64号 FCEがMCFC/GTシステムの実証運転

Arranged by T. HONMA
1.海外における政府の施策と開発計画
2.MCFCの実証運転
3.SOFCの研究開発と実績
4.PEFC技術開発
5.家庭用PEFCシステムの開発と市場展開
6.FCV最前線
7.マイクロFC
8.FC評価試験装置
9.燃料関連技術
10.企業活動

1.海外における政府の施策と開発計画
 アメリカDOEは、SOFCのコストを大幅に削減することを目的として、10ヵ年に亘る開発計画を立ち上げることになり、各社から提案を受け付けていたが、この程以下の参加企業が選ばれた。それらはHoneywell、Siemens Westinghouse、Delphi Automotive Systems/Battelle、Cummins power Generation/McDermott Technologyである。DOEのコスト目標は、非常に意欲的で、現状コストの約1/10、又商用化に向けて開発が進められている先進型ユニットに対しては約1/3と発表されている。SOFCの市場は家庭用および分散型独立電源、比較的大規模なシステム、自動車の補助電源としての利用が想定されている。DOEは全てのコンポーネントが固体で構成されており、モジュール化および組み立て方式を採用することによって大量生産体制を実現する方式が、大幅なコスト低減を可能にするとの確信を描いており、2000年には産官学共同の組織としてSolid State Energy Conversion Alliance(SECA)を立ち上げた。この組織には2つの国立研究機関National Energy Technology LaboratoryおよびPacific Northwest National Laboratoryが推進母体となっている。  SOFCコスト低減プロジェクトは、3つの期間から成り立っている。第1期の4年間におけるコスト目標は$800/kWeに設定されており、第2期(3年間)および第3期(同)の目標は各々$600および$400/kWeと記されている。性能については燃料から出力までの効率が最終的に60〜70%、そして多種類の燃料が使用可能であることを目指しており、もしこのプロジェクトが予定通り実施されるとすれば、DOEが10年間に支出する補助金の総額は2億7,100万ドルに達する見込みである。
 各社の分担は以下のようである。先ずHoneywellは出力3〜10kWeSOFCモジュールを開発しプロトタイプの実証運転を行う。このモジュールは独立電源としても使用できるが、又より大きなシステムに組み込むことも可能である。DOEの支出分が7,400万ドル、Honeywellの分担が5,900万ドルとなっている。
 Siemens Westinghouseは、家庭用コジェネレーションを目的に7〜10kWeSOFCシステム、および自動車の補助電源用に3〜10kWeユニットを開発することを計画している。Siemensの協力会社には、Fuel Cell Technologies、Ford、Blasch Precision Ceramics等幾つかの企業が含まれている。DOEが4,780万ドル、SWPC(SiemensWestinghouse Power Corporation)のチームが3,280万ドルを負担する。
 Delphi Automotive SystemsおよびBattelle は自動車やトラックの補助電源用SOFCを開発する。通常の燃料で動作する出力5kWeシステムが実証運転されることになろう。この開発計画にはUtah大学がコンサルタントとして協力する。開発費の負担はDOEが7,460万ドル、Delphiのチームが6,090万ドルとなっている。
 Cummins Power GenerationおよびMcDermott Technologyは、定置式および自動車への利用を目指して、モジュール化された10kWeSOFCシステムの開発を担当する。現在のレシプロエンジンに競争かつ代替可能なシステムの開発が目標として掲げられている。サブコントラクターとしてCeramatecおよびAdvanced Refractory Technologiesの名前が挙っている。開発費についてはDOE側が7,420万ドル、企業側が9,150万ドルを負担する。
(Fuel Cells Bulletin, October 2001, No.37, p1)
 
2.MCFCの実証運転
 FuelCell Energyは、出力250kWeのMCFC(Direct FuelCell?:DFC?)にCapston Turbine Corporationのマイクロガスタービンの改良型モデル330を組み合わせたコンバインドシステム(DFC/T)の運転実験を01年7月末に開始した。このタービンは燃焼過程がなく(non-fired gas turbine)、FCで発生した熱が熱交換器を経てタービンに入力される点に大きな特徴を持っている。又MCFCは加圧型ではなく、FCの動作圧はタービンのそれとはリンクしていない。  元来高効率DFC/TTM発電プラントの開発実証研究は、DOEのVision21計画に基ずいて、DOEのOffice of Fossil Energyからの資金援助によって行われているプロジェクトである。このVision21の目的は、天然ガスを燃料として、最終的には75%に至る超高効率発電を実現すると共に、NOxやSOxの排出を極めて低く抑える技術の開発に置かれている。上記のFCEによるDFC/Tシステムは、非燃焼タービンが使われていることから、排出ガスについては、Vision 21の目標を凌駕して達成するものと予想されている。又この実証研究成果をベースに設計される出力40MWeのDFC/T発電プラントは、Vision 21計画が目標とする75%に達する高い効率を実現するものと期待されている。
(Fuel Cells Bulletin, October 2001, No.37, p2)
 FuelCell Energyは、出力250kWのDirect FuelCell?をConnecticut大学に設置することになり、Connecticut Clean Energy Fundとの間で125万ドルの 契約を締結した模様である。Connecticut Clean Energy FundのArthur Diedrick議長は、このFCの設置・運転は地域の環境に貢献するのみならず、Connecticut州にFCの技術情報を齎す効果があると語っている。
(Fuel Cells Bulletin, October 2001, No.37, p5)
 
3.SOFCの研究開発と実績
(1)電力中央研究所
 電力中央研究所は、SOFC燃料極材料における成分比の最適条件を発見した。従来はSOFCの燃料極材料として、ニッケルとYSZを混合した粉末を使っていたが、ニッケルに加えて、YSZを粗い粒子と細かい粒子にして使用することにより、発電の長期安定性が確保できることを発見した。同研究所では、粗い粒子のYSZ、ニッケル、微細粒子のYSZの混合比を4:6:1又は5:5:1とする比率が、SOFCの長寿命化にとって最適であり、その場合2000時間後でもその初期性能を維持できると述べている。今後は発電に最適な各粉末の粒の大きさを評価する研究を行う予定である。
(電気新聞01年10月11日)

(2)Siemens Westinghous Power Corporationは、石油大手BPとの間で、アラスカのNikiskiにあるBPのGTL(Gas-To-Liquid)施設の側に出力250kWeのSOFCシステムを建設する契約を締結した。DOEが補助金として200万ドル支出する。燃料は天然ガスで、2003年に完成見込み。
(Fuel Cells Bulletin, October 2001, No.37, p1) 
 

4.PEFC技術開発
 日立製作所・日立研究所は、セパレーターを軽くかつ低コストで作る技術を開発したと発表した。従来の黒鉛に替えて金属を用いることにより強度を高め、厚さは従来のそれに比べて10分の1以下、重量を半分にした。金属のため加工が簡単で、製造コストは半減すると期待されている。従来はセパレータを金属製にする場合、金メッキを施すなどして腐食を防ぐ必要があり、それがコスト高の要因になっていたが、この技術では鉄や銅の表面を腐食しにくい特殊金属でコーテイングした"クラッド薄板"を採用した点に特徴があり、更に耐腐食性と電導性を持つ塗料を塗ることによって問題を解決した。表面コーテイングに使う金属の種類については明らかにされていない。家庭用を想定した出力1.2kWのプロトタイプを試作したところ、全体の重量が10kg弱となり、従来より約3割軽量化された。
(日経産業新聞01年10月24日、電気新聞10月25日)
 
5.家庭用PEFCシステムの開発と市場展開
(1)松下電産
 松下電器産業は、01年10月1日、都市ガスを燃料とする家庭用コジェネレーションシステムの販売を2004年から始めると正式に発表した。温水と合わせたエネルギー効率を72%とし、価格は100万ないし120万円を目指すと述べている。同社が開発しているシステムは、現段階では最大1.3kWの電力を発電し、70℃の温水300リットルを貯蔵する装置を持つ。大きさは高さ85cm、幅86cm、奥行き32cmまで小型化されている。このシステムを使うと年間5万円の電気代が節約になると同社は語っている。
(毎日、読売、日本経済、産経、日刊工業、日本工業 電波新聞、化学工業日報01年10月2日)

(2)三洋電機
 三洋電機は01年10月3日までに、研究開発本部にFCの商品化・事業化を専門に進めるチームを発足させた。従来、同本部のエコ・エネシステム研究所が技術開発から市場調査まで担当していたが、研究所から社内ベンチャー組織としてチームを独立させ、研究者3人にFC本体の設計から市場展開までを専門に担当させることにした。当面は家庭用1kW級PEFCの実用化を急ぐ。同社の寺田房夫研究開発本部長(執行役員)は「FCの開発に専念させることで、コストを大幅に引き下げたい」と語っている。
(毎日新聞01年10月4日)

(3)東邦ガス
 東邦ガスは、01年10月3日、家庭用FCについてメーカ各社の試作機を試験運転し、性能評価を始めたことを明らかにした。ユーザの立場から、基本性能や安全性、信頼性などを評価、メーカ側の開発を後押しし、実用化を加速させる。第1弾としてトヨタ自動車とアイシン精機が共同開発した1kW級の家庭用システムを、東邦ガスの総合技術研究所に設置し、運転試験を開始する。
(中日新聞01年10月4日)

(4)北海道ガス
 北海道ガスと荏原バラードは、天然ガスを燃料とする家庭用PEFCコジェネレーションシステムの共同開発を始めることになった。北海道大学の実験住宅で3年間実証運転し、太陽光や風力発電などと組み合わせた複合型システムの確立を目指している。PEFCは荏原バラード製で出力は1kW、発電効率は42%と記されている。
(日経産業新聞01年10月18日、日本工業新聞10月19日、電気新聞10月22日)

(5)大阪ガス
 大阪ガス、荏原バラード、荏原、BGSの4社は、01年10月22日、PEFCを用いた家庭用コジェネレーションシステムに関する共同研究を実施することで合意したと発表した。大阪ガスが開発した都市ガス用燃料改質装置とPEFCを組み合わせ、01年度中に24時間連続運転が可能な家庭用システムの設計作業に取り組むことにしている。02年以降は実機によるテスト運転を予定しており、04年以降にはそれらの結果を商用機の製造に繋げたいと考えている。
(朝日、日経産業、 産経、日本工業、日刊工業、電気新聞、化学工業日報01年10月23日)
 

6.FCV最前線
(1)BMW
 BMWは水素とガソリンを同一内燃機関で燃焼させるバイフューエルカー"745-h"を完成し、数年後には販売に乗り出すことになった。01年10月26日から一般公開する東京モータショウにも展示する。昨年製作した15台の水素自動車に比べて、市販車としての完成度は高められており、燃料タンクも一段とコンパクト化されている。補助電源用として出力5kWのSOFCが搭載される予定である。SOFCはガソリンを改質して得られた水素で駆動されるが、ガソリン改質温度とSOFC動作温度が900℃で高く、したがって使用材料に課題があるものの、PEFCよりも実現の時期は相当早いと同社は予想している。
(日刊工業新聞01年10月5日)

(2)スズキとGM
 01年10月17日、スズキは資本提携先であるアメリカのGMと、FC開発について相互に協力することで合意したと発表した。この内容はGM側からも同時に発表された。スズキはこれまでFCVの開発に独自に取り組んできたが、開発を迅速化させるため、GMの持つ経営資源を有効活用することにした。スズキは今後2ないし3年間にGMとの開発プロジェクトに約50億円投資する予定である。当面は数人の技術者をGMに派遣、GMが開発したガソリン改質方式のFCエンジンをスズキの小型車に搭載するための技術を共同で開発することにしている。同日記者会見した津田常務は「GMのFCをスズキが開発する小型車に効果的に適用していく」と述べていた。
(日本経済新聞01年10月17日、朝日、毎日、読売、日経産業、日刊工業、日本工業、東京、日刊自動車新聞、化学工業日報10月18日)

(3)日産
 01年10月23日に都内で記者会見した日産のカルロス・ゴーン社長は「来年投入する15種類の新型車の内、小型車マーチなど11種類を超低排出ガス適合車(U―LEV)にする」と表明した。又ルノーと共同で研究開発しているFCVについては「2005〜06年に発売できる」との見通しを示した。今後5年間にFCV開発にルノーと共同で850億円を投じると伝えられている。
(日本経済、産経新聞01年10月24日)

(4)マツダ
 マツダのマーク・フィールズ社長は01年10月24日、ハイブリッド自動車を2005年までに市場に投入する方針を明らかにした。FCVについては「技術的には実用化できるが、2010年頃にならないと出てこないであろう」と語り、早期の商品化を否定した。
(読売新聞01年10月25日)

(5)プジョー・シトローエン
 プジョー・シトローエングループ(PSA)のジャン・マルタン・フォルツ会長は、01年10月24日、東京モータショウ会場で記者会見し、トヨタ自動車と共同開発・生産する小型乗用車について「日本で発売しない理由はない」と述べ、日本市場でも販売する意向を示した。FCVの開発におけるトヨタとの協力については「具体的な計画はない」としながらも「トヨタのみならず、多くのパートナと追加的な協力の可能性を検討したい」と述べ、トヨタとの協力があり得ることを示唆した。
(中日新聞01年10月25日)

(6)ダイハツ工業
 ダイハツ工業は、軽自動車を中心とするスモールカーに専念しているが、FCVについては、高圧水素方式の"MOVE FCV-K-II"を東京モータショウに出品した。最高出力30kWの"トヨタFCスタック"を搭載している。同社はFCVを中心に幅広い分野でトヨタ自動車と共同研究体制を強化することにしている。
(日刊自動車新聞01年10月25日)
 

7.マイクロFC
 アメリカのマンハッタン・サイエンテイフィックスは高出力のフィルム状FCを開発した。水素イオンを取り出す燃料には、水素とホウ素をナトリウム溶液に溶かした液体を使い、電解質膜の構造を変えることによって、メタノールを燃料とする従来の電池よりも約10倍高い出力密度が得られると報告されている。実用研究で協力する化学品商社の美浜によれば、試作したFCは厚さが2〜3mm、面積は20cm2で、実験では室温で約1Wの出力を記録した。電解質膜は厚さ20マイクロのポリエステルで、放射線を使って5cm2当たりに100〜200の微小な穴を開け、水素イオンが通り抜けやすい構造になっている。長時間の稼動試験は未だ行われていないが、寿命も長くなると予想されている。携帯電話用の実用化を目指しており、燃料はライターのオイルのような形で供給することを検討している。
(日経産業新聞01年10月23日)
 
8.FC評価試験装置
(1)永野電機産業
 永野電機産業(大阪市)は、FC評価試験機用の小型定露点ガス発生装置を開発、発売を開始した。価格は露天温度、ガス供給能力などユーザー仕様により250万〜500万円で、初年度40台の販売を目指している。装置は加湿槽と除湿槽とを併用、ガス量や環境温度に左右されない安定した露点のガスを発生できる。加湿ガスの発生量は空気、水素とも最大で毎分10リットル、圧力は0.1MPaで、0.5Mpaまで製作する。
(日刊工業新聞01年10月2日)

(2)産総研
 産業技術総合研究所シナジーマテリアル研究センターは、水素ガスだけに反応し、且つ室温で作動する水素ガスセンサーの基本動作確認に成功した。このセンサーは熱電変換材料膜とその表面の1部に形成された白金触媒膜で構成されている。動作原理は、触媒膜が水素ガスと反応して発熱することにより材料膜上に局部的な温度差を発生し、それが熱電変換の原理により電圧信号に変換される。試作したセンサーは熱電変換材料としてリチウムを添加した酸化ニッケルを使用しており、室温では水素を1%含む空気の混合ガスに対して、約0.15mVの電圧信号を発生した。水素ガスに反応するだけでなく、水素濃度に比例して電圧信号が高くなるため、濃度センサーとしての応用も考えられる。 室温で動作するため、低消費電力でシリコンチップとの集積化が可能であり、実用化されれば、FCの安全確保対策としての利用が期待されている。できれば数年で実用化したい意向である。従来の水素ガスセンサーは、酸化スズの表面に吸着している酸素と水素ガスの反応に伴う電気抵抗の変化を信号に変えていた。しかし、センサーの温度を400℃程度に加熱する必要がある上、メタンガスやCOにも反応する欠点があった。
(電気新聞01年10月4日、日本経済新聞10月5日)
 

9.燃料関連技術
(1)新日鉄・NKK等
 新日本製鉄、NKKなどと金属系材料研究開発センター(JRCM)は、01年内にも、水素やメタンを多く含むコークス炉ガスから、低コストで水素を生成する技術の共同開発に着手する。製鉄所で発生する副生ガスには、コークス炉ガスの他、高炉ガス、転炉ガスなどがあるが、その中でコークス炉ガスは水素を約50%、メタンを約30%含んでいる。コークス炉ガスは、現在でも加熱炉のエネルギーなどに再利用されているが、水素・メタンのガス分とタールなど不純物を分離するために、アンモニア水を散布して冷却しており、約800℃以上のガスを80〜100℃まで下げている。これが熱のロスを発生させていた。今回のプロジェクトで、新日鉄は製鉄工程で発生する800から950℃レベルの排熱などを利用して高圧空気を加熱した後、セラミックス膜を使って酸素だけを分離する技術を提供する。これを製鉄所のコークス炉で発生するガスに含まれるメタンやLNGと反応させ、水素を取り出す。安価な水素を低コストで量産する技術を確立し、最終的には事業化を目指すとしている。共同研究には帝国石油も参加、各社が共同研究する製造技術は、メタンの分解に高温の水蒸気と触媒を使う方式と、酸素を投入する方式を併用するのが特徴。水蒸気方式では、吸熱反応で温度が低下して反応が遅くなる問題を、酸素を投入する発熱反応で補う。経済産業省から補助金の出る国家プロジェクトとして、2005年までに研究室レベルのベンチプラントを開発する予定。新日鉄は共同研究が成功すれば「水素を化学物質として売るエネルギー事業を考えたい」と述べている。
(日経産業新聞01年10月4日、鉄鋼新聞10月26日)

(2)科学技術振興事業団等
 科学技術振興事業団、名城大学の飯島澄男教授ら、千葉大学の金子克実教授ら、NECおよび産業創造研究所の共同研究グループは、酸化処理した単層ナノホーンが、メタンガスを容積比で160倍貯蔵できることを発見した。単層ナノホーンを酸素雰囲気で400℃前後の熱処理をすると、ナノホーンに無数のナノサイズの細孔があき、表面積が増大する。通常のナノホーンでは角状に開いた部分からしかガスが出入りできないが、細孔が開いたナノホーンではこの細孔からもガスが出入りし、かつメタン分子と細孔を含めたナノホーン壁との相互干渉によって室温でもメタンは超臨界状態の液体に転移する。このため高密度貯蔵が可能になると解釈されている。FCVの燃料タンクに利用できるものと期待されている。
(日刊工業新聞01年10月5日)

(3)NKK
 NKKは、豊田通商、日立製作所、フランス石油大手のトタルフィナエルフ、丸紅、出光興産、国際石油開発、日本酸素の7社と共同で、直接合成技術を使ったDMEの製造・販売の事業化検討会社"DME International"を01年10月19日付で設立することに合意したと発表した。直接合成法によるDME製造技術は、世界で3つのグループによって開発が進められている。NKKが進めている方法は、高い効率性と開発段階の進展度から注目されており、アジア地域に大量に埋蔵されている未利用の低品位炭や、中小ガス田などが有効活用できるものと期待されている。今回設立する事業化検討会社は、この直接合成技術開発が、実証プラントの概念設計を行う段階に達したことから、開発終了と同時にDME事業展開が出来るよう準備することにしている。事業規模としては2006年を目途に年間80万トンから150万トンを想定している。
(建設通信新聞01年10月11日、日本工業新聞10月16日)

(4)GM
 GMは水素貯蔵用新規材料の開発を加速させる方針である。タンクだけでなく、貯蔵用固形素材として注目しているのが水素吸蔵合金とアルミ合金化合物で、特にアルミ合金化合物は水素吸蔵合金に比べて単位重量当たりの吸蔵力が大きくなる可能性がある。更にGMはカーボンナノチューブの検討にも着手しており、素材について広範な分野で開発を推進することにしている。 GMは過渡的措置としてガソリン改質に取り組んでいるが、基本的には水素貯蔵が本命と考えている。現状では極低温タンクに液体水素を充填する方法を先行させており、最新型試作車"HydroGen 3"では68lit.の液体水素をステンレス製タンク(長さ1m、直径40cm)に充填し、400kmの走行を可能にした。同時にGMは低温・高圧にしないで水素密度を高める方法を模索している。その1つとして鉄―チタン系を初めとした水素吸蔵合金が有望視されているが、貯蔵容量に対する重量が大きいという問題があるため、軽量化を図るための方式としてナトリウム―アルミ―水素化物が注目されている。
(化学工業日報01年10月23日)
 

10.企業活動
 IHIは新エネルギー技術の開発と事業化を本格化させることにし、その一環として太陽電池事業に新規参入、又定置式家庭用PEFCの市場拡大とMCFCの実用化を急ぐ方針を打ち出した。PEFCはアメリカのモザイク社に出資しており、同社のスタックとIHIの改質器と組み合わせて、5〜10kW級定置式システムを構成し、試験研究を進めている。又01年2月から実施されている日石三菱精製の横浜精油所でのナフサを燃料とするPEFCの実証実験には、IHIのシステムが導入された。今後発電効率を高めるとともに、現在出力1kW当たり50万円程度する単価を、将来は10万円台にまで引き下げ、家庭用として普及を図ることを意図している。又MCFCについては、2005年3月から開催される愛知万博の電源システムとしての受注を目指す。
(化学工業日報01年10月5日)
 

 
― This edition is made up as of October 27, 2001. ―