第77号 DMFC電解質膜で新しいアイデアが続出

Arranged by T. HOMMA
1.国家的機関による施策
2.地方自治体・地方公共団体による施策
3.海外の政府関係機関による施策
4.MCFCの開発と市場展開
5.SOFCの開発と利用
6.PEFCの開発と商用化
7.家庭用PEFCの開発と商品化
8.FCV最前線
9.FC用燃料と水素生成・改質技術
10.DMFCとマイクロFCの開発
11.FC測定・試験装置
12.企業活動およびその他

1.国家的機関による施策
(1)国土交通省
  国土交通省は、家畜の糞尿から発生するバイオガスを活用したFCの実証実験を行う方針を固めた。独立法人の北海道開発土木研究所が別海町に持つ資源循環試験施設に実験プラントを併設、有機ハイドライドによるFCの安定的運転を実証し、通年を通してのエネルギー効率やCO削減効果を調査・研究する。
(電気新聞02年10月2日)

(2)総務省
  総務省は、02年10月2日、既存のガソリンスタンドへの水素ステーションの併設を、04年度までに解禁する方針を明らかにした。FCV実用化の促進が目的。
(日刊工業新聞02年10月3日)

(3)資源エネルギー庁
  資源エネルギー庁は、03年度から“水素安全利用等基盤技術開発”を開始、安全で低コストの水素を製造し、利用する技術の確立に取り掛かる。03年度に48億円を要求、NEDOを通して公募を開始する。同庁によるFC関連の03年度予算要求額は322億円で、02年度に比べて約100億円増額されている。
(化学工業日報02年10月11日)

(4)経済産業省
  政府は構造改革特区推進本部の第3回会合で、“構造改革特区推進のためのプログラム”を決定したが、経済産業省はFC利用促進のために高圧ガス保安法などで規制されている水素ステーション保安距離規制や、家庭用FC保安規制などを特区で緩和する特例措置をまとめた。
(電気新聞02年10月15日)
  同省は10月28日、12月に試験的な市販が始まるFCVを率先導入するとともに、必要な水素供給設備を省内に導入すると発表した。政府としても首相官邸と内閣府の公用車として12月2日からFCV2台を導入、官邸で納車式を行うことを決めた。ただFCVは電磁波を出し、警護用の機器に支障を及ぼす可能性があるため、首相や閣僚ら要人用には不向きのようである。
(日本工業新聞02年10月28日、日本経済、東京、日刊工業新聞10月29日、化学工業日報10月30日)

(5)NEDO
  NEDOは、PEFCの技術開発で17件の委託テーマを決定した。高温で作動する電解質膜などの要素技術を研究する。
(日刊工業新聞、化学工業日報02年10月25日、日経産業新聞10月28日、電気新聞10月31日)

(6)NEF
  新エネルギー財団は、東京、大阪、および名古屋で、経済産業省の補助事業である“定置式PEFC実証研究”を開始したと発表した。02年度から3年間の予定で、全国12地区にPEFCコジェネレーションシステムを設置し、実使用条件の下で各種データを収集することになっている。
(日刊自動車新聞02年10月29日、日刊建設工業新聞10月31日)

 
2.地方自治体・地方公共団体による施策
(1)北海道
  北海道の定例道議会で10月1日、堀達也知事は「本年度中に企業や関係団体、行政などでFCの実用化に向けた検討の場を設ける」と述べ、国のFCプロジェクトのモデル地域指定を目指し、積極的に取り組む考えを明らかにした。
(北海道新聞02年10月2日)

(2)愛知県
  愛知県は公用車としてFCVを1台導入する方針を固めた。03年度の早い時期に30ヶ月のリース契約を結ぶことで大筋同意している。リース料は月額150万〜200万円になる見通しである。
(日本工業新聞02年10月2日、日刊自動車新聞10月3日)

(3)大阪工業会
  大阪工業会は、産官学による“FCシステム部品実用化推進研究会”を発足させた。これはテーマ主導型・この指とまれ方式の第2弾で“モノづくり推進会議”で連携する東大阪商工会議所のオンリーワン企業の参加も得て、FC実用化に向けた研究開発をスピードアップさせる。ポンプや流量計、センサーなどFCの実用化に欠かせない周辺機器や材料、部品に開発を絞っているのが特徴である。
(読売、産経新聞02年10月5日、日刊工業新聞10月11日)

(4)山口県
  山口県が10月21日に“県省エネルギービジョン”の素案を纏めたが、その中にカセイソーダ工場から生成される水素を活用したFCV用水素ステーションの実証運転が含まれている。
(中国新聞02年10月22日)

(5)新潟県
  新潟県は、新潟大学、長岡技術科学大学と共同でコジェネレーションやFCに関する研究会“新潟県コジェネ・FC研究会”を設立、10月22日に長岡技術科学大学で第1回研究会を開くことになった。同県内で産官学が役割分担して技術開発を行い、新規産業を育てることを目標にしている。
(日刊工業新聞02年10月22日)

 
3.海外の政府関係機関による施策
  欧州委員会は、水素およびFC技術の研究強化を目指す方針で、そのためにEU専門家グループを開設すると発表した。同グループは自動車およびエネルギー業界の代表で構成され、その分野の開発進展状況を取りまとめた報告書を03年半ばに提出する予定である。
(日刊自動車新聞02年10月25日)

 
4.MCFCの開発と市場展開
(1)トヨタ自動車
  トヨタ自動車は、都市ガス改質のMCFC(発電出力330kW)とマイクロガスタービン(同40kW)を組み合わせたコジェネレーションシステムを開発、同社の元町環境センターで実証実験を開始した。05年愛知万博に向けて実用化を目指す。総発電出力は370kW、発電効率は55%、CO排出量は35%減で、MCFCとタービンの稼動状況を変えることにより、需要合わせて熱と電気の供給を調整することができる。燃料は都市ガスの他、バイオマスや廃棄物から製造される合成ガスなど、多様なエネルギー源を予定している。
(産経、中日新聞02年10月12日、日経産業、日刊工業新聞10月14日、電気、日刊自動車新聞10月17日、日本工業新聞10月18日)

(2)IHI
  石川島播磨重工は、石炭火力発電で発生したCOを回収し、MCFCに再利用することによって、COの排出量を15%削減できる発電システムの構想を纏めた。出力が100万kWの火力発電所は、炭素換算で260トン/hのCOを排出するが、新システムで91万kWを火力、9万kWをMCFCで発電すると、大気中に放出されるCOは約220トンに減少するとの試算が出されている。MCFCからは約27トンの高濃度COが排出されるが、1部再利用できる他、液化して深海や廃抗などに貯蔵できるため、環境への負荷は小さくすることができる。システム構築にはFCに数百億円かかるので、政府の助成金などを得て小規模プラントを設置、性能確認を急ぐことにしている。
(日経産業新聞02年10月14日)

(3)丸紅
  丸紅は、FCEが開発・製造する定置式MCFCの販売を拡大する意向を固めた。FCEはMCFCの生産規模を現在の約50MWから04年までに約400MWまで引き上げ、更に価格を現在の約60万円/kWから30万円/kW程度にまで引き下げる予定である。主力の250kW機種で1億円以下とすることにより、06年までに100億円の売り上げを目指している。又丸紅とFCEは中核部材の品質を高めることで、現在販売している出力別機種を、05年にも250kWから300kWへ、1MWから1.5MWへ、2MWから3MWにそれぞれ高めることを予定しており、価格の引き下げと出力増強を組み合わせて対価格性能比を高め、顧客の関心を引き付けることを目論んでいる。
  燃料はメタンガス(天然ガス)で、発電効率は45〜60%、排熱を利用した総合効率は70〜80%に達する。既にキリンビール取手工場と福岡市下水道局からそれぞれ1台受注しており、工場の電源用に更に3台は受注済みである。ドイツでは計20台近い受注を得ている。
(日経産業新聞02年10月18日)

 
5.SOFCの開発と利用
  中部電力は02年9月30日、三菱重工業と共同で開発している平板型SOFCについて、発電出力を既に実現している15kWから50kWに高めるとともに、排熱を利用したコジェネレーションシステムの開発に着手したと発表した。03年度上半期に試作機を製作し、その後商用化を視野に入れた評価試験を実施する計画である。利用目的は、ホテルや病院など空調需要の高い業務用で、45%の発電効率と85%の総合エネルギー効率の実現を目標としている。研究開発費は約10億円の見込み。
(産経、日経産業、日刊工業、日本工業、電気、中日新聞02年10月1日)

 
6.PEFCの開発と商用化
(1)キュー・エム・ソフト
  キュー・エム・ソフト(福岡県)は、中国製PEFCを輸入、試験販売していたが、本格的な販売を開始することにした。北京市に本社を置く電池メーカが、30kWから200WのPEFCを商品化して国の研究機関などに納入しており、普及が見込める日本市場へ進出する機会を伺っていた。現地では実験などについて北京科技大学の余達太教授らの協力を得ることになっている。価格は出力200Wクラスで約35万円であるが、量産すれば20万円を切る可能性があると同社社長は述べている。当面200Wクラスを中心に月間50台を目標に販売する計画である。
(日刊工業新聞02年9月30日)

(2)日本電池
  日本電池は、白金触媒の使用量を従来のそれの1/10まで少なくしたPEFCスタックのサンプル出荷を、予定より1年間早めて03年から開始することにした。白金の劣化がほとんど生じないことを確認できたためこの措置が採られた。このスタックでは、カーボン表面に直接白金が添加されており、白金の使用量は0.2〜0.4g/kWまで低くなっている。
(日刊工業新聞02年10月1日)

(3)筑波大学
  筑波大学の北川宏助教授らは、銅イオンを中心としてその周囲に有機物質のルベアン酸を配置して造った高分子複合材料が、水素吸蔵能力と高いプロトン伝導性を持つことを発見、この成果をPEFCに応用したいと考えている。プロトン導電性はナフィオン膜のそれに匹敵する。
(日経産業新聞02年10月7日)

(4)エリオン
  フランス・テクニカムの子会社エリオンが、PEFCを開発した。エリオンが目指しているのは、造船や鉄道産業のニーズに応えるための出力300kWのPEFCによる動力用電源で、このPEFCのプロトタイプは2kWのスタックをベースにしている。
(日刊工業新聞02年10月7日)

(5)三菱レイヨン
  三菱レイヨンは、炭素繊維を使ってPEFC用ガス拡散層(GDL)の量産化技術を開発し、製造ラインを豊橋事業所内に設置した。ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維を用いた連続ロール状のカーボンペーパ型で、取り扱いが容易で低コスト化を実現した。新設備は幅80cmまでのGDLの生産が可能である。
(化学工業日報、日経産業、日本工業、日刊工業、電波、繊研新聞02年10月8日、日本繊維新聞10月9日、日刊自動車新聞10月10日)

(6)GM
  GMは10月24日、出力75kWで水素燃料の定置型PEFCの実証実験を03年に開始、05年にも発売する計画であると発表した。日本でも協力会社を見つけて実証試験を行う。現在の製造コストは約6,000ドル/kW以上であるが、05年の発売時には500ドル/kW、商用車での利用を目指す2010年には50ドル/kWに引き下げる。非常用電源として使われているデイーゼルエンジンの代替需要などをターゲットとしている。
(日本経済、日経産業、日本工業、日刊工業新聞02年10月25日)

(7)バラード
  バラード・パワー・システムズは、10月30日にカナダ大使館で開催される“カナダFCシンポジウム2002”で、省スペース型の新型PEFCモデルを発表する。このPEFCは出力1.2kWで空冷式、耐用時間は1,500〜2,000時間となっている。通信会社の交換機などが入っているラックに丁度納まるような大きさに設計されているため、先ず通信会社向けバックアップ電源用に売り込みを図ることにしている。バックアップ電源の場合「導入コスト面では従来の充電式2次電池の方が安いが、ランニングコストを含めれば従来電池と同程度のコストに収まる」とジョン・ハリス副社長は語っている。小型で持ち運びが容易なため、フォークリフトや小型自動車の駆動源、小型船舶の補助電源などにも利用できる。同社は03年早々にもアメリカとカナダでフィールドテストを開始し、1年程度をかけて水素の供給方法などを検討することにしている。日本でも顧客との契約が取れ次第、顧客と一緒に同様のテストを行う意向である。現在は本社で生産するが、日本で販売量が確保できるようになれば、提携先の荏原に生産を委託する方針である。なおハリス副社長は「この技術をベースに数万時間の耐久時間を持つPEFCを開発し、少なくとも5年以内に一般家庭向けユニットを発売できる」と述べた。
(電気新聞02年10月30日)
  バラード・パワー・システムズは、出力10〜30kWクラスを中心とした通信・非常用バックアップ電源向けのPEFCを開発、日本では荏原を総代理店に、日本、アメリカ、ヨーロッパで市場開拓に乗り出す。今回の数十kWタイプは、出力1.2kWのネクサを数台、数十台並べて発電システムとしてインテグレートした発電装置である。
(日刊工業新聞02年10月31日)

 
7.家庭用PEFCの開発と商品化
(1)東邦ガス
  東邦ガスは、家庭用PEFCコジェネレーションシステムの開発を進めているが、給湯や暖房などに使う温水を効率的に供給するシステムをリンナイと共同開発することで同意に達した。2005年の商品化を目指す。
(化学工業日報02年10月2日)

(2)松下電器産業
  松下電器産業は、05年に出力1kWPEFCの市場投入を目指しちるが、当面の目標であった定格出力での発電効率32%をクリアし、03年春を目途に耐久性とコスト削減に向けた実用化開発フェーズに移行した。大阪ガスが05年の家庭用FC商用化を目指して、03年6月にもメーカを2ないし3社に絞り込むことを考えているが、先ずこの企業選定に勝ち残れる商品の開発を加速する。初期劣化はほぼクリアしたので、現在はDSS運転での電圧劣化を少なくすることを目標に、02年度には1kW機を10台製作し、実際の家庭に設置して実証運転することになっている。価格は当面の目標である100万円に向けて事業化フェーズに対する結論を出す。
(日刊工業新聞02年10月18日)

 
8.FCV最前線
(1)トヨタと日野
  トヨタ自動車と日野自動車が共同開発したFCハイブリッド大型バス“FCHV−BUS2”が国土交通大臣認定を取得、10月から公道走行試験を開始する予定である。これはFCHV−BUS1をベースに60人乗り仕様に改良した4台で、90kWFCスタック2台を搭載、2次電池にはニッケル水素電池4セットが搭載されている。大都市での走行モードで航続距離は250kmと発表されている。
(日刊工業、日経産業、日本工業、日刊建設工業新聞02年9月30日)
トヨタ自動車と日野自動車は、02年10月18日、FCHV−BUS2の公道試験を東京都内で報道陣に公開した。車体の屋根部分に高圧水素ガスタンクが5本搭載されている。最大の課題は価格で、2,300万円のベース車両に対して、現時点での価格はその10倍以上と云われている。
(朝日、読売、毎日、日本経済、産経、東京、中日、日刊自動車新聞02年10月19日、日経産業、日本工業、日刊工業新聞10月21日)

(2)ホンダ
  アメリカ・ホンダは02年10月8日、ロスアンジェルス市とFCVの販売について基本合意した。FCX5台をリース契約し、内1台は年内の納車を予定している。
(朝日、毎日、日本経済、産経、日経産業、日刊工業、日本工業、東京、日刊自動車新聞02年10月8日)
  ホンダは10月22日、年内に国内でリース販売するFCV“FCX”のプロトタイプを発表した。FCX−V4をベースとして、航続走行距離を355km、最高時速を150km/hにまで高めた他、デザインなどにも改良が加えられている。
(読売、朝日、日本経済、産経、日経産業、東京、日刊工業、日本工業、日刊自動車新聞02年10月23日、化学工業日報10月24日)

(3)ダイムラークライスラー
  ダイムラークライスラーは、02年10月7日、FCバス“シターロ”を03年3月に市場投入し、又FCVも“F・セル”の名称で03年から販売に乗り出すことを決めた。両車両とも350気圧水素ガスを燃料としており、メタノール改質で実用化を目指してきた従来の路線を大きく転換した。ヨーロッパ、アメリカ、日本、シンガポールで先ず60台販売する。その内FCバスは30台で、アムステルダム、ロンドン、バルセロナ、レイキャビック、ストックホルムなど10都市で投入する。価格は1台125万ユーロ。
(日刊工業新聞02年10月8日、日刊自動車新聞10月10日)

(4)フォード
  フォードのゲハルト・シュミット副社長は、FCV用燃料として、メタノール改質方式の開発を縮小する意向であると語った。
(日本経済新聞02年10月19日)
  欧州フォードは、イギリス国際自動車ショウで、次世代ラリー車のコンセプトカーの他、“フォーカスFCV”を公開した。9月末からドイツ、フランスを経てイギリス南部のバーミンガムまで約2,500kmを走破している。
(日経産業新聞02年10月24日)

 
9.FC用燃料と水素生成・改質技術
(1)大阪ガス
  経済産業省は、大阪ガスと共同で2003年度末までにDME対応のFCを開発し、05年度を目途に家庭用定置型FCとして商品化する。大阪ガスはDMEから水素を安定的に取り出す技術を開発しており、経済産業省は02年10月から石油公団を通じて大阪ガスに補助金を支給、システム設計や市場調査などを実施することにした。経済産業省は、FCVへの利用も視野にいれている。現在開発中のFCVの多くは水素を直接搭載する方式であるが、液化できるDMEであれば同じ容積で3倍以上の水素を搭載することが可能であり、水素貯蔵量が飛躍的に増大するメリットが見込まれる。
  DMEは天然ガスから製造されるクリーンな燃料で、常温・常圧では気体であるが、常温で6気圧以上に加圧すると液化する。LNGに比べて輸送や港湾施設の費用が大幅に削減できる。
(日本経済新聞02年9月30日)

(2)中部電力とノリタケ
  中部電力は、02年10月1日、ノリタケカンパニーと共同で、水素分子しか通らない超極小の穴を持つセラミックス膜の開発に成功したと発表した。穴の大きさは水素分子2個程度の0.6〜0.7nmで、水素を含んだ混合気体をセラミックスに通すだけで純粋な水素を得ることができる。高温にも強く、強度もあるので、水素供給装置のコンパクト化が期待されている。液体状のセラミックス原料(窒化ケイソ)を焼き固める段階で、特殊なガスを加えると原料内の有機成分であるメチルだけが気化して微小な空間ができる。
(電気、日刊工業、日本工業、中日新聞02年10月2日、日経産業新聞10月4日)

(3)東邦ガス
  東邦ガスは02年10月4日、同社総合研究所に設置したFCV用水素供給ステーションの完成式を開いた。トヨタによる公道走行試験中のFCVに水素が供給された。都市ガス水蒸気改質のオンサイト型で、40L/hの水素生成能力がある。
(中日新聞02年10月5日)

(4)広島県産業科学技術研究所
  広島県産業科学技術研究所は、COを水素と反応させることによって除去する触媒を開発したと発表した。広島大の竹平勝臣教授と東工大の大塚潔教授の共同研究。触媒はルテニウムを2酸化チタンに付けた大きさ数μmの粒子で、250℃でCOを水素と反応させてメタンに変えることができる。CO濃度がCOの20倍以上の混合気体でも、COだけを取り除き、又300℃の高温になるとルテニウムの代わりにニッケルでこの反応は可能になった。ただし、ルテニウムの場合、280℃程度になると水素がCOとも反応して水素が無駄になるので、高温での選択性を高めることが課題。
(日経産業新聞02年10月7日、中国新聞10月17日)

(5)東京ガス
  東京ガスは02年10月11日、FCVの普及のため、水素の補給スタンドの整備に本格的に乗り出す方針を明らかにした。都内にある32の天然ガススタンドで水素も補給できるようにする他、04年度から販売を始める一般家庭向けFCにも、スタンドから水素を供給することを検討する。既に敷設されているガス管で水素スタンドに天然ガスを送り、スタンドで水素に改質する方式が採用されるようである。
(読売新聞02年10月12日)

(6)GM
  GMは04年にガソリン改質技術をベースにした定置式FCの商品化に踏み切ることを明らかにした。アメリカとともに日本で販売する。既にアメリカでは携帯電話のプロバイダーへ、バックアップ電源として数十kW機を実証機として納入した。今後更に発電効率の向上やコスト低下を図り、商業化を目指すことにしている。
(日刊工業新聞02年10月17日)

 
10.DMFCとマイクロFCの開発
(1)東京大学
  東京大学の中尾真一教授と山口猛央助教授らは、携帯情報機器用小型DMFCで、出力を20%高めることを可能にする電解質膜を開発した。新膜は耐熱性ポリエチレンやポリイミドなどの高分子多孔質膜で、膜厚が20μm、穴は直径数十nm、スルフォン酸系高分子で満たされている。この膜ではクロスオーバーが小さく抑えられ、それだけ発電性能を向上させることができる。又材料が安く製法が簡単なため、低コスト化が期待される。
(日経産業新聞02年10月4日)

(2)武蔵工大
  武蔵工大の長井正幸教授をリーダーとするグループは、ポリマーにシリカ系無機物をナノ粒子化して分散して混合一体化(コンポジット)した電解質膜を用いてDMFCスタックを製作、常圧運転で0.25W/cm2の出力密度を達成した。このポリマーはシロキサンやシランなどシリコンと有機物が混合した材料で、ポリマーの隙間にシリカ系無機物を10nm、20nmの大きさの粒子にして分散している。5cm角のセルを17枚直列に接続して組み上げたスタックでは、最高作動温度84℃で150Wの出力を記録した。今後は数百Wのスタックを製作し、03年3月にそのスタックを搭載した電動カーを製作、デモ走行する予定である。
(日刊工業新聞02年10月10日)

(3)都立大
  東京都立大学の金村聖志教授らは、携帯端末用小型DMFCの長寿命化と出力向上をもたらす電解質膜を開発した。規則正しく穴のあいたセラミックス多孔体の穴に、導電性の高分子膜を満たし、それを電解質膜として使用する。セラミックスは硬くて薬品などによる変化を受けないので、メタノール水溶液を吸い込んで膨らむことはなく、メタノールのクロスオーバーは1/10に抑えられると見られている。試作したのは酸化ケイ素の多孔体である。ポリスチレン粒子を酸化ケイ素溶液に混入、それを乾燥させて膜を作り、高温で焼くとポリスチレン粒子が燃えてなくなるので、膜には規則正しい空洞ができる。従来のフッ素系電解質膜は、メタノール水溶液を吸収して大きく膨張したり、メタノールを透過する難点があったが、その問題を解決することになる。
(日経産業新聞02年10月28日)

(4)水素エネルギー研
  水素エネルギー研究所と工学院大学は、常温常圧で持ち運びができる液体状燃料を利用した小型FCを開発した。水素とホウ素の化合物(水素ホウ素ナトリウム)をアルカリ溶液に溶かした燃料で、これと過酸化水素をFCに供給して発電する。製作されたのは出力が10Wと100W級の2種類で、ノートパソコンなど携帯関連機器や老人や障害者用の小型電動車両向けに3年以内での実用化を目指す。燃料コストは1時間当たり、10Wタイプが約12円、100Wタイプが約120円と報告されている。
(日本経済新聞02年10月30日)

(5)RITE
  地球環境産業技術研究機構(京都府)と関西電力、東レ、シャープ、堀場製作所、東京大学や京都大学などは、生物の機能や仕組みを利用した次世代のエネルギー・環境機器の共同開発に乗り出すことになった。開発課題の1つとして、ノートパソコンの24時間使用を可能にするFCの開発などが挙げられており、土壌に生息する水素合成細菌の能力を遺伝子組み換え技術で高め、細菌の生み出す水素を燃料とするFCの開発を目指すことにしている。
(日本経済新聞02年10月30日)

 
11.FC測定・試験装置
(1)横河電機
  横河電機はFCの試験装置市場に参入する。電圧・電流特性などの測定機能を持つ試験装置を開発し、03年度にも実用装置として500万円以下で販売する予定である。
(日経産業新聞02年9月30日)

(2)英和
  計測器商社の英和は、日本自動車研究所とFC用材料の性能評価を行う試験器のライセンス販売契約を締結した。“PEFC標準セル”の名称で販売、標準価格は90万円で、初年度100基の販売を目指す。
(日刊工業新聞02年10月8日、日経産業新聞10月18日)

(3)エヌエフ回路設計ブロック
  エヌエフ回路設計ブロック(横浜市)は、FC評価装置の機能をアップして、寿命、劣化要因、発電効率、材料などの評価が容易にできるFC評価システムを製作、02年10月10日より発売を開始した。機能アップでは、交流インピーダンス測定法を用いて、FCの内部の状態を等価的な電気回路として自動的に推定する機能を搭載している。動試験ソフトウエアーで長期耐久性評価試験も可能である。価格は1,000〜2,000万円。
(電波新聞02年10月12日、日本工業新聞10月17日)

(4)富士通アクセス
  富士通アクセスは、02年内を目途に、測定の制度を大幅に高めたFCVや自動車用FCの検査・評価装置を発売する。同時に製品の標準化を進めて、製造コストを下げ、納期を半減させる予定である。これは、入力時の瞬間に適切な大きさの電流が流れ、機器が正常に動作するかどうかを検証する装置であるが、測定時の最大遅れ時間は、新製品では0.005秒以下に抑え、又測定誤差は0.1%にまで小さくなった。
(日経産業新聞02年10月22日)

 
12.企業活動およびその他
(1)エヌ・イーエムケムキャット
  貴金属触媒メーカのエヌ・イーエムケムキャットは、FC向け触媒の開発でアメリカの触媒メーカであるエンゲルハルトと技術提携する。年内にも調印し、ケムキャットの金属触媒、エンゲルハルトの非金属触媒の技術を持ち寄り、FC電極用触媒技術を網羅する予定である。
(日経産業新聞02年10月2日)

(2)日立粉末冶金
  日立粉末冶金は、カーボン系ナノ材料の開発を本格化させ、次世代デイスプレイやFC分野への進出を目指す。
(化学工業日報02年10月11日)

(3)神鋼パンテック
  神鋼パンテックは、02年10月16日、水電解式高純度水素発生装置をFCシステム用に販売を開始したと発表した。OEM販売とリース方式で事業化する計画であり、初年度2億円、05年には年商10億円に育成する方針。
(化学工業日報02年10月17日、日本工業新聞10月21日)

(4)広栄化学
  広栄化学はイオン性液体を事業化する。イオン性液体は“常温溶融塩”とも云われるように融点が低く、−100℃から200℃までの広い室温領域で液体状態を維持し、かつイオン伝導性も高いので次世代電解質材料として注目されている。
(日刊工業新聞02年10月30日)

 

 
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