第79号 MCFCによるCHPシステムの市場展開

Arranged by T. HOMMA
1.国家的施策
2.地方自治体の施策
3.公共機関および団体の活動
4.MCFCの開発と市場展開
5.SOFCの開発
6.PEFCに関する技術開発と実証
7.その他FC技術開発
8.FCV最前線
9.改質および水素生成技術
10.水素供給、輸送、供給技術および設備
11.携帯用マイクロFCの開発
12.教育用FCキッド

1.国家的施策
(1)内閣府
   トヨタ自動車とホンダは、02年12月2日、FCVを政府に納車、納車式ではトヨタの奥田会長とホンダの吉野社長が小泉首相に金色のキーを手渡した。FCVに試乗した首相は「快適で意外に静かだ」などの感想を語っていた。いずれもリース方式で、内閣官房、経産省、国交省、環境省の4省庁が計5台を導入する。リース料金は、トヨタの“FCHV”は月額120万円、ホンダの“FCX”は同80万円と発表されている。
(読売、朝日、毎日、日本経済、日本工業、東京、中日新聞02年12月2日、産経、日経産業、日本工業、日刊工業、電気、日刊自動車新聞、化学工業日報12月3日)

(2)総合規制改革会議
   政府の総合規制改革会議は、12月12日に纏める第2次答申に、FCV認定制度の緩和や、家庭用FCの関連規制緩和を盛り込むことになった。FCVの場合、現行規制では1台毎に行っている車両認定を見直し、通常のガソリン車と同様“型式認定制度”の導入を求めている。
(読売新聞02年12月10日)

(3)経産省・資源エネ庁・
   経済産業省・資源エネルギー庁は、全国の中学校向けにFCVキット、エネルギー理解促進ボードゲームなど教育用教材の無料配布の受付を開始した。02年度から始めた“エネルギー教育用教材キット配布事業”の一環で、キットの希望受付は委託先の三菱総研が行う。12月27日まで経済産業省ロビーで実物の展示を行っている。
(電気新聞02年12月3日、化学工業日報12月6日)
   経済産業省は、FCVの普及を促進するため、自動車・電機メーカ、石油・ガス業界と協力して、水素を安全に取り扱う技術を開発、安全規制を所管する国土交通省や消防庁などに研究データを提供して規制緩和を要請することにした。
(日本経済新聞02年12月15日)
   経済産業省が02年度から3ヵ年計画で行う「PEFCシステム実証等研究補助事業」の1つである水素・FC実証プロジェクト(JHFC)の本格稼動が、03年3月12日にスタートする。JHFCの拠点となるショールームガレージが03年3月前半に完成し、12日に5社による5台のFCVが走り始めのセレモニーを実施する。首都圏5箇所に設置される水素ステーションを活用し、燃費や車両性能、基準・標準化に関わるデータ収集を行う他、一般へのアピール活動にも力を入れる。5社はトヨタ(FCHV)、日産(X-TRAIL FCV)、ホンダ(FCX)、GMアジア・パシフィック・ジャパン(Hydrogen 3)、ダイムラークライスラー日本ホールデイング(FCスプリンター)である。
(読売、日刊自動車新聞02年12月19日)
   経済産業省の原子力安全・保安院は、12月25日、水素スタンドとFC用水素タンクについての基準作成に必要な技術実証項目を公表した。車載水素タンクでは、充填圧力70MPa、容器容量500Lへの緩和が可能かどうか、温度や不純物も勘案した実証試験を実施する、学校・民家などから11〜17m以上離れなければ水素スタンドを設置できないと定める保安距離規定は、漏洩ガスの拡散実験や噴出ガスの着火実験などの検証に基ずいて検討する。水素スタンドの保安員常駐義務は、稼動時に限り保安員を置く方向で検討する。同省は保安院側と事業者側の実証試験結果を踏まえ、04年末までに高圧ガス保安法の各種保安規則を改正する方針である。
(日刊工業、日刊自動車新聞02年12月26日)

(4)税制改正大綱
   2002年度税制改正大綱に盛り込まれた自動車関係税制の見直しで、低公害車関連では、グリーン化税(自動車税)および自動車取得税の特例措置の継続が決まったが、国土交通省による“1ツ星”、“2ツ星”認定車は減税対象から外れた反面、LPG車とFCVが新たな対象となった。
(日刊自動車新聞02年12月16日)

(5)国土交通省
   国土交通省は、12月16日、トヨタグループが開発中のFCハイブリッドバス“FCHV−BUS”の試乗会を開いた。03年度から東京都が公道試験運行を始める予定。
(日刊自動車新聞02年12月17日)

 
2.地方自治体の施策
(1)岐阜県
 岐阜県は、岐阜ガスと共同で最大出力5kWPEFCをJR岐阜駅高架下の複合商業施設“アクテイブG”に導入した。商業施設の照明や温水プールの熱源として利用する。
(日経産業新聞02年12月12日)

(2)東京都
 東京とは03年夏から都営バスにFCバスを最大2台導入する。臨海部など都内の繁華街を走らせる予定で、江東区有明に水素供給ステーションを建設中。
(読売新聞02年12月20日、日本経済、産経新聞12月21日、電気新聞12月27日)

 
3.公共機関および団体の活動
(1)KHK
 高圧ガス保安協会(KHK)は、FCVに搭載する水素圧力容器の保安基準(例示基準)に関する報告書を近く取りまとめる予定である。圧縮水素ガス搭載のFCVでは、400km以上走行するためには、350気圧で170Lのタンク容量が必要になり、現在あるCNG自動車用圧力容器(250気圧が主流)などの基準を準用できない。このため、KHKでは専門の委員会を設置して、FCV用圧縮水素容器の保安に関する例示基準について検討を行ってきた。圧力容器の保安に関する例示基準は事業者自らが策定し、KHKが安全性が担保できているかどうかを審査した上で、国が認める仕組みになっている。KHKが近く纏める報告書では、事業者が例示基準を策定する際に必要となる試験方法などの技術指針を示すことになっている。
(化学工業日報02年12月4日)
 KHKは水素圧力容器および水素供給施設の保安基準策定に向けた技術指針を取りまとめた。水素容器では評価試験として、1)材料の安全性検証試験(金属材料片の引っ張り、疲労、水素脆弱、破壊じん性など)、2)摺動部、シール部など付属品の耐久性試験、3)ガス透過試験、実ガス圧力サイクル試験など実用器による総合安全性試験、又水素ガス供給設備では、1)漏洩ガスの拡散実験およびシミュレーション、2)壁設置の有効形状などの検証、3)可燃混合気の着火試験・シミュレーション、4)液化水素充填作業における予冷作業の安全性検証、5)充填ホース類の耐久性の検証、6)ガス漏洩に対する検知方法の検証、を挙げている。
(化学工業日報02年12月25日)

(2)NEF
 新エネルギー財団は、PEFCの一般家庭での普及を目指した実証試験を、03年度には30件に増加、03年4月には参加するメーカを公募する。02年度には天然ガス、ナフサ、LPGを燃料として、東芝、荏原バラード、三洋電機、トヨタ自動車、新日本石油、松下電器産業の6社が、1kW11台と5kW1台の合計12台を設置、これまでに家庭や業務用で6ヶ所に設置して実証運転を行ってきた。03年度の30台は、寒冷地、一般住宅、交通頻繁地区、海浜地区のほか山岳と多湿地区でも立地し、03年度後半から1年間かけて実証運転を行う。導入価格は平均で1,250万円となり、12ヶ月のリース契約とする。
(日刊工業新聞02年12月5日)

(3)NEDO
 NEDOは12月24日、MCFCの市場導入に向けた最終的な実用レベルでの実証試験を始めると発表した。その前提となる小型発電システムの調整・制御試験を終了したことにより、4気圧程度の加圧条件下で定格出力300kW発電システムの実証実験を、川越MCFC発電所において行うことにした。03年1月には出力を確定、04年前半までに1万時間以上の運転を行い、発電性能、長時間特性などを検証、05年での実用化を目指す。
(日経産業新聞、化学工業日報02年12月25日、電気新聞12月27日)

 
4.MCFCの開発と市場展開
(1)丸紅
 丸紅は、アメリカFCEから輸入しているMCFCについて、販売体制および保守エンジニアリングを強化し、2004年以降、毎年出力40MW以上の受注を目指すことにした。10年以内に国内でユニットの生産体制を整備し、丸紅ブランドで販売する計画である。FCEが開発したMCFCは、内部改質の直接型であり、天然ガス、LPG、廃メタノール、下水汚泥や食品廃棄物などから得られる消化ガス(メタンガス)など多様な燃料が使用できる。
 同社は2000年3月に同電池の日本と東南アジアにおける独占販売契約を締結し、01年には国内第1号機(出力250kW)をキリンビール取手工場に、02年には福岡市下水道局から西部水処理センター向けに第2号機を受注した。これら以外に現在ほぼ内定している案件が5件あり、引き合いは数十件に上っている。現在は装置自身をアメリカから輸入しているが、10年以内にはセルスタックのみを輸入し、国内でユニットを組み立て、丸紅ブランドで販売する計画を立てている。なお、丸紅はGE・FCシステムおよびプラグパワー社製PEFCの販売代理店契約も結んでいる。これらについては、市場動向をにらみながら販売、保守体制を整えることにしている。
(化学工業日報02年12月11日)
 日本金属工業は、03年度上期に相模原事業所の発電用電源としてFCE製250kWMCFCを、丸紅を通じて導入すると発表した。このMCFCは発電効率が47%、排気ガス温度は420℃のため全量を排熱回収ボイラーの熱源として利用できる。このMCFCの稼動により、年間2,064MWhの電力が得られ、熱源の利用も含めて原油換算年間21万6,000Lの削減ができると積算している。同社はFCEには部材の1部を供給していることもあり、従来から技術交流を行うなど両社は友好関係にある。
(日経産業、日刊工業、鉄鋼新聞02年12月19日、日本工業新聞12月20日)

(2)ファーストエスコ
 岩谷産業、IHI、荏原、電源開発など20社が出資して1997年に設立された省エネルギー支援事業のファーストエスコは、工場やオフィス向けにMCFCをレンタルし、管理運営も代行するビジネスを03年1月中に開始する。開始するのは“グリーンオンサイト事業”で、MCFCによるコージェネレーションシステムを工場などに設置、燃料の調達、設備の維持・管理までを請け負うことにする。
(日本経済新聞02年12月28日)

 
5.SOFCの開発
 東邦ガスは、セラミックメーカなどと共同で、SOFCの単セルを開発した。直径12cm、厚さ0.1mmのCDに似た形のセラミック板に電極を付けた構造で、実験では10〜20Wの出力が得られた。燃料には都市ガスを使い、まずマンションや業務用の電源としての実用化を狙っている。
(中日新聞02年12月15日)

 
6.PEFCに関する技術開発と実証
(1)川崎製鉄
 川崎製鉄は、12月9日、従来の黒鉛系に比べて電気抵抗が半分に抑えられる他、強度や耐熱性などでも高い性能を持つPEFCのセパレータ用炭素材料を開発したと発表した。コークス炉ガスから副生するコールタールを蒸留して作るコールタールピッチを原料とした炭素材料(球晶)の製造技術を応用した。セパレータには反応ガスの流路となる溝を付けなければならないが、従来は電気抵抗を下げるために炭素粉末の含有量を上げると、成形性が悪くなり、溝を掘るのが難しくなると云われていた。川鉄が開発した素材は、高い成形性を維持しながら炭素粉末の含有量を上げることができる点に特長がある。既にサンプル出荷を開始しており、特性評価を経た上で将来の商業生産に備えたいと考えている。
(日経産業、日刊工業、鉄鋼新聞、化学工業日報02年12月10日、日本工業新聞12月11日)

(2)三菱重工
 三菱重工業は、家庭用1kWPEFC実証第1号機を02年末に日本ガス協会へサンプル出荷し、同協会が01年度から進めている標準化を目指したフィールドテストに参加する。パイピングを一体化した管座構造によって、システムをシンプル化されており、送電効率は28%弱、DSSや部分負荷運転が可能である。03年にはNEFの実証テストにも参加するなどサンプル出荷を本格化し、送電端効率を最高35%にまで高めて、06年の市場投入を目指す。
(日刊工業新聞02年12月12日)

(3)TIFC
 東芝IFCは、日本では業務用、欧米では住宅用となる5kW級PEFCを、東芝ホームテクノ(新潟県加茂市)で初の量産を開始する。同社に資本参加するUTCFCとシェルハイドロジェンの合弁企業ハイドロジェンソーシーズが開発した部分酸化改質器シーポックスを搭載しており、都市ガスとLPGを燃料として起動時間は9分である。大きさは.1m・0.75m・高さ1.7m、重量は550kg、発電効率は32%以上で、300万円での実用化を目指すことにしている。
(日刊工業新聞02年12月12日)

(4)東海カーボン
 東海カーボンは、PEFC用に特殊樹脂を含浸させた黒鉛材の拡販を積極化する。同社が供給する樹脂含浸黒鉛材“G347B”は、等方性黒鉛材に独自開発した熱硬化性樹脂を含浸させた後に硬化処理して得られたもので、電気抵抗は従来の黒鉛材と同等であるのみならず、等方性により厚み方向と長さ方向の比抵抗が同じになっている。又曲げ強度は一般の黒鉛材に比べて30%以上高い67MPaであり、ガス不透過性は高い。同社は平板もしくは流路加工を含めた最終加工製品として供給しており、ユーザの試作期間の大幅な短縮が可能となり、開発の効率化に寄与すると述べている。
(化学工業日報02年12月18日)

(5)新日本石油
 新日本石油は、PEFCによるコジェネレーションシステムの運転試験を、清水市の鈴与オイルサービス静岡梅が岡給油所で開始した。運転試験は約1年間の予定。燃料はナフサで、同社は運転試験で得た発電効率や耐久性などのデータを基に装置を改良し、04年以降の商品化を目指すとしている。
(静岡新聞02年12月20日)

(6)荏原
 荏原は荏原バラードと一体となって、03年1月から水素直接燃料のPEFCでの発電モジュール“ネクサ”をパッケージ化して出力1および2kWの家庭用およびポータブルタイプでの準商用機を市場投入する。価格は250万円である。ネクサはバラードが電池本体を製作してOME供給し、パッケージは供給を受けた企業が行うシステムである。寿命は1,500時間、荏原はパッケージャーとしてシステムを完成し、家庭用1kW機は03年1月から本格販売に入る。既にプロトモデルでは送電単効率34%を実現しており、準商用機では250W程度の部分負荷でも発電効率がさほど下がらない機器に仕上げる積りである。
(日刊工業新聞02年12月24日)

 
7.その他FC関連技術開発
 東京農工大学の大野弘幸教授らは、フッ素などハロゲンを使わないアルカリ金属のイオン性液体の作成に成功した。イオン性液体は、粘度が低くイオン伝導性が高い、蒸発しないという特徴を持ち、FCの電解質溶液としての利用の他、幅広い応用が期待される。
(化学工業日報02年12月2日)

 
8.FCV最前線
(1)トヨタとホンダ
 トヨタとホンダは、02年12月3日、ロスアンジェルス市庁およびカリフォルニア大学に、FCV“FCHV(トヨタ)”および“FCX(ホンだ)”のアメリカ仕様車計3台を納入したと発表した。リース料はトヨタのFCHVが月額1万ドル、ホンダのFCXが同500ドルと伝えられている。ロス市とは今回の車両を含めて5台のリース契約を結んでいる。両社は03年に4台ずつを追加リースする予定である。納車式には、ロス市のジェームス・ハーン市長、ホンだの吉野浩行社長らが出席し、吉野社長が「ロス市と協力して石油に依存しない将来を踏み出した」と語った。
(読売、毎日、産経、電気、日刊工業、日本工業、日刊自動車新聞02年12月4日、化学工業日報12月6日)

(2)BPSとホンダ
 カナダのバラード・パワー・システムズは、12月2日、ホンダと向こう3年間にPEFC32基を供給する契約に調印したと発表した。バラードは、ホンダが日米両国で顧客にFCVを納入する際のサポートも提供する。バラードは以前ホンダの子会社、本田技術研究所と供給契約を結んでおり、今回の契約はバラードのFC技術に対するホンダの信頼感を改めて確認するものと解釈されている。
(日刊工業、日本工業、日刊自動車新聞02年12月4日)

(3)日産自動車
 日産自動車は、12月10日、横須賀市夏島町にある総合研究所で、市販のRVをべースとした“エクストレイル(X-TRAIL)FCV”の国土交通大臣認定を取得し、これを報道陣に公開した。アメリカUTCFCと共同開発したPEFCスタックを搭載しており、リチウムイオン電池と組み合わせたハイブリッド方式で、最高出力は58kW、最高時速は125km/h、水素ガス1回の充填で200km以上走行する。今後は市街地、高速道路などで公道走行テストを行い、03年中にリース販売に踏み切る予定である。
(読売、朝日、毎日、日本経済、日経産業、産経、日本工業、日刊自動車、東京、神奈川新聞02年12月11日、化学工業日報12月12日)

(4)BMWの水素エンジン自動車
 BMWは、早期の市販を目指して、量産用の水素エンジン自動車の走行実験を2003年から開始する。試験走行を始める”BMW745h”は、最高時速が215km/h、1回の水素充填で300km以上走れるなど、実用的な性能を備えており、量産車では水素燃料が切れた場合には、ガソリンに切り替えて走行する仕組みも盛り込まれる予定である。同社では「技術的な問題はほぼ解決した」と判断しており、今後水素ステーションの普及状況を見ながら市販時期を決めるが、2020年には同社の車両の約1/4を水素自動車に切り替えたいと考えている。
(日本経済新聞02年12月1日)

(5)GM
 アメリカGMは、02年12月17日、国際宅配便大手のフェデラル・エクスプレスと共同で、03年6月から日本でFCVによる試験走行を行うと発表した。ザフィーラをベースにGMが開発したFCV“ハイドロジェン3”1台を、フェデックスが東京都内丸の内周辺で通常の集配業務に使い、実際の使用環境でのデータを収集する。この車は液体水素1回の充填で400kmの走行が可能であり、最高時速は160km/h、ガソリン車なみの性能を持つ。GMは経済産業省が国内で実施する走行試験に参加するなど、日本での販売を視野に入れている。
(日本経済、読売新聞02年12月17日、朝日、毎日、産経、日経産業、日本工業、日刊工業、日刊自動車、日本海事新聞、化学工業日報12月18日)

(6)DC
 ダイムラークライスラーは、03年初頭から日本で8台の水素燃料FCVによる公道走行実験を始める。信頼性・耐久性を含めて2010年の商用化を目指すとしている。このFCVは小型車“Aクラス”をベースにした“F−Cell”で、最高時速は140km/h、350気圧の高圧水素1.8kgをタンクに充填し、航続距離は150kmである。
(日本経済新聞02年12月18日)
 FCプロジェクト統括責任者のフェルデイナンド・パニック副社長は、ダイムラークライスラーが03年から販売に入るFCV“F−Cell”を、日本では欧米とほぼ同じく03年3月から開始、価格はリース方式で月額120万円、8台を投入することを明らかにした。更にシンガポールでも03年中頃までには投入する予定である。FCバス“シタロー”については、03年4月にマドリードでアーバン・トランスポーテーション・カンファレンスを開いて第1号を投入、04年までに欧州10都市へ計40台を納入する。今後の市場性について同副社長は「零下始動の問題も、パイプをヒートシステムで温める等の方法で解決できる。07〜08年には次世代FCVがラインアップし、2010年には現存車と競争できるような状況で市場にエントリーするだろう。1番大切なことは、ユーザに気に入られることである」と語っていた。
(日刊工業新聞02年12月19日)

(7)ダイハツ
 ダイハツ工業の新宮会長は、12月20日、大阪府池田市の本社で行った会見で「今期中にFCVのナンバーを取得できる積り」と語り、その後公道試験運転を行っていく考えを示した。
(日刊自動車新聞02年12月21日)

(8)東洋ラジエーター
 東洋ラジエーターは、FCV用セルスタックを直接冷却できるアルミラジエーター“LIRAD”を開発、ホンダに供給を開始した。通常のガソリン車などに使用されている高性能アルミラジエーターに特殊なコーテイングを施すことにより、冷却水へのイオン溶出を低減し、ラジエーター本体の小型・軽量化や低コスト化を実現した。セルスタック用ラジエーターの冷却水には一般的に純水もしくはグリコール水が使用される。ただ従来のラジエーターでは冷却水にイオンが溶出して電気的な短絡を引き起こす懸念があり、このためイオン溶出の少ないステンレスを使用した複雑な冷却システムが使われることが多かった。同社の技術開発により、純水やグリコール水冷却液でもFCスタックを直接冷却することが可能になった。
(日刊自動車新聞02年12月28日)

 
9.改質および水素生成技術
(1)ウチヤ・サーモスタット
 ウチヤ・サーモスタットは、東京工業大学の大塚潔教授が開発した“高純度水素の生成・貯蔵法”を用いて、純度が99.99%で、COを全く含まない水素の大量生産装置を開発し、サンプル出荷を始めた。これは第3成分を添加した高活性酸化鉄触媒を使って200℃で水を分解、連続的に水素を生成する装置である。今後触媒効率を高めて分解反応温度を引き下げることにより、コストダウンが可能と見込まれている。同社は300mmL/minの水素発生が可能なパソコン向け小型FCから、自動車向けを想定した触媒重量100kg級の中型装置まで各種タイプを開発している。他方この触媒で水の替わりにメタンやその他の軽質炭化水素を反応させて水素と炭素を完全分解することも可能であり、高純度の水素と同時に炭素をフラーレンやカーボンナノチューブとして回収できることも確かめられている。
(化学工業日報02年12月3日)

(2)フラーレン
 FC開発VBのフラーレンは、4.5Vの低電圧で使える水電解型水素発生装置を開発し、03年にも商品化する考えである。分解効率を高めるために、銅製の電解板を立方体の筒状に加工して、3mm前後の間隔で並べる多層構造が採用されている。4.5Vの電圧で水電解すると、10mmL程度の水槽から毎時250Lの純水素を取り出すことができた。サイズは30cm角の立方体で、重量は30kg、価格は30〜50万円になる見通しである。
(日経産業新聞02年12月10日)

(3)産総研
 産業技術総合研究所エネルギー利用研究部門は、水素とCOを高選択的に分離する膜を開発した。ポリイミドフィルムを熱処理して炭素膜に変えるとき、処理温度が高いと孔径が小さくなることを確認、1,000℃、20分間で処理すると、CO分子より小さくかつ水素分子よりも大きい0.3nmの孔を作製することができた。この膜の水素とCOの透過度を測定したところ、透過係数比は1,770と非常に高く、混合ガス試験でも目標値の1,000を超えた。ただ、水素の膜透過速度が不十分なため、膜厚を0.1μmに薄くする必要がある。同じ原料から基板のポリイミド膜と極薄の炭素膜を一体成形し、中空系膜にすることによりもろさをカバーすれば、実用的な材料になると考えている。
(日刊工業新聞02年12月16日)
 産業技術総合研究所は、多種類のアモルファス合金が、水素分離膜として水素透過性と強度を両立できることを明らかにした。これまでの亜鉛―ニッケルだけではなく、チタンやハフニウムなどの低価格の合金が、パラジウム被覆と活性化処理を行うことにより有望な材料となった。まず、単ロール液体急冷法によりこれらのリボン状合金膜を作成、パラジウムをスパッタリングで被覆し、380℃で5時間以上水素にさらす活性化処理を行うことにより、多種類の合金で上記の性能を実現する目途を付けることができた。金属は一般に水素により強度が下がるので、水素透過性と強度を両立できる材料は少なく、開発が進んでいるパラジウム合金の水素透過膜は、高価な点が問題となっていた。
(日刊工業新聞02年12月23日)

(4)NKK
 NKKは廃プラから水素を製造する新技術を開発した。通常、発電に利用できず捨てられている200℃程度のボイラー蒸気を、チェンバーと膜・弁で構成する装置内で、瞬間的に開放することにより約1000℃以上の衝撃高温を発生させる。その中に廃プラスチックなどの炭素や水素を含有する廃棄物を投入、水蒸気改質反応を促進させて高濃度水素を含んだ可燃性ガスを得るといういわゆる“収束衝撃波の原理”の応用である。高温をつくるのに蒸気圧のみを利用するため、機械的な駆動が不要で、装置がシンプルになることが特徴である。コストについては、電気分解、熱分解燃焼リフォーマーなどの従来方式に比べて半分程度の1Nm3当たり15円以下を目指すとしている。
(化学工業日報02年12月27日)


 
10.水素供給、輸送、供給技術および設備
(1)日東工器
 日東工器は、35MPaの高圧ガスでも漏れない高気密で安全性の高いFCV水素充填用継ぎ手を開発・商品化した。この装置は自動車1台に搭載されるプラグと、水素供給ステーションで充填ホースの先に取り付ける注入ノズルによって構成され、又充填中や終了後の安全を確保するため、独自のバルブやセーフテイーロック機能、脱ガス機構が取り付けられている。既に大阪、高松、横浜の3箇所に設置された水素供給ステーションに採用されており、性能は実証済みである。インフラ整備の進展に合わせて70MPa仕様も投入する予定。
(日経産業、日本工業、日刊工業新聞02年12月3日)

(2)バイオガスコジェネレーション
 岩手県岩手郡葛巻町で、酪農家に家畜糞尿をガス化し、FCで発電するオンサイトバイオガスコジェネレーションシステムを設置する技術開発事業がスタートした。清水建設が全体を取りまとめ、岩谷産業がバイオガスをFC用燃料に精製、三洋電機が1kW級のPEFCを設置・実証運転を行う。又東北大学が純度の高い水素を取り出すシステムを担当し、実証運転は葛巻町の畜産開発公社が位置する高原牧場で行われる模様である。葛巻市は260軒の酪農家があり、1軒当たり平均で牛35頭を飼育している。牛40頭からの排泄物をガス化するとき、発酵タンクは1トン規模で、バイオガス中に含まれる硫化水素濃度を1ppm以下にまで下げるガス精製がポイントとして指摘されている。生物系特定産業技術研究推進機構からの受託プロジェクトで、05年までに2億8,000万円を投じる予定。
(日刊工業新聞02年12月4日)

(3)東京ガス
 東京ガスは、水素供給ビジネスの事業化に向けた検討を買い開始した。水素ステーションを通じてFCVに水素を販売するビジネスやステーションと近接するオンサイトFCを組み合わせた熱併給事業など、新たなビジネス展開を視野に入れた検討と関連する技術開発に取り組む計画で、R&D本部に“水素供給プロジェクトグループ”を設置した。同社は既に国のプロジェクトに参加して水素ステーションの建設を進めており、ステーションの運営を通じて水素供給ビジネスのノウハウを蓄積していくことにしている。
(電気新聞02年12月12日)

(4)加地テック
 加地テックはFCV用水素ガス供給ステーション向けの圧縮機を開発した。圧縮機は4個のシリンダーを持ち、ガス会社や電力会社が精製した0.6〜0.8MPaの水素ガスを40MPaまで圧縮して、35MPaでFCVのタンクに充填することができる。1時間当たりの排出量は200m、製品化されれば最も大型の圧縮機となろう。シリンダー部の焼付け防止に、カーボンやフッ素樹脂などを合成した特殊樹脂を採用しており、ガスに油が混入するトラブルは防止できる。03年3月までに製品化し、4月から販売を開始する予定。販売価格は4,500万円、03年度3億円の売り上げを目指す。
(日経産業、日刊工業新聞02年12月12日)

(5)ジャパンエナージー
 ジャパンエナージーは、12月18日、市川勝北大触媒化学研究センター教授が開発した有機ハイドライドの実用化を目指し、同教授と共同研究を開始したと発表した。同社は有機ハイドライドが、既存ガソリンスタンドやタンクローリーを使えること、水素含有量が多いなど、水素の運搬、貯蔵面で有利なことに着目し、研究を行うことにした。当面は埼玉県戸田市の同社研究所で実証実験を行う。
(化学工業日報、日刊工業、日経産業、日本工業、北海道新聞02年12月19日)

(6)京大・名大
 京都大学大学院の北川進教授、名古屋大学大学院の高田昌樹助教授らの研究グループは、酸素や水素、メタンなどの気体を効果的に吸着させ、しかも常温・1気圧で合成できる多孔体の設計方法を編み出したと発表した。雑誌“サイエンス”の12月20日付に掲載される。この多孔体は金属イオンと有機物質を結合させたもので、外壁を取り払って柱と床だけを残したビルのような構造を持っている。これに近寄った気体は分子運動が弱まり、柱の隙間に入り込んで閉じこもることにより、気体分子が吸着される。しかも隙間の大きさを変えると、入り込む気体分子の種類が異なる。既に酸素を閉じ込める多孔体の設計手法は確立しており、今後は水素やメタンについても研究を進める予定である。
(日刊工業新聞02年12月20日)

 
11.携帯用マイクロFCの開発
 従業員わずか32人を抱えるドイツのVB“スマートフューエルセル”が、世界の電機・情報機器メーカの注目を集めている。必要に応じて様々な機器に接続できる携帯型DMFCの開発を進め、量産体制に入ったためであり、03年にも大手メーカと納入契約を結ぶ可能性が取りざたされている。01年4月に試作品を開発、現在は2つの製品ラインを持つが、その内の1つは、産業機械向け出力25Wの“リモート・パワー・システム”で、他の1つは家電・ノート型パソコン向けの出力40W“モバイル・パワー・システム”である。特に後者は、外形寸法が21.6cm、15.3cm、6cmで、40W級DMFCでは世界最小のサイズであり、又メタノールを蓄積したカートリッジの容量も最小175mmLと小さく設計されている。気温などの環境にもよるが、24時間継続して使用したとしても、数日間出力を保つことができる。既に本社の隣に年産能力25,000個の工場設備を確保しており、05年には1万個の生産を見込んでいる。同社のシュテーフェナー社長は「年間1万個を越す時点で、1個1,000ユーロ(約12万円)を下回る」と語っている。
(日経産業新聞02年12月4日)

 
12.教育用FCキッド
 GMアジア・パシフィック・ジャパンは学習研究社と共同で、GMが開発中のFCVと水素エネルギーに関する子供向け教育コンテンツを開発、同社のサイトで公開を始めた。
(日刊工業新聞02年12月19日、日経産業新聞12月20日)

 

 
 ―― This edition is made up as of December 28, 2002. ――