第81号 SOFC開発と市場展開の記事が増加

Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2. 外国政府機関による政策
3.MCFC開発と実証試験
4.SOFCの開発
5.PEFCおよびDMFCの技術開発
6.家庭用PEFCシステム
7.新型FCの開発
8.FCV最前線
9.水素関連技術と供給システム
10.循環型地域開発とFCの利用

1.国家的施策
(1)経済産業省
   政府の構造改革特区構想で、経済産業省は2月18日、同省関係の特区要望をすべて容認する方針を明らかにした。電力会社、特定規模電気事業者(PPS)以外の事業者でも電力供給ができる電力供給特区構想が、複数の自治体から寄せられているが、この構想については電気事業法の枠内で対応する考えである。高圧ガス保安法などで規制されている水素ステーション保安距離規制や、家庭用FC保安規制緩和なども特区で実現可能になる。
 (電気新聞03年2月19日)
   燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)は、2月5日、政府の関連規制再点検へ対応する体制を発表した。走行安全性や水素タンクなど車両関係は日本自動車工業会などが、水素供給インフラ関係は石油連盟などが、定置用関係は日本電気工業会などがそれぞれ中心になってデータ取得のための実証実験などを進める。すなわち、高圧ガス保安法、道路運送車両法などの規制が存在するFCVについては、自工会が日本ガス協会などと連携し、日本自動車研究所などの設備、要員を動員して、実証実験を進めることにしている。建築基準法、消防法などが関係する水素供給インフラについては、石油連盟などが石油活性化センターなどの設備を使って実証実験を行い、ガソリンスタンドと水素スタンドの併設禁止や、保安統括者の常駐義務を緩和するための裏づけデータを取得する。
 (日刊自動車新聞03年2月6日、化学工業日報2月7日)

(2)環境省
   環境省は、都市ガスを燃料とするFCや発電用ボイラーなどの施設における煤煙量などの測定頻度を見直し、環境省令を改正する。煤煙については、排出ガス量によって2ヶ月に1回、もしくは1年に1〜2回以上と規定されていたのを、5年に1回以上へ測定頻度を緩和する。窒素酸化物についても、FC改質器についてのみ5年に1回以上とする。
 (化学工業日報03年2月26日)
   グリーン購入法が定める特定調達品目にFCなど24品目を追加することを、2月28日の閣議で決定する。
 (日本工業新聞03年2月28日)

 
2.外国政府機関による政策
   ブッシュ大統領が大々的に広報活動を始めた“フリーダムフューエル計画”は、不手際から名称の変更を余儀なくされた。あるアメリカ企業のガソリン添加剤の名称が同じ名前で商標登録済みである事実が判明したため。
(日本経済新聞03年2月18日)

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3.MCFC開発と実証試験
   中部電力は、新名古屋火力発電所構内で、IHI製出力300kWMCFCの発電運転を開始したと発表した。当面は天然ガスを燃料として基本性能を確認し、04年度からは廃棄物ガスを模擬した低カロリーガスによる発電試験をIHIと共同で実施する。又廃棄物ガス化炉についても設置工事を進め、04年度からは廃棄物ガス化発電システムの実証実験に入る予定である。実験費用は02年からの3年間で約12億円。実証試験での廃棄物処理能力は、3.5トン/日程度であるが、将来の実用化では50〜100トン/日規模をターゲットとする予定であり、このため数千kW級MCFCの開発も進めることにしている。2005年の愛知万博では、生ごみを使って実証運転する計画もある。
 (中日新聞03年2月11日、電気、日刊工業新聞2月12日、日本工業新聞2月13日)
   中部電力は2月20日、新名古屋火力発電所構内に設置したMCFCの発電式を現地で開催した。挨拶した清水常務は「このMCFCは様々な機能を組み合わせることのできる点が特徴で、廃棄物処理のような地球環境面にも優しい機能を持つ。実証試験には謙虚な姿勢で臨み、良い形に仕上げていきたい」と早期実用化に意欲を示した。
 (電気新聞03年2月21日、建設通信新聞2月27日)

 
4.SOFCの開発
(1)東京ガス
   東京ガスは、SOFCの動作温度を200〜300℃下げることにより、起動時間を従来の1/3以下の3〜4時間に短縮することに成功した。電解質にジルコニアを主成分とした素材を、アノード電極に酸化ニッケルやジルコニアなどの合金、カソード電極に鉄を使った合金を採用している。SOFCは一般には電極材料にもセラミックスを使っているが、熱膨張で破損する恐れがあり、金属の利用が求められていた。同社は80枚ほどのセルを積層した出力1kWのスタックを試作し、04年度には実証試験を始める積りである。発売に向け、10万円/kWの製造コストの実現を目標に開発を急ぐ。
 (日経産業新聞03年2月21日)

(2)ホソカワ粉体技術研究所
   ホソカワ粉体技術研究所(枚方市)は、大阪大学接合科学研究所と共同で、作動温度が700℃のSOFC用電極を開発した。この電極は粒径500nmの酸化ニッケル粒子と同100nmのジルコニア粒子を、接合剤を使わない独自の方法で結合した複合粒子によって作られている。試作した電極のSOFCで発電実験を行ったところ、出力密度に優れた性能が得られることを確認した。
 (日刊工業新聞03年2月24日)

(3)JFCC
   ファインセラミックスセンター(JFCC)は、日本特殊陶業と共同でSOFC用高温動作空気極向けナノセラミックス膜を開発した。JFCCの持つ高出力、精密制御の電子ビーム物理気相(EB・PVD)装置により、ランタン−ストロンチウム−マンガン酸化物の結晶構造を柱状で、しかもその1本1本を羽毛状構造とした点に特徴がある。柱状にすることにより耐熱性が向上、更に羽毛状構造のため熱膨張差が緩和されとともに界面反応が抑制されるので耐剥離性が向上し、長寿命化と発電効率の両者の向上が期待できると話している。又羽毛状構造で、ガスイオン化のための表面積が増大するというメリットもある。
 (日刊工業新聞03年2月25日)

(4)京セラ
   京セラの西口泰夫社長は、セルなどのセラミックス構成材料をすべて自社製で賄う方向で、家庭用1kWSOFCの開発を進めていることを明らかにした。社長直轄のプロジェクトチームを作り、スタッフ20〜30人で開発に取り組んでいる。現在は試験モジュールを作っている段階であるが、研究開発を加速させて03年12月には試作機を完成し、1年程度の試験期間を経て、05年の初頭での商品化を目指す。人件費を除いて年間5億円程度の開発投資をしており、今後の情勢によって更に拡大し、FCを新エネルギー事業として育成する積りである。又同社は動作温度の低温化を目指し、独自のセラミックスを使って更に耐久性を高めることも視野に入れている。
 (電気新聞03年2月28日)

(5)住商
   住友商事は、アメリカ・アキュメントリックス社のSOFCを日本市場に投入する。03年4月以降に2kW機を国内に導入し、先ず燃料会社のエンジニアリング企業など5社程度と共同で、日本仕様に合わせたコジェネレーションシステムとしてのフィールドテストを実施する。燃料や機能については、バイオガスやメタン発酵などの利用も考慮し、又系統連系やUPS機能を持たせるなど、両面での多様性を想定している。同時に10kW機も03年夏から日本で実証し、05年度からは複数の企業と組んで100万円/kW程度の価格で販売に乗り出すことを目論んでいる。
   アキュメントリックスは、マイクロチューブ型SOFCの量産工場(10kW機で月200台)を03年夏に立ち上げる予定である。このSOFCチューブは、内側が空気極、外側が燃料極で、作動温度は800℃、2kW機の場合、1モジュールは直径が6〜7mm、長さ25cmのチューブ5本によって構成されている。10kW機では直径、長さとも2倍になり、100kW機においては10kW機を10台並列に並べた構成になっている。起動性が良く、30分以内でスタートし、DSS運転に効果的であると述べている。
   実際の販売では、住商がコーデイネーターになって、5社の内の複数の企業と提携、補機類の製作やアフターサービスを含む対応を整備して市場開拓に望む方針である。
 (日刊工業新聞03年2月28日)

 
5.PEFCおよびDMFCの技術開発
   宇部興産と東亜合成は、東京大学山口猛央助教授と共同で、PEFCの電解質膜用に強度を高めた材料を開発した。薬品に強い樹脂フィルムに微細な穴を多数開け、それに高分子材料を詰めて製作した。従来の膜材料ではメタノールを導入するとしみ込んで膜が膨らみ、出力を低下させるという欠点があったが、新しい膜はこの欠点を解決する点において意義がある。試作したFCでは5ヶ月の運転でも変化がなく、水素を直接送り込んだ場合の出力密度は1W/cm2となった。又モバイル端末への利用が期待されているDMFCにおいても利用可能であると期待されている。03年3月からサンプル出荷を始める予定。
 (日本経済新聞03年2月28日)

 
6.家庭用PEFCシステム
(1)荏原バラード
   荏原バラードは、都市ガスを用いた1kW級家庭用PEFCシステムを04年中にも実用化すると発表した。03年度には商用機の雛形となる新たな試作機を作り、2月には新エネルギー財団に3台提供する。04年度中には十数台を製造し、試験用に提供するとともに、商用機を製造し、500台を目途に販売する計画を立てている。07年度以降には5000ないし1万台の販売を見込み、シェア4割を目指す方針である。既に製作した準商用装置の本体は、高さ90cm、幅90cm、奥行き28cmで、貯湯タンクを備えている。改質装置は東京ガスの技術供与で製作した。又LPGや灯油などの改質器を組み合わせたFCの開発にも取り組む意向で、改質技術の供与を受ける東京ガスや大阪ガスなどと協力体制をとって開発と販売を進めたいと述べている。
 (日刊自動車新聞03年2月1日、日経産業新聞2月5日、化学工業日報2月7日)

(2)新日本石油
   新日本石油によって開発されたプロパンガス(LPG)を燃料とする家庭用PEFCシステムによる実用実験が、2月4日、横浜みなとみらい21(MM21)地区の住宅展示場(横浜ホームコレクション内の三菱地所モデルハウス)で始められた。同システムは屋外タイプの箱型で、高さ1m、幅90cm、奥行き50cm、性能は発電出力は1kW、発電効率32%、排熱回収効率40%である。3月までには横浜市長公舎を含めて6台を設置する予定であり、4月以降は約100台を公営住宅や企業の社宅などに設置して実用検証を行う。実験によってシステムの信頼性、耐久性などのデータを収集し、製品に反映させていく所存で、同社では05年までの販売開始を目指している。価格は50万円程度を予定している。
 (読売、産経、電気、日刊工業、神奈川新聞、化学工業日報03年2月5日、日経産業新聞2月7日)

(3)エア・ウオーター
   エア・ウオーターはプロパンガス改質装置の開発により、10分以内に起動できる家庭用FCシステムの実現に目途がついたので、4月から本格実験に入り、最終的には6分以内の起動を目指すると述べた。現在1時間当たり水素供給量が20mのテスト機で実験を続けており、予備実験で10分以内での起動を確認した。ニッケル、セリア、プラチナ、ロジウムの4種類を成分とする特殊な触媒を用いることにより、改質器の中心部の大きさを従来タイプの1/100に小型化し、それによって改質器の稼動に必要な900℃まで短時間で加熱できるようになったことが、起動時間の短縮を可能にした。同社は05年中にプロパンガスの連続運転タイプを商品化し、その後オンオフのできる商品を市場に投入する計画である。
 (日刊工業新聞03年2月13日)

(4)三洋電機
   三洋電機は、05年に予定している家庭用PEFCの市販開始に向け、研究開発体制を強化するとともに、具体的な商品設計を早急に開始する。商品化設計は当面、技術開発本部で行う。量産計画が具体化した段階で、実際に製品を開発、生産、販売する事業部に作業を移管する見通しで、量産を担当する事業部は未定。開発課題の1つである耐久性については、現状の数千時間を4万時間以上に延ばすことが目標で、特に長寿命化で重要となるポンプやファンなど回転機構の耐久性向上に力を入れる考えである。コストダウンについては、電極での白金使用量の低減、部品点数削減などの開発を進め、販売価格を50万円以下にすることを目指すとしている。
 (日刊工業新聞03年2月19日)

(5)NEF
   新エネルギー財団は、02年度から開始した家庭用PEFCコジェネレーションに関するサイトでの実証システムを2月28日に公開する。対象は荏原バラードが鹿島技術研究所側にある飛田給社宅に設置した1kW級システムで、更に3箇所を順次公開してPRする。同財団は02年度計画で、1戸建て住宅、集合住宅など全国12箇所に同システムを設置し、各種条件下での電気や熱の利用状況、送電線との連系によるFCへの影響などを1年間調査することになっている。12台の内訳は、天然ガス、ナフサ、LPGを燃料に東芝、荏原バラード、三洋電機、トヨタ自動車、新日本石油、松下電器産業が提供する1kW級11台および5kW級1台である。03年度も山岳や多湿地区などを対象に6種類の環境下で30システムを設置し、05年度からの実用化に備える計画である。
 (日経産業、日刊工業新聞03年2月24日)
   天然ガスを使う家庭用PEFCコジェネレーションの実証実験が、03年2月から福岡県新宮市で始められた。装置はFC本体と貯湯槽(227L)から構成されている。
 (西日本新聞03年2月25日)

 
7.新型FCの開発
   電力中央研究所は、作動温度領域が250〜500℃を対象とする中温型FCの開発に本格的に着手する。電解質として用いる硫酸水素カリウムと同ナトリウムの共晶塩が、100℃から500℃の条件で安定に存在し、250〜500℃の湿潤酸化・還元雰囲気では0.1S以上の高いプロトン導電性を示すことを確認した。この溶融硫酸水素塩は、セルの構成に必要な部材候補である白金、金、炭素、アルミニウムなどと反応しない材料であることが確かめられており、これらの材料を組み合わせて中温型FCが構成できる見通しが得られた。03年中に試作機による発電評価試験に取り組むことを目指す。
 (化学工業日報03年2月28日)

 
8.FCV最前線
(1)自動車大手6社
   日米欧と韓国の自動車大手6社は、水素の貯蔵技術を共同で研究する(Hydrogen 700 Project)と発表した。水素を700気圧で大量貯蔵する技術の確立を目指す。共同研究期間は2004年1月まで。参加する自動車メーカは、トヨタ、日産、ダイムラークライスラー、フォードモータ、現代自動車、プジョーシトロエングループであり、これ以外に燃料タンクなどの部品メーカを含めると、参加企業は20社以上になると予想されている。NKK子会社の鋼管ドラムとカナダの燃料容器メーカであるパワーテックが共同プロジェクトを管理する。各部品メーカの試作品をパワーテックが評価し、そのデータを資金提供する各自動車メーカに渡す運営方式が採られるようである。プロジェクト参加各社は、国際標準化機構(ISO)などでの規格作りに向け、主導権を確保することも意図している。
 (日本経済新聞03年2月8日、日経産業新聞2月9日、鉄鋼新聞2月10日、日刊工業新聞2月12日、化学工業日報2月24日)

(2)GM
   GMは700気圧の水素ガスを貯蔵できるタンクを開発したと発表した。GMのFCV“ハイドロジェン3”シリーズのザフィーラ・ミニバンによる公道実験で、充填1回当たりの走行距離は170マイル(約273km)に達したと伝えられている。水素タンクの高圧化は、GMが20%出資しているクアンタム社が実現した。タンクの気圧を制御するバルブ機構に独自の技術を加え、GMが更にタンクにも高圧化しやすい構造を採用した。同社のラリー・バーンズ研究開発担当副社長は「2010年までには、高気圧化と同時に走行距離300(480km)〜350マイル(568km)を達成するつもりである」と述べている。
GMはFCVを2015年にも年間100万台生産し、最初に利益を出せるようにするとの目標を掲げ、更にラリー・バーンズ副社長は、その頃には「全米の売上高上位50社の売り上げ全体の45%をFCV関連で占めることになろう」との予測を示した。
 (日本経済新聞03年2月12日、日刊工業新聞2月21日、読売新聞2月23日)

(3)ダイハツ
   ダイハツ工業は、2月12日、関西地区の公道で初の軽FCVによる走行実験を開始、試乗した太田房江知事は「加速はスムーズ、音も静かで快適、府庁でも導入を検討したい」との感想を述べた。このFCVは4人乗り“ムーブFCV−K−2”で最高時速は105km、1度の水素充填で走行できる距離は120km、ハイブリッド型でニッケル水素電池を搭載している。車体が小さい軽自動車のため、必要な装置を車内に収納しにくいことが走行性能を制約する結果になった。2006年を目途に市販したい意向である。
 (読売、産経新聞03年2月12日、朝日、日刊自動車新聞2月13日、東京、中日新聞2月14日)

(4)ホンダ
   アメリカ環境保護局(EPA)は、ホンダが開発したFCXを、アメリカ初の排ガスゼロ車に認定したと発表した。
(日本経済新聞03年2月12日)

(5)デーナ
   アメリカ自動車部品大手のデーナ(オハイオ州)は、日本でFCV向けの技術開発に乗り出すことになり、豊橋市の開発拠点に専門組織“FCサポートセンター”を03年内に設けることにした。トヨタやホンダなど日本の自動車メーカと共同研究や受託研究を推進し、次世代のFCV用部品開発を目指す。当面15人程度の技術者を置くが、研究テーマの拡大に合わせて増員する。具体的には、FCスタックの部品や水素供給装置、電動駆動技術などの開発を手がけるとともに、日本の自動車メーカが求めている技術などの情報収集にも取り組む予定である。
   デーナは既にアメリカ、カナダ、ドイツでFC関連の研究に取り組んでおり、日本では4箇所目になる。01年の売上高は103億円で、従業員数は世界で約6万人に達する。日本の自動車メーカとの取引は、現在は売上高の10%程度にしか過ぎないが、今後その拡大を狙っている。
 (日本経済新聞03年2月21日)

 
9.水素関連技術と供給システム
(1)エア・ウオーター
   住友商事とエア・ウオーターの合弁会社、住友エア・ウオーターは、FCV用移動式水素供給ステーションを開発したと発表した。水素容器やコンプレッサー、充填機器を大型トラックの荷台に固定させた装置で、FCV(燃料タンク容量約30m)2台分の水素を高圧で供給することができる。価格は車両込みで6,000万円程度。トヨタ自動車が既に購入しており、日産自動車もリース契約で購入を決めた。同社は今後自治体などに売り込んでいく方針である。
 (日刊自動車新聞03年2月1日、読売新聞2月3日、化学工業日報2月5日)

(2)岩谷産業
   岩谷産業は、水素ステーションのコスト削減に取り組むことにした。トヨタ自動車のFCV1台のリース契約を結び、03年6月から社内運用を開始、機械各社の圧縮機、流量計などの最適な組み合わせを探ることにより、現状の3億円に対して1億円で建設できる水素ステーションを提案する。
 (日本経済新聞03年2月1日)
   岩谷産業は、FCVの普及をバックアップするため、東京と大阪の本社敷地内に水素ステーションを建設、水素ボンベを置いて簡単に水素を供給できる体制を整える。又水素タンク、コンプレッサーなどを一括したシステムを車台に搭載し、移動して水素をFCVに充填する移動式スタンドの開発を終了した。同社ではこれを“レデイオシステム”として首都圏に先ず2、3台を置き、需要先に出向いて充填することにしている。
 (日刊工業新聞03年2月7日)

(3)北大
   北大触媒化学研究センターの市川教授らの研究グループが、水の電気分解で発生した水素を簡単に貯蔵する技術を開発した。同教授は既に水素を化学反応させて透明な液体にする有機ハイドライドを開発しているが、今回開発した技術は、ハイドライドを霧状にして直接酸素と反応させて発電する他、電気で水を電気分解して生成された水素を、再びハイドライドに戻して貯蔵しておくプロセスである。水素を取り出す装置が不要になり、システムの小型化につながるとともに、ハイドライドの補充も必要がない。太陽光や風力発電からの電力で昼間に水を電気分解し、そこで発生した水素をハイドライドの中に貯めておき、夜間はFCで発電する循環システムが成立する。
 (北海道新聞03年2月5日)

(4)バイオFC
   地球環境産業技術研究機構とシャープは、生ごみを原料に微生物を使って水素を発生させ、FCで発電する超小型バイオFCの基礎技術を開発した。装置は微生物の培養器とFCから構成されており、専用施設で生ごみを溶解・精製して糖の水溶液を作り、培養器に入れると微生物は糖を餌にして大量の水素を生み出す。液晶テレビの電力ならマッチ箱大の装置で賄えるし、2リットルのペットボトル程の培養器では、一家庭の電力をカバーできると報じられている。研究グループは、土壌微生物を改良して水素の生産効率を数百倍以上に高め、超小型バイオFC実用化の見通しを得た。今後微生物の寿命を延ばすなどの改良を加え、2年後を目途に実証試験を始め、4〜5年以内に技術を確立する計画である。
 (日本経済新聞03年2月13日)

(5)西部ガスと九大
   西部ガスと九州大学工学研究院は、FCを始め水素や天然ガスを用いた技術開発で、包括提携すると発表した。期間は03年3月1日から08年2月末までの5年間。西部ガスは天然ガス改質技術を持っており、この技術を用いて九大と共同でFCV用水素ステーションの実用化を目指すとともに、九大の材料研究成果を活用し、耐久性の高い水素の貯蔵ボンベの研究も進めることにしている。同研究院の博士課程の学生を派遣するインターンシップも実施する予定である。
 (日経産業、日刊工業新聞03年2月28日)

(6)JEVA
   日本電動車両協会とエンジニアリング振興協会は、FCVと複数の燃料供給施設を同時に運用する水素・FC実証(JHFC)プロジェクトを開始する。3月12日に横浜市鶴見区のコスモ石油JHFCベース基地内に脱硫ガソリン改質水素供給設備とFCV5台分のガレージがオープンするのを皮切りに、03年中に東京、横浜、川崎の5箇所に液体水素(東京江東区)、LPG改質(荒川区)、ナフサ改質(横浜旭区)、メタノール改質(川崎市)による水素供給設備を設置、FCVとこれら設備を組み合わせた走行・運用実験を実施する。自動車メーカ、石油企業、ガス会社など計14の企業や団体が参加する。
 (日刊工業新聞03年2月28日)

 
10.循環型地域開発とFCの利用
   名古屋大学環境学研究科の森川高行教授等のグループは、総合的な循環型環境都市のコンセプトを取り入れた地区開発構想を取りまとめた。例えば、笹島地区(5.5ha)の構想は、都心部モデルとして24時間活動する都市の基本テーマであり、循環型環境都市の形成に向けて、リサイクルエネルギーをFCに使うほか、下水処理場の処理水をエネルギー資源として活用するなどを提案している。又前島地区(74ha)では、新エネルギーを積極的に利用し、メーンエネルギー源としては、製鉄所からの水素を使ったFCを想定している。
 (日刊工業新聞03年2月3日)

 
 ―― This edition is made up as of February 28 , 2003. ――