する。
(北海道新聞03年9月13日)

(2)三菱自動車
 三菱自動車工業は9月17日、ダイムラークライスラーのFCシステムを、ミニバン“グランデイス”に搭載したFCV“ミツビシFCV”を発表した。PEFCスタックはバラード製である。117Lの圧縮水素(35MPa)燃料タンクを搭載、最高速度は140km/h、1回の充填で150km走行することができる。JFCHプロジェクトに参加して一般道路を実証試験走行するため、国土交通省の大臣認定の申請を行った。FCVの保守・点検・整備を行うためのメインテナンスガレージを品川区にある三菱自動車テクノサービスに設置する。
(読売、朝日、日本経済、産経、日経産業、日本工業、日刊工業、東京、日刊自動車新聞03年9月18日、鉄鋼新聞、化学工業日報9月19日)

 
9.FCV以外の移動体用電源
 栗本鉄工所は、台湾のFCシステムメーカで既にPEFC駆動のスクーターを開発しているAsia Pacific Fuel Cell Technology (APFCT)から独占的に技術供与を受け、FCで駆動する車椅子、老人が1人で乗用するシルバーカー、小型運搬車などのFC小型車を開発する。水素供給システムには水素吸蔵合金を採用した。従来の充電式に比べて連続走行距離を約2倍に延ばせるものと期待している。05年を目途に商品化の予定。栗本は今後独自でもFCの基礎研究を進め、天然ガス供給事業と組み合わせた事業展開を進める意向である。
(日経産業、日本工業、日刊工業新聞03年9月25日)

 
10.FCV対応水素ステーションの建設
(1)ジャパン・エア・ガシズ
 ジャパン・エア・ガシズは9月8日、川崎市にFCV用“JHFC川崎水素ステーション”を開設し、開所式を行った。メタノール改質型で120万L/日の水素製造能力を持つ。首都圏では5ヶ所目のステーションになる。
(日経産業新聞03年9月8日、日刊工業、日刊自動車、神奈川新聞9月9日、化学工業日報9月10日)

 
11.改質、水素生成および供給技術
(1)加地テック
 加地テックは水素ステーション向けの圧縮機を03年9月から販売すると発表した。販売する製品はオイルレスタイプの空冷レシプロ4段圧縮式で、水素ガス充填圧力40MPa、充填容量は200m/h、重さは約4トン、大きさは3,800×2,300×2,000mmで、価格は4,500万円程度である。現在は80MPaの圧縮機の開発を目指している。
(日本経済03年8月30日、日経産業、日刊工業新聞9月1日、日本工業新聞9月2日)
 加地テックは、水素ステーションで使用する高圧水素ガスコンプレッサーに、吐出量が30〜50m/hの研究用小型タイプを追加することにした。同社は91年にCNG自動車向けのコンプレッサーを開発し、全国にある224ヶ所のCNGスタンドの60%強にコンプレッサーを納入した。水素ガス用については、吐出量が200m/hのコンプレッサーを“XQ4A−60GH−OL”の商品名で既に販売している。
(日本工業新聞03年9月25日)

(2)東京農大
 東京農工大学工学部の亀山秀雄教授は、エタノールから200℃の低温で水素を発生させることに成功した。触媒とプラズマ放電を組み合わせた“アルマイト触媒放電電極”がキーポイントで、今回試作したのは同軸円筒型、誘電体のアルミナで被覆した銅などの金属棒を芯にして、インナーフィンチューブと呼ばれる形状をしたアルマイト触媒が外層を構成する構造になっている。アルマイト触媒は、アルミニウムを陽極酸化して多孔質にし、それに銅ニッケルを含浸させて製作された。芯と外層の間に電圧を掛けながら、空間にエタノールと水蒸気を流すとマイルドな放電が起こり、エタノールは分解してラジカルになり、最終的に水素とCOに分解される。この反応を230℃で行ったところ、転化率は約50%に達した。
(日刊工業新聞03年9月1日)

(3)新日石とIHI
 新日本石油とIHIは、03年秋にもそれぞれ灯油改質の事業用定置型FCを新エネルギー財団に納入し、フィールド実証運転を始める。新日石は10kW機、IHIは5kW機で、IHIの場合は脱硫・改質装置に出光興産の技術を導入している。新日石は重機メーカと共同で灯油改質技術を開発しており、硫黄成分を50ppb以下にまで低減するとともに一層のコンパクト化を実現した。出光が開発した脱硫・改質装置では硫黄成分は20ppb以下になり、装置をIHIに供給、苫小牧の出光の施設で実証することになっている。
(日刊工業新聞03年9月2日)

(4)日本製鋼所
 日本製鋼所広島製作所は03年から5カ年計画で水素ステーション用圧縮機の開発に取り組んでいる。製作している圧縮機は、レシプロとダイヤフラムの混合型およびダイヤフラム型の2種類で、通常10MPa程度の水素を30〜50MPaにまで昇圧する。現在はまだモデルプラントの段階で商用サイズの1/10の大きさであり、商用機とするためにはシリンダー容積を大型化する必要があるが、それには密閉性の確保が重要な課題の1つとして指摘されている。
(鉄鋼新聞03年9月5日)

(5)仙台市と東北大
 仙台市は太陽光と下水の汚泥を利用して水素を製造するシステムの開発を東北大学大学院環境科学研究科の田路和幸教授らと共同で進めることにした。汚泥から発生する硫化水素を利用して水素を生成する。システムは汚泥にアルカリ水を混ぜて硫化水素を中和、触媒となる太陽光を照射して水素を発生させるとともに、残った硫黄成分を企業などから排出される重金属成分と合成し、それを資源として再生するものである。仙台市は下水処理施設“南蒲生浄化センター”を実験場所として東北大学に提供し、システム化に向けた装置を試作して実験を行う予定である。水素製造システムの開発は、構造改革特区に認定された仙台市の“国際知的産業特区”で進められているプロジェクトの1つであり、同市は地域貢献形研究開発支援費として500万円を助成する方向で検討している。
(河北新報03年9月8日)

(6)パルカン
 カナダのパルカン・フユエル・セルズは、グッデイングス・エンバイロンメンタルと共同で、風力および太陽電池で発電した電力を使って水を分解してPEFC用水素を生成する一連の技術を開発し、今後世界のメーカに同技術のライセンス供与を行うことにした。FCに対して外部から水素を運び込む必要のない点にメリットがある。この技術は電信電話事業者、病院などの補助電源向けに最適であるとパルカンは語っている。
(電気新聞03年9月12日)

 
12.水素貯蔵技術の開発
 新日本石油は、カーボンナノチューブによる水素吸着性能が、予想に反して0.2ないし0.3%程度にしか確認できなかったため、他の炭素材料などの開発に力を入れるなど、従来の開発方針を修正することにした。
(日経産業新聞03年9月10日)

 
13.情報機器端末用マイクロFCの開発
(1)NEC
 NECは9月17日、発電効率を従来に比して20%向上させたDMFCを開発、これを搭載したノートパソコンを試作したと発表した。試作機の平均出力は14W、最大出力は24W、セル出力密度は50mW/cm2でFCの体積は約2割減少した。電池総重量は900g、内燃料の重量は300g、燃料に濃度10%のメタノール水溶液を使用した場合、動作時間は5時間で、燃料の補充は可能である。カーボンナノホーンを電極に使用することにより高い発電効率を実現することに成功した。
(読売、日本工業、電気、電波新聞、化学工業日報03年9月18日)

(2)日立
 日立製作所は03年10月1日付けで、研究開発本部内にFCと微小電子機械システム(MEMS)の事業推進室を設けることにした。モバイル機器向けや事業所・家庭向け高性能FCを商品化し、05年を目途にノートパソコンなどに利用できるマイクロFCの開発を目指す。
(日経産業新聞03年9月19日)

(3)STマイクロエレクトロニクス
 伊仏合弁のSTマイクロエレクトロニクスは、携帯電話向けFCの技術開発に目途をつけたと報じている。数千個の埋め込みマイクロチャンネルを含む3次元構造の採用により、触媒の接触面積を拡大、出力電流を増大して小型化を実現した点に特徴がある。直径数nmの微細孔を数百万個含むシリコン層によるナノポーラス層の製造にも成功した。他方、より高い陽子伝導性を持つとともに低コストの薄膜材料を製造して高性能の電解質膜を開発する研究を、ナポリ大学と共同で進めている。
(化学工業日報03年9月22日)

(4)三菱商事・本荘ケミカル・阪大
 三菱商事と中堅化学メーカの本荘ケミカル(大阪市)、および大阪大学は、ナノテクノロジー分野で共同研究を進め、ノートパソコン用マイクロFC関連では、フラーレンを電解質膜に応用してFCの寿命を6倍程度にまで延ばす材料の開発に取り組む計画である。本荘ケミカルはフラーレンとナノチューブを独自技術で製造しており、現在その応用を目指している。
(日本経済新聞03年9月22日)

 
14.その他FC関連技術
 山形大学とテクノモリオカ(山形県長井市)は、PEFCがメタノールなどの有機物を用いて効率よく発電できることに着目し、FC型検出器を有する小型連続測定器を開発した。同測定器は、陽イオン交換膜を電解質としたMEAに一定の直流電圧をかけ、溶液中に存在する有機化合物などの酸化反応によって発生する微小出力電流を測定することにより、化合物を検出・測定する水質モニターである。モデル実験では、メタノール水溶液ではゼロから100ppm、エタノール水溶液ではゼロから300ppmの範囲で濃度変化にともなう電流値の応答が認められた。
(化学工業日報03年9月18日)

 
 ―― This edition is made up as of September 26 , 2003. ――


・A POSTER COLUMN
トヨタが新型“プリウス”で燃費を15%改善
 トヨタ自動車は9月1日、6年振りに全面改良したハイブリッド車新型“プリウス”の発表を開始した。ガソリン1リットル当たりの燃費は35.5kmで世界最高を実現、COの排出量をガソリン車の約6割にまで減少させている。日産自動車にもこの技術を供与することで合意している。排気量は1.5L、価格は旧型よりも3万円安い215万円(北海道は22,000円、沖縄は25,000円高)に設定されている。目標販売台数は3,000台/月で、今後1年間に限って5000台を目指す。
(朝日、日刊工業新聞03年9月2日)
 新型ハイブリッド車“プリウス”は、発売から2週間で月間目標の2倍を超える1万1,000台を受注し、好調なスタートを切っている。2代目と初代を比較すると、燃費の向上はさることながら、部品ごとにLCAを徹底的に実施した結果、CO排出量が総合で31%も削減されている。
(日経産業新聞03年9月25日)

ナノ触媒粒子の振る舞いをリアルタイムで分析
 1ナノ程度の微小な触媒粒子の様子をリアルタイムで分析する技術を、東京大学大学院理学系研究科の岩澤康裕教授と高エネルギー加速器研究機構の野村昌治教授らのグループが開発した。従来はX線を色々な波長に分けて当てる必要があり、測定に10〜60秒を要していいたが、この技術により触媒のめまぐるしい反応の状況を秒単位で把握することが可能になった。FCの電極性能の向上や自動車排ガスの無公害化などの技術開発に有効な手段になると期待されている。
(毎日新聞03年9月6日)

ドイツの主要な自動車メーカが自動車用ごみ燃料の開発に取り組む
 ダイムラークライスラーとフォルクスワーゲンは、木くずや菜種などの廃棄物から低公害の自動車燃料を生成する技術を、基本技術を持つ環境ベンチャーの“コーレン・インダストリーズ”を加えて共同開発する。軽油やガソリンに比べて、粒子状物質(PM)やCOなどの有害物質の排出をそれぞれ40%、90%と大幅に削減させることが可能で、03年10月にもドイツ国内に生産能力100トン/日規模の試験プラントを設置し、04年からは量産に向けた共同実験を始める予定である。5〜7年後での実用化を目指すことにしている。
(日経産業新聞03年9月17日)

2011年にマイクロFCを使用した製品は2億個に達するとの市場予測
 テクノロジー専門調査会社のアメリカABCリサーチは、FCを利用した製品は2011年に2億個に達するとの予測をまとめた。他方、規制の障害は多く、又水管理や完全なパッケージングなど技術的な問題が残されており、04年中の商品投入は並大抵なことではないと述べている。マイクロFCは当初ノートPCや業務用モバイル・コンピューターなどのハイエンドの製品に採用される見込みで、FC市場が急速に伸張するのは09年以降になり、それまでは300万個以下の緩やかな成長が続くと見ているようである。
(電波新聞03年9月19日)

天然ガス車は03年内に2万台を越える見込み
 日本ガス協会は、天然ガス自動車(NGV)の普及累計台数が03年内に2万台を超えるとの予想を発表した。国内で約220ヶ所に登る天然ガス充填設備などインフラの整備が貢献する。02年までの台数は1万6,561台、03年4月から6月までの新規導入は653台で、累計1万7,214台になる。
(日刊工業新聞03年9月19日)

慶大が高出力リチウム電池を搭載した時速400kmの電気自動車を開発
 慶応義塾大学電気自動車研究室が、400km/hで走行が可能な新しいデザインの近未来型電気自動車 ”Eliica” を開発する。モーターをホイールに内蔵したタイヤ8個を装備しており、電源には出力が580kWの高出力リチウムイオン電池を搭載、1回の充電で200〜320kmの走行が可能である。03年12月の完成を目指して実車2台を製作し、04年3月にはイタリアのテストコースで時速400km/hの走行に挑むことにしている。開発責任者の清水浩教授は「リチウムイオン電池は既に技術が確立されており、FCよりも実用的である」と述べている。
(日経産業新聞03年9月26日)